⇒ニュース走査

★振り向けば、街中にクマがいる

★振り向けば、街中にクマがいる

          クマの出没が相次ぐ石川県内で、ついにショッピングセンターにクマが現れるという騒動が起きた。きのう19日午前7時50分ごろ、加賀市のJR加賀温泉駅前にある大型ショッピングセンターで、搬入口にクマがいるのを従業員が発見し通報。クマはそのまま搬入口から店舗内に侵入した。このためセンターでは午前9時30分の開店を取り止め、従業員を別の建物に避難させた。最初の通報から13時間が経過した午後9時過ぎ、猟友会が店の中にいたクマを駆除した。センターはこの日休業した(10月19日付・NHKニュースWeb版)。

   加賀市は山代や山中、片山津といった温泉地があり、JR加賀温泉駅はまさにその玄関口でもある。前日の18日午後7時ごろには山代温泉で70代の女性がクマに襲われ、17日にも同じ山代で3人がケガをしている。

   政府の観光支援事業「Go To トラベル」がこのところ順調なだけに、クマ騒動が温泉地観光に水を差さしたのではないか。「Go To トラベル」は1人1泊当たり1万4千円が上限の割引額があり、加賀温泉(山代、山中、片山津、粟津)や能登の和倉温泉の旅館がにぎわいを見せている。いまはマツタケの季節、来月になればさらにズワイガニでにぎわいが戻ると関係者は期待しているだろう。

   連日のニュースでクマの様子に変化を感じるのは、街中に頻繁に出没していることだ。これまでは、奥山から人里に下りてきて柿の木に登る、といったケースだった。それが、JR駅近くのショッピングセンターに現れる。金沢市内では、周辺にオフィスビルなどが立ち並ぶ兼六園近くの金沢城公園でも出没したことがある。街に出没するのはクマだけではない。イノシシ、サルなどの出没がニュースとなる頻度も高くなっている。

   石川県が8月下旬に調べたところ、ブナの実が大凶作、ミズナラの実が並作、コナラの実が凶作とみなされた。ブナは過去10年で最も不作とか。冬眠前のクマが餌を求めて里山に下りる状況はしばらく続くという。餌を求めるために街中のショッピングセンターにやってきたとなるとただ事ではない。人の生活圏に入ることを厭わない「新世代」のクマやイノシシが出現しているのではないだろうか。新聞の見出し(10月20日付・朝日新聞)の引用にもなるが、振り向けば、街中にクマがいる。

⇒20日(火)朝・金沢の天気      はれ

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

☆仰ぎ見る富士なれど、世間は騒々しく

   共同通信社が17、18両日に実施した全国電話世論調査によると、菅内閣の支持率は前回9月の調査と比べて5.9ポイント減の60.5%、不支持率は5.7ポイント増の21.9%だった。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題を巡り、菅義偉首相の説明は「不十分だ」との回答が72.7%に達した(10月18日付・共同通信Web版)。

         NHKが今月9-12日で行った世論調査によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、政権発足後初めての先月の調査より7ポイント下がって55%、「支持しない」は7ポイント上がって20%だった。日本学術会議が推薦した新しい会員の一部を任命しなかったことについて、菅総理が「法に基づいて適切に対応した結果だ」と説明していることに、どの程度納得できるか聞いたところ、「大いに納得できる」が10%、「ある程度納得できる」が28%、「あまり納得できない」が30%、「まったく納得できない」が17%だった(10月13日付・NHKニュースWeb版)。

   各メディアの世論調査では内閣支持率が前回比で減っている。共同とNHKはそれぞれ6ポイント、7ポイントだ。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否となったことをめぐり、連日メディアで問題視されているにもかかわず、NHKでは支持率55%と高い。菅内閣とすれば想定内のことなのかもしれない。

   この日本学術会議問題をめぐってさまざまな視点から批判や意見があって当然なのだが、まったく解せないのが、静岡県の川勝知事の発言だった。知事は今月7日の定例記者会見で、「菅首相の教養レベルが図らずも露見した。学問をされた人ではない。単位を取るために大学を出た」などと発言した。その後、12日も報道陣に「訂正する必要は全くない」と強調し「(菅首相の)経歴を見ると、学問を本当に大切にしてきたという形跡が見られない」と述べていた(10月16日付・静岡新聞Web版)。このニュースを知って、まるで人格攻撃のようだと感じた。

