⇒メディア時評

☆中秋の名月、世俗では

☆中秋の名月、世俗では

    今夜は「中秋の名月」を雲の切れ間から見ることができた。月をめでることができる幸福感に包まれたのだが、それにしても、世俗では毎日テレビで戦国時代のドラマを見ている気分になる。旗揚げ、画策、裏切り、謀反、切腹・・・のシーンが出てくる。

  謀反のシーンは昨日(3日)あった。小池都知事の支持母体「都民ファーストの会」の都議の音喜多駿、上田令子の両氏が辞表を提出した。その言い分は、「二足のわらじが悪いわけではないが、都政は豊洲移転問題や東京五輪を控える中で、都政を片手間にして国政に手をかけることが果たして正しいのか」と指摘。小池知事が国政政党「希望の党」を設立したことや、先月に都民ファーストの代表を選ぶ際、所属議員に諮らずに小池氏から執行部3人だけで決定したことなどを問題視して、「ブラックボックスだ」と。音喜多氏は忠君のイメージが強かっただけに、小池陣営にすれば謀反だろう。

  民進党の枝野幸男氏は2日、「希望の党の理念や政策は私たちのめざす理念や政策の方向性とは異なる」として新たに「立憲民主党」の設立を表明、3日に新党設立の届けを出した。枝野氏は先月30日のインタビューで、民進党の前原誠司代表が進めた民進党の希望の党と合流案について、安全保障関連法廃止を掲げるリベラル派議員が入れないのではと記者に問われ「前原代表は、私には出来なかったら腹を切るとまで言っていたから実現するのではないか」と答えていた。しかし、リベラル派議員は容赦なく排除された。前原氏の切腹はどうなったのか。そういえば、最近、前原氏の姿がテレビに映らない。

  先月27日「希望の党」の旗揚げ会見で、小池氏は2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを「凍結」、また、2030年までの「原発ゼロ」を訴えた。政権選択をアピ-ルするための「画策」である。昨年7月の都知事選では、小池氏は原発についてあえて明確な方針を掲げず、争点化していなかったはずだ。その手法は「豊洲移転・築地再開発の市場両立」と同じで、良いとこ取りだ。果たして、この手法で国政を動かすことはできるのか。

  衆院選挙を前にした野党再編劇は希望の党が昨日第1次公認を発表したことで少し落ち着きが出た。そして、きょう夕方、元警察官僚で論客でもあった亀井静香氏が政界引退を表明した。80歳。老兵は去った。(※ 写真は、4日午後10時00分、金沢市の上空を撮影) 

⇒4日(水)夜・金沢の天気      くもり

★不都合な真実か

★不都合な真実か

   きょう3日も日経平均株価が前日比213円高の2万0614円で終えた。連日で年初来の高値を更新だ。知り合いとの話で、「復興株」と呼ばれている日成ビルド工業(本社・金沢市)のことが話題に上がった。同社は大規模災害時にプレハブの仮設住宅を造ることで実績を上げ、立体駐車場の建設でも定評がある。知人が言うには、「ここ最近、再び上がってきた。北朝鮮がミサイルを日本に打ち込んできたら仮設住宅が必要になる。投資家はそこまで見込んでいる。買いだ」と。「そんな物騒な話で儲けようとは話にならない」と不快感を示すと、知り合いはさらに「いや、ミサイルだけではない。北からの難民が大量に日本に流れ込んでくる。その時はおそらく各地で何百、何千という単位で難民が漂着するだろう。仮設住宅が必要になるんだよ。買いだよ」と。ますます気が重くなった。

    一方の「防衛関連株」の石川製作所(本社・白山市)の終値は2986円(前日比21円高)と3000円目前に迫った。アメリカのトランプ大統領が国連総会での演説(9月19日)で、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長を「ロケットマン」と揶揄(やゆ)すれば、金委員長はすかさず声明(9月21日)で「老いぼれ」と返した。北朝鮮メディアによる罵詈雑言は珍しくないが、最高指導者が直に発したのは異例だろう。さらに、李容浩外相は金委員長への批判について「明白な宣戦布告」と見なすと声明(9月25日)を発表した。こうした「言葉の戦争」で防衛関連株はエスカレートしているのか。

