★女子学生も悩んだ選挙

土壇場になって1人現れた。女子学生でマスコミに関心があるという。さっそく記者に連絡、取材が始まった。学生がさらに友人を誘って2人が取材に協力することになった。彼女たちはのべ3日間、記者といっしょに公示の日の候補者の第一声や選挙カーでの地区回り、ミニ集会などをつぶさに見て、若者の視点から感想を述べる、記者はそれを記事にするという手法で「【総選挙05】大学生は見た!」の選挙企画になった。
その触りを紹介する。10日付は選挙終盤の様子だ。以下は抜粋。「台風一過の8日、選挙カーの後ろについて回った。公示日と比べて、候補者の印象は変わったか。大勢の応援弁士と一緒に話していた第一声に比べると、各候補とも少人数で回っていた。住宅地の小さな路地まで入り込み、わずかな人の前でもマイクを握る候補者を見て、『意外と地道な活動なんだ。高いところからでなく、同じ目線で話すと、どの候補も身近に感じる』と感心した様子。」。彼女たちが見た路地裏の候補者たちの様子である。
その後、2人の学生はそれぞれの政党のマニフェストを比べて感想を述べ合ったりと選挙の争点について考えていく。そして考えれば考えるほど深みにはまり、2人は「1人の候補を選ぶのって大変なんだ。誰を選ぶか、考えれば考えるほど、一票の重みを感じる」と感想を漏らすに至る。記事のクライマックスはここにある。記者は彼女たちのこの一言を待っていたのだ。もう一度、「一票の重みを感じる」。
そう、選挙(選択)は真面目に考えればそれだけ難しくなる。そして我々の生活や未来のことを想えばまた一段と難しくなる。「一票は重い」のである。
学生が選挙を通じてメディアと接触したことで、人間社会のもっともリアリティのある部分(戦い)というものを目の当たりにした。ここで選挙と政治を考察したり、投票行動における人間心理というものを考えたり、あるいはマスメディアの取材手法そのものに興味を持ったかもしれない。選挙を通じさまざまな知的な欲求の端緒を見出してくれればよい。私が彼女たちを記者に紹介した理由はこの一点だ。
総務省が発表した9日現在での期日前投票者数(小選挙区)は672万5122人になった。過去最高だった前回衆院選(2003年11月)の不在者投票の669万人をすでに上回り、最終的な投票者数は前回比25%増の836万人(有権者全体の8.1%)に達する見通しという。大変な盛り上がりだ。「政治を変えてやる」という有権者の意識の現れと、私はこの数字を見る。今回のコラムの結論はない。ただ、「9月11日」で日本の政治史の1ページが書き換えられるような気がしてならない。
⇒11日(日)朝・金沢の天気 曇り