⇒ニュース走査

★「オープンイノベーション」って何だ

★「オープンイノベーション」って何だ

       「人生百年時代」という言葉に戸惑っている。これまでの人生観は、60歳定年で再就職し、65歳まで頑張り、後は年金をもらって泰然自若として余生を送る、だった。ところが、「人生百年時代」の言葉の裏には年金制度の下心が見えてくる。高齢者はリタイアせずそのまま働き、年金保険料や税金を納めてもらい、年金の受給開始をできるだけ待ってもらうという、時代の要請を感じる。これに背いて、時の政権を恨んで生きようとは思わない。問題は、65歳の人生観から人生百年時代へとライフスタイルを延ばすために、求められる能力・スキルをどう身につけるかである。

   キャリアの単なる延長では意味がない。有している技術やノウハウはもう時代についていけない。キャリアアップやキャリアチェンジが必要なのだ。自虐的な発想だが、65歳から身につける、能力・スキルには限界がある。せめて50歳で会社を辞しキャリアチェンジに進む、あるいは会社に兼業を認めてもらい、キャリアアップを図るといった自己開発が必要なのだ。これは、個人のキャリアもさることながら、会社組織にとっても必要ではないかと考えている。老舗企業として生き残るのはそう楽ではない。

   「オープンイノベーション」という言葉がある。これまでの自前主義(クローズドイノベーション)に代わって、会社の外にある知識や技術を積極的に取り込むという意味で使われる。もちろん、それぞれの企業内には秘密保持契約があり、自ら創った壁に風穴を空けて、既存のベンチャー企業やIT企業から技術導入するというのはそう簡単ではないだろう。「スタートアップ」と称される、新規サービス・ビジネスモデルの確立を目指すメンバーを取り込み、 イノベーションの創出を求める大企業の間で盛んに言われているのが、オープンイノベーションだ。 一方で、成功事例は少なく、失敗に終わる事例が多いことから、「オープンイノベーションごっこ。そう簡単ではない」と自虐的に言う人もいる。

   オープンイノベーションを起こすべきはむしろ政府だろう。厚生労働省の統計によると、ことし1-7月の出生数は前年同期に比べて5.9%減の51万8590人となり、ショックが走った。2016年に100万人を割り、わずか3年で90万人を割る公算が大になってきた。「団塊ジュニア」と称されてきた世代の女性が45歳以上になり、20代と30代の女性が減少している。つまり、人口減は構造的な問題なのだ。

   この問題に対応するには事実婚というオープンイノベーションを導入するしかないだろう。日本には戸籍の問題があり、事実婚を阻害しているが、結婚をしないで子供を出産する許容さ、その支援制度を政府が前向きに示すことではないか。事実婚のオープンイノベーションに踏み切れば、高齢化した社会の変革も促されるのではないだろうか。

⇒18日(金)夜・珠洲市の天気     くもり

★被害者権利「日本が故意に衝突、損害賠償を」

★被害者権利「日本が故意に衝突、損害賠償を」

  数十年に一度の重大な災害が予想される特別警報が出された台風19号。各地で爪痕を残し、13日朝、台風の中心部は東北三陸沖の太平洋側に抜けた。ネットニュ-スで被害状況をチェックしているが、長野県の千曲川の堤防が一部決壊し住宅地が浸水。また、長野市のJR新幹線車両センターも水没して、北陸新幹線の車両が水に浸かっている状態で終日運休が決まった。時間が経つにつれ、さまざまな被害状況が確認され、今回の台風のすさまじさが見えてくる。

  もう一つ「北の台風」が吹き始めた。12日付のロイター通信Web板(日本語)は「北朝鮮が日本に賠償要求、故意に沈没漁船に衝突と主張」との見出しで、今月7日に起きた能登半島沖の日本のEEZ(排他的経済水域)内での北朝鮮漁船と水産庁取締船との衝突について、北朝鮮側の発表を報じている。

   ニュースを以下要約する。朝鮮中央通信社(KCNA)が12日に報じた内容として、北朝鮮外務省の報道官は声明で、日本側が故意に衝突した犯罪的な行為だと指摘、将来このような事案が発生しないよう日本は対応すべきだと主張。さらに「日本政府に沈没船の損害補償を強く求める。このような事態が再び起これば日本は望ましくない結果に直面することになる」と指摘。漁船が急旋回したため衝突したとの日本の主張に対して、通常の航行状態だったと反論し、「日本は意図的な行為を正当化しようとしている」と非難した。

