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☆リアリティ番組、いよいよ「BPO沙汰」に

☆リアリティ番組、いよいよ「BPO沙汰」に

   台本のない共同生活を描いたリアリティ番は実話、損害賠償金つきの誓約書兼同意書によって、出演者たちが制作者側の意図に沿って演じていた番組だった、のか。フジテレビの番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーが自死した問題で、遺族がBPO(放送倫理・番組向上機構)の放送人権委員会に人権侵害を申し立てる書類を提出した(7月15日付・共同通信Web版)。

   番組の中で、同居人の男性が女子プロレスラーが大切にしていたコスチュームを勝手に洗って乾燥機に入れたとして怒鳴り、男性の帽子をはたく場面が流れ、視聴者から誹謗中傷のSNSなどが集中し、本人が追い込まれた。母親によると、このシーンについて、スタッフの指示があったと本人がかつて話していて、「暴力的な女性のように演出・編集され、過呼吸になっても撮影を止めてくれなかった。人格や人権が侵害された」と訴えている(同)。

   BPOがこの問題を審議することになれば、リアリティ番組の中で、女子プロレスラーが凶暴な悪役を演じさせられたのか、それが誰の指示によるものだったのか、損害賠償金つきの誓約書兼同意書の意図はどこにあったのか議論になるだろう。台本のないリアリティさを売りにしていた番組だったので、映像に描き出される彼女の言動そのものが、人格・個性と視聴者に受け止められた。これが、娯楽バラエティー番組であれば役者による演技と受け止められ、視聴者からのSNSによる誹謗中傷もそれほどではなかったのではないか。リアリティ番組で過剰な演技が要求されていたとすれば、まさに「人権侵害」といえるだろう。

   フジテレビの社長は7月3日の記者会見で、「現在、検証作業中であり、事実関係の精査などを行っている」と前置きし、「一部報道にスタッフが“ビンタ”を指示したと書かれているが、そのような事実は出てきていない。一方で、『テラスハウス』という番組は性質上、出演者とスタッフが多くの時間を過ごしており、多くの会話をしている中で、撮影では、出演者へのお願い・提案などはある。 」と述べている(フジテレビ公式ホームページ)

   この問題は「BPO沙汰」にすべきだと考えている。5月にこの問題が発覚し、女子プロレスラーの自死はSNSでの誹謗中傷が招いたと社会問題となった。自民党はインターネット上での誹謗中傷対策を検討するプロジェクトチームを立ち上げ、匿名による中傷を抑制する法規制などを検討を始めている。ところが、この問題の根本はテレビ局側が出演者に過剰な演技を要請したことが原因ということになれば、別次元の問題だ。視聴者もテレビ局側にある意味で騙され、煽られたことになる。

   BPOは放送や番組に対して政治や総務省が介入することを防ぐ目的で、NHKと民放が自主的に問題を解決する姿勢を示すために設けた第三者機関である。「人権侵害」と認定されれば、テレビ局側もそれ相当の自己改革が迫られる。この際、リアリティ番組の放送基準を明確にすべきだろう。このままうやむやにしてはならない事案だと考える。

(※写真はイギリスのBBCニュースWeb版が報じた女子プロレスラーの死=5月23日付)

⇒16日(木)朝・金沢の天気    くもり

★日本も例外ではない「ズーノーシス」の接近

★日本も例外ではない「ズーノーシス」の接近

   「ズーノーシス(zoonosis)」という言葉を初めて知った。UNEP(国連環境計画)がこのほどまとめた報告書に出てくる。新型コロナウイルスの発生源として論議を呼んでいるコウモリなど動物由来で人にも伝染する感性病を総称してズーノーシス(人畜共通伝染病)と呼ぶそうだ。新型コロナウイルスの感染症やエボラ出血熱、中東呼吸器症候群(MERS)、HIV、ライム病といったこれまで人間が罹ってきた感染症はズーノーシスに含まれる。

