⇒ニュース走査

☆学校閉鎖、NHK-Eテレの出番だ

☆学校閉鎖、NHK-Eテレの出番だ

   突然の「学校封鎖」という決断は誰のアイデアなのだろうか。きのう安倍総理が記者会見で、来月2日から全国すべての小・中学校と高校、特別支援学校に対して春休みに入るまで臨時休校とする要請を行うと発表した。保育所や幼稚園、子どもたちを放課後に預かる学童保育は含まれていない。

  確かに、学校は互いに近い距離の中で生活をともにするため、感染しやすい環境の一つだ。学校で感染した子どもが家庭に戻ると今度は同居する家族、特に祖父母にうつすリスクがある。学校はある意味でもっとも警戒を要する場所であることは間違いない。それにしても、この突然の学校封鎖は大胆な政治判断ではなのだろうか。専門家会議が議論し下した方針ではないようだ。

  学校の教育現場が閉鎖されるということは教育の時間損失にもつながる。この事態を受けてNHK活用を提案をした人がいる。きょういただいたメールマガジンでなるほどと思ったので紹介したい。発信者は『月刊ニューメディア』の吉井勇編集長。以下引用する。

            ◇

 NHKにはEテレがあります。しかも3月1日から「NHKプラス」というスマホやタブレット、PCで視聴できるサービスが始まるわけで、放送の視聴だけでなく、見逃した番組を自分の都合で視聴できるものです。この放送と通信の両方ができることを、自宅で待機する子どもたちの学校教育のサポートとして展開することを考えられませんか。Wi-Fiの普及もあり、スマホも多く、パソコンもあります。もちろん放送を見るテレビもあります。しかも、一定の地域対応も可能な仕組みもあります。

   また、子どもたち同士が連携するインタラクティブな機能を生かすこともできそうです。ですから、今のEテレを「ウチでみんなと勉強」というチャンネルを用意してはどうか。地デジは1chでHD放送していますが、SD画質で3ch、HDでも2chの放送ができます。ですから、低学年や高学年、中学生とか、年代別とかの番組を放送・配信する体制を一気に用意することはできませんか。

   すぐに3月2日から、子どもたちはどう過ごすのか。外へ遊びにも行けない。この子どもたちが抱える空白をどうするのか、に直面するのです。ただ、テレビを通じた教育は、単なる教室の黒板授業を映しているだけでは飽きてしまいます。NHKにはチコちゃんのように、子どもから大人まで楽しめる番組のノウハウがあり、Eテレにはユニークなテーマづくりや内容の番組も多くあります。優れたノウハウのあるプロデューサーやディレクターがいらっしゃいます。

   全国で生まれる時間を持て余す子どもや家庭へ、NHKの持つリーチ力、NHKプラスの時間を越え、自分でいつでも何度でも楽しめる自在性を生かしていくことはできないのでしょうか。まさに、NHKの出番だと思ったのです。

             ◇

  タイミングよく、来月1日からNHKは放送と通信の同時配信の試験配信をスタートさせる。同時配信では見逃した番組も見ることができる。NHKが子どもたち向けに教育効果が高い番組(過去の番組など)を特集して、それを子どもたちが選んで視聴する。その感想文を学校の担任にメールで送る。感想文は学年ごとたとえば、1年生は50字前後、2年生は100字前後、など。担任はレスポンスを返信する。それだけでも教育効果があるのではないか。テレビを教育に活かすチャンスでもある。受信料問題は別として、NHKにとっても同時配信を国民にアピールするチャンスでもあると考えるのだが。

⇒28日(金)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

★黄砂が運んでくるもの

★黄砂が運んでくるもの

           共同通信Web版によると、週明け24日のニューヨーク株式のダウは急落し、1031㌦安い2万7960㌦で取引を終えた。1000㌦の下げは2018年2月以来の大きさだ。このときは、アメリカの金利上昇による株価急落と各国の連鎖的な株安が原因だった。ところが、今回は新型コロナウイルスという、見えない恐怖に世界が身構え始めたということだろうか。さてこの後、午前9時から始まる東京株式はどうなるのか。

   昨日(24日)自身が不気味さを感じたことがある。JR金沢駅周辺の駐車場で一晩停めていた自家用車のフロントガラスが黄砂で白くなっていた。黄砂は中国大陸から飛来する。飛んでくるのは砂だけではない。微生物なども混じっている。「黄砂バイオエアロゾル」ではないかと。