   なぜこれほど北は強気に出てくるのか。衝突から損害補償の請求まで仕掛けられたワナではないか。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。北朝鮮は衝突があったEEZは自国の領海であると以前から主張している。日本側が領海を侵犯した上、公船が漁船に体当たりしたと自らの立場を正当化する戦略として仕立てたのだろう。これからことあるごとに「北朝鮮の領海での日本側の意図的な衝突、損害賠償を請求する」と高いボルテージで言い続けるだろう、北朝鮮は被害国だという「権利」の主張だ。

   北朝鮮では近海の漁業権を中国に売却したため、漁民が危険を冒して大和堆などの沖合に出ざるをえない事情があると言われている。ロシアのEEZに入り拿捕が相次ぎ、日本のEEZの方が拿捕されないので「安全」と見くびっている。おそらく北による違法操業は今後も当面止むことはないだろう。日本は水産庁が撮っている今回の衝突映像を国際社会に公開すべきだ。衝突が単なる事故なのか、故意に衝突した「事件」なのか。厄介なボールが日本に撃ち込まれた。(※写真は、日本のEEZで違法操業する北朝鮮の漁船=海上保安庁の動画から)

⇒13日(日)午前・金沢の天気     くもり

★迫る台風19号、茜色の夕空

★迫る台風19号、茜色の夕空

  見事な茜(あかね)色の風景だった。きょう午後5時37分、金沢の外環状道路を車で走っていて西の空に見えた=写真=。暴風雨の前のつかの間の和みの光景か。非常に強い台風19号が迫っている。あす12日は北陸も大荒れとなる見込みだ。自身が講義を予定をしていた金沢大学の人材養成事業「能登里山里海SDGsマイスタープログラム」も次週に延期となった。紙面ではラグビーのワールドカップもニュージランドvsイタリア(愛知・豊田市)、イングランドvsフランス(横浜市)が中止となり、試合はドロー(引き分け)扱いとなると報じられている。確かにこの2会場は19号の直撃コースだ。

  それにしてもラグビーW杯の盛り上がりはだれが予想していただろうか。W杯の開催ついての功労者は、かつて「神の国」発言で物議をかもした森喜朗元総理であることは選挙地盤でもあった石川県民が地元紙を通じてよく知っている。森氏が日本ラグビーフットボール協会の会長を務めていた2009年に今回の第9回W杯の日本招致に成功した。 当時は衆議員在任中でもあったので、「趣味のラグビーのために国費を使うのか」などと冷ややかな声も地元ではあった。政界引退後は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長を務める。ラグビーW杯と東京オリンピック・パラリンピックが成功裏に終われば、「スポーツ界の神様」と称されるかも。

  森元総理のことはさておき、ラグビーについて知るとなんとグローバルなスポーツかと実感する。その国に3年以上滞在していれば、その国の選手として国籍に関係なく出場できるのだ。日本チームのメンバーはニュージーランドのトンプソンルーク、南アフリカのピーター・ラブスカフニ、オーストラリアのジェームス・ムーア、韓国の具智元ら。多国籍を超えて、日本チームとして結束しているところが見事だ。国歌斉唱では外国人選手も「君が代」を歌い、むしろグローバルさを感じさせる。

  このラグビーの在り様は、日本が取るべき将来の進路ではないかと考える。急速に進む少子高齢化で働き手や担い手が不足する中、日本の多国籍化を進めていく。国際化と述べると共通の理念が求められるが、目標に向かって結束する場合は多国籍化でよいのではないか。多国籍化が求められるのは、スポーツだけでなく、研究開発やマーケット戦略、生産性や教育分野など幅広い。市民生活でもあえて日本人の社会に溶け込む必要はない。たとえば、金沢に「ニュージーランド村」や「南アフリカ村」があってもいい。日本の法律の下でお互いに暮らし安さを追求すればそれでよいのではないか。茜色の夕空を見てそんなことを考えた。