   静岡県庁の公式ホームページで知事のプロフィルをチェックすると、「昭和50年3月 修士(早稲田大学大学院経済学研究科)」「昭和60年10月 D.Phil.(オックスフォード大学)」とあり、「私は学問を追求してきた」と言わんばかりだ。ただ、「言葉は人格を表す」とよく言われるが、学歴と人格の乖離が目に余る人は私の周囲にもいる。知事は去年12月19日にも、来年度予算に難色を示した県議会の自民党系の最大会派を念頭に「やくざの集団、ごろつきがいる」と発言。県議会2月定例会で撤回、謝罪し「今後、不適切発言はしない」と答弁したばかりだった(同)。

   知事は今月16日にようやく発言を撤回し陳謝した。静岡県公式ホームページには「『富士の国』づくりに向けて」と題したページがある。以下引用する。「富士」の「富」は物の豊かさを、「士」は心の豊かな徳のある人格者を意味しており、その字義をふまえ、我々は物の豊かさと心の豊かさの調和した国をめざして「富国有徳」をもって理念とする。知事には富士山のように仰ぎ見、畏敬の念に打たれる人格者であってほしいと願うのだが。(※写真は、静岡県富士市役所の「フリー写真素材集」より)

⇒19日(月)朝・金沢の天気   くもり

☆17才、人生の転機となったヤジ

☆17才、人生の転機となったヤジ

   中学時代に友人たちとエレキギターのバンドを組んで、サイドギターを担当した。当時流行していた、ザ・ベンチャーズの演奏曲を文化祭で披露したりした。当時ヒットしたヴィレッジ・シンガーズの『バラ色の雲』やいしだあゆみの『ブルー・ライト・ヨコハマ』は今でもカラオケで歌っている。高校時代で心に残るのは南沙織の『17才』だろうか。これは歌うというより、南沙織への憧れだったのかもしれない。先日亡くなった作曲家の筒美京平氏がつくったこれらの曲が私たちの世代の思春期を盛り上げてくれたのかもしれない。

   今にして思えば、17才が自身にとっての転機だった。能登で生まれ、高校時代は金沢で過ごした。クラブはESSに所属していて、2年のときに石川県英語弁論大会に出場する幸運に恵まれた。スピーチのテーマは「学生運動について」だった。大阪万博(1970年)が華やかに開催され、翌年には南沙織の「17才」がヒット曲となっていた。世の中がカラフルに彩られた時代の始まりではなかったろうか。その一方で、赤軍派による「よど号」のハイジャック事件(1970年)があり、連合赤軍による浅間山荘事件もその後に起きた。金沢大学でも学生運動が盛んで、新聞紙面をにぎわせていた。そんな闘争の時代の残影に私は違和感や憤りを感じていた。

    英語弁論大会でのスピーチはその気持ちをストレートに表現したものだった。大会は大学の部と高校の部があり、金大生も多く客席にいた。私のスピーチが余りにもストレートな表現だったのか、会場の数人から「ナンセンス」と大声のヤジが飛び、一時騒然となった。コンテストでは優勝した。高校の部は自身を含め4人の出場だった。審査委員の講評はよく覚えている。「これだけ会場をにぎわせた高校生のスピーチはこれまでなかった」と。自身それほど英語の発音が上手ではないと分かっていた。詰まるところ、大学生からヤジを浴びせられた分、ほかの3人より目立ったことがどうやら優勝の理由だった。

    東京の大学に入ったが、英語弁論大会での優勝経験が忘れられず、部活は日本語の弁論部に入った。そこで、論理と調査と統計に裏打ちされた弁論の手法をたたき込まれた。弁論部出身の新聞記者からアドバイスもあって、マスメディアを志望してUターンし、地元の新聞社に入社した。その後、テレビ局へ転職し、メディア業界を28年間渡り歩いた。17才のときの英語弁論大会が人生の転機となったのだろうと思う。

    以下は後日談だ。新聞社に入りたてのころ、先輩記者に居酒屋に誘われた。先輩はかつて学生運動でならした人だと別の先輩から聞いていた。居酒屋で先輩は「君は○○高校の出身か。そう言えば、5年か6年前に英語の弁論大会を取材したときに、学生運動を批判した生意気そうなヤツがいたぞ」と言う。私はピンときて「それは私です」と告白した。先輩のびっくりした表情を今でも覚えている。ヤジを飛ばした一人がどうやら先輩だということも分かった。先輩はその後退社した。あの大声の「ナンセンス」のヤジが優勝に導いてくれたのだと思っているので、私は今でも感謝している。