   では、なぜズーノーシスが繰り返されるのか、UNEPのインガー・アンダーセン氏らが報告書=写真=をまとめた。以下、UNEP公式ホームページで掲載されているダイジェスト版「Preventing the next pandemic: Zoonotic diseases and how to break the chain of transmission」(次なるパンデミックの防止:人獣共通感染症と伝染の連鎖を断ち切る方法)から以下引用する。

   低・中所得国では毎年200万人がズーノーシスである炭疽病、牛結核、狂犬病で死亡している。これらの国々は家畜への依存度が高く、野生生物に近い地域社会である。その原因は人の生産活動にある。肉の生産量は50年間で260%増加し、農業生産も強化された。大規模な耕作地や灌漑、ダムなどの農業インフラを拡張したものの、同時に野生生物の空間を犠牲にした。その結果、人と野生動物は近くなり、ズーノーシスとも密接になってきている。

   野生生物の領地やその他の天然資源の過剰な開発をやめ、持続可能な農業を行うことで、土地の劣化を逆転させ、生態系の健全性を守るための投資が必要、と提言している。

   これを読んで、日本ではまったく逆のズーノーシスが起きる可能性が高まっているのではないかと感じた。たとえば、金沢でも人里や住宅街にクマやサル、イノシシ、シカが頻繁に出没している。ドングリなどのエサ不足に加え、里山と奥山の区別がつかないほど里山や耕作放棄地が荒れ放題になっていて、クマ自身がその領域の見分けがつかず、人里や住宅街に迷い込んでくる、とも言われている。

   ズーノーシスに感染したこれらの野生生物が街中を徘徊することを防げるだろうか。

⇒9日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆検証されるべきはWHOと中国の関係性

☆検証されるべきはWHOと中国の関係性

   気になった国際ニュース。アメリカはWHOから来年7月6日付で脱退すると国連に正式に通告した。トランプ大統領が5月下旬、新型コロナウイルスを巡る対応が中国寄りだと主張し、脱退すると宣言していた。7月6日に通告を受けた国連サイドは、脱退条件を満たしているかどうか確認作業に入ったとしている。アメリカは1948年にWHOに加盟し、最大の資金拠出国となっており、脱退による活動への影響が懸念されている(7月8日付・共同通信Web版)。

   トランプ氏はこれまで何度も「WHOは中国に完全に支配されている。WHOとの関係を終わらせる」と脱退の意向を示してきたので、ついに実行に移したか、という印象だ。当のWHOは今回の通告に対してまだコメント発表していない。ただ、テドロス事務局長はこれまでアメリカ政府は協力の恩恵を世界は長年受けてきたと強調し、公衆衛生の改善に大きな影響を与えてきたアメリカの貢献を称賛している(6月1日・WHO記者会見)。

   今回の通告を11月のアメリカ大統領選の争点にしようとしているのが、大統領の座を争うことになる民主党のバイデン氏だ。さっそく、7日のツイッターに「大統領としての初日にWHOに戻る」と投稿し、政権を奪還すれば、来年1月に大統領に就任してすぐ、脱退を撤回する考えを示した(7月8日付・NHKニュースWeb版) 。

   冒頭の記事にあるように、国連サイドはアメリカの脱退条件を満たしているかどうか確認作業に入ったとしている。ぜひ、テドロス氏と中国の関係性を明らかにしてほしい。これまで指摘されているように、中国でヒトからヒトへの感染を示す情報がありながら、WHOがその事実を知りながら世界に共有しなかったのはなぜか。トンラプ氏でなくとも疑問に思う。

   そもそも、WHOと中国の関係性が疑われたのは1月23日だった。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国で感染者が出ていたにもかかわらず、この日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、テドロス氏は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べた(1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。日本やアメリカ、フランスなど各国政府はすでに武漢から自国民をチャーター機で帰国させていた。

   ぜひとも、こうしたWHOと中国の関係性がアメリカの主張の通りなのか、国連サイドとして検証してほしいものだ。

(※写真は4月27日、テドロス事務局長の記者ブリーフィング=WHO公式ホームページ) 

