⇒ニュース走査

★WHOへ1億㌦の太っ腹、1千万㌦の「なぜ」

★WHOへ1億㌦の太っ腹、1千万㌦の「なぜ」

           マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏の慈善財団が新型コロナウイルスの対策のために1億㌦を寄付することがニュースになっている。さっそくホームページ=写真=にアクセスすると、以下のプレスリリースが掲載されていた。

   「The foundation will provide up to $100 million to improve detection, isolation and treatment efforts; protect at-risk populations in Africa and South Asia; and accelerate the development of vaccines, drugs and diagnostics.」(財団は、検出、隔離、治療の取り組みを改善するために最大1億㌦を提供します。アフリカと南アジアのリスクのある人々を保護します。ワクチン、薬、診断薬の開発を加速します)

   1億㌦の寄付、日本円で109億円になる。寄付の先は感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)などにワクチンや治療薬の開発資金として最大6000万㌦、ウイルス拡散防止にWHOやアメリカ疾病管理予防センターなどに最大2000万ドル、さらに中国など複数の国家公衆衛生局にも支援を予定しているようだ。発表文では、「This response should be guided by science, not fear」(対策は恐怖ではなく、科学によって導かれるべきである)というゲイツ氏の言葉が添えられている。

   この言葉はどこかで聞いたことがあると思ったら、WHOが先月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したときに記者会見したテドロス事務局長の言葉だ。「This is the time for facts, not fear.This is the time for science, not rumours.」(恐怖ではなく、事実の時。これは噂ではなく科学の時です)

   ということは、テロドス事務局長がゲイツ氏に寄付を要請する「営業」をかけたのではないかと察した。おそらくこの言葉を用いて、ワクチンや治療薬の開発資金を提供してほしいとゲイツ氏に直接懇願したのだろう。営業はゲイツ財団だけではない。なんと日本政府にも働きかけている。WHO本部で6日開かれた記者会見で、テドロス事務局長は資金面での協力を呼びかけに日本政府が1000万㌦の拠出を表明したと述べている(7日付・NHKニュースWeb版)。

   新型肺炎のまさに当事者である日本政府に資金拠出を要請するこの感覚は何だろう。緊急事態宣言に名を借りた寄付集めではないか、と考え込んでしまう。それにしても、金を出す日本政府も政府だ。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の船内に今月3日から乗客と乗員全員3600人を横浜港沖に停めおいて、その経費はだれが負担するのか。WHOへの1000万㌦、これが果たして国民が納得できる税金の使い方なのだろうか。

⇒7日(金)午後・金沢の天気    くもり時々ゆき

★正念場、中国の危機対応

★正念場、中国の危機対応

   新型コロナウイルスの感染が日増しに拡大しているようで不気味さが増す。中国の保健当局は、感染者数は4日までに新たに3887人確認されて2万4324人に、死亡者数も湖北省で新たに65人増えて490人となったと発表した(5日付・NHKニュース)。

   最近は中国から発せられる数字そのものに怪しさを感じる。1日付のこのブログでも試算したように、日本政府はチャーター機3便を武漢市に派遣し邦人565人を帰国させた。そのうち感染者は8人と診断された。感染率は1.4%となる。衛生観念が割とある日本人でこの感染率だ。この感染率を人口1100万人といわれる武漢市の感染者数に落とし込んでみると15万4000人となる。

   ところが、武漢市の感染者数は先月31日に「3215人」と発表されて以来、数字が出ていない。仮にこの数字で計算すると武漢市の感染率は0.029%なのだ。地元の人たちは濃厚接触が日本人と比べ物にならないほど多いだろうから、「3215人」の数値に真実味がないと疑わざるをえない。

