⇒ニュース走査

☆ミサイルと違法操業、不漁の三重不安

☆ミサイルと違法操業、不漁の三重不安

       きょう25日午前5時34分と57分に北朝鮮が日本海に向けて2発の短距離ミサイルを発射したとメディア各社が報じている。6月30日にアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩党委員長が南北軍事境界線がある板門店で会談したばかりではないか。北は誰に向けて、なぜ威嚇的な行為に出ているのか。トランプ氏のツイッターをチェックしたが、まだコメントを記載していない(午後5時10分現在)。

   報道によると、2発はいずれも短距離ミサイルで、高度50㌔に達し、少なくとも430㌔を飛行して日本海に落下したと推定される。北朝鮮は5月4日と9日にも日本海に向けミサイルを発射している。なぜ再発射なのか。トランプ氏が「2、3週間以内」としていた非核化に向けた実務協議が実施されないことに対しての開催要求なのか。あるいは、アメリカと韓国が8月に予定する合同軍事演習に対する中止要求なのか。

   北の発射に関して別の見方もあるようだ。報道各社が北朝鮮国営メディアの引用として報じているのは、今月23日に金氏が潜水艦を視察する様子を掲載していて、これが潜水艦発射弾道ミサイルを搭載するために建造された新型ではないか、ということだ。独自に国防力強化にひた走っている動きの一環ともとれる。

   こうした一連のニュースに不安を募らせているのは日本海で操業する日本の漁業関係者ではないだろう。6月からスルメイカ漁が始まりイカ釣り漁船が日本海で操業している。特に能登半島沖の大和堆(やまとたい)は好漁場とされ、周辺海域の日本の排他的経済水域(EEZ)には北朝鮮のイカ網漁船が違法操業を行っている。海上保安庁がきのう24日の会見で発表した数字によると、5月下旬以降で北の漁船による違法操業は625隻に上り退去警告を発したという。うち、放水による強制措置は122隻だった。 

   ただ、漁業関係者の間では、ことしのイカ漁は全体的に不漁なのだそうだ。北海道沖の武蔵堆(むさしたい)と行き来しながらスルメイカを追いかけている状態という。ミサイルと違法操業、そして不漁の三重の不安が漁業関係者を困惑させているのだ。

⇒25日(木)夕・金沢の天気     はれ時々くもり

★参院選、異色な戦い

★参院選、異色な戦い

  今回の参院選は異色だった。「NHKから国民を守る党」の代表の立花孝志氏 =元NHK職員=が初当選を果たした。報道陣の取材に対して、「歴史が変わる瞬間だ」と語っていたのが印象的だった。シングルイシューで初の国政進出ではないだろうか。

  NHKから国民を守る党は37人が選挙区選挙に立候補し、比例代表(定員50)にも4人が出馬していた。受信料を支払った人だけが視聴できるスクランブル放送化や受信料を払わない人を応援・サポートするとアピールしている政治団体だが、シングルイシューだからといって侮れない。先の東京都区議選(投開票4月21日)で17人が当選するなど、4月の統一地方選挙では立候補者47人のうち26人を当選させている。同党の地方議員は総勢39人だ。単一論点を掲げる政党がこれほど議席を獲得するのは異例だろう。

  参院選の戦いぶりは奇妙だった。ネット選挙を活かして、フォロワーが多数いるユーチューバーらを擁立しての戦いだった。NHKで比例代表の政見放送(7月10日午前)をチェックしたが、立花氏はNHK職員のわいせつ行為での逮捕など相次いでいると批判していた。他の3候補は「NHKをぶっ壊す」とだけ発言する男性や、寸劇を繰り広げた女性もいた。

     立憲民主の比例代表で初当選した石川大我氏はLGBTの支援を続けてきた。自らもLGBT当事者として、差別解消法案や婚姻平等法案の成立を目指す。もう一人、この候補者は落選したのだが、ぜひ喜びの歌声を聞きたかった。石川選挙区で、国民民主の新人として選挙戦を戦った田辺徹氏はドイツ在住歴20年の元オペラ歌手だ。選挙期間中は県内を回り、安倍政権の経済政策「アベノミクス」から家計第一の「ヒトノミクス」への政策転換を説いた。10月に予定される消費税増税の阻止も訴えたが、自民の現職には及ばなかった。午後8時にテレビの速報で相手候補の当確のニュースが流れ、「安倍政権の恐怖政治に民意がつぶされた」と報道陣のインタビューに悔しそうに答えていた。