   金沢大学でも能登半島の先端で大気観測の拠点づくりを2008年から始め、無人の気球を上げて上空の大気の採取などを行っている。その現場を見せてもらったことがある。重さ2㌔の採取機器をビニール製の気球に取り付けて、上空850㍍から1㌔でおよそ1時間にわたって粉塵などを採取する=写真=。その中で発見される大気中微生物、つまりバイオエアロゾルは数千種類も及ぶという。

   黄砂は日本から4000㌔も離れた中国大陸のタクラマカン砂漠や、そしてゴビ砂漠から偏西風に乗ってやってくる。金沢大学の研究者の中には、食品発酵に関連する微生物が多いこと気づき、大気中で採取したバチルス菌で実際に納豆を商品化した研究者もいる。その納豆の試食会でご相伴に預かったが、日本の納豆文化はひょっとして黄砂が運んできたのではないかとの解説に妙に納得した。

   しかし最近は、黄砂の飛散と同時にPM2.5(微小粒子状物質)の日本での濃度が高くなったりと環境問題がクローズアップされている。加えて今回、偏西風に乗って湖北省武漢市の空気も運ばれてくるかもしれないと思うと、複雑な思いに駆られる。国境を越えて新型コロナウイルスも運ばれて来るかもしれない、と。こうなると防ぎようがない。ひたすらマスクをするしかない、のだろうか。

⇒25日(火)朝・金沢の天気   あめ

☆コロナショック 中国政治を揺さぶる

☆コロナショック 中国政治を揺さぶる

   共同通信Web版(24日付)によると、中国政府は新型コロナウイルスの感染で23日に新たに150人が死亡し、中国全体で死者は計2592人になったと発表した。感染者も新たに409人増え全体で計7万7150人となった。中国メディアの報道によると、WHOによる調査チームが23日までの2日間、湖北省武漢市を訪れ、現地の病院のほか、体育施設に設置された「野戦病院」方式の臨時病院などを視察したという。

   さらに、きょう24日午前中から北京で国会に相当する全国人民代表大会(全人代)の常務委員会が開かれ、日程などについて審議している。全人代は来月5日から始まる予定だったが延期を正式に決める模様だ。こうなれば、4月上旬で日程調整が進めている習近平国家主席の国賓来日も延期が不可避となるだろう。一連の政治日程の延期が正式に決まれば、コロナウイルスが中国経済だけでなく、いよいよ政治にも打撃を与えたと世界のメディアは喧伝するだろう。

   その次にくる中国の動きは、政治リーダーである習氏の責任問題ではないだろうか。2018年3月の全人代では、国家主席の任期を「2期10年」までとする規制を撤廃する憲法改正案を採択している。習氏は2期目が終わる2023年以降も続投できるようになっている。自分で決めた規制の撤廃なので、踏ん張って続投しなければならない。政治的には盤石さを増したかもしれないが、それが裏目に出ているのが現状だ。

   逃亡犯条例改定案をめぐって学生や民主派が台頭した香港。2019年11月に実施された区議会議員選挙で、政府に批判的な立場の民主派が議席の3分の2にあたる300議席を超える圧勝だった。ことし1月11日の台湾の総統選挙は現職で与党、民進党の蔡英文氏が最大野党の候補者に圧勝した。台湾の民意は、中国との統一を拒否する蔡氏に大きく傾いた。そして今回の新型コロナウイルス問題である。2500人を上回る死亡者を出している。この逆風続きで問われているのは政治的なリーダーシップではないだろうか。

   リーダーがカリスマであればあるほど、いったん逆風が吹きだすと民意も荒れる。踏ん張らざるを得ない習氏にとって、任期撤廃は薬なのか、毒なのか。

⇒24日(月・振休)午前・金沢の天気    はれ

★コロナショック 「このご時世」

★コロナショック 「このご時世」

  コロナウイルスが身近に迫ってきた。きのう21日、石川県知事が記者会見を開き、50歳の県庁マンにウイルス感染が見つかったと公表した。男性は金沢市在住で現在、市内の病院に入院している。県内では初めての感染者となる。

