2005年 8月 の投稿一覧

★流しそうめんと選挙

★流しそうめんと選挙

    旧盆も終わり、あいさつ文は「残暑お見舞い」となった。先日、学生が流しそうめんのキットをつくった。キャンパスの山林から調達した竹でつくったなかなかの優れものである。問題はどうやって数㍍もある竹を真っ二つに割いたか、である。まず、ナタで円の面を割く。その後、棒を裂けた部分に差し込んで金槌で棒の両端叩きながら割いていく。一気に割くと真っ二つにならなら場合もあるので結構慎重さを要する。

     そうしてできた竹に水を流し、そうめんを上流から手のひらに乗るくらいの分量で流していく。水流が速すぎるとキャッチが難しい。加減というものがある。流しそうめんでポイントはつけタレだろう。水切りが十分にされないまま食べるとすぐタレが薄まってしまう。そうめんをよく振って水を落としてから食べるのだ。右利きの人は水の流れる方向の右側に座った方がよい。箸で流れを棹差すようにして待ち構え、そうめんが箸に絡まるタイミングを見計らって一気にすくい上げる。これがコツだ。

     ところで竹を割ったように、スパっと自民は割れた。郵政民営化反対のドン、綿貫民輔氏と亀井静香氏らが新党を旗揚げすることになった。党名は「国民新党」という。傑作なのはその活動方針だ。「小泉恐怖政治の打破」「破壊でない真の改革」である。どこかの国のように、大統領権限を振りかざして民政を圧迫するのであれば恐怖政治とも表現できようが、総理が解散権を行使し、対立候補を立てたくらいのことを恐怖政治と称しては「言葉の愚弄」となる。語気を強め、他人が嫌悪する言葉を吐いても、誰にも意図するところは伝わらない。

    新党の結成で、綿貫氏の地盤、富山3区の自民党県連は胸をなでおろしているだろう。綿貫氏は富山県の自民党のドンでもある。無所属で立候補した場合、これまでのことを恩義に感じあるいは義理立てして応援に回る人もいる。しかし、新党となると話は別である。「オレは自民党だから、他党は支持できない、従って綿貫氏は申し訳ないが…」と支援を断る理由になる。県連もおそらく「他党を応援するのはよろしくない」とお触れを出すだろう。それにしても綿貫氏は78歳、新党の代表をよく引き受けたものだ。 冷静に考えれば哀れでもある。

    そうめんは好き嫌いが分かれる麺類である。うどんやそばとは違って食感が薄いからだ。それでも流しそうめんだと風流や涼感という別の要素が加わって食べる人は多い。新党も同じで「改革を断行しそうだ」などといった期待感やムードが醸成されれば、その党の候補者をよく知らなくても一票を投じるものだ。それがこれまでの民主党だった。ところが、その新味が民主党には感じられないという意見をよく聞く。実際、ブログを閲覧しても、そのような書き込みが多いのではないか。ましてや、綿貫氏や亀井氏の新党に期待感がわくだろうか。水分が抜けて絡まって食えないそうめんのような感じがするのだが…。

 ⇒17日(水)午後・金沢の天気  雨  

☆昔「勝手連」いまブログ選挙

☆昔「勝手連」いまブログ選挙

   終戦記念日の15日、小泉総理は東京の千鳥ケ淵戦没者墓苑に献花し、日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式にも出席したが、靖国神社への参拝は見送った。10日の「自在コラム」でも述べたように、衆院選で靖国問題が争点化するのを避けたいとの現実的な判断があったのだろう。

    ちょっと意地悪な見方をする。郵政民営化反対派の急先鋒、野田聖子氏は14日に夫の鶴保庸介氏(参議員)と靖国神社を参拝した。私はこの「夫婦参拝」を小泉総理を15日に参拝させるためのおびき出し作戦ではなかったか、と見ている。「8月15日の靖国参拝」を公約に掲げて総理に就任した2001年、小泉総理は中国の反発に配慮して8月13日に参拝した。このとき野田氏は「総理の初心が変節されたのか。いつもの歯切れの良さとは異なり、総理ご自身が日程変更の理由を明確に説明されなかったことを私は残念に思っています」(野田氏ホームページ)と批判している。そこで夫婦参拝を前日に行うことによって、「郵政民営化の公約にそれほどこだわるなら、8月15日参拝の公約も守ってよ」と挑発したのではないかとの推測だ。真意はどうであれ、小泉総理は動かなかった。