   この非常事態に揺れる中、中国のガバナンスにも首をかしげる。報道によると、中国の習近平国家主席ら党最高指導部は3日、ウイルスによる肺炎に関する対策会議を開き、初動対応などに誤りがあったことを認めた。指導部が誤りを認めるのは異例、という。ところが、対応の遅れを認めたのはよいが、その責任を現場組織の幹部たちに押し付けるかのように続々と処分しているようだ。湖北省の党地方幹部や赤十字の関係者ら400人処分したとの報道もある(5日付・東京新聞Web版)。事態がある程度収束してからの処分ならば理解できるが、事態が揺れ動く中での処分はかえって混乱を招くのではないか。

   3月5日には全国人民代表大会(全人代)が北京で開催され、さらに4月上旬とされる習国家主席の国賓訪日も迫ってきた。中国は壮大な夢を持っている。人民元を国際決済通貨として世界に広め、国連本部をニューヨークから北京に持ってくることを、おそらく正夢として望んでいるだろう。今回の危機対応いかんによって、夢は脆くも崩れるのか、あるいは次なるステップへと踏み出すのか、問われるのではないか。

⇒5日(水)朝・金沢の天気     あめ

☆「マスクの被告人」の高笑いが聞こえる

☆「マスクの被告人」の高笑いが聞こえる

   きょう(4日)は立春。暦の上ではきょうから春になる。ところが、北陸・金沢ではまだ冬が来ていない、冬将軍はおろか、細雪(ささめゆき)や牡丹雪(ぼたんゆき)も今季は見ていない。ただ、天気予報ではあすから雪マーク、7日の最低気温はマイナス4度となっている。どの程度の雪なのか、本当に降るのか、と思いながら日々の新型コロナウイルスのニュースを気にかけている。

   先日、金沢のお茶会に出席し、濃茶が振舞われた。濃茶は数人で廻し飲みが作法なのだが、席主は「このご時世ですので」と一人が一つの茶碗で飲む一服点てだった。茶席とはいえ、このご時世では廻し飲みに抵抗感を持つ人もいるだろ。こうした茶道文化にまで新型ウイルスのインパクトが及んでいると実感した。

   金沢でもマスク姿が目立ってきた。コンビニでマスクが売り切れの店もある。商品はあっても、「お一人様一枚でお願いします」との注意書き付きだ。ところで、マスクと言えば、あの人を思い出す。カルロス・ゴーン被告だ。昨年3月6日、一回目の保釈で東京拘置所から出てきた姿は、青い帽子に作業服姿、顔の半分以上が隠れる特大マスクが印象的だった。

   なぜ、マスク姿で拘置所から出てくる必要性があったのだろうか、この作業服を着た意味は何か、と思ったものだ。このとき、保釈金10億円を納付したのだから堂々と出てきて、記者会見をすればよかったのではないか。いま思えばマスク姿が好みだったのではないかと思ったりもする。

   そのゴーン被告は逃亡先のレバノンで何を語っているのだろうか。ひょっとして、この「ご時世」を語っているのではないか。「はやり日本を脱出してよかった。新型コロナウイルスが中国や日本でまん延しているので、逃げて正解だった。オレは運がよかった。パンデミックで日本を潰してしまえ」などと高笑いしているかもしれない。

⇒4日(火)午後・金沢の天気     はれ

★新型ウイルス、さらなる「経済感染」

★新型ウイルス、さらなる「経済感染」

   新型コロナウイルスの感染拡大の影響が経済にも及んできた。きのう(2日)のニュースで、中国人民銀行が春節の連休が明ける3日に合わせ、金融市場に1兆2千億人民元(18兆円相当)を供給し、企業の資金繰りを支えると報じられていた。となれば、きょう(3日)の上海の株式市場は暴落しないで済むのではないかと思っていた。

   では、どうか。報道各社のニュースをチェックするときょう午前10時30分(日本時間)から始まった上海株式市場は、連休前の先月23日の終値より一時8.7%も下げた。これでは中国のメンツが丸つぶれになるので、おそらく午後からは国営企業などを動員して買い支えに入るだろう、と推測する。為替レートは、人民元はドルに対し値下がり、1㌦=7人民元台の「元安ドル高」となってる。人民元は今後さらに安くなるのか。

