⇒メディア時評

☆パンデミックを防げ

☆パンデミックを防げ

      中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎について、当初は感染が限定的という報道だったが、それが直近の報道だと人から人への感染に広がっているようだ。深刻さを物語るように、中国で肺炎患者が増えていることを受けて、WHOの事務局長が22日にスイスのジュネーブで緊急の会合を開くことになったと報じている。まるで、パンデミック(pandemic)、世界的な感染の広がりを示唆する動きではないのか。

   武漢以外に北京、広東省でも患者が確認され、感染者はすでに200人を超えている、という。20日のニュースでさらに深刻になった。イギリスの大学、インペリアル・カレッジ・ロンドンの感染症の専門家チームが、1)武漢とその周辺の人口、2)海外で見つかった患者数、3)武漢の国際空港から海外に旅行する人の数、などから患者の数を推計した。その結果、今月12日の時点で武漢では患者数1700人以上に上る可能性があると発表しているのだ(20日付・NHKニュースWeb版)。

  中国では今月24日から旧正月の春節の大型連休に入ると、日本を含め世界中に中国人観光客が訪れることになる。WHOの事務局長の緊急会合は、このタイミングで世界各国に注意を呼びかける意味合いがあるのではないだろうか。

  今夜遅く、この事態に習近平国家主席は情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した、と報じられている。習主席の指示は、「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めるよう」と求めたという(20日付・NHKニュースWeb版)。その背景には中国が悪名を買った、例の2003年の新型肺炎SARS問題がある。徹底的に情報を隠して感染が拡大したのだ。8100人が感染し、770人余りが死亡したとされる。この教訓から、情報提供を強化する姿勢を強調したのだろう。

  それよりむしろ、春節には海外渡航を全面的に禁止するくらいの強い指導力を発揮してほしい。(※写真は人から人の感染の可能性を伝えるイギリスBBCニュースWeb版=20日付)

⇒20日(月)夜・金沢の天気   くもり

★震災から25年、風化に挑む

★震災から25年、風化に挑む

   阪神・淡路大震災(1995年1月17日)は震度7だった。午前5時46分、金沢の自宅で睡眠中だったが、グラグラと揺れたので飛び起きた。テレビをつけると大変なことになっていた。当時民放テレビ局の報道デスクだったので、そのまま出勤した。テレビ局はテレビ朝日系列で、ABC朝日放送(大阪)に記者とカメラマンを応援に出すことを決め、応援チームはその日のうちに社有車で現地に向かった。見送りながら、取材チームの無事を祈りながらも、日本の安全神話が崩壊したと無念さを感じたものだ。金沢は震度3だった。

   あれから25年、ABCはウェブサイト「阪神淡路大震災25年 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」を今月10日に公開した。この専用サイトでは、震災直後から8月23日までに取材した映像の中から38時間分を公開している。日時やキーワードで検索できるほか、被災地の地図に表示されたアイコンをクリックすると、場所ごとの映像が表示される。映像は当時のニュース映像ではなく、部分的ではあるもののノーカット編集がほとんどだ。その分、災害のリアリティさが伝わってくる。

   このサイトの映像をチェックして見て、ABCは「風化」と闘っている、と推察した。被災地から離れているテレビ視聴者は時間とともに災害の記憶が遠ざかる。何も忘れっぽい日本人だけではない。260年前、アダム・スミスは『道徳感情論』という講義で、災害に対する人々の思いは一時的な道徳的感情であり、人々の心の風化は確実にやってくる、と述べている。風化という視聴者のハードルをどう乗り越えるか。被災地との意識のギャップを埋めるに、ABCは「忘れてほしくない」とメッセージを送ったのだろう。

   もう一つのメッセ-ジを感じた。キー局に対してだ。「既視感」との闘いだ。被災地のローカル局と東京キー局との報道スタンスは異なる。ローカル局は被災者に寄り添う番組づくりを心がけているが、キー局は視聴率を重視している。ローカル局からキー局に全国放送の番組提案があっても、キー局は「どこかで見たことがある」と既視感を理由に提案を却下することがままあるのだ。