   朝日新聞の朝刊(3日付)を読んでいてある記事に目が止まった。「裁判―青酸連続死」の記事。京都、大阪、兵庫で起きた連続不審死事件で殺人罪に問われた筧(かけひ)千佐子被告の裁判員裁判。2日、京都地裁での最後の被告人質問のやりとりがそのまま掲載されていた。裁判員が「死刑になっても仕方がないと思うか」と質問すると、筧被告は「人を殺(あや)めて ごめん、助けてという気持ちは一切ない」、裁判員が「事件について反省しているのか」とただすと、被告は「そんな少女ドラマのようなことを聞かないでほしい。あなたのような若い人にここまで言われたくない。私はあなたのおばあさんのような年だ。失礼だ」と。筧被告の人格がそのまま出ているようなやりとりではないだろうか。

    と、同時にこの記事から石川五右衛門のイメージがわいてきた。京都・南禅寺で包囲され、「絶景かな、絶景かな。春の宵は値千両とは、小せえ、小せえ」とセリフを吐く。そして、三条河原で釜茹(かまゆで)の刑に処せられたとき、「石川や、浜の真砂は尽くるとも、世に盗人の種は尽きまじ」と辞世の句を詠んだ。筧被告は「私はあなたのおばあさんのような年だ。失礼だ」と大見得を切った。

⇒3日(火)午後・金沢の天気     あめ

☆総理会見を勘ぐる

☆総理会見を勘ぐる

  25日の日経平均は北朝鮮情勢の悪化と読まれ、きょう続落した。一方で石川県白山市に本社がある石川製作所は2895円ときょうも最高値を更新した。どこまで続くのか。同社は機雷など生産する、いわゆる防衛関連株である。今後経済制裁の圧力がさらに高まった場合、北朝鮮の海上封鎖へと展開する違いない。そのとき、機雷の需要が出てくる、と投資家は読んでいるのかもしれない。

    25日午後6時からの安倍総理の記者会見をNHK総合でライブで視聴した。質問時間を入れて40分だった。この記者会見で、安倍総理は今月28日召集の臨時国会の冒頭で解散する方針を固め、その解散の理由を事前表明し国民に理解を求めた。衆院解散ならば10月10日に公示、同22日に投開票となる。

  会見では解散理由のキーワードがいくつかあった。核実験やICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射を繰り返す北朝鮮と、少子高齢化への対応を挙げて「国難突破解散」と銘打った。「生産性革命、人づくり革命はアベノミクス最大の勝負」「選挙はまさに民主主義における最大の論戦の場。総選挙は、私自身の信任も含めて与党の議員全ての信を問う」「より多くの人たちが才能を生かせる社会にしなければ少子高齢化社会を乗り切っていくことができない」

  気になるシーンがあった。イギリスのフィナンシャルタイムズ東京支社の記者の質問に対する安倍総理の返答だ。記者「先週、トランプ大統領が北朝鮮のリーダーをロケットマンと呼び、アメリカは北朝鮮を完全に破壊するしか選択はないかもしれないと述べた。このコメントは日本をより安全にするのか。それとも日本人の安全性は低くなるのか」と。総理は「トランプ大統領の個々の発言についてのコメントは控えたいと思いますが、日本は全ての選択肢がテーブルの上にあるとの米国の立場を一貫して支持しています」と述べ、「ロケットマン」発言についての言及はあえて避けたのだ。

  国連でのトランプ大統領の「ロケットマン」発言に北朝鮮は「ロケットがアメリカ本土に到達することを不可避にした」と猛烈に反発した。記者はこの日本の安全保障に関わる重大発言について、総理の所感を質したのだ。ところが、総理は「トランプ大統領の個々の発言」とあえて質問の意味を遠ざけた。これは一体どういうことなのか。しかも、伏し目がちに逃げるようなそぶりだった。ここから勘ぐりが始まる。なぜあえてトランプ発言に言及しなかったのか、と。

