⇒ニュース走査

☆ジョン・レノン「Now And Then」から空想する世界

☆ジョン・レノン「Now And Then」から空想する世界

   イギリスのザ・ビートルズの最後の新曲が、日本時間の2日夜にリリースされ、ニュースで大きく取り上げられている。曲名は 「Now And Then」。ジョン・レノンが生前、ニューヨークの自宅でピアノを弾きながら歌って録音した音源がもとになっているという。このデモテープの音源に、AIを使って歌声だけを取り出すことに成功。これをもとにポール・マッカートニーとリンゴ・スタ-が、ボーカルと演奏を加えて完成させた。 ザ・ビートルズとしては、27年ぶりの新曲となった。

   本場イギリスのBBCニュース(2日付)も「The Beatles’ last song Now And Then is finally released」(意訳:ザ・ビートルズのラスト・ソング「Now And Then」がついにリリースされる)の見出しで報じている=写真=。それによると、この物語は1978年、レノンがニューヨークの自宅でボーカルとピアノのデモを録音したことから始まる。1980年、ニューヨークの自宅前で凶弾に倒れる、未亡人のオノ・ヨーコはこの録音カセットを残っていたビートルズのメンバーに渡す。

   そのカセットには「Free as a Bird」と「Real Love」のデモも収録されていて、1995年と96年にそれぞれシングルとしてリリースされた。「Now And Then」のレコーディングも試みられたが、録音の品質が低かったことから、困難と判断された。ポール・マッカートニーはそのカセット手放さなかった。

   その後、ザ・ビートルズのドキュメンタリー映画『Get Back』を制作した映画会社が、重なり合う音の混ざった録音を「デミックス(分離)」できるソフトウェアを開発。オリジナルのカセット録音からジョン・レノンの声を「持ち上げる」ことができ、バックグラウンドの音を取り除くことに成功し、今回のリリースにこぎつけた(BBCニュース要約)。

   では、「Now And Then」の日本語の意味はどうなのか。歌詞の一部には「Now and then I miss you Oh, now and then I want you to be there for me」とある。「時には」か、「たまには」か、「時に感じる」か、訳すとなると表現がいろいろある。

   かつて、ビートルズ研究家の講演で聴いた話だ。ジョン・レノンはオノ・ヨーコと出会ってからインド哲学など東洋思想に興味を抱き、1968年にはインド旅行で瞑想修行を体験し、禅など仏教の世界観にも惹かれたようだ。そう聴くと、1970年にリリースされた「Let it be」はなんとなく仏教の雰囲気も漂う。以下、勝手解釈で「Now And Then」の「Then」を「禅」と置き換えると、禅の表現の一つである円相をイメージする。円は欠けることのない無限を表現する、つまり宇宙を表している、とされる。「Now And Then」は「Now And Zen」ではないのか、そう考えると、この曲に深みが湧いてくる。もちろん空想にすぎない。

⇒3日(金・祝)夜・金沢の天気    はれ

★コウノトリが舞う能登の町、受託収賄で町長夫妻を逮捕

★コウノトリが舞う能登の町、受託収賄で町長夫妻を逮捕

     能登半島の中ほどにある志賀町は、 国の特別天然記念物のコウノトリの営巣地としては日本で最北といわれる。ことしも3羽のヒナが巣立った。2年連続となる。何度か現地に足を運んでその様子を観察した。親鳥は足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと福井県越前市生まれのメスで、去年と同じペアだった。「コウノトリが住み着くと幸福が訪れる」「コウノトリが赤ん坊を運んでくる」との伝承がヨーロッパにある。能登から飛び立ったコウノトリたちが伴侶をともなって戻って定着することで、少子高齢化が進む能登もにぎやかになればと夢を膨らませている。(※写真・上=ことし5月23日に志賀町で撮影した国の特別天然記念物コウノトリの親子)
 
   その志賀町で残念な事件があった。けさの新聞各紙は、公共工事の入札で特定の業者に「最低制限価格」を教えた見返りに現金を受け取ったとして、受託収賄と官製談合防止法違反などの疑いで、小泉勝町長と妻が逮捕されたと報じている=写真・下=。
 
   報道によると、ことし7月6日に町の配水管の更新工事の入札が「電子入札システム」を使って行われた。最低制限価格
は一般的に、工事の品質など適切な契約内容の履行を確保するためで、これ以上下げることが難しいとされる金額で設定する。従って、入札価格はその下限の範囲内でもっとも安く落札した業者が選ばれることになる。志賀町は130万円以上の工事について最低制限価格を設けている。
 