   東京株式市場の日経平均も取引開始と10時30分前後の2度400円ほど値を下げたが、その後は223円安まで戻して午前の取引を終えている。先週末のアメリカのダウが600㌦超の下落だった。素人の読みだが、世界の株式相場は下げることはあっても上げることは当面ないのではないか。

   日本の産業経済は今度どうなるのか。中国の部品メーカーが製造した部品を日本の工場で組み立てるメーカーもあるだろう。その逆もあるだろう。中国の工場の操業停止や物流の停滞によって部品の調達や供給網にも影響が出ることは当然予想される。観光にも影響を及ぼすことは想像に難くない。石川県の小松空港と上海を結ぶ空の便で、中国東方航空はこれまでの週6便から2便に減便(今月9日から来月27日まで)を決めている。

   それにしても気になるのは東京オリンピック(7月24日-8月9日)への影響だ。2002年11月に中国・広東省で発生したとされるSARSは世界で感染者8千人、死者774人を出して収束したのは翌年の7月だった。足かけ9ヵ月かかっている。新型コロナウイルスの発生は昨年12月とされる。WHOが終息宣言を出さない限り、世界の人々は東アジアのオリンピックに足を運ばないのではないか。欧米系の選手たちはもっとナーバスかもしれない。

⇒3日(月)午前・金沢の天気   くもり

☆パンデミックに敏感な遺伝子

☆パンデミックに敏感な遺伝子

            新型コロナウイルスを報じる各国のメディアをチェックしていると、ウイルスがいかに人々の不安や危機感を増幅させているか伝わってくる。

   韓国の中央日報日本語(31日付)によると、チャーター便で中国から帰国する韓国人が一時滞在する臨時施設(忠清南道・牙山市)を政府が用意したところ、周辺住民から激しい反対運動が盛り上がり、説得に訪れた政府の行政安全部長官が住民から卵を投げつけられるという事態になった。「そんなに危険でないなら、あなたがたが住むところや青瓦台で海外同胞を受け入れたらよいではないか」と住民らは叫んだと伝えている。

   こうした事態に文大統領は関係者を集めた会議で、「ウイルスだけでなく、過度な不安や漠然とした恐怖にも立ち向かわなければならない」とし、情報開示を透明に行うよう指示する一方、フェイクニュースには厳しく対応するよう強調した(同)。

   ロイター通信日本語(31日付)によると、フェイスブック(FB)社は、WHOが国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言したことを受け、新型ウイルスに関する虚偽の情報を含むコンテンツを削除する方針を明らかにした。とくに、虚偽の主張、あるいは国際的な保健機関や地元の衛生当局が警告を与えているかのような陰謀説が含まれている場合は削除する。これまでFBは、健康や医療に関する虚偽の情報への対策では投稿を削除することはなかったが、今回は異例の措置に踏み込んだ。

   CNN日本語(1日付)によると、アメリカのアザー厚生長官は31日、新型ウイルスによる肺炎をめぐり、公衆衛生上の緊急事態を宣言した。過去2週間以内に中国を訪問した外国人の入国を停止する方針。規制対象はアメリカ国民にも及び、過去2週間以内に中国・湖北省に滞在していた場合、最大14日間にわたり強制隔離する。緊急事態宣言はアメリカ東部時間の今月2日午後5時に発効する。

   こうしてニュースをチェックしていると、とくに欧米はウイスル感染に対して敏感で行動が素早い印象を受ける。イタリアでは30日に国内で感染者を確認し31日に非常事態を宣言。フランスは24日に感染者を確認し、31日にチャーター便で200人を帰国させている。エールフランスは今月9日までの運休を明らかにしている。イギリスもチャーター機で110人が31日に帰国している。