  総理は先月29、30日、そして国連で今月21日にトランプ大統領と会談している。1ヵ月で3回も、である。単に圧力をかけましょうではなく、相当話し込んだ内容ではなかったか。つまり密約である。以下勘ぐりである。総理と大統領の間でアメリカによる北への斬首作戦について日程調整が進められた。総理は作戦実行前に政権基盤を固めておきたいと総選挙の腹を固めた。作戦実行後では極東アジアが大混乱に陥る、難民や武装難民、局地戦など、そんなときに日本で総選挙など難しいだろう。総理が何度も繰り返した「国難」とは斬首作戦実行後のこの大混乱のことだ。

  そう考えると、総理が腹をくくった理由がなんとなく理解できる。フィナンシャルタイムズ記者の質問にあえて言及しなくても、作戦のスケジュールはもう決まっている。余計なことを言及する必要はない、との総理のスタンスか。と、勘ぐった。(写真は総理官邸ホームページより)

⇒25日(月)夜・金沢の天気      はれ
  

☆ホワイトハウスの内紛劇

☆ホワイトハウスの内紛劇

    北朝鮮の弾道ミサイルの行方もさることながら、アメリカのホワイトハウスの内紛劇もすさまじい様相を呈してきた。19日付(現地時間)のニューヨーク・タイムズのHPをのぞくと、ボストンでの白人至上主義、ネオ・ナチズムに反対する数千人規模のデモの様子が掲載されていた。デモはこのほか、シカゴ、ダラス、ヒューストンでもあったようだ。気になるのはホワイトハウスに関する以下の見出し記事だ。

    With Bannon’s Ouster, Question Remains Whether His Agenda Will Be Erased, Too バロンの追放によって、その政治・政策的な行動予定も取り消されるのか、それにしても問題は残る

    トランプ大統領を誕生させたともいわれるスティーブン・バノン氏(大統領首席戦略官)は更迭され、ホワイトハウスを去った。ニューヨーク・タイムズが問題としているのは、たとえば通商政策。中国とは経済戦争の状態にあるとしてバノン氏は貿易面で中国に圧力をかける政策の主導役だった。そのバロン氏の更迭をホワイトハウスが発表して3時間後、アメリカ通商代表部(USTR)は中国に対する「通商法301条」に基づく調査を開始したと発表している。301条では外国による不公正な貿易慣行に対して、大統領の判断で関税の引き上げが可能になる。

    バノン氏が経済戦争と称したのは、アメリカ企業の技術移転を義務付ける不透明な認可手続きや、中国の民間企業にアメリカ企業の買収を指示、中国政府によるアメリカ企業へのハッカー行為などだ。中国との貿易戦争にバノン氏は裏方で政策的なアジェンダを組み立て、USTRを動かしてきた。バノン氏更迭の後、こうした政策は遂行されるのだろうか。上記の見出しはポスト・バノンの政策には問題が山積している、と問題提起している。

    そして、同紙は更迭後のバノン氏のこの言葉を紹介している。“And anyone who stands in our way, we will go to war with.”

    この言葉を直訳すれば、「(ホワイトハウスを去ったが)同志とはともに戦う」。裏を返せば、中国との経済戦争で柔軟路線に修正するということであれば、その人物とは徹底的に戦う、とも取れる。アメリカ第一主義を押し通すバノン氏は、ホワイトハウスとも一線交える覚悟を表明したのだ。ニューヨーク・タイムズの見出し中の「Question Remains」はまさに「今後のホワイトハウスの火種」とも読める。バノン氏はもともとホワイトハウス入りする前まで、ニュースサイト「Breitbart News Network」の経営者だった。復帰して戦うのだろう。

   もう一つ、バノン氏のセリフを。アメリカのメディアが盛んに週刊誌「THE WEEKLY STANDARD」から引用しているこの言葉だ=写真=。“The Trump presidency that we fought for, and won, is over. ” われわれがともに闘い、勝利をおさめたトランプ政権は終わった

   バロン氏が更迭後に保守系メディアの同誌のインタビューで語ったとされる言葉。捨てセリフと言うより、無念さがにじんでいないだろうか。アメリカの政治史を塗り替えた昨年12月の大統領選挙から8ヵ月余り。日々伝えられるホワイトハウスの内紛はまるで政治ドラマだ。

