⇒メディア時評

☆防衛力強化で増税ならば まず政治家自らが襟を正すべき

☆防衛力強化で増税ならば まず政治家自らが襟を正すべき

   防衛力強化の財源をめぐり、岸田総理が1兆円強の増税で賄うと表明したことが物議をかもしている。メディア各社によると、高市経済安保担当大臣は「防衛力強化の中身より先に財源論が出たので驚いた」と述べ、元自衛隊員の自民党の佐藤元外務副大臣も「防衛力の中身を説明する前に増税では順番が違う」と苦言を呈した。さらに党内部から、「運び方が雑すぎる。全く理解できない」(大塚衆院議員)や「岸田総理の発言に真っ正面から反対して、防衛増税という考え方そのものに反対する」(青山参院議員)などの声が上がっている。おそらく、有権者の多くも同感ではないだろうか。

   有権者の目線で言うと、そもそも削るべき予算が多々ある。2022年度の一般会計総額は107兆5900億円で、10年連続で過去最大だ。この巨額の資金はいったい何に使われ、未来の成長や社会の安心につながる中身となっているのか疑問に思っている有権者も多いのではないか。

   たとえば、政党から政治家個人に渡る「政策活動費」は、使い道を明らかにしなくていい「領収書がいらない」政治資金だ。朝日新聞Web版(11月27日付)によると、同社が2002年から2021年の政治資金収支報告書を集計したところ、自民党の「政策活動費」は20年で総額約379億円となっており、5年にわたって幹事長を務めた二階氏には、合計で50億6000万円が渡っていた。また、国会議員には給与とは別に毎月100万円の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)が支払われている。これも領収書不要、残金の返金をしなくてよい。(※写真は、参院代表質問に答える岸田総理=10月7日のNHK総合)

   領収書もいらない不透明な政治資金そのものに有権者は疑心暗鬼の念を抱いている。増税をするのであれば、政治家が自ら襟を正し、政策活動費の透明化と削減を行うと表明してから、増税を国民に問うべきではないか。自民党内部からも、「運び方が雑すぎる」との声が上がっているが、まさにその通りと納得する。総理とあろうものが簡単に増税を口にすべきでない、と言いたい。

⇒12日(月)夜・金沢の天気 はれ

☆FIFAワールドカップ日本惜敗 メディア報道あれこれ

☆FIFAワールドカップ日本惜敗 メディア報道あれこれ

   FIFAワールドカップ・カタール大会トーナメント戦での日本戦の報道を見ていて、一番悔しい思いをしたのは新聞メディアではないだろうかと憶測した。何しろ、クロアチア戦は日本時間の6日深夜の戦いだったが、締め切りを延長すればなんとか6日付の朝刊に対戦結果を掲載できた。しかし、PK戦にまでもつれ込んだために締め切り時間に間に合わず、ひと晩明けたけさの朝刊で各社が一斉に報じることなった=写真=。

   もちろん、きのうは夕刊での記事掲載もあったが、夕刊の購読世帯数は少なく、大手紙の場合は夕刊を発行していない地域エリアもある。そのため、きょうの朝刊で本編掲載のような紙面づくりをせざるを得なかった。

   スペイン戦は日本時間で今月2日午前4時にキックオフ、終了は午前5時53分だった。この時間は朝刊配達の時間でもあり、最初から結果の掲載は見送ったのだろう。そしてクロアチア戦は6日午前0時にキックオフ。通常の試合ならば、前後半それぞれ45分、ハーフタイムの15分を含めて午前1時45分には試合は終わる。これだったら紙面に間に合う。

   ところが、トーナメント戦では必ず勝敗をつけるルールがある。今回は延長戦で前後半各15分の試合が行われ、それでも決着がつかずPK戦で勝敗をつけことになった。6日付の地元紙の朝刊は「日本1-1で延長へ」と伝えている。逆算すれば、午前1時50分ごろまで締め切りを待ったが、延長戦となってはこれ以上は待てないと判断したのだろう。結局、クロアチア戦の終了は午前2時43分だった。新聞社の周辺のごく一部地域でしか結果を朝刊に掲載できなかったのではないか。新聞メディアの限界がここにある。 