⇒11日(金)夜・金沢の天気    はれ

★猛烈な台風接近、北の漁船は

★猛烈な台風接近、北の漁船は

   能登半島沖の日本のEEZ(排他的経済水域)できのう(7日)、水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突した事故で、沈没した漁船の乗組員60人が救助され、別の北朝鮮の船に引き取られた。これで一件落着なのだろうか。事故の原因は、取締船が北の漁船に放水して退去するよう警告したところ、漁船が急旋回して取締船の左側から衝突してきたと報じられている(8日付・NHKニュースWeb版)。通常、船同士がぶつかりそうな場合、左側の船が衝突をよけるルールとなっているが、避けることなく衝突し沈没した。

   日本側への威嚇による故意の事故なのか、単なる操縦ミスなのか、伝えられていない。水産庁が撮影しているであろう衝突映像を国際社会に公開すべきだ。衝突が単なる事故なのか、故意に衝突した「事件」なのか。それにしても不可解なのは、なぜ、救助した60人全員を帰すことになったのか、だ。本来ならば北の船長や機関士らから事情聴取すべきだろう。水産庁の目的は違法操業をさせないことで事故原因の調査ではないとするならば、海上保安庁にバトンタッチすべきだろう。

   日本海のスルメイカの漁期は6月から12月だ。これからの日本海は荒れやすい。大型で猛烈な台風19号も接近している。能登半島や金沢の海岸線に打ち上げれた北の漂着船をこれまで何度か目撃した。2018年1月10日朝、金沢市下安原海岸に北朝鮮の漁船が漂着し、船内から7人の遺体が見つかった。現場に足を運んだ。船の中には、ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘繰った。小型船で日本海の大和堆に繰り出して漁をする。荒れる日本海に命がけで、なぜそこまでしてイカ漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令なのか。

      海上保安庁によると、昨年1年で北朝鮮からとみられる木造船の漂着は201件で前年の2倍。問題はこうした漂着船の解体処分や遺体の火葬をするのは自治体だ。石川県に漂着した木造船などの処分費用21件880万円。最終的に国が全額負担している。猛烈な台風19号の接近で難破する北の漁船も増えるだろう。無謀で不合理な光景がまた繰り返されるのか。(※写真・上は水産庁の取締船と北朝鮮の漁船の衝突を報じる石川県の地元紙、写真・下は2018年1月に金沢市下安原海岸に漂着した北朝鮮の漁船)

⇒8日(火)朝・金沢の天気      あめ

☆能登半島沖、北の漁船と衝突の衝撃

☆能登半島沖、北の漁船と衝突の衝撃

   これは起こるべくして起きた「事故」ではないだろうか。報道によると、きょう7日午前9時10分ごろ、能登半島の北西、350㌔の沖合で、水産庁の漁業取締船「おおくに」と北朝鮮の大型漁船が衝突した。北朝鮮の漁船は浸水、乗組員が海に投げ出され、水産庁の漁業取締船が救助にあたり、夕方までに漁船の乗員60人を救助した(読売新聞Web版)。衝突した現場は日本のEEZ(排他的経済水域)内だった。北朝鮮は2日朝、東部の元山付近から弾道ミサイル1発を発射し、島根県隠岐諸島の北約350㌔㍍の日本のEEZ内に撃ち込んでいる。

   現場は日本有数のスルメイカの漁場で知られる「大和堆」。ここ数年6月から12月にかけて北朝鮮のイカ網漁船による違法操業が繰り返されている。ことし8月23日午前9時半ごろ、同じ大和堆で北朝鮮海軍らしき旗を掲げた小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた船の不審船2隻を水産庁の取締船が見つけ、連絡を受けた海上保安庁の巡視船が駆け付けた。高速艇には小銃を持った船員がいた。周辺には日本のイカ釣り漁船が操業していて、水産庁は漁船に対し安全確保のため海域を離れるよう指示した。

   言うまでもないが、領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいない。そのような北朝鮮の漁船に排除行動を仕掛けると、北朝鮮が非批准国であることを逆手にとって自らの立場を正当化してくる可能性がある。おそらくそこが取り締まる側としては悩ましいところなのだろう。うがった見方をすれば、今回の衝突事故は北から仕掛けれた可能性もある。8月23日の接近問題では北の船が水産庁の巡視船に30㍍にまで近寄ってきた。相手を威嚇するためだろう。