   最低制限価格は通常公表されないため、入札価格と落札価格が一致することはめったにないとされる。ところが、同町公式サイトで掲載されている「入札結果表示」をチェックすると、問題となった配水管更新工事の最低制限価格(税別)と落札決定金額(同)は「8,276,000円」でぴたりと一致する。さらに、今回問題となった工事のほかにも、公式サイトで見る限りで金額が一致するものがいくつかある。この最低制限価格については、500万円以上2000万円未満の場合は町長が価格を決定していた。つまり、町長サイトから工事業者に事前に情報が漏れていたのだろう、か。
 
   もう一つ気になるのは、今回逮捕された4人のうち女性が2人、町長の妻と工事業者の妻だ。人口1万7000人余りの小さな町なので、選挙や地域づくりの活動を通じて女性同士のネットワークがあったのかもしれない。では、今回の贈収賄で妻たちはどのような役割だったのか、気になるところだ。
 
⇒31日(火)午後・金沢の天気     くもり

☆兼六園にアサギマダラ、日本海に木造船、市街地にクマ

☆兼六園にアサギマダラ、日本海に木造船、市街地にクマ

   きょう24日は二十四節気の一つ「霜降」。霜が降りる頃とされる。ただ、このところ「暑さ」を感じる。きょうの金沢の日中の最高気温は24度だった。知人の話だと、金沢の兼六園の梅林に咲いているフジバカマにアサギマダラが舞っているのを見た、という。「旅するチョウ」と称されるアサギマダラが北陸を訪れるのは例年9月下旬ごろなのだが、季節がゆったりとしているのだろうか。来月11月1日から兼六園では恒例の雪つり作業が始まる。(※写真・上=世界農業遺産「能登の里山里海」情報ポータル公式サイトより) 

   北朝鮮からの脱北が相次いでいる。NHKニュース(24日付)によると、韓国軍の合同参謀本部は24日、日本海上で北朝鮮の木造船を見つけたと発表した。木造船は亡命が目的と推定されるとしていて、韓国北東部ソクチョ(束草)の沖合で乗っていた4人の身柄を確保した。ことし5月にも朝鮮半島西側の黄海で北朝鮮の住民が漁船で脱北して韓国に入っている。ことし韓国に入国した脱北者は、先月末時点で139人で、北朝鮮が新型コロナウイルスの感染対策として国境を封鎖していた去年の同じ時期に比べて3倍余りに増えている。

   北朝鮮に有事が起これば大量の亡命者が発生し、船に乗って逃げるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って、韓国や日本海沿岸に漂着する。そうした亡命者をどう受け入れるのか、中には武装した者もいるだろう。今回、韓国軍がたまたま木造船を見つけたとすれば、ほかにも相当数の木造船が日本海に漂流している可能性もある。実に不気味だ。(※写真・中=2017年11月に能登半島の尖端、珠洲市の海岸に漂着した北朝鮮の木造漁船)

   これも不気味なニュースだ。クマに襲われてけがをするなど被害にあった人の数は、今年度はこれまでに17の道府県で少なくとも167人にのぼり、国が統計を取り始めて以降、最も多かった3年前の158人をすでに上回り、過去最悪の被害となっている。NHKが独自に集計した数字だ。

   北陸でも被害が相次いでいて、きのう23日、富山市内で72歳の男性がクマに襲われ重傷。17日には79歳の女性が亡くなっている。富山県内での人身被害は本年度で5例目となっている。ブナの実はクマの主要なエサとされているが、富山県内では凶作で、エサを求めて市街地などにもクマが出没しているようだ。

⇒24日(火)夜・金沢の天気     はれ

★「まるで独裁者の宴」詭弁を弄するロシア大統領

★「まるで独裁者の宴」詭弁を弄するロシア大統領

    ロシアがまた詭弁を弄している。イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの戦闘激化を受け、国連安全保障理事会は今月13日、非公開で対応を協議した。 会合ではロシアが人道的停戦を要求する決議案を配布。ロシアのネベンジャ国連大使は会合後、報道陣を前に「安保理はこの流血に終止符を打つため行動しなくてはならない」と主張。決議案は全ての暴力とテロ行為を非難し、人道支援の円滑な提供を求める内容で、ネベンジャ国連大使は全国連加盟国に対し共同提案国になるよう呼び掛けた(14日付・時事通信Web版)。