   一方で、数字を稼いだのはテレビ局だった。ロイター通信Web版(6日付)によると、6日未明にフジテレビが中継したクロアチア戦の平均世帯視聴率は関東地区で34.6%、関西地区で33.1%だったことが、ビデオリサーチの調査(速報値)で分かった。瞬間最高視聴率は関東が38.3%、関西が36.8%だった。2日早朝に同じくフジテレビが生中継したスペイン戦は、午前5時から午前6時10分までの日本が逆転した試合後半中心の平均世帯視聴率は28.7%だった。

   ネット中継も数字を稼いだ。全64試合を日本で無料生中継しているテレビ朝日系のABEMAでは、ドイツ戦の視聴者数が1000万人、コスタリカ戦は1400万人、スペイン戦は1700万人、そしてクロアチア戦は延長前半時点で2000万人を突破した(6日付・日刊スポーツWeb版)。

   新聞、テレビ、ネットの特性がFIFAワールドカップを通じて浮き出た。新聞メディアが時代遅れと言っている訳ではない。新聞は試合の多様な解説記事を掲載している。テレビにもネットにも追随できないコンテンツではある。

⇒7日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆あられの朝 ドーハの歓喜再び

☆あられの朝 ドーハの歓喜再び

   きょうは騒がしい朝を迎えた。何しろ、一時バシャバシャとまるで土砂降りのような音がした。あられだった。登校途中の児童たちは傘を差したまま立ち止まっていた。怖かったのだろう。金沢で初あられ。

   あられが降り始めると、物理学者で人工雪を世界で初めてつくったことで知られる中谷宇吉郎の言葉を思い出す。「雪は天から送られた手紙である」。雪の結晶は空の温度や湿度によりさまざまなカタチに変化する。逆に、地上で雪の結晶を観察すると空の様子が分析できる。まるで、雪は天空から地上に送られてくるメッセージだと。いよいよ雪の季節がやってきた。

   もう一つの騒がしさ。テレビメディアは再び「ドーハの歓喜」だ。サッカーのワールドカップカタール大会。グループEの日本は、第3戦でスペインと対戦し2-1で勝って1次リーグ2勝1敗とし、決勝トーナメントへの進出を決めた。正直な話が、FIFAランキング24位の日本が、7位のスペインに勝てるとは思えなかった。午前4時という試合時間も厳しく、中継番組の視聴はあきらめた。きょう午前7時30分ごろに冒頭の土砂降りのようなあられの降りに目覚めて、寝床でスマホを見て勝利を知った。

   日本はドイツ、スペインを押しのけ、グループ1位で16強に躍り出た。朝からのテレビ番組では、「アジアが、日本サッカーが世界の舞台で戦っていけるということ。大きな自信につながる。うれしい」と、歴史的な一歩を刻んだ森保監督の声が繰り返し流されていた。

   日本は決勝トーナメントの1回戦でグループFの2位のクロアチアと対戦する。試合開始は日本時間で6日午前0時の予定。この時間だったら、なんとか視聴できそうだ。

⇒2日(金)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★「天然能登寒ぶり」プロジェクト立ち上がる

★「天然能登寒ぶり」プロジェクト立ち上がる

   今回は能登寒ブリの話題。能登で水揚げされる天然の寒ブリをブランド化する試みがきょう1日から始まった。能登半島の中ほどにある七尾湾で今朝、水揚げされたうちの1本が第1号の「煌(きらめき)」に選ばれ、金沢港市場での初競りで400万円で競り落とされた。

   「煌」ブランドは、能登などで水揚げされる寒ブリのうち、重さが14㌔以上で傷がなく、鮮度管理が徹底されていることなどが条件となる最高級品で、石川県漁業協同組合が認定する。きょう能登沖の定置網などで水揚げされた522本のうち、審査で1本が認定された。「煌」第1号は重さ15.5㌔で体長94㌢の大物だ。例年、寒ブリは比較的高値がついても15万円から20万円なので、ブランド化によって今回は20倍ほど値が上がったことになる。

