⇒メディア時評

☆報道した週刊誌なぜ排除  企業ガバナンスが問われたフジ社長会見

☆報道した週刊誌なぜ排除  企業ガバナンスが問われたフジ社長会見

  テレビ業界の用語で、映ってはいけないものが映り込んだりすることをバレルと言う。このところテレビ業界は不祥事や違反が相次ぎ、まさにバレバレの状態ではないだろうか。メディア各社の報道によると、きのう(17日)午後、フジテレビ社長による定例記者会見が開かれた。フジテレビ社長の定例会見はもともと2月28日に予定されていたが、記者会から前倒しでの会見の要望があり、フジテレビ側は前日の16日にこの日での開催が決めた。定例会見というより「緊急会見」のような様相だった。

  タレントの中居正広氏の女性とのトラブルをめぐる週刊誌報道がにぎやかだ=写真=。とくに、フジテレビの編成部長が絡んでいると週刊文春(12月26日号)で報道され、さらに最新号(1月23日号)では、フジテレビの女性アナも被害者として証言していると報じられている。フジテレビ社長の会見はこれを受けてのもので、会見内容は全国紙や経済紙なども報道している。冒頭でバレルと述べたが、まさにこの会見はテレビ局らしからぬ側面が見えている。

  会見は、冒頭で述べたように記者クラブ加盟社の記者のみが参加できる定例記者会見の前倒しとして設定され、主催者はフジテレビだった。このため、出席は全国紙やスポーツ紙が加盟するラジオ・テレビ記者会、参加が認められたNHKと民放テレビ局などに限定された。さらに、フジは定例記者会見であることを理由にカメラによる動画撮影を許可せず、週刊誌やインターネットメディアなどの参加も認めなかった。

  そもそも、記者会がフジテレビ社長の定例会見の前倒しを要望したのは、タレント中居正広氏の女性とのトラブルでのフジテレビ編成部長の関わりについて、法人トップの見解を求めるものだった。会見で社長は「多大なご心配、ご迷惑をおかけし、説明ができていなかったことをおわびします」と謝罪し、外部の弁護士を中心とした調査委員会を立ち上げると述べた。第三者から見ても、これは実質的な謝罪会見だ。つまり、会見を通じて視聴者や国民におわびをするということになる。ならば、定例会見という枠を設けずに、動画撮影を許可し、週刊誌やインターネットメディアなどの参加を認めるべきではなかったのか。むしろ、今回の会見で問われたのは企業統治、ガバナンスの問題だろう。

  もう一つ。テレビ東京の番組「激録・警察密着24時!!」をめぐり、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は2023年3月の放送分について、実際の密着は2日間のみで、1年にわたって密着取材したかのように誤解させる表現をしていて、放送倫理違反に当たるとの意見を公表した(1月17日付・BPO放送倫理検証委決定第46号)。一方で委員会は、制作会社スタッフの過酷な勤務状態による「ひっ迫する制作体制」に問題があると述べ、制作を委託したテレビ東京側にも責任があるとしている。

⇒18日(土)夜・金沢の天気    くもり

☆蛇行する「のと里山海道」 国宝「色絵雉香炉」に愛嬌を感じる首かしげ

☆蛇行する「のと里山海道」 国宝「色絵雉香炉」に愛嬌を感じる首かしげ

  来年2025年は干支で言えば、「巳年」にあたる。「みどし」あるいは「へびどし」と読んでいる。「巳年」でイメージするのが、金沢と能登を結ぶ自動車専用道路「のと里山海道」だ。何しろ、ヘビがはうように、くねくねと左右、そして上下に曲がって走行することになり、まさに蛇行運転になる=写真・上、6月4日撮影=。元日の能登半島地震で、道路側面のがけ崩れや道路の「盛り土」部分の崩落などが起き、全線で対面通行が可能になったのはことし9月だった。その後遺症はいまも重く、この蛇行運転が余儀なくされる区間は制限速度が時速40㌔に引き下げられている。

  さらに冬の季節が本格的になれば、積雪が見込まれる。左右に土のうが積まれた箇所も随所にあり、除雪車の作業もかなりの時間を要することになるのではないかと、利用する側も案じる。