  報道によると、男性は今月12日から14日に東京出張、16日に38.3度の発熱やせきなどの症状を訴えて病院に出向いた。17日に別の病院で受診し、解熱剤で一時熱が下がったが、再発して19日にさらに別の病院に行った。20日に倦怠感があり、さらに別の病院で検査を受けたところ肺炎と診断された。この時点でコロナウイルスの可能性が指摘され、21日の遺伝子検査で陽性と判明した。記事を読んで、4つの病院を経て陽性判明にたどりついた男性の執念を感じる。診察に納得いかなかったのだろう。

  石川県の新型コロナウイルス感染の第一号となった男性はどこで感染したのか。東京出張中なのか、新幹線の中での感染なのか。せきやくしゃみで飛び散る飛沫感染なのか、あるいは、空気中を漂う微生物に乗ってうつるバイオエアロゾル感染なのか。

   県内感のニュースが流れたせいか、きょう午前中に小松市で開催されたシンポジウムの参加者はマスク姿が目立った。自身も今季初めてマスク姿で参加した。今月29日から家族の一人が京都へ研修旅行に行く予定だったが、主催者側からきょう中止の連絡があった。念入りに準備をしていただけに、主催者側に「今度はいつあるのですか」と問いかけたが、「このご時世ですので、何とも申し上げられません」とつれない返事だったようだ。

   遠くの出来事だと考えていたコロナウイルスがこのように身近に迫って来ると、なんだか落ち着かない。「このご時世」と浮足立つ世の中で、自らはいったい何をすべきなのか焦燥の念にかられる。思考停止状態と言ってよいかもしれない。まったく不思議な感覚だ。

⇒22日(土)夜・金沢の天気    あめ

★ウイルス感染、とめどない波及

★ウイルス感染、とめどない波及

       日本は世界で第2位のコロナウイルス感染国だ。報道によると、日本での感染者は中国からの旅行者を含め70人、クルーズ船の乗客乗員が621人、チャーター機での帰国者が14人と、合計705人となった。世界は過敏になっている。そろそろ「日本に行くな、日本から来るな」の大号令がかかるのも間近ではないだろうか。 

   知人からきのう届いたメール。「コロナウイルスのために、孫の中学生の修学旅行が延期になったようだ。こんなことじゃ、日本の経済は危ないよ」と。知人は石川県加賀市に住む。修学旅行は5月に2泊3日で京都や大阪、広島に行く予定だったが、9月以降に延期されたようだ。知人が言うには、ウイルス感染を極度に恐れて、国民全体の消費マインドも急速にしぼんでいると案じている。

   これは元同級生の知人の話。来月8日に能登半島の七尾市で予定されていたマラソン大会が中止となった。知人は10㌔コ-スに応募していた。本人にとって、今回は10回連続の「記念出場」だったので、「しかたないのかな。でも、他では実施に踏み切った大会もある」とぼやく。

   私の職場でもある金沢大学でもウイルス感染に対する措置が取られた。ホームページで今月25日から始まる前期日程の試験について、受験生がウイルス感染した場合、ほかの受験生の感染を防ぐことを最優先にするため受験を認めない方針を決め、ホームページで発表した(18日付)=写真=。

   「一般入試(前期日程・後期日程)受験者 各位」と題したページにこのように説明している。「令和2年2月1日に、新型コロナウイルス感染症は、政令により『指定感染症』及び『検疫感染症』に指定され、学校保健安全法施行規則が規定する第一種の感染症とみなされました。本学では、新型コロナウイルス感染症等に罹患し治癒していない者は、他の受験者への感染の恐れがあるため、本学の入学試験を受験できませんので、御注意ください。なお、追試験等の特別措置は現時点では予定しておりません。」

   今月3日付で文科省は各国公立大学と私立大学に対し、受験生の進学の機会の確保を図る観点から、振り替え受験の実施や大学入試センター試験を参考にして合否を判定するなど、柔軟な対応をとるよう通達している。しかし、来週に迫る国公立の入試では日程的に、そして公平性の観点からもそのような措置が現実に取れないのが実情だろう。

