⇒ニュース走査

★WHOテドロス氏「ワクチン寄付」集めの裏読み

★WHOテドロス氏「ワクチン寄付」集めの裏読み

   WHOのテドロス事務局長の発言がまた波紋を呼んでいる。 テドロス氏が14日の記者会見で、一部の高所得国が子供に対する新型コロナウイルスワクチンの接種を始めたことについて、医療従事者らもまだ接種できていない低所得国への寄付を優先すべきと述べたと報じられた(5月15日付・時事通信Web版)。テドロス氏の発言内容を詳しく知りたくて、WHOの公式ホ-ムページをチェックした=写真=。問題の発言は以下だ。

   I understand why some countries want to vaccinate their children and adolescents, but right now I urge them to reconsider and to instead donate vaccines to COVAX. (意訳:私は、一部の国が子供や青年にワクチンを接種したい理由を理解しているが、今、彼らに再考を促し、代わりにCOVAXにワクチンを寄付することを強く勧めしている)。

   ワクチン供給のわずか0.3%しか低所得国に届いていない状況の中で、アメリカが接種年齢をこれまでの16歳以上から12歳以上に拡大したことを受けての発言だろう。そのテドロス氏の発言が波紋を呼ぶ背景には、中国がある。WHOは今月7日に中国国有製薬大手「中国医薬集団(シノファーム)」が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認している。治験などから推定される有効性は79%。中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについても審査中で、近く結果が発表される見通し(5月8日付・同)。

   上記からあるストーリーが浮かぶ。COVAXはWHOが中心となってワクチンを共同購入する組織だ。WHOの公認ワクチンを中国から購入することで低所得国に分配したいとテドロス氏は考えているに違いない。あるいは、中国から入れ知恵があったのかもしれない。中国側もこれまでのワクチン外交からワクチンビジネスに本格的に参入したい思惑があるだろう。

    さらにスト-リーは展開する。WHOによる低所得国へのワクチン寄付の要請は真っ先に日本に向かってくる。そう懸念する論拠は以下だ。昨年2020年5月16日、テドロス氏とIOCのバッハ会長は「スポーツを通して健康を共同で促進していく覚書(MOU)」を交わしている。その中で、オリンピックなど国際スポーツイベントの開催にあたっては、WHOからガイドライン(この場合は助言)が示される。つまり、パンデミックの下で東京オリンピックを開催するしないの「決定権」を握っているのはWHOなのだ。

   テドロス氏がオリンピック参加国でもある低所得国にワクチンが行き渡らない状態ではオリンピックは開催できないと言えば、バッハ会長も従わざるを得ないだろう。そこで、テドロス氏の意向を受けたバッハ氏が今度は東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本会長にWHOへのワクチン寄付を要望してくることは想像に難くない。

   そうして集められた世界からの寄付金で中国製のワクチンが購入されるシステムが出来上がる。同時に、中国としては、来年2月の北京冬季五輪はワクチンが世界に行き渡った状態で開催する、世界史上で類を見ない大会だと豪語するだろう。中国製ワクチンの緊急使用をWHOが承認したのはその布石だった。裏読みではある。

⇒15日(土)夜・金沢の天気      あめ

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

★中国のワクチン外交 「WHOお墨付き」の裏読み

   WHOの「中国寄り」、またか。時事通信Web版(5月8日付)によると、WHOは中国国有製薬大手、中国医薬集団(シノファーム)が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。治験などから推定される有効性は79%という。中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンについても審査中で、近く結果が発表される見通し。

   WHOの公式ホームページをチェックする。「WHO lists additional COVID-19 vaccine for emergency use and issues interim policy recommendations」のページに承認に至った経緯を紹介している。以下、ポイント。シノファームのワクチンに関しては、WHOは製造施設の現地査察を行った。WHOの予防接種に関する戦略的諮問グループ(SAGE)は入手可能なすべての証拠に基づいて、症候性および入院性疾患に対するワクチンの有効性はすべての年齢層を合わせて79%と推定した。ただし、臨床試験に登録された高齢者(60歳以上)がほとんどいなかったため、この年齢層での有効性を推定できなかった。高齢者とそれ以外の年代で有効性が異なるという分析結果と理論的な根拠はない。

