⇒ニュース走査

☆米中の架け橋失われる キッシンジャー氏が死去

☆米中の架け橋失われる キッシンジャー氏が死去

   「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)」という言葉を知ったのは半世紀も前、高校生のときだった。アメリカの大統領補佐官だったヘンリー・キッシンジャー氏が1971年7月に密かに中華人民共和国を訪れ周恩来首相と会談し、その後「来年2月にニクソン大統領が訪中する」と発表し、世界をアッと驚かせた。そのとき、日本のメディアも盛んに「アメリカのバランス・オブ・パワー」と取り上げた。当時、アメリカの最大の敵だったソ連より優位な地位を保つための現実主義的な外交で、「キッシンジャー外交」と評された。その後、ニクソン訪中が実現し、79年1月の国交正常化につなげた。

   ダイナミックな外交と裏腹に、予期せぬ事態も起きた。キッシンジャー氏がニクソン大統領の中華人民共和国への訪問を公表すると、国連がにわかに動いた。中国の場合、もともと常任理事国は第2次世界大戦の戦勝国である国民党の中華民国だった。それが中国共産党に追われ台湾に逃れた。71年10月にいわゆる「アルバニア決議」が国連で発議され、中国の代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国は常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。中華人民共和国が国連に加盟し、台湾の常任理事国を引き継ぐことになった。アルバニア決議にはアメリカも日本も反対した。(※写真はキッシンジャー氏の訃報を伝えるCNNニュースWeb版)

   リアリストであるキッシンジャー氏は、中国の発展を受け入れつつ、中国とうまく付き合いながら、アメリカへのショックを和らげるというカタチで米中の関係を取り持ってきた。ことし7月にも、米中の対立が続く中、北京を訪問して習近平国家主席と会談、11月15日に行われた米中首脳会談に向けた根回しをしたとされる。

   そのキッシンジャー氏が今月29日、死去した。100歳だった。米中関係の改善だけでなく、73年には泥沼化していたベトナム戦争の和平交渉をまとめ、ノーベル平和賞を受賞している。バランス・オブ・パワーに尽くした人だった。

⇒30日(木)夜・金沢の天気   くもり

☆北朝鮮の偵察衛星めぐる日本と米韓の認識の違い

☆北朝鮮の偵察衛星めぐる日本と米韓の認識の違い

   防衛省公式サイトによると、木原防衛大臣きのう24日の記者会見で、北朝鮮が今月21日に弾道ミサイル技術を使った衛星の打ち上げについて、「米国および韓国とも連携しながら分析を進めた結果、北朝鮮が発射した何らかの物体が地球を周回していることを確認した」と述べている。打ち上げが成功したかの評価は明言を避けている。防衛省は、22日に「これまで地球の周回軌道への衛星の投入は確認されていない」と発表。第三者はだれもが衛星発射は3回目の今回も失敗したと解釈していた。

   当事者の北朝鮮は、労働新聞Web版(22日付)などが軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した新型運搬ロケット「千里馬1型」を打ち上げ、「偵察衛星の発射に成功」と報じていた=写真・上=。また、韓国軍も「衛星は軌道に進入したものと見られる」との見方を22日に示していた(同日付・NHKニュースWeb版)。

   それが、24日になって木原大臣が「何らかの物体が地球を周回している」と述べ、記者からは「ここまで時間がかかった理由」について問われた。大臣は「北朝鮮が発射した何らかの物体が地球を周回している一方、当該物体が、北朝鮮が意図したとおりの機能を果たしているかといった詳細については、引き続き慎重な分析が必要」(防衛省公式サイト)と述べている。記者の質問に対してはダイレクトに答えておらず、じつに煮え切らない。

   ロイター通信Web版日本語(25日付)によると、 北朝鮮の金正恩総書記は24日、偵察衛星が撮影した「主要な標的地域」の写真を視察した。国営の朝鮮中央通信が報じた。主要な標的地域には韓国の首都ソウルやアメリカ軍基地がある都市が含まれている。写真は公表していない。また、NHKニュースWeb版(同)によると、アメリカ宇宙軍が運営する人工衛星の追跡サイト「スペーストラック」=写真・下=は、北朝鮮の軍事偵察衛星について衛星番号を割り当てた。衛星番号はアメリカ軍が人工衛星などの物体を管理するために割りふっている。