⇒8日(水)夜・金沢の天気    あめ

★コロナと大雨の二重禍、そしてボランティアは

★コロナと大雨の二重禍、そしてボランティアは

   きょう未明から雨が降り続き大雨だった。午前中、車で能登方面に出かけたが、フロントガラスに雨が激しく叩きつけ、前方がよく見えかった。ワイパ-を最高速にしたが、かえって見にくい。車体がグレーでライトをつけていない車は要注意だった。

         今回列島を襲っている記録的な大雨で、これまでに熊本県を中心に57人が亡くなり、2人が心肺停止、12人が行方不明となってる。まだ被害が把握できていないところもあり、警察や消防、自衛隊などが引き続き捜索している(7月7日付・NHKニュースWeb版)。

   山中の道路が寸断され、孤立した集落が数多くあるだろう。記録的な大雨の犠牲者は今後さらに増える可能性もある。熊本県の公式ホームページにきょう行われた災害対策会議の模様が動画で掲載されいる。参加者は全員マスクを着用し会議に臨んでいた=写真=。熊本県内では新型コロナウイルス感染で48人の感染者、そして3人が死亡しているので、コロナと大雨の二重の災禍と向き合っている、そんな光景に映った。

   水害の復旧のためのボランティアをどのように集めるのか気になって検索をかけていると、熊本県社会福祉協議会の公式ホームページで「災害・生活復興支援ボランティア情報」(7月7日付)のページがあった。その中で気になったのは、ボランティア参加に関しては、ウイルス感染防止から参加を制限していることだ。

   ホームページをもう少し詳しく見てみる。同協議会では、災害ボランティアセンターの設置に向け準備を進めている。「開設後は新型コロナウイルス感染症拡大防止から、当面は県内被災地近隣の方々に限るなど、範囲を定めてボランティアの募集が行われる予定です。ご理解・ご協力をお願いいたします。」と。これだけの大災害となると連日テレビが大きく取り上げる。すると本来ならば災害ボランティアは全国から集まって来る。ところが、ウイルス感染の防止から全国からの受け入れには慎重にならざるを得ない、ということなのだろう。

   しかし、ボランティアの被災地で作業は「3密」状態だろうか。マスクの着用を守ってもらい、 被災者との「濃厚接触」を避けてもらえばそれだけでよいのではないだろうか。被災地の近隣のボランティアだけは人数が足りない。ましてや、これだけ広範囲の水害となると近隣からは集まらないだろう。

   コロナ禍では、移動の自粛をめぐって意見の違いが交錯する。東京都の小池知事が、ほかの県への不要不急の移動を控えるよう呼びかけたことについて、コロナ対策の西村経済再生担当大臣は政府として移動の自粛は求めない考えを重ねて示した(同)。この意見の違いは、ボランティアにも当てはまる。被災地の復旧をサポートしたいというボランティアの気持ちを前向きに受け入れてはどうだろうか。

⇒7日(火)夜・金沢の天気   あめ

☆「ワード・ポリティクス」の女帝、2期目の難題

☆「ワード・ポリティクス」の女帝、2期目の難題

   選挙の争点は何だったのか。自身は都民ではないが、今回の東京都知事選をメディアを通して観察していて不思議を感じる。何しろ現職、小池百合子氏の得票率は59.7%である。小池氏の場合は2期目なので1期目で掲げた「セーフ・シティ」「ダイバー・シティ」「スマート・シティ」で掲げた27個の公約をどれだけ実行できたか、その評価が選挙の争点だろう。 

   「スマート・シティ」の公約にある「東京をアジアナンバーワン1の国際金融市場として復活。国際金融特区や税優遇を活用し、世界から企業や高度人材を呼び込む。英語による諸手続きが可能な環境を整備」は評価が高い。とくに、中国の国家安全法で揺れる香港の金融機関の移転先として国際的にも注目されている。先見の明があるのかもしれない。一方で、同じ「スマート・シティ」の公約にある「老朽廃棄物処理場の集約」は都議会で議論されたことがあるのだろうか。少なくともネットの検索ではその様子が出てこない。2016年7月の前回は得票率は44.4%だった。今回は15ポイントも増やしているので、総じて前回の公約は信任されたということだろう。

