⇒メディア時評

☆「Say it?」のトランプ会見から読めること

☆「Say it?」のトランプ会見から読めること

   健康不安説が浮上している北朝鮮の金正恩党委員長の状態について、アメリカのトランプ大統領が記者会見(27日)で「大体分かっている」と述べたと報じられた(28日付・共同通信Web版)。記者会見の中身を詳しく知りたいと思い、ホワイトハウスの公式ホームページを検索し、27日の会見の内容を読んでみる。(※写真はホワイトハウスのツイッターから)

   会見は55分間。前半は新型コロナウイルスに関する経済対策などのブリーフィング、後半は記者からの質問で、金正恩氏の健康状態に関しては最後の方に出てくる。以下、気になった箇所をピックアップする。

Q    Do you have any update on Kim Jong Un’s health?

THE PRESIDENT:  Say it?

I — I hope he’s fine.  I do know how he’s doing, relatively speaking.  We will see.  You’ll probably be hearing in the not-too-distant future.

All right.  One or two more.  Go ahead, please.

Q    Is he alive?  Are — are you confirming he’s alive?

  記者からの質問にトランプ氏が発した言葉は「 Say it?」だった。「それを言うか」と。つまり、「この件は質問してほしくなかった」との意味だろう。意味深なのは次の言葉だ。「彼が元気であることを願っている。私は彼の状態をおおむね分かっている。様子を見ましょう。遠くない将来にあなたたちも知ることになるでしょう」と。その後、トランプ氏は「さあ(質問を)さらに一つ二つ続けて」と言うと、記者が「正恩氏は生きているのでしょうか、大統領は彼が生きていることを確認していますか」と食い下がったが、トランプ氏はその質問には一切答えず、次の大統領選についての質問に答えていた。

   今月21日付でCNNは金正恩氏が手術を受けて重篤な状態にあるという情報があると伝えた。病名などは特定していない。この報道を受けて、トランプ氏は記者団から尋ねられ、「私に言えるのはこれだけだ。彼の健康を願う」と述べるにとどめていた(22日付・CNNニュースWeb版)。その後も、中国が金氏の容体について助言を行うための医療専門家チームを北朝鮮に派遣したと報じられた(25日付・ロイター通信Web版)。

   「Say it?」の記者会見の文脈やニュースの流れを読めば、「次なるニュース」は想像に難くない。

⇒28日(火)朝・金沢の天気    くもり

☆コロナ禍 腐心するテレビと新聞

☆コロナ禍 腐心するテレビと新聞

   新型コロナウイルスの緊急事態宣言の下、社会では「巣ごもり」や「在宅ワーク」が当たり前となった。在宅率が高まればその分、テレビや新聞との接触度も増える。そこからは番組や紙面づくりに腐心するメディアの姿も垣間見える。

   先日(今月21日)ローカルテレビ局の知人と話していて、「HUT(総世帯視聴率)が10%も増えたが、再放送の番組ばかりで視聴者は満足していないのでは」と。「確かにそうだね」と瞬間うなずいた。お笑いタレントの志村けんさんが3月29日に新型コロナウイルスの肺炎で亡くなり、「追悼番組」と称して民放だけでなくNHKも出演番組を再放送していた。不謹慎な言い方かもしれないが、「バカ殿様」のシーンがどの局でも繰り返され、正直言って、亡き人への記憶を消費しているに過ぎないのではないだろうか、死者の尊厳に配慮した追悼番組なのだろうかと疑問に思った。次は今月23日に亡くなった女優・岡江久美子さんの出演番組の再放送かと思うと少々いたたまれない。

   自身も在宅ワークとなり、平日の日中にテレビのリモコンをオンにする回数が増えた。視聴して感じることは、土日であってもCMが少なく、自社番組の宣伝や「ACジャパン(公共広告機構)」やがやたらと目立つ。インターネット広告費がテレビ広告費を初めて超えるという「広告業界の転換点」(電通「2019年 日本の広告費」)から転げ落ちるようにCM出稿量が激減しているのではないか。「ギョーカイは大丈夫か」と他人事ながら懸念する。

   報道や情報番組は新型コロナウイルスの関連テーマが多いが、伝えるべき情報をいち早くというテレビ報道の使命感のようなものを感じる一方で、出演しているウイルス感染の専門家のコメントが危機感を煽り過ぎると感じることもある。

