⇒メディア時評

☆JanJanからの手紙

☆JanJanからの手紙

 きょう8日、出張から帰宅すると、「日本インターネット新聞社」から封書が届いていた。「何だろうインターネット新聞社って。まさか架空請求書じゃないだろうな」と少々疑念を持ちながら封を切った。すると「編集委員選賞」の受賞のお知らせと図書カード(1000円分)=写真=が同封されていた。これで日本インターネット新聞社はインターネット新聞サイト「JanJan」を運営する会社だったことに気づいた。

  JanJanにはたまに投稿している。私が勤める金沢大学のイベントや、地域の話題など。今回、編集委員選賞に選ばれたのは6月14日に投稿した「マエストロ岩城の死を悼む」である。選ばれた理由は、記事の内容より、むしろタイムリーに投稿したためではなかったかと考えている。指揮者・岩城宏之さんの死去は13日、投稿は翌日だった。

  ところで、インターネット新聞といえば、日本ではJanJanが独走している。ここにきて強力なライバルが出現した。韓国で大きな影響力を持つインターネット新聞「オーマイニュース」の日本版が8月下旬にも立ち上がる。5月の記者発表で、編集長には元毎日新聞記者でジャーナリストの鳥越俊太郎氏が就任することが明らかに。さらに、日本語版を発行する現地法人のオーマイニュース・インターナショナル(東京)は、70%を韓国のオーマイニュース、30%をソフトバンクが出資している。ソフトバンクという強力なバックが存在するのだ。

  そのライバル出現をかなり意識してか、今回届いた封書には、「ぜひご参加ください」と呼びかけるパンフレットも同封されていた。同社の会社概要によれば、代表取締役は竹内謙氏(前鎌倉市長、元朝日新聞編集員)。ソフト開発大手の「富士ソフト」会長で創業者の野沢宏氏が取締役に、同じく取締役に岩見隆夫氏(毎日新聞社特別顧問)らが名を連ねる。

  競争はよい意味でお互いのレベルを高める。図書カードをもらったからではないが、エールを送りたい。

⇒8日(土)夜・金沢の天気  あめ

★「見せたくないTV番組」

★「見せたくないTV番組」

 先日、あるテレビ系列のキー局から事業報告書が郵便で届いた。放送業界の動向を理解するために株を持っている。送られてくる事業報告書はいわば株主向けの1年ごとの業績報告だ。それによると昨年度の売上高2493億円、経常利益173億円となっていて、ここ5年間でともに最高ある。この数字で見る限り、すでに株式公開(2000年10月)で得た手元資金でデジタル化を乗り切り、経済循環の好転を受けて巡航速度で母船(キー局)は走り出している、との印象だ。

   今回この話題を取り上げたのは、好調な業績に拍手を送るためではない。ちょっとした問題提起をしたかったからだ。事業報告書の3㌻目にテレビ放送事業という欄があり、レギュラー番組の中から高視聴率の番組が写真付きで紹介されている。少々違和感があったのは、火曜日夜9時の「ロンドンハーツ」である。「平均14%を超える高い視聴率をマークした」との説明がある。が、先月18日付の新聞各紙にはまったく反対の評価が掲載されている。

  その内容は、日本PTA全国協議会が小学5年生と中学2年生の保護者らを対象にした「子どもとメディアに関する意識調査」で、子どもに見せたくないテレビ番組の1位が3年連続で「ロンドンハーツ」、見せたい番組の1位は「1リットルの涙」だった。見せたくない理由は「内容がばかばかしい」「言葉が乱暴である」、と。

  PTAの調査内容をもう少し細かく紹介すると、「ロンドンハーツ」は親の12.6%が見せたくない番組に挙げ、素人参加のトーク番組「キスだけじゃイヤッ!」(8.3%)やバラエティーの「めちゃ×2イケてるッ!」(8.1%)を大きく引き離している。若者には14%を超える人気番組かもしれないが、子を持つ親には「二桁もの反感」を買っているのである。かつて見た番組の印象では、女性タレントが言い争うコーナー「格付けしあう女たち」が人気のコーナーだが、冷静に考えば、ギスギスした人間関係を助長し、「だからそれが何だ」と思いたくもなるシーンもままある。