   要は、緊急使用として有効性79%のワクチンを承認した。データは中国の生産現場を訪れて入手したもので、WHOが独自に医療現場で治験に立ち会って得たデータではない。60歳以上の高齢者への有効性についてのデータはない。つまり、消去法でのデータだ。

   実は中国のワクチンの有効性を疑うニュースが以前報じられていた。イギリスのBBCニュースWeb版(2021年4月12日付)は「Chinese official says local vaccines ‘don’t have high protection rates’」の見出しで伝えている=写真=。中国の疾病対策センター(CDC)のトップが4月10日の記者会見で、中国で現在使われているワクチンについて、「予防できる確率はあまり高くない」と述べ、「効果を高めるため、いくつかのワクチンを混合させることを政府として検討している」と述べた。しかし、その後、トップは予防効果が低いとした点について、「完全な誤解」と発言を撤回した。

   BBCは同じ記事で、中国のシノバックのワクチンを事例に有効性の数値を上げている。ブラジルでの臨床試験の結果で有効性は50.4%、トルコとインドネシアで実施された臨床試験の中間結果では有効性は65~91%だった。WHOはワクチン承認の条件として、50%以上を目安としている。

   アメリカのファイザーやモデルナ、イギリスのアストラゼネカなど欧米のワクチンの有効性は90%前後かそれ以上と報じられている。中国CDCのトップが「予防できる確率はあまり高くない」と発言して1ヵ月、それから各段にワクチンの有効性が向上したとは考えにくい。WHOはシノファームの「79%」の論拠をもっと明確に示すべきだろう。

   WHOはワクチンを途上国や貧困国などへ配分できるよう、国際的な枠組み「COVAX」を立ち上げたが、製薬メーカーが欧米に偏っており、ワクチン供給がままならない状況に陥っている。焦りを感じたWHOのテドロス事務局長による緊急措置だろう。が、もう一つのシナリオを裏読みしてみる。

   中国のオリンピック委員会はIOCのバッハ会長に、今夏の東京五輪と来年の北京冬季五輪の参加者にワクチンを提供したいとの申し出を行った(2012年3月11日付・ロイター通信Web版日本語)。新疆ウイグルなど少数民族や香港での統制強化が問題視されて欧米などで北京五輪ボイコットの動きに反応したのだろう。このとき、バッハ氏は「WHOのお墨付きが必要だ」とアドバイスしたのではないだろうか。そこで、習近平国家主席はWHOのテドロス氏に依頼。今月7日にテドロス氏から緊急使用ということで承認は可能との連絡が入った。するとさっそく習氏はバッハ氏に電話をし、「IOCと引き続き連携し、東京五輪の開催を支持したい」と表明した(5月7日付・共同通信Web版)。

   時間的なタイミングを読めば、上記のようなストーリーもできるのだ。中国はこれから「WHOのお墨付きがある」と大手を振ってワクチン外交を展開することだろう。

⇒9日(日)午前・金沢の天気     あめ後はれ

☆巨大なデビルフィッシュ 世界への宣伝効果

☆巨大なデビルフィッシュ 世界への宣伝効果

   イギリスBBCニュースWeb版(5月4日付)が面白いニュースを伝えている。「Covid: Japan town builds giant squid statue with relief money」の見出しで海辺のイカのモニュメントの写真を掲載していた=写真=。驚いたことに、能登半島の「イカの町」で知られる能登町のイカのモニュメントだ。

   記事の書き出しはこうだ。「A seaside town in Japan has raised eyebrows after it used funding from an emergency Covid-19 relief grant to build a giant statue of a squid.」。日本の海辺の町は、コロナ禍の緊急援助金を使って巨大なイカの像を建て、物議をかもしている、と。この全長13㍍の像は感染対策の地方創生臨時交付金を使ってことし4月に完成したもので、地元紙も取り上げるなど話題になっていた。何しろ交付金2500万円が建設費に充てられたからだ。

   記事では「能登町の関係者は地元メディアに対し、新型コロナウイルスのパンデミック (世界的大流行) 後に観光客を呼び戻す長期計画の一環だと語っている」と書いている。つまり、BBCの記者が直接取材に訪れたのではなく、地元紙の記事を引用して記事構成をしている。ちなみに、能登町の小木港は青森県の八戸港、北海道の函館港と並ぶ、日本のイカ漁の3大漁港の一つだ。