   先にテレビCMが減ったと述べたが、新聞も同様に広告段数が低くなり、自社広告が目立つ。新聞に折り込まれるチラシ広告も随分減った。これまであったスーパーの特売日やポイント還元のチラシを見なくなった。感染予防のため、買い物客の混雑を招く販売促進のチラシを自粛しているのだろうか。

   紙面では見出しにも気遣がうかがえる。「連休中 うちで過ごそう 各地の人出 大幅減」(26日付・朝日新聞)。連休初日(25日)の全国各地の人出の様子を記した一面の記事だが、あえて見出しで「うちで過ごそう」とつけた。社会状況や読者の心理、そして報道の有り様を鑑みた編集者の苦心の見出しではないだろうか。

   新聞紙面の広告段数が減るとその分、紙面を埋める記事の量が増えて記者の仕事量が増える。ところが、大型連休とは言え、屋内外のイベントは中止、観光名所も閉鎖となり記事にならない。新聞業界では「ニッパチ」といって、2月と8月は社会の動きが緩慢になり記事も少なくなる。このニッパチ現象が連休明け後も当面続くのではないだろうか。   

   テレビ局は放送時間を極端に削減することはできないが、新聞社はページ数を削減できる。今後はその方向ではないだろうか。

⇒26日(日)午後・金沢の天気   くもり時々あめ

★大型連休 耐え忍んでコロナを払う

★大型連休 耐え忍んでコロナを払う

   きょうは大型連休の初日。例年なら金沢市内の兼六園や武家屋敷などは観光客でごった返すが、市内の中心街も閑散としていた=写真・上=。商店街の多くがシャッターを閉めていた。この大型連休は新型コロナウイルスを封じ込める正念場とも言える。

   金沢の観光名所の一つにもなっている「忍者寺」で有名な妙立寺の前を通ると、「一般の方の拝観を休止します」の貼り紙がしてあった=写真・中=。江戸時代の初期に加賀藩は幕府と緊張状態にあったことから、この寺を出城として造らせたという言い伝えがある。何度か入ったことがあるが、ガイド嬢の説明が面白かった。寺の井戸が金沢城に続く抜け道になっているとか、掛け軸の裏にある隠し扉、床板を外すと現れる隠し階段など凝った仕掛け。外観は2階建てのように見えるが、実際は7層構造で階段が29もある迷路になっている。海外でも忍者ブームで、忍者の装いをした子供をともなったインバウンド観光の家族連れを見かけたりする。

   能登の和倉温泉、老舗旅館「加賀屋」もあさって27日から休業に入ると報じられている(25日付・北陸中日新聞)。県内のグループ合わせて5館で27日以降の予約受付を停止する。大型連休に営業すると、客が来るので人の流れをつくってしまう。これは人の流れを最小化する政府方針に逆行することにもなり、感染防止に協力するかたちで予約をストップする。加賀屋は「もてなし」の質の高さに定評があり、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(主催・旅行新聞新社)で36年連続総合1位に輝いている。

   石川県内の感染者はきのう現在で222人となった(県発表)。人口10万人当たり感染者は石川県19.6人と、東京都26.8人に次いで多く、大阪府16.0人と続く(25日付・北國新聞)。妙立寺の近くに「コロナに負けるな!」と記されたのぼり旗が立ててあった=写真・下=。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が今月16日に7都府県から全国に拡大され、石川県は「特定警戒県」に指定された。耐え忍んで邪気を払う。県内はまさにそんな雰囲気だ。

⇒25日(土)午後・金沢の天気   はれ

★続々・ 「ポスト・コロナ」を読む

★続々・ 「ポスト・コロナ」を読む

           石川県が新型コロナウイルスの「特定警戒県」に指定されたことを受けて、輪島市の曹洞宗大本山総持寺祖院があす20日から拝観を中止する(総持寺公式ホームページ)。「感染拡大の防止と山内僧侶・職員の健康安全の観点から」と説明している。禅宗の大本山として名をはせた総持寺も「流行り病」には勝てず。拝観中止は、山門などが被災した能登半島地震(2007年3月)以来となる。

   ロボットとAI、濃厚接触を避ける働く現場の未来

   イギリスのBBCニュースWeb版(19日付)に興味深い記事が載っていた。「Coronavirus: Will Covid-19 speed up the use of robots to replace human workers?」。コロナウイルスは労働者を人からロボットに置き換えるスピードを速めるかもしれない。記事は、これまで経済活動でフェイス・ト・フェイスの関係が求められてきたが、パンデミックの感染拡大の中ではむしろsocial-distance(社会的距離)が求められている、その切り札がロボットでありAIになりうるとその背景を説明している。