  大学に勤める身だからといって、何も堅物になっているわけではない。実は、日本小児科学会は2004年4月、児童の言葉の遅れや表情が乏しい、親と視線を合わせないなどの症状を抱えて受診する幼児の中にテレビやビデオの長時間視聴する子どもがいることを指摘して、「2歳までのテレビ・ビデオ長時間視聴を控える」「授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止める」「子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パソコンを置かない」などの提言をまとめた。

  この提言以来、月刊誌「COMO」(主婦の友社)などの子育て雑誌には盛んに子どもの発達とテレビ、あるいはテレビゲームとのかかわについて特集が組まれるようになった。ちなみに最新の「COMO」(8月号)では「子どもとテレビ&ゲームどうつきあわせる?」の特集が掲載されている。子どもを持つ親は食の安全の問題と同等に、心の発達の問題としてテレビやテレビゲームに気を使うようになってきている。また、子育てを目的にしたNPOなどが提唱して、テレビを視聴しない日をつくる「ノーテレビデー」を実施する動きが各地で広がっているのだ。

 つまり、テレビが子どもに与える影響について親たちが深刻に考え、一部では行動を起こしていると言いたかったのである。

  テレビ局側は「頭の固いPTAが感情論で…」などと軽んじないほうがよい。子どもを持つ親たちは感情論ではなく、医学や発達心理学の論拠を得て理詰めで考えている。業を煮やしたPTA全協が「物を言う」一株株主になって、「3年間も連続でワースト1と指摘されているのに、なぜ改善しない。学童を持つ視聴者の声を聞け」などと突っ込んできたらどう対処するのだろうか。

 ⇒30日(金)夜・金沢の天気  あめ    

☆透けて見えるシナリオ

☆透けて見えるシナリオ

 その劇的な再会に水を差すつもりはない。だた、演出されたシナリオが透けて見える分、しらける。日本の新聞でも1面で掲載された、韓国人拉致被害者の金英男(キム・ヨンナム)さんと母親が28年ぶりに北朝鮮・金剛山で対面したニュースのことである。

 実は同じようなシーンは19年前にもあった。1963年5月、石川県能登半島へ漁に出たまま行方不明になり、87年1月に北朝鮮で生存が判明した寺越武志さんと、両親の太左衛門さん、友枝さんが再会(同年9月)した場面である。武志さんが不明となったのは中学生、13歳のとき。

 母と再会を果たしたものの、97年9月、武志さんはマスコミのインタビューで「自分は拉致されたのではない。遭難し、北朝鮮の漁船に助けられた」と主張した。その主張は、02年10月、39年ぶりに一時帰国し、故郷の石川の地を踏んだ10日間の滞在中も繰り返された。拉致疑惑を否定するために帰国したようなものだった。

  再会した親子はその後どうなっているのか。武志さんは朝鮮労働党党員で平壌市職業総同盟副委員長のポストにあるとされている。02年の帰国も職業総同盟の訪日団の一員として訪れたのだ。友枝さんがこれまで北朝鮮を訪れたのは30回以上。新潟に寄港する北朝鮮の貨客船「万景峰号」などを利用する。出発する前に武志さんから電話がかかり、土産のオーダーがある。ダンボールにして10数箱分。衣料や薬、食料など半端な量ではない。この様子は寺越さん母子をテーマにしたドキュメンタリー番組などで何度か見た。

  どれほどの量の土産が北朝鮮に持ち込まれるのか。こんな数字がある。今月25日に北朝鮮・元山に向けて新潟西港を出稿した万景峰号の乗客は217人、積荷の中の雑貨は151㌧だった(26日付・新潟日報)。雑貨を北朝鮮への土産とみなすと、1人当たりざっと700㌔である。