           憶測だが、BBCの記者は記事の写真をネットなどで見て興味を抱いたのだろう。欧米では、タコやイカをデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」と称して忌み嫌う人も多いとか。巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画もある。その意味で、画像のインパクトを意識した記事ではないだろうか。

    記事では「パンデミックが収束しない中で、巨大イカに多額の資金を費やしているとして、町の行政を批判する声もある」と紹介する一方で、「町の広報担当者は、このモニュメントは観光名所となり、能登のイカを宣伝する長期戦略の一部となるだろう」と日本のメディアに語ったコメントも記載している。

   BBCの報道の後、フランスのAFP通信、アメリカのニューヨーク・タイムズなどもこの記事を取り上げている。デビルフィッシュのすさまじい宣伝効果ではある。

⇒8日(土)午前・金沢の天気     くもり時々はれ

☆WHOテドロス事務局長の再選めぐるキナ臭さ

☆WHOテドロス事務局長の再選めぐるキナ臭さ

   WHOにまたキナ臭さが漂ってきた。AFP通信Web版日本語(5月4日付)は、「WHOのテドロス事務局長は再選を目指している」とアメリカの医療専門メディア「スタット・ニュース」の記事を引用して伝えている。テドロス氏はエチオピアの保健相と外相を歴任し、2017年にアフリカ出身者として初めてWHO事務局長に就任した。WHO事務局長は任期5年で2期まで務めることができる。1期ごとに加盟国の投票で選ばれる。

   テドロス氏への不信感が世界で広まったのは、「中国寄り」の露骨な振る舞いが新型コロナウイルスをきっかけに露わになったことから。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国でコロナ感染者が拡大していたにもかかわらず、2020年1月23日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、テドロス氏は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べた(同1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。日本やアメリカ、フランスなど各国政府は武漢から自国民をチャーター機で帰国させていたころだった。

   その宣言後の記者会見でテドロス氏はさらにこう述べた。「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(同1月31日付・日経新聞Web版)。アメリカの当時のトランプ大統領は「WHOは中国に完全に支配されている。WHOとの関係を終わらせる」と脱退を表明し7月6日付で国連に正式に通告した(同7月8日付・共同通信Web版)。世界的な署名サイト『Change.org』でもテドロス氏解任キャンペーンが展開され、100万を上回る署名が集まった(同5月10日現在)。

   母国エチオピアでもテドロス氏への疑惑が起きている。エチオピア軍の参謀長は2020年11月19日の記者会見で、政府軍と対立している同国ティグレ州の政党「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」にテドロス氏が武器調達を支援していると批判した。同月4日、TPLFが政府軍の基地を攻撃したのに対して、アビー首相(2019年ノーベル平和賞受賞者)が反撃を命じ、戦闘が続いていた。テドロス氏はティグレ人でTPLFの支援に回っているとエチオピア政府は不信感を募らせている(同11月19日付・AFP通信Web版日本語)。テドロス氏はTPLFへの武器調達を支援しているとの疑惑を否定した(11月20日付・同)。

   そのエチオピアではことし6月5日に国政選挙が行われる。選挙は当初2020年8月を予定していたが、新型コロナ対策を優先して実施を延期していた。アビー首相と政権与党「繁栄党」に対する国民の支持を占う選挙となる(2021年2月5日付・JETROWeb版)。この選挙で引き続き与党が政権運営を担えば、政府や軍の反発を買っているテドロス氏の2期目は危うくなる。また、中国寄りのテドロス氏がWHOの最高責任者として居座ることを国際世論が許すかどうか。そして、開発途上国に多額の債務を負わせる投資プロジェクト「一帯一路」をエチオピアでも展開する中国はこの局面をどう操るのか。キナ臭いストーリーの展開に注目したい。

(※写真は2020年8月21日のWHOの記者ブリーフィング=WHO公式ホームページ)

⇒4日(祝)夜・金沢の天気    くもり

★憲法改正の世論トレンドを読む

★憲法改正の世論トレンドを読む

   きょうは憲法記念日。この日にちなんでメディア各社が世論調査を実施している。それを読み解くと、憲法に対する日本人の感覚がこれまでとは違っていることが分かる。そのトレンドを読んでみる。