   記事では具体的に、医療専門家は2021年までに人と人の距離をとる措置を講じる必要があると警告していて、ロボットの医療現場での需要が高まる可能性がある、と紹介している。デンマークの紫外線消毒ロボットの製造会社はすでに数百台のマシンを中国とヨーロッパの病院に出荷している。また、ファーストフードチェーン「マクドナルド」は料理人やサーバーとしてロボットを活用するためのテスト段階に入っている、という。

  ロボットだけではなく、人と同じくらいリアルなAIによるレッスンの提供も可能だ。たとえば、研修会の講師やフィットネストレーナー、財務アドバイザーなども人に代わる人工知能が開発されている。画面上のインストラクターやアドバイザーは、実在の人物である必要はない。実在する人物のように知恵と行動指針をアドバイスしてくれればよい。

   日本でも、緊急事態宣言で「人との接触は最低でも7割減、極力8割減」のソーシャルディスタンスの概念が普及し、テレワークやリモートワークなどといった働き方が随分と広がった。意外なことにこの社会環境が人間にとってより快適だと気付き始めている人も多い。できればこの際、生産や流通、サービスの現場をロボットやAI化にシフトしようとの意識や発想が企業を中心に広がるかもしれない。導入のコストはかかるが、将来的にはコストカットできる。もちろん、懐疑的な見方もさまざまあるが、ポスト・コロナは働く現場の未来をイメージさせてくれる。

⇒19日(日)午後:金沢の天気    くもり時々あめ

☆続・「ポスト・コロナ」を読む

☆続・「ポスト・コロナ」を読む

    前回(17日付)のブログで「国難だからあえて給付を受け取らないという選択肢、あるいは志があってもよい」と書いた。すると、ブログを読んだ知人からさっそくメールがあった。「ということは、宇野さんは志が高いから、10万円を受け取らないんだよね(笑)」と。返答に窮したが、こう返信した。「志は半ばなので10万円は受け取ります。お金は循環させ日本経済の復興に寄与します。その一部は『ふるさと納税』に回し、返礼品に能登牛をお願いすることにします。窮する地方財政と需要減に陥っている畜産農家のお役に立ちたい。肉はすき焼きにして巣ごもり家族の融和をはかります(苦笑)」

   投資より内部留保、有事を想定した日本型経営戦略

   16日付「☆『ポスト・コロナ』の世界を読む」の続き。IMF調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミックと世界経済について厳しいシナリオも描いている。「世界的流行が今年後半に勢いを失わず、感染拡大防止措置が長引き、金融環境が悪化し、グローバルなサプライチェーンがさらに崩壊する可能性もある」(IMF公式ホ-ムページ)

    2008年のリーマンショックはアメリカの投資銀行の破綻がきっかけで連鎖的に世界規模の金融危機が発生し他産業にも波及した構図だ。しかし、今回のパンデミックでは国内外の「鎖国」政策でエアライン、鉄道を始め旅行業、ホテル・旅館業、製造業、地域の飲食店にいたるまでさまざま産業が痛手を被っている。まさにコロナ恐慌だ。

   国際線の9割、国内線の3割を減便を余儀なくされたANAホールディングスが日本政策投資銀行などに1兆3000億円規模の融資枠設定を要請していると報じられた(4月3日付・日経ビジネスWeb版)。定期航空協会のプレスリリース(4月9日付)によると、加盟各社の減収規模はことし2月から5月の4ヵ月間で全体で5000億円が見込まれる、としている。日本の航空業界にとって大打撃だ。ANAが金策に走るのも当然だろう。ところが、ANAの動きに比べ、JALは表立った融資に向けた動きなど報じられていない。

   そこで2019年3月期の有利子負債と利益余剰金(内部留保)を調べてみると理解ができた。ANAは負債7704億円に対し内部留保が5483億円と負債が上回る。JALは負債1368億円に対し内部留保が8225億円もあり、JALは資金調達に余裕があるのだ。ANAは政府目標である訪日4000万人達成に歩調を合わせ、機体を2017年294機から22年335機にするなど積極的に投資を続けてきた。一方、JALは日航機墜落事故(1985年、520人死亡)と経営破綻(2010年、負債2兆3200億円)という2つの十字架を背負い、この10年ひたすら内部留保を増やして財務体質の強化に邁進してきた。