 以下は推測である。北朝鮮にいる肉親から仕送りを求める手紙や電話がある。求められた土産の中には、生活物資もさることながら職場の上司への「貢物」も多分に含まれているだろう。あるいは、日本に親戚がいることをいいことに、上司が土産を「指示」していることもあるだろう。日本に住む家族はそんなことも暗に理解しつつ、せっせと仕送りをする。こうなると、これは北朝鮮の「ビジネス・モデル」ではないか、と思ってしまう。

  各新聞記事によると、28日の面会時、英男さんは、母の崔桂月(チェ・ケウォル)さんらに拉致された経緯や北朝鮮での元妻の横田めぐみさんとの生活について一切語らなかったという。おそらく英男さんは韓国には帰国せず、寺越友枝さんのように母が北朝鮮を往復することになるだろう。土産を山ほど持って。

 ⇒29日(木)夜・金沢の天気  はれ

★バス代ランキング上位の理由

★バス代ランキング上位の理由

  ニュースの面白さというのは記事の長さだけでは測れない。そのニュースのバックグラウンドを読み手が理解できていれば、長短にかかわらず、「なるほど」とうなずけるものだ。書き手はそこまで意識して書いているのか、と逆に推測したりする。

   きょう25日の朝日新聞第2石川面の記事。「なんでもランキング」で1世帯当たりの年間支出額の統計(県庁所在地と政令指定都市など)から、タクシー代とバス代のランキングを上げていて、そのトップ(1位)がともに長崎市であるという解説記事を読んだ。で、そのランキングトップの理由は、坂道が多い街の地形による。長崎市はことし3月にプライベートで旅行をしたので、実感としてうなずける。坂道の街なので自転車の購入額は、長崎市が下から2番目という裏づけ記事も好感が持てる。

   少々不満に思ったのはバス代の支出額である。ランキングでは、1位は前出の長崎市なのだが、金沢市も9位にランキングされている。タクシー代とバス代は地形という事情から相関関係にあり、上位のランキングはほとんどだぶると思ったらそうでもない。上位10でだぶりがあるのは長崎を除いて2都市(札幌、神戸)だけである。バス代では福島、奈良、徳島などが金沢と並んで上位にランキングしてくる。ところが記事にはその言及がない。では、なぜなのだろうか。これは当地に住んでいる人は実感として理解できるかもしれない。バス運賃が高いのである。もっと有り体に言えば、地域交通の独占度が高いエリアだ。

   金沢市を例にとれば、民間のほぼ1社独占。JRバスも走ってはいるが特定路線のみ。だから高い。最近では100円で乗ることができる区間を設けたりして、その批判をかわす努力はしている。金沢大学のバス停を利用する特定区間でも「100円バス」を試験的に実施しているが、去年5月の同区間の利用は9420人だったのが、100円バスを実施したことし5月は26245人に伸びた。ざっと2.8倍である。バスの運賃が下がれば、利用者も増えるという証左である。通勤でバスを利用している身なので目に止まった記事かもしれない。

   もう一つ。そのランキングの下の記事。福井県が1口5万円(年利1.34%、1人当たり100万円限度)の新幹線債を発行した。すると10億円分が3時間半で売り切れた、というニュース。新幹線債は新幹線福井駅の建設に充てる。短時間で売り切れた理由の分析記事がないので、ここからは私見である。共働き率が高く年間世帯収入は全国一、失業率の低さも全国一、世帯当たりの貯蓄残高も全国一という福井県は経済的な充実度が高い。預貯金の額が多ければ、それだけ金利には敏感になる。現在の金利が低すぎる。それに比べ、県の公募債の金利1.34%は魅力である。この思惑がどっと「3時間半」の間に流れた。これは郷土愛のバロメーターなどではない。