   朝日新聞(5月3日付)の世論調査を見る。「いまの憲法を変える必要があるか」の問いでは、「変える必要がある」が45%(昨年調査43%)、「変える必要はない」が44%(同46%)だった。憲法第9条を「変えないほうがよい」61%(同65%)が、「変えるほうがよい」30%(同27%)を上回った。調査は全国の有権者から3千人を選び、郵送で3月上旬から4月中旬に実施。有効回答は2175で、回収率は73%。

   NHKニュースWeb版(5月2日付)の世論調査。今の憲法を改正する必要があると思うかの問いでは、「改正する必要があると思う」が33%、「改正する必要はないと思う」が20%、「どちらともいえない」が42%だった。戦争の放棄を定めた憲法9条を改正する必要があると思うかどうか聞いたところ、「改正する必要があると思う」が28%、「改正する必要はないと思う」が32%、「どちらともいえない」が36%だった。昨年の同じ時期に行った調査と比べると、「改正する必要がある」はほぼ同じ割合だったのに対し、「改正する必要はない」は5ポイント減少した。調査は4月23日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDで実施。調査対象となった2808人の54.6%にあたる1533人から回答。

   読売新聞(5月3日付)の世論調査では、憲法を「改正する方がよい」は56%となり、前年の同時期の調査49%から上昇した。「改正しない方がよい」は前回から8ポイント低下の40%。近年は憲法改正の賛成派と反対派が5割前後で拮抗していたが、今回は差が16ポイントに広がった。調査は郵送方式で3月9日から4月15日、全国の有権者3000人を対象に実施し、2155人から回答があった(回答率72%)。

   上記の3つの世論調査から、憲法を「改正する方がよい」という民意のトレンドが読める。民意をそう傾けている要因は少なくとも2つあるのではないか。一つはやはり新型コロナウイルスの感染拡大だ。大阪市長で日本維新の会の松井一郎氏が記者会見(4月30日)で、「政治の責任として私権制限についてタブー視することなく議論すべきだということを今、突きつけられている。有事の場合にどういう形で人の動きを抑制できるのかということを、私権制限を含めて議論すべきだ」と述べた(4月30日付・NHKニュースWeb版)。

   憲法では基本的人権が重要な構成要素であり、「私権制限」を口にすることですらご法度だ。しかし、このコロナ禍で店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿が先日もテレビで報じられていた。こうした現実を見ると、政府や行政が緊急事態宣言で実行性を伴った権限で対応できるよう、私権制限もある意味で必要だという意識が民意として高まっているのではないだろうか。

   集団的自衛権の行使を認めた安保法制関連法の施行から5年がたっ。 4月17日に発表された日米首脳による共同声明でも「台湾海峡の平和と安定の重要性」が盛り込まれたことから、自衛隊がアメリカの戦争に加担しかねないとの意見も野党の一部にはある。ただ、台湾の平和が脅かされれば次は尖閣・日本だと憶測する。こうした中国への警戒感が憲法改正への民意を高めているに違いない。

⇒3日(祝)夜・金沢の天気       はれ

★アメリカ死神と北斎パロディ画の共通点

★アメリカ死神と北斎パロディ画の共通点

   きょう5月1日は立春から数えて88日目、「八十八夜」だ。いにしえより、この日に摘んだ茶は上等なものとされる。「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る・・・」と文部省唱歌の『茶摘み』の歌を思い出す。さらに、この茶摘みの唄からもう一つ思い出すのが、「ズイズイ ズッコロバシ ごまみそズイ 茶壺におわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ」という童謡だ。二つの歌の背景を探る。

   江戸時代、お茶は最高級品だった。「お茶壺道中」という言葉があった。幕府が将軍御用の宇治茶を茶壺に入れて江戸まで運ぶ行事を茶壺道中と言った。この道中は、京の五摂家などに準じる権威の高いもので、茶壺を積んだ行列が通行する際は、大名といえども駕籠(かご)を降りなければならない、というルールだった。街道沿いの村々には街道の掃除が命じられ、街道沿いの田畑の耕作が禁じられた。「ズイズイ ズッコロバシ ごまみそズイ 茶壺におわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ」というわらべうたは、田植えなどの忙しい時期に余分な作業を強いられるお百姓たちの風刺を歌ったものだった。世の中には裏と表の表層があるものだ。