   当時カメラ撮影で使ったテープは四半世紀を経てそろそろ処分する時期に来ている。これを機に、ABCは震災の風化を防ぎ、今後の防災・減災に役立てたいと映像公開の膨大な作業にチャレンジしたのだろう。

⇒17日(金)夕・加賀市の天気   はれ

☆「ミッションインポッシブルに挑戦」の理屈

☆「ミッションインポッシブルに挑戦」の理屈

         保釈中にレバノンに逃げたカルロス・ゴーン被告がきのう午後10時(日本時間)から現地で2時間余りの記者会見を行った。しかし、ゴーン被告側の制限で会場に入れてもらえなかった日本のメディアが多く、記者会見というよりむしろお気に入りのメディアを招いた「記者懇談会」だろう。今朝の各社のニュースによると、ゴーン被告は日本では公正な裁判を受けられる望みがなかったと逃亡を正当化する主張を行ったが、どのような経路で日本を脱出したのか、その経路については一切、明かにしなかったようだ。

  日本のメディアで会見場に入ることができた朝日新聞のWeb版(9日付)によると、ゴーン被告は「私は正義から逃げたわけではない。不正義から逃げたのだ。自分自身を守るほかに選択肢はなかった。公平な裁判は望めないと観念した後で、唯一選べる道だった」と述べ、不正な手段での出国の正当性を主張した。

          面白い下りはこうだ。「私はミスター不可能と言われてきた。たくさんのミッションインポッシブルに挑戦してきた。1999年に日本に行ったときにもそう言われた。日本語もしゃべれないし無理である。フランスから、ルノーからやって来た人で誰もあなたのことは知らないと。でも、その後のことは皆さんご存知のとおり。私は不可能な状況の中でも色々なことができる。嫌疑を晴らしたい。真実が明るみに出るようにしていく」。ミッションインポッシブル、まさにその通り。保釈中にレバノンに逃げたこと、そのものだ。まるで「スパイ」のようだ。

   これに対し、ゴーン被告の発言を受けて東京地検はホームページ(9日付)でこのように述べている。「被告人ゴー ンが約130日間にわたって逮捕・勾留され、また、保釈指定条件において妻らとの接触が制限されたのは、現にその後違法な手段で出国して逃亡したことからも明らかなとおり、被告人ゴーンに高度の逃亡のおそれが認められたこと や、妻自身が被告人ゴーンがその任務に違背して日産から取得した資金の還流先の関係者であるとともに、その妻を通じて被告人ゴーンが他の事件関係者に 口裏合わせを行うなどの罪証隠滅行為を現に行ってきたことを原因とするもの で、被告人ゴーン自身の責任に帰着するものである」

   ゴーン被告にはもともと逃げる意志が感じられたので、あえて130日間にわたって逮捕・勾留となったのだ、と。実に分かりやすいが、それが現実となった。その意味では、ミッションインポッシブルに挑戦し可能にした男、まるでハリウッドのスター気取りだ。

⇒9日(木)朝・金沢の天気    はれ

☆「秘匿決定」裁判

☆「秘匿決定」裁判

   2016年7月26日、実に痛ましい事件が起きた。神奈川県相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、元職員の当時26歳の男が入所者を刃物で次々と刺し、入所者19人が死亡、職員2人を含む26人が重軽傷を負った。元職員のこの言葉が事件の異常性を印象付けた。「意思疎通ができない人を刺した」 「障害者はいなくなればいい」。亡くなった入所者はダウン症や重度知的障害など自立生活は難しい人たちだった。

   事件から3年半、あす8日から横浜地裁で裁判員裁判が始まる。報道によると、争点は被告は犯行当時、刑事責任を問える精神状態だったかどうかが問われている。検察側は精神鑑定の結果を踏まえて、被告に責任能力はあったとしているが、被告側は大麻を使用しており精神障害の影響で刑事責任を問えないと主張するようだ。
 

   裁判で不可解に思う点が一つある。命を奪われた19人は実名を公表されず、いまも匿名のままということだ。警察は「家族の意向」として、発生当時から19人の名前を発表していない。さらに、「秘匿決定」の裁判となる。本来、裁判では実名が原則だが、被害者が特定される情報について裁判所が判断して明らかにしないと決めるケースがある。これが「秘匿決定」だ。このため、裁判では19人の死者は「甲」とアルファベットの組み合わせ、負傷者は「乙」「丙」とアルファベットの組み合わせで、「甲A」さん、「乙B」さんと呼ばれることになる。