    小泉総理のこうした徹底した「郵政」争点化の狙いは的中している。最新のTBS系列のJNN世論調査(13、14日実施)によると、内閣支持率は59.3%、不支持は39.8%である。解散直後の各メディアの内閣支持率は50%前後だったから、日ごとに支持が高まっているとの印象だ。有権者にとっては、小泉総理が自ら軍旗を掲げて関が原の戦いに臨む武将のイメージと重なり、実に分かりやすい。要は「西か東か」、つまり「民営化賛成か反対か」なのである。

    この分かりやすさで、内閣支持率を押し上げているのはインターネットのブログではないかと思う。争点がはっきりしているので、ブログのテーマになりやすい。つまり書き手自らの旗色を鮮明にしやすい。しかも、善玉と悪玉と言っては語弊があるが、両陣営の顔が見えてキャラクターも立っている。こんなにストリーが読める面白い選挙はかつてない。そこで、たとえば「小泉陣営=郵政民営化賛成」に共感したある人がブログを書いたとする。そのブログに50人のアクセスIP数(訪問者数)があり、読んでくれたとすると、乱暴な言い方かもしれないが、「50人のミニ集会」が成立したと同じことにならないか。

    かつて「勝手連」や「草の根」と言われた無数の選挙サポーターがいまブログという手法で参戦しているのではないか。総務省の調査だと、2005年3月末時点の国内ブログ利用者数は延べ335万人、アクティブブログ利用者(少なくとも月に1度はブログを更新しているユーザ)数は95万人いて、日々その数は増えている。今回いろいろなブログをざっと見てみると、「郵政民営化賛成」が多い。このブログ・サポーターが世論形成のベースにいて、内閣支持率を押し上げている要因の一つになっているように思えてならない。もちろん数字的な裏付けはない。ただ、ピーク時に比べ減ったものの「小泉内閣メールマガジン」は160万人に配信されている。しかもそのメルマガは200号を数えた。毎週配信されるメルマガで小泉総理の言動をウオッチし共鳴するコアなサポーター層も存在するのである。

    選挙後こうしたブログ現象と選挙結果が分析され、リンクしていたことが評価されると、「ブログはメディアにのし上がった」と一気に脚光を浴びる。評価されなければ、単なる個人日記にすぎない。

⇒16日(火)朝・金沢の天気   晴れ    

★「キャッチコピー」で読む選挙

★「キャッチコピー」で読む選挙

     きのう(14日)は衆院解散後初めての日曜日とあって、NHKや民放の朝の討論番組は選挙一色だった。今回の一連の流れをメディアに焦点を当て注意深く読んでみると、メディアで報じられた登場人物の「言葉の魔力」というものを感じる。「自民党をぶっ壊す」「殺されてもいい」が注目された衆院解散、その直後の総理会見で「ガレリオは『それでも地球は動く』と言った、私は『それでも郵政民営化は必要だ』と言いたい」と述べ、内閣支持率を一気に上げた。前から言われていたが、小泉総理はキャッチコピーの名人だ。

    ところが、郵政民営化反対派からもキャッチコピーは発せられるものの「名人」がいない。反対のドン・綿貫民輔氏は、すべての反対者の小選挙区に自民が対抗馬を立てることについて「小泉さんは織田信長。罪のない子女まで殺した比叡山・延暦寺の焼き打ちと似てきた」と。綿貫氏はもともと神主だから「宗教弾圧」をイメージして言葉を発したのだろうけれども、視聴者や読者で「延暦寺の焼き打ち」と聞いてピンとくる人はそう多くない。これでは印象に残らない。もう一人の亀井静香氏はきのう、自民から非公認とされた反対派の受け皿とする新党結成について、番組の中で「どうやったら仲間が一人でも生き延びていくか。無所属がいいか、新党でいくべきか、結論は出していないが」と語った。強気の面構えだったが、言葉はすでに萎(な)えていた。視聴者は敏感にそう読み取っただろう。