   これも裏と表の表層とも言えるかもしれない。在日中国大使館が先月29日付のツイッターで、「アメリカが『民主』を持って来たらこうなります」という日本語のコメントとともに、アメリカを死神になぞらえた画像を掲載した。アメリカの国旗を模した服を着た死神が、イラクやリビア、シリアなどと書かれた扉を開けて回り、部屋の中からは血が流れ出ている=写真・上=。このツイートは現在削除されているが、なぜ在日中国大使館がこのような画像をわざわざ掲載したのか解せない。その背景を憶測する。

   単純な見方をすれば、アメリカのバイデン大統領が先月28日に行った就任100日目の施政方針演説で、中国の習近平国家主席のことを「autocrats」(独裁者)と称したことではないかと推測できる。これに反発して、アメリカこそ民主主義を無理強いしようとしてイラクやリビア、シリアなどを混乱に落とし込んでいる死神だ、と。それにしても、タイミングが良すぎる。中国御用達のイラストレーターにこの画像を制作させたものであることは推察できるが、これは以前から作成していて、アップロードのタイミングを見計らっていたのではないだろうか。

   もう一つ、絶妙なタイミングがある。日本政府が東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長が26日付のツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディ画像を投稿して批判した=写真・下=。

   アメリカ死神と北斎パロディ画の両作品の作者はおそらく同一人物で日本に在住する中国御用達のイラストレーターではないだろうか。アメリカ死神の画像では「アメリカが『民主』を持って来たらこうなります」という日本語のコメントがついているが、なぜ中国語、あるいは英語ではなかったのだろうかと考えると、単純な話が、作者は日本人なのだろうと推測する。犯人探しをするつもりはまったくない。ただ、作品を中国側に売り込むのではなく、パロディ画作家として自立する道を拓いてほしい、ただそう思っただけである。

⇒1日(土)夜・金沢の天気     あめ

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

   新型コロナウイルス感染者が急拡大している大阪府できのう20日新たに1153人増えた。また、医療体制がひっ迫していることから、全国の大学病院などから看護師ら90人の医療従事者が大阪に入るとニュースで報じられていた。ここまで来ると、まさに「戦時下」の印象だ。そして、昨夜に大阪府は国に緊急事態宣言の発令を正式に国に要請した。緊急事態宣言が発令されれば、人の流れを減らすために、百貨店など商業施設やテーマパークなどに休業要請がなされる。宣言の期間については3週間から1ヵ月の見込み。

   しかし、大阪府では3度目となる緊急事態宣言の効果は果たしてあるのか。2度目の緊急事態宣言(1月14日から2月28日)の後、大阪市内に「まん延防止措置」(4月5日から5月5日)が適用され、飲食店に午後8時までの営業時間の短縮を要請し、府民に対しても不要不急の外出自粛を求めている。それでもほぼ連日のように新たな感染者が1000人を超えている。そして、今回の3度目の緊急事態宣言の要請だ。

   大阪のメディアのニュースをチェックすると、3度目の緊急事態宣言中の飲食店に対する措置として3つの案を国と調整する。1つ目は、すべての飲食店の休業、2つ目は土日祝日は休業し、平日は午後8時までの時短営業で酒の提供を自粛、3つ目は休業要請はせずに酒の提供は自粛する、という内容(4月20日付・読売テレビニュースWeb版)。仮にすべての飲食店の休業だとしても効果はあるのか。

   先日、大阪の梅田の繁華街で、店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿がテレビで報じられていた。このとき思い出したのが、子どものころ父親から聞いた、「また逃げたか八連隊」という言葉だった。戦時中、大阪を中心に部隊編成された陸軍の八連隊では司令官が「突撃」と叫んでも、逆に逃げる兵士が多くいて部隊の統制が効かないとの例えだった。コロナ禍でこのような言葉を持ち出すことは相応しくないが、吉村府知事が緊急事態宣言だといくら叫んでも、実行性が伴わなければコロナ禍は治まらないのではないか。むしろ大阪にワクチン接種を集中させてもよいのではないだろうか。(※写真は大阪府庁舎=「Wikipedia」より)