      ところで、日本の参院選を海外メディアはどう伝えているのだろうか。アメリカのウオール・ストリート・ジャーナル紙は見出しで「Shinzo Abe Is Set to Become Japan’s Longest-Serving Prime Minister In elections for the upper house of parliament, Japan’s ruling coalition maintains its majority」(安倍晋三氏が日本最長の首相に就任 参院選では日本の与党連合が大多数を維持)と淡々と伝えているが、選挙後に関税の引き下げを求めているトランプ大統領との難しい交渉が待ち受けていると報じている。安倍総理も勝利の喜びにうかうかとしてはおられない。

⇒22日(月)午後・金沢の天気   はれ

★懸念する日本海での日韓衝突

★懸念する日本海での日韓衝突

   日本政府による韓国への半導体材料の輸出管理の優遇、いわゆる「ホワイト国」の解除をめぐって、韓国がアメリカ詣を続けている。今月10日には韓国の康京和外交部長官がアメリカのポンペオ国務長官と電話で会談して、日本の今回の措置に対する不満を述べたと韓国メディアが報じている。日本の輸出管理の厳格化措置が日米韓の安保上での連帯を弱めるだけでなく、アメリカが最優先事項としている北朝鮮の核兵器完全破棄の政策に支障になる、と。

   直接向き合わず、他国を経由しての批判を「告げ口外交」という。2013年に韓国の朴槿恵大統領が就任して行った外交が、日本と韓国の歴史問題に関することを、第三国に対して日本への悪口を言い触らして回ったことで、「韓国の告げ口外交」と呼ばれた。これは朴槿恵独自の外交かと思っていたが、どうやら韓国の「お家芸」のようだ。で、トランプ政権は韓国の告げ口外交に同情して、日本側に改善を求めてくるだろうか。

   これまでの韓国による自衛隊機への火器管制レーダー照射の問題、慰安婦財団の一方的な解散、戦時中における朝鮮半島出身の労働者問題をめぐる日韓請求権協定の反古など、外交問題を起こしてきたのは韓国側であることを実によく知っているのはアメリカ側だろう。「安全保障で信頼関係を保つのが難しい国だ」と。今後、韓国が徹底抗戦の姿勢を崩さず、日本も一歩も引かなければ日韓関係の在り様は異次元レベルの展開になるかもしれない。

   日本海側に住む一人として今後懸念するのは漁場のことだ。昨年11月20日、操業中の日本のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、漁船を威嚇するという事件があった。水産庁のHPで掲載されているプレスリリースを元に少し詳しく述べる。同日午後8時半ごろ、能登半島の西北西約400㌔に位置する、日本の排他的経済水域(EEZ)の大和堆(やまとたい)付近で操業中の日本のイカ釣り漁船(184㌧、北海道根室市所属)に対し、韓国・海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と無線交信をしているのを、水産庁漁業取締船と海上保安庁巡視船が確認した。

    水産庁の漁業取締船は日本の漁船の付近に位置取り、韓国警備艦に対し、日韓漁業協定でも日本漁船が操業可能な水域であり、漁船に対する要求は認められないと無線で申し入れた。その後、韓国の警備艦が漁船に接近し威嚇したため、海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入った。すると、韓国の警備艇は午後10時50分ごろ現場海域を離れた。

    スルメイカは貴重な漁業資源だ。それを北朝鮮に荒らされ、さらに「日本漁船は海域を出ろ」という韓国。その前の昨年8月にも韓国の海洋調査船が、島根県沖の竹島の領海に侵入した。日本の同意を得ずに海洋調査を実施したとして韓国に2度抗議したが、韓国は領有権があるとして抗議をはねつけている。同様のケースが今後続発するのではないか。日韓は歴史の転換点に差しかかっている。

