★バーチャルを出よ
作家・村上龍氏の近未来小説「半島を出よ」が話題になっている。北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、続いて輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧する。彼らは「反乱軍」を名乗り、財政破綻し国際的孤立を深める日本がパニックに陥るという設定だ。村上氏には、何を話題にすれば「ミリオンセラーになるか」を見抜くクールなビジネス感覚がある。90年代の金融危機、日本人の自信喪失、学歴社会の崩壊、子どもの就業意欲などテーマ選定はどちらかというとジャーナリスト的かもしれない。小説のタイトルをもじった訳ではないが、今回は「バーチャルを出よ」をテーマにした。

きょう28日、金沢大学の角間キャンパスで「里山自然学校」の田植えがあった。市民ボランティアがキャンパスの谷間にあるかつての棚田を復元してくれた。そこに家族連れらが集って、田植えをしたのである。写真は苗床から自分が植える分の苗を取っている光景だ。この苗床でちょっとしたハプニングがあった。就学前と思われる男の子が田んぼに入ろうとしないのである。「ヌルヌルで気持ちが悪い。汚れる」と頑なに皆の誘いを拒否する。強制もできないので、しばらく様子を見ることにした。そして苗床にほとんど人がいなくなって、自分の身の処し方に困ったか、男の子は突然、田んぼに入り苗を取り始めたのである。

きょう28日、金沢大学の角間キャンパスで「里山自然学校」の田植えがあった。市民ボランティアがキャンパスの谷間にあるかつての棚田を復元してくれた。そこに家族連れらが集って、田植えをしたのである。写真は苗床から自分が植える分の苗を取っている光景だ。この苗床でちょっとしたハプニングがあった。就学前と思われる男の子が田んぼに入ろうとしないのである。「ヌルヌルで気持ちが悪い。汚れる」と頑なに皆の誘いを拒否する。強制もできないので、しばらく様子を見ることにした。そして苗床にほとんど人がいなくなって、自分の身の処し方に困ったか、男の子は突然、田んぼに入り苗を取り始めたのである。
いったん田に入ると、男の子は田植えに夢中になった。頑なに田に入るのを拒否していたときの顔と、田植えに夢中になっている顔が全然違うのである。時間にして30分ほどの時間差でこれほど生き生きとした表情になるのかと周囲が驚いたくらいだ。男の子は田に入ることを拒否したものの、どうしようか葛藤したはずだ。そして、自分で決断し、ヌルヌルの田に自ら入ったのである。
いまの子供達はテレビゲームなどバーチャルの環境に浸りきっている。バトルゲームであっても自分が苦痛や汚れを感じることはない。従って、内なる葛藤は存在しない。没頭するだけである。しかし、田植えなどの作業は疲労や汚れ、アンバランスなどリアルの感覚を伴う。しかし、人はリアルな場面に直面し、心理的葛藤を経て初めて解決の方法を創造していくことができる。これが精神的成長だ。この男の子がたどった心理的なプロセスはおそらくこのようなことだったのだろう。そして、「半島を出よ」で北朝鮮の特殊部隊に立ち向かっていく若者たちも戦場のリアリティーを目の当たりにし、戦いに挑んでいくのである。
→28日(土)午後・金沢の天気 晴れ