  「巳」の次は「雉」の話。きのう金沢市にある石川県立美術館に行く。「色絵雉香炉」(いろえきじこうろう)」が目玉の展示作品。地元石川県にある国宝2点のうちの1点である。京焼の祖といわれた野々村仁清が17世紀に焼いた作品。羽毛などを美しく彩り、豪華さがある。説明書によると、作品の幅 は48.3㌢、奥行が12.5㌢、高さが18.1㌢あり、鳥のキジのほぼ等身大のカタチをした香炉だ。じつに写実的に焼き上げられていて、飛び立つ寸前の姿を写し、気迫に満ちた緊張感あふれる作品と評されている=写真・中、県立美術館公式サイトより=。

  国宝に対して、これは適切な表現かどうかは分からないが、「面白い」と思ったのは首の部分だった。よく見ると、わずかに首を左にかしげていて、鳥の表情が絶妙に表現されている=写真・下、3日撮影=。ひと言で言えば、鳥の習性をじつによく観察している。個人的な話だが、幼いころ(小学低学年)に実家の納屋で十数羽のニワトリを飼っていて、エサやりが日課だった。エサを持って納屋に入ると、鳥たちは最初、首を少しかしげている。それから一斉にゆっくりと近づいてくる。エサをまくと、鳥たちはエサを突き始める。

  鳥の目は頭の横にあるので、首を横にかしげる仕草はこちらを観察しているのではなくて、周囲の鳥たちの行動を見て一斉に動き出すのだと親から教わった。それにしても、鳥が首を少しかしげる仕草は人に愛嬌というものを感じさせる。仁清もそれを表現したかったのだろうか。

⇒4日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

☆プラごみ国際条約の合意先送り 環境問題国と生産国との隔たり埋まらず

☆プラごみ国際条約の合意先送り 環境問題国と生産国との隔たり埋まらず

  12月に入った。先日、造園業を営んでいる人との立ち話で、「モズのはやにえ」のことが出た。鳥のモズはこの時季、捕らえたカエルなどの獲物を木の枝に突き刺す習性があり、突き刺した場所が低いと暖冬、高いと大雪になるとの風説がある。業者の人は「ことしは高めですね。例年は1.5㍍から2㍍ほどですが、ことしは3㍍のものもある。きっと大雪ですよ」と。話を聴いていた別の知人は「それは大変、ことしも雪囲いをしっかりよろしくお願いします」と真剣に受け止めていた。ただ、業者は「あくまでも話のネタですよ。当たる年もあれば当たらない年もある」と笑っていた。

  話は変わる。先月30日付のブログで、プラスチックによる環境汚染を防ぐための国際条約を2024年中にとりまとめる政府間交渉委員会(先月25日-今月1日)が韓国で開かれ、条文案の合意を目指している、と述べた。きょう公表された外務省公式サイトの「プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会の結果概要」によると、焦点となっているプラスチックの生産量の世界的な削減目標を設けるかどうかなどについて各国の意見の隔たりが埋まらず、合意は見送られた。

  プラスチックの消費や廃棄物の量を減らすと同時に生産についてもできるだけ抑制していく必要があると主張した国々がある一方、プラスチックの原料になっている化石燃料の輸出に経済を依存している国々は、気候変動対策に加えて化石燃料の生産や輸出を制限される国際条約には反対した。対立点が改めて浮き上がった。

  国連環境総会(2022年3月)で法的拘束力のある国際条約を2024年中にとりまとめることを決議していたが、見送られることになった。プラスチックごみの量は2019年には世界で3億5300万㌧と20年で2倍以上に増えるなど深刻になっている。今回の政府間交渉委員会で日本は「プラスチックのライフサイクル全体での取組の促進」「プラスチック製品及びプラスチック製品に使われる化学物質に関する共通基準の明確化」「各国におけるプラスチック資源循環の促進」「環境に配慮した製品設計、リデュース・リユース・リサイクルの促進」などを提案し、積極的に条約交渉に関与していた(外務省「結果概要」より)。

  今後、改めて会合が開かれ、今回の交渉内容をもとに条文案をまとめるための協議が再開されるという。

(※写真は、2017年「奥能登国際芸術祭」の作品、深澤孝史氏作『神話の続き』。「現代の寄り神はゴミの漂着物」と訴え、海岸ゴミのポリ容器やペットボトル、漁具ゴミを白くペイントして鳥居に似せたオブジェ)