   たとえるなら、ANAはアメリカ型経営、JALは日本型経営、と言えるかもしれない。アメリカ型は内部留保に慎重だ。むしろ、企業の成長戦略として株主への利益還元とさらなる投資を指向する。逆に、日本型は、債務超過に陥ると日本の銀行の融資が受けにくくなるという背景もあるが、今回のパンデミックや震災、あるいは大事故などの有事を想定して内部留保の蓄積を指向する。果たしてポスト・コロナの企業戦略はどうあるべきなのだろうか。

⇒18日(土)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

★一律10万円を受けないという国難の選択肢

★一律10万円を受けないという国難の選択肢

           「国難とも言うべき事態を乗り越えるため、日本全体が一丸となって取り組んでいくしかない」。安倍総理は昨夜午後8時17分から、総理官邸で新型コロナウイルスの対策本部会合を開き、国内のすべての都道府県に緊急事態を宣言した。これによって各県の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となった。期間は5月6日まで。GW中に人の移動を全国一斉に抑える狙いがある。海外のようなロックダウン(都市封鎖)はしない(16日付・共同通信Web版)。

   今回の宣言の柱は2つ。感染者が急増する石川県と北海道、京都府、愛知県など6道府県と7日に発令した東京、大阪など7都府県の合わせて13都道府県を「特定警戒」のエリアと位置づけ、重点的に対策を進める。また、減収となった世帯に限定した30万円の給付金はやめ、所得制限を設けずに全国民に一律10万円を給付することで再調整する。その理由は、緊急事態宣言を全国に拡大することで、行動が制限される全ての国民から協力を得るため、としている。いわば私権制限にともなう協力金のようなカタチだ。

   今回の緊急事態宣言の率直な印象。「卵が先か、ニワトリが先か」の論議ではないが、収入減の理由付けなど手続きがややこしそうだと不評を買っていた30万円給付を一律10万円にシフトさせるために、あえて全国に緊急事態宣言を拡大したのではないかと思えてならない。国内の感染者数にはかなりのばらつきがある。岩手はゼロ、鳥取は1、徳島3、鹿児島4などとなっている。ここに緊急事態宣言の網をかけてもよいものだろうか。

   岩手県庁公式ホームページをチェックすると、石川啄木祭短歌大会(5月3日・盛岡市)や日本ワインフェスティバル花巻大迫2020(5月30、31日・花巻市)といった大型イベントが次々と中止になっている。おそらく、首都圏など県外からの感染者には来てほしくないという防戦の態勢に入っている。緊急事態宣言でさらにそれを徹底できる。

   それにしても10万円を国民1億2595万人(総務省統計・3月1日現在)に一律給付すれば、ざっと12兆5950億円だ。さっそく、麻生財務大臣は、一方的に支給するのではなく「要望される方、手を挙げる方に配る」と述べた(17日付・共同通信Web版)。個人的にはこの案に賛成だ。必要な人、家族が近くの役所に給付を申請すればよい。 国難だからあえて給付を受け取らないという選択肢、あるいは志(こころざし)があってもよい。ただ、国からのマスクは受け取る。

⇒17日(金)午後・金沢の天気   はれ

☆「ポスト・コロナ」を読む

☆「ポスト・コロナ」を読む

   きのうのブログで紹介したIMF発表の世界経済見通しに関する調査局長(ギータ・ゴピナード氏)の論評は新型コロナウイルスのパンデミック終息後の世界経済の動きや国際関係について示唆に富んでいる。

            安全性が担保されたツーリズムへの転換

   たとえばこの一文。「今回は影響を免れる国のない、真にグローバルな危機だ。観光業、旅行業、ホスピタリティ産業、娯楽産業などに成長を依存している国々は、とりわけ大きな打撃を受けている。新興市場国と発展途上国はそれ以外の課題にも直面する。比較的脆弱な医療システム、支援策のための財政余地が限られたなかで危機への対応を迫られる一方、世界的にリスク選好が弱まるなかで先例のない額の資本逆流が発生し、通貨圧力にもさらされている。しかも複数の国が、経済成長の停滞と高水準の債務という脆弱な状態で今回の危機に突入した。」(IMF公式ホームページ日本語)