⇒20日(日)朝・金沢の天気   はれ

★「平和的な圧力」の裏読み

★「平和的な圧力」の裏読み

   アメリカのトランプ大統領の気持ちは北朝鮮から国内問題にシフトしたようだ。ホワイトハウスのHPに大統領の激しい口調の演説文が紹介されている。
   Racism is evil. And those who cause violence in its name are criminals and thugs, including the KKK, neo-Nazis, white supremacists, and other hate groups that are repugnant to everything we hold dear as Americans. 人種差別は邪悪だ。それを掲げて暴力を振るう者、KKK、ネオナチ、白人優位主義者、他の嫌悪者グループは凶悪犯であり、我々アメリカ人として大切に思うもの全てに矛盾する。

   アメリカの現地時間12日に、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者たちのデモに参加していた男が反対派グループの列に車で突っ込み、女性1人が死亡し多数が重軽傷を負う事件があった。アメリカの関心事は北朝鮮のICBMから一気にこの事件に耳目が集まった。ところが、トランプ大統領は当初、白人至上主義者たちを明確に非難しなかったことから逆にトランプ批判がわき起こり、14日の演説となった。

   きょう15日の東京株式市場は、アメリカと北朝鮮それぞれの威嚇発言が一服したのを受けて、日経平均株価が5営業日ぶりに値上がり、終値は216円高い1万9753円。逆に、機雷の製造でも知られる防衛関連銘柄、石川製作所(石川県白山市・東証一部)は前日比330円安の1395円、19%も下落した。この株価の背景は、おそらくウオール・ストリート・ジャーナルで掲載された、アメリカのティラーソン国務長官とマティス国防長官による連名の寄稿だろう(現地時間13日)。

   We’re Holding Pyongyang to Account(私たちは、ピョンヤンにアカウントを保持している)の見出しで始まるこの記事では、アメリカの目標は朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮の体制転換やアメリカ軍による北朝鮮侵攻を目指していないと訴え、北朝鮮に対する経済制裁や外交による「平和的な圧力」で臨む考えを示した。

なぜ、ウオール・ストリート・ジャーナルに寄稿したのか、すぐに理解できた。それ以前はダウが急激に下がり続けていた。そこで、ホワイトハウスではあえて経済専門紙に国務長官と国防長官が連名で「平和的な圧力」を訴えることで経済に及ぼす影響を和らげたかったのだろう。ダウ工業株平均は上昇し、終値は前週末より135㌦高い2万1993㌦だった。それに連動して前述のように日経平均株価も戻した。

   安倍総理とトランプ大統領は15日午前、電話で30分間会談したと報じられた。北朝鮮が日本上空を越えてグアム周辺海域に弾道ミサイル発射を計画していることを踏まえ、北朝鮮に弾道ミサイル発射を強行させないために、中国やロシアに働きかけを強める方針を確認したという。

   ふと裏読みがしたくなる。この一連の動きが株価を安定させるのが目的だとすると、今度は相手(北朝鮮)に逆手に取られる可能性があるのではないだろうか。激しく威嚇、揺さぶりをかけて、アメリカや中国、韓国、日本の株価をとことん下げて混乱させる戦術に出てくるのではないか。北朝鮮は自国にアメリカの目を向けさせたいのではないだろうか。

⇒15日(火)夜・金沢の天気   くもり

★敏感に反応するマーケット

★敏感に反応するマーケット

   11日付の日経新聞には驚いた。北朝鮮の弾道ミサイルに関連する記事が7ヵ所に掲載されていた。1面「北朝鮮『島根など通過』予告 迎撃ミサイル中四国配備」、2面「米朝 威嚇やまず」「真相深層 北朝鮮への対話提案、返答はICBM 八方美人外交韓国空回り」、3面「きょうのことば PAC3 半径数十㌔、ミサイル迎撃」、8面「止まるか挑発 北朝鮮情勢を聞く 日米韓主導の交渉が有効」、9面「ダイジェスト 韓国NSC、北朝鮮を批判」、21面「日米の防衛関連株物色 北朝鮮リスク高まり思惑」