   競り落としたのは金沢や能登地方でスーパーを展開する「どんたく」。同社公式サイトによると、金沢の西南部店でお披露目があるというので行ってきた。15㌔の大物だけあって、どっしりした体つき=写真=。店員に「いつさばくのか」と尋ねると、あす2日にさばき、3日に西南部店と七尾市のアスティ店で刺し身や寿司として限定販売するとの返答だった。

   県漁協ではあす2日から、珠洲、能登、七尾、金沢の4ヵ所の市場で「煌」の認定作業を行い、画像や重さなどをインターネットで共有し、電子入札する「共通入札制度」を始める。また、11月6日に解禁されたズワイガニ漁でも、石川県内の雄の加能ガニについてブランド「輝(かがやき)」が初競りで100円で落札されている。雌の香箱ガニも「輝姫」として30万円の最高値が付いた。重量や鮮度、資源管理への積極的な取り組みなどの厳しい認定基準でブランド化が進む。

   海産物だけでなく、農作物のブランド化も各地で進んでいる。ブランド化は、競争力の強化を狙って、他の商品と差別化することを意図した名称やデザインなどを指す。ただ、海産物や農作物は自然条件に左右されるだけに、品質が規格化されにくい。寒ブリの「煌」はきょうは1本しか出なかった。それでも、いったん「天然能登寒ぶり」のプロジェクトを立ち上げた限りは、あすの2本、あさっての3本を求めて地道にブランド化作戦を続けるしかない。

⇒1日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆ドーハの美徳「来た時よりも美しく」

☆ドーハの美徳「来た時よりも美しく」

   サッカーのワールドカップ・カタール大会で23日、日本代表がこれまで4度の優勝経験を誇る強豪のドイツ代表に逆転で勝利を治めた。「ドーハの奇跡」とまで称され歓喜に沸いた。アメリカのスポーツ中継メディア「CBS Sports」は公式サイトで「Japanese fans help clean up trash at stadium following Japan’s upset win over Germany」の見出し=写真=で、ドイツに逆転勝利の後、日本人サポーターたちが勝利を祝う前にハリーファ国際スタジアムのごみ掃除を行ったと伝えている。

   CBSは詳細に伝えている。日本人サポーターたちは、開幕戦(現地時間11月20日)のカタール対エクアドル戦が行われた後、自分たちの国が参加する試合でもないにもかかわらず、スタジアムのスタンド席に置き去りにされていたボトルや食べ残しを拾い、ごみ袋に入れる姿が見られた。バーレーンのあるインフルエンサー氏が、サポーターの行いを映像で記録し、自身のインスタグラムで共有した。インフルエンサー氏はこのサポ-ターになぜごみを片付けるのを手伝ったのかと尋ねた。すると、そのサポーターは 「私たちは日本人で、ごみを残さないし、この場所を尊敬している」 と語った、と伝えている。

   この記事の反響として、SNSでは「You can’t hate on countries like japan. Wonderful people and beautiful country.」(日本のような国を憎むことはできない。素晴らしい人々と美しい国)と称賛している。

   小学生のころに、「来た時よりも美しく」という言葉を習う。遠足に行き、帰る際にはごみ拾いなど清掃をする。日常でも帰りに教室を清掃する。最初は道徳を実践的に習っているのだが、この精神は年を重ねると社会の課題解決や付加価値の高いモノづくりのモチベーションへとつながる。そして、大人社会では古くから伝えられる近江商人の心得「三方よし」という言葉を習う。売り手、買い手、作り手・社会がそれぞれが納得して利を得る。これが横つながりの共生社会や公共の福祉の理念へと結びつく。

   「来た時よりも美しく」の精神は世界のスポーツの場でも輝きを放つ。

⇒25日(金)午前・金沢の天気     はれ

☆コロナワクチン接種 打つか打たないかの自分事

☆コロナワクチン接種 打つか打たないかの自分事

   前回ブログで、自身のコロナワクチン接種4回目(8月)の副反応のことを記した。接種の翌日に小刻みに体が震える症状が出て、キードボードを打つことさえできなくなった。数分して震えが治まったものの、それ以来、「アナフィラキシー症状だったのか」と気になっていて、5回目接種の案内が市役所から届いたものの、万が一のことを考えて接種を控えることにした。