⇒21日(水)午前・金沢の天気      はれ

☆サイバー攻撃 中国vs日米の構図

☆サイバー攻撃 中国vs日米の構図

   まるで、日米首脳会談が終わるのを待っていたかのようなタイミングだ。警視庁は20日、日本に滞在歴がある中国共産党員でシステムエンジニアの30代の男が、サイバー攻撃に使ったレンタルサーバーを偽名で契約していたとして私電磁的記録不正作出・供用の容疑で書類送検した(4月20日付・NHKニュースWeb版)。2016年からJAXAや防衛関連の企業など、日本のおよそ200に上る研究機関や会社が大規模なサイバー攻撃を受け、警察当局の捜査で、中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊の指示を受けたハッカー集団「Tick」によるものと分かった(同)。

   中国には2017年6月に施行した「国家情報法」がある。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があれば、ハッカー集団やファーウェイなど中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。国民に要請の対象となる。

   この中国の動きを警戒して、アメリカでは2018年8月に「国防権限法」を施行し、中国のハイテク企業5社からアメリカの政府機関が製品を調達するのを2019年8月から禁止している。2020年8月からは、5社の製品を使う各国企業との取引も打ち切るなど徹底している。日本では、警視庁公安部が2017年4月に「サイバー攻撃対策センター」を設置し、専門知識を持った100人が所属していて、主に政府機関や企業などへの海外からのサイバー攻撃について捜査を行っている。今回の中国によるサイバー攻撃の調査も対策センターが追跡していた。

   今回の警視庁の発表は、冒頭で述べた日米首脳会談が終わるの待っていたタイミングだった。共同声明「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」では、サイバー攻撃について盛り込んでいる。「We also highlighted the importance of strengthening bilateral cybersecurity and information security, a foundational component of closer defense cooperation, and of safeguarding our technological advantages. (日米両国はまた、より緊密な防衛協力の基礎的な要素である、両国間のサイバーセキュリティおよび情報保全強化並びに両国の技術的優位を守ることの重要性を強調した)」

   アメリカのFBIも、情報通信や宇宙関連の企業から機密データを盗み出したとして、中国のハッカー集団をこれまで複数回起訴している。共同声明を受けて、警視庁はFBIと連携を強化するカタチで中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊やハッカー集団と対峙していくことになるだろう。尖閣諸島の領海侵入を含め、中国との関係はすでに曲がり角に入っている。

⇒20日(火)午後・金沢の天気   はれ

★「恩を仇で返す」ような

★「恩を仇で返す」ような

   最近のニュースで「恩を仇で返す」という言葉を思い浮かべたことが2つある。慈しみや施しを受けた相手に対して、相応の礼を尽くすのではなく、逆に相手を攻撃するような態度のことだ。

   秋篠宮家の長女の眞子さまと婚約内定中の小室圭氏が、実母と元婚約者男性の金銭トラブルについて記したA4用紙28枚の文書を発表した(今月8日)。その「小室文書」をメディア各社がネットで上げているので、斜め読みだったが目を通した。目に留まったのは「切実に名誉の問題」とする文面だった。以下「AERA」公式ホームページに掲載されている文書の抜粋。

「どのような理由があろうと、早期解決と引き換えに借金でなかったものが借金であったことにされてしまう事態を受け入れることはできないと考えたからです。借金だったことにされてしまえば、元婚約者の方のおっしゃることが正しかったということになり、私や母は借金を踏み倒そうとしていた人間だったのだということになります。これは、将来の私の家族までもが借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続けるということを意味します。」「一般的には金銭トラブルと呼ばれていますが、切実に名誉の問題でもありましたし、今でも、同じように受け止めています。」

 

   元婚約者から請求された「400万円」を返済すれば、借金だったとの意味付けになり、「借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続ける」ことから、これは「名誉の問題」だと記した。かつて生活費を支援してくれた元婚約者への感謝の気持ちというものが文面からは感じられない。

   その象徴的な行為が「隠し録り」だ。2012年9月、元婚約者が婚約破棄にともない金銭に関する要求はしないとの会話を収めた録音データの存在を小室氏は記している。おそらくその後も「隠し録り」を続けていたのだろう。両者が真摯に話し合いの場に持って行けない状況をつくっていたのは小室氏側ではないだろうか。

   そして、「名誉の問題」は4日後に一転する。今月12日付のNHKニュースWeb版によると、小室圭氏の代理人弁護士は12日、報道陣の取材に応じ、母親と元婚約者の男性の金銭問題について、小室氏側が解決金を渡す意向があると明らかにした。なぜ方針転換をしたのだろうか。AERAが9日から12日にかけて実施した緊急アンケート(2万8641人回答)によると、「小室氏は文書によって金銭問題の説明を十分に果たしたか」の問いに94.7%が「十分とは言えない」と回答している。小室文書はむしろ国民の不信感を募らせたのだ。