   去年7月18日に発生したアニメ制作会社「京都アニメーション」への放火で、社員70人のうち36人が死亡した。京都府警は8月2日に10人の実名による身元を公表し、同月27日に25人、その後10月11日にさらに1人の身元を公表した。警察側の判断では、葬儀の終了が公表の目安だった。犠牲になった遺族のうち21人は実名公表拒否していた。その拒否の主な理由は「メディアの取材で暮らしが脅かされるから」だった。警察側の身元の公表を受けて、メディア各社は実名を報道した。

   メディアは、実名報道は国民の知る権利だとして警察に被害者の氏名の公表を迫る場合もあるが、今回は裁判所も「秘匿決定」としており、実名報道には沈黙を守っている。匿名には、確かに家族の意向もあるだろう。ただ、あすからの裁判で被害者が「甲A」さん、「乙B」さんと呼ばれて、被告はどう思うか。「だから意思疎通ができないヤツは名前も呼ばれない」 「だから障害者はいないも同然なんだ」「実名で呼ばれているのはオレだけだ」と。法廷で高笑いするのだろうか。

⇒7日(火)夜・金沢の天気      くもり

★人に寄り添うAI

★人に寄り添うAI

    社是が「地球上で最もお客様を大切にする企業」である。どのような企業なのか一度覗いてみたかった。きのう(19日)それが実現した。まず、エレベーターが金属っぽくない。ダンボールで貼り紙をしたような柔らかい感じで、つい寄りかかってしまいたくなるデザインなのだ。

    会員が自由に使える「コ・ワーキングスペース」(158席)=写真=に入った。ここを活用するのは主に開発者や起業家の人たちで、何人かでアイデイ出しや突っ込んだ話をしたい場合は、会議室(定員6)を1時間単位で無料で利用ができる。予約の受付はしていないので、当日受付で利用をオファーする。飲み物や弁当も販売しているので、利用者は午前10時から午後6時まで集中できる。

   最大のサービスはこの場で月5,6回開催されるセミナーやハンズオン(体験型学習)といった勉強会だろう。午後6時30から2時間ほど。訪れたこの日は「Deep Learning フレームワークと推論」と題するセミナーだった。Deep Learning (ディープ・ラーニング、深層学習)は能の神経回路まねた機械学習のこと、AI(人工知能)の本命と言える。自動翻訳や画像認識の精度が格段に上がったのも、ディープ・ラーニング技術によるものだ。このセミナーに参加したかったが、時間が許さなかった。

   企業名も示さずに冒頭から長々と述べたが、訪れたのは「アマゾン ウェブ  サービス (aws)ジャパン株式会社」(東京都品川区上大崎)。コ・ワーキングスペースは昨年10月に、aws社が「挑戦をカタチにする場所」として開設した。サンフランシスコ、ニューヨークに続いでの設置という。クラウドコンピューティングという新しいカタチのテクノロジーがこの世に登場してから十数年がたち、アイデイア次第で新たなサービスやビジネスが実現するチャンスが広がった。同社はそれを支援することをミッションと位置付け、「地球上で最もお客様を大切にする企業」の社是を掲げる。

   ところでAIというと、怖いという印象だと話す人も少なからずいる。犯罪に使われたり、今の仕事がAIに取って代わられる、との不安感など。aws社を訪ねたのは、教材ビデオの出演の依頼が目的だった。身近に寄り添うように人間を支えるテクノロジーとしてのAI(人工知能)について語っていただけないかとマネージャーの方にお願いした。たとえば、人に学び、人を理解し、人をサポートするAIロボットだ。情調的動作が人間に与える影響が大きければ、「第3の医療」の道が拓けるかもしれない。強さを追求するゲームAIとは異なる、楽しみを生み出す、人間に合わせた温かみのあるゲームAIの可能性もあるのではないだろうか。次なるAIの有り姿をぜひ語っていただきたいとお願いしてきた。

