⇒メディア時評

★昔ハニートラップ、今ファーウェイ

★昔ハニートラップ、今ファーウェイ

  けさ12日のニュースによると、中国の通信機器メーカー「ファーウェイ」の副会長(CFO)がアメリカの要請によりカナダで逮捕された事件で、カナダ・バンクーバーの裁判所は保釈金を納付することやパスポートの提出などを条件に保釈を認められた。保釈金は1千万カナダドル(8億5千万円)。逮捕はアメリカのイランに対する制裁に違反した疑いだったが、むしろ、ファーウェイの製品にサイバーセキュリティーの問題があるとして、5Gなどの通信ネットワークから外す動きが世界各国で相次いでことの方がニュースになっている。

  すでにアメリカ政府はサイバー攻撃による安全保障上のリスクがあるとして、ファーウェイなど中国の通信機器の製品を政府内で使うことを禁止する方針を示し、さらにアメリカ軍の基地が置かれている国に対しても使用しないよう求めているようだ。これを受けて、日本政府もリスクを避けるため、各省庁が通信機器を調達する際の内規について、調達価格のみを基準としてきたこれまでの方針を改め、安全保障上のリスクも考慮に入れるよう改め、事実上ファーウェイなど中国の通信機器の製品の排除に動き出した。

  この一連のニュースに接すると、2004年5月にあった日本の上海総領事館の事務官が自殺した事件を思い出す。事務官は上海のカラオケ店で知り合った中国人女性と親密になり、そのうち領事館の情報(公電を読み解く暗号システムなど)を要求されるようになり、結局、「一生あの中国人達に国を国を売って苦しまされることを考えると、こういう形しかありませんでした」と遺書を残し自殺した。当時週刊誌などでは「ハニートラップ事件」などと報じられた。

  昔ハニートラップ、今ファーウェイなのだろうか。中国のあくなき情報戦は現在、通信網ネットワークに仕組まれているようだ。5Gという次世代通信網にいち早く手を打ち、民間企業を通じて輸出というカタチで世界に情報網を張りめぐらせる、驚くべき中華思想、「世界戦略」だ。今後、アメリカと中国の貿易戦争は単なる経済問題ではなく、世界の安全保障にかかわる問題として、その対立の構図がくっきり浮かんでくるだろう。(※写真は、12日付イギリスBBCニュースWeb版)

⇒12日(水)朝・金沢の天気  あめ

☆司法取引のモデルケース

☆司法取引のモデルケース

   「Power tends to corrupt, and absolute power corrupts absolutely.(権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対に腐敗する)」。イギリスの歴史家、ジョン・アクトン(1834-1902)はケンブリッジ大学で近代史を教え、フランス革命を批判した。「権力の腐臭」を感じ取っていたのだろう。きのう(19日)日産自動車のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反の疑いで東京地検特捜部によって逮捕されたニュースを知って、アクトンの格言を思い出した。

    当日午後10時から日産グローバル本社(横浜市)で行われた緊急会見の様子を新聞メディア系のライブ動画配信で見入った。午後10時02分、西川廣人CEOが冒頭で「非常識な時間の会見で申し訳ありません」と謝罪。続けて、「本人(ゴーン容疑者)主導の不正行為が3点あった。1.有価証券報告書へ実際より減額した金額の記載、2.目的を偽って当社の投資資金を支出、3.私的な経費支出。内容を細かくは触れられないが、会社として断じて容認できない」と語気を強めていたことが印象的だった。と同時に、単に不祥事を起こした会社の謝罪会見とは違い、用意周到な会見であると察した。

    その用意周到さは、記者からの質問に対するCEOの返答の中身から感じ取れた。記者からの「私的流用との指摘だが、特別背任ではないか、なぜ金融商品取引法違反なのか」との問いに、CEOは「刑事罰対象の部分は私には判断できない。この件は大きく分けて3つの事案であるが、どれをとっても取締役の義務を大きく逸脱するだけではなく、解任に値するとの意見を専門家、弁護士から意見をいただいている」と述べた。あわせて、今月22日にゴーン容疑者の代表権と会長職を解くことを提案する取締役会を開く予定だと説明した。逮捕のタイミングを予め想定した取締役会であることは推測できる。