   確かに北朝鮮情勢は緊迫化している。北朝鮮が今月8日に中距離弾道ミサイル4発をグアム沖に向けて同時に発射させる案を検討中だと予告すれば、アメリカのトランプ大統領が「彼(金正恩朝鮮労働党委員長)がグアムに対し何かすれば、これまで誰も目にしたことがないような出来事になる」と応酬。9日にはマティス国防長官が金正恩政権を軍事的に崩壊させると言及し、ニュースが世界を駆け巡った。さらに、北朝鮮が弾道ミサイル島根、広島、高知3県の上空を通過すると発表したことから、日本政府は中国・四国地方に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)を配備すると機敏に対応した。ただ、グアムへのミサイルを撃ち落とすのではなく、コースが外れて日本に落ちてきた場合での破壊措置命令のようだが、具体的な自衛隊の行動として展開していることが目を引く。

    こうした「地政学リスク」に株価は敏感だ。「当事者」のアメリカでも10日のダウは200㌦余りの下落。日経平均も3営業日が続落。ただ物色されている銘柄もある。石川県白山市に本社を置く石川製作所(東証一部)は段ボール印刷機や繊維機械が主力商品だが、機雷の製造でも知られる防衛関連銘柄でもある。10日終値は前日比164円値上がり、13%上昇した。

 アメリカのメディアはもっと深刻に伝えている。CNNのHPによると、「Signs of fear creep back on Wall Street」、ウォールストリートの恐怖の兆候だ、と。ダウとS&P500は3月以来の最悪の週に苦しんでおり、ウォールストリートの「恐怖計」はほぼ2年ぶりに上昇した、と。「The big winners? Gold, ultra-safe government bonds and defense contractors.」 勝者は誰、金取引か、超安全な国債か、国防関連銘柄か。

   日本とアメリカのメディアが北朝鮮の弾道ミサイルの動きが取引市場と敏感に連動していることを伝えている。CNNが述べているように、それは「恐慌の前兆」なのか。

⇒12日(土)夜・金沢の天気   くもり

☆北の「地政学リスク」

☆北の「地政学リスク」

  いよいよ北朝鮮のICBMが株価を左右する事態になってきた。きょう9日の東京株式市場で日経平均株価は前日比257円の大幅安となった。株価にインパクトを与えたのはアメリカのワシントン・ポスト紙(WEB版)だと日経新聞夕刊で解説されていたので、さっそくネット検索。確かにこの記事を読めば、投資家の心理が冷え込むのは無理はない。以下、ワシントン・ポストの記事=写真=を引用する。

  North Korea has successfully produced a miniaturized nuclear warhead that can fit inside its missiles, crossing a key threshold on the path to becoming a full-fledged nuclear power, U.S. intelligence officials have concluded in a confidential assessment. (北朝鮮は、弾道ミサイルの内部に収まる小型の核弾頭の生産に成功し、本格的な核弾道への搭載が可能になったと、アメリカ情報当局は機密分析をまとめた)

    さらに記事を読むと、北朝鮮はすでに最大で60発の核弾道を有していて、多くの専門家の間で予測していたよりもはるかに核開発技術が急速に進んでいることに、軍事的脅威に対する懸念が深まっている、と深刻な内容だ。

  ワシントン・ポストは別の見出しで North Korea threatens Guam, the tiny U.S. territory with big military power(北朝鮮は、大きな軍事力を持つ小さなアメリカ領のグアムを脅している)と。北朝鮮がアメリカに重大な警告を送るとして、ICBMでグアム島付近へ包囲射撃作戦案を検討中と声明を出した(9日・韓国中央日報)。これにアメリカ側が敏感に反応したものだ。

  アメリカ国内のメディアがこれだけ強烈に報じると、当然、世界の投資家も敏感に反応する。ドルを売って円を買う動きが出て円高ドル安(109円)に、さらに「地政学リスク」が高まって国内でも全面的に売りが進んだ(一時330円安)。最近よくメディアに報じられる、この地政学リスクとは、北朝鮮のこうした強硬な出方が近隣諸国の政治的、経済的、社会的な不安を高めさらに、世界経済全体の先行きをも不透明にするリスクと解釈できるだろう。

