⇒メディア時評

★中国とTPPの信頼関係を築けるのか

★中国とTPPの信頼関係を築けるのか

   先月、中国と台湾がTPP(環太平洋パートナーシップ経済連携協定、日本など11ヵ国)への加盟を相次ぎ申請した。このニュースの率直な感想は、中国にとってハードルは高いということだ。

   中国とすれば、タイミングを見計らっていたのだろう。今年は日本がTPPの議長国だが、2022年は中国加盟に歓迎の意を示してきたシンガポール、2023年はニュージーランドと関係が良好な国々だ。しかし、中国の加盟を歓迎しない国々も多い。オーストラリアは対中関係そのものが対立化している。カナダやメキシコはアメリカと締結しているFTAで「非市場経済」国との経済パートナーの締結を禁止している。さらに、中国より先に加盟申請しているイギリスが加盟条件を満たすことがほぼ確実とされ、この加入条件が中国にとってのハードルになるのではないだろうか。

   そもそも、中国には国有企業への優遇措置、知的財産権保護の不徹底、また、電子データ移転制限措置などTPPルールに抵触する要素が多い。さらに、TPPには強制労働の撤廃などの規定がある。新疆ウイグル自治区での強制労働が疑われている問題について、中国はどう説明するのだろうか。

   さらに警戒するのは、中国が2017年6月に施行した「国家情報法」だ。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があれば、ハッカー集団や中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。

   事例がある。警視庁はことし4月20日、日本に滞在歴がある中国共産党員でシステムエンジニアの30代の男が、サイバー攻撃に使ったレンタルサーバーを偽名で契約していたとして私電磁的記録不正作出・供用の容疑で書類送検した=写真=。2016年からJAXAや防衛関連の企業など、日本のおよそ200に上る研究機関や会社が大規模なサイバー攻撃を受け、警察当局の捜査で、中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊の指示を受けたハッカー集団「Tick」によるものと分かった。こうしたことが起こる限り、TPPパ-トナーとしての信頼が築けない。ここが問題なのだ。

   きょうの日経新聞(25日付)によると、中国は政府調達で外資企業が受ける差別的措置に乗り出したと報じている。入札条件などの公平性を高め、外資企業を事実状締め出す購入候補リストなどを修正する、としている。中国はTPPの加盟をにらみ、環境整備をアピールする狙いだろう。今後もいろいろな手を打ってくるだろう。しかし、上記で述べたように中国が「国家情報法」を最優先する限り、経済の信頼関係を築けない。

⇒25日(月)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆北朝鮮のミサイルについて選挙で論戦を

☆北朝鮮のミサイルについて選挙で論戦を

    衆院総選挙の公示日の19日午前10時15分ごろ、北朝鮮は弾道ミサイルを発射した。最高高度50㌔程度を変則軌道で600㌔程度飛翔し、日本海に落下した。弾道ミサイルは潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)だった。これを受けて、午前10時24分、総理指示が出された。「1.情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと 2.航空機、船舶等の安全確認を徹底すること 3.不測の事態に備え、万全の態勢をとること」(19日付・総理官邸公式ホームページ)。

    北朝鮮による、日本海に向けたミサイルの発射は頻繁となっている。9月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイル、28日の極超音速ミサイルと続いている。そして今月19日の弾道ミサイルの発射だ。北朝鮮による脅威はミサイルだけではない。  

    能登半島の沖合300㌔にある大和堆はスルメイカの好漁場で、日本のEEZ(排他的経済水域)内にある。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる。EEZ内の漁場「大和堆」で、北朝鮮当局の船が航行しているのが確認されていて、ことし6月末には、そのうちの1隻が携帯型の対空ミサイルを装備していたことを海上保安庁が確認している。このような状況下で漁業者は安心して日本海で操業できるだろうか。