   この現象を自分なり解釈すると、前半は文字通り、観光産業に依存している国や地域はすでに大きな打撃に、そして後半は発展途上国における経済破綻と大量の難民発生の可能性を示唆しているのではないか。「ポスト・コロナ」の現実世界が見えて背筋が寒くなる。

   観光産業が柱の一つである金沢も例外ではない。金沢港に「クルーズターミナル」がこの春完成した=写真=。3階建ての建物で乗船待合室だけでなく、レストランや展望デッキ、会議室、宿泊施設などが入る。石川県が80億円の予算を投じて完成させた「海の玄関口」だ。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、今年は54本のクルーズ船が寄港する予定だったが、すでにイギリスやイタリアの客船などキャンセルが相次いでいる。当初4月4日オープンだったが営業開始の目途もたっていない。そもそも、世界旅行というクルーズ船観光の業態そのものが持つのかどうか。

   ただ、人というのは忘れっぽい。ポスト・コロナが定着すれば、抑えられていた旅行熱が再び高まるのではないだろうか。もちろん、そのときは今回の公衆衛生上の教訓が制度化され、より安全が担保されたクルーズ船運航となっていることが前提であることは言うまでもない。

⇒16日(木)午前・金沢の天気     はれ

★ウイルス猛威 「三寒四温」を待つ

★ウイルス猛威 「三寒四温」を待つ

   韓国でも新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している。29日に感染者数が594人増え、合わせて2931人となった(29日付・朝鮮日報日本語版)。発生源の中国では感染者が新たに427人増えて、合わせて7万9251人となり、死亡者も47人増えて2835人になった(29日付・NHKニュースWeb版)。北京では今後、出稼ぎ労働者が地方から戻ることに備えて、感染拡大の防止策を改めて周知するなど、対策に追われているという(同)。

   WHOがまとめた28日付の状況報告では、感染者は55ヵ国・地域の8万3652人に上り、うち死者は2858人となった。南半球のニュージーランドやアフリカのナイジェリアなど感染国も5ヵ国増えた。世界各地での増加傾向が顕著となっている(29日付・共同通信Web版)。

   きょう午前のNHKニュースは、WHOのテドロス事務局長が28日の記者会見で「世界中で感染の拡大が広がり続けていることを懸念している。危険性の評価を世界的に『非常に高い』に引き上げたと述べた」と報じていた。そこで、テドロス氏の詳細なコメントをチェックするためWHO公式サイトにアクセスした。ところが、事務局長の28日の会見(media briefing)のページは、何度アクセスしても「This page cannot be found」になってしまう(29日午後0時25分現在)。その他のページは閲覧できるが、このページだけがアクセスできない。憶測だが、世界からテドロス氏に対して批判のコメントが殺到しているのではないか。「なぜこのような事態になっても、パンデミックと宣言しないのか。WHOの失態ではないか。いつまで中国に忖度(guesswork)しているのか」と。そこでやむなく一時閉鎖しているのではないか。

   その声は株式市場でも聞こえる。28日のニューヨーク・ダウは7営業日連続で続落し、前日比357㌦安の2万5409㌦で取引を終えた。この1週間で3600㌦下がり、下落率は12%。リーマンショックの2008年10月以来の大きさになった(29日付・共同通信Web版)。感染拡大により世界的な景気後退懸念が強まったことが、投資家の心理を冷やしていることは想像に難くない。「これは誰のせいだ。WHOはウイルスが世界経済に与える影響を予見できなかったのか」と投資家の怨嗟の声が聞こえる。

   けさ庭先を見ると、ヒメリュウキンカ(姫立金花)が咲き始めていた=写真・上=。艶のあるその黄色い花は、冬を超えて春を告げるように咲く。花言葉は「会える喜び」だとか。先日(27日)もカンシャクヤク(寒芍薬)があられの降る中、赤紫の花を咲かせていた=写真・下=。この時節に楽しませてくれる花に「三寒四温」という言葉が浮かぶ。寒さに耐えながらも春の気配が日に日に高まる。新型コロナウイルスの猛威も三寒四温のように徐々に治まってほしいと願うばかりだ。

⇒29日(土)午後・金沢の天気   くもり

☆次なる世界の目線は「TOKYO」に

☆次なる世界の目線は「TOKYO」に

           イギリスBBCテレビは新型コロナウイルスが及ぼす東京オリンピックへの影響について特集している(18日付・Web版)。見出しは「Coronavirus: What could it mean for the 2020 Olympics in Tokyo」(コロナウイルス:2020年の東京オリンピックに何をもたらすのか)。