     もう一つ。記者の「ゴーン氏の権力がどのように形成され、クーデターのような形で崩壊したのか」との質問。CEOは「クーデターとおっしゃったが、事実として見た場合、不正が内部通報によって見つかり、それを除去するというのがポイントであって、権力集中に対しクーデターが起きたとの理解ではない。そのように説明もしていない」と社内の内紛劇ではないと否定した上で、「より公正なガバナンスに持っていくのが課題」と説明した。

    会見が終了したのは午後11時25分だった。司法取引に関して、CEOは「コメントできない」と会見で述べていたが、否定はしなかった。会見の印象で言えば、以下のプロセスだろう。最初に内部通報による問題の提起、次に弁護士を間に入れての東京地検特捜部との司法取引、その上で逮捕のタイミングを見極めての記者会見。ことし6月に施行された日本の司法取引は、検察官と被疑者(今回の場合、日産自動車)、弁護士の3者の連署で書類を作成することになっていて、会社組織内で発覚した汚職や脱税、談合などの経済犯罪に威力を発揮するとされている。今回の日産での摘発は司法取引のモデルケ-スと言えるかもしれない。

⇒20日(火)夜・金沢の天気   くもり

☆ポリティカル・コレクトネス疲れ

☆ポリティカル・コレクトネス疲れ

      アメリカのトランプ大統領をどう評価すればよいのか、世界の政治が混乱しているようにも見える。貿易戦争の「トランプと中国」、CNNを目の敵とする「トランプとメディア」、核合意離脱の「トランプとイラン」などさまざま対立軸をつくり、妙な表現かもしれないが攻撃ならぬ「口撃」で「頑張っている」。アメリカ中間選挙後にトランプ氏はフランスのマクロン大統領とパリで会談(現地時間9日)=写真はホワイト・ハウスのツイッターから=、NATOの防衛費の負担について、アメリカへの依存が大きいと不満を述べ、公平に負担するよう求めたと報じられた。相変わらず「頑張っている」。

   災害大国の日本では「地震、雷、火事、おやじ」という言葉がある。この世で、特に怖いものを順に並べた言葉なのだが、この「おやじ」は突然怒り出し、難癖をつける厄介者という意味合いだと解釈する。アメリカ・ファーストを唱え、世界に難題をふっかけるトランプ氏はまさに「世界のおやじ」ではないか。では、アメリカの中間選挙では、嫌われ「おやじ政権」のもとで上院の過半数を占めることができたのだろうか。アメリカで一体何が起きているのか。

   デモクラシー(民主主義)という価値観を創造し、グローバルに展開してきたのはアメリカだったと言っても異論はないだろう。1862年9月、大統領のエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を発して以来、自由と平等という共通価値を創り上げる先頭に立った。戦後、共産圏との対立軸を構築できたのは資本主義という価値ではなく、自由と平等という共通価値だった。冷戦終結後も、共通価値は性や人種、信仰、移民とへと広がり深化していく。アメリカ社会では、こうした共通価値を創ることを政治・社会における規範(ポリティカル・コレクトネス=Political Correctness)と呼んで自負してきた。

   ところが、ここに来てポリティカル・コレクトネスの先頭に立ってきたアメリカの白人層は疲れてきた。そして「これは偽善ではないのか」と思うようになってきた。日付は失念したが先日、NHKの特集番組の中で、女性人権団体のスタッフに「男より女の人権が強いと主張するのはもう止めてくれ」と白人男性が主張するシーンがあった。この論法はトランプ氏がマクロン氏に向けた主張方法と同じだ。アメリカにこれ以上責任を負わせるな、と。

   誰もが自由と平等だが、それが誰かの犠牲に上に成り立っているとすれば偽善だ、とアメリカ社会の白人層が言い始めた。声なき世論の盛り上がりのタイミングにトランプ氏が大統領選挙に勝ち、そして中間選挙でも上院を制した。トランプ政権のいまの在り様をポピュリズム(Populism)と称する向きもある。ポピュリズムは、国民の情緒的支持を基盤として、政治指導者が国益優先の政策を進める、といった解釈で、アメリカ・ファーストの支持層は白人労働者と言われる。私見だが、自由と平等の共創の「ポリティカル・コレクトネス疲れ」は白人インテリ層もそうではないのか。
   