     では、野党はどうか。きのうは各番組とも与野党の党首討論を企画したが、自民は「マニフェストがまだ完成していない」との理由で同じ討論のテーブルに着かず、野党だけが顔をそろえた。小泉総理に代わり、幹事長代理の安倍晋三氏や元副総理の山崎拓氏らが中継で顔を出していたが、欠席は自民の深謀だろう。野党は当然、年金改革はどうだ、靖国参拝はどうだと、論点を郵政民営化から外しにかかる。ましてや「8月15日」を前に野党から大声を上げられたら小泉総理も3対1で形勢が不利となる。テレビ出演は公の仕事でも義務でもない。もちろん「公の党首は国民に向かって説明する責任があるのでは」と番組プロデューサーは自民サイドと交渉を重ねたに違いない。しかし、命運がかかる「いくさ」を前にそのキャッチコピーがどれほどの説得力を持ったのか。

     番組で傑作だったのは、野党党首の討論の直後に出演した石原慎太郎東京都知事の発言だ。野党党首の発言を聞きながらスタジオの片隅で出番を待っていたので「つまんなかったから、眠くなったよ」と。さらに「(今度の選挙で)社民は消えるね、共産は減らすね」と。さらに亀井氏から新党の党首になってほしいとの要請があったことをあっさりと暴露し、「(亀井氏らは)私怨に満ちているよ」とも。短いフレーズながら、討論の感想と選挙分析、幻の新党の裏話がコミカルにそして鋭く刻み込まれていた。トータルの秒数にして20秒だったろう。言葉の力というのは表現もさることながら、タイミングとスピード感であったりする。

 ⇒15日(月)午前・金沢の天気  雨      

☆「選挙」上手の商売下手

☆「選挙」上手の商売下手

   9月11日の衆院選挙に向けて一番張り切ってきるのが小泉総理、二番目がNHKではないかと推測する。小泉総理は解散後の内閣支持率が50%前後と急上昇し、この勢いを過半数の議席確保(自民と公明で)につなげたいところだろう。NHKは去年7月に発覚した元チーフプロデューサーによる番組制作費の着服事件以来相次いで不祥事が発覚しており、なんとか得意分野の選挙報道で信頼回復をしたいと腕をさすっているに違いない。

    実際、NHKの選挙報道は民放テレビ局に比べ、開票速報のスピードや出口調査による当落の分析、選挙番組のボリュームなどにおいて群を抜く。だから、候補者が選挙事務所で万歳を行うとき、NHKの「当確」速報を確認してからというケースがままある。いくら民放が早々と「当確」を打っても候補者すら事務所に現れないこともある。また、視聴率も国政選挙ならばローカルでも20数%は稼ぐ。民放は最初からNHKを別枠にして「選挙番組の視聴率は民放で何位だった」などと広報したりする。

    受信料の不払い・保留件数が7月末現在で117万1千件にも達した。このままでいけば減収は年100億円にも上ることが予想され、秋の中途採用(40-50人)を取りやめると発表したほどだ。だから、降って沸いたような選挙だが、視聴者をNHKにクギづけして、「やっぱり皆様のNHKでしょう。そこで、受信料はお支払いください」とアピールするよいチャンスにしたいとNHK経営陣は考えているはずだ。

    しかし、選挙報道の上手は必ずしも商売上手にはつながらないようだ。NHKは公開番組の観覧申し込みについて、受信料を支払っている人に限定する措置を取るという。新聞報道によれば、9月27日放送分の番組「NHK歌謡コンサート」を東京・渋谷のNHKホールで収録する。応募者の中から抽選で1500組3000人に入場整理券を送るが、その前に応募はがきと受信料の契約台帳を照合し、支払いを確認するというのだ。人気歌手の鳥羽一郎や藤あや子が出演だから応募も多いだろう。

