★続・NHKにCMは流れるか…
12日付の「自在コラム」で「NHKにCMは流れるか…」のテーマでNHK民営化の可能性について触れた。その文末に安倍晋三氏あるいは中川昭一氏あたりがその口火を切るかもしれないと書いた。このブログを見たテレビ業界の知人がさっそくメールを送ってきた。「NHKへの関与が取り沙汰されている両氏が今度、民営化論を持ち出せば、それこそNHKいじめと見られないか」という内容だ。
せっかくメールをもらったので、なぜ両氏の名を挙げたのかという点を深めて説明したい。理由は2点ある。NHKが政治家に「弱い」のは、NHKの予算審議などは政治マターだからである。放送法では、NHKの経営委員会メンバーは衆参両院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することになっている(16条)。しかも、事業予算(平成17年度6687億円)も国会承認制である。従って、何かにつけてNHKの幹部は国会議員に「ご説明」をする。国会議員とすれば、説明を受ければ、「ところで…」と意見も言う。その意見が見方によっては「関与」にもなる。つまり、取り沙汰されている国会議員の関与問題は構造的なのだ。
もしこのままNHKの受信料が不払いが拡大し、今後、経営のあり方をめぐって抜本的な論議がなされるなら、民営化案も俎(そ)上に載ることは間違いない。いみじくも、ことし3月15日の衆院総務委員会のNHK予算審議で民主党の委員が受信料の不払いが増えていることに関連して、「もうNHKは国営化か民営化だろう、そういう意見が(民主党内で)強い」と述べている。NHKの民営化というのは国会議員の間ではすでに視野に入っているのである。
経営のあり方の論議がなされれば、関与の問題も当然出てくる。国営化ではさらに関与が深まることになり、ましてや「小さな政府」の流れで国家公務員を増やすことはないだろう。まず有権者が許さない。若者はNHKを見ていないのである。選択肢は民営化に大きく傾きつつある。この流れを読んで、「番組でもめた」安倍氏、中川氏らが関与問題を逆手に取って民営化の口火を切るのではないかと推測する。
もう一つの理由は、NHKが持つ莫大な映像コンテンツである。経団連が「仕切り役」となってこの3月、テレビ業界や芸術・文化団体と権利調整し、番組コンテンツ(ドラマ)をブロードバンドで配信する際のライセンス料(情報量収入の8.95%)が設定された。この取り決めが一つの基準となり、東京キー局は競うようにネット配信に乗り出している。ところが、おそらく民放の何倍もの映像資産を持っているNHKは動けないのである。なぜか。民放がNHKの「業務拡大」を警戒しているのだ。NHKサイドでも受信料でつくった番組を有料でネット配信することに躊躇している。
なかなか動かないNHKの背中を押したいと思っているのが、番組コンテンツの流通を市場として育てたいと苦心している経済産業省だ。この番組コンテンツ市場は本丸のNHKが参入しないことには弾みがつかない。この意味でNHKの民営化というのはタイムリー、まさに渡りに船なのである。その経済産業省の大臣が中川昭一氏である。以上が、私がNHKの民営化に向けて口火を切るは安倍氏であり中川氏かもしれないと推測した理由である。
⇒13日(木)朝・金沢の天気 はれ