   このポリティカル・コレクトネス疲れとポピュリズムが同調してヨーロッパでも「おやじ風」が吹いている。

⇒11日(日)午前・金沢の天気    くもり後はれ

★マスからターゲティングの時代、TVの正念場

★マスからターゲティングの時代、TVの正念場

  アメリカ議会の中間選挙の結果をNHKのインターネット中継で見ていた。放送と同時送信だ。正午すぎに、NHKはアメリカABCテレビの速報として、トランプ大統領の与党・共和党が上院で半数の議席を獲得することが確実となり、共和党が多数派を維持する見通しになったと伝えた。放送より数十秒の遅れタイムラグだったが、画面や音声の質での問題はまったくない。12時35分ごろには、中間選挙以外のニュースの時間となったため、同時配信は放送のみとなり、ネット配信は中断した。同時配信はPCかスマホがあればどこででもテレビが視聴できる時代のニーズだと実感した。

  10月29日付の読売新聞夕刊で「地域限定5G新設」の記事が掲載されていた。「5G」は第5世代の無線通信で、現行の100倍を高速通信が可能になり、あらゆるものがネットにつながる「IoT」のインフラとして期待されている。記事によると、過疎地における遠隔医療や自動運転のモデルとして地域限定で新設していく。この記事を読んで放送と通信の同時配信へのチャンスが一足早く訪れるのではないかと考える。5Gとの相乗効果はもう一つある。12月1日からNHKや民放で「4K・8K」放送が始まる。8Kがもたらす革新的な映像だろう。放送とネットの同時配信、そして「4K・8K」の高画質化、まさにテレビに「変革の時代」が訪れる。

  しかし、動画に対するユーザーのイメージに変化が起きている。それはテレビよりネットが先んじている。TikTok(ティックトック)動画サイトは15秒の動画が受けている。リップシンク(音楽や音声に合わせて口を動かしたり踊ったりしたりすること)の仕草が面白く、10代の少年少女に人気を得ている。知人から聞いた話だが、小学校4年の娘が「将来はユーチューバーになりたい」と言っている、という。動画は視聴する時代から創る時代へとシフトし、ネット動画に魅力を感じている世代が広がっているということだろう。

   これまでテレビの番組は、マス(視聴者全体)へのアピールだけで役割が事足りてきた。ところが、AIなどのイノベーションにより、ネットでは一人ひとりのユーザーの特性に応じた「ターゲティング」が普通になってきた。さらに消費者行動もシップス(SIPS)と称される、Sympathize(共感する)、Identify(確認する)、Participate(参加する) Share&Spread(共有・拡散する)のSNS時代を象徴するような動きが広がっている。

   5G時代の中で、マスからターゲティングへのニーズが加速するだろう。マスを追い求める地上波テレビの未来戦略をどう読み解けばよいのか。視聴率というテレビ業界の絶対的な価値基準を突破できるのか。TVにおける「デジタル・ファースト」の戦略をどう描くのだろうか。NHKの同時配信を視聴してふとそんなことを考えた。

⇒7日(水)午後・金沢の天気   はれ

☆樹木希林と宝島社のメッセージ性

☆樹木希林と宝島社のメッセージ性

       つい先日(10月23日)に映画『日日是好日』を鑑賞したばかりだったので、29日付の朝刊の見開き全面広告を広げて唸ってしまった。「樹木希林の存在感って何だろう。それにしても、出版社の宝島社はなぜそこまでやるのか」

   広告は樹木希林が「あとは、じぶんで考えてよ。」と、自分で内田裕也や長女の本木雅弘らファミリィに呼びかけている構図だ。左面上には「絆というものを、あまり信用しないの。期待しすぎると、お互い苦しくなっちゃうから」と、いかにも樹木希林が言いそうなメッセージが掲載されている。生前のインタビューから取ったコメントのようだ。