   衆院選で能登半島は石川3区。3区からは無所属新人の倉知昭一候補(85)、自民党前職の西田昭二候補(52)、立憲民主党前職の近藤和也候補(47)が立候補している。この北朝鮮問題を有権者に訴えている候補者をそれぞれのホームページなどでチェックする。すると、3人のうち、北朝鮮問題について触れているのは、近藤候補だけだ。公示の日の集会の動画で、「きょうも北朝鮮からミサイルが発射された。日本にスキがあるから狙われるということがあってはいけない」と述べている。NHKの取材でも、「不安定化している日本海の大和堆の違法操業問題の解決は急務」と。

   北朝鮮問題は確実に起こる。2017年3月6日、北朝鮮は「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、うちの1発を能登半島から北に200㌔の海上に着弾させた。北朝鮮が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   この能登半島の緊張感を国会でぜひ議論してほしい。北朝鮮のミサイル攻撃にどう対応するのか国会で論陣を張るべきだ。自身は監視レーダーサイトを撤去しろという議論には賛成しない。(※写真は、現職2人と新人1人の3人が立候補した石川3区の選挙ポスター掲示板。新人は23日現在ポスターを貼っていない)

⇒24日(日)夜・金沢の天気      はれ

☆「ネット選挙運動」から「ネット投票」を

☆「ネット選挙運動」から「ネット投票」を

   選挙運動にネットが解禁されたのは2013年7月の参院選挙からだ。当時は、ソーシャルメディアの国内での広がりを背景に、候補者や政党以外の有権者だれでも、ホームページやフェイスブック、ツイッターを活用した選挙運動ができるようになった。

   ただし、電子メールを送信する選挙運動は政党と候補者に限定される。さらに、政党と候補者は送信先の同意が必要で、たとえば、メールマガジンを読者に送る場合は、送信することを事前に通知して拒否されないことを条件としている。さらに、規定に違反したり第三者がメール送信をした場合は、2年以下の禁錮か50万円以下の罰金を科し、公民権停止の対象となる。

   つまり、ネットは「電子メール」と「ウェブサイト等」に分類されていて、一般の有権者がメールで選挙運動に利用することは禁じられている。また、スマホから電話番号を使って送るショートメッセージ(SMS)もこれに含まれる。一方、LINEやフェイスブックやツイッター、インスタグラムなどSNSやユーチューブ、ブログは「ウェブサイト等」に分類されていて、一般の有権者でも選挙運動のメッセ-ジの投稿や送信など自由に使える。

   では、なぜ罰金まで課して、メールを「悪者扱い」するのか。2013年の公職選挙法改正で議論されていたのは、電子メールは第三者によるなりすましやウイルス感染の危険性があるため規制の対象にするということだ。しかし、現代はなりすましやウイルス感染もさることながら、「フェイクニュース」が一番厄介なことではないだろうか。フェイクニュースはSNSでもメールでも拡散する。メールだけをいつまでも規制するのは時代遅れではないだろうか。

   それと、ネット選挙運動の次は、ネット投票だ。菅前政権の肝入りでこの9月にデジタル庁が新設された。マイナンバーカードの普及、そしてネット投票がセットで実現すれば、デジタル社会への大きな一歩になる。ウイズコロナのこのタイミングでネット投票を実現させてほしい。

⇒22日(金)夜・金沢のに天気     くもり   

☆ノーベル平和賞を隠す「不都合な真実」

☆ノーベル平和賞を隠す「不都合な真実」

   ノーベル平和賞を隠すということはどのような意味があるのだろうか。9日付のこのブログでノーベル平和賞について記した。ノルウェーのノーベル平和賞選考委員会は、ことしのノーベル平和賞にフィリピンのインターネットメディア「Rappler(ラップラー)」代表マリア・レッサ氏と、ロシアの独立系新聞「Novaja Gazeta(ノヴァジャ・ガゼータ)」の編集長ドミトリー・ムラトフ氏の2人を選んだと発表した(「ノーベル平和賞2021」プレスリリースWeb版)。

   やはりそうかと感じたことがあった。中国では今回のノーベル平和賞の受賞について、国営の新華社通信などの主要メディアは報じていない。独裁的な政権に立ち向かうジャーナリストの受賞決定に、中国政府が報道を規制した可能性がある(10月8日付・NNNニュースWeb版)。では、なぜ中国政府は今回のノーベル平和賞受賞を隠すのか。いわく因縁がある。

