⇒メディア時評

★「脱亜」の時代状況

★「脱亜」の時代状況

   日経新聞社が郵送による世論調査の特集を組んでいた(21日付)。同社は毎月電話を調査を実施しているが、書面の方が「じっくりと回答できる」という特性を生かしたという。調査は2018年10月-11日で回答は1673件、回収率は55.8%。その結果を自分なりに考察してみたい。

   意外な結果だと思ったのは、日本の8つの機関や団体、公職の信頼度を尋ねた結果だった。信頼度1位は60%で自衛隊だった。次は裁判所で47%、警察43%と続く。ある意味でまともな結果かもしれない。昨年は地震や洪水など自然災害が相次ぎ、まさに災害列島と化した。その災害現場で被災者の救出や復旧にあたっていた自衛隊員の姿が評価されたのだろう。

   逆に、「信頼できない」トップが国会議員56%、次がマスコミ42%だ。ひとくくりにマスコミと言っても範囲は広いが、その一員でもある日経新聞社もショックな数字だったろう。私自身この数字には正直「困った」との印象だ。ネット上ではフェイクニュースが氾濫している。確かな取材手法で情報を世に投げるのがマスコミの使命だと解釈している。そのマスコミが「信頼できない」となるとファクトチェック(信憑性の検証)は誰が担うのか。

   もう一つ困った結果を。好感度が低い国、「嫌い」「どちらかといえば嫌い」は北朝鮮82%、中国76%、ロシア、韓国と続く。「近隣外交」という言葉ほど面倒なものはないと、日本人の多くは思っているのではないだろうか。尖閣諸島をめぐる中国側の執拗な動きは連日のように、そして韓国軍による自衛隊機へのレーダー照射問題ではへきえきとしている。

   134年も前、隣国に対する憤りの念を持った人物がいた。福沢諭吉だ。主宰する日刊紙「時事新報」の1面社説にこう書いた。「・・独リ日本の旧套を脱したるのみならず、亜細亜全洲の中に在て新に一機軸を出し・・」(1885年3月16日付、本文はカタカナ漢字表記)。全文2400字に及ぶ記事の中で近隣諸国についてこう述べている。「日本を含めた3国は地理的にも近く”輔車唇歯(ほしゃしんし)”(お互いに助け合う不可分の関係)の関係だが、今のままでは両国は日本の助けにはならない。西欧諸国から日本が中国、朝鮮と同一視され、日本は無法の国とか陰陽五行の国かと疑われてしまう。これは日本国の一大不幸である」(鈴木隆敏編著『新聞人福澤諭吉に学ぶ~現代に生きる時事新報~』より引用)。 

  近隣諸国と真逆に、好感度が高いのはイギリスとオーストラリアがそれぞれ72%でアメリカ67%と続く。近隣諸国との関係性は福沢が論じた当時の状況とダブる。「脱亜」は福沢の言葉だが、その後「脱亜入欧」が広がった。福沢がこの日経の調査を見たらどうコメントするだろうか。(※写真は福沢諭吉像=慶応義塾大学三田キャンパス)

⇒22日(火)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆「50円払って」と請求すればすむ話が

☆「50円払って」と請求すればすむ話が

    夕方のNHKニュースを乗用車のラジオを聞いていて、ちょっと違和感を感じた。福岡県那珂川市のコンビニで、コーヒー用の100円のカップを購入したのにセルフ式コーヒーマシンで150円のカフェラテを注いだとして、62歳の男が窃盗の疑いで逮捕された、というニュースだ。捕まったのは同市に住む62歳の会社員で、100円のコーヒーカップに150円のカフェラテを注いでいるという常連客からの指摘が店に寄せられ、店が警戒していたところ、男がカフェラテを注いでいるのを確認した。店のオーナーが男に問いただしたところ、男は「ボタンを押し間違えただけだ」と言い逃れようとしていた。警察の調べに対しては、容疑を認めているという。