 ⇒25日(日)夜・金沢の天気  くもり

★メディアの「あだ花」

★メディアの「あだ花」

 ゴッホらかつての画家は自然の花を描いた。アメリカのポップアートの旗手といわれたアンディ・ウォーホル(1928-87年)が描いた花はメディアの世界に咲く花だった。マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリー、ジョン・F・ケネディー…。しかし、彼のシルクスクリーンで描かれたのは華やかな花だけではない。メディアで騒がれた交通事故や人種暴動、ピストル事件、凶悪殺人犯ら徒(あだ)花も数多く描かれた。そして、ウォーホルはこんな言葉を残した。「人は誰でも、その生涯の中で15分間は有名になれる時代がくる」

 このウォーホルの「15分間」という言葉をそのまま映画のタイトルにしたのが「15ミニッツ」(2001年・ヘラルド)だ。先日、DVDで見た5年前の映画なのだが、なぜか鮮度が高い。現実が後からついてきているからだろう。

  映画のあらすじ。チェコ人とロシア人の二人組のギャングがニューヨークへやってくる。放火、殺人を重ねるギャングたちはバイオレンスの映像がアメリカのテレビ局に高く売れることに気づき、盗んだビデオカメラで殺人を撮影していく。彼らを追うのはニューヨーク市警の殺人課刑事(ロバート・デニーロ)と消防捜査官(エドワード・バーンズ)である。ギャングはその刑事の殺害をもビデオで収録しテレビ局に売り込む。「血が流れればトップニュース」とテレビ局のニュース・ショーは飛びつく。その映像が流される番組名が「15ミニッツ」。この殺人映像が放送された後、犯人は自首する。弁護士の巧みな世論操作によって、連続殺人犯はいつの間にか悲劇のヒーローのようになっていく。ラストシーンは消防捜査官が護送中の殺人鬼を銃で撃ち、殺害された刑事の無念を晴らす「あだ討ち」のカットだ。

  アメリカのテレビ局の歪んだ視聴率競争が映画のテーマになっている。が、もう一つ、犯罪をめぐる法律への問いかけも根底にある。映画では、殺人犯は罪を逃れるために精神異常者を装って自首する。精神病院に収容された後に、「自分は正気だ」と主張して社会復帰を狙う。アメリカでは二重処罰の禁止(=ダブルジョバディー法)があるから、同じ罪に問われないというわけだ。悲劇のヒーローとなった殺人鬼が「将来伝記を書いて、映画化権を売り巨万の富を得る」と豪語し、弁護士とその取り分を駆け引きするシーンがアメリカにおける法と民主主義の矛盾を鋭くえぐっている。

  冒頭のアンディ・ウォーホルに戻る。ニッポン放送株の売買を巡る「村上ファンド」のインサイダー取引疑惑で、村上世彰氏(46)と幹部らが週明けにも取り調べを受ける模様と新聞各紙が伝えている。その前は堀江貴文氏らの「ライブドア事件」だった。あたかもメディアが事件のシナリオを構成し、矢継ぎ早に展開しているようにも思える。だからメディアに咲く花の命は短い。ホリエモンは1年余りだったろうか。ウォーホルにはもう一つの有名な言葉がある。「僕は退屈なものが好きだ。まるっきり同じことが、幾度も繰り返されるのが好きなんだ」。15分間の徒花を咲かせてやまないメディアに向けた皮肉である。

 ⇒3日(土)夜・金沢の天気  はれ

☆続・韓国経済のキナ臭さ

☆続・韓国経済のキナ臭さ

  18日付「韓国経済のキナ臭さ」のタイトルで韓国経済についての朝鮮日報と中央日報の記事を紹介した。不動産バブルが弾けそうだが、金利の引き上げなどでバブルを沈静化させようとすると今度は、カード破産者が一気に増大し、ひいては金融破綻へと連鎖するのではないかというのがその主旨だった。偶然にも20日付の中央日報インターネット版(日本語)で、ノ・ムヒョン大統領が19日、「投機者によって全国不動産価格が高騰し、その結果、経済が深刻な状況になるというのに、政府がこれを放置できるはずがない」と述べ、大統領が不動産バブル崩壊の可能性について憂慮していると伝えている。