   得票率を15ポイント上げた、もう一つの要因が新型コロナウイルスの感染拡大にともなう数々の記者会見ではなかっただろうか。「クラスター」「オーバーシュート」「ロックダウン」、そして「東京アラート」などのカタカタ用語が会見で次々飛び出した。あえて報道陣の前でお披露目して、メディアが読者・視聴者向けに分かりやすく解説する。それが、都民だけでなく全国の注目を集めた。こうした言葉によって政治を動かすことを「ワード・ポリティクス」、テレビを意識した言葉の政治を「テレ・ポリティクス」と称したりするが、まさにメディアを巧みに利用する政治手腕ではある。

   1期目の当選では「ジャンヌ・ダルク」と自称したが、2期目で「女帝」を座を揺るぎないものにした。問題はこれからだろう。コロナ禍の休業補償に都の貯金とも言える財政調整基金9345億円のほとんどを使い、残りは807億円と言われる。都民の命と健康を守る新型コロナウイルスの感染症対策、築地市場の跡地問題、そして、オリンピック・パラリンピックの縮小開催か、パンデミックの影響でひょっとして返上か中止か、世界の耳目が集まる。これらの難題をどう乗り切るのか。(※写真は「小池百合子公式ホームページ」より)

⇒6日(月)午前・金沢の天気     あめ

★コロナ禍と東京都知事選

★コロナ禍と東京都知事選

   きょうは東京都知事選挙の投開票日だ。立候補者は過去最多の22人。きょう午後3時現在の投票率は23.9%、前回2016年の選挙より3.7ポイント低いとメディア各社が報じている。今回関心があるのは、誰が当選するかというより、開票をどのようにするか、だ。というのも、開票作業は「3密」そのものだ。しかも、このところ連日100人超えの感染者が出ている東京都だ。開票作業も慎重に行われる分、かなり遅れるのではないだろうか。

   開票作業が遅れる原因は3つある。一つは3密を避けるため、作業を行う都の職員は立ち位置の間隔を空ける。1人4平方㍍を確保するとして、職員はこれまで3分の2ほどではないだろうか。もう一つが、ゴム手袋を着用しての作業となるだろう。手袋は紙を扱う作業には向いていない。投票用紙そのものも特殊な素材ですべすべしているので、かなり手間取るのではないだろうか。

   3つ目が「疑問票」の処理だ。投票用紙に書かれた名前が読めなかったり、間違っていたり、関係のないことが記載されていることがある。この疑問票についてはチェックに時間がかかる。とくに、候補者陣営からのいわゆる「開票立会人」が意見を述べることができる仕組みとなっているので、今回のように22人の立候補者がいると立会人の数も多くさまざまな意見を言うことも想定されるので、票の確定まで相当な時間がかかるのではないだろうか。

   話は「当選確実」の報道に移る。おそらく午後8時00分にテレビ各社は一斉に「当確」の選挙速報をテロップで出すだろう。新聞のテレビ欄では、NHK総合は午後7時59分から「都知事選開票速報」として1時間の特番を組んでいる。「出口調査の結果は?夜8時ちょうどに速報」とわざわざ手の内を明かしている。

   それにしても、この表現では適切でないかもしれないが、現職の小池知事=写真は東京都公式ホームページ、3月25日の会見=は波乗りが上手だ。コロナ禍が収束するかに思えたが、東京を中心に第2波が来ている。現状で新人候補に投票する有権者は多くはないだろう。争点は一つ。この事態をはやく収束させてほしい、が都民の願いだろう。仮に投票率が過去最低であったとしても責められることもない。