   アメリカは衛星番号を割り振って監視しているのに、なぜ日本の防衛大臣はあやふやな表現でその場をしのいでいるのか。北朝鮮は今後さらに偵察衛星を数発打ち上げて、標的地域の監視を強化するとしている。その先にあるのは現在休戦状態にある朝鮮戦争の再開ではないのか。そのために弾道ミサイルの精度を高め、偵察衛星網を拡充しようとしている。そのとき、日本はどう対応するのか。北朝鮮をめぐる日本と米韓の認識の違いがあらためて浮かび上がった。

⇒25日(土)夜・金沢の天気    くもり

★政治の師匠・森喜朗氏の二の舞い 馳知事の「五輪舌禍」

★政治の師匠・森喜朗氏の二の舞い 馳知事の「五輪舌禍」

   官房機密費を使ったIOC委員へのアルバムをめぐって、馳浩知事についての報道が連日なされている。話はさかのぼるが、馳氏への石川県民の評価は高かった。馳氏は金沢市の私立高校で国語の教員をしていたときにロサンゼルス・オリンピック(1984年)のレスリング競技グレコローマンスタイルのライトヘビー級に出場。予選敗退だったものの、高校教諭でありオリンピック出場選手として県民は誇りに感じたものだ。

   それが一転、翌年85年にジャパンプロレスに入り、87年には新日本プロレスに入団してリングで戦う。北陸の精神風土は保守的だ。「教員辞めて、プロレスラーになり下がった」という思いで受け止めた人も多かった。馳氏のタレント性を政治家として引き出したのが当時、自民党幹事長だった森喜朗氏だった。

   1995年7月の参院選で石川選挙区に森氏からスカウトされて立候補し、民主改革連合の現職を破り当選した。その後、タレント議員の巣窟のように称されていた参院から鞍替えして、2000年6月に衆院選石川1区(金沢)で初当選。03年11月の衆院選で敗れるものの、比例復活で再選。05年9月の衆院選で3選。14年12月の衆院選で6選を果たし、15年10月には文科大臣に就任した。

   ここまで実績を積み上げると、石川県における政治的な地位は不動となり、17年4月には自民党県連会長に就任。同年10月の衆院選で7選。そして、21年7月に来る知事選への意欲を見せ、次期衆院選に出馬しないことを表明。22年3月の知事選で 前金沢市長を僅差で破り当選した。森氏の支援を後ろ盾にしていることは言うまでもない。

   今回のアルバム発言を、政治の師匠・森氏の二の舞いだと評する人もいる。2021年2月、東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった森氏はJOC臨時評議員会で、「女性っていうのは競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて発言すると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。みんな発言される」と述べた。女性への差別的な発言であり、オリンピックへの女性参画の流れに逆行すると批判され、森氏は発言の責任を取って会長職を辞任している。

   森氏に続く馳氏のアルバム発言は「五輪舌禍」なのか。馳氏は聴衆を楽しませようとこの話をあえて持ち出したのかもしれないが、価値観の多様化や人権の視点から本人が込めた想いとは裏腹に誤解を生みやすい。そんな時代環境になっている。

⇒24日(金)夜・金沢の天気     あめ

☆「発言撤回」「ブログ認める」 馳氏のメディア裏投げ技か

☆「発言撤回」「ブログ認める」 馳氏のメディア裏投げ技か

   馳浩知事はプロレスラー時代、ジャイアントスイングが得意技だった。相手の両足を抱え込んで振り回し、放り投げるあの技だ。衆議員だった馳氏が2013年に官房機密費を使ってIOC委員105人のアルバムをつくり東京五輪の招致活動に使ったと講演(今月17日)で発言。その後、発言が問題視されると、「五輪招致に関する発言は全面撤回する。今後一切発言しない」と繰り返している。事実関係をきちんと釈明してほしいと望む石川県の有権者の一人とすると、まるでジャイアントスイングで放り投げられたような感覚だ。

   では、ブログをどうするのか。馳氏のオフィシャルブログ「はせ日記」は2013年4月1日付で、アルバムについて記載している。以下。

   「IOC委員への直接的な働きかけは、IOC憲章により、できない。できないけれど、間接的な働きかけと、東京開催の意義を伝播させるためのロビー活動を進める海外出張」などと述べ、「10時半」にアルバム業者の社長と打ち合わを行い、「15時20分、官邸へ。菅官房長官に、五輪招致本部の活動方針を報告し、ご理解いただく。・駐日大使館ごあいさつ訪問 ・国際会議出席 ・国際的なロビー活動 ・ともだち作戦 ・想い出アルバム作戦・・・・などなど」。そして、菅氏から「安倍総理も強く望んでいることだから、政府と党が連携して、しっかりと招致を勝ち取れるように、お願いします!」と発破をかけられた、と記載している。