⇒2日(月)夜・金沢の天気    はれ

☆能登半島の沖に連なる「178㌔の海域活断層」 原発にどう向き合うのか

☆能登半島の沖に連なる「178㌔の海域活断層」 原発にどう向き合うのか

  能登地方では2018年から小規模な地震活動が確認され、2020年12月以降で活発化し、ことし元日にマグニチュード7.6、最大震度7の地震となった。震度7の観測地点は輪島市門前町走出と志賀町香能の2ヵ所。半島の中で隣接するこの輪島市門前町と志賀町はこれまでも大きな地震に見舞われている。自身の記憶にあるのは2007年3月25日に門前沖を震源とするマグニチュード6.9、震度6強の揺れ。過去には、1892年12月9日に志賀町沖を震源とするマグニチュード6.4の地震が起きている(政府の地震調査委員会資料より)。志賀町には北陸電力の志賀原発の1号機・2号機=写真=があり、現在は2機とも停止中なのだが、現地の人たちにとっては揺れが起きるたびに気が気ではないだろう。

  けさ(20日)の地元紙によると、北陸電力は元日の地震を受け、志賀原発2号機の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査(今月6日)で、能登半島北部に連なる海域の活断層をこれまでの96㌔から178㌔に修正して見直していることが分かった。活断層が連動する長さをこれまでの1.8倍とすることで、原発で想定する揺れや津波の大きさに影響することになる。

  この記事を読んで、電力側の対応が遅いのではないかというのが県民の一人としての自身の感想だ。今回の地震では、すでに政府の地震調査委員会は半島の北東から南西にのびる150㌔の活断層がずれ動いたことを指摘している。元日から4日間の揺れは、1日が358回、2日が387回、3日が135回、4日が65回の計945回におよんだ(気象庁の報道発表、図はウエザーニュース公式ホームページより)。半島の尖端部分で起きた主破壊は西と東に分かれ、それぞれ向きや傾斜の異なる断層を次々と破壊しながら大きく成長していった様子が明らかになっている。また、研究論文「2024 年 Mw 7.5 能登半島地震における複雑な断層ネットワークと前駆的群発地震によって制御される複合的な破壊成長過程」(研究者代表:奥脇亮・筑波大学生命環境系助教、深畑幸俊・京都大学防災研究所附属地震災害研究センター教授)は、「長く静かに始まり、向きや傾斜の異なる断層を次々と破壊した」と表現している。

  これまでの2号機の再稼働に向けた審査の中で、電力側は原発敷地内を通る10本の断層は「活断層でない」と主張し、これを受けて原子力規制委員会は2023年3月3日の会合でその主張を妥当と判断し、2号機再稼働への道を開いた。ところが、今回の地震で原発周辺の海域で活断層が連動することがはっきりした。実際、元日の地震では原発敷地の地下で震度5強を観測。変圧器が故障し、外部電源の一部が使えない状況が続いている。また、この日に4㍍の津波が周辺を押し寄せた。

  敷地内の断層が「活断層でない」から原発が安心安全なのではなく、半島の沖にある178㌔もの連動した活断層にどう対応するのか、揺れや津波想定をどう算出していくのか、この壮大な難問に向き合うことになるのだろう。正直、志賀原発が止まっていてよかったというのが県民の思いではないだろうか。

⇒20日(水)夜・金沢の天気     くもり

★過半数割れ与党の綱渡り内閣で大胆な政策が実行できるのか

★過半数割れ与党の綱渡り内閣で大胆な政策が実行できるのか

  けさの紙面各紙を読むと、ほとんどの一面のトップは「第2次石破内閣発足」だ。一読者として思うのは、これがトップを飾るニュース価値があるのだろうか、ということだ。石破総理就任から最短の8日間で衆院解散、先月27日の投票で与党の自民・公明は「233の壁」に達せず過半数割れ。きのう12日の特別国会の首班指名選挙の決選投票で多数だった石破氏が再選された。流れを読むと単なる事務手続きの延長戦のようにも思え、これが一面トップを飾るニュースなのかとさめてしまった。