⇒20日(金)朝・金沢の天気     あめ

☆続・グレタさんにしかられる

☆続・グレタさんにしかられる

   前回のブログ(17日付)で日本人のトイレットペーパーの「無駄遣い」について書いた。その趣旨は、ヨーロッパからの留学生の指摘で、「日本人は一回で使うトイレットペーパーが長いというのが留学生の間では常識だ」と。試しに目測で一回で使うトイレットペーパーの長さを、左右の手で間隔を示してもらった。それを定規で測ると、日本人学生(男子)2人は85㌢と90㌢、ドイツとフィンランドの男子学生はそれぞれ50㌢と60㌢だった。最大で40㌢も差がある。確かに日本人はトイレットペーパーを使う長さが長く、自身も70から80㌢で使っている。無駄に長いと思うこともある、と述べた。

   ブログの読者からさっそくコメントをいただいた。「日本人と外国人では排泄される便の状態が違います。 肉食中心の外国人の便はコロコロタイプなのでトイレットペーパーは少なくて済みます。しかし、日本人は雑食なので便が柔らかいです。そのためトイレットペーパーも長く使用することになります。 無駄遣いしているわけではありません。 誤解なきように。」

   食生活の違いによって、排出する便の状況が異なる。肉食だと「コロコロタイプ」、雑食性の食事だと「柔らか」タイプになりがちだ。すると、トイレットペーパーの使い方も異なり、「柔らか」タイプは丁寧に拭くことになるので紙の量も多くなる。それが肉食性の留学生から見ると、雑食性の日本人はトイレットペーパーを無駄遣いしているように勘違いされる、 という訳だ。的確なコメントをいただいた。

   そこでもう一度、留学生たちに会って、話を聞いてみようと考えた。彼らは日本に来て、大学では学食を食べている。すると、肉や魚、ご飯とおそらく雑食性の食生活になっているはずだ。ヨーロッパでの生活に比べ、便が柔らかくなっていると推察する。すると、それがトイレットペーパーの使い方にどう変化があったのか、従来と変わらないのか、あるいは少々長くなったのか、と。

⇒18日(水)朝・金沢の天気      あめ

☆12月8日は「記念日」でよいのか

☆12月8日は「記念日」でよいのか

    きょう12月8日は、1941(昭和16)年2月8日未明(現地時間7日朝)、日本の海軍がハワイ・オアフ島真珠湾のアメリカ軍基地を奇襲し、太平洋戦争が開戦した日でもある。もう78年も前のことだが、マスメディアは「戦争の記念日」のニュースとして取り上げている。 

    NHKが発掘したニュースをこう報じていた。「終戦直前の昭和20年、本土決戦に備えて女性や少年を含めた一般国民を戦闘員として組織した『国民義勇戦闘隊』の具体的な動員計画などをまとめた資料が、福井県に残されていることが分かりました。国民義勇戦闘隊に関する資料はこれまでほとんど見つかっておらず、調査にあたった専門家は『国民を総動員する戦争が寸前まで迫っていたことを示す資料だ』と指摘しています。」(8日付・NHKWeb版)

    視聴者の記憶から戦争のイメージを消さないという趣旨は理解できるが、この国民義勇戦闘隊のニュースに関心を持つ視聴者は果たしてどれだけいるだろうか。このニュースを見た視聴者の反応は「過去の戦争のことをいつまで報じるのか」「だからどうかのか」「では、当時NHKは反対したのか」ではないだろうか。過去のニュースを報じるのは簡単だ。現在の価値観で、戦前の日本の有り様を酷評すればそれで済む。このニュースを今取り上げるとしたら、現代への訴追性があるか、だ。「国民義勇戦闘隊は、本土決戦となった場合には兵士とともに武器を持って戦闘に加わることを義務づけられています。」(8日付・NHKWeb版)との内容だが、現代の法律に照らし合わせて問題があれば、「この法律はまるで国民義勇戦闘隊の布石だ」と指摘してほしい。あるいは、国民義勇戦闘隊の内容をはらむ問題が国会で審議されているのであれば、「まるで国民義勇戦闘隊だ」と問題化すべきだ。

