2005年 9月 21日の投稿一覧

★民放とNHK、近未来の視界

★民放とNHK、近未来の視界

   テレビ業界をめぐる動きが急だ。そして、近未来の姿が見えてきたようだ。ソフトバンクがテレビ番組のインターネット配信に乗り出す方向で、テレビ朝日やフジテレビなど民放キー局5社と調整を進めていることが明らかになった。来春めどに専用サイトを開設し、ユーザーが好きな時にネットを通じて番組が視聴できるビデオオンデマンド方式を採用。収益はサイトの広告収入がメインで、一部番組の有料化も検討しているとう。USENのブロードバンド放送「Gyao」(ギャオ)のビジネスモデルを追いかけるかっこうとなる。

   配信コンテンツはニュースやスポーツ番組が中心で、著作権処理が済み次第、バラエティーやドラマも加えていく。ソフトバンクは民放キー局と組むことで、コンテンツ配信事業を拡大。民放キー局はこれまでの系列ローカル局以外に番組販売料を稼ぐことができ、収益源の多様化につながるというわけだ。

   このニュースを見て、おそらくローカル民放の経営陣は背筋に寒いものが走ったに違いない。再び「ローカル局の炭焼き小屋」論が脳裏をよぎった経営者もいることだろう。何しろ民放キー局のキラーコンテンツ(視聴率が取れる番組)が見たいときに見ることができるようになれば何も決まった時間にテレビにチャンネルを合わせる必要がなく、テレビ離れが起きる。そしてローカル局は細々と自社制作の番組をつくり続けるしか生き残る術(すべ)はなくなる。TVメディアにおける炭焼き小屋論だ。

   ましてローカル民放は来年12月までに莫大な投資(民放連試算で45億円)を伴うデジタル化をスタートさせなければならない。このタイミングで放送(キー局)と通信(インターネット)の融合のスピードが加速度的に進めば、特にローカル局に配分されているスポンサーの広告宣伝費はさらに通信へとシフトしていく。キー局の経営陣はローカル局のこうした焦燥感をどれほど理解しているだろうか。

   NHKも悪いスパイラルに陥った。橋本元一会長はきのう(20日)、一連の不祥事による受信料不払いの拡大などを受けた新たな経営改革計画「新生プラン」を発表したが、このニュースを見て共感した視聴者はいるだろうか。それどころか、受信料の支払い拒否・保留130万件に対して、支払いを法的に督促することを正式に明らかにし、960万件にも上る未契約の人に対しても民事手続きを導入する構えを示した。身から出たサビで237億円の減収(上半期)となり、法的な強硬手段で訴えるという。

   一般の視聴者の反応はどうか。答えは簡単、「それならNHKはスクランブル化を導入せよ」だ。実際にテレビを見なくなっている世代や層が増えている。その人たちを納得させるのは並大抵ではない。つまるところ、「見る見ない」の判断はスクランブルが一番納得できる。しかし、スクランブルを導入すれば、拒否者は130万件どころではなくなる。劇薬というより毒薬になる可能性もある。

   法的手段と同時に、NHKは来年度から3年間で全職員の10%にあたる1200人を削減すると発表した。これをまず実行して、未払い・保留の視聴者の理解を得るのが本来の姿、つまりソフトランディングだろう。法は最終手段だ。

⇒21日(水)午後・金沢の天気 くもり