    どうやら「受信料を払っていない人でも番組が見られる」という不公平感や、「受信料を払っていない人が番組観覧できるのはおかしい」との声がNHKに寄せられたことによる措置らしい。が、不払い者締め出しは逆効果である。もともと余分な出費を抑えたいと思っていた人が一連の不祥事をきっかけに不払いに転じているのだ。最近は「隣が払っていないのなら私も」という便乗組も増えている。しかし、今は支払いを渋っていても、これらの人の中にはNHKの努力によって支払いを再開する人もいるはずだ。努力とはNHK営業マンによる戸別訪問とか、優良な番組を提供することによる信頼の回復である。ところが、支払う者と不払い者を選別すると、選別された側は強制力を持った法律でも出来ない限り、一生不払いになる。

    むしろ、番組観覧を有効に使えばいいのである。厳選に抽選して、その中に不払い者がいればNHK職員が持参して「抽選の結果当選しました。つきましては受信料もお願いします」と一言添えて入場整理券を手渡せばいい。新聞社は新規読者を開拓するためにこのような地道な努力をしている。選別は反感を買うだけだ。

⇒14日(日)夜・金沢の天気  雨

★金沢を描くということ

★金沢を描くということ

      画家で金沢美術工芸大名誉教授の百々(どど)俊雅さんと同大教授の小田根五郎さんの絵画展「金沢百景展」(8月11日-16日)が金沢市武蔵町の「めいてつエムザ」で開かれている。

    2001年から2004年まで足掛け4年にわたって、北陸朝日放送で放送された番組「金沢百景」で紹介された身近な風景を描いた油絵やパステル画を含む150点を中心に展示している。金沢の伝統的な街並みに加え、JR金沢駅前や新県庁舎、新しい商店街にも百々さんと小田根さんの目線が優しいタッチで注がれている。一枚一枚を眺めていると、金沢の街を散策した気分になる。

   かつて、2人をテーマにしたスペシャル番組の収録で、絵画制作の苦労話などうかがう機会があった。その中で印象に残るエピソードをいくつか。小田根さんが金沢の古い民家を描いていた。すると、家の女性が出てきて、「絵描きさんに描いてもらえるほどの価値があるのならこの家を残そうと思います」と言う。跡継ぎの女性は改築して保存しようか、いっそうのこと壊して新築しようかと迷っていた。小田根さんの真剣な眼差しを見て、女性は保存を決心したそうだ。

    百々さんは白髪の長身だから目立つ。路肩で描いていると、「ご苦労さまやね」とわざわざお茶を差し入れてくれたりする人もいる。弁当忘れても傘忘れるなーといわれるくらい金沢の天気は変わる。百々さんは雨が降っても絵が描ける場所を確保することに苦心した。屋根の下、橋の下、ビルの中、商店街のアーケードとありとあらゆる避難場所を探す「雨傘名人」となった。金沢市内でざっと100ヵ所にも。北陸・金沢でスケッチをするにはこういうことが話題になる。

    絵画展の会場では絵はがき=写真=も販売されている。ちなみに、左から県立音楽堂、金沢城二の丸、金沢城石川門である。また、番組と同名の「金沢百景」という書籍もある。変形A4判で132ページ、能登印刷出版部の発行で、会場ほか石川県内の主な書店で2700円で販売されている。

 ⇒13日(土)午後・金沢の天気  曇り

☆ドン綿貫氏の選挙の行方

☆ドン綿貫氏の選挙の行方

  すさまじいばかりの「民営化反対派つぶし」、と思われて仕方がないくらいに小泉総理は対立候補の擁立に躍起である。これに対し「安政の大獄か。意見が違う者を全部抹殺する気か」(亀井静香氏)や、「ヘビのように執念深い」(綿貫民輔氏)と感情をむき出しにするのも理解できる。テレビの取材ならこの言葉はぜひほしいところだ。しかし、マスメディアの政治担当なら小泉総理の意図をこう読んでいるはずだ。「造反者」の選挙区にあえて対抗する候補者を出し、マスコミの「注目の選挙区」に仕立てる。これによって、郵政民営化に反対か賛成かの争点をさらにブラッシュアップする意図だろうと。東京10区の小林興起氏に対し小池百合子氏を、静岡7区の城内実氏に財務省の片山さつき氏をと話題性のある人物をカードとして次々と切っているのはこのためだ。