  新聞紙面を構成する編集者も戸惑ったに違いない。ほかに一面トップを飾るようなニュースがこの日はなかったからだ。その中で、一面で「第2次石破内閣発足」をトップからあえて外して準トップに据えたのが北陸中日新聞だった。トップに持ってきたのは、「2次避難 申し出ゼロ」の見出しの記事。元日の能登地震に続く9月の記録的な大雨で被害を受けた珠洲市大谷地区で、行政が体育館などでの1次避難者に2次避難(金沢市などの宿泊施設)の希望者を募ったところ、申し出がなかったとの内容だ。その理由として「『育ったところ』愛着」「度重なる避難の負担」の見出しを添えている。被災地の住民の心情を描いた、いわゆる地ダネだ。つい記事を読んだ。

  冒頭で述べたように、このところメディアが取り上げる選挙や国政の記事にはニュース価値が感じられない。初の女性大統領か130年ぶりの返り咲きの大統領かと国際世論を煽ったアメリカ大統領選のダイナミックな報道と比較しているせいかもしれない。

  ところで、アメリカでは大統領選の直後ながら大胆な動きが出始めている。日経新聞電子版「ウォール街ラウンドアップ」(12日付)に目を通すと、トランプ次期政権が起用するイーロン・マスク氏は「政府効率化省」のトップに就任するとみられ、マスク氏は「テクノロジーを用いて人員削減に答えを出す」と述べている。マスク氏にはX(旧ツイッター)の従業員を80%削減した実績がある。さらに、テレビ番組に出演し、「政府支出はアメリカを破綻に追い込んでいる」として、政府予算の3分の1に相当する2兆㌦(300兆円超)を削減する考えを示した、という。この大胆な発言でアメリカの政治からますます目が離せなくなった。

  再選された石破総理は、年収が103万円を超えると所得税が発生する「103万円の壁」の見直しについて、「真摯に検討する」と会見で述べた(12日付・メディア各社の報道)。それよりもむしろ、日本も支出削減の大ナタを振るわないとそのうち国家が破綻するのではないか。ただ、綱渡りの過半数割れ与党ではマスク氏のようなダイナミックな政策は打ち出せず、内閣の混迷がしばらく続くのだろう。

⇒12日(火)夜・金沢の天気   はれ

☆能登の二重被災と総選挙~ウグイス嬢のマイク叫びは控えめ~

☆能登の二重被災と総選挙~ウグイス嬢のマイク叫びは控えめ~

  衆院総選挙の期間中に見るいつもながらの光景は「ウグイス嬢」「桃太郎」「ドブ板」の3つではないだろうか。ウグイス嬢は選挙カーに乗って、「〇〇をよろしくお願いします」とマイクで叫びながら街を流すが、終盤ともなると「最後最後のお願いです。どうぞどうぞよろしくお願いします」と泣きが入った声になる。「桃太郎」はたすきをかけた候補者が、のぼりを持った運動員たちとともに街のメイン通りや商店街を練り歩き、支持を訴える。このシーンは、桃太郎がキジやサル、イヌたちとのぼりを立てて鬼退治に向かう昔話からそう名付けられている。「ドブ板」は候補者が裏路地まで入って地域の有権者にあいさつする光景だ。

  では、石川3区ではどのような選挙の光景が繰り広げられているのか。きのう(18日)午後、自民前職の西田昭二氏は輪島市町野町の仮設住宅で遊説を行っていた=写真=。町野地区では元日の地震で、さらに9月の記録的な大雨で山から土砂が流れ多くの家屋が全半壊する二重被災に見舞われた。倒壊した家屋がいまも野ざらしになっている場所も少なくない。

  ここでマイクを握った防災服姿の西田氏は自らも被災して家族は仮設住宅で暮らしていると話し、「あまりにも被害が大きく、復旧復興には時間がかかる。どれだけ環境が変化しても、能登に住む方にとってここは大切な場所。安心してふるさとで暮らせるよう、住宅の再建や生業(なりわい)の再生に、『出来ることは全てやる』『やらなければならないことは必ずやる』との強い思いをもって全力で取り組む」と述べていた。