   世界史でも紹介される「黒死病」、今でいうペスト感染。14世紀、中世ヨーロッパの人口の3分の1が死亡したとされ、19世紀初頭まで繰り返しパンデミック(世界的流行)を引き起こしてきた。そのため、感染拡大のモデルとして欧米の人々の脳裏に遺伝的に刻まれているのだろうか。(※写真は、バチカン美術館のシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロの壁画「最後の審判」=2006年1月撮影)

⇒2日(日)午後・金沢の天気     はれ

★武漢の感染者数を推測

★武漢の感染者数を推測

   中国・武漢から日本政府のチャーター機1便から3便で帰国した邦人は合わせて565人。そのうちウイルス感染が判明したのは1便と2便の416人のうち5人だ。3便の149人の検査結果はまだ出ていないようだ。

   ここからは推論だ。1便と2便の416人のうち5人ということは、感染率が1.2%になる。衛生観念が割とあるといわれる日本人でこの感染率だ。では、この感染率を人口1100万人といわれる武漢の感染者数に落とし込んでみると、13万2千人になる。地元の人たちは濃厚接触が日本人と比べ物にならないほど多いだろうから、感染率を日本人の5倍と想定すると、実に66万人になる。

   きょう1日午前、中国の国家衛生健康委員会が公表した、中国全土の新型ウイルスによる肺炎の患者数は31日現在、新たに2102人増え1万1791人に。死亡者数は46人増えて259人となった(1日付・NHKニュースWeb版)。実際の数字はおそらくこのように生易しくはないだろう。

   ところで、WHOは31日(日本時間)「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言したが、渡航制限勧告は見送っている。日本をはじめアメリカ、フランスなど各国政府はすでに武漢から自国民をチャーター機で帰国させているのに、である。WHOによる宣言後の記者会見で、緊急委員会のフサン委員長は「飛行機で自国民を呼び戻している国もあるが、それは呼び戻した後にさらなる感染を防げるという自信がある国だ。全ての国ができるわけではない」(31日付・日経新聞Web版)で皮肉ともとれる発言をしている。

   そもそもWHOが23日の緊急会合で「時期尚早」と緊急事態宣言を見送ったこともあり、各国政府ができる範囲で独自に対策を取った。そして、日本政府はきのう(31日)武漢を含む中国・湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否する方針を発表した。当然の措置なのだが、WHOとすれば渡航制限の勧告をしていないのに何だと苛立っているかもしれない。

   どこか、WHOに処し方にインシュラリティ(insularity)、頑なさや偏狭性を感じるのは自身の誤解だろうか。(※写真は、感染者の退院の様子を伝える中国・武漢市のホームページ)

⇒1日(土)午後・金沢の天気    くもり

☆WHO流、中国のへの気遣い

☆WHO流、中国のへの気遣い

  「WHO declares the new coronavirus outbreak a Public Health Emergency of International Concern.」(WHOは新型コロナウイルスの発生を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態として宣言する)。けさ(31日)WHOのホームページをチェックすると、トップページ=写真=で掲載されていた。今さら遅い、と思わないでもないが、国際機関が動き出すことで、収束への口火が切られたようにも感じる。

   宣言後の記者会見(日本時間で31日未明)の模様が報じられている。テドロス事務局長はこう述べている。

新型の病気が過去にないほどの大流行につながっている。だが、中国の対応も過去にないほど素晴らしい。中国の尽力がなければ中国国外の死者はさらに増えていただろう。中国の対応は感染症対策の新しい基準をつくったともいえる」「この理由で緊急事態を宣言する。中国への不信感を示したわけではない」「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(31日付・日経新聞Web版)

   確かに中国では、今月20日に習近平国家主席が情報を直ちに開示するよう関係部門に求め、「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めよ」と直接指示をした。これが新型ウイルスへの国家的な取り組みの弾みになったと言える。それにしても、「中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」の言葉は、近隣国の感覚と相当ずれている。中国が団体観光の渡航制限(27日以降)をしたことを指すのだろうが、それが「感謝」に値することなのだろうか。