    ニュースを聞いたときは「こんなヤツもいるだろうな」というくらいの印象だったが。違和感を感じ始めたのは、そもそもこの話はコンビニ側が男に「50円払ってください」と請求すればすむ話ではないか、なぜ男は逮捕されなけらばならなかったのか、ということだ。逮捕は証拠隠滅や逃亡があるのであれば、その可能性はあるだろう。あるいは現行犯逮捕ということもあるが、警察が逮捕にいたった経緯がよく分からない。

    NHKニュースでは、、男は以前にも支払った代金よりも高い飲み物をカップに注いでいたとみられるということで、警察がさらに余罪を調べている、という。それにしても、仮に過去に100回繰り返していたとしても、本人は警察の聴取に対し認めているので、店に謝罪と5千円を払えば解決する話ではないか。思い過ぎかもしれないが、これは別件逮捕かもしれないと勘ぐってしまう。

    もう一つ違和感がある。このニュースをNHKが全国放送しなければならないのか。確かにコンビニの時代を象徴するような話で、「逮捕」となればニュース価値はあると判断したのだろうか。むしろ、NHKがこのニュースをあえて全国放送で取り上げたのには。もう少し深いワケがあるのではないかと勘ぐっている。それは、ポイントカードをめぐって、カードの運営会社が会員の情報を裁判所の令状なしに操作当局に提供していることが問題となっているからだ。

    これは推測だが、もし男がポイントカードや電子マネーカードを使っていたとすれば、コンビニ側は住所と氏名、コーヒーを購入した回数などを警察側に情報提供をしているだろう。警察は男にこの証拠を突き付けたので、容疑を認めたのだろう。NHK報道が狙っているのは、「カードの落とし穴」という次なるニュースではないだろうか。プラバシーを保護すべきコンビニ側だが、不正を摘発するためにあえて情報を提供、警察側もあえて逮捕に踏み切って事件扱いにした。 「50円払ってください」で済む話がここまで事件として大きくなった背景にカードという情報社会の闇がある、とNHKは報じたいのかもしれない。考えすぎか。

⇒21日(月)夜・金沢の天気    あめ

☆ファーウェイ問題、どこまで

☆ファーウェイ問題、どこまで

  きょう18日のニュースで、中国の通信機器「ファーウェイ」の創業者であるCEO(最高経営責任者)が中国の本社で日本メディアのインタビューに応えて、顧客の機密データの提出を中国政府に求められても提供しない、これまでも提供したことはないと述べたと報じられている。

  ファーウェイは高速大容量の次世代通信方式「5G」の分野で、技術やコスト競争では代表的な企業の一つ。特許の出願件数も多く、国連の専門機関、WIPO(世界知的所有権機関)を通じた国際特許を出願した件数でも、企業別でファーウェイが世界1位となっている(2017年の国際特許登録の出願数、WIPOプレスリリース)。12月1日にカナダのバンクーバー国際空港で、CEOの娘の副会長が、アメリカの要請でカナダ捜査当局に逮捕された。この事件がきっかけで、アメリカがファーウェイの5Gに安全保障の上で懸念があり、締め出しに動いていることが世界に拡散した。

     会見したCEOは機密データの提出を政府に求められても提供しないと述べたが、腑に落ちないのが、2017年6月に施行された中国の「国家情報法」だ。法律では、11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。CEOがいくら外向けに機密データを政府に提供しないと述べたとしても、中国国内では国家情報活動に協力しなければならないという法律があるではないか、と懸念を抱いてしまう。

   副会長がカナダで逮捕されて以降、中国ではカナダ人が相次いで逮捕され、今月14日には中国で麻薬を密輸したとして懲役15年を言い渡されたカナダ人がやり直し裁判で死刑を言い渡されている。これは中国政府の報復措置ではないかと世界中が見ているに違いない。中国側の過敏とも言えるこの反応が、むしろファーウェイの国家情報活動との関わりを示唆するのではないか。