   同じ日本海でロシアと「事件」も起こしている。先月9月17日にロシア国境警備隊が、日本海のロシアのEEZで北朝鮮の密漁船2隻をだ捕し、乗組員80人以上を拘束したと発表している。このとき、北の密漁船1隻から武力攻撃を受け、国境警備隊3人が負傷した。ロシア側は、同月12日にもロシアのEEZでイカを密漁していた北の漁船16隻を拿捕し、250人以上を拘束している。

   なぜこれほど北は強気に出てくるのか。北朝鮮では海軍が水産事業所を所有し、漁船は各部隊の傘下に所属して漁に出ているとされる。昨年12月には、金正恩党委員長が日本海側にある軍の水産事業所3ヵ所を視察し、軍の幹部らに漁業活動に力を入れるよう指示を出したとされる。また、北朝鮮では近海の漁業権を中国に売却したため、漁民が危険を冒して大和堆などの沖合に出ざるをえない事情があるとも言われている。北にすれば、ロシアのEEZより、日本のEEZの方が拿捕されないので「安全」と見くびっているかもしれない。

   おそらく北による違法操業は当面止むことはないだろう。日本は水産庁が撮っているであろう今回の映像を国際社会に公開すべきだ。衝突が単なる事故なのか、故意に衝突した「事件」なのか。

        夕方の報道によると、北朝鮮籍の漁船は漁業の準備をしようとしていたため、水産庁が退去させようと警告した。しかし、船は止まることなく水産庁の船に左側から衝突してきた。通常、船同士がぶつかりそうな場合、左側の船が衝突をよけるルールとなっているが、よけることなく衝突し沈没したという。関係者は日本側への威嚇ではなく船の操作ミスではないかとの見方を示している(日テレNEWS24)。

⇒7日(月)夜・金沢の天気      くもり

★マーラー交響曲『巨人』、闇と光の相克

★マーラー交響曲『巨人』、闇と光の相克

   きょう(6日)午後、久しぶりに石川県立音楽堂に出かけた。バイオリンを弾く知人が出演する「石川フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会」=写真・上=。ジョン・ウィリアムズの『スターウォーズ』組曲では、「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)で指揮者がライトセイバーを持ち出して指揮したのには思わず笑い。グスタフ・マーラーの交響曲『巨人』では、ウトウトと眠りかけていたのに第4楽章の冒頭でシンバルの強烈な一撃をくらってビックリ。勝利感に満ちたフィナーレで、ブラボー屋たちも思わず叫んでいた。アンコールの同『花の章』は最後にハープがポロリンと演奏をしめたのが印象的だった。

   この演奏を聴いていて、さまざまなニュースが脳裏に浮かんできた。『スターウォーズ』では、アメリカの配車大手「ウーバー・テクノロジーズ」が「空飛ぶタクシー」をアメリカ・テキサス州ダラスとロサンゼルスでの試験飛行するのに続いて、オーストラリアのメルボルでも始めるというニュース(6月)を思い出した。垂直着陸が可能な電気小型航空機を活用する空飛ぶタクシーは、無人機ではなくパイロットが操縦する。空のライドシェアの先駆けでもある。「Uber Air」のホームページにあるPR動画=写真・下=は、空を飛ぶというイメージよりも、高層ビルを宇宙船に見立てて、その空間をつなぐというモビリティ(移動)の発想が映画『スターウォーズ』をイメージさせるのだ。

  『巨人』の演奏を聴いていて、揺れる香港をイメージした。今月1日のニュースでは、中国建国70年の軍事パレードよりも、香港の若者たちの必死の主張に耳を傾けた。マーラーが思い描いて作曲したのは、まさに生きる希望ではなかったと感じる。自由な言論、自由な議論、自由な社会活動、自由な経済、自由な学問研究など、香港が一国二制度という枠組みで守ってきた歴史を絶対に揺るがせないという若者の熱意と、マーラーの激しく情熱的な全楽器による演奏(第4楽章「嵐のように激しく揺れ動いて」)が実に響き合う。 