   中国政府に民主化を求めたことが国家転覆罪にあたるとして有罪判決を受けた、作家で人権活動家の劉暁波氏は服役中の2010年にノーベル平和賞を受賞した。肝臓を患っていたが、国外での治療を認められず2017年7月に死亡した。中国在住の中国人として初のノーベル賞受賞者だったが、劉氏は「この受賞は天安門事件(19896月)で犠牲になった人々の魂に贈られたものだ」と語ったことでも知られる。その遺体は火葬にされ、遺骨は海にまかれた。中国当局とすれば、「劉暁波」を人民の記憶から消し去ろうとしたのだろう。反骨のジャーナリストがノーベル平和賞を受賞したことを人民が知ると「劉暁波」が想起される。そこで報道をいっさい認めないのではないか。

   あるいはこの問題も避けたかったのかもしれない。ことし6月、中国政府への批判を続けてきた香港の新聞「蘋果日報(アップル・デイリー)」が発行停止に追い込まれ、紙面の主筆や中国問題を担当する論説委員も逮捕された。蘋果日報が狙い撃ちされたのは昨年8月だった。創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏が香港国家安全維持法(国安法)と詐欺の容疑で逮捕され、ことし2月、禁固1年2月の実刑判決を受けている。中国政府とすれば、この点からも体制に批判的なジャーナリストのノーベル平和賞受賞は好ましくないと判断した可能性もある。

  いずれの理由にしても、中国政府にとってはジャーナリストのノーベル平和賞受賞は「不都合な真実」なのだろう。

⇒11日(月)夜・金沢の天気     くもり

☆民放のネット同時配信 日テレが先駆け

☆民放のネット同時配信 日テレが先駆け

   いよいよ民放で放送とネットの同時配信が始まった。きのう2日午後7時から、民放動画配信サービス「TⅤer」で「日テレ系ライブ」を視聴した。番組「I LOVE みんなのどうぶつ園」が民放の歴史で記念すべき同時配信スタート番組となった=写真=。日本テレビは民放初のテレビ局として1953年8月28日に開局。2003年12月1日にはそれまではアナログ放送から地上デジタル放送をスタートさせ、そして2021年10月2日に同時配信の開始と、まさに日本の放送史を刻んでいる。

   放送とネットの同時配信では、NHKが先行して2020年4月1日から「NHK+(プラス)」で始めているので、民放初の日テレの新サービスはNHKに比べれば1年半の遅れでもある。ただ、民放でここまでこぎつけるには相当のハードルがあったことは想像に難くない。技術面もさることながら、日本独特の「放送権」の有り方だ。ローカル局には放送法で「県域」というものがあり、放送免許は基本的に県単位で1波、あるいは数県で1波が割り与えられている。1波とは、東京キー局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京)の系列ローカル局のこと。パソコンやスマホ、タブレットで東京キー局の番組を視聴できれば、ローカル局は視聴されなくなるかもしれないという不安がローカル局にはある。テレビ業界における「ポツンと一軒家」化だ。

   また、民放ではバンセンと称される番組宣伝や「ACジャパン」が目立つ。電通がまとめた「2020年 日本の広告費」によると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でイベントや広告販促キャンペーンの延期や中止が相次ぎ、2020年は通年で6兆1594億円(前年比88.8%)となり、東日本大震災のあった2011年以来、9年ぶりのマイナス成長。リーマン・ショックの影響を受けた2009年(同88.5%)に次ぐ下げ幅となった。内訳を見ると、インターネット広告費は2兆2290億円(前年比105%)で増加してトップ、テレビ広告費は1兆6559億円(同89%)と減り、ネットとの格差が年々拡大している。

