☆「選挙」上手の商売下手

実際、NHKの選挙報道は民放テレビ局に比べ、開票速報のスピードや出口調査による当落の分析、選挙番組のボリュームなどにおいて群を抜く。だから、候補者が選挙事務所で万歳を行うとき、NHKの「当確」速報を確認してからというケースがままある。いくら民放が早々と「当確」を打っても候補者すら事務所に現れないこともある。また、視聴率も国政選挙ならばローカルでも20数%は稼ぐ。民放は最初からNHKを別枠にして「選挙番組の視聴率は民放で何位だった」などと広報したりする。
受信料の不払い・保留件数が7月末現在で117万1千件にも達した。このままでいけば減収は年100億円にも上ることが予想され、秋の中途採用(40-50人)を取りやめると発表したほどだ。だから、降って沸いたような選挙だが、視聴者をNHKにクギづけして、「やっぱり皆様のNHKでしょう。そこで、受信料はお支払いください」とアピールするよいチャンスにしたいとNHK経営陣は考えているはずだ。
しかし、選挙報道の上手は必ずしも商売上手にはつながらないようだ。NHKは公開番組の観覧申し込みについて、受信料を支払っている人に限定する措置を取るという。新聞報道によれば、9月27日放送分の番組「NHK歌謡コンサート」を東京・渋谷のNHKホールで収録する。応募者の中から抽選で1500組3000人に入場整理券を送るが、その前に応募はがきと受信料の契約台帳を照合し、支払いを確認するというのだ。人気歌手の鳥羽一郎や藤あや子が出演だから応募も多いだろう。
どうやら「受信料を払っていない人でも番組が見られる」という不公平感や、「受信料を払っていない人が番組観覧できるのはおかしい」との声がNHKに寄せられたことによる措置らしい。が、不払い者締め出しは逆効果である。もともと余分な出費を抑えたいと思っていた人が一連の不祥事をきっかけに不払いに転じているのだ。最近は「隣が払っていないのなら私も」という便乗組も増えている。しかし、今は支払いを渋っていても、これらの人の中にはNHKの努力によって支払いを再開する人もいるはずだ。努力とはNHK営業マンによる戸別訪問とか、優良な番組を提供することによる信頼の回復である。ところが、支払う者と不払い者を選別すると、選別された側は強制力を持った法律でも出来ない限り、一生不払いになる。
むしろ、番組観覧を有効に使えばいいのである。厳選に抽選して、その中に不払い者がいればNHK職員が持参して「抽選の結果当選しました。つきましては受信料もお願いします」と一言添えて入場整理券を手渡せばいい。新聞社は新規読者を開拓するためにこのような地道な努力をしている。選別は反感を買うだけだ。
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