   ブログを読むと、時系列で話が流れているので、じつに分かりやすい。メディア各社の報道によると、馳氏は22日に石川県庁で開いた補正予算案の記者会見で、「ブログに記載がある『想い出アルバム作戦』があったことは事実か」との記者の問いに、「その通り。ブログに書いてあることは事実だ」と答え、さらに「『想い出アルバム作戦』とはどういったものか」との問いには、「この五輪招致に関する問題については、先日の私の発言は全面撤回した。したがって五輪招致に関して、これ以上申し上げるつもりは全くない」と述べた。

   会見は1時間余り続き、「五輪招致に関しては今後一切発言しない」と38回も繰り返した(23日付・北國新聞)。しかし、ブログの記述に関しては「事実」と認めている。今回の馳発言が問題として指摘されるのは、官房機密費の使途について公の場で語ったことだろう。オリンピック招致のために1冊20万円のアルバムを105冊つくったことに違法性や不正があるわけではない。一度語ってしまったことは認めて、事実関係を釈明すればよいのではないか。なのに、発言は撤回し、ブログは認めるという矛盾するような馳氏の思惑はどこにあるのだろうか。

   ひょっとして「裏投げ」か。発言は撤回するも片腕で相手の首の付け根を、ブログを認めつつもう片方の腕で相手の腰を抱えて、後ろに反り投げる。あえてメディアをかく乱させるテクニックなのかもしれない。

⇒23日(木)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

★北朝鮮が3度目の衛星発射 「成功」と賞する意義

★北朝鮮が3度目の衛星発射 「成功」と賞する意義

   それにしても考えてしまう。日付を予告していたにもかかわらず、なぜ予告を無視するのか。防衛省公式サイト(22日付)によると、北朝鮮は21日午後10時43分、北朝鮮北西部沿岸地域の東倉里(トンチャンリ)地区から、衛星打ち上げを目的とする弾道ミサイル技術を使用した発射を強行した。発射された1発は複数に分離し、1つ目は午後10時50分、朝鮮半島の西約350㌔の東シナ海上の予告落下区域外に落下、2つ目は沖縄本島と宮古島との間の上空を通過し、同57分に沖ノ鳥島の南西約1200㌔の太平洋上、予告落下区域内に落下したものと推定される。地球周回軌道への衛星の投入は確認されていない。(※写真・上は、22日付の北朝鮮の労働新聞Web版より)

   北朝鮮の弾道ミサイルの発射でとくに混乱したのは沖縄県の人たちだった。自身はテレビのニュース速報を視聴していたが、ミサイルが上空を通過し、Jアラート(全国瞬時警報システム)が発令され、サイレンとともに防災無線で避難を呼びかける放送が繰り返されていた。深夜に登庁した自治体の職員が被害など備えて対応に追われる様子が映し出されていた=写真・中、テレビ朝日「報道ステーション」より=。

   北朝鮮はことし8月24日にもトンチャンリ地区から、弾道ミサイル技術を使用した偵察衛星の発射を強行したが、防衛省は地球周回軌道への衛星の投入を確認していない。ことし5月31日にも衛星を打ち上げたが、エンジン異常で墜落。3回目となる今回も衛星打ち上げは失敗したとみられる。ところが、冒頭の労働新聞は、軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した新型運搬ロケット「千里馬1型」を打ち上げ、「偵察衛星の発射に成功」と報じている。

   そもそも、弾道ミサイル技術を用いたロケットの打ち上げは国連安保理事会決議に違反していることから、日米韓は共同で中止を要求していた。冒頭の話に戻るが、北朝鮮は22日以降に人工衛星を打ち上げると海上保安庁に通告していたので、期間前に強行したことになる。今回の発射は日米韓の意表を突く作戦なのだろうか。そして、ことし3回目の発射がまた失敗となると、国民の不満が沸騰するのであえて「成功」と言いくるめているのだろうか。

   深読みする。北朝鮮の金総書記はことし9月13日(日本時間)にロシアの「ボストーチヌイ宇宙基地」を訪れ、ロケットの組み立てや発射施設などを視察した。この場での首脳会談でプーチン大統領は、衛星の開発を支援する意思を明確に示した=写真・下、同日付・BBCニュースWeb版=。支援を受けた今回の発射でなんらかの進展があったのかもしれない。それをあえて金総書記は「成功」と賞し、次なる発射へとモチベーションを高めているのかもしれない。