⇒13日(火)午前・金沢の天気   はれ

★いつでも誰でもどこででも日銀のデジタル通貨

★いつでも誰でもどこででも日銀のデジタル通貨

   このブログでも何度か取り上げてきた中央銀行が発行するデジタル通貨について、きのう日銀が欧米の中央銀行との共同研究報告書を公表した。日銀の公式ホームページをのぞくと、来年2021年度から実証事業を始めるとある。いよいよデジタル法定通貨が経済のコアとして浮上してきた。

   このブログで、政府と日銀はアフターコロナの政策として、2024年に予定している新札発行をデジタル通貨へと舵を切るのではないかと憶測してきた。以前から紙幣や硬貨は非衛生的だとの指摘があり、新型コロナウイルスの感染拡大にともなって一気にキャッシュレス化が進んだ。もちろん紙幣や硬貨を粗末にするという意味ではない。  

   以下、日銀ホームページの共同研究報告書から引用する。日銀は、現時点でデジタル法定通貨(Central Bank Digital Currency、以下CBDC)を発行する計画はないと前置きしながしなら、決済システム全体の安定性と効率性を確保するよう準備する、としている。CBDC役割について、1.現金と並ぶ決裁手段の導入、2.民間決裁サービスのサポート、3.デジタル社会にさわしい決済システムの構築、の3点を上げている。

   現金に対する需要がある限り、現金の供給についても責任をもって続けていく。CBDCが発行されると、民間企業や金融機関によるデジタル通貨と競合し、民間の活力を損なう懸念もある。たとえば、銀行預金からの引き出しが容易になって金融危機時に銀行経営が揺らぎやすくなるといったことも想定され、そうした事態が起きないよう民間決裁サービスをサポートする。

   CBDCが持つべき特性をまとめている。現金や預金などとの交換性や現金払いやスマホ決済のような決済時の容易さ(ユニバーサルサービス)、取引の即時決済性といった強靱性、セキュリティを上げている。つまり、現金のように「誰でも使える」「安心して使える」「いつでも、どこでも使える」との位置づけだ。

   日銀は21年度の早い時期に実証実験を始め、1.中央銀行と民間事業者の協調・役割分担のあり方、2.CBDCの発行額・保有額制限や付利に関する考え方、.3.プライバシーの確保と利用者情報の取扱い、4.デジタル通貨に関連する情報技術の標準化のあり方などの点について検討を進めていく、としている。

   菅内閣が進めるデジタル化の促進はまさに日銀のこの動きと連動するものだろう。これと選挙のデジタル投票が同時に進めば、日本のデジタル化は政治と経済の両面でかなり加速するのではないだろうか。

⇒10日(土)朝・金沢の天気   くもり

★ポストコロナで具現化、大学への未来投資

★ポストコロナで具現化、大学への未来投資

    財政が厳しい国からの予算配分を待つだけでは、最先端の研究は進まず、世界に後れを取ってしまう。ならば、「大学債」を発行し研究資金を調達する。当たり前のことがようやくできるにようになった。東京大学は大学債を発行し、200億円を債券市場から調達すると発表した(10月8日付・NHKニュースWeb版)。

   東京大学公式ホームページによると、大学債は「FSI債」の名称で、大学が社会変革を理念に進めるFSI(Future Society Initiative)活動を加速させることを目標としている。総長メッセージが掲載されている。以下一部を引用。

   「学債の発行は、直接的には、東京大学を真に自立した経営体とすることに貢献します。しかし、それだけではありません。よい良い未来社会づくり向けて、大学を起点に、知識集約型社会によりふさわしい、資金を動かし循環させる新しい仕組みをつくることにもつながると考えています。それが、閉塞感が拡がる現在の経済社会システムを変革する駆動力を生み出すことを期待しています。これはポストコロナ時代における大学の新しい立ち位置、姿を具現化するものなのです」

   公式ホームページによると、投資家は生命保険会社や銀行、学校法人のほか、意外だったのは蒲郡市や飛騨市、宮崎県新富町といった自治体、それに吉本興業ホールディングスなども。これら46社に毎年0.8%余りの金利を支払い