    もう一つのニュース。東芝の経営再建に功績があった代表執行役社長兼CEOの車谷賜昭氏が任期半ばで辞任した(今月14日付・日経新聞Web版)。東芝は2015年に発覚した不適切な会計処理やアメリカでの原子力事業の失敗で債務超過に陥り、2017年8月には東証1部から2部に降格した。CEOとして白羽の矢が立ったのが、三井住友銀行出身の車谷氏だった。

    辣腕を振るったのは6000億円の増資やNAND型フラッシュメモリー会社「キオクシア」(旧東芝メモリ)の売却だ。そして、今年1月に東証1部に復帰した。3月に入って、いざこざが起きた。昨年7月の定時株主総会で、一部株主の議決権が無効だったとして今年3月の臨時株主総会で、定時株主総会の公正さを調査する議案が採択された(3月18日付・東芝公式ホームペ-ジ)。いわゆるアクティビスト(物言う株主)から企業統治への不信が噴出する事態に陥っていた。本来ならば再建の功労者なのだが。

(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒18日(日)午後・金沢の天気     くもり

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

   アメリカを訪問中の菅総理はホワイトハウスでバイデン大統領と初めて対面での会談を行った。会談後に「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」と題する共同声明を発表した。いち早くホワイトハウスの公式ホームページに共同声明が掲載されている=写真・上=。読むと、強烈に中国を意識した内容だ。以下抜粋。

「Together, we oppose any unilateral action that seeks to undermine Japan’s administration of the Senkaku Islands.」(両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する)

「We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues. We share serious concerns regarding the human rights situations in Hong Kong and the Xinjiang Uyghur Autonomous Region. 」(両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する)

「The United States and Japan recognize that digital economy and emerging technologies have the potential to transform societies and bring about tremendous economic opportunities. 」(アメリカと日本両国は、デジタル経済および新興技術が社会を変革し、とてつもない経済的機会をもたらす可能性を有していることを認識する)として、生命科学やバイオテクノロジー、AI、宇宙の分野で研究と技術開発で協力する述べている。5Gなどでは中国企業を警戒した内容になってる

「President Biden and Prime Minister Suga affirmed their commitment to the security and openness of 5th generation (5G) wireless networks and concurred that it is important to rely on trustworthy vendors. 」(バイデン大統領と菅総理は、第5世代無線ネットワーク(5G)の安全性および開放性へのコミットメントを確認し、信頼できる事業者に依拠することの重要性について一致した)。

   この共同声明に対して、アメリカのメディアの反応は。CNNのWeb版の見出し=写真・下=。「Biden uses meeting with Japanese Prime Minister to emphasize new focus on China」(バイデンは日本の首相との会談を利用して、中国への新たな焦点を強調している)。アメリカと中国の対峙に日本を巻き込むカタチで新たな争点をあぶりだしている、と好意的な論調だ。

   また、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたことは台湾にとっては画期的なことだろう。共同通信Web版(17日付)は「台湾外交部(外務省)の欧江安報道官は17日、日米首脳が共同声明にを明記したことに心からの感謝を表明した」と伝えている。

   一方の中国は穏やかではないだろう。時事通信Web版(同)は中国の在アメリカ大使館報道官が共同声明について「強烈な不満と断固とした反対を表明する」との談話を発表し、「台湾、香港、新疆ウイグル自治区に関する問題は中国の内政であり、東・南シナ海は中国の領土主権に関わり、干渉は受け入れられない」と強調した、と報じている。

   日米首脳会談ではテーブルに就いた参加者全員がマスクを、共同記者会見では記者との距離をとってマスクを外して、違和感なく臨んでいた。今回の首脳会談をテレビで視聴していて、菅氏とバイデン氏はなんとなく似た者同士との印象を受けた。前述のCNNの見出しで「use」という動詞を使っているが、まさに互いが使い合う外交スタンスが共同声明からも見えてくる。シンゾー(安倍氏)とドナルド(トランプ氏)の個性的な外交とは違った意味で強力なコンビが組めるのかもしれない。

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