   ロシアが国連安保理で他国の停戦を呼びかけ、一方で自国はウクライナへの侵略行為を続けている。まったく説得力のない決議案で、共同提案国になる必要はない。以下、憶測だが、ネベンジャ国連大使の決議案はウクライナ侵攻から他国の目を逸らし、自らを正当化する策ではないか。おそらくこの決議案はプーチン大統領の命令によるものだろう。

   ウクライナのゼレンスキー政権をネオナチ政権と呼び、その侵攻を「祖国の未来のため、ナチスを復活させないための戦い」と強調し、侵攻を始めた。相手をナチス呼ばわりすれば、武力侵攻などすべてのことが正当化されるとの詭弁だ。国連安保理での決議案も、自ら始めた戦争を棚に上げて他国の戦争を非難する。まさに、プーチン大統領の「独裁者の宴」のようだ。    

  ICC(国際刑事裁判所)はことし3月、プーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表について、ウクライナ侵攻で占領した地域の児童養護施設などから少なくとも何百人もの子どもたちロシアに連れ去ったとして、国際法上の戦争犯罪の疑いで逮捕状を出した(3月18日付・NHKニュースWeb版)。同日のCNNニュースWeb版日本語によると、ゼレンスキー大統領はICCの逮捕状について、「我が国の法執行当局で進行中の刑事手続きでは、ウクライナの子ども1万6000人以上が占領者(ロシア)によって強制連行されたことが既に確認されている」と述べている。   

   一方、ロシア側は戦闘地域から子どもを「保護している」と主張している。保護を理由に子どもたちをロシアに連れて行く行為。まるで、子どもたちを「戦利品」のように扱っている。

(※写真は、第二次世界大戦での対ドイツ戦勝記念日式典で演説を行ったプーチン大統領。相手をナチス呼ばわりして武力侵攻を正当化した=2022年5月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒14日(土)夜・能登の天気    くもり

☆「まるで独裁者の宴」旧統一教会の総裁とジャニー喜多川

☆「まるで独裁者の宴」旧統一教会の総裁とジャニー喜多川

   宗教の名を借りた巨大な集金システムだろう。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団トップの韓鶴子総裁がことし6月末、教団内部の集会で「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」「日本の政治は滅ぶしかないだろう」と発言していたことが、関係者への取材や音声データで分かった。教団側は6月中旬までに、年間数百億円にも上るとされる日本から韓国への送金を今後取りやめると説明していたが、トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる(7月3日付・共同通信Web版)。日本に戦前の罪を押し付け、信者からの「賠償金」を独り占めするという集金システムだ。

   金にまつわる話はそれだけではない。韓総裁と教団幹部らが2008年から11年にかけてアメリカ・ラスベガスのカジノを訪れ、日本円に換算して64億円もの金をギャンブルに注ぎ込んで、9億円の損失を出していた疑いがあることが分かった(アメリカ国防総省DIAのリポート)。教団のトップである韓総裁がギャンブルに興じていた疑いが浮上しているのだ(週刊文春・2022年11月10日号)。そのギャンブルの原資は、日本の信者による献金や霊感商法によって収奪された財産であることは容易に想像がつく。

   メディアの報道によると、旧統一教会をめぐる問題で文部科学省はきのう12日、宗教法人審議会を開き、教団の解散命令を請求することについて全会一致で「相当だ」と意見を得たとして、解散命令の請求を正式に決定し、きょう13日に東京地裁に請求した。それにしても、上記のラスベガスで64億円もの金をギャンブルに使うとはまるで「独裁者の宴」のような話だ。

   そうイメージしてみると、ジャニー喜多川も同じだ。少年に対する性加害は自宅兼合宿所や公演先のホテルなどで行われていたことになっていたが、仕事先のNHKでも性加害に手を染めていたという(10月9日付・NHKニュース)。ところかまわずやりたい放題、これもまるで「独裁者の宴」だ。

⇒13日(金)夕・金沢の天気    はれ

☆金沢でクマに襲われ人身被害 どうするリスク管理

☆金沢でクマに襲われ人身被害 どうするリスク管理

   今月8日付のブログで「10月に入ると、クマの出没が多くなる」と述べたが、その翌日の9日の早朝に金沢市の大乗寺丘陵公園=写真・上=で、遊歩道を1人でウオーキングしていた80代の男性がクマに襲われる人身被害があり、大きなニュース(11日付)になっている=写真・中=。石川県生活環境部では、「ツキノワグマ出没注意情報」を出して、注意を呼びかけている。