   小池氏は前回公約として「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」を掲げ、元総務大臣の増田寛也氏=自民、公明など推薦=、鳥越俊太郎氏=民進、共産、社民など推薦=と戦って破った。孤軍奮闘のまさに、自ら称した「ジャンヌ・ダルク」のようだった。

⇒5日(日)午後6時00分・金沢の天気     くもり

☆ギャングのマスクから戦う愛国のマスクへ

☆ギャングのマスクから戦う愛国のマスクへ

   新型コロナウイルスの感染拡大でWHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言(1月30日)を発してから157日になる。ジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)の最新版では感染者総数は1118万人、死者数は52万人に上る。中でもアメリカは現在でも増え続け、感染者数283万人、死者数12万人だ。テレビのニュースで報じられるアメリカの様子を視聴していると、WHOの緊急事態宣言が出されたころに比べ、マスク姿が断然多くなっていることに気づく。ウィズコロナの意識改革が浸透しているのだろうか。

   自身はもともとマスクは嫌いなタイプだった。コロナ以前は、マスクをしていると自らが病気をしていると他人に知らせるようなもので、弱々しさを感じさせると思っていた。また、マスクは顔を隠すためのものという印象もあった。 2019年12月30日にレバノンに逃亡したことで物議をかもしたカルロス・ゴーンが昨年3月6日、一回目の保釈で東京拘置所から出てきた姿は、青い帽子に作業服姿、顔の半分以上はマスクで隠していた。保釈金10億円を納付したのだから堂々と出てきて、記者会見をすればよかったのではないか、と。マスクは変装の道具というイメージだった。

   これは憶測だが、アメリカでもおそらくマスクと言えば、強盗ギャングの顔隠し、あるいはアメリカでヒットしたテレビドラマ『ER緊急救命室』の手術室でのマスク姿の医師たちの緊迫したシーンのイメージがあったに違いない。つまり、日常生活とはかけ離れた存在で、抵抗感もあったのではないだろう。

   それが一転、アメリカは1日で感染者が5万人を超える日もあり、外出時のマスク着用を義務化する州や都市が増えている。6月18日に義務化したカリフォルニア州知事は「経済を再開し、人々を仕事に復帰させるためのカリフォルニア州の戦略は、人々が安全に行動し、公衆衛生上の勧告を順守することによって初めて成功する。つまりフェイスカバーを着用し、手を洗い、物理的な距離を置くことが求められる」と述べている(6月18日付・ロイター通信Web版日本語)。コロナ禍と人類の社会活動と経済を共存させるためにマスクは欠かせない、好き嫌いではない義務だと、まるで「人類とコロナの共存のためのマスク宣言」のようだ。(※写真は、5月29日付・BBCニュースWeb版より)

   また、ニューヨーク州知事は「マスクの着用は戦いに参加していることを意味する。着用ほど愛国的なことはない」とツイートした(7月4日付・NHKニュースWeb版)。トランプ大統領も、自らも他の人と近い距離にいる時はマスクを当然着用すると述べた。ただ、マスク着用を全国的に義務化する必要はないとの考えを示している(7月2日付・ロイター通信Web版日本語)同)。もし、マスクが全米で義務化されれば、アメリカのマスクの歴史が塗り替わる。ギャングのマスクから、戦いのための愛国マスクへと。

⇒4日(土)夜・金沢の天気    あめ

★「マイバッグ」と「マスク」の両立問題

★「マイバッグ」と「マスク」の両立問題

   きょうからレジ袋の有料化が始まった。午前中、コンビニに入ろうとしてマイバックを忘れたことに気がついた。有料化のこの日に備え、コンビニ用の小さめのバックを用意していた。レジ袋を買い求めるか迷った。というのも、コンビニ弁当などを入れたレジ袋を持って職場に入れば、おそらく目線が注がれるだろう。「エコに関心がない人」と。マスクを着けずに職場に入ると感じる目線と同じではないだろうか。入ろうとしたコンビニの入り口に「プラスチック削減に向けて、マイバックのご利用をお願いします」と横断幕=写真=が掲げてあり、これにも気が引けて結局、何も買わず車に戻った。