   一方で、受験生の気持ちになって考えると、この日のために努力してきたので、少々熱があっても病院に行くことなく試験会場に行くのではないだろうか。

   このとめどないウイルス感染の余波、経済や暮らしに影響が出始めている。

⇒19日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆コロナウイルス 「利と理の勘定」

☆コロナウイルス 「利と理の勘定」

   新型コロナウイルスの感染拡大の影響は多方面に及んでいる。きのう17日に届いたメールだ。ある証券会社が主催するセミナーの案内が中止という連絡だった。

   「お世話になっております。昨今の新型コロナウイルスの影響で本社で検討の結果、2月29日(土)の弊社、金沢支店での渋澤健氏のセミナーを中止しなければならないことになってしまいました。人数も100名を超え、楽しみにしているとのお声をたくさんいただき、私も入社以来の興奮で楽しみにしておりました。断腸の思いでございます。しかしお客様を守る観点から中止という決定になりました。大変なご迷惑をお掛けする結果となってしまい大変申し訳ございません。」

    渋澤健氏は、2024年度から福沢諭吉に代わって一万円札に登場する、日本資本主義の父といわれた渋沢栄一の子孫にあたる投資家。今月29日の金沢でのセミナーで「SDGs持続可能な地域を子どもたちへ~『起業家』による価値創造と『投資家』の役割~」と題して講演する予定だった。100人以上の申し込みがあったというから、楽しみにしていた人たちも多かったのだろう。ところがコロナウイルスによって、その楽しみが砕かれた。  

   この証券会社は金沢支店だけでなく、17日以降は個人の顧客を集めて各地の支店などで開いている株式や投資信託、それに資産形成をテーマにしたセミナーを中止する。来月末までに200件近いセミナーを予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大が収まる見通しになるまで、開催を見送ることにした(17日付・NHKニュースWeb版)。このほか、他の金融機関も来月末まで個人向けの投資セミナーの開催を見送ることを決めている。

   このメールでの知らせを読んで、さすがに証券会社は計算高いとの印象だった。開くことの利よりも中止するという理の方が勘定にあっているのだ。お客さまにはいっさいのリスクはとらせません、それはコロナウイルスも投資も同じです、と。

⇒18日(火)朝・金沢の天気     くもり時々ゆき

★コロナショック、「5G元年」の出鼻くじく

★コロナショック、「5G元年」の出鼻くじく

           知人からも誘いを受け、一度は行ってみたいと思っていたMWCがコロナウイルス感染の拡大で中止になったと聞いて驚いた。何しろ開催地は地球の遠方のスペイン・バルセロナ。そして、MWCはモバイル・ワールド・コングレス、世界モバイル展である。日本にとっては、「5G元年」に当たることから注目していた業界や関係者も多かったはず。まさに、コロナ感染で「5G元年」の出鼻がくじかれたと思っている関係者も多いのではないか。

   MWCは、毎年この時期にバルセロナで開かれていて、世界の通信関連企業がスマホや5Gなど最新の技術やサービスを展示する場として知られる。今年は今月24日から27日まで開催される予定だったが、コロナウイルスの感染が拡大する中での開催となることから、主催者は会場の消毒を徹底するとともに参加者に握手を控えるよう求めるなど対策を講じていた。

   ところが、12日になって主催者側はコロナウイルスに対する世界的な懸念の高まりから開催は不可能と判断し、開催を取り止めを発表した。報道によると、ソニーやNTTドコモのほか、韓国のLG電子、スウェーデンのエリクソンといった代表的な企業が「従業員や来場者の健康を守るため」などとして相次いで出展を見送った(13日付・NHKニュースWEB版)。

          おそらくMWCの開催中止で一番ショックを受けているのは中国の最大手通信機器「ファーウェイ」ではないだろうか。前回参加した知人からのリポート。「同社が誇るチップから中継、送信のトータル提案が、整理されてプレゼンされています。ネットワーク構築のAIを生かした効率の良い支援体制も用意されていました。5Gの技術では、世界のリーダー、それを印象づけるものでした。ブースで説明する人たちも自身満々です。制裁措置など、お構いなし。5G対応のチップを独自で開発し、それを生かした5Gネットワークの構築という分野で、その技術力を見せつけた、そんな印象でした」

   ここからは憶測だ。上記のリポートで描かれているように、MWCで張り切るのはファーウェイを始めとする中国の関連企業群なのだ。口角泡を飛ばすようなにぎやかな雰囲気なのだろう。ソニーやNTTドコモ、LG電子、エリクソンといった企業が辞退したのも、中国の関連企業から参加するスタッフからのウイルス感染を恐れたのではないだろうか。