     ところで、小泉総理に一つのフライングがあった。きょう(12日)比例区南関東ブロックへの重複立候補はしない考えを党の選挙担当者に伝えた。総理はこれまで党神奈川県連の要請を受け入れ、比例と小選挙区の重複立候補の意向を表明していたが、公選法が禁じる事前運動に当たるため、総理が映った掲示済みの党のポスターを南関東地域からすべて撤去する必要があり取りやめにしたとか。公選法もさることながら、他県で「小泉」と書かかれた比例の無効票が続出しては損だ、との判断もあるようだ。

     先日、石川1区、馳浩(はせ・ひろし)氏の有力なサポーターと話をする機会があった。馳氏が退路を断って比例代表には重複せず、小選挙区のみ立候補をめざすと宣言したことに、ちょっと悩んでいた。「1万の票の差ですよ」と。前回2003年11月は投票率59%で民主の奥田建氏が99868票、馳氏97075票だった。両者が競った攻防のように思われるが、実は前回は馳氏の票には公明の支援票が8000票加算されていた。従って、2800票余りの差であるように見えても、馳氏にとっては10800票の差で敗れたに等しい。というのは、さらにその前回2000年6月は投票率64%で馳氏が107179票、奥田氏が100392票だった。この時は公明の支援票がなくても勝った。保守基盤の強い金沢で1万票余りを奪還するには時間もかかるがその時間が今回はないので、その有力サポーターは「無理せず、比例と重複したら…」と言う。しかし生真面目な馳氏のことである。前言を撤回せず名実ともに走り回って選挙戦を戦うだろう。

     それにしても郵政民営化反対のドン、綿貫民輔氏の富山3区の公認問題は結論が出ない。結局、自民県連は12日に県連役員が上京して、党本部に対し、比例を含め3人が公認申請している現状を報告することにした。これでは県連そのものが分裂すると窮状を訴えるためだ。しかし、党本部の武部幹事長は11日午前の会見でも都道府県連が郵政民営化法案に反対した議員の公認や推薦を申請してきても絶対に受け付けない考えを強調していて、富山県連との協議に党本部が応じるかどうか…。なぜなら、綿貫氏の対抗馬となりそうな萩山教厳氏(前回比例単独)は亀井派に所属しているが、郵政法案には賛成した。党本部とすれば、「敵陣」で踏ん張った人物である。萩山氏にこそぜひ小選挙区にくら替え出馬させ、綿貫氏に戦いを挑んでほしいところだろう。少々地味だが「注目の選挙区」となる。

     「対抗馬」だの「敵陣」だのと書いていると、まるで関が原の合戦前夜の時代小説でも書いているような気分になる。そして、ここ数日の「自在コラム」へのIPアクセス(訪問者数)が普段の2倍にもなっている。タイトルに「選挙」と入れているから検索で引っかかってくるのだろう。このブログサイトが混み合うくらい情報が行き交っている。かつての「草の根選挙」に代わる、日本における初めての「ブログ選挙」となるかもしれないと私は注目している。

⇒12日(金)午後・金沢の天気  雨

★退路断つ、選挙の人生模様

★退路断つ、選挙の人生模様

   きょう(11日)届いた「小泉内閣メールマガジン第200号」の「総理メッセージ」で、小泉総理は郵政解散の意義をこう述べている。以下は抜粋。

   約400年前、ガリレオ・ガリレイは、天動説の中で地球は動くという地動説を発表して、有罪判決を受けました。そのとき、ガリレオは、「それでも地球は動く」と言ったそうです。今、国会では「郵政民営化は必要ない」という結論を出しました。「それでも郵政民営化は必要だ」と私は思います。私はもう一度国民の皆さんに聞いてみたいと思います。本当に郵便局の仕事は公務員でなければできないのか、民間人でやってはいけないのかと。