   きのう(6月30日)ブログでレジ袋の有料化について書いた。メディア各社がどのように取り上げているかチェックしていて、気づいたことが一つある。新聞メディアは「マイバック」と表現し、テレビメディアは「エコバック」と称している局が多い。持参しましょうとの意味を込めているのが「マイバック」で、エコロジーに役立ちますよと意義を強調しているのが「エコバッグ」、ということだろうか。で、このブログではどうするか迷ったが、日常言葉で使っている「マイバッグ」とすることにした。

   そのマイバッグと新型コロナウイルスの関係性がよくない。随分前から近くのスーパーではマイバッグを持参して買い物をしてきた。レジで精算するときにマイバッグを出すと、店員が商品をダイレクトにバッグに入れてくれた。この便利さもあり、マイバッグを持参していた。

   様相が変わったのは、4月16日に感染防止対策として緊急事態宣言が全国拡大し、「特定警戒県」に石川が指定されたころだ。この頃から、マイバッグに買ったものを店員が入れてくれなくなった。「ご自身で入れてください」と。マイバッグは使い回すのでウイルス感染リスクが高く、店員は触れない、というわけだ。

   けさのNHKニュースで、アメリカやヨーロッパでレジ袋を無料で提供する動きが広がっていると伝えていた。アメリカ・カリフォルニア州は2016年、全米で最も早く小売店などでのプラスチック製レジ袋の無料提供を禁止し、再利用可能な袋や紙袋を10セント(日本円で10円余り)で販売する有料化の法律を導入した。ところが、客が持ち込むマイバッグで店員が感染するおそれが高まるなどとして、ことし4月、レジ袋などを無料とした。また、サンフランシスコでは客が再利用できるバッグやマグカップなどを店に持ち込むことそのものを禁じる行政命令を出した(7月1日付・NHKニュースWeb版)。

   レジ袋、つまりプラスチックの利用を減らすべきだという考えが日本でも根づき、法律上でも施行が始まったタイミングだけに、「マイバッグ先進国」欧米での逆行するトレンドには違和感がある。店員がマイバッグに触れなければよいだけのことで、コロナ感染をそこまで優先させるのは、神経質になりすぎではないか、と。ただ、マスク(ウィズコロナ)とマイバック(エコロジー)をどう両立させるか知恵出しする絶好の事例ではある。

⇒1日(水)正午・金沢の天気    くもり

★「ブラックスワン」の悪夢は尽きぬ

★「ブラックスワン」の悪夢は尽きぬ

   「ブラックスワン(black swan)」という言葉が金融業界の用語にある。確率論や従来の知識や経験からは予測できない極端な事象が発生し、それが人々に多大な影響を与えることを指す(SMBC日興証券公式ホ-ムページ)。この言葉を最近知って、日常生活や日本にとってブラックスワンとは何かと考えるようになった。

   日本海側に住んでいるとどうしても考えてしまうのが、北朝鮮をめぐる情勢だ。南北首脳会談の「板門店宣言」で建設された北南連絡事務所が今月16日に爆破され、世界に衝撃が走った。アメリカと北朝鮮の首脳会談もこれまで3回開かれたが、成果は得られなかった。こうなると、トランプ大統領が2017年の9月の国連総会の演説で金正恩党委員長を「ロケットマン」と呼んだあのころに戻るのではないか、との危惧する。

   そうなると北朝鮮への斬首作戦が現実味を帯びる。斬首作戦は金委員長へのピンポイント攻撃のこと。アメリカによる斬首作戦で知られるのがオバマ政権下で実行された、オサマ・ビン・ラディンに対して行った2011年5月2日のバキスタンでの攻撃だ。もし斬首作戦が現実になれば、大量の北朝鮮の難民が船に乗ってやってくるだろう。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って能登半島などに漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。まさにブラックスワンだ。