   世界最大規模と評価が高い展示会の中止は今後、世界の展示会に波及するかもしれない。東京オリンピック・パラリンピックの開催のゆくえも気になる。

⇒13日(木)朝・金沢の天気   あめ

☆コロナ感染、アメリカの異常警戒の背景

☆コロナ感染、アメリカの異常警戒の背景

      新型コロナウイルスの感染拡大は止む気配がない。報道によると、中国・国家衛生健康委員会は新型コロナウイルスによる中国本土の死者が1113人、感染者が4万4653人になったと発表した(12日付・共同通信Web版)。厚生労働省はきょうクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船者のうち新たに39人の感染が判明し、さらに検疫官1人も感染したと発表している。言葉は適切ではないかもしれないが、検疫官も巻き込みウイルス感染との戦いがまさにドロ沼化している。

   ニューヨーク・タイムズWeb版(2月6日付)=写真=で気になるが記事が出ている。「China’s Lavish Funds Lured U.S. Scientists. What Did It Get in Return?」。記事を要約すると、アメリカのハーバード大学教授が中国政府からの学術・研究協力の名目で多額の研究資金などを受け取っていたことを報告していなかったとして、アメリカ司法省は1月下旬、教授を「重大な虚偽、架空請求、詐欺」の容疑で訴追(逮捕は2019年12月10日、その後、21種類の生物学的研究を中国に密輸しようとした罪で起訴)していた。捜査当局はアメリカの71機関で、中国当局によって180件もの知的財産権が盗用された疑いがあるとして捜査を行っている。

   教授はハーバード大学化学・化学生物学部のチャールズ・リーバー氏で、ナノサイエンス・ナノテクノロジーの分野で世界最先端の研究を行っている化学者。リーバー氏は中国の武漢理工大学の「戦略科学者」として2011-16年までの雇用契約を結び、5年間で毎月5万㌦(540万円)の研究費と年間15万㌦(1620万円)の生活費を支給されていた。

   リーバー教授には「武漢理工大・ハーバード大共同ナノテクノロジー研究所」の設立費として150万㌦(1億6200万円)の資金も提供されていた。アメリカ司法省は、リーバー教授が中国側と契約を結んでいた時期と、アメリカ国防総省と国立衛生研究所から研究資金を受け取っていた期間が重なっていることを問題視した。

   注目したいのは、リーバー教授が中国と、アメリカ国防総省と国立衛生研究所からダブルで研究資金を受け取っていたころ、武漢理工大学に出向いていたことだ。教授はアメリカ国防総省と国立衛生研究所からの受託でどのような研究をしていたのか。単純に、生物化学兵器を連想させるのだが。そして、武漢理工大学でどのような研究をすることで、高額な所得を得ていたのだろうか。研究と言うより、ひょっとして生物学的研究の中国への持ち込みだったのか。

   アメリカはコロナウイルス感染に当初からきびしく対応している。今月2日から実施している3項目は、中国からの外国人の入国を一時的に禁止(過去14日以内に中国を旅行した外国人対象)、湖北省・武漢から帰国したアメリカ国民の強制隔離(2週間)、過去14日以内に湖北省以外の中国から帰国したアメリカ国民は2週間の監視付き自宅隔離。ヒトとヒトの感染が猛威を振るうことをあらかじめ見通していたかのような対策である。

   リーバー教授の生物学的研究の中国への密輸で逮捕・訴追、武漢理工大学での研究、武漢でのコロナウイルスの感染拡大、アメリカのスピーディな対応、どのような関連性があるのか。果たして一体化したストーリー展開はあるのか。偶然の出来事、なのか。

⇒12日(水)午前・金沢の天気     はれ

★ホスピタリティのプロ対応

★ホスピタリティのプロ対応

    1000人の大台が間近になってきた。肺炎を引き起こす新型コロナウイルスによる死者が中国で91人増え、中国全土の死者は計902人となった。感染者も全土で3万9000人となった(10日付・共同通信Web版)。収まる気配がない。