    その問題性を現代に訴追できないのであれば、78年前の過去のことにどれほどの「ニュース価値」があるのか。12月8日は「戦争の記念日」という発想をマスメディアはいつまで持ち続けるのだろうか。「警鐘を鳴らし続ける」という発想であれば、アメリカ、中国、北朝鮮、韓国との軍事的な問題を徹底的に検証する番組をつくり、現代の日本の果たすべき役割、立ち位置を検証してほしい。日本を「過去」に逆戻りさせないとの意思を番組で表現することを期待したい。

    話は変わる。連日のようにに尖閣諸島への中国公船の領海侵入がありながらも中国国家主席を国賓として招くという。もし、招いた日に中国公船による領海侵入があれば、尖閣諸島は中国の領土ですと日本が追認したとことになるのではないか。尖閣のほかにも、香港やウイグルでの問題で国際批判を浴びている国のトップを国賓として迎えることの是非を正面から取り上げている日本のマスメディアを知らない。「安倍一強」を問うのであればこれが本論ではないだろうか。

⇒8日(日)夜・金沢の天気   あめ

☆北から脅しのメッセージ

☆北から脅しのメッセージ

       北朝鮮が28日午後5時前、日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射した。これを受けて、国家安全保障会議(NSC)を開催した安倍総理は終了後、記者団に「北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射は我が国のみならず国際社会に対する深刻な挑戦だ」と述べた(28日付・朝日新聞Web版)。このコメントに対する北朝鮮の反応がすさまじい。

   韓国の中央日報(30日付・Web版日本語)によると、 北朝鮮外務省の日本担当副局長が30日談話を発表し、「安倍は本当の弾道ミサイルが何かをもうすぐ非常に近いところで見ることになるかもしれない」と述べ、「その時に放射砲弾と弾道ミサイルがどのように違うかをよく比較して知っておくことを勧告する」と皮肉ったと伝えている。北朝鮮が打ち上げたのは超大型ロケット砲であり、弾道ミサイルではないと主張している。総理が「国際社会に対する深刻な挑戦」と述べ、弾道ミサイルの発射は国連の安保理決議に違反すると指摘したのに対し、北朝鮮側はこうした批判をかわしたいとの狙いもあるのだろう。それにしても、「間近に落としてやるから、その違いを勉強しておけ」という凄み方が堂に入っている。

   イギリスBBC(30日付・Web版)も「North Korea threatens Japan with ‘real ballistic missile’」(北朝鮮が「本当の弾道ミサイル」を落とすと日本を脅す)との見出しで伝えている=写真=。記事では、北朝鮮側は、安倍総理を「完全な馬鹿者で、政治的小物」と呼び、「写真つき報道を見ておきながら、多連装ロケット砲とミサイルの区別もつかない、史上最も愚かな男、世界唯一のまぬけだ」と罵倒した、と報じている。

   中央日報とBBCの記事から読み取れることは、北朝鮮は日本に向けた新たな発射を示唆 していることだ。単なる脅しではないかもしれない。

⇒1日(日)未明・金沢の天気      くもり      

☆ローマ教皇、極東の旅

☆ローマ教皇、極東の旅

   「民主化運動に前例のない地すべり的勝利」とイギリスBBC(26日付・日本語版)は伝えている。24日に投票が行われた香港の区議会議員選挙は、18の区議会の合わせて452の議席をめぐって争われ、政府に批判的な民主派が80%を超える議席を獲得して圧勝した。

   同Web版では、親中派の有力議員を破った21歳から37歳の4人の若い候補者たちを紹介している。ベテラン政治家を800票差で下した21歳の学生は、匿名の脅迫状が送り付けられる中で活動を続け、「きょうの勝利と記録的な投票率は、この壊滅的な状況における香港市民の声をはっきりと反映している」と勝利の喜びを語っていると紹介されている。この記事を読んだだけでも、体を張った選挙だったということが伝わってくる。

   一方で、民主派が圧勝し抗議活動が勢いを増すのを警戒する中国政府は、アメリカ議会が香港人権・民主主義法案を議会上下院で可決したことを受けて、北京に駐在するアメリカ大使を呼んで強く抗議し、トランプ大統領の署名で法案を成立させた場合、報復措置を取ると警告したと報じられている(26日付・NHKニュースWeb版)。中国外務省の次官はアメリカ大使に対し、「法案の成立を阻止し、内政干渉をやめるよう強く求める。さもなければ一切の悪い結果はアメリカが負うことになる」と抗議した(同)。