  これまで述べてきたのは、突き詰めれば金利の話だが、実は産業構造そのものが問題点を抱えている。キーワードは中国である。以下は20日付の朝鮮日報の記事だ。訪韓中のシンガポールのリー・クワンユー前首相が講演し、「20年後には中国が、現在韓国が行っているすべての産業を代替するようになる」「今は韓国の企業が中国に進出しているが、10ー20年後には中国が韓国に投資する時代が訪れる」とし、「中国がついてこられないような完全に新しい産業、新しい製品を絶えず開発しなければならない」との提言した。

  韓国が世界市場でシェア1位を占める品目は2003年には63品目だったが、04年には59品目に縮小した。逆に中国は760品目から833品目に拡大した。テレビや洗濯機のような家電製品を含む中級技術の分野では、すでに中国製にシェアを奪われている。しかも、移動通信、ディスプレー、2次電池などの先端分野でも2010年には韓国と中国の間の技術格差が1年分ほどに狭まる(朝鮮日報)、という。

  問題は技術だけではない。中国では生産過剰となっており、国内であふれかえった製品が世界市場へダンピングして売られ、韓国のシェアをさらに奪っている。たとえば、中国全体でおよそ3億㌧程の生産実績があるものの、その40%にあたる1億2000万㌧が過剰となっている。これが韓国製などとバッティングし、世界市場における価格の下落を招き、各国の企業収益を圧迫している。韓国では為替市場でウォン高が続き、輸出産業をさらに疲弊させている。

  こうした経済の負のスパイラルがジワリと大統領の支持率を下げている。03年4月で59.6%(韓国ギャロップ)あった支持率が上がり下がりを繰り返して最近では37.5%(東亜日報)。日本の小泉内閣の支持率は50%(ことし4月・朝日新聞)である。国が違うので比較にはならないが、直接選挙で選ばれた大統領の支持率が37.5%というのは、実感としてかなり低いのではないか。

  このところノ・ムヒョン大統領は「靖国、独島(竹島)」と外交面で声高に叫んでいる。しかしこれは、ナショナリズムを刺激して支持を訴え、内政上の経済失政(不動バブル、カード破産者の増大、輸出企業の疲弊など)を覆い隠そうとしているようにも見える。しかし、経済破綻を想定していまから手を打たないと、「日本の失われた10年」どころではなくなる。韓国の新聞記事を読みながら思ったことを2回に分けて記した。

 ⇒20日(土)午後・金沢の天気  くもり  

★韓国経済のキナ臭さ

★韓国経済のキナ臭さ

 韓国の新聞のインターネット版(日本語)をたまに読む。日韓関係がぎくしゃくしているので、隣は何を考えているのだろうかと思うからである。今月15日付、17日付の中央日報の記事を読んで外交以上に韓国の経済に関心を持った。

 17日付の記事。見出しは「アジア太平洋地域諸国のうち、ゴールドカードを最もたくさん使っているのは韓国人」。ビザカード・コリアによると、今年3月現在、韓国人が保有しているビザ・ゴールドカードは1400万枚で、アジア太平洋地域全体のビザ・ゴールドカードの34%を占め、日本(480万枚)より3倍も多い。ゴールドカードよりワンランク上のプラチナカードの場合、韓国は260万枚(日本5万枚)になる。この数字を見る限り、4600万人の国民の3人に1人がゴールドカードを持つ、アジアでもっとも裕福でエクセレンな国が韓国となる。

 ところが、15日付の記事。見出しは「国民1人当たりの総所得は1万4000㌦、世界50位」。韓国銀行が世界銀行の「世界発展指数」を整理した資料によると、市場為替レートを基準に、韓国の04年の1人当たり国民総所得は1万4000㌦で、比較対象208ヵ国のうち50位。この数字はポルトガル(1万4220㌦、49位)に次ぐ。ちなみに世界1位は1人当たり5万6380㌦のルクセンブルク、米国は4万1440㌦で5位、日本は3万7050㌦で9位だ。