   たまたまブログをチェックしてくれた知人からは「医者と相談して決めたら」とメールが届いた。また、ブログでは「ベクルリー等の治療薬が在りますので医師に相談して接種した方が良いですよ」とコメントが寄せられた。ブログでそのように「意思表明」をしたので、後には引けないと思っている。しかし、接種しなかったことから、感染しやすくなるのではないかとの不安もよぎる。そして、夜にコロナ治療薬に関するニュースが入った。

   加藤厚労大臣は午後7時すぎの記者会見で塩野義製薬が開発したコロナ治療薬「ゾコーバ」について、国内での製造販売を緊急承認したと発表した。 承認されたのは、口から飲む錠剤タイプの抗ウイルス薬で、国産初の軽症者向けの新型コロナ治療薬となる。

   メディア各社によると、ゾコーバは北海道大学と塩野義製薬の共同研究でつくられ、コロナウイルスが増殖するのに必要な「3CLプロテアーゼ」という酵素を阻害することで、コロナウイルスの増殖を抑える効果がある。重症化リスクを抱えた患者や軽症・中等症患者を対象に実施した臨床試験で改善効果があった。

   このニュースに前のめりになったのは、ワクチン接種の有無にかかわらず効果があるということだった。5回目ワイチンを打たないと決めた自身にとっては、「もし、コロナに罹ったら、これだ」と励まされた気分になった。

   ただ、緊急承認は感染症などの際に医薬品を迅速に使えるようにするための制度なので、いわゆる「仮免許」のようなもの。承認期限は1年で、再審議で有効性を「確認」できなければ取り消される。また、塩野義は今後も有効性と安全性のデータを集める必要がある。

   これまでコロナ感染はワクチンを打てば大丈夫とまるで他人事のような感覚でいたが、5回目接種をどうすべきかと思慮するうちに自分事のように実感がわいてきた。

⇒23日(水・祝)午後・金沢の天気    くもり時々あめ  

☆BBC放送100年 視聴者目線でサバイバル

☆BBC放送100年 視聴者目線でサバイバル

  このコラムでよくBBCの記事を取り上げる。たとえば、2021年5月4日付のWeb版で「Covid: Japan town builds giant squid statue with relief money」の見出しで能登半島の「イカの町」で知られる能登町のイカのモニュメントを紹介していた=写真=。そこでブログでは、なぜ、グローバルメデアィアのBBCが能登の小さな町のモニュメントを取り上げたのかと探った。

   記事は国内の新聞メディアなどが「パンデミックが収束しない中で、巨大イカに多額の資金を費やしている」と行政を批判した記事がベースだった。が、写真が大きく、モニュメントそのものに記者の目が向いたのだろう。なにしろ、欧米ではタコやイカをデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」と称して忌み嫌う人も多く、話題性に富んでいる。そこに目をつけた。BBCの報道の後、フランスのAFP通信、アメリカのニューヨーク・タイムズなども追いかけるように取り上げた。

   また、2020年5月にテレビ番組に出演していた女子プロレスラーがSNSで誹謗中傷を受け自死した問題を、海外メディアとしていち早く取り上げたのはBBCだった。2020年5月23日付のWeb版で、「Hana Kimura: Netflix star and Japanese wrestler dies at 22 」の見出しで  「彼女の死のニュースについて、ファンや関係者は、サイバーいじめとその精神衛生上の影響について多くの声を上げている」と論評していた。女子プロレスラーが出演する番組が動画配信サービス「ネットフリックス」で流されていたことから世界でもファンがいた。