   このようなテレビ業界の逆風の中で、日テレがプライムタイムの番組を中心に、放送とネットのリアルタイム配信に踏み切った。昨年10月から3ヵ月の時間をかけて347番組で同時配信の実証実験を行っていた。パソコンやスマホなど対応デバイスでどう映り方が異なるのか、タイムラグ(時間差)、CMの入れ替えなど用意周到に臨んだのだろう。他のキー局も年内から年度内にかけて順次移行する。同時配信によって、民放は新たなビジネスモデルをどう構築していくのか注目したい。

⇒3日(日)夜・金沢の天気     はれ

★NYでの新婚生活は明るく自由で平和なのか

★NYでの新婚生活は明るく自由で平和なのか

   秋篠宮家の眞子さまの結婚問題が大きく動いた。NHKニュースWeb版(2日付)によると、宮内庁はきのう1日に記者会見を行い、眞子さまは今月26日に婚姻届を提出し、その後、小室圭氏とともに記者会見に臨む予定と発表した。この日は大安にあたる。また、結婚にあたって、女性皇族の結婚に伴う儀式をすべて行わないことや、皇室を離れる際に支給される「一時金」の受け取りを辞退されることなども明らかにした。眞子さまは、結婚に当たり、両陛下や上皇ご夫妻を訪ねてお別れのあいさつをされる。

   さらに、宮内庁の会見で明らかにされたことは、「眞子さまは、ご自身やご家族、それに小室さんとその家族への誹謗中傷と感じられる出来事が続いたことで、『複雑性PTSD』(=複雑性心的外傷後ストレス障害)と診断される状態になられている」(2日付・NHKニュースWeb版)。宮内庁の会見には、医師も同席し、「結婚について周囲が温かく見守ることで回復が進むものと考えられる」などと述べた。

   この会見内容を読んでの率直な感想だ。お二人の婚姻手続きから記者会見の設定まで、宮内庁は一応すべての段取りを終え、ようやく発表にこぎつけた。きのうは金曜日だったので、記者発表の日程としてはぎりぎりセーフだろう。そして、「PTSD」を公表して、周囲が温かく見守ってほしいと医師に語らせた。この周囲とは「国民」のことと解釈する。さらに、宮内庁はPTSDの原因を誹謗中傷によるものとしている。SNSなどの誹謗中傷による侮辱罪を厳罰化する法整備が進められているので、宮内庁は「黙れ、訴えるぞ」と言っているようにも聞こえる。

   結婚後にニューヨークで暮らすことも報じられているが、アメリカのメディアは今回の結婚をどう報道しているのか。ニューヨークに本社がある「The Wall Street Journal」Web版(1日付)は「Japan’s Princess Mako to Marry as Palace Blames Media for Her PTSD」と、PTSDをあえて見出しに入れて報じている=写真=。同じくニューヨークに本社がある「Bloomberg」Web版(同)は「Japanese Princess Giving Up $1.4 Million to Wed Fordham Grad」と140万㌦の持参金をあきらめたとの見出しで報道している。その理由として、弁護士志望の小室氏の家族の背景に関する厳しい世論などに配慮したものと報じている。アメリカメディアは、基本的人権の問題であるので他人が干渉すべきではないとの論調が主流だ。

   一つ案じることがある。それは、「Japan’s Princess」へのアメリカの国民感情だ。異なる民族の集合体でもあり、実に多様で複雑だ。中には、第二次世界大戦と天皇について語り、日本はいまだに十分な謝罪も償いもしていないと声高に主張する東南アジア系市民もいるだろう。韓国系市民団体などは慰安婦像の設置や、ハーバード大学教授の学術論文を批判、日本製品の不買運動など活発な運動を展開している。あるいは逆に、「Japan’s Princess」を政治的に活用しようという動きも出て来るかもしれない。これまでよく引き合いに出されるイギリスのヘンリー王子とメーガン夫人の王室離脱騒動とは違った次元だ。自由で明るい、平和な暮らしだけがニューヨークにあるわけではない。