   特集によると、五輪開催の2、3ヵ月前に出場選手は日本に入るので4月や5月には終息宣言が出されるのかと不安視する選手をインタビューなどを紹介している。IOC(国際オリンピック委員会)で東京オリンピックを担当するコーツ調整委員長が、東京都内で行った記者会見(今月14日)で、オリンピックは予定どおり、東京で開催する考えを強調したことも紹介している。

   印象的な記事の一文。「No Olympics has ever been cancelled or postponed due to anything other than war. To do so for a virus would be unprecedented.」(戦争以外でオリンピックがキャンセルまたは延期されたことはない。したがって、ウイルスでキャンセルや延期は前例のない)。確かに、2016年のリオ五輪でも、ジカウイルスの発生という問題はあったが予定通り実施さた。

   この記事を読めば東京オリンピックは予定通り開催と読めるのだが、イギリスでは政治利用もされているようだ。5月に行われるロンドン市長選挙の2人の候補者が、コロナウイルスの感染の拡大でオリンピックが東京で開催できない場合、代わりにロンドンで開くことが可能だとアピールしているようだ(21日付・NHKニュースWeb版)。

   以下、記事の要約。与党の保守党からの候補者はツイッターで「我々にはインフラと経験がある」としたうえで、「ロンドンは、求めがあればオリンピックを再び開催する用意はできている」と述べている。最大野党の労働党で、再選を目指す現職側も、NHKの取材に対し、東京五輪が中止になる可能性は低いとしながらも、「ロンドンには経験があり、仮に求められることがあれば開催に向けて最善を尽くす」とコメントしたという。

   候補者2人のコメントは東京オリンピックがコロナウイルスの危機にさらされているのではないかという有権者の関心事を巧みにとらえたものだろう。それにしても、選挙アピールの材料になるというのは、それはそれで日本の有権者としては心穏やかではない。

   さらに、アメリカのCNNニュース日本語版(21日付)は同国の疾病対策センター(CDC)が、日本への渡航に関する注意情報を出したと伝えている。中国本土以外の国や地域を対象とする注意情報の発令は香港に続いて2度目。警戒レベルは3段階で最も低い「レベル1」だが、今後さらに上げていく可能性もある。東京オリンピックの開催の可否はCDCに握られてしまったのではないか。CDCはWHOのように手加減はしない。

⇒21日(金)朝・金沢の天気    はれ

★「春節のパンデミック」

★「春節のパンデミック」

         中国の衛生当局はきょう24日、武漢市で感染が拡大している新型コロナウイルスによる肺炎の患者数が830人、死者は25人に達したと発表した(24日付・日経新聞Web版など)。一方、WHOは23日の緊急会合で、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言は時期尚早との判断を下した。前回のこのブログで取り上げたが、中国の発表のタイミングが絶妙で、「WHO対策」は実に巧妙だ。

   WHOが緊急会合を開き、新型コロナウイルスの状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断されれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。これは、中国にとっては非常に不名誉なことになると中国指導部は考え、緊急事態宣言はなんとしても避けたかったのではないか。

   そこで、WHOが22日にジュネーブの本部で緊急会合を開き、コロナウイルスへの対応を協議することを発表した日(20日)に、習近平国家主席が情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出した。22日のWHOの緊急会合では結論が出ず、23日に継続協議で時期尚早との判断が出たのを確認して、今回の新たな数字を公表したのではないか。

            コロナウイルスの問題性は次なるステージに入ってきた。きょうから始まった中国の春節連休の「大移動」で、日本でもニュースが飛び交っている。沖縄・那覇市のドラッグストアでは、PM2.5やウイルスを99%カットするなどの記載がある高機能マスクを200個を入荷したが、中国人観光客の購入でその日で完売した(24日付・沖縄タイムスWeb版)。

    旅行で東京を訪れていた武漢に住む40代の中国人男性が、来日する前の今月14日から発熱があり、22日になって東京都内の医療機関を受診したところ、肺炎の兆候がみられたため入院、24日未明に新型コロナウイルスに感染していることが確認された(24日付・NHKニュースWeb版)。春節のパンデミックが始まったか。(※写真は厚生労働省のホームページより)

⇒24日(金)午後・東京の天気   くもり