   ただ、「中国に感謝しなければならない」のはWHOであるという意味ならば理解できるが。事務局長の言葉からは、「ほめ殺し」や「忖度」というイメージがわく。

   もっと具体的に語ってほしかった点。「感染症対策の新しい基準をつくった」との意味はどういうことなのだろうか。リーダーシップと海外渡航禁止、麻雀や結婚式などの寄り合いの禁止が新しい基準なのか。よく理解できない。

⇒31日(金)朝・金沢の天気   くもり時々あめ

★コロナ・ハラスメント

★コロナ・ハラスメント

   中国・武漢からきのう29日、日本政府が用意したチャーター機で帰国した日本人206人のうち、男女3人が新型コロナウイルスに感染していることが確認された、とメディアが報じている。40代から50代の男女3人。このうちの2人は発熱などの症状はない、という。この新型ウイルスの怖いところはこの点ではないだろうか。症状はないが、キャリア(保菌者)であることは間違いない。

   気になったのは、帰国した206人のうち、2人はウイルス検査そのものに同意しなかったことだ。憶測だが、まったく症状がなかったので検査を拒否したのだろう。症状がないからと言って検査を拒否するケースが今後も続けば、帰国者全体にあらぬ誤解を生むことになるのではないだろう。

  その理由は帰国者については匿名であることだ。誰が拒否したのか一般には分からない。すると全員を疑わざるを得なくなる。検査を強制する法律がないので、2人は拒否したのだろうが、帰国者全体に迷惑をかけてしまうことになる。ただ、来月7日に新型ウイルスを「指定感染症」や「検疫感染症」とする法律が施行されると、検査に法的拘束力が生まれる。

   新型ウイルスの勢いは止まらない。先ほど中国国家衛生健康委員会が発表した数字は、中国本土で感染者は7700人余り、死亡者は170人になった。チベットでも初めて感染者が出て、中国の31省・自治区・直轄市のすべてで感染者が確認されたことになる。これは把握できた数値であって、感染者と死亡者はもっと多いだろう。

   これだけ感染が広がると、世界の論調は新型ウイルスは「アジアの疾病」だとして、ヨーロッパやアメリカではアジア人に近づくなという雰囲気が蔓延しているのではないか。欧米人にとっては、中国人や韓国人、日本人の顔による区別はつけにくい。そこで、アジア人に近づかないことが最大の予防だ、となる。アジア人に対する、偏見や誤解、そして差別を拡散することに。まさに、コロナ・ハラスメントだ。

   この状況をつくり出しているのは、率直に言って、WHOだと思っている。感染状況が国際的に拡大し、他の国に公衆衛生上の危険をもたらしているにもかかわらず、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を未だに宣言していない。今月23日のWHO会合では時期尚早との判断だった。この判断が間違っていたことは、現状を見れば誰もが思うだろう。

   今頃になって、WHOが焦り始めている。健康危機管理プログラムのトップの言葉を29日付のBBCが引用している。「Coronavirus: Whole world ‘must take action’, warns WHO」(コロナウイルス:全世界が警戒しなくてはならない、とWHOが警告)=写真=。記事の中で、テドロス事務局長は新型ウイルスが世界に及ぼす危険性について、報告書で「高い」とせず「中程度」としたことに言及し、「深く後悔している」と述べている。何を今さらと言うべきか。

⇒30日(木)午後・金沢の天気     あめ

☆問われるWHOのスタンス

☆問われるWHOのスタンス

  WHOは機能不全の状態に陥っているのではないか。おそらく今後、国際世論の批判の目はWHOに向かう。中国政府はきょう25日、コロナウイルスによる国内の肺炎の死者数は41人、患者数は1287人と発表した。春節の大移動でフランスやオーストラリアでも初めての感染者が確認されるなど世界的に拡大している。WHOはいったいどう対処するのか。

      WHOは疾病のコロナウイルスのパンデミックを防ぐため、感染状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断すれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。が、23日のWHO会合では時期尚早との判断だった。