  日本海側に住んでいると、この地政学リスクという言葉の意味が実感として伝わってくる。表現が適切か定かではないが、このリスク実感を共有できてこそ、恐らく世界史に残るであろう近未来の歴史の一コマも互いに見えてくる。

⇒9日(水)夜・静岡県下田市の天気    くもり

☆ニュースは流れ、脅威はとどまる

☆ニュースは流れ、脅威はとどまる

    北朝鮮をめぐる最近の出来事は、日本海側に住む私のイメージの中では海の違法操業と空のICBMが一元化して一つの大きな脅威として脳裏に焼き付くのだが、同じ日本国内でも特に太平洋側、とくに首都圏ではおそらく一過性の出来事なのだろうか。

    きのう30日付の新聞各紙の社説を読めば上記のことが見えてくる。読売は「中露は圧力強化の責任を果たせ」との見出しで、中国とロシアが北朝鮮の制裁強化に消極的で、とくにロシアは北朝鮮から発射された中距離弾道ミサイルでICBMではないと強弁しているとして、「中露は実効性のある新たな受け入れるべきだ」と論を展開している。朝日も「中国とロシア 北朝鮮の抑制に動け」との見出しで、「北朝鮮が本当に危機感を抱くのは、日米韓に新たに中ロが加わり、行動をともにする時である。核とICBMは国際社会全体を脅かす以上、中ロも安保理の新たな決議に同調すべきだ」と両国に結束を訴えている。

    確かに、国際社会の中で北朝鮮に文句をつけているのは日米韓の3ヵ国だけで、ほかの隣国(中国とロシア)はさほどではない、と言い切ってしまえば、世界の関心事からは離れてしまう。北朝鮮はそのコンセプトでとくにロシアとの絆(きずな)を太くしているのかもしれない(5月から万景号による羅津港とウラジオストクの定期便化)。こうした北朝鮮のしたたかな動きを踏まえての両紙の論調だと読むことができる。

    ところが、同じ30日付の社説で意図をはりかねたのが毎日だった。「北朝鮮の弾道ミサイル 看過できないミサイル技術の進展」の見出しで、「いつでも、どこからでも、より遠くに届くミサイルを発射できるようになった可能性がある」と北朝鮮のミサイル技術を看過できないとしながら、ではどのような事態の打開策があるのか示唆や方向性、提言が見当たらないのである。社説の末尾を「不適切な防衛省人事に起因する防衛省・自衛隊の混乱とミサイル発射が重なったことを、安倍晋三首相は深刻に受け止めるべきだ」と結んでいるが、政権批判の転嫁に終始したとしか思えてならない。

    新聞の社説の論調は多様であるべきで、読者をもっと刺激してよいと常々思っている。今回ICBMの脅威に対応するため、マスメディアは先見性や具体性を持ってもっと論を張るべきではないか。31日付の紙面ではすでにICBM関連の記事は極めて小さくなっている。ニュースは流れるものかもしれないが、脅威は心にとどまる。(※写真は、ことし3月、北朝鮮の弾道ミサイルが能登半島沖に落下したことを報じる紙面)

⇒31日(月)午後・金沢の天気   くもり

☆「34歳の命」なぜ救えないのか

☆「34歳の命」なぜ救えないのか

  乳がんを発病し、闘病していた小林麻央さんが死去したこと報じられた。34歳で、夫は歌舞伎俳優・市川海老蔵さん。1男1女をもうけ、2014年に乳がんであることが分かり、療養を続けていた。ニュースに接して、その若さといい、いたましいと思う。

  マスメディアは、闘病していた小林麻央さんのブログ「KOKORO.」(2016年9月開設)を紹介し、ほぼ毎日更新していたことや、亡くなる直前まで、病気に前向きに立ち向かう姿勢と周囲への感謝に満ちた内容をつづっていたことを取り上げている。そのメディアの報道に接するにつけ、大いなる違和感を感じる。問題は、34歳の若き命をなぜ医療は救えなかったのか、ということだ。メディアの論点がずれているのではないか、そう実感している。私自身、妻を乳がんで亡くした。彼女は55歳だった。だからなおさらそう思うのだ。