 日本でゴールドカードの保持者と言えば、年齢30歳以上で年収500万円以上、プラチナカードだと役員クラスが持つものと一応見られている。となると、個人所得が世界で50位ほどの韓国がクレジットカード利用ではアジアで一番の顧客というのは、一体どういうカラクリがあるのかと疑問がわく。そこでインターネットで調べてみると、以下のような実態が浮かび上がってきた。

 韓国政府は内需拡大策の一環としてクレジットカードの普及を推進してきた。中学生までもが複数のクレジットカードを持つケースもあるという。大人の場合、1人で20枚も所有している人もいる。その結果、使い過ぎてカード破産する人が続出し、カード破産者は400万人に達する。また予備軍も含めると国民のおよそ20%の人がクレジットカードの支払いに苦しんでいるという。以上は、韓国経済に詳しい深川由紀子氏(東京大学大学院教授)が日本の衛星放送「BS-i」の経済番組「グローバルナビ」(05年5月)で語った内容だ。

 しかも、18日付の朝鮮日報の記事「膨らみ続ける韓国の資産バブル」や「バブル崩壊は迫っているのか」を読むと、ソウル中心部の1平方㍍当たりの地価は6000~6500㌦に急騰している。同じ面積の東京の不動産価格は1万ドルで、ニューヨークのマンハッタンは1万1000ドル程度だが、日本人の国民所得が韓国の2.6倍程度であることを考えると、ソウルの不動産価格の方が格段に高い。しかも韓国では個人資産の80%が不動産投資に回っているという。1980年代後半の日本の不動産バブルと似ていて、朝鮮日報が報じるように、そのバブルはいつ弾けても不思議ではない段階なのだ。

 庶民はカード破産、資産家はバブル崩壊の危機と何やらキナ臭い。こうなると、金融当局が不動産バブルを鎮めようと金利を上げれば、今度は国民全体の20%といわれるカード破産者とその予備軍の首を絞めることになる。これがひいては金融破綻へと連鎖するのではないか。にっちもさっちもいかなくなっているのである。早晩、ノ・ムヒョン大統領の失政が問われることになろう。

⇒18日(木)夜・金沢の天気  はれ

☆マスメディアの風圧と法

☆マスメディアの風圧と法

 ゴールデン・ウイーク期間中の3日、珍事が起きた。有田陶器市が開催されている佐賀県有田町で強風で仮設テントが揺れ、中の棚に陳列してあった皿や小鉢などの陶器が次々と吹き飛ばされ割れた。被害は9点(19000円相当)だった。問題はその原因。午後2時10分ごろ、FBS福岡放送の取材ヘリコプターが上空を飛び、ヘリが低空で通過した直後に突風が吹き、テントの中にあった棚の上の陶器が飛ばされたという。

  テレビ局側は「当時は高度150㍍を維持していた。上空から吹き下ろしの風が吹いていて、ヘリの風と相まって被害が出たのかもしれない」と説明した。以上が新聞各紙からピックアップした内容だ。しかし、航空法では、ヘリの最低飛行高度は例えば人家の密集した地域の上空では半径600㍍の範囲の最も高い障害物の高さにさらに300㍍の高度を加えとなっている。カメラマンが被写体に近づこうとすれば、高度を下げるしかない。そこでカメラマンは強くパイロットに低空を飛ぶよう希望したのだろうかと推測する。今回は皿や小鉢だったものの、一歩間違えて、子どもが吹き飛ばされていたなら大事件になっていた。

  もう一つ、今度は法をめぐる風圧を新聞から拾った。4月に赴任した高松地検の川野辺充子検事正が就任会見で、男性記者が「年齢をうかがいたい」と質問した。検事正は「女性に年を聞くんですか、すごいですね」と答えなかった。今度は女性記者が「要職の方には年齢を伺っています」と食い下がったが、今度は「中央官庁でも公表しない方向になっています」と年齢の公表を断った。しかし、別の人事案件で法務省は一度は学歴と生年月日を非公表にしたものの、記者クラブが要求して、公表した例がある。川野辺検事正の場合は最終的に公表したものの、その混乱の原因となっているのが個人情報保護法である。