   TVメディアなどが連日報じている、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で新たに6人の感染を確認され、乗客乗員の感染者数は計70人となった(同)。「ダイヤモンド・プリンセス」のニュースで目を引いたのは、クルーズ船の運航会社「プリンセス・クルーズ」(本社:アメリカ・サンタクラリタ)は、集団感染が発生した今回のクルーズでの旅行代金を全乗客に全額払い戻し、無料にすると明らかにしたことだ(10日付・産経新聞Web版)。

   記事によると、同社は9日夜、船内の客室で待機する乗客に社長のメッセージを配布し、クルーズの旅行代金だけでなく、クルーズ前後の航空費やホテル宿泊費、送迎料金、オプションの寄港地での観光ツアーなども含め、今回の旅行で乗客が支払った全ての代金を全額を払い戻すとした。検疫下に置かれた待機期間中の費用も請求しないとしている。「ストレスを少しでも緩和できるよう願っています」との社長メッセージが添えられている。

   単なる太っ腹ではない。利益より客にストレスを与えないことを最優先するという、ある意味で「もてなし」と察する。もてなしはホスピタリティ(hospitality)と訳される。欧米のもてなしは癒しが言葉のルーツだ。サービス(service)は役に立つことや奉仕 、供給などの意味はで解釈されるが、ホスピタリティとはニュアンスが異なる。

   プリンセス・クルーズ社は現状の隔離状態によって、乗客に精神的な苦痛で与えていると相当重く受け止めたのだろう。しかし、現状では我慢を引き続きお願いするしかない。そこで金銭的な負担を一切かけないことで、ストレスを少しでも和らげる客対応に打って出た。乗客とすれば、会社側が大幅な経営赤字になることを覚悟でメッセージを丁寧に届けてくれたことを評価するだろう。「プリンセス・クルーズ社は私たちと痛みを分かち合ってくれている」と。こうした相互の信頼関係の構築がストレスの緩和になるのは言うまでもない。

   混乱の中での冷静な対応に、プロ意識を感じる。ウイルス感染の暗いニュースの中で心が和らぐ物語ではある。(※写真はプリンセス・クルーズ社のホームページより)

⇒10日(月)午前・金沢の天気    くもり時々ゆき

☆そのマスク姿が次なる風評被害に

☆そのマスク姿が次なる風評被害に

   ついに「SARS」を超えてしまった。中国・湖北省の保健当局は8日現在で、新たに89人が死亡したと発表した。中国全体での死者の数はこれで811人となった。2002年から2003年にかけて流行した新型肺炎「SARS」の世界全体の死亡者数が774人だったので、これを超えたことになる。感染者は中国全体で3万7千人となった(9日付・共同通信Web版)。

   中国は隔離や検疫などの対策を施しているが、ウイルスの封じ込めには至っていない。イギリスBBCのWeb版をチェックすると、日本の感染者は86人で中国に次いで2位。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で「隔離」されたマスク姿の日本人女性が日本の国旗に「くすり ふそく」と書いて訴える姿が紹介されている。アメリカCNNのWeb版では香港でのマスク姿の群衆が掲載されている=写真=。

         このような世界のニュースをチェックして気になるのは東京オリンピック(7月24日-8月9日)とパラリンピック(8月25日-9月6日)への影響だ。2002年11月に中国・広東省で発生したSARSが終息したのは翌年7月だった。足かけ9ヵ月かかっている。新型コロナウイルスの発生は昨年12月とされるので、SARSと同じ長さの流行期間と仮定すれば終息は8月だろう。

   冒頭で述べたようにコロナウイルスはSARSを超える勢いだ。日本人の感覚からすれば、「それは中国での数字でしょう」となるが、世界の目線からだと、東アジアでひと括りの話になる。ましてや今回のウイルス感染で、世界中に映像で広がった「マスク姿」はウイルス感染のシンボルになった。

   気になるのが、ウイルス感染がなくても、普段でも東京はマスク姿が目立つ。この夏に東京のマスク姿が世界に流れたらどうなるだろう。「東京ではまだウイルス感染が終息していない」との風評被害を拡散させることになるのではないか、と案じたりもする。

   WHOが終息宣言を出さない限り、東京オリンピック・パラリンピックの開催は無理だろう。早めに競技会場入りをする選手たちはもっとナーバスになっているに違いない。

⇒9日(日)午前・金沢の天気   くもり時々ゆき