   では、なぜ時期尚早との判断なのか。中国にとっては非常に不名誉なことになるのと中国指導部は考え、WHOが緊急事態宣言を出さないよう根回しをしたのであろうことは想像に難くない。このWHOの判断については世界のメディアがその決定過程のプロセスについて注目するだろう。

        すでに一部メディアでは以下の論調もある。WHO憲章は人種、宗教、政治信条などの差別なしに「すべての人々が最高水準の健康に恵まれる」権利を定めるが、テドロス事務局長は中国から巨額投資を受けるエチオピアの元保健相なので、政治的理由で中国に配慮している(25日付・産経新聞Web版)、との見方だ。

         時期尚早との判断では、中国以外の国で確認された感染者は12人と比較的少ないというのが、「国際的な非常事態」の宣言を見送った理由の一つだった。WHOのテドロス事務局長は、「これから非常事態になるかもしれない」とも述べていたという(24日付・BBCニュースWeb版日本語)。感染はすでに世界に拡大している。「China coronavirus: Death toll rises as disease spreads」(中国のコロナウイルス:病気が広がれば、死者も拡大する)。きょう25日のBBCニュースWeb版の見出しだ。ならば、WHOは今の事態をどう受けて止めているのか。

⇒25日(土)午後・金沢の天気    くもり

☆WHOの緊急事態宣言の行方

☆WHOの緊急事態宣言の行方

        中国・武漢で新型のコロナウイルスによる肺炎は22日までに感染者540人、死者は17人に上ると今朝のニュースで報じられている。一連の関連ニュースで気になっていたのは、20日に習近平国家主席が情報を直ちに発表するよう関係部門に直接指示を出したことだった。習主席の指示は「感染拡大に関する情報を直ちに発表し、科学的な予防知識を広めよ」と求めたという(20日付・NHKニュースWeb版)。当時は感染者130人、死者は1人だった。この時点でなぜ国家主席が直接指示を出したのだろうか。

   その背景には中国が悪名を買った、例の2003年の新型肺炎SARS問題があるのではないかと察した。当時は徹底的に情報を隠したことで感染を広げ、患者8100人、770人余りが死亡したとされる。この教訓から、国家主席自ら情報開示を強化する姿勢を強調したのだろうか、と推測していた。

   ふと考えたのは、これは「WHO対策」ではなかったのか、と。WHO(世界保健機関)が22日にジュネーブの本部で緊急会合を開き、コロナウイルスへの対応を協議することを発表した日が、習主席が指示した日と同じ20日なのだ。

   ここからはあくまでも推測だ。WHOが緊急会合を開き、新型コロナウイルスの状況が国際的に拡大、他の国に公衆衛生上の危険をもたらし、国際的な対策の調整が求められると判断されれば、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として、事務局長が緊急事態を宣言することになる。この緊急事態は、WHOが2003年の中国のSARS問題を教訓に2005年に国際保健規則を改正して設けた条項だ。

   直近では、2019年7月にエボラ出血熱がコンゴやウガンダで拡散したときに緊急事態宣言が出されている。では、もしこの宣言が武漢のコロナウイルスについて出されるとどうだろう。中国にとっては非常に不名誉なことになる、と中国指導部は考えるだろう。緊急事態宣言が出されると、WHOの事務局長は加盟国に対し勧告を出すことになる。すると、加盟国は「2003年問題と同じことをやっている。中国のガバナンスはいったいどうなっているのか」とささやき始めるだろう。

          中国とすれば、国家主席の直接指導で、コロナウイルスの感染拡大の阻止に全力を挙げているので、緊急事態宣言は必要ないとWHOにアピールしたかったのではないだろうか。22日のWHOの緊急会合では結論が出ず、23日に継続協議となった。中国側もWHOに対し必死の根回しをしているのではないか。緊急事態宣言の行方に注目したい。

⇒23日(木)午前・金沢の天気     あめ