☆選挙プロのある読み

新聞各紙はきょう一斉に世論調査を掲載した。共同通信が郵政民営化の否決と衆院解散が決まった8日から9日にかけて実施した内閣支持率は47.3%、7月の調査に比べ4.7ポイントのアップだった。衆院解散は54.4%が「良かった」と評価されている。同じく朝日新聞の調査は、内閣支持率が46%、7月の調査に比べ5ポイントのアップ、衆院解散に48%が「賛成」である。内閣支持率は40%が「上々」、50%が「磐石」と言われている。従って、小泉総理は総選挙を行わなくても「すでに勝利」しているのである。もちろん内閣支持率が小選挙区での議席獲得にダイレクトに結びつくわけではない。
この共同通信と朝日新聞の世論調査で数字の差が出た点が大きく分けて2つある。一つは、自民党内の郵政民営化反対者のいわゆる「造反組」に対し、共同の調査では52.5%が「理解できる」としているのに、朝日では「共感する」が34%しかいない。これは「理解」と「共感」の設問の語感から取れるニュアンスの違いだろう。「共感」はより踏み込んだ「理解」の意味で、そこまでは評価できない、ということになる。もう一つ、選挙でどの政党の候補者に投票する意向かの調査項目で、共同は1位の自民が37.4%だったのに対し、朝日は1位の自民が29%と8ポイントも差がついている。これは朝日のアンケート調査にきちんと答えようとする人たちの意識の差、つまり「自民嫌い」が共同より多いとも取れる。
きょうの新聞紙面で傑作だったのは、この世論調査の結果発表と民主党の岡田代表の記者会見の内容を並べたことだ。「内閣支持率47%に上昇」の見出しの脇で、下のほうに「岡田代表、政権取れなければ辞任」の見出し。見出しを流し読みすると、岡田代表の敗北宣言との印象になる。新聞ではたまにこうした妙な並べ方がある。岡田氏が読んだら目を白黒させるに違いない。
ところで注目すべきポイントは、小泉総理は8月15日に靖国神社に参拝するか否か、である。私の友人(選挙のプロ)の見立てはこうだ。選挙がなければおそらく小泉総理は15日に参拝する。しかし、選挙になったので参拝の可能性はなくなった。なぜか。選挙の争点がぼけるからである。世論調査でも、67%が郵政民営化が選挙の争点としている。争点がくっきりと浮かび上がっている。この意味で、小泉総理の思惑が的中したと言ってよい。そこへ一石を投じるがごとく靖国参拝をするだろうか。選挙の定石から言えば、焦点ぼかしになるような行動は得策ではない。
現に、朝日の世論調査では「小泉総理は靖国参拝を続けた方がよいか」との設問に「よい」が41%、「やめた方がよい」が47%となっており、二つに意見が分かれる。ということは総理の参拝が一気に争点化する可能性もあり、わずかながらでも「やめた方がよい」とする意見がある以上は選挙にもマイナスの作用に働くと見たほうがよい。つまり、小泉総理の靖国参拝は9月11日まではないと見るべきだろう。むろん筋論で言えば、戦後60周年の節目こそ8月15日の参拝に意味がある、だから総理の参拝はある、との見方も根強い。参拝の是非論は別として、選挙と靖国参拝をどう読むか。
⇒10日(水)夕・金沢の天気 晴れ