   一方で、『巨人』の同じ第4楽章には混沌とした「闇」を連想させる部分もある。関西電力と行政の原発立地の闇というイメージが膨らむ。エネルギーという公共性の高い事業なのだが、現在の科学では核廃棄物を処理が不可能である。原発にはそうした社会的な負の部分がどうしてもつきまとう。「闇金」を回し合いながらお互いを慰め合っているとしか思えない。マーラーの曲は、深く濃い「闇」をクライマックスの凄まじい「光」でその「闇」を打ち消して終わりを告げる。名曲である。

⇒6日(日)夜・金沢の天気     くもり時々はれ

★今ここにある朝鮮半島の夢と現実

★今ここにある朝鮮半島の夢と現実

  北朝鮮はきのう(2日)朝、東部の元山付近から弾道ミサイル1発を発射し、島根県隠岐諸島の北約350㌔㍍の日本のEEZ(排他的経済水域)内に着水した。防衛省ホームページによると、河野防衛大臣=写真=はきょう3日午後5時45分から5分間の臨時記者会見を行った。北朝鮮が発射した弾道ミサイルが新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)とみられ、打ち上げ角度を高くするロフテッド軌道での発射でなければ射程が2500㌔㍍に達するもので、準中距離弾道ミサイルとの見解を示した。陸上ではなく、沖合で発射されたが、実際に潜水艦が使われたかどうかは、さらなる分析が必要と述べた。記者との質疑は以下。

記者:今回の北朝鮮のミサイルの飛距離が2500㌔㍍におよぶSLBMということで、トランプ大統領は、短距離については問題にしないということで発言をしていたと思いますが、これは明らかに、問題になるような弾道ミサイルだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
河野大臣:日米間では、短距離のミサイルであっても安保理決議に違反をしているということは問題であるという認識は、これまでも共有しております。当然に、このミサイルについても、そうした考え方は共有しております。トランプ大統領は、この米朝プロセスを進めるために、様々、発言をされ、あるいは、ツイートされておりますが、そういう目的でやられているということで、日米ともに了解しております。

記者:SLBMと断定するに至った、何か新しい情報はあるのでしょうか。差し支えない範囲で、どのような根拠でそうだと言えるのかを説明していただけますか。
河野大臣:分析の中身は申し上げられません。

記者:日韓の情報共有についてですが、昨日、日本政府は当初、2発発射というところから、その後1発が分離した可能性があると修正されていると思いますが、GSOMIAを含め、日韓での情報共有に支障を来たしているということはあるのでしょうか。
河野大臣:そのようなことはありません。

記者:潜水艦かどうかはともかく、中距離弾道ミサイルを発射するという北朝鮮の軍事行動が、日本の安全保障、あるいは、地域の安全保障にとって、どのような脅威になるとお考えでしょうか。
河野大臣:日本の安全保障にとって、深刻な脅威であるということは間違いないことでありますし、国際社会にとっても非常に大きな課題であるという認識は、広く国際社会で共有されていると思います。

記者:2段式ということですか。
河野大臣:2つに分離している可能性はあると思います。

   北は今年に入って弾道ミサイルを含む飛翔体を11回も発射していて、ミサイル技術の高度化が進んでいる。一方の韓国の文在寅大統領は8月15日の「光復節」で「2032年ソウル-ピョンヤン共同オリンピックを成功裏に開催し、2045年の光復100周年までには平和と統一で一つになった国(One Korea)として世界の中でしっかりと立つことができるように、その基盤をしっかりと固めると約束する」(8月15日付、韓国・中央日報Web版)と述べた。これが今ここにある夢と現実なのだろう。

⇒3日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆北の武装船、日本海の一触即発

☆北の武装船、日本海の一触即発

   イギリスBBCテレビのWeb版をチェックしていると、日本海で北朝鮮がロシアとせめぎ合っている。「Russia holds 80 North Koreans on ‘poaching’ boats」の見出しの記事=17日付・BBCニュースWeb版=によると、ロシアの国境警備隊が今月17日、日本海のロシアの排他的経済水域(EEZ)で北朝鮮の密漁船2隻をだ捕し、乗組員80人以上を拘束したと発表した。ロシア側の説明によると、密漁船1隻から武力攻撃を受け、国境警備隊3人が負傷したという。