   報道によると、男性は額や右腕をけがしたものの、命に別状はないとのこと。近くを通りかかった男性の知人が119番通報をした。警察などが付近を調べたところ、現場から200㍍ほど離れたところでクマのフンが見つかり、その大きさから体長1㍍ほどの成獣と推定されるという。丘陵公園の周辺では今月に入って、4日と6日、8日にも目撃情報が県生活環境部に寄せられていた。

   けさ現場に行くと、「クマ注意」のプレートがあちらこちらにかかげられていた=写真・下=。大乗寺丘陵公園は住宅地に近い丘陵地で、周囲には小学校や中学校、大学もある。また、野田山墓地という市営墓地なども広がっていて、クマの出没はこの時季の最大のリスクかもしれない。近くの小学校や中学校では、児童・生徒に鈴の貸し出しを行っていて、「クマと遭遇しても大声を出さない」「複数人で登下校する」などの注意指導を行っているようだ。

   もともと丘陵公園周辺にはクマは生息していなかった。クマの目撃情報がニュースになるようになったのは、2000年代からではないだろうか。クマはもともと奥山と呼ばれる山の高地で生息している。ところが、エサ不足に加え、中山間地(里山)での人口減少が進み荒れ放題になった。人里近くに隠れ場所となる茂みが増えるなどクマが生息できる環境が広がっていると言える。そして、丘陵公園の周辺ではリンゴや柿などの果樹栽培も行わていて、この周辺での出没が近年増えていた。

   クマの行動域は25㌔から100㌔がテリトリーとされているが、ドングリなどのエサが不作のときのはさらに行動範囲を拡大することで知られる。県生活環境部自然環境課がことし8月中旬から9月上旬にかけて実施した「ツキノワグマのエサ資源調査」によると、金沢市は「豊作」「並作」だが、周辺の地域では「凶作」や「大凶作」のところもある。エサを求めてクマたちが金沢に群がってくるのではないか。そんなことを懸念したりする。

⇒11日(水)夕・金沢の天気    はれ      

☆見て見ぬふりできない「ビジネスと人権」問題

☆見て見ぬふりできない「ビジネスと人権」問題

   今月7日付のブログでも述べたが、ジャニー喜多川の性加害問題でメディアやスポンサー企業が問われたのは「ビジネスと人権」の視点が欠如していたことだった。企業活動における人権尊重は社会的に求められる当然の責務であるにもかかわず、ジャニー社長による性的搾取が続いていた。テレビ局はそれを知りながら、ジャニーズ事務所と契約し、タレントを番組に起用していた。スポンサー企業も広告代理店を通じてCMにタレントを使っていた。

   ビジネスと人権は、2011年に国連人権理事会で合意された「ビジネスと人権に関する指導原則」がベースとなっていて、企業活動における人権尊重の有り様は国際文書にもなっている。ビジネスと人権は単に企業活動を重視するだけでなく、人々を弾圧する国・政府との貿易や企業活動も問題視することになる。たとえば、中国だ。

   新疆ウイグル自治区の強制収容所に入れられたウイグル族の女性らが、組織的なレイプ被害を受けていると、BBCニュース(Web版日本語、2021年2月5日付)が報じている。また、強制収容所では、宗教的・文化的信仰を理由にウイグル族などの少数民族100万人以上が拘束されている可能性がある(同)。ウイグルでの状況について、アメリカ国務省の報道官は、中国がウイグル人に対して「ジェノサイド(大量虐殺)」を行っていると発言、バイデン大統領もこの発言を認めている(AFP通信Web版日本語・同)。

   そしてアメリカは、2021年12月にウイグル強制労働防止法(UFLPA)を成立させ、翌年6月より新疆ウイグル自治区が関与する製品は強制労働により生産されたものとみなし、輸入を原則禁止とした。ビジネスと人権を一体化させた措置だ。ところが日本は「政冷経熱」の言葉があるように、人権侵害は政治の問題と見なし、経済とは無関係と見て見ぬふりをしてきた。「ビジネスと人権」が欠落した日本の姿ではなかっただろうか。