⇒2日(土)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

★能登沖での異常震域と弾道ミサイルで読めること

★能登沖での異常震域と弾道ミサイルで読めること

   日本海側が震源なのに太平洋側が揺れる「異常震域」という言葉を初めて知った。きのう29日午後5時37分ごろ、能登半島の沖の日本海中部で震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震があった。この地震で、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した=写真・上=。今回の地震は大陸のユーラシアプレートに沈み込む海洋の太平洋プレートの内部深くで起きたとみられている。震源が深かったため、近くよりも遠くが大きく揺れる現象のようだ(29日付・朝日新聞Web版)。

   それにしても、日本海側に住む一人として不気味に思うのは、今回の地震の位置と弾道ミサイルの落下地点の関係性だ。北朝鮮が今月15日正午過ぎに弾道ミサイル2発を発射、能登半島沖の舳倉島の北約300㌔のEEZに落下している(15日午後9時・防衛大臣臨時会見「北朝鮮による弾道ミサイル発射事案」)。防衛省公式ホームページには会見での落下地点の地図などは掲載されていない。

   メディア各社がその位置をイメージ(予想図)として掲載している。毎日新聞Web版(15日付)で掲載されたものと比較すると=写真・下=、震源地と弾道ミサイルの落下地点は近いと感じる。弾道ミサイルと地震の関係性はないのだろうか。ふと、そのようなことを考えてしまう。

   人為的な原因によって誘発される地震を「誘発地震」と言ったりする。北朝鮮が2017年9月3日に行った核実験の影響で、核実験場付近で同月23日に2回、10月13日に1回、12月2日に1回、マグニチュード5.6などの地震が観測されている(Wikipedia「人工地震」など)。

   このところ北朝鮮のミサイル発射は頻繁だ。今月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイル、28日の極超音速ミサイルと続いている。政府は北朝鮮が発射したミサイルが日本の領土・領海に落下する、あるいは通過する可能性がある場合、Jアラート(全国瞬時警報システム)を鳴らして国民に避難など注意を呼びかける。ただ、EEZ内に落下する可能性がある場合にはJアラートは鳴らない (内閣官房国民保護ポータルサイト)。あさから憂鬱な話になってしまった。

⇒30日(木)午前・金沢の天気   くもり

☆「Go To トラベル」の再開はいつなのか

☆「Go To トラベル」の再開はいつなのか

    新型コロナウイルスによるパンデミックがようやく和らいできたようだ。石川県の感染状況は「ステージⅢ(感染まん延特別警報) 」となっていて、感染者の7割を占める金沢市には「まん延防止等重点措置」が適用されている。このため兼六園など観光名所はいまも閉鎖が続いているが、数字的に減速傾向が見え始めてきた。

   きょう27日、石川県は新たな3人の陽性が確認されたと発表した。感染者が5人以下となるのは7月4日以来で85日ぶり。これまで119人(7月28日)を数えるなど7月下旬から8月にかけては高止まりだったが、9月に入り徐々に減少に転じた。石川だけでなく東京など全国的な傾向だ。NHKニュースWeb版(27日付)によると、政府は東京や大阪など19の都道府県に出されている緊急事態宣言と、石川など8つの県に適用されているまん延防止等重点措置は今月30日ですべてで解除する方針を固めた。

   この全国的な減速傾向はワクチン接種が進んでいるからだろう。総理官邸公式ホームページによると、きょう27日時点で2回目の接種を終えた人数は7249万人で人口の57%に達している。

   パンデミックの危機はなんとか脱出できるとしても、問題は経済の落ち込みだ。内閣府発表(8月16日付)では、ことし4月から6月までのGDPの速報値は物価の変動を除いた実質の伸び率が前の3か月と比べてプラス0.3%だった。年換算でプラス1.3%となり、GDPは2期ぶりにプラスに転じたことになる。ただ、比較の対象となる1月から3月までのGDPの伸びが年率換算でマイナス3.7%の下落だったことを考えると、景気の持ち直しの力強さを欠く。とくに個人消費はGDPの半分以上を占めるが、プラス0.8%の伸びにとどまっている。