   宝島社は2016年1月5日付でも、「死ぬときぐらい好きにさせてよ。」の15段カラー見開き広告を掲載した。樹木希林が草花とともに水面に浮かぶ様子を、イギリスの画家ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」をモチーフに写真で表現していた。とても話題になった。

   宝島社はほかにも、2017年1月5日付でも2ページの見開き白黒で、向かって左面に真珠湾攻撃の写真を、もう一方に広島に落とされた原爆によってできたきのこ雲の写真を配置してある。そして、「忘却は、罪である。」「子孫のために、借金を残す。」(2013年)、「ヒトは本を読まねばサルである。」(2012年)など。過去の作品の多くは、数々の新聞広告賞を受賞している。1998年から、商品では伝えきれない「企業として社会に伝えたいメッセージ」を発信したいと新聞広告を掲載している。

   出版社のメッセージ性としてはインパクトがある。実にうまい。宝島社のホームページには以下の「広告意図」が掲載されていたので、全文を紹介する。

樹木希林さんが、
2018年9月に逝去されました。
死生観、人生観、恋愛観、仕事観…、
樹木希林さんが残された数々の言葉をもとに、
世の中に向けて、樹木希林さんからの最後の言葉として
2つのメッセージをつくりました。
どう生きるか、
そして、どう死ぬかに向き合った樹木希林さんの、
地球の人々への最後のメッセージ。
どう生きるか、どう死ぬかについて、
あらためて深く考えるきっかけになれば幸いです。

⇒1日(木)夜・金沢の天気      はれ

★5Gに突入、放送はどうする

★5Gに突入、放送はどうする

   きょう(29日)の読売新聞夕刊で「地域限定5G新設」の記事がスクープされている。「5G」は第5世代の無線通信で、現行の100倍を高速通信が可能になり、あらゆるものがネットにつながる「IoT」のインフラとして期待されている。記事によると、過疎地における遠隔医療や自動運転のモデルとして地域限定で新設していく。この記事を読んで放送と通信の同時配信へのチャンスが訪れたのではないかと考える。

   今月4日付「月刊ニューメディア」のメールマガジンに5Gと放送の可能性を考えるヒントがあった。編集長の吉井勇氏の許可を得て、以下紹介する。10月3日、早稲田大学の大隈記念講堂大講堂でNAB(National Association of Broadcasters=全米放送事業者協会)のゴードン・スミス会長が「変革の時代にこそ変化をつかむ」をテーマに講演を行った。NABは米国のテレビ5百社とラジオ9千社で成る団体で、80年の歴史を持つ最古にして、最大の放送事業社団体。日本で言えば、日本民間放送連盟に相当する。

   ゴードン会長は「変化の時代」について、電波のスペクトラムと通信によるインターネットサービスのコンバージェンス(convergence=共通化)であると述べた。この変化に対し、放送業界は新技術を含めた積極的な投資を行い、新たなビジネスモデルを生み出せ、と話しを切り出した。

   アメリカの場合、電波の割り当てを入札方法による有効活用のチャンスを拡大している。これまで放送事業者に優先分配されたものから、もっと通信事業社に提供しようという政策転換で、放送用が大幅に減らされてきている。また、放送方式を地デジはATSC1.5という規格だったが、今度はATSC 3.0に変えることを決めている。この方式の特徴は現在の普及している方式と互換性がないこと。アメリカは大胆に構造転換を図る。その代り、この次世代テレビ方式は「柔軟性に富み、高画質、ネットとの親和性によるアドレッサブル(addressable=個別配信)の番組やCMの新サービス、革新的なオーディオ、そして命を守るための災害時などへの緊急放送など」を挙げている。つまり、放送方式をIPベースにチェンジしたことで大きなメリットに繋がるベースを築いた。 

   ゴードン会長は「こうした新技術の導入が、ローカルコミュニティへの貢献であり、ジャーナリズムの表現の自由により真実を伝えるという放送本来の役割を実現することに貢献する」とデジタル技術変革の時代について、その基本の考えを示した。講演内容は格調高いものだった。世界のさまざまな場で語ってきたことで鍛えられた内容であり、非常に洗練されたものだった。ビジョンを示すことで、先が見えにくい変化の時代を前に進むことを後押しするという役割をNABが担っているという矜持を感じさせるものだったという。 