   中国は「一帯一路」の巨大な経済圏構想を掲げ、アジアやアフリカの各国に融資し、港湾や鉄道、情報通信のインフラ整備を積極的に展開している。しかし、有事の際に中国の安全が脅かされると判断されれば、容赦なくファーウェイは政府や軍にハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。アメリカはそうなる前に国防権限法を昨年8月発効させ、中国5社から政府機関が製品を調達するのを今年8月から禁止、2020年8月からは5社の製品を使う企業との取引も打ち切るなど徹底する。アメリカは日本など関係国にも働きかけを強め、オーストラリア、ヨーロッパ各国も追随する流れだ。

   アメリカの検察当局はファーウェイがアメリカの携帯電話会社「Tモバイル」からスマートフォンのテストに使うロボットの技術を盗んだ疑いで捜査していると、ウォール・ストリート・ジャーナルのWeb版(16日付)=写真=が伝えている。起訴されれば、知的財産権の侵害に対しても、アメリカだけでなく国際世論が沸騰するのではないだろうか。

⇒18日(金)夜・金沢の天気   あめ

★どう読む、隣国の動き

★どう読む、隣国の動き

      海上自衛隊の哨戒機P1が韓国の駆逐艦から射撃管制用レーダーで照射された問題ではっきりしたことは、韓国側は客観的な証拠をまったく持っていないということではないだろうか。きょう14日、日本と韓国の防衛当局による協議がシンガポールで行われていると報じられているが、韓国の報道官は「お互いの誤解を解消するために事実関係を確認して、十分な意見交換を行う予定だ」とコメントするだけで、日本側のP1が韓国側を威嚇したという証拠は何一つ示されていない。日本側はレーダーの電波情報を非公式に交換して事実を明らかにしようと提案したが、韓国側は交換に応じなかったようだ。このまま膠着状態が続けば、日本側は映像に続いて電波情報を公開せざるを得ないのではないだろうか。

    一方、モスクワでは北方領土問題を含む平和条約交渉をめぐって日本とロシアの外務大臣の会談がきょう始まった。両大臣は、安倍総理とプーチン大統領が「平和条約を締結したあと歯舞群島と色丹島を引き渡す」とした1956年の日ソ共同宣言をベースに交渉を加速することで合意したことを受けて、具体的な妥協点を探るようだ。1週間後の21日に予定されている日本とロシアの首脳会談で平和条約の条文作成作業の開始を確認し、6月のG20サミット(大阪)で再度、首脳会談を行い、平和条約交渉の大枠合意を目指すという外交スケジュールが組まれている。

    ただ、この交渉も一筋縄ではいかないだろう。ロシア側からは「解決のシナリオを一方的に押しつけている」と日本側を批判する発言が噴き出しているようだ。実際、外相会談でラブロフ氏は「第二次世界大戦の遺産として両国にふりかかってきたもので、大戦の結果は、国連憲章や連合国のさまざまな文書で確定している」と述べ、北方領土返還という日本側の言い分そのものが間違っていると疑義を呈している。交渉のテーブルに就くという雰囲気が読み取れない。一方で、ロシアは北方4島のうち、色丹島などで427人に計420㌶の土地が無償貸与しているという(読売新聞Web版)。実質的なロシア領土化を進めているではないか。

    中国の無人の月面探査機が月の裏側への着陸に成功し、探査車を月面に降ろして地質構造や資源などを調査している。中国の国家航天局(宇宙局)による記者会見で、月の基地の建設に向けた調査を国際協力で進めていく姿勢を示したと報じられている。一方で、中国経済への懸念が出ている。中国税関総署がきょう日発表した2018年12月の貿易統計は、輸出額は前年同月比4%減の2212億ドル(約24兆円)、輸入額は同8%減の1641億ドルだった(日経新聞Web版)。中国の個人消費が振るわず、自動車販売も大幅な減少が続くなど、「背伸び経済」が曲がり角を迎えたようだ。ひょっとして経済のマイナスイメージを月のプラスイメージでカバーする戦略ではないのかなどと勘繰りたくなる。(※写真は月面を走行する中国の探査車=中国国家航天局のホームページより)