⇒17日(水)夜・金沢の天気     くもり

☆被災地を大雨が襲う

☆被災地を大雨が襲う

   九州を襲っている大雨が警戒レベル4となり、鹿児島県と宮崎県の15市町の52万世帯、110万人余りに「避難指示」が出された。110万人は石川県と同じ人口規模で、この数字だけで大変なことになっていると察しがつく。避難指示では自治体が重ねて避難を呼びかける。大雨では避難場所に移動する途中で危険な箇所もあり、臨機応変に近くのビルなど安全な建物や高い場所に逃げたほうがいい。

   きのう(2日)気象庁の予報官が記者会見を開いている様子をテレビで視聴したが、ただならぬ雰囲気だった。「非常に激しい雨が数時間続くような場合には、大雨特別警報を発表する可能性もあります。特別警報の発表を待つことなく、早め早めの避難、安全確保をお願いします」と。洪水も心配だが、がけ崩れ、道路の陥没といった土砂災害もある。気象庁予報官は「自らの命は自らが守らなければならない状況を認識して、早めの避難を行って頂きたい」と何度も繰り返していた。住民に対して避難を直接呼びかける異例のコメントだ。

    個人的に気になっているのは3年前に現地を訪れたことがある熊本県益城町だ。ニュースによると、川が氾濫していて、水田に土砂が流れ込むなどの被害が出ている。同町は2016年4月14日の前震、16日の本震で2度も震度7の揺れに見舞われた。新興住宅が建ち並ぶ中心部と昔ながらの集落からなる農村部があり、3万3千人の町全体で5千棟もの建物が全半壊した。半年後の10月に現地を訪れ愕然とした。あちこちにブルーシートで覆われた家屋や、傾いたままの家屋、解体中の建物があった。印象として復旧に手がついたばかりだった。

   とくに被害が大きかった県道沿いの木山地区では、道路添いにも倒壊家屋があちこちにあり、痛々しい街の様子が伝わってきた=写真・2016年10月8日撮影=。農村部では倒壊した家の横にプレハブ小屋を建てた「仮設住宅」で暮らしている農家もあった。益城ではスイカ、トマトなどが名産で、被災農家は簡単に自宅を離れられないという事情も想像がついた。

     震災から3年経ったとは言え、おそらく今でも復興半ばではあること想像がつく。 言葉で「復興」「復旧」「再生」は簡単だが、それを実施する行政的な手続き、復興政策の策定には時間がかかる。そこへ、今度は無情な大雨である。地殻の揺れの後だけに、表層崩壊、あるいは深層崩壊といった山崩れは大丈夫だろうか。

⇒3日(水)夜・金沢の天気     あめ

★「G20」 信なくば立たず

★「G20」 信なくば立たず

     「G20」大阪サミットが閉幕した。読売新聞がサミット期間中の先月28-30日実施した全国世論調査は、安倍内閣の支持率が53%で前回5月の調査の55%とほぼ横ばいだったと報じている。議長としてG20サミットを仕切った安倍総理への国民の評価は「なんとか無難に乗り切りましたね。お疲れさま」というイメージだろうか。それにしてもG20の成り行きをウオッチしていて、いくつか違和感を感じた。

  その一つ。来年、サウジアラビアの首都リヤドで行われるG20サミットについて、ムハンマド皇太子が仕切り役となっていることだ。2018年10月、サウジアラビア政府を批判してきた同国のジャーナリストがトルコにあるサウジアラビア総領事館で殺害された。事件当初から皇太子の関与が取りざたされてきた。今月に入り、皇太子と政府高官の関与を示す調査結果が国連人権理事会に報告された(6月20日付「BBCニュース」Web版)。その皇太子と会談した安倍総理は「サウジでのサミット成功に向け、引き続き日本としても取り組む」と述べた(総理官邸HP)。

  G20サミットは加盟国のGDPが世界の8割以上を占めるなど、「国際経済協調の第一のフォーラム」(Premier Forum for International Economic Cooperation)であり、取り上げられる議題は世界経済や貿易・投資のほか、気候・エネルギー、雇用、デジタル、テロ対策、移民・難民問題などだ(外務省HP)。人権とは正面から向き合っていない。「信なくば立たず」という古くからの言葉がある。孔子が、政治を執り行う上で大切なものとして「軍備」「食糧」「民衆の信頼」の三つを挙げ、中でも重要なのが信頼であると説いたことに由来する。国際政治も同様だ。国連人権理事会でも取りざたされている人物をどう信頼すればよいのか。