   メールマガジンでは「ただ一つの不満」として、世界のIT巨人がブロードな技術を使ってコンテンツ提供サービスへ意欲を示し、多チャンネルサービスを展開しようという巨大な波に放送事業者はどう迎えるのか、どう戦うのかと問題提起も付け加えている。

   日本では12月1日から「4K・8K」放送が始まる。8Kがもたらす革新の映像だろう。これも5Gとの相乗効果が得られる「変化の時代」になるかもしれない。アメリカのようなダイナミックな構造転換は日本のテレビ業界では可能なのか。ただ、日本ではインターネット広告費が4年連続二ケタ成長であるのに対し、テレビは前年比99%と減少傾向にある(2017年・「電通」調べ)。数年後にはテレビはネットに抜かれる情勢だ。民放テレビ局が逆境にある中で、5G突入の時代をどう乗り切るのか、伸るか反るかの大勝負に出るのかどうか、見どころだ。(※写真は、ヴァチカン美術館のラファエロ作『アテネの学堂』。プラトン(左)が指を天に向けているのに対し、アリストテレスは手のひらを地に向けている)

⇒29日(月)夜・金沢の天気   くもり

☆ジャーナリズムを守る国々

☆ジャーナリズムを守る国々

        サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害疑惑をようやくサウジアラビア政府は認めたものの、関連ニュースによると、トルコの総領事館内で口論から殴り合いによるものだったとして、あたかも偶然と過失が重なったと言わんばかりだ。無理した抗弁のような印象だ。取りざたされているムハンマド皇太子の関与もまったく認めていない。一つ言えることは、今回の公式発表でサウジに対する国際評価は明らかに下がった。

   国外での暗殺の場合はスナイパー(狙撃手)を雇って暗殺というケ-スは多々ある。総領事館にはトルコの警察権がおよばない治外法権があるので、周到に準備された殺害なのだろう。カショギ氏が総領事館に入ったのは今月10月2日、結婚届けが目的だったとされる。総領事館で待ち伏せていた「暗殺部隊」によって拘束された。「薬物を投与して無理やり本国(サウジ)に連れて行く」と脅されたカショギ氏は抵抗し、首を絞められて死亡したと発表されている。今後の事実解明の手がかりはカショギ氏の遺体の発見が鍵となるだろう。

    こうしたサウジの公式発表にフランス、ドイツ、イギリスの外務大臣が21日、事件のさらなる真相解明を求める共同声明を発表している。以下、在日フランス大使館のホームページ=写真=から引用する。

    「この殺人を正当化できるものは何一つなく、われわれは最も強い表現で断固非難します。表現の自由および報道の自由の擁護はフランス、ドイツ、イギリスにとって極めて重要な優先課題です。ジャーナリストに対する脅迫、襲撃、殺害行為はいかなる状況でも容認できず、われわれ3カ国にとって重大な懸念事項です」「われわれは予備的結論を発表したサウジアラビアの声明に留意します。しかしサウジアラビアの捜査で現在までに提起された仮説を超えて、10月2日に正確に何が起こったのかを明らかにすることが喫緊の課題です。これらの仮説は信頼に足ると判断された事実で裏打ちされなければなりません。われわれは徹底的かつ透明で信頼に足る真相究明のため、より一層の努力が必要であり、期待されていることを強調します。われわれは何が起こったかについて今後受ける追加的な説明の信頼性と、このような卑劣な事件が繰り返されることがないよう、今後二度と生じることがないようにするという信念に基づいて、最終的に決定を下します」

    3ヵ国は今月14日にも共同声明を発表し、「表現の自由や報道の自由を守ることは極めて重要な優先事項であり、いかなる状況下であっても、ジャーナリストを脅し、攻撃し、殺害することは受け入れられない」と強調している。そして今回は「われわれは責任者が明確に明らかにされるまで、事件の犯人が真の訴訟で責任を負うまで、捜査が徹底的に続けられるよう要求します」とまで言及している。ジャーナリズムを守るためにこれほど敏感に行動する3ヵ国。敬服に値する。