                   ◇

   今回の「解散・総選挙」を流れを見て、高校時代に世界史をかじった人ならこんなシーンをイメージしたかもしれない。1917年3月、食糧危機から暴動が起こり、ロシアの皇帝ニコライ2世が退位し、ロマノフ朝は滅亡する。翌4月16日にレーニンが亡命先スイスからペトログラードに帰還、4日後に「4月テーゼ」を発表し、「すべての権力を会議(ソビエト)へ」と声明を発する。11月、第2回全ロシア労働者・兵士ソヴィエト大会が開催され、革命に反対するメンシェビキと社会革命党右派は大会から退場した。ボルシェビキが圧倒的多数を占め、ソビエト権力の樹立が宣言された。ここで採択されたのが、地主による土地所有を廃止する「土地に関する布告」であった。レーニンを小泉総理、土地を郵政と置き換えて考えると面白い。あくまでも政治のダイナミズムを考察する上での一つのイメージである。理論づけではない。

今回の総選挙でさまざまな人間模様が交錯している。前回、石川1区で民主の奥田建氏に敗れ、比例代表で当選した自民の馳浩(はせ・ひろし)氏は、今回は比例代表の退路を絶って小選挙区一本で選挙を戦いたいと決意を述べた。前回敗れたとき、「自分は甘かった」と随分後悔していた。今回は、比例代表を担保することなく、小選挙区で勝負しようというのである。これはこれで覚悟が見えて潔い。逆に小泉総理は比例代表に疑問を投げかけ、これまで神奈川11区の小選挙区のみに立候補していた。今回は比例と重複出馬を決めたようだ。知名度が抜群の小泉氏が比例にも回れば大量得票が期待できる。信念ではなく実利を得る。

    郵政民営化反対の頭目、綿貫民輔氏の富山3区は悩ましい。綿貫氏は自民県連の重鎮である。今回の比例の萩山教厳氏と綿貫氏がともに県連に公認申請している。党本部へも綿貫氏へも義理立てしなければならない県連の心境はいかばかりか。綿貫氏は78歳である。この年齢もまた悩ましい。

⇒11日(木)午後・金沢の天気   くもり  

☆選挙プロのある読み

☆選挙プロのある読み

  新聞を丹念に読む人であるならば、きょう(10日)の紙面を読んで「勝負はついた」と判断しただろう。そして、選挙を実際に何度か指揮した、あるいは選挙情勢の分析に長けたいわゆる「選挙のプロ」ならば、「さて、8月15日に小泉総理はどう動くか」と思いをめぐらせていることだろう。

  新聞各紙はきょう一斉に世論調査を掲載した。共同通信が郵政民営化の否決と衆院解散が決まった8日から9日にかけて実施した内閣支持率は47.3%、7月の調査に比べ4.7ポイントのアップだった。衆院解散は54.4%が「良かった」と評価されている。同じく朝日新聞の調査は、内閣支持率が46%、7月の調査に比べ5ポイントのアップ、衆院解散に48%が「賛成」である。内閣支持率は40%が「上々」、50%が「磐石」と言われている。従って、小泉総理は総選挙を行わなくても「すでに勝利」しているのである。もちろん内閣支持率が小選挙区での議席獲得にダイレクトに結びつくわけではない。

  この共同通信と朝日新聞の世論調査で数字の差が出た点が大きく分けて2つある。一つは、自民党内の郵政民営化反対者のいわゆる「造反組」に対し、共同の調査では52.5%が「理解できる」としているのに、朝日では「共感する」が34%しかいない。これは「理解」と「共感」の設問の語感から取れるニュアンスの違いだろう。「共感」はより踏み込んだ「理解」の意味で、そこまでは評価できない、ということになる。もう一つ、選挙でどの政党の候補者に投票する意向かの調査項目で、共同は1位の自民が37.4%だったのに対し、朝日は1位の自民が29%と8ポイントも差がついている。これは朝日のアンケート調査にきちんと答えようとする人たちの意識の差、つまり「自民嫌い」が共同より多いとも取れる。