  冒頭で述べた「桃太郎」「ドブ板」の光景は仮設住宅ということもあり遠慮したのだろうか、支援者と握手を交わす以外は見ることはなかった。西田氏はその後、別の仮設住宅へと向かった。選挙カーの「ウグイス嬢」はマイクのボリュームを低めに「よろしくお願いします」と叫んではいたものの、「被災されお亡くなりになられましたご遺族の皆様へ心よりお悔やみを申し上げます」とのフレーズも何度か入れていた。被災地に気配りをした選挙活動だった。

  石川3区の3候補はどのような能登の将来ビジョンを訴えているのだろうか。地元の新聞メディアが3氏に、「能登の復旧・復興、将来のグランドデザインをどう描くか」とのアンケートを行っている。これに対し、西田氏は「移住定住の促進とコミュニティーの再生、交通インフラの改善、関係人口の増加など施策を組み合わせ一歩一歩進めることが必要」、立憲民主の前職の近藤和也氏は「能登の農林水産業の活性化を図る。浮体式の洋上風力発電は成長産業の軸にもなり、能登のその候補地となりうる」、共産の新人の南章治氏は「被災地の医療・介護事業、施設の経営を国と自治体が支え、高齢者の人権と尊厳が守られる年金、介護、医療制度の改革を進める」と述べている(19日付・北陸中日新聞)。

  3氏のビジョンはどれも能登の復興には欠かせない。一つにまとめて復興計画に組み込めないものだろうか。

⇒19日(土)夕・金沢の天気    あめ 

☆ワクチン接種死を「コロナで」と報道、BPO「放送倫理違反」

☆ワクチン接種死を「コロナで」と報道、BPO「放送倫理違反」

   このブログで何度か書いたが、新型コロナウイルスのワクチン接種後に「アナフィラキシー症状」とおぼしき副反応に一時的だったが見舞われたことがある。2022年8月に4回目のワクチン接種を金沢市内の病院で受けた。接種した右腕の付け根だけでなく、左腕のほぼ同じ個所もじんわりとした痛みが続いた。恐怖を感じたのは接種2日目の午後、小刻みに体が震える症状が出た。パソコンのキードボードを打つことができなかった。数分して震えが治まった。

   アナフィラキシー症状は薬や食物が身体に入ってから起きるアレルギー反応で、気道閉塞(喉の奥の空気の通り道が塞がれること)や不整脈、ショックなどで死に至る事例もある。コロナウイルス感染とワクチン接種による副反応はまったく別なものだ。自身は医者と相談し、5回目を受けたのはことし1月だったが、これ以降は副反応は出ていない。

   この話を再び持ち出したのは、ことし5月15日放送のNHK『ニュースウオッチ9』で、ワクチン接種後の副反応で亡くなった人の遺族3人のインタビューをコロナに感染して亡くなったと誤認させる伝え方したとして、報道の有り様が問われている問題。きょう5日、BPO(放送倫理・番組向上機構)の放送倫理検証委員会は報道の経緯を文書でまとめ公表した。以下、抜粋。

「コロナウイルスに感染して亡くなった人とワクチン接種後に亡くなった人の違いは分かっていたものの、広い意味でコロナ禍で亡くなった人に変わりはないだろうと考えた、と(担当者は)説明している。にわかに信じがたい説明だが、仮にそう考えていたのならば、こうした認識は、ニュース報道の現場を担う者としてあり得ない、不適切なものであったと言わざるを得ない」

   放送は「新型コロナ5類移行から1週間・戻りつつある日常」というテーマで、およそ1分間の映像だった。担当者は記者やディレクターの部署ではなく、映像編集を業務とするセクションに所属。自ら現場に出て取材・制作を行ったのは今回が初めてだった。にもかかわらず担当者は、職場内では特に助言やサポートを受けていなかった。明らかに死因が異なるにもかかわらず、タイトルに合わせて強引に映像を構成したのではないだろうか。

   この問題を遺族側がBPOに訴えていた。BPO放送倫理検証委は文書の中で、「人の死」という人間の尊厳にも関わる情報を扱う放送であるにもかかわらず、取材の基本をおろそかにした行為はあまりにも軽率だったと指摘し、「事実を正確に伝えるというニュース・報道番組としての基本を逸脱し、視聴者の信頼を裏切り遺族の心情を大きく傷つける結果を招いた」と述べ、放送倫理違反とした。