   日銀の黒田総裁はきょう記者会見で、「感染拡大がいつピークアウトするのかにもよるが、緊急事態宣言などが解除されるようになれば、個人消費、なかでも対面型のサービスが回復することが期待される。早ければ年内、遅くとも来年早々には、外食や宿泊にも回復が広がっていくのではないか」と述べた(NHKニュースWeb版)。日銀は金融政策決定会合(9月21、22日)で、短期金利をマイナスにし、長期金利がゼロ%程度に抑えるよう国債を買い入れる今の大規模な金融緩和策の維持を決めている。

   日銀は経済回復を煽っているという印象だ。そして、政府は全都道府県の緊急事態宣言およびまん延防止措置について、今月末で解除する方針を固めた。では、「Go To トラベル」事業はすぐに再開されるのだろうか。加藤官房長官は記者会見(今月16日)で「感染状況を見ながら、専門家の意見を聴き、適切に判断していく」と述べたにとどまっている。おそらく政府とすれば、「Go To トラベル」を再開したいというのが本音だろう。メディアや野党などからの「時期尚早」などとバッシングを想定しながらも、政府がいつ「Go To トラベル」を再開するのか、ここが個人の消費動向を促す経済回復策の一つのポイントではないだろうか。

⇒27日(月)夜・金沢の天気     はれ時々くもり

☆自民総裁選の「メディアジャック」現象

☆自民総裁選の「メディアジャック」現象

   広告業界には「メディアジャック」という言葉がある。電車の中の広告や新聞、雑誌の広告スペースを1社が買い占める広告戦略のことだ。和製英語とも言われる「ハイジャック」からヒントを得た造語なのだろう。「メディア乗っ取り」だ。きのう21日午後のTBS系の情報番組に出演していたコメンテーターで、元大阪府知事、弁護士の橋下徹氏が「野党側も予備選やってメディアジャックをしないと、自民の総裁選に引っ張り込まれる」との趣旨の発言をしていた。久しぶりに聞いた言葉にハッとさせられた。

   確かにきょう22日の新聞のラジオ・テレビ欄を見ても、NHK含めテレビのほとんどのニュース番組やワイドショーなどで「自民総裁選まで1週間」や「自民総裁選の最新情勢」などの見出しが躍っている。テレビをハイジャックする自民党総裁選とは何なのか、「メディアジャック」現象について考えてみた。

   目立つのは自民党総裁選の4候補の顔ぶれだ。4人の候補者のうち2人が女性だ。当然、討論のテーマも女性目線が注目される。きょう22日に行われた党内の討論会では、子育て関係の政策を担う「こども庁」の設置について議論が交わされた。河野氏は「子どもの自殺、虐待、貧困ゼロを掲げる」と強調。岸田氏は「子どもたちの命、健康、人権を一元的にしっかり見ていく」と訴えた。野田氏は「願いは社会の中で一番弱いと言われる人たちが、いつも笑顔でいられる社会、国をつくること」と述べた。高市氏は「令和の省庁再編に挑戦する。子ども政策の推進のため、効率的かつ効果的な組織は何か検討したい」と話した(9月22日付・毎日新聞Web版)。これまでは、学校教育ばかりに重点が置かれていたが、日本の未来を担う子どもたちの政策について議論したことはなかった。その意味で画期的な政策討論だ。

   18日の公開討論会(日本記者クラブ主催)も面白かった。NHKの生番組で視聴していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つ。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。少子高齢化が急速に進む日本でシンボル的な課題の一つが年金の持続可能性の問題だ。シニア世代の誰もが感じていることなのだが、最近では公に議論されることはほとんどなかった。

   少子化問題、そして年金問題について、近未来の政策を担う「総理候補」が討論するだけに目が離せない、有権者の関心度が高い。最初は河野氏の意見が率直で的を得ているとも思ったが、このところ、高市氏の言葉が胸に刺さることがある。テレビとすれば、選挙報道と同様に、メディアジャックのコンテンツではないだろうか。自身は党友でも党員でもない。単なる政治ウオッチャーだ。(※写真は自民党本部ホームページより)