  きょうの新聞紙面で傑作だったのは、この世論調査の結果発表と民主党の岡田代表の記者会見の内容を並べたことだ。「内閣支持率47%に上昇」の見出しの脇で、下のほうに「岡田代表、政権取れなければ辞任」の見出し。見出しを流し読みすると、岡田代表の敗北宣言との印象になる。新聞ではたまにこうした妙な並べ方がある。岡田氏が読んだら目を白黒させるに違いない。

  ところで注目すべきポイントは、小泉総理は8月15日に靖国神社に参拝するか否か、である。私の友人(選挙のプロ)の見立てはこうだ。選挙がなければおそらく小泉総理は15日に参拝する。しかし、選挙になったので参拝の可能性はなくなった。なぜか。選挙の争点がぼけるからである。世論調査でも、67%が郵政民営化が選挙の争点としている。争点がくっきりと浮かび上がっている。この意味で、小泉総理の思惑が的中したと言ってよい。そこへ一石を投じるがごとく靖国参拝をするだろうか。選挙の定石から言えば、焦点ぼかしになるような行動は得策ではない。

  現に、朝日の世論調査では「小泉総理は靖国参拝を続けた方がよいか」との設問に「よい」が41%、「やめた方がよい」が47%となっており、二つに意見が分かれる。ということは総理の参拝が一気に争点化する可能性もあり、わずかながらでも「やめた方がよい」とする意見がある以上は選挙にもマイナスの作用に働くと見たほうがよい。つまり、小泉総理の靖国参拝は9月11日まではないと見るべきだろう。むろん筋論で言えば、戦後60周年の節目こそ8月15日の参拝に意味がある、だから総理の参拝はある、との見方も根強い。参拝の是非論は別として、選挙と靖国参拝をどう読むか。

⇒10日(水)夕・金沢の天気  晴れ  

★「郵政選挙」と農村の風景

★「郵政選挙」と農村の風景

   随分とすっきりしたのではないか。小泉政権の命運を賭けた郵政民営化法案が参院本会議で、足元の自民からの大量造反で否決されたことを踏まえ、衆院解散・総選挙へと一気に展開した。衆院選の日程は8月30日公示、9月11日投開票と決まった。今回は、前回(2003年10月)の「マニフェスト選挙」などといったある種のムードではなく、「郵政民営化は是か非か」という争点がはっきりした選挙なので分かりやすい。従って、無関心層やシラケ組も多く投票率は低いだろう。

   なぜ「すっきり」としているのか。「大辞林」(三省堂)によれば、「すっきり」とは「よけいなものがなく、あかぬけしているさま」「煩わしいことがなくて、気持ちのよいさま。さっぱり」「筋が通っているさま。わかりやすいさま。はっきり」などの意味がある。私はこの場合の「すっきり」を「煩わしいことがなく…」の意味で使いたい。この意味の使用例として「腐れ縁を切って…(と)した」をよく使う。小泉総理は衆院本会議で反対票を投じた自民の37人を公認しない方針だ。14人の欠席・棄権者は郵政民営化に関する意向を確認し、明確な賛成者だけを公認するという。そうした、ピュアな自民党で選挙に勝って郵政民営化法案を再提出するという戦略だ。つまり、足を引っ張る民営化反対者との腐れ縁を切りたいのである。この意味で「すっきり選挙」と名付けたい。

    写真は小泉総理が腐れ縁を切りたいと願っている反対論者の頭目、綿貫民輔氏の選挙地盤である富山県五箇山の菅沼合掌集落である。世界遺産に指定されているだけあって、手前の溜め池、合掌造り、背後の山並みの景色は日本人の心の故郷のようにも想う。綿貫氏はよく「民営化で山里の郵便局がなくなる云々」というフレーズを使う。綿貫氏の山里とは、選挙地盤でもあるこの風景なのである。もう一人の反対論の急先鋒、荒井広幸氏も福島県の農村に生まれた。