   ロシア連邦保安局(FSB)報道官はだ捕の経緯について、朝鮮半島とロシア、日本の間に位置する、日本海の好漁場「大和堆」で、北朝鮮のスクーナー(帆船)2隻とモーターボート11隻が密漁しているのを発見したと説明。さらに、ロシア外務省は北朝鮮の駐ロシア臨時代理大使を呼び出し、「深刻な懸念」を表明した。ロシア・インタファクス通信は、FSBの話として、拿捕された漁船は極東ナホトカ港に連行されたと伝えた。

   ロシアと北朝鮮がこの海域で争うのは今回が初めてではない。FSBは今月12日にもロシアのEEZでイカを密漁したとして北朝鮮の漁船16隻を拿捕し、250人以上を拘束したと発表していた。今年6月には、北朝鮮がロシア漁船をだ捕し、乗組員を逮捕した。北朝鮮側は今回のだ捕についてコメントしていない。

   懸念するのは北朝鮮の船の武装化だ。8月23日には、大和堆で武装した船員が乗った北朝鮮の船2隻を水産庁の取締船が見つけ、連絡を受けた海上保安庁の巡視船も駆け付けた。現場は日本のEEZ海域だった。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた不審船は、小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船で、高速艇には小銃を持った船員がいたという。周辺では日本の漁船も操業していて、水産庁は漁船に対し、安全確保のため海域を離れるよう伝達した。日本海は一触即発の緊張感が漂っている。

⇒21日(土)夜・金沢の天気    はれ

★「9・11」から18年、アメリカは

★「9・11」から18年、アメリカは

   「9・11」からもう18年になる。、アメリカで同時多発的にテロ攻撃が実行されたその日だ。イスラム過激派のテロ組織「アルカイダ」による犯行。死者は3千人ともいわれた。現地時間で午前8時46分、日本時間で午後9時46分だった。当時帰宅して、報道番組「ニュースステーション」が始まったばかりの同9時55分ごろにリモコンを入れると、ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突する事故があったと生中継の映像が映し出されていた。間もなくして、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。リアルタイムの映像で衝撃的だった。番組のコメンテーターが「これは事故ではなく、おそらくテロです」と解説していた。テロリズム(terrorism)という言葉が世界で認知されたのは、この事件がきっかけではなかったか。

   この同時多発テロはアメリカの中心部が初めて攻撃を受けた歴史的な事件でもあった。このころからアメリカ人の深層心理が揺らぎ始めたのではないかと推測している。デモクラシー(民主主義)という価値観を創造し、グローバルに展開してきたのはアメリカだったと言っても異論はないだろう。1862年9月、大統領のエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を発して以来、自由と平等、民主主義という共通価値を創り上げる先頭に立った。戦後、ソ連や北ベトナムなど共産圏との対立軸を構築できたのは資本主義という価値ではなく、自由と平等、民主主義という共通価値だった。冷戦終結後も、共通価値は性や人種、信仰、移民とへと広がり深化していく。アメリカ社会では、こうした共通価値を創ることを政治・社会における規範(ポリティカル・コレクトネス=Political Correctness)と呼んで自負してきた。

   ところが、アメリカの本丸が攻撃された同時多発テロをきっかけに、誰もが自由と平等だがそれが誰かの犠牲に上に成り立っているとすれば、それでは偽善ではないか、とアメリカ社会の白人層が考え始めた。2003年にアメリカを中心とする有志連合が始めたイラク戦争は大量破壊兵器の廃絶を名目とした軍事介入とされた。そこには自由と平等、民主主義という共通価値はすでになかった。ポリティカル・コレクトネスは政治的、社会的に公正・公平・中立的という概念だが、広意義に職業、性別、文化、宗教、人種、民族、障がい、年齢、婚姻をなどさまざまな言葉の表現から差別をなくすこととしてアメリカでは認識されている。しかし、ポリティカル・コレクトネスは同時に、本音が言えない、言葉の閉塞感として白人層を中心に受け止められている。心の根っこのところでそう思っていても、表だってはそうのように言わない人たちでもある。