   BPOの意見を受けてNHKは、「ジャーナリズム教育の徹底など現在進めている再発防止策を着実に実行し、視聴者の信頼に応えられる番組を取材・制作してまいります」(5日付・NHK報道資料)とコメントを出した。この問題でNHKは放送後に番組で謝罪し、編集責任者を減給、編集長をけん責の懲戒処分としている。

⇒5日(火)夜・金沢の天気    くもり

★キッシンジャー氏の「外交遺産」は次に繋がるのか

★キッシンジャー氏の「外交遺産」は次に繋がるのか

   前回ブログの続き。キッシンジャー氏逝去をめぐる中国の対応はどうか。TBSニュースWeb版(30日付)によると、中国外務省の汪文斌・報道官は定例会見で、「キッシンジャー博士は長い間、中米関係の発展に関心を持って支持し、中国を百回以上訪問して、中米関係の正常化に歴史的な貢献をしてきた」 「中国の人々の古くからの友人であり、人々は中米関係への重要な貢献を忘れないだろう」と述べ、習近平国家主席がバイデン大統領に弔電を送り、哀悼の意を表したことを明らかにした。

   また、汪報道官は「キッシンジャー博士は生前、中米関係を非常に重視し、中米関係が両国と世界の平和と繁栄に重要だと認識していた」と述べ、「中国とアメリカはキッシンジャー博士の戦略的ビジョンを受け継ぎ、中米関係の健全で安定的な発展を推進すべきだ」と指摘した。

   前回ブログでも述べたが、1971年7月にキッシンジャー氏が密かに中華人民共和国を訪れ周恩来首相と会談し、その後、翌年2月にニクソン大統領が訪中すると発表し、世界をアッと驚かせた。このことがきっかけで、中華人民共和国にも大きな転機が訪れた。ニクソン大統領の訪中を公表すると、国連がにわかに動いた。当時の国連の常任理事国は中華民国だった。その年の10月にいわゆる「アルバニア決議」が国連で発議され、中国の代表権は中華人民共和国にあると可決され、常任理事国を引き継いだ。アルバニア決議にはアメリカも日本も反対はしたものの、この流れのきっかけをつくったのはまさにキッシンジャー氏であり、中国にとっては大恩人だろう。

   この中国の恩人のアメリカ国内での評価はどうか。ウォール・ストリート・ジャーナルWeb版は「キッシンジャー氏が開いた中国への扉」と題して動画で特集を組んでいる=写真、1973年・毛沢東主席とキッシンシャー氏の会談=。その論調はキッシンジャー氏はアメリカ史上、最も影響力があると同時に、最も評価が分かれる外交官の一人だったとも述べている。つまり、中国を利しただけの外交だったとの評価もあるようだ。

   キッシンジャー氏はことし7月にも、米中の対立が続く中、北京を訪問して習近平国家主席と会談、11月15日に行われた米中首脳会談に向けた根回しをしたとされる。過去50年で100回以上も中国を訪れ、まさに米中関係の架け橋だった。いま米中関係が悪化している中で、キッシンジャー氏の「外交遺産」は次に繋がるのか、関係を再構築できるのか、どうか。

⇒2日(土)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

★テレビ業界の落日なのか 寄付金の着服など相次ぐ不祥事

★テレビ業界の落日なのか 寄付金の着服など相次ぐ不祥事

   驚いたことに、きのう28日にテレビメディアの不祥事が相次いで公表された。鳥取県のローカル局「日本海テレビ」と大阪の準キー局「読売テレビ」、2局は日本テレビの系列局だ。

   日本海テレビは山陰地方を放送エリアとしている。同社のプレスリリース「弊社元幹部社員の不正について」(28日付)によると、経営戦略局長は2014年から全国ネットのチャリティー番組『24時間テレビ』への寄付金を10年にわたって264万円、さらに同社の売上金など853万円の合計1100万円余りを着服していた。今月27日付で懲戒解雇とし、28日に鳥取警察署に被害届を出した。局長は今月初めに税務調査があり、着服の発覚を恐れて自ら申告。社内調査で寄付金の着服が発覚した。

   24時間テレビの寄付金は、金融機関に運ぶまで社内で一時的に保管されていて、その一部を持ち出して自らの銀行口座に入れていた。24時間テレビは1978年に放送を開始し、慈善事業を展開してきた。その由緒ある番組に泥を塗っただけでなく、寄付した人々の善意を踏みにじった行為だ。