⇒14日(祝)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆この先にあるシナリオ

☆この先にあるシナリオ

            戦時中の出稼ぎ者をいわゆる「徴用工」として韓国最高裁が新日鉄住金に賠償を命じた昨年10月の元徴用工訴訟をめぐり、韓国の司法当局が同社側に資産の差し押さえを9日に通知した。日本政府が紛争解決のための2国間協議を韓国政府に要請した。韓国の文在寅大統領はきょう10日、新年の記者会見で、「徴用工」問題について、「歴史問題であり、日本は謙虚にならなければならない」「日本の政治家や指導者が、政治争点化して拡散させるのは賢明ではない」と批判した。

    先に述べた2国間協議は、1965年の日韓請求権協定に基づくもの。韓国側の早期対応がなければ、日本企業に実質的な経済損失が生じる可能性があるが、文大統領はこの日の会見で日本側の要請に応じる意思を明らかにしなかった。最高裁の判決について、「三権分立のため、韓国政府は関与できない」とし、韓国の司法に従うよう日本側に求めた。きょうの会見から読めることは、文大統領は日韓請求権協定の骨抜き、あるいはなし崩しを狙っているのではないだろうか、ということだ。

    もともと韓国側では、1965年の日韓基本条約の国交正常化交渉が間違った不当な交渉だったとの論がくすぶっている。近い将来、韓国側から日本側の態度は承服できないとして、「日韓基本条約を破棄する」と言ってくる可能性が高いかもしれない。国交正常化は白紙撤回、つまり国交断絶となる。韓国政府が昨年11月、慰安婦問題題をめぐる2015年12月の日韓合意に基づき設立された「和解・癒やし財団」を解散し、事業を終了すると発表している。この事実が今後の動きを予感させる。今後、韓国では一気かせいに日本企業の資産を差し押さえに掛かり、実害が広範囲に及ぶだろう。

    さらにその先にあるものは何か。南北が「1国2制度」のもとで統一するだろう。その後、統一朝鮮は日本に対し日朝基本条約の締結ならびに、北朝鮮側の戦後賠償を強く求めてくる。そのようなシナリを文大統領は描いていても不思議ではない。大統領はおそらく高をくくっている。「そのうち巨大地震が日本を襲い、日本はわれわれに助けを求めてくる。だからいま少々手荒いことをやってもよいのだ」と。(※写真は韓国・青瓦台ホームページから)

⇒10日(木)夜・金沢の天気   くもり

☆『いだてん』ネタばらし

☆『いだてん』ネタばらし

   きょう6日付の朝日新聞「天声人語」を読んで、「これはNHK大河ドラマのネタばらしではないか」と笑った。今夜から始まるNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』をテーマにした記事だ。ドラマの主人公の一人は、日本が初めてオリンピックに参加した1912年(明治45年)の第5回ストックホルム大会でマラソンに参加した金栗四三(かなくり・しそう)だ。金栗の業績や個人ヒストリーについては、出身地の熊本県和水町(なごみまち)のホームページに詳しく掲載されている。
   
  当時ストックホルムまでの旅程は船とシベリア鉄道を経由し、17日間にも及んだ。マラソン当日、長距離移動や異国での慣れない環境に加え、酷暑のために26-27㌔付近で意識不明となり落伍した。出場選手68人中、完走は半分の34人という過酷なレースだったようだ。1967年、ストックホルム大会の開催55周年を記念する式典が開催され、スウェーデンのオリンピック委員会が当時の記録を調べたところ、金栗は「(棄権の意思が運営側に届いていなかったため)競技中に失踪し行方不明」となっていることに気が付いた。つまり、「消えた日本人選手」との扱いになっていた。そこで、スウェーデンのオリンピック委員会は金栗を探し出し、記念式典に招待した。