   アジアに熱風が吹く中、ローマ・カトリック教会の教皇として38年ぶりに日本を訪れたフランシスコ教皇。24日に長崎市の爆心地公園で、同日夜には広島の平和公園でそれぞれスピーチを行った。安倍総理との懇談(25日)では、「広島と長崎に投下された原爆によってもたらされた破壊が二度と繰り返されないよう阻止するために必要なあらゆる仲介を推し進めてください」と訴えていた。教皇は核を持つことで戦争を防ぐ「核抑止論」そのものを批判し続けている。総理は、アメリカの「核の傘」に守られた日本の安全保障政策に変わりはないとの見解だ。基本的なすれ違いが見えていた。

   今回の教皇来日でどのような成果があったのだろうか。ただ、目立ったのは、これまでメディアは「ローマ法王」と称していたのに、今回は「教皇」と呼び方を変更したことだ。20日の政府発表で、カトリック関係者の間では教皇の呼び方が普及しているので来日を機に名称を統一したようだ。

   きょう昼前、教皇は羽田空港からバチカンへ帰国の途に就いた。4日間の滞在での教皇のお気持ちはいかばかりだったか。教皇が各国に批准を呼びかけている核兵器禁止条約に日本は参加していない。煮え切らぬお気持ちだったに違いない。むしろ、香港に立ち寄ってみたかったのではないか。82歳、極東の旅はお疲れだったろう。

⇒26日(火)夜・金沢の天気     くもり

☆政治外交の茶番劇

☆政治外交の茶番劇

    茶番劇とはこのことか。韓国政府はきのう(22日)、破棄を決定していた日本と韓国のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について失効を回避することを決めた。きょう午前0時が期限だったので土壇場での決定だろう。朝刊では各社が「さらなる関係悪化はひとまず避けられた」と述べているが、この決定を評価する読者はいるだろうか。「下手な芝居はもうやめろ」というのが率直な感想ではないだろうか。

    各社の関連ニュースをチェックすると、韓国側は破棄するとした通告を「停止する」と発表したのであって、「撤回する」と言っていない。つまり、輸出管理をめぐる今後の日本と韓国の対話の進展を必要とする「条件付き」の措置なのだ。優遇措置の対象国「ホワイト国」に戻さなければ、停止を撤回すると脅している。言葉遊びのようなことを繰り返している外交では、両国の関係改善につながるはずがない。

    茶番劇になりそうなニュースをもう一つ。アメリカのトランプ大統領は、香港の一国二制度を支援する香港人権・民主主義法案が議会上下院で採択され、大統領署名をするのか拒否権を発動するのかとTVメディアから問われ、「香港と立場を共有する必要はあるが、中国の習主席とも立場を共有する必要がある。習主席は友人であり、立派な人物だ」と述べ、明言を避けたと報じられている(22日付・ロイター通信Web版日本語)。

   大統領署名によって法案が成立すれば、中国側が態度を硬化させ通商交渉に影響が出ることは間違いない。逆に、通商交渉を有利に進めるために法案をチラつかせ、中国側が仕方なく折れてアメリカ側が交渉を勝ち取ったとしたらどうだろう。トランプ氏は微笑みながら拒否権を発動するだろう。

   ロイターの記事によると、トランプ氏は「中国は香港との境界沿いに多くの軍部隊を駐留させているが、香港に侵攻していないのは私が習主席に侵攻しないよう要請しているからにほかならない」とし、「現在、歴史上最大の通商合意に向け交渉が進められており、実現すれば素晴らしいことになる。 私がいなければ、香港で数千人の人々が殺され、警察国家が誕生することになる」と述べた。

   記事をストレートに解釈すれば、中国の香港への侵攻を習氏に要請して止めているので、法案は必要ない、つまり拒否権を発動する、と同じ意味だろう。仮にこうなれば、ホワイトハウスの大茶番劇となる。そして、「金のために民主主義を売ったアメリカ大統領」として歴史に悪名を刻むことになるのではないか。

⇒23日(土)午後・金沢の天気      はれ