  乳がんは女性で最も罹患者数が多い。国立がん研究センターの統計によると、10年生存率は、発見時点でステージ1は95.0%、ステージ2は86.2%。だが、ステージ3だと54.7%、ステージ4だと14.5%まで下がる。小林麻央さんはステージ4でのがん治療だった。乳がんの治療をしても、リンパ節や肺、脳への転移などより進行した状態で見つかる傾向がある。そして、いくら抗がん剤や分子標的治療薬を施して効かないタイプ(トリプル・ネガティブ)の乳がん)もある。

  2014年2月に亡くなった妻はトリプル・ネガティブだった。2012年11月に乳がんの摘出手術をして、乳房の再建も施した。その時点で医師は「完璧です」と言った。しかし、翌年2013年9月に肺に陰が見つかり、胸腔鏡手術で患部を取り除いた。その後、脳にがん細胞が点在しているのが見つかり、ガンマナイフでの治療を施した。しかし、脳全体に腫瘍がはびこり、肝臓などの臓器に転移が見つかった。若いとがんの進行度が速いと医師から何度も聞かされた。彼女が亡くなる間際まで、日本の医療を信じていた。抗がん剤にしても「これが最先端のもの」と聞かされ、本人は生き延びたいとすがる思いで服用していた。彼女が亡くなって、医療って何だとふと思うようになった。55歳の命がなぜ救えないのか、と。

  同じように小林麻央さん34歳の命がなぜ救えなかったのか。市川海老蔵さんも同じ思いではないだろうか。亡くなったことが当然のようにメディアは報じ、ブログが周囲に感動を与えたなどと美談に仕立てている。何度も言うが、世界に冠たる日本の医療でなぜ34歳の命を救えなかったのか、乳がん治療の限界はどこにあるのか、どうすれば転移を防げるのか。メディアが取り上げるべき論点は、34歳の女性の命を救えない医療の現実を直視し、報道することだ。医療を批判することではもちろんない。

⇒24日(土)朝・金沢の天気   くもり   

★危機感を煽るCMなのか

★危機感を煽るCMなのか

   きのう(20日)の石川県議会本会議で北朝鮮のミサイル攻撃の対応について議員から質問があった。以下、地元メディアからの引用。県の危機管理監は質問に対して、ミサイルが国内に落下する際は、防災行政無線や緊急速報メールで住民に連絡し、▽近くの頑丈な建物や地下へ避難をする▽建物がない場合は物陰に隠れるか地面に伏せて頭を守る▽屋内にいれば窓から離れる、といったことを具体的に述べた。県知事は議会後の取材に対して、年内に能登地方で住民避難訓練を行うことを示唆した(北陸中日新聞)。

   北朝鮮の弾道ミサイルを想定した訓練は日本海側の自治体を中心に実施されている。秋田、山口、山形、新潟、福岡などの県で。来月には富山、長崎でも行われる。国が全国の都道府県に訓練の実施を要請しているとの背景もある。

   さらに、きょうのネットニュースで、北朝鮮情勢の緊迫化を踏まえ、国が弾道ミサイルが発射された際の避難方法を紹介する初めてのテレビCMを23日から放映するという(読売新聞ホームページ)。CMは30秒間で、7月6日までの2週間、東京の民放5局で放送される。CMの内容は、冒頭でミサイルが日本に落下する恐れがある場合に全国瞬時警報システム「Jアラート」で緊急情報が流れることを説明し、頑丈な建物や地下に避難する、建物がない場合は物陰に身を隠すか地面に伏せて頭を守る、屋内の場合は窓から離れるか窓のない部屋に移動する-3種類の避難行動をイラストとナレーションで紹介するという。内容的には県議会の説明とまったく同じだ。

   この時期になぜ国が突飛にテレビCMを流すのかという疑問がわく。素直に解釈すれば、国は非常事態(北朝鮮への斬首作戦の実行など)の情報を事前にアメリカ側から入手して、それに備えているのか、とも受け取れる。うがった見方をすれば、「共謀罪」「加計学園問題」などで内閣支持率が下がっている昨今で、北朝鮮の危機感を国民に示すことで世論を引き締めたいのか、とも読める。いずれにしても、日本海側に住む一人として心が穏やかではない。

⇒21日(水)夜・金沢の天気    あめ