⇒22日(月)午後・金沢の天気   はれ

☆北に「アダムの創造」は実現するのか

☆北に「アダムの創造」は実現するのか

    12年前の2006年1月にローマを用務で訪れた。当時、金沢大学が国際貢献と位置づけていた教会壁画の修復プロジェクトの現状を取材するのが目的だった。カトリックの総本山であるサン・ピエトロ大聖堂なども見学した。ローマの街を歩くと、面白い広告があった=写真=。バイクのレンタルの屋外広告だ。指先を軽くタッチする、映画「ET」のモデルにもなったといわれるあの名画、ミケランジェロのフレスコ壁画『アダムの創造』がモチーフなのだ。名画のモチーフが広告デザインとして普通に街中で使われていて、カトリックの総本山・バチカン市国を抱えるローマらしい光景だと思った。

   『アダムの創造』は、神がアダムを最初の人類として息を吹き込んだという、旧約聖書の「創世記」より創造の物語を描いたとされる。神とアダムの手が触れそうになっている様子は、慈しみのシンボルとされるが、その光景をイメージさせるニュースがあった。けさのNHKニュースによると、韓国の文在寅大統領がきのう(18日)ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王と会談し、北朝鮮の金正恩委員長からの訪朝の要請を伝え、法王も前向きな姿勢を示したと韓国大統領府の発表を伝えている。

   ニュースをさらに引用すると、文大統領は9月19日の南北首脳会談の際、金委員長がフランシスコ法王の訪朝を歓迎する考えを示していたことを踏まえ、「金委員長が招待状を送ってもよいか」と質問した。これに対し、フランシスコ法王は「文大統領の言葉でも十分だが、公式な招待状を送ることが望ましい」と応じた。そのうえで、「招待状が来れば必ず返事をするし、行くこともできる」と述べて、訪朝に前向きな姿勢を示したという。一方、ローマ法王庁も会談後に声明を出し、朝鮮半島の平和と発展につなげる取り組みを高く評価するとしたが、訪朝についての言及はなかった。一方で、北朝鮮では信仰の自由が侵害されていると指摘していて、法王の訪朝が実現するかどうかは不透明と伝えている。

   このニュースを視聴して不可解に思ったのは、なぜ文大統領がわざわざこのメッセージを伝えにバチカンに行ったのか。金委員長からそのような伝言を託されたとしても、文大統領は「信仰の自由をまず解禁しなさい」と金委員長に諭すのが先ではないのか。あるいは、金委員長は2001年までの4年間、スイスに留学した経験があるので、カトリック教にはそれなりに理解があるのかもしれない。フランシスコ法王の訪朝を契機に信仰の自由を解禁すると世界にアピールする「サプライズ」があるのかもしれない。

   もしそうならば、フランシスコ法王と会うときには、金委員長は自らの「懺悔」「告白」「悔い改め」を述べることが必要ではないのか。それがなければ、信仰の自由を解禁を宣言したとしても、トランプ大統領と非核化の約束したもののいっこうに進展しない状況の同じ轍を踏むのではないかと世界は読んでしまう。

   金委員長がフランシスコ法王から祝福される「アダムの創造」が実現するのか、あるいは単なる「広告」か「パロディ」か。このニュースの続報が楽しみだ。

⇒19日(金)朝・金沢の天気    はれ

★トランプ大統領の「漂着ゴミ」発言

★トランプ大統領の「漂着ゴミ」発言

    きょう朝のテレビニュースで、アメリカのトランプ大統領が、アメリカに漂着するゴミが膨大な量にのぼり、アメリカが費用を負担するのは不公平だと不満を示し、対抗措置を取る考えを示したと報じている。トランプ氏としては環境問題に触れた意外な発言だと思い、ホワイトハウスのホームページなどをチェックした。

    トランプ氏は11日、ホワイトハウスで開かれた関連法署名式典で記者団に対して語った。中国や日本を含む多くの国から、毎年800万㌧以上のごみがカリフォルニア洲などの海岸に漂着していると述べ、海洋生物やアメリカの経済そのものを傷つけていると批判した。トランプ氏は「海洋ゴミの責任は各国にある」との認識を示し、対抗措置を取る考えを示した。ニュースでは日本に費用負担を求めてくる可能性などが伝えられているが、むしろこれを機会に海洋ゴミについての地球規模の海洋法をさらに整備すべきではないかと考える。