⇒22日(水)午前・金沢の天気   はれ

☆大谷選手「ホームラン兜」と「ズワイガニ」の話

☆大谷選手「ホームラン兜」と「ズワイガニ」の話

   日本中がこの話題で盛り上がっている。アメリカ大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が、今シーズン、最も活躍した選手に贈られるMVPに選ばれた。MVPは全米野球記者協会に所属する記者30人の投票によって選ばれ、大谷選手は2021年に続いて投票した記者全員が1位票を入れる満票での受賞となった。満票で複数回MVPに選ばれるのは大リーグ史上初の快挙とのこと。

   ことし2023年という年は大谷選手が春から大活躍した。3月22日、WBC決勝戦「日本対アメリカ戦」。9回表で大谷投手はマイク・トラウト外野手を空振り三振で仕留め、日本優勝を決めた。この決勝戦はテレビ朝日が中継(放送枠・午前8時25分-午後0時8分)、平均世帯視聴率が42.4%(関東地区)という驚異的な数字だった。視聴率とともに大谷選手の人気もさらに高まった瞬間だった。(※写真・上はNHKニュースWeb版)

   大谷選手がかぶる「ホームラン兜(かぶと)」からイメージしたわけではないが、つい、金沢市内のスーパーで雄のズワイガニ「加能ガニ」を丸ごと購入した=写真・下=。それを、能登半島の伝統的な「どぶろくの里」で知られる中能登町で購入したどぶろくと味わった。

   ぴっちり締まったカニの身を、とろりとしたどぶろくが包み込むように食感をひきたてる。一匹丸ごとなので、脚を関節近くで折り、身を吸って出す。その音はパキパキ、ズーズー、その食べる姿はまるでカニとの格闘だ。いよいよ本体に食らいつく。甲羅を外し、カニみそ(内臓)をいただく。能登で生まれた自身にとって子どものころ、カニはおやつ代わりだった。カニみその味は懐かしい味でもある。

   満足度をさらに高めたのはどぶろくだった。どぶろくとこのカニみそがしっくりと合う。いまの言葉でいうと、「絶品マリアージュ」ではないだろうか。どぶろくは日本人の昔ながら酒。このカニを味わいながら、どぶろくを楽しんでいた昔の人々たちと時代を超えて食感が共有できたひと時でもあった。大谷選手おめでとう、そしてズワイガニをありがとうと心でつぶやきながら季節の味覚を楽しんだ。

⇒17日(金)夜・金沢の天気   あめ  

★ぬかるみの岸田内閣 外交の真価問われる拉致問題

★ぬかるみの岸田内閣 外交の真価問われる拉致問題

   岸田内閣はまるでぬかるみにはまったような状態だ。前回ブログの続き。防衛政務官の三宅伸吾氏が10年前、事務所の女性スタッフにセクハラ行為をした疑いがあると、15日付の「文春オンライン」が報じている。三宅氏は参院香川選挙区から出馬して現在2期目。文春の記事によると、被害女性は、初当選から間もなくの2013年8月に参院議員会館の三宅事務所にアルバイトとして入った。

   その年の10月に女性が仕事上の相談を三宅氏に持ち掛けたところ、食事に誘われ、西麻布のフランス料理店でディナーを共にした。さらに、2軒目に連れていかれたのは個室のカラオケ店。個室にはシャワー、トレイのほかに、大きな水槽が置かれていて、三宅氏は女性に「ここに来ると、女の子はみんな人魚になるんだよ」とささやいて、性的な加害を行った。女性はこの出来事がきっかけで事務所を退職した。

   記事について三宅政務官はきょう16日の参院外交防衛委員会で、「全く身に覚えがない。セクハラをうかがわせるような当時のメールのやり取りもなく、記事にあるようなセクハラの事実はないと確信をしている」と改めて否定。週刊文春に対し、弁護士を通じて抗議文を出したことを明らかにした(16日付・NHKニュースWeb版)。この文春砲が辞任ドミノへと展開するのか、どうか。