    綿貫氏にしても荒井氏にしても、この美しい農村を郵政民営化という資本主義の波で洗ってはいけないという発想が根底にあるのではないか。尊王攘夷か佐幕かで血で血を洗った明治維新も確固たる理論戦でぶつかったというより、前に進む者と、守ろう(既得権ではない)とする者のイマジネーションのぶつかり合いだったと考えられなくもない。

    明治維新を論ずるのは本意ではない。ズバリ、どの党がどう勝つのかである。今回の総選挙が民主党に有利に働くかといえば決してそうではない。争点が「郵政民営化、行財政改革、小さな政府」だから、むしろ民主は郵政民営化に反対の分だけ不利となる。もともと民主党には民営化賛成の議員もいたのである。神奈川県知事になった松沢成文氏のように。支持層の中にも民営化シンパは相当いると推測する。そこで、有権者が「なぜ、民主は反対なのか」と自問して出す答えが、労組の存在である。それは自分が考える民主のイメージとは違うではないか、と思い始めたとたんに心がさめる。民主は相当難しい論点整理の必要性に迫られる。これを間違うと、綿貫氏らと同類と見なされるだろう。

⇒9日(火)夕・金沢の天気  晴れ  

☆イチロー選手の言葉

☆イチロー選手の言葉

   全国高校野球選手権の第2試合をテレビで観戦すると結構忙しい。7日の第2試合は地元・石川の遊学館と秋田の秋田商だ。まず地元民放のHAB北陸朝日放送にチャンネルを合わせた。カメラワークはABC朝日放送(大阪)だが、実況と解説はHABがやっている。HABの場合はローカル大会の1回戦から実況し、そして甲子園に臨んでいるので、地元チームの実況となると裏局のNHKとは思い入れが随分違うのである。ともあれ、HABは11時50分に全国ニュースに入り、チャンネルはNHK総合に。今度はNHK総合が11時54分にニュース&天気に入るためにNHK教育に。HABの全国ニュースが終わる12時00分にはNHK教育からHABに戻って、と10分間に3回の「チャンネルサーフィン」となる。

    試合は遊学館が秋田商を8-6で振り切った。遊学館らしい固め打ちで大量点を築いた。1回裏、遊学館は相手エラーの1アウト1、3塁で4番鈴木のタイムリーが出て1点、5番井原も2点タイムリーで3点を先制した。5回にも2点。7回には3番江川のタイムリーなど4本のヒットで8-1と大きくリードを広げた。上位打線がきっちりと仕事をした。先発は、去年甲子園のマウンドを経験しているエース曽根だった。8回までよく投げ、2番手の番匠と交代、9回の1アウト満塁のピンチに再びマウンドに登りよく踏ん張った。初戦の功労者は曽根だろう。

    しかし、私はむしろ秋田商の健闘を称えたい。3回表で、ローカル大会を一人で投げ抜いたエースの佐藤が走塁中に送球を頭(右こめかみ)に受けて負傷し交代した時、どれほどの動揺が選手に走ったことか。そして、8-1とリードされながらも8回に2点、9回に2度も満塁のチャンスをつくり、2点差にまで迫った。試合を投げたそぶりは誰も見せなかった。アメリカ大リーグ、マリナーズのイチロー選手の口癖は「負けている中でも粘りがないと、次の可能性は見えてこない」だ。最後までチャンスを狙うマインドが大切だ、との意味だろう。エース負傷という予期せぬアクシデントの逆境の中で粘りに粘った、「次の可能性」を感じさせるマインドの高いチームなのだ。

    遊学館の2回戦は8日目の第1試合(予定では13日)、宮城の東北と対戦する。あのダルビッシュはもういない。去年の雪辱を果たしてほしい。

⇒8日(月)朝・金沢の天気 晴れ