   2020年10月、日本政府は「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定した。企業活動における人権尊重は、社会的に求められる当然の責務であるだけでなく、国際社会からの信頼を高め、グローバルな投資家の高評価を得ることにもつながる(経産省公式サイト「ビジネスと人権~責任あるバリューチェーンに向けて~」からの引用)。日本政府には「政冷経冷」の姿勢が問われている。

(※写真は、ヴァチカン美術館のラファエロ作『アテネの学堂』。上のプラトンとアリストテレスは論争を繰り広げているが、下のヘラクレイトス(左)とディオゲネス(右)は我関せずの素振り)

⇒9日(月・祝)午後・金沢の天気   あめ時々くもり

✰「能登かき」シーズン到来も激減 海の異変とは

✰「能登かき」シーズン到来も激減 海の異変とは

   あすから10月。いつもこの時季、いよいよ「能登かき」のシーズン到来と心をわくわくさせるのだが、ちょっとした海の異変が起きているようだ。

   能登半島の七尾西湾と穴水湾は「能登かき」で知られる養殖カキの産地でもある。里山の栄養分が川を伝って流れ、湾に注ぎこむ。その栄養分が植物プランクトンや海藻を育み、海域の食物連鎖へと広がり、カキもよく育つとされる。とくに、里山の腐葉土に蓄えられた栄養分「フルボ酸鉄」が豊富にある(2010年5月・金沢大学「里山里海環境調査」)。能登かきのファンにとって、秋は気になる季節なのだが、きょう30日付の地元紙・北陸中日新聞の一面の見出し「能登かき『大不作』 クロダイ食害 猛暑影響か」に少々驚いた。

   以下、記事を引用する。まもなく出荷が本格化する能登かきの生産量は例年より3、4割の減少が見込まれていて、生産者は過去最悪の不漁になると懸念している、という。詳しく読み込む。養殖のカキは稚貝を付着させたホタテガイの貝殻を針金に固定して海中にロープでつるし、1、2年かけて育てる。針金1本に10枚ほどのホタテの貝殻を付けると、1枚に15個ほどのカキが育つはずが、今季は0~4個が目立つという。このため、生産者は収量の激減を受けて、出荷を遅らせている。

   この不漁のいくつかの原因の一つが、クロダイによる「食害」。2年ほど前から湾内でクロダイが増え始め、カキの稚貝をクロダイが食べることが問題となっていた。もう一つの原因として、猛暑がある。石川県水産総合センターの9月時点の調査で、湾全体の深度10㍍の水温は過去5年の平均と比較して2.6度高い。海水温が高い影響で死滅するカキも多い、という。地元の養殖業者の声として、「高水温の影響なのかクロダイが増えすぎている。このまま続いては将来的に(カキ養殖)産業が廃れてしまう」と紹介している。

   一方で、能登でのクロダイ放流を記事で紹介している。穴水湾にある地元の「釣りイカダ組合」では、釣り客に人気のクロダイの稚魚を30年ほど前から毎年1万匹を放流している。釣り客を船に乗せて沖合の釣りイカダに運ぶ、いわゆる「遊漁船業」だ。記事では、「放流をやめると資源がなくなって、客もいなくなる。共生する方法を考えたい」との業者の声を紹介している。

   以下、つらつらと私見を。水槽にいるクロダイを何度か見たことがある。強そうな顎と歯が特徴で、カキの稚貝などは容易に噛み砕き食べると想像がつく。かつて、クロダイの塩焼きは金沢の居酒屋では人気商品だった。ところが、2014年のテニスの全米オープンで準優勝した錦織圭選手が記者会見で、「ノドグロが食べたい」と答えたことがきっかけで、焼き魚と言えばノドグロが「出世魚」となり、クロダイは影が薄くなった。このままいくと、カキ棚を荒らす悪い魚、顔つきもいかつく、居酒屋で人気のない魚となってしまう。

   今後、養殖業者はカキ棚を防護網で囲う新たな対策が必要となるのだろう。一方で、クロダイを漁獲して、カキといっしょに飲食店へ販売してはどうだろうか。店では「B級グルメ」に加工する。カキの稚貝を食べるクロダイのカルパッチョなどはけっこう受けるかもしれない。