   BBCのニュースの取り上げ方で感じるのは、グローバルメディアにありがちな上から目線ではなく、視聴者の目線に徹している、ということだ。そもそも、BBCはイギリスの国営メディアで、1922年11月14日にラジオ放送を開始し、ちょうど100年になる。経営のベースは「受信料」だ。なので、視聴者に「見たいものがないので受信料を払いたくない」と言わせたくないために、報道姿勢として視聴者目線を重視しているのではないだろうか。

   ただ、インターネット動画配信サービスの普及もあり、受信料制度の見直しが検討されているようだ。「BBCの受信料一律徴収の制度は2027年にも終了となる可能性がある。代わり視聴状況に応じて受信料を徴収する制度の導入などが検討されている」(6月28日付・ロイター通信Web版日本語) 。ネットの時代、放送環境はますます厳しくなっていくだろう。BBCのような視聴者目線こそ、放送メディアの生き残りのカギではないだろうか。

⇒14日(月)午前・金沢の天気   くもり

★「どん底」内閣支持率36% 「危険水域」あと7ポイント

★「どん底」内閣支持率36% 「危険水域」あと7ポイント

   岸田内閣はいつまでも持つのか。7日付の読売新聞の世論調査(今月4-6日)によると、内閣支持率は36%と内閣発足以降で最低となった。前回調査(10月1、2日)は45%だったので、9ポイントも下落したことになる。不支持率は50%で前回46%より4ポイント上昇した。不支持の理由では「政策に期待できない」33%、「首相に指導力がない」24%と続いている。政党支持率も自民党は33%で前回より7ポイント落ち込んでいる。

   TBSなどJNN系列の世論調査(今月5、6日)でも内閣支持率は39.6%と3か月連続で過去最低を更新し、初めて40%を下回った。不支持率は57.7%だった。読売、JNNの世論調査ではっきり読めるのは、支持率下落の主な要因は政治家と世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)の関係だ。自民党は旧統一教会と党所属の国会議員との関係を調査し公表したものの、有効対策に手が打てず、ようやく宗教法人法に基づく「調査」を行うことを表明した。

   読売調査では、これを「評価する」と答えたのは67%。そして、旧統一教会による被害者を救済するための法案を今国会で成立させるべきかどうかの問いには、「思う」が73%となっている。JNN調査でも、教団との関係をめぐり、山際経済再生担当大臣が辞任したが、そのほかの教団との関係を十分に説明していない大臣や政党幹部についても「辞任すべき」との答えは65%、宗教法人法に基づく調査で「政府は解散命令を裁判所に請求すべき」との答えは69%だった。

   以下は憶測だが、宗教法人法に基づく調査を「評価」67%となっているが、世論は「やっと重い腰を上げたか。はやくやれ」という意味合いを込めているのではないか。そして、細田衆院議長は旧統一教会側との関係を自民党調査の発表後に文書で公表しただけで、記者会見などは行っていない。「ズルズルべったり」の政治家と旧統一教会の関係について、世論の不信感は収まっていない。

   支持率は落ち始めると急カーブを描く。それが世論調査の怖さだ。メディア関係者の間では、読売の調査で内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売の内閣支持率は29%(2007年9月調査)、その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった。

   あと7ポイント下がれば「危険水域」だ。岸田総理の提案で、来年5月に広島市でG7サミットが開催される。果たして、岸田内閣はそのころまで持つのか。(※写真は、参院代表質問に答える岸田総理=10月7日のNHK総合)

⇒8日(火)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

☆「押せ 押せ」群衆雪崩は人為的な事故なのか

☆「押せ 押せ」群衆雪崩は人為的な事故なのか

   韓国・ソウル市内の繁華街・梨泰院で29日、ハロウィンイベントに参加した若者が押し倒されて154人が死亡、149人が負傷した事故(31日午前6時現在)。韓国の朝鮮日報Web版日本語(31日付)は、この群衆事故をめぐり、現場にいた目撃者や生存者たちの間で、誰かが故意に押したという証言が多数出ていて、警察は現場一帯の監視カメラ映像などを確保し、事故原因の究明に乗り出したと報じている。 

