2005年 10月 9日の投稿一覧

☆アートな古民家

☆アートな古民家

     私のオフィスである金沢大学五十周年記念館「角間の里」にいろいろな才能を持った市民ボランティア「里山メイト」や大学のスタッフが集まる。中でも、女性たちがさりげなく創作している作品に見とれることがある。

    オフィスに入る際にくぐる「のれん」がある。里山メイトの女性グループがつくってくれた。ガーゼのような柔らかい布地に藍染めをほどこしたのれんだ。そののれんには、絣(かすり)などの古着の布でつくったトンボが3匹つけてある。のれんなのだが、私の目には秋晴れの空を泳ぐトンボを描いたコラージュ作品と映る。こののれんをくぐるとき、私は大空に飛び込むような気持ちになる。そして、柔らかな布地がほほに当たる感触はまるで雲に入ったような感じだ。そして癒される。

   「角間の里」の土間から見る部屋の前の廊下に、ひときわ香りのよいキンモクセイが生けられた。香りもさることながら、障子の板戸、キンモクセイ、甕(かめ)、藍染めの敷き物、柿渋で磨いた廊下を組み合わせ。この4つのエレメントで構成されるスケール感のある生け花だ。だから、美術館や会社の受付玄関に置いても見栄えはしない。土間のある築280年の古民家だからこそ華やぐ。

   こうした作品がさりげなく置かれるたびに、私は鑑賞する喜びを感じる。そして彼女たちも作品づくりが楽しそうだ。故・中川一政画伯の作品集「いのち弾ける!」(二玄社)の一文を思い出した。「目に見える形はかれる。目に見えない形はかれない」。作品より、創造への意欲や着想が湧き上がることが芸術にとって大切だ、との意味だろう。芸術論を語るつもりはない。「角間の里」という建物は、人の創作意欲や着想をちょっと刺激してくれる雰囲気のある空間だ、と言いたかったのである。

⇒9日(日)午後・金沢の天気  はれ