   それにしても、岸田総理は起死回生にどのような手腕を見せるのだろうか。横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されてから46年を迎えたきのう15日、岸田総理は拉致問題が解決していないことについて、「いまだ多くの拉致被害者の方々が北朝鮮に取り残されているということ。このことは痛恨の極みであり、そして大変申し訳なく思います」と記者団に述べた。また、岸田総理が意欲を示す、金正恩総書記との会談に向けた協議については「具体的に申し上げるのは控える」と述べるにとどめた(15日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。(※写真は、政府の拉致問題対策本部がつくったポスター。12歳のときの横田めぐみさんの写真)

   岸田総理に起死回生の一撃があるとすれば、北朝鮮の拉致問題だろう。2002年9月17日と2004年5月26日、日本の総理として当時の小泉純一郎氏が北朝鮮を訪れ、金正日総書記と2度会談した。金総書記は日本人の拉致を認め、国交正常化に向けた日朝平壌宣言に署名。5人の拉致被害者が帰国を果たした。しかしそれ以降、拉致問題に進展はない。憶測だが、外交の真価が問われる拉致問題に岸田総理はかなり傾斜しているのではないだろうか。「具体的に申し上げるのは控える」というコメントは実に意味深な言い回しと読めるのだ。

⇒16日(木)夜・金沢の天気   はれ

☆「負のスパイラル」に陥った どうする岸田内閣

☆「負のスパイラル」に陥った どうする岸田内閣

   岸田政権が発足したのは令和3年10月4日。初出廷のときは、メディア各社のカメラのフラッシュを浴びながら堂々と歩いていた=写真、総理官邸公式サイト=。あれから2年と1ヵ月、「辞任ドミノ」が吹き荒れている。今年9月の内閣改造で、岸田総理が「適材適所」で人事を決めた副大臣・政務官がこの3週間足らずで立て続けに3人辞任した。中でも有権者が憤りを高めたのが、所有する不動産の固定資産税などを滞納し、4回も土地と建物が差し押さえられていた神田憲次・財務副大臣だった。

   メディアの取材に、滞納の理由について神田氏は「事務所スタッフに任せていた」「議員の仕事で多忙になった」などと釈明していた。税理士資格を持ちながら4回も差し押さえを受けたことは、まさに確信犯ではないのかと有権者は感じたのではないか。そんな人物に財務副大臣を任せてよいのか、と。ほかにも、女性との不倫で文部科学兼復興政務官を辞任した山田太郎氏、公職選挙法で禁じられている有料ネットの広告利用を勧めていたことが分かり、法務政務官を辞任した柿沢未途氏。国会議員のモラルなどどうでもよいとばかりの行為だ。

   岸田内閣では去年8月の内閣改造後にも、辞任ドミノがあった。旧統一教会との関係をめぐり国会で野党の追及を受けていた山際大志郎氏が経済再生担当大臣を、死刑執行をめぐる失言をした葉梨康弘氏が法務大臣を、「政治とカネ」が取りざたされた寺田稔氏が総務大臣を、公選法違反の疑いが指摘されていた秋葉賢也氏が復興大臣をそれぞれ辞任している。この年の12月までに4人だ。

   辞任ドミノへの有権者の憤りは世論調査でも浮き出ている。直近のNHKの世論調査結果(11月13日)によると、岸田内閣の支持率は29%、前回の10月調査より7ポイントも下がった。内閣発足以降、初めて30%を下回った。不支持は8ポイント上がって52%だった。去年の辞任ドミノでは支持率が33%(11月調査)にまで落ちていたが、ことし5月に開催したG7広島サミットで主役を演じたことで支持率を46%(5月調査)に盛り返した。その後は再びじり貧で、ついに30%を割った。世論調査で支持率20%台は政権の「危険水域」とされる。

   岸田内閣は「負のスパイラル」に陥った。ただ、不思議なことに解散風が吹き荒れてもよいはずなのに、それもない。有権者の憤りだけがふつふつと煮えたぎっている。

⇒15日(水)午前・金沢の天気  くもり時々あめ

☆北朝鮮の弾道ミサイル ようやく日米韓で情報共有

☆北朝鮮の弾道ミサイル ようやく日米韓で情報共有

   この季節になると、「JPCZ」という言葉を天気予報でよく聞く。シベリアから寒気団が日本海に向かって流れてくる際に朝鮮半島北部の白頭山によって、いったん二分されるが、その風下で再び合流し、雪雲が発達しやすい収束帯(ライン)となって北陸地方などになだれ込んでくる。それをJPCZ(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)、日本海寒帯気団収束帯と言う。JPCZを印象付けたのは2017年12月17日に降った大雪。金沢市内で積雪が30㌢に達した。