   記事によると、路地の上の方から「押せ! 押せ!」「もっと強く押せ」といった言葉が発せられた後、あっという間に列が下り坂で崩れたという。最初に押し始めた人たちに対する具体的な描写も出ていて、「5、6人の集団が押し始めた」「韓国人男性の集団に外国人も混じっていた」「ウサギのヘアバンドをした男性を捕まえなければならない」などの証言もある伝えている。

   また、事故の1分ほど前の映像では、人々でごった返しているものの、比較的円滑に通行していた。しかし、突然下り坂の上の方から人々が一度に押され始めた。このように押される現象は、映像の中で2、3度繰り返されている。証言が事実なら、故意に押し始めた人たちは刑事処罰を受ける可能性がある(朝鮮日報Web版日本語)。

   東亜日報Web版(31日付)も「“토끼머리띠 남성 무리가 ‘밀어! 밀어!’”…모아지는 증언들」の見出しで、ウサギのヘアバンドを着けた男たちが「押せ」と叫んでいたと多数の証言を記事にしている=写真=。

   殺人の意図はなかったにせよ、ウサギのヘアバンドを着けた男たちのグループが「押せ 押せ」と群衆をかく乱するように仕向けたとすれば、明らかに人為的な重大事故だろう。メディアの事故報道が先行しているものの、今後の韓国警察の捜査の展開が注目される。

⇒31日(月)午後・金沢の天気    はれ

★訴求力のある企業メッセージ

★訴求力のある企業メッセージ

   高校時代からの友人が「この上なく訴求力のある、すごい意見広告」とメールで送ってくれたのが、きのう24日付の読売新聞で掲載された、出版会社「宝島社」の見開きの全面広告の画像だった=写真・上=。確かに、インパクトのあるメッセージだ。「世界を敵にまわして、生き残ったヤツはいない。」

   図柄は麦畑の上は青空なので、ウクライナの国旗をイメージしている。ということは、ウクライナ侵攻で世界から非難を浴びているロシアのプーチン大統領に向けたメッセージと読める。人類は、いつまで同じ過ちを繰り返すのか、早期の戦争終結を訴えている。国連軍縮週間(10月24-30日)に合わせたメッセージ広告でもある。

   宝島社の見開き広告はこのほかにも印象深いものがある。2021年5月21日付は、「ワクチンもない。クスリもない。タケヤリで戦えというのか。このままじゃ、政治に殺される。」=写真・中=。戦時下の子どもたちの竹槍訓練の写真の真ん中に赤いウイルスがある。見ようによっては、国旗の日の丸の部分がウイルスになっている。

   キャッチコピーの下にある趣旨説明には、「この一年は、いったい何だったのか。いつまで自粛をすればいいのか。我慢大会は、もう終わりにして欲しい。ごちゃごちゃ言い訳するな。無理を強いるだけで、なにひとつ変わらないではないか」と、当時の菅政権への強烈な批判だった。

   2019年1月7日付は「敵は、嘘。」(読売新聞)と「嘘つきは、戦争の始まり。」(朝日新聞)の2パターンあった=写真・下=。
   「敵は、嘘。」はデザインがイタリア・ローマにある石彫刻『真実の口』だ。嘘つきが手を口に入れると手が抜けなくなるという伝説がある。「いい年した大人が嘘をつき、謝罪して、居直って恥ずかしくないのか。この負の連鎖はきっと私たちをとんでもない場所へ連れてゆく。嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ。」と解説があった。当時国会で追及されていた森友・加計問題のことを指していた。

   そして、「嘘つきは、戦争の始まり。」のデザインは湾岸戦争(1991年)のとき世界に広がった、重油にまみれた水鳥の画像だった。当時は、イラクのサダム・フセインがわざと油田の油を海に放出し、環境破壊で海の生物が犠牲になっていると報じられていた。この広告の掲載のときは、アメリカ大統領のトランプ氏が2017年の就任時からメディアに対して「フェイクニュース」を連発していた。為政者こそ軽々しく嘘をつくな、というメッセージだった。

   企業広告とは言え、読者の目線で気持ちを代弁するメッセージの数々に喝采を送りたい。

⇒25日(火)夜・金沢の天気    くもり