2005年 6月 16日の投稿一覧

☆虫愛でる少年たち

☆虫愛でる少年たち

   子供たちは随分ひ弱になったと言われる。たとえば、ここ金沢大学角間キャンパスの「里山自然学校」に遊びにやってくる子供たちの中には、虫を見ただけでフリーズしてしまう子もいる。4月の終わりごろ、附属幼稚園の子供たちが遠足の休憩に立ち寄った。トイレに入った男の子が便器に向かった途端にズルズルと後ずさりし、「なんで虫がいるのだ」と悲鳴を似た声を上げた。便器の中にカメムシが一匹歩いていた。男の子はこのカメムシに仰天し、オシッコもせずにその場を立ち去った。

    家の中に虫がいてはいけない、というのが最近の家庭の風潮だ。だから、ゴキブリを捕獲するのにあちこちに「粘着性のある虫取り箱」を仕掛け、ダニを駆除するために浴びるほどの殺虫剤をまいている。虫さえいなければ清潔だと思っている。その結果、ヒステリックなまでに「虫嫌い」の子供たちが家庭内で培養されている。
  
   逆に「虫を愛でる」子供たちを紹介する。里山自然学校で活動する子供たちの中で、金沢市子ども科学財団の面々はひと味違う。先日、昆虫採取の会が開かれ、小学生を中心に30人が集まった。虫取り網を持たせても右に斜めに構えてウオーミングアップするその姿は実に頼もしい。採取にいざ向かおうという時、雨が降り出した。指導者が「カッパを着よう」と言うと、「カッパなんか着たら動きが鈍くなって虫が捕れないよ」と言い出す子供がいた。確かにそうだ。いざ、虫取りが始まると、まるでハンターだ。ほれぼれするくらいに身のこなしが速い。男の子も女の子もである。 
 
   「成果物」を持ち寄っての標本づくりも慣れた手つきだ。一方で、昆虫採取に飽き足らず、近くのビオトープにジャブジャブと入っていき、クロサンショウを見つけて歓声を上げる子もいる。この子たちがこのまま大きくなれば生物学者や生態学者に成長するのではないか、と予感させた。

   きのうNHK金沢放送局の夕方のワイド番組で里山自然学校から生中継があり、子ども科学財団の子供たちを紹介した。上の写真は、本番前にもかかわらず、ビオトープに集まり観察する子供たちの姿である。もう一枚は中継のために持ち寄った自慢の昆虫標本(ミヤマカラスアゲハほか)だ。

   虫アレルギーの子供もいれば、昆虫学者の卵のような子供もいる。私は2つのタイプの子供たちを見てきた。もし大人が、前者のような子供たちしか見ていないとすれば、日本の将来を不安に思う違いない。

⇒16日(木)午前・金沢の天気 曇り