   次は日本のことだ。G20サミットで議長国の大役を担った。「国際貢献度」というバロメーターがあるとすれば、国際的な注目度を含めて瞬間的にトップだろう。しかし、国際政治の中で日本はどう位置付けかというと、国連憲章第53条と107条に「敵国条項」があり、いまだに第2次大戦の敗戦国である日本とドイツが対象になっている。実態として敵国条項は「死文化」しているため、1995年に削除する決議があったものの、国連憲章から削除されていない。この理不尽な敵国条項をいつまで引きずっているのか。確かに敵国条項があるから、日本はアメリカに外交と安全保障を任せて経済発展ができた、との意見もある。

   G20サミット閉幕後に記者会見を行ったトランプ大統領は、アメリカの対日防衛義務を定めた日米安全保障条約について「不公平な合意だ」と指摘し、条約の見直しの必要性を安倍総理に伝えたと述べて波紋が広がった。これはある意味で、敵国条項と安全保障を両国で考える、よい機会かもしれない。

⇒2日(火)朝・金沢の天気    くもり

★「DMZ面談」の裏攻防

★「DMZ面談」の裏攻防

  「G20」の余波か。アメリカのトランプ大統領はきょう29日朝、ツイッター=写真・上=で韓国訪問の際に南北軍事境界線の非武装地帯(DMZ)を訪れることを明らかにした。その文章が面白い。「While there, if Chairman Kim of North Korea sees this, I would meet him at the Border/DMZ just to shake his hand and say Hello(?)!」。直訳すれば、「北朝鮮のキム主席がこれを見たら、握手してあいさつするためだけでも南北軍事境界線DMZで彼と会うかも?!」と。もしあす30日にこれが実現すればサプライズが起きる。「G20の成果だ」と。

   もちろん、金氏が呼びかけに応じるかどうか、世界のメディアを固唾を飲んで見守っていることだろう。では、なぜきょう朝のツイッターだったのか。以下は推測だ。トランプ氏と中国の習近平国家主席の会談は午前11時30分に予定されていた。アメリカ側は会談で習氏が「北カード」を切ってくると情報を察知していたのではないか。「北カード」とは、習氏は貿易交渉を始める前の会談の冒頭で、南北軍事境界線DMZで金委員長で会ってはどうか、今月20日に金氏と会談した折にトランプ氏に会うよう助言しておいた、という発言をすることで、交渉全体をリードする狙いがあった。そこで、トランプ氏は先制攻撃に出た、それがこのツイッターではないか。

   報道によると、トランプ氏のツイッターに対し、北朝鮮側はきょうの午後、国営の朝鮮中央通信を通じて外務省次官の談話を発表し「非常に興味深い提案だと見ているが、公式的な提案を受けていない」としていて、面会に応じるかどうか明らかにしていない。しかし、「非常に興味深い提案だ」という文言に可能性を予感させる。

  その後の報道でも、トランプ氏がきょう韓国の文在寅大統領との夕食会に臨む際、記者団からツイッター後から北朝鮮側から連絡があったのか尋ねられ、「連絡があった。現在、取り組んでいる」と述べ、面会の実現に向けて調整していることを示唆している。

  今年2月の第2回米朝首脳会談は決裂したものの、今月に入ってトランプ氏と金氏は互いに親書を送っている。そこに割って入るように、習氏が「DMZで金委員長で会ってはどうか」と先に発言されたのでは、トランプ氏にとってはたまったものではない。トランプ氏がツイッターを活用する意義を改めて考えた。(※写真・下はアメリカ「ホワイト」のツイッターから)

⇒29日(土)夜・金沢の天気     あめ

★「国際紛争」化する日本海

★「国際紛争」化する日本海

         安倍総理は5月14日「海上保安の日」で、海上保安庁の幹部職員を前にこう述べた。「新元号は万葉集の梅の花の歌32首の序文から引用されたものです。海上保安庁の徽章もまた梅であります。梅は厳しい冬の寒さを耐え忍び百花に先んじて花を開き、かぐわしい香りを放ち、実を結び、絶えず人々の身近にあるものです。これは正に海上保安庁そのものではないでしょうか。様々な脅威は時を選ばず押し寄せてきます。新たな令和の時代にあっても梅の徽章を胸に、全職員が一致団結し、荒波を乗り越え平和で豊かな海という実を結んでほしい」(「海上保安庁HP」より)。確かに目立たないが、最前線の守り、防人の仕事だ。