⇒30日(土)午後・金沢の天気 くもり

★中秋の名月の夜に「注文の多い料理店」の話

★中秋の名月の夜に「注文の多い料理店」の話

   中秋の名月。金沢の夜空は晴れて、満月を見ることができた。天候が変りやすい北陸では名月をめったに拝めない。かつて北陸を訪れた芭蕉の句がある。「名月や北国日和定なき」(『奥の細道』)。今夜は中秋の名月を期待していたけれど、あいにく雨で拝むことができなかった、と。しかし、今夜はすっきりと見ることができた=撮影:午後8時19分=。満月は、まさに名月だ。次に中秋の名月が満月と一致するのは7年後の2030年9月12日のようだ。

   話は変わる。宮沢賢治の童話『注文の多い料理店』のような話だ。NHKニュースWeb版(9月26日付)によると、中国国営メディアは、習近平国家主席が27日、共産党指導部の会合を開き、「多国間の協力を推し進め、外資を引きつける力を強めていく」と述べた、と報じている。中国が2001年にWTOに加盟して以来、140余りの国と地域にとって主要な貿易パートナーとなり、世界の経済成長に貢献してきたとして成果を強調。日本などが参加するTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入に意欲を示した。

   国家主席から「外資のみなさんどうぞおいでください」と誘われ中国に入ると、その後は中国でスパイとして誰もが捕まる危険性がある。中国は2014年に反スパイ法を施行し、ことし7月の改正「反スパイ法」では、これまでの「国家の秘密や情報」に加えて「国家の安全と利益に関わる文書やデータ、資料や物品」を盗み取ったり提供したりする行為が取り締まりの対象になり、スパイ行為の定義が拡大された。2014年以降で、邦人17人が拘束され、うち9人が実刑判決を受けている。直近では、野村ホールディングスの香港法人幹部が、滞在していた中国本土からの出国を禁止されている(9月25日付・日経新聞Web版)。

   童話『注文の多い料理店』では、山猫のオーナーが、客に「どうか帽子と外套と靴をおとり下さい」と言い始め、最後に「どうかからだ中に、壺の中の塩をたくさんよくもみ込んでください」と客に注文し、客を料理するという、怖ろしい物語だ。まさに中国で起きている話ではないのか。

⇒29日(金)夜・金沢の天気  はれ

★「貯蓄から投資へ」 日本人のマインドはなびくか

★「貯蓄から投資へ」 日本人のマインドはなびくか

    「貯蓄から投資へ」。いよいよ岸田総理の本気度が試される。岸田総理は21日(日本時間22日)、訪問先のアメリカのニューヨークで、ニューヨーク連銀総裁が会長を務める「ニューヨーク経済クラブ」で金融関係者200人を前に英語で講演を行った。この中で、アメリカの資産運用会社の日本進出を促す考えを表明し、英語のみで行政対応が完結する「資産運用特区」の構想を打ち出した。また、海外投資家のニーズを制度改革に反映させるため、日米を基軸に「資産運用フォーラム」を立ち上げ、世界の投資家を日本に招聘する「ジャパン・ウイークス」を展開すると述べた(首相官邸公式サイト「ニューヨーク経済クラブ主催による岸田総理大臣講演」より、写真も)。

   来年1月からは少額投資非課税制度(NISA)を拡充・恒久化する「新NISA」がスタートするので、海外勢の参入との両輪で、国民の資産形成を後押しする狙いなのだろう。

   日銀調査統計局「家計の金融資産構成」(2023年8月25日付)によると、日本の家計の金融資産は2043兆円で、このうち現預金は54%を占め、株式等は11%、投資信託は4%だ。一方、アメリカの家計における金融資産では現預金は13%しかなく、株式は39%、投資信託は19%を占めている。岸田総理はことし6月の骨太方針で「資産運用立国」構想を打ち出し、アメリカ並みの投資に向けて大号令をかけている。

   ただ、これまで貯蓄を美徳としてきた日本人のマインドがそう簡単に投資へと変化するだろうか。さらに日経新聞Web版(5月2日付)によると、総務省の全国家計構造調査や家計調査をもとに、家計の預貯金について2021年時点での世帯主年齢別の保有額を推計すると、60歳以上で600兆円を上回り、預貯金全体に占める割合も64%に達している。高齢者は慎重で、運用よりも貯蓄商品に回すのではないだろうか。

   日本人には「赤信号 みんなで渡れば怖くない」という集団心理もある。はたして、「貯蓄から投資へ」と人々の心はなびくのか。

⇒23日(土)夜・金沢の天気   はれ