          海洋ゴミと生態系について知られた国際条約はバルセロナ条約(汚染に対する地中海の保護に関する条約)だろう。UNEP(国連環境計画)の主導で1976年に本条約が採択され、21ヵ国とEUが締約国が加盟している。特別保護地域などを特定し、海洋環境、生態系バランス、自然や文化遺産として重要な海洋や沿岸地域を保護するための対策が盛り込まれている。 

    現在UNEPで条約を担当しているアルフォンス・カンブ氏と能登の海岸をテーマに意見を交わしたことがある。カンプ氏とは彼が「いしかわ国際協力研究機構(IICRC)」の所長時代に金沢で知り合い、何度か能登視察に同行した。廃棄物が漂着した海岸を眺めながら、日本海は生け簀(いけす)のような小さな海域であり、このまま放置すれば大変なことになるとカンプ氏は危機感を抱いていた。そのとき、バルセロナ条約によって、地中海の海域が汚染されるのを何とか防いでいると教えてもらった。「日本海の環境を守る能登条約が必要ですね」とカンプ氏が語ったことが印象的だった。

    地球規模で海洋投棄を禁止する条約には「ロンドン条約」がある。各国の負担を要求する以前に、トランプ氏にはぜひロンドン条約の改正を主導して、魚類残さや魚類の産業上の加工作業によって生じる物質と天然に由来する有機物質以外はすべて海洋投棄を禁止すると改めてほしいものだ。

(※写真は奥能登国際芸術祭2017の深沢孝史作「神話の続き」。白い鳥居は能登の海岸の漂着ゴミであるボリタンクやペットボトル、漁具などでつくられた。ゴミにはハングル文字や中国語、ロシア語の表記のものが目立つ)

⇒12日(金)朝・金沢の天気    くもり

☆アメリカ 大荒れ

☆アメリカ 大荒れ

       アメリカが大荒れだ。アメリカのCNNテレビによると、大型ハリケーン「マイケル(Michael)」が10日午後1時(日本時間11日午前2時)、フロリダ州に上陸した=写真・CNNWeb版=。風の勢力は5段階で上から2番目のカテゴリー4。アメリカ大陸に上陸したハリケーンとしては1992年の「アンドルー」以来の強さとなると、州政府は非常事態宣言を出し、厳重な警戒を呼びかけている。

  風の強さは半端ではない。フロリダの上陸地点に近いメキシコビーチで最大風速70㍍の暴風だった。その後はカテゴリー2に引き下げられたものの、メキシコビーチの住民の話として、コンクリートの建物内にいても暴風による揺れや振動を感じ、一部のオフィスビルや民家の窓ガラスは暴風で吹き飛ばされて粉々になったという。住宅の一部は高潮にのみ込まれた。49万戸が停電に見舞われ、被害に遭った病院では発電機が使えなくなり、患者を安全な場所に避難させているという。

  Deadly Hurricane 、死者が出るような、強烈なハリケーン。命の危険を伴う高潮や猛烈な暴風を伴って北上を続けていて、アラバマ、フロリダ、ジョージア、サウスカロライナ、ノースカロライナの各州には警報が出されている。

  株価も大荒れだ。10日のニューヨーク株式市場のダウ平均株価の終値は、前の日に比べて831ドル安い2万5598ドルだった。率にして3.1%の下落。インフレへの懸念から長期金利が上昇し、これが企業収益を圧迫するとの見方から全面安の展開となったようだ。これを受けて、11日の日経平均株価は一時1000円以上も急落するなど荒れの連鎖だ。

  きょうの金沢は朝から寒さを感じる。予報によると、一日中雨で気温は19度までしか上がらない。世界に被害をもたらす異常気象、世界の経済は持つのか。少し気が滅入る。明るいニュースに飢えているのか。

⇒11日(木)午前・金沢の天気    あめ