   能登半島沖の日本海の排他的経済水域(EEZ)にはスルメイカの漁業資源が豊富な大和堆(やまとたい)と呼ばれる漁場がある。この時季、毎年のように北朝鮮の漁船による違法操業が繰り返されているのだ。海上保安庁は取り締まりに当たっていて、5月下旬からこれまで延べ300隻の北朝鮮の漁船を確認し、違法操業をする漁船に対し警告を行い、退去しない場合は放水を行っている。しかし、いったんは退去しても、また戻ってきて、イタチごっこが続いている。

   北の木造漁船はイカの網漁で、集魚灯などは装備されていない。日本のイカ釣り船団(中型イカ釣り船)がやってくると、夜、スルメイカは集魚灯の下に集まるので、北の漁船が傍らに寄って来て網漁を行う。接触事故などが起きるとやっかいなことになる。さらに、網がスクリューに絡まると船が故障するので、日本の船団は北の漁船を避けて北海道沖の武蔵堆(むさしたい)へ移動を余儀なくされているのが現状だ。さらに、その日本船団を追いかるように、北の漁船も武蔵堆になだれ込んでくる。

   さらに面倒なのが韓国だ。昨年11月15日には大和堆で山形県のイカ釣り漁船と韓国漁船が衝突している。11月20日、大和堆付近で操業中の北海道のイカ釣り漁船に対し、韓国の海洋警察庁の警備艦が「操業を止め、海域を移動するよう」と指示を出し、この漁船に接近した。連絡を受けた海上保安庁の巡視船が韓国の警備艇と漁船の間に割って入ることで、韓国警備艇は現場海域を離れた。12月4日、島根県の隠岐諸島100㌔の日韓の暫定水域で、石川県漁協所属の中型イカ釣り船が操業中、船を安定させる漁具のロープ「パラシュートアンカー」を海中に放っていたところ、韓国漁船が近づいてきて前方を通過、そのパラシュートアンカーをひっかけ、イカ釣り船は20㍍引きずられ、ロープは切れた。イカ釣り船は韓国漁船に止まるよう呼びかけたが応じなかった。日本側の言い分を無視する、まるで「レーダー照射問題」のような「事件」が海上ではすでに起きている。

  韓国は、竹島は韓国の領土であると言い張り、大和堆も韓国海域であると主張したいので、その布石を打っているのだろうか。これから「海上衝突」状態が本格的に始まることは想像に難くない。安倍総理は「荒波を乗り越え平和で豊かな海という実を結んでほしい」と言うものの、現実はすでに「国際紛争」化している。(※写真は、能登半島・珠洲市の海岸に漂着した北朝鮮の木造漁船=2017年11月)

⇒18日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆土下座が生む大いなる誤解

☆土下座が生む大いなる誤解

  アイドルグループ「KAT-TUN」の元メンバー、田口淳之介が大麻所持で逮捕され、今月7日に釈放された。拘留されていた警視庁東京湾岸署から出てくる姿がテレビのニュース番組やワイドショーなどで流れた。黒いスーツにネクタイ姿で正面玄関を出た後、報道陣を前にお詫びの言葉を述べた。「金輪際、大麻などの違法薬物、犯罪に手を染めないことをここに誓います」と。そして、額を地面に付けて土下座した。このシーンをテレビで視聴していて、「誰に向かって土下座しているのだろうか。単なるパフォーマンではないか」などと違和感を持った。

  自分自身は土下座の経験はないが、重大な損害を与えてしまった相手に対する誠心誠意の謝罪、あるいは金銭的な借り入れや猶予を相手に乞い願うというのが、これまでに見聞きした土下座のイメージだ。いずれにしても相手がその場に居ての土下座だ。今回の場合、待ち構えていた報道陣のカメラに向かって、ファンに対して土下座をしたということか。それにしても、ファンに直接的な被害を与えた訳でもないので、冒頭のお詫びの言葉だけで十分だろう。