⇒22日(水)午後・金沢の天気     あめ

★弾道ミサイルに対応できる自民新総裁は誰なのか

★弾道ミサイルに対応できる自民新総裁は誰なのか

   次の日本の総理を決める予備選でもある自民党総裁選(今月29日)。メディア各社が世論調査を実施している。共同通信社は17、18の両日、電話調査に投票資格があると答えた党員・党友に対し、新総裁にふさわしい人を尋ねたところ、河野行政改革担当大臣が48.6%で最多、岸田前政調会長が18.5%、高市前総務大臣が15.7%、野田幹事長代行は3.3%だった(9月18日付・共同通信Web版)。

   読売新聞は自民党所属国会議員の支持動向調査を今月6日から16日にかけて実施し、衆参両院の議長を除く同党国会議員383人のうち、95%にあたる363人の意向を確認した。岸田氏と河野氏がそれぞれ約2割、高市氏は約15%の支持、16日に出馬を表明した野田氏は約10人の支持をそれぞれ集めている(9月17日付・読売新聞Web版)。毎日新聞が実施した全国世論調査(18日)では河野氏43%、高市氏15%、岸田氏13%、野田氏6%だった(9月18日付・毎日新聞Web版)。

   河野氏は党所属議員の支持は岸田氏と並んで2割と高くはないが、党員・党友、そして全国世論調査ではそれぞれ40%台の高い支持を集めている。自民党総裁選が衆院任期満了の10月21日以降にも実施される総選挙の「党の顔」を決める選挙であるとすれば、河野氏で決まりということか。

   きのう18日午後2時から行われた自民党総裁選の立候補者4人による公開討論会(日本記者クラブ主催)をNHKの生番組で視聴していた=写真・上=。前半の候補者同士のディスカッションでは河野氏に質問が集中していた。キーワードは「コロナ」「原発」「年金」の3つではなかったか。中でも、国民年金について河野氏は「若い人たちの将来の年金生活が維持されなければ意味がない」と、消費税を財源にした最低保障年金の創設を訴えた。日本の少子高齢化は進み、年金制度そのものが維持できなくなるとの河野氏の危機感だろう。これに対し、高市氏は「基礎年金を全額税金で賄うのは制度的に無理がある」と反論し、岸田氏は「税でやるとした場合に消費税を何%に上げるのか」と迫るなど議論が白熱した。

   討論会で注目していたのは、北朝鮮が日本海めがけて発射している弾道ミサイルについての議論だった。直近で今月15日、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾している。主催者側からの「北朝鮮問題にどう対応するのか」の問いに、岸田氏は「ミサイル防衛体制は十分なのか考える必要がある。敵基地攻撃能力についても選択肢としてある」、河野氏は「情報収集能力、そして北朝鮮に対する抑止力を高めてメッセージとして伝えることが必要だ」と答えた。

   正直言って、河野氏の答えには少々失望した。2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回したのは当時防衛大臣だった河野氏だ。その後、当時の安倍総理はミサイル発射基地を自衛権に基づいて無力化する「敵基地攻撃能力」の保有の検討を表明したが、9月に就任した菅総理は議論を棚上げしていた。
   
   なぜ、河野氏は敵基地攻撃能力の保有について触れなかったのか。それは、今回の北の弾道ミサイルは鉄道を利用して発射された=写真・下、9月17日付・朝鮮中央テレビ動画=と報じられているように、新たに移動式ミサイル発射台が開発され、その位置を検知して破壊することが難しくなっている。つまり、敵基地攻撃能力そのものが意味をなさなくなっている。

            河野氏は上記のことについては精通しているはずだ。ではどうすべきなのかを元防衛大臣の見識から具体的な防衛ビジョンについて語ってほしかった。また、北の弾道ミサイルに一家言を持っている高市氏の見解も聞きたかったが、この質問に関しては元外務大臣の経験がある岸田、河野の両氏にのみ質問がなされたようだ。もどかしさが残った討論会だった。

⇒19日(日)夜・金沢の天気       はれ