   ここから感動の物語が始まる。記念式典の当日、76歳の金栗は観衆が見守る中、競技場を走り、ゴールでテープを切った。「日本の金栗、ただいまゴールイン。タイム54年と8か月6日5時間32分20秒3、これをもって第5回ストックホルムオリンピック大会の全日程を終了します」とアナウンスが会場に響いた。これに金栗は「長い道のりでした。この間に結婚し、6人の子どもと10人の孫に恵まれました」と答え、会場は大きな拍手と歓声で包まれたそうだ。このストーリーを仕立てたスウェーデンのオリンピック委員会の企画力とセンスには脱帽する。

   天声人語は「ドラマではきっとそんな一代の名場面も描かれることだろう。」と記している。冒頭で「笑った」と述べたが、大河ドラマのプロデューサーもこの感動のシーンで番組のラストを飾りたいと思っているに違いない。ネタばらしとはこの意味である。

   ところで、正月早々の3日に熊本地方を震源とする地震があり、和水町では震度6弱の揺れがあった。町役場のホームページによると、大河ドラマが始まるきょう6日に、金栗の生家に近い公民館で地域の人たちが集まってテレビを視聴するパブリックビューイングが計画されていたが、地震の影響に配慮して中止されるようだ。「日本マラソンの父」と称され、箱根駅伝の創設者としても知られる金栗を郷土の誇りに震災から復興することを願っている。(※写真は熊本県和水町のホームページより)

⇒6日(日)夕・金沢の天気     くもり時々あめ

☆アップル・ショック

☆アップル・ショック

    まさに新年早々に「ネガティブサプライズ」だ。きょう朝のニュースによると、アメリカのアップル社は日本時間で3日、2018年10月-12月期の売上高の予想を下方修正し、840億㌦に留まる見込みだと発表した。これを受け、ニューヨーク株式市場でアップル株が一時10%急落、ダウ下げ幅も一時600㌦を超えた。しかし、1社の業績がここまで「資本主義の総本山」ウオールストリートを揺るがすものなのだろうか。

    問題はここにあった。アップルのティム・クックCEOが売上高を下方修正した最大の原因は中国の景気減速だ、と述べたのだ。「”While we anticipated some challenges in key emerging markets, we did not foresee the magnitude of the economic deceleration, particularly in Greater China,” he said. 」(イギリスBBCニュースより)。直訳すれば、「主要新興国市場ではある程度の課題が予想されたものの、特に大中華圏では景気減速の規模がこれほどまでとは予測することはできなかった、とクックCEOは述べた」。香港や台湾を含む大中華圏でのアップル社の売上は全体の20%近くを占めるとも述べているので、中国における景気減速の影響がアップル社だけでなく他産業にも広がると投資家の不安感を刺激したのだろう。このニュースが世界を駆け巡った。

   一方で、売上の下方修正の原因を中国の景気減速のせいにするアップル社のコメントに疑問を投げかけているメディアもある。アメリカのウオールストリートジャーナルWeb版(日本語)は「高級スマートフォンを中国に紹介したアップルは、同国での販売低迷に苦しんでいる。現地メーカーがはるかに低い価格で似たようなデザインと性能の製品を提供し、消費者の心をつかんでいるためだ。アップルのティム・クックCEOは業績見通しを下方修正した理由に、中国経済の減速を挙げた。だが、アップルはそれより根深い問題を抱えている。同社は現地のスマホメーカーの競争力を見くびっていた可能性がある・・・」と論評している。

   確かに、日本国内ではiPhoneの新機種などは価格が高く、消費者に支持されているのか疑問に思うこともある。ショップで見た価格だが、「iPhone XS」(64GB)は12万円、「iPhone XS Max」(同)は14万円だ。画像処理などを行う人工知能や機械学習などの技術を組み込んだハイスペックの製品なのだが、他のメーカーと比べ価格が一ケタ違う。スマホは日常生活に欠かせないものだけに、「価格はそこそこでよいのでは」というのが日本人の感覚かもしれない。