  今回の土下座について、金沢大学で担当している授業「マスメディアと現代を読み解く」の今月12日の講義で取り上げた。謝罪と土下座のネット動画を学生たちに見てもらい、マスメディアがどのようにこの場面を取り上げているか考察した。テレビ各局はお詫びの言葉から土下座まで映像で伝えている。映像では「田口被告が土下座しました」とリポーターの興奮したような音声も入っていて、一部学生たちから笑いも漏れた。新聞は写真1枚なので、どのような写真を掲載したのか。各紙をチェックすると、土下座の写真そのものを掲載している紙面は多かったが、中には正面を向いてお詫びの言葉を述べる写真を掲載している紙面もあった=写真=。おそらく、土下座写真は読者に違和感を与えると判断したのではないだろうか。

  学生たちの感想も尋ねた。ネット上で作成したアンケートをスマホでQRコードで読み取ってもらい、答えてもらう。設問は簡単だ。「元KAT-TUNの田口淳之介の土下座について、あなたは違和感を感じますか」の問いに「感じる」「感じない」の選択肢だ。58名から回答があり、「感じる」が64%、「感じない」が36%だった。ほぼ3人に2人が違和感があると答えた。学生に直接聞くと「そもそも彼が謝罪することに違和感を感じる」「土下座までする必要性はない」との意見だが、「土下座している映像をメディアに報道させる方がインパクトがあってよい」「誠意が伝わる謝罪が土下座ではないか」と擁護する意見もあった。メディアの謝罪報道を考察するよいタイミングだった。

  田口淳之介は容疑者から被告になった。初公判は来月、7月11日だ。拘留期限は合わせて13日間だった。検察側は20日間の勾留請求をしたが、東京地裁はこれを認めなかった。長期勾留や、いわゆる「人質司法」を避けようとする裁判所側の思惑が働いたようだ。これは邪推だが、ひょっとして今回の土下座は弁護士の入れ知恵ではないか。この流れをうまく掴んで、「本人は真摯に反省しています。土下座までしました。裁判官殿、どうぞよろしくお願いします」と弁護側が裁判に向けてアピールしたのではないか、と。

  田口被告は初犯なのでおそらく執行猶予が付くだろう。こうなると薬物事件で逮捕されても、土下座して反省して謝れば、刑務所に行かなくてよくなるという大いなる誤解が社会に生じないだろうか。

⇒16日(日)夜・金沢の天気    あめ

★「酒造りの神様」 快心の一献

★「酒造りの神様」 快心の一献

  86歳、杜氏として今でも造り酒屋で蔵人たちを指導する農口尚彦(のぐち・なおひこ)氏は国が卓越した技能者と選定している「現代の名工」であり、ファンからは「酒造りの神様」と称され、地元石川では「能登杜氏の四天王」と尊敬される。金沢大学の共通教育科目「いしかわ新情報書府学」(2009-2016年)を担当していたころ、非常勤講師として農口氏に酒造りについて講義をいただいたことが縁でこれまで能登の自宅や酒蔵を何度か訪ねた。

  酒蔵見学には他の造り酒屋にも何度か訪れたが、農口氏の酒蔵は独特の凛とした雰囲気がある。農口氏は米のうまみを極限まで引き出す技を持っている。それは、米を洗う時間を秒単位で細かく調整することから始まる。米に含まれる水分の違いが、酒造りを左右する。米の品種や産地、状態を調べ、さらには、洗米を行うその日の気温、水温などを総合的に判断し、洗う時間を決める。勘や経験で判断しない。これまで、綿密に蓄えたデータをもとにした作業だ。そのデータを熱心に記録する姿は「酒蔵の科学者」との印象だ。

  酒蔵に住み込む農口氏は夜中でも米と向き合い、米を噛み締める。持てる五感を集中させて、手触り、香り、味など米の変化を感じ取る。次に行うべき適切な作業とは何かを判断するためだ。農口氏は言う。「自分の都合を米や麹(こうじ)に押し付けてはならない。己を無にして、米と麹が醸しやすいベストな状態をつくらなければ、決して良い酒は出来ない」。酒造りに生涯を捧げる言葉には悟りを求めるような深みがある。