  もともと民間の情報を守ろうとしたのが個人情報保護法であり、官庁が独占している情報を出させようとするのが情報公開法なのである。なのに「官」がちゃっかりと個人情報保護法の隠れ蓑をまとっている。つまり、官庁が個人情報保護法を盾に情報を出し渋っているのである。そこをマスメディアは見抜いているから今回の川野辺検事正に対する生年月日の公表要求のケースのように、官が情報を出し渋れば渋るほどマスメディアの風圧も厳しさを増すという構図になる。

  端的に言えば、官庁の情報に関しては情報公開法の枠組みで整理したほうが一番すっきりするのである。まして公人である要職の人事などなおさらだ。

 ⇒3日(水)夜・金沢の天気  はれ  

★ホリエモンはどう動く

★ホリエモンはどう動く

 ライブドアの証券取引法違反事件で逮捕された堀江貴文前社長が27日夜、94日ぶりに保釈された。テレビ各社は、夜の9時40分ごろ、東京・小菅の東京拘置所の通用門から姿を見せた堀江前社長が「ご心配をおかけしました」と深々と頭を下げる様子をニュース番組で映し出していた。その時はさほど気には留めていなかったが、翌朝の朝刊各紙を手にして「おやっ」と思った。眼を輝かせているホリエモンの写真が大写しで掲載されている。逮捕以前の脂ぎったいかつい顔ではなく、まるで94日間の苦行を超えて悟りをひらいたか修行僧のような雰囲気ではないか。

 94日間で読んだ本は200冊に上ったという。百科事典のほか、中国の歴史書である「史記」や「白い巨塔」(山崎豊子著)、それに韓国語の勉強もしていたらしい。体重は8㌔減量。ダイエットした人なら想像はつくかもしれないが、3ヵ月で8㌔は無理のない数字である。適度な運動をし、間食せず、就寝前3時間は物を口にしなければ無理しなくともこのくらいの減量は可能だろう。

 それにしても、あれだけ物々しい捜査当局の動きの割には、問われた罪は粉飾決算、偽計、風説の流布である。構造汚職事件といわれ、未公開株を政官界に大量にばらまいたリクルート事件(1988年発覚)のような大騒ぎ。それだけに今回の事件の本質がいま一つ理解しにくい。大型脱税なら理解もでききる。ところが粉飾決算をしてまで税金を払っているのである。確かに、「市場を欺いた」行為であることは理解できるが、それでは、3月22日にNECが発表した連結対象子会社が5年間で累計363億円もの架空売上高と93億円の架空営業利益を計上していた問題はどうなった。決算をごまかし、連結から外したという点では同じ線上ではないか。「逮捕」という事実が本質以上に問題を大きく見せてしてしまうという点もある。

 あの事件を思い出す。石川県信用保証協会の代位弁済(肩代わり返済)をめぐる背任事件で、金沢市に本店がある北國銀行の現職の頭取が逮捕された事件(1997年)のことである。頭取は保証協会の役員3人と共謀し、北國銀行が93年に融資した直後に倒産した機械メーカーの債務8000万円を保証協会に不正に肩代わりさせ、損害を与えたとして逮捕、起訴された。2004年9月の最高裁判決は懲役2年6月、執行猶予4年とした一、二審判決を破棄、審理を差し戻した。差し戻し審判決も「元頭取が協会役員と背任の共謀を遂げたと認定するには合理的な疑いが残る」と判断された。結局、05年11月、名古屋高検は「適法な上告理由を見出せなかった」として上告を断念、元頭取の無罪が確定した。