   中国でiPhoneが不調なのはむしろ、アメリカと中国の「貿易戦争」で、アメリカのブランドものに対して中国の消費者心理が冷え込んでいるのではないかと読むほうが自然だ。ましてや、ウオールストリートジャーナルが指摘しているように、現地メーカーが低い価格で似たようなデザインと性能の製品を提供し、消費者の心をつかんでいることは想像に難くない。

   ある意味で、トランプ大統領が仕掛けた「貿易戦争」が、アメリカを代表するIT企業の業績にブーメランのように直撃したのかもしれない。まさに「アップル・ショック」だ。(※写真はイギリスBBCのHPより)

⇒4日(金)朝・金沢の天気     くもり時々あめ

☆キナ臭くなってきた日本海

☆キナ臭くなってきた日本海

   また日本海が荒れだした。報道によると、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦が20日午後3時ごろ、海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射した。火器管制レーダーは、ミサイルで対象を攻撃するために、距離や高さ、移動速度を計測するためのもの。通常のレーダーとは全く違うもの。

   事件は岩屋防衛大臣が21日夜に緊急記者会見で公表した。防衛省ホームページで詳しく説明されている。火器管制レーダーを照射したのは韓国海軍「クァンゲト・デワン」級駆逐艦=写真・上、防衛省ホームページより=。P1は海上自衛隊第4航空群所属P1(厚木基地所属)。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだと報じられている。

   これに対し、韓国側は韓国側は火器管制レーダーの使用について「哨戒機の追跡が目的ではなく、遭難した北朝鮮船捜索のため」などとしているが、防衛省は、不測の事態を招きかねない、そして意図しなければ起こりえない事案であり「極めて危険な行為」として韓国側に強く抗議した。 

    注目したいのは、場所が北朝鮮によるイカの違法操業で問題になっている大和堆だったことだ。この付近での最近の韓国側の行動は「大和堆は韓国海域なので勝手に上空を飛ぶな」との言わんばかりの威嚇行動ではなかったかと疑ってしまう。先月11月20日にも、韓国側の意図を感じさせる「事件」が起きている。水産庁ホームページによると、20日午後8時半ごろ、能登半島の西北西約400㌔に位置する、EEZの大和堆付近で操業中の日本のイカ釣り漁船(184㌧、北海道根室市所属)に対し、韓国・海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と無線交信をしているのを、水産庁漁業取締船と海上保安庁巡視船が確認した。

    水産庁の漁業取締船は日本の漁船の付近に位置取り、韓国警備艦に対し、日韓漁業協定でも日本漁船が操業可能な水域であり、漁船に対する要求は認められないと無線で申し入れた。その後、韓国の警備艦が漁船に接近したため、海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入った。すると、韓国の警備艇は午後10時50分ごろ現場海域を離れた。

   こうした一連の韓国側の動きを読むと、一連の事件は、竹島は韓国の領土であると言い張り、大和堆は韓国海域であると主張する前触れではないのか。そう考えると、冒頭で「日本海が荒れだした」と述べたが、キナ臭く感じてきた。

⇒22日(土)夜・金沢の天気  くもり

★「いざなみ景気」と並んだとはいえ

★「いざなみ景気」と並んだとはいえ

   きょう20日の日経平均株価は前日より595円安い2万392円。一時700円を超える大幅な値下がりもあり、終値としての今年の最安値となった。19日のアメリカのダウ平均株価も前の日に比べて352㌦安い2万3324㌦で、これも今年最安値となった。

   きょう注目したのが日銀の黒田総裁の記者会見だ。日経Web版によると、黒田総裁は「経済の見通しは海外動向を中心に下振れリスクが大きい」と述べたという。では、海外のリスク要因とは何か。日本銀行のホームページをチェックすると、きょう20日の政策委員会・金融政策決定会合の報告が掲載されている。それによると、リスク要因は「米国のマクロ政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨とその影響、それらも含めた新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、地政学的リスクなどが挙げられる」としている。そのため、日銀は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、としている。