   こうした「ポリティカル・コレクトネス疲れ」の白人層に支持されたトランプ政権のいまの在り様はポピュリズム(Populism)と称される。ポピュリズムは、国民の情緒的支持を基盤として、政治指導者が国益優先の政策を進める、といった解釈だろう。トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を唱え、世界に難題をふっかけている。もう、アメリカではポリティカル・コレクトネスは死語と化しているのではないだろうか。

⇒11日(水)朝・金沢の天気    くもり

☆レーダー照射事件の裏読み

☆レーダー照射事件の裏読み

    今の日本と韓国の関係性を「そもそも論」で振り返ってみたい。発端は2018年12月20日午後3時ごろ、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射したことだった。火器管制レーダーは、ミサイルで対象を攻撃するために距離や高さ、移動速度を計測するためのもので、通常のレーダーとは全く違う。

   岩屋防衛大臣が翌日21日の緊急記者会見で、このレーダー照射の一件を公表した。火器管制レーダーを照射したのは韓国海軍の駆逐艦「クァンゲト・デワン」=写真・上、防衛省ホームページより=。P1は海上自衛隊厚木基地所属。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に照射の意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだ。防衛省ホームページには、P1が撮影した動画が掲載されていて、その経緯が詳細に紹介されている。

   これに対し、韓国側は火器管制レーダーの使用について「哨戒機の追跡が目的ではなく、遭難した北朝鮮船捜索のため」などと反論した。防衛省は不測の事態を招きかねず、意図しなければ起こりえない事案であり、「極めて危険な行為」として韓国側に強く抗議した。ここから日本と韓国の応酬がエスカレートしていく。では、そもそも、なぜ韓国は駆逐艦を派遣してまで「遭難した北朝鮮船」を捜索したのか、という疑問がずっと残る。防衛省ホームページの映像では駆逐艦と韓国・海洋警察庁の警備艦が洋上に見え、警備艦が北朝鮮の木造船らしき船に近づいている=写真・下=。問題はここにあるのではないか。

   映像から推察する。海難救助であるならば海軍と海洋警察が連携して救助に向かうこともあるだろう。北の船が救助信号を出してSOSを求めたのであれば、EEZ内なのでその信号は日本の海上保安庁にも海上自衛隊にも救助信号は届き、現場に向かったはずだ。ということは、北の船は救助信号を出していない。救助信号を出していないのに韓国はなぜ「遭難」の救助と弁明したのか。

  ここからは憶測だ。本来の海難救助でもないのに海軍と海洋警察が連動して、北の船と接触するのは、指揮系統上、そのような命令を出せるのは大統領府しかない。文在寅大統領が「遭難した北朝鮮船を捜索せよ」と命令した背景には、北の要請があったのだろう。大統領に要請をできる北の人物は、金正恩党委員長しかいない。ということは、遭難したのは単なる漁船ではなく、重要な任務を帯びた工作船ではなかったのか。特殊な通信機を装備している工作船ならば本国に直接SOSを出すことは可能だろう。工作船が能登半島沖で事故を起こし漂流した。そこであえて、韓国に捜索と救助を依頼した、と推測する。

  その現場は、自衛隊のレーダーがカバーしている。日本のP1哨戒機が飛んで来るのは十分に予想された。そこで、実際の遭難救護は警備救難艦、海軍の駆逐艦はP1哨戒機に射撃用レーダーを照射して追い払う役割だったのだろう。
 
   工作船についてさらに憶測する。能登半島の複雑に入り組んだリアス式海岸は工作員の絶好の隠れ場所となっていた。一連の日本人拉致を指揮した大物スパイも能登のリアス式海岸から入ってきた。1973年に輪島市の猿山岬から不法入国し、以後東京、京都、大阪に居住した北朝鮮のスパイ・辛光洙 (シン・ガンス)だ。彼を直接指揮したのが当時の金正日総書記だったといわれる。辛光洙はICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配されている。
 
   今回、トップの命令を受けた工作員が乗船していたのではないか。韓国がそのことを承知しながら船の救助を行ったのはないか。工作船であるとしたら、何の目的で日本に向かっていたのか。疑念はさらに深まる。

⇒6日(金)夜・珠洲市の天気      はれ