   ブラックスワンを招くのは異常気象かもしれない。6月に入ってから、日本各地で集中豪雨による洪水が発生している。中国でも長江上流で大規模な水害が発生し、中流域の湖北省宜昌市にある世界最大の水力発電ダム「三峡ダム」が決壊する恐れが出ている、と指摘する専門家もいる(6月29日付・ニューズウイーク日本語版)。想像を絶する被害だろう。

   現実となったブラックスワンは新型コロナウイルスの災禍だろう。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)の29日の最新版によると、感染者は1017万人、死者は50万人を超えた。ことし1月に全世界でいちはやく感染者情報を公開した同大学だが、これほどのパンデミックになると予想していただろうか。日本でも先月25日に緊急事態宣言が全面解除されたにもかかわらず、きょう東京都では58人の感染が確認され、これで4日連続で50人超えだ。コロナ二波が始まっているのではないか。

   新型コロナウイルスによる感染も怖いが、最近、日本列島の各地で頻発している地震も、大地震の予兆ではないかと不安心理に陥る。今月25日にも千葉県北東部で震度5弱であったほか、九州や中部、関東、東北、北海道で震度3から4の揺れが続いている(気象庁公式ホームページ「地震速報」)。身の回りでも3月13日に能登半島の輪島で震度5強、金沢で震度3の揺れがあった。神経が少々過敏になっているのかもしれない。

⇒29日(月)夜・金沢の天気     くもり

☆北の弾道ミサイル、能登沖200㌔落下から3年

☆北の弾道ミサイル、能登沖200㌔落下から3年

   今月15日に河野防衛大臣が地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回すると表明してから10日余りが経った。その理由は最初よく理解できなかったが、ミサイルの「ブースター」と呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切ったと報道各社が報じている。

   イージス・アショアの配備を撤回すると、日本は当面これまで通り、海上のイージス艦と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)による迎撃態勢となる。一方の北朝鮮は、「金正恩委員長が、敵の艦船などの個別目標を精密打撃することが可能な弾道ミサイル開発を指示したと発表していることも踏まえれば、弾道ミサイルによる攻撃の正確性の向上を企図しているとみられる」(令和元年版防衛白書)。つまり海上のイージス艦船などを集中攻撃してくる可能性が高い。破壊された場合、イージス・アショアがなかったらどう防衛するのか。国家安全保障会議(NSC)はこの夏に集中的に討論されるが、見守りたい。

   北が弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島とされる。2017年3月6日、北朝鮮が「スカッドER」と推定された中距離弾道ミサイル弾道ミサイル4発を発射し、そのうちの1発は能登半島から北に200㌔㍍の海上に、3発は秋田県男鹿半島の西方の300-350㌔㍍の海上に、いずれも1000㌔㍍飛行して落下した=写真=。

   能登半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊輪島分屯基地のレーダーサイトがある。このレーダーサイトには、航空警戒管制レーダーが配備され、日本海上空に侵入してくる航空機や弾道ミサイルを速く遠方でも発見するため24時間常時監視している。日本海は自衛隊の訓練空域でもっとも広く、「G空域」と呼ばれる。そのエリアに、しかも監視レーダーサイトの目と鼻の先の200㌔に北朝鮮はスカッドERを撃ち込んだのだ。

   男鹿半島にも加茂分屯基地の警戒管制レーダーが配備されている。北とすれば、この日本の2ポイントのレーダーサイトヘの攻撃は完全に射程距離に入れたとのメッセージを込めたのだろう。北が中距離弾道ミサイルを日本に撃ち込むとすれば、おそらく防衛ラインの「目と耳」であるレーダーサイトだ。ここを叩けば、丸腰同然となる。イージス・アショアの導入が決定したのはこの年の12月だった。

   あれから3年、北の弾道ミサイルはさらに高性能化したに違いない。低空飛行や軌道の変更が可能な「戦術誘導兵器」化した新型ミサイルがそれだ。イージス・アショアを白紙に戻したのも、ブースター落下問題というより、防衛戦略の総合的な見直しが急がれるとの判断なのかもしれない。

⇒26日(金)朝・金沢の天気   あめ