★「郵政選挙」と農村の風景

なぜ「すっきり」としているのか。「大辞林」(三省堂)によれば、「すっきり」とは「よけいなものがなく、あかぬけしているさま」「煩わしいことがなくて、気持ちのよいさま。さっぱり」「筋が通っているさま。わかりやすいさま。はっきり」などの意味がある。私はこの場合の「すっきり」を「煩わしいことがなく…」の意味で使いたい。この意味の使用例として「腐れ縁を切って…(と)した」をよく使う。小泉総理は衆院本会議で反対票を投じた自民の37人を公認しない方針だ。14人の欠席・棄権者は郵政民営化に関する意向を確認し、明確な賛成者だけを公認するという。そうした、ピュアな自民党で選挙に勝って郵政民営化法案を再提出するという戦略だ。つまり、足を引っ張る民営化反対者との腐れ縁を切りたいのである。この意味で「すっきり選挙」と名付けたい。
写真は小泉総理が腐れ縁を切りたいと願っている反対論者の頭目、綿貫民輔氏の選挙地盤である富山県五箇山の菅沼合掌集落である。世界遺産に指定されているだけあって、手前の溜め池、合掌造り、背後の山並みの景色は日本人の心の故郷のようにも想う。綿貫氏はよく「民営化で山里の郵便局がなくなる云々」というフレーズを使う。綿貫氏の山里とは、選挙地盤でもあるこの風景なのである。もう一人の反対論の急先鋒、荒井広幸氏も福島県の農村に生まれた。
綿貫氏にしても荒井氏にしても、この美しい農村を郵政民営化という資本主義の波で洗ってはいけないという発想が根底にあるのではないか。尊王攘夷か佐幕かで血で血を洗った明治維新も確固たる理論戦でぶつかったというより、前に進む者と、守ろう(既得権ではない)とする者のイマジネーションのぶつかり合いだったと考えられなくもない。
明治維新を論ずるのは本意ではない。ズバリ、どの党がどう勝つのかである。今回の総選挙が民主党に有利に働くかといえば決してそうではない。争点が「郵政民営化、行財政改革、小さな政府」だから、むしろ民主は郵政民営化に反対の分だけ不利となる。もともと民主党には民営化賛成の議員もいたのである。神奈川県知事になった松沢成文氏のように。支持層の中にも民営化シンパは相当いると推測する。そこで、有権者が「なぜ、民主は反対なのか」と自問して出す答えが、労組の存在である。それは自分が考える民主のイメージとは違うではないか、と思い始めたとたんに心がさめる。民主は相当難しい論点整理の必要性に迫られる。これを間違うと、綿貫氏らと同類と見なされるだろう。
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