   きょうそのJPCZと同様の雲域が日本海に現れているようだ(12日付・日本気象協会「tenki.jp」)。今回は寒気レベルでは平地で降雪になることはないものの、北陸地方では断続的に雨の降り方が強まり、短時間強雨や土砂災害、落雷や竜巻などの激しい突風が起きるとの予報だ。

   北陸に住んでいると、政治的なJPCZにも敏感になる。北朝鮮が日本海に撃ち落す弾道ミサイルだ。北朝鮮はことし6月15日に2発の弾道ミサイルを挑戦半島の西岸付近から発射、能登半島の尖端の輪島市の舳倉(へぐら)島の北北西およそ250㌔、日本のEEZ内側の日本海に着弾させている。2017年3月6日にも北朝鮮は「スカッドER」とされる中距離弾道ミサイル弾道を4発を発射し、そのうちの1発を輪島市から北200㌔㍍の海上に落下させている。(※写真は、2022年3月24日に北朝鮮が打ち上げたICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版)

   この政治的なJPCZに対応する動きがようやく動き出した。共同通信Web版(12日付)によると、木原防衛大臣はきょう、韓国訪問中のアメリカのオースティン国防長官、韓国の申国防相とテレビ会談し、北朝鮮が発射する弾道ミサイル情報を3ヵ国が即時共有するシステムについて、年内の運用開始に向けた調整を加速する方針で一致した。

   ミサイル情報は日米、米韓の間では即時共有してきたが、日韓間はシステムがつながっておらず、事後的な共有にとどまっている。3ヵ国の情報共有は、ミサイルの性能や軌道の正確で迅速な把握につながる。防衛省によると、ことし8月に試験を行い、技術面では共有できることを確認している。

   日本海に発生した低気圧が急速に発達し、気圧が低下することで大荒れになる天候を「爆弾低気圧」と呼んでいる。北朝鮮の爆弾低気圧をなんとか防いでほしいと願うばかりだ。

⇒12日(日)夜・金沢の天気     あめ

☆解散請求逃れ、財産保全逃れ旧統一教会「100億円供託」

☆解散請求逃れ、財産保全逃れ旧統一教会「100億円供託」

           解散請求逃れ、財産保全逃れのための悪あがきの光景だった。きょう午後2時からの旧統一教会の記者会見をNHKのテレビ中継で視聴していた=写真・上=。今回の会見で、教団側は「つらい思いをしてきた2世や国民の皆様に心からおわび申し上げます」と、元信者らに補償が必要になった場合の原資として最大100億円を国に供託したいと述べた。

   旧統一教会の高額な献金や霊感商法の実態調査を行った文科省は10月13日、東京地裁に教団に対する解散命令を請求した=写真・下=。そして、国会では教団側が命令の確定前に被害者救済に充てるべき財産を海外や別の団体に移転させるおそれがあるとして、財産保全の措置法の整備を進めている。このタイミングでの国への100億円の供託となると、冒頭の「解散請求逃れ、財産保全逃れ」の意図としか読み取れない。

   さらに気になったのは、この発言だった。高額献金について、「家庭事情や経済的状況に対し配慮が不足していた」「法人の指導が行きわたっていなかった」と述べていた点だ。教団として高額献金を要請してはいない、あくまでも現場でのことと言い逃れしている。

   もう一つ。教団側が元信者らに補償が必要になった場合、「心からおわび」として100億円を供託すると述べたことについて、会見の質疑で記者から「今回は謝罪の会見か」と問われた。すると教団側は「謝罪という言葉とは距離を置きたい、おわびの会見だ」と述べる場面があった。解散命令請求が出されたタイミングなので、教団とすれば謝罪は罪を認めることになる。そこで、配慮が足りなかった「おわび」という言葉に執着したのだろう。

   旧統一教会は巨大な集金システムだ。韓国の教団トップの韓鶴子総裁がことし6月末、教団内部の集会で「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」「日本の政治は滅ぶしかないだろう」と発言していたことが、関係者への取材や音声データで分かった。日本の教団側は6月中旬までに、年間数百億円にも上るとされる韓国への送金を今後取りやめると説明していたが、トップが依然、韓国への経済的な見返りを正当化したことになる(7月3日付・共同通信Web版)。

   日本に戦前の罪を押し付け、信者から献金という「賠償金」を吸い上げるという集金システムだ。教義そのものが変らない限り、この集金システムは変わらないだろう。

⇒7日(火)夜・金沢の天気    くもり