  その農口氏がかつて杜氏をしていた酒造会社に無断で名前を商品名や広告宣伝に使われているとして使用の差し止めを求める仮処分を申し立て、金沢地方裁判所はこのほど農口氏の名前を使うことを禁じる決定を下した。きょう14日付の新聞各紙が報じている。その酒造会社「農口酒造」(能美市)は出資者と2013年に共同で設立したものの、経営者との酒造りの方針が食い違い2015年に辞している。その後、農口氏は2017年に「農口尚彦研究所」(小松市)という名称の酒造会社を別の出資者と立ち上げた。金沢地裁は前の会社を辞めて4年が経ち、農口氏が実際に造った酒は在庫がないはず、として名前の使用を禁止した(5月30日付)。

  日本酒業界における農口氏の知名度は抜群である。商品名だけでなく、造り酒屋の社名そのものに「農口」の名前が被さっているほどだ。ある意味「有名税」とは言え、売らんがために名前をいつまでも勝手に使われたのではたまったものでない。地裁の判断に胸を撫で下ろされたことだろう。実は農口氏は下戸である。もし飲めれば、この一件は快心の一献だったろう。(※写真は、日本酒について学生たちと語らう農口尚彦氏=右=、2010年11月、金沢大学角間キャンパス)

⇒14日(金)朝・金沢の天気    くもり

☆クマの生命力

☆クマの生命力

  最近クマ出没のニュースをよく目にする。さきほども極身近の金沢大学から、「クマ被害防止に関する危機対策本部長」から届いたメールは。「クマの出没について(注意喚起) 6月3日(月)19:20頃に角間キャンパス近隣(別添地図参照)でクマが出没しました。各自、下記の1及び2に留意の上、十分に注意してください。 また、クマを目撃した場合は、速やかに警察に通報する(下記3)とともに、総務部総務課(下記4)まで連絡してください。」と前置きし、以下具体的な対応を個条書きで述べている。

   1.日常的な注意行動 ・角間キャンパス周辺を通行する際には鈴など音が出るものを携行しましょう。・集団での登下校などに努めましょう。・クマを引き寄せる残飯等のゴミは所定の場所に捨てる又は持ち帰りましょう。
   2.クマに遭遇した際の行動(金沢市HPから) 「もし出会ってしまったら!」 ・あわてずに静かに立ち去りましょう。・クマを興奮させないために騒いだりしないようにしましょう。・決して走って逃げたりしないことです。(クマは逃げるものを追う習性があります) 「もし近づいてきたら!」・背中を見せないでゆっくり立ち去るようにしましょう。・クマが離れていっても決して戻らないようにしましょう。

   現実にそぐわない記載がある。1.の「鈴など音が出るものを携行しましょう」というのは学生に鈴を携行させるのはちょっとムリ。むしろ、「スマホで音楽をボリュームいっぱいに鳴らしましょう」と記載した方が現実的かもしれない。あるいは、クマ撃退アプリを開発して鈴の音をスマホでダウンロードしてもらうとか処置を講じる方がよいのではないだろうか。キャンパス近隣での目撃情報は今月1日12時50分にもあった。

   ちょっと変わった場所での出没もある。先月31日午前8時25分ごろ、石川県宝達志水町の海岸でクマの姿が目撃された。山間部ではなく、海辺でクマが出没するのか。このニュ-スを見たとき、泳ぐクマの姿が記憶にみがえった、30歳前半なのでもう30年前だ。新聞記者時代にレジャー欄で「ぐるり白山」という特集を担当したことがある。富山県の庄川峡を訪ね、小牧ダムで遊覧船に乗って、大牧温泉に向かった。季節は6月だった。曇り空で今にも雨が降りそうな天気。出港してしばらくして乗客がざわめいた。「クマが泳いでる」。船の舳先を横切るように犬かき姿で泳いでる。しかも、かなり速いスピードで、対岸に向かっている。写真を撮ろうとしたが、すでに遠方にいて、肉眼で確認できるたものの、シャッターチャンスは逃してしまった。

   それ以来、クマは泳ぐ動物というイメージがインプットされている。楽しむために泳いでいるのではなく、エサを求めて泳ぎ渡る。本能として泳ぐ。生き抜くための生命力というものを当時感じたものだ。もちろん、クマにとって泳ぐことはそれほど苦痛ではないかもしれないが。

⇒4日(火)午後・金沢の天気     はれ