   世界的な景気減速で、来年中はアメリカの利上げが停止する可能性が出てきた。日銀は、日本とアメリカの金利差縮小が招く円高・ドル安を警戒し、政策修正に動きにくくなった、と読める。日銀による大規模な金融緩和の「出口」政策は当面はなしということだ。金融政策もさることながら、経済政策はどうなっているのか。

   政府はきょう発表した月例経済報告で、国内経済の基調判断を「緩やかに回復している」で据え置いた。景気拡大の長さが6年1ヵ月になり、戦後最も長かった「いざなみ景気」(2002年2 月-08年2月)に並んだと可能性が高い、と。ところが、見えないことがある。安倍政権は発足時に「金融緩和」「財政拡張」「構造改革」を進める「三本の矢」を打ち出した。金融緩和と財政拡張は数字的に見える。ところが、構造改革についてはまったく見えない。この改革なくして「いざなみ景気」を超えることができるのだろうか。

   株価に話を戻す。年明けに2万円台を割り込むかもしれないと素人ながら思っていたが、年内かもしれない。(※写真は日銀の企画展「江戸の宝くじ「富」 一攫千金、庶民の夢」のチラシ)

⇒20日(木)午後・金沢の天気    あめ

☆世界経済の新たな火種

☆世界経済の新たな火種

  けさのテレビニュースは、週明け17日のニューヨークダウが大幅に続落し、508㌦安の2万3592㌦で取引を終え、9ヵ月ぶりの安値水準と伝えている。世界経済が減速する懸念が投資家の間で広がっているとも述べている。アメリカの経済紙「ウオールストリート・ジャーナル」も「Dow Industrials Fall 508 Points as Investors Fret Over Growth」と大きく報じている=写真=。

  その解説記事の中で、「U.S.-China tensions, plus worries about economic growth and the tech sector, spell more volatility ahead for investors. 」とある。直訳すれば、「アメリカと中国の緊張感と経済成長と技術分野の懸念は、投資家にとってより大きなボラティリティをもたらす」と。一般では聞き慣れないこのボラティリティ=volatilityとは何か。「証券用語解説集」(野村證券)によると、「証券などの価格の変動性のこと」とある。ボラティリティが高いということは、期待する収益率から大きく外れる可能性が高く、価格の変動性が大きいことを指す。

      では、ボラティリティのリスクを押し上げている要因は何か。おそらくこれしかない。中国通信機器メーカー「ファーウェイ」の製品を締め出す動きが、世界で広がっていることだろう。アメリカは国防権限法という法律をことし8月につくり、ファーウェイなど中国通信機器メーカーの製品を政府機関が使うことを禁止している。同社の製品を通じて政府機関や軍の情報が中国当局に流れる危険性があるとし、アメリカは日本など関係国にも働きかけも強めている。

   この動きに反発を強めているのは、中国政府なのだが、ファーウェイの副会長(CFO)がアメリカの要請によりカナダで逮捕された際に、カナダ人を逮捕するなど報復ともとれる行動に出ている。これがかえって、はやり中国政府はファーウェイと結託しているのではないかとの不信感を煽った。オーストラリアがいち早くアメリカに追随し、続いてドイツなどヨーロッパ各国、そして日本でも通信インフラを担う企業などが中国製品ボイコットの流れに乗った。

   問題はこの一件はこれが始まりだということだ。報道によると、先に述べたアメリカの国防権限法は第2弾として2019年8月から、政府機関や軍、政府所有企業がサーバーなどにファーウェイなど中国通信機器メーカーが製造した製品や部品を組み込んだ他社製品の調達を禁じている。さらに、第3弾として2020年8月からは、中国メーカーの製品を社内で利用しているだけで、その企業はいかなる取引もアメリカ政府機関とできなくなる。当然、日本企業も対象に含まれる。これが、世界経済の新たな火種になるとの所以であり、投資家に大きなボラティリティをもたらす結果になっているのではないか。

⇒18日(火)朝・金沢の天気    あめ