   また、読売テレビのプレスリリース「当社社員の不正行為について 」(28日付)によると、制作局で管理職を務める40代の管理職社員は2020年4月から23年6月にかけて、関西ローカルの音楽番組『カミオト夜』の制作をめぐり、外部の番組制作会社に架空経費、総額1383万円を読売テレビに請求させていた。このうち877万円を管理職社員が着服、残り506万円は別番組の経費に充てる不正をしていた。

   管理職社員は自ら飲食した際の領収書を月ごとにまとめて制作会社に渡し、その分の現金を受け取っていた。制作会社は「追加演出費」や「追加撮影費」の名目で読売テレビに請求していた。まさに、自作自演の不正請求だ。読売テレビは管理職社員を28日付で懲戒解雇処分。また、番組『カミオト夜』を年内で休止する。

   テレビ業界で制作現場の管理職という地位は、番組に関して絶対的な権限を有している。タレントの配置や制作会社の選定などさまざまだ。そうした権限を悪用すれば、勝手し放題となる。今回の不正行為はその象徴的な出来事だろう。デジタル社会の進展で、視聴者のテレビ離れはさらに進む。テレビ業界の落日のような光景だ。

⇒29日(水)夜・金沢の天気   あめ時々くもり

☆「機密」もらす馳知事 東京五輪の誘致疑惑との関わり

☆「機密」もらす馳知事 東京五輪の誘致疑惑との関わり

   言葉は本人が込めた想いとは裏腹に誤解を生みやすい時代環境になっている。それだけ、価値観の多様化や、とくに人権には厳しい視線が注がれる。語る場にもよるが、政治家が聴衆に面白く話せば話すほど誤解を生むことにもなりかねない。石川県の馳浩知事が今月17日に都内でスポーツ振興の会合で講演し、自身が自民党の東京オリンピック・パラリンピックの招致推進本部長だった当時のことを語った裏話が物議をかもしている。

   メディア各社の報道によると、馳氏はこう語った。「当時、総理だった安倍晋三さんからですね。『国会を代表してオリンピック招致は必ず勝ち取れ』と。ここから、今からしゃべること、メモを取らないようにしてくださいね。『馳、カネはいくらでも出す。官房機密費もあるから』」 「それでね、IOCの委員のアルバムを作ったんです。IOC委員が選手の時に、各競技団体の役員の時に、各大会での活躍の場面を撮った写真があり、105人のIOC委員全員のアルバムを作って、お土産はそれだけ。だけども、そのお土産の額を今から言いますよ。外で言っちゃダメですよ。官房機密費使っているから。1冊20万円するんですよ」

   馳氏はこの発言が明るみに出でてすぐに撤回したものの、「官房機密費」(内閣官房報償費)を話題にした時点でアウトだろう。政府が「国の事務、事業を円滑、効果的に遂行するため、機動的に使える経費」と位置づける官房機密費は支払先や使途の詳細はチェックされない仕組みになっている。2023年度予算は14億6000万円。その機密費の使い方が具体的に明かされたことで、官房機密費の有り様そものが今後、国会などで問われるだろう。

   それにしも官房機密費を使って、開催都市決定の投票権を持つIOC委員全員にそれぞれのアルバムを作っていたとは、じつに違和感がある。と同時に新たな疑念もわく。東京オリ・パラを誘致する際に、電通の高橋治之元専務(※2022年8月に五輪に関連する受託収賄容疑で逮捕、その後保釈)はロビイストだった。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)によると、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦の資金を受け、高橋元専務らロビイストがIOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。

   では、馳氏のアルバムと高橋元専務の820万㌦のロビー活動はどのような関わりだったのか。素朴に考えれば、高橋元専務が馳氏が作ったアルバムを土産に携え、IOC委員105人を回り、現金を配っていたということだろうか。そもそも、アルバム作りを馳氏に指示したのは安倍元総理だが、誰が提案したのだろうか。高橋元専務が絡んでいるのか。五輪誘致活動の疑惑は深まる。あくまでも憶測だ。(※写真は、馳浩公式サイトより)

⇒21日(火)夜・金沢の天気  くもり