 特捜の切れ味は鋭いものがあった。ただ、頭取の逮捕直後に名古屋の記者の間で「ちょっと無理があったかも知れない」とささやかれているのを聞いた。たずねると、当時は名古屋地検に特捜部が発足したばかりで、「東証一部の上場企業で、しかも現役の頭取なら大きな手柄になるので、功をあせったのではないか」という主旨だった。捜査のことだからその真偽は分からない。が、結果は無罪である。

 今回の事件で捜査手法に疑問を投げかけているわけではない。検察は「マスコミが騒ぎすぎるだけ」と言うだろう。ホリエモンは保釈中である。テレビ出演は裁判での証人に対する圧力とみなされる可能性があるので無理だろう。しかし、執筆活動や選挙に出ることは可能である。事実、受託収賄の罪に問われ保釈中の鈴木宗男氏は05年9月の総選挙で堂々と当選した。今後、ホリエモンはどう動くのか…。

⇒29日(土)午後・金沢の天気  はれ

★ソフトバンク「次の一手」を読む

★ソフトバンク「次の一手」を読む

 この1週間で2度も「IT花火」が打ち上がった。3月16日に有線放送や無料インターネット動画配信サイト「GyaO(ギャオ)」を運営するUSENがライブドアと資本・業務提携すると発表し、翌17日にはソフトバンクが携帯電話3位のボーダフォン日本法人を1.7兆円で買収すると正式に表明した。私はGyaOの動画ニュースを時折り閲覧しているし、携帯電話のキャリア(通信事業者)はボーダフォンなのでこの2つのニュースに関心があり、けさのテレビ朝日の討論番組「サンデープロジェクト」にも見入った。

  記者会見を通じて、ソフトバンクとUSENどちらの戦略が鮮明に伝わってきたかというとソフトバンクの方だ。サンデープロジェクによると、今回の買収劇ではボーダフォン日本法人のウィリアム・ティー・モロー代表の方が焦っていたようだ。今年11月のナンバーポタビリティー制度(番号を変えずに通信事業者を変更)でボーダフォンが草刈り場となることに危機感を持って、有識者と次々会って意見を求めていたようだ。このタイミングでソフトバンクの孫正義社長が動いた。「チャンスだ」と。

  ソフトバンクは去年11月、携帯電話事業への参入認可を取っている。「チャンスだ」と判断したのは、新規参入でゼロから顧客を獲得するより、1500万人余りの既存顧客を獲得したかったのだろう。何しろ、ソフトバンクはロスを垂れ流しながら顧客を増やしてゆく手法を取り、ADSLのユーザーを開拓した。その間、「押し付けだ」などとマスコミに随分叩かれもした。

  で、ソフトバンクの見えてきた戦略とは何か。それは、「通信のオールインワンサービス化」であることは間違いない。自らで育てたADSL事業に加え、日本テレコム買収(2004年)によって入手した光ネットワークインフラ、そして携帯電話事業。これらをひとまとめにして定額でいくら、といったビジネス展開だろう。携帯電話の料金は高い(1人平均8000円)と多くのユーザーが思っている。そこで、「光と携帯で5000円」といった定額制にする、あるいは携帯だけでも「使い放題3000円」などとキャンペーンを張れば、草刈り場になるどころか、顧客を増やすことができるのではないか。

  ソフトバンクのボーダフォン買収戦略でむしろ岐路に立たされるのはNTTかもしれない。NTT東西地域会社は06年度の事業計画で光ファイバーの販売を強化し、これまでの1.7倍にあたる617万回線、中期経営戦略では2010年までに3000万回線を販売するとしている。つまり、いまある銅線をすべて光に置き換えることで、ソフトバンクをADSL事業から追い落とす一石二鳥の効果を狙っているのは見え見えだ。

  しかし、逆にNTTに「通信のオールインワンサービス化」ができるかどうか。できなければソフトバンクから逆襲される。この両者のツバ競り合いがある限り、少なくともボーダフォンのユーザーは11月になっても動けないのではないか。ソフトバンクの新しいサービスに期待し、その内容を見極めたいからだ。

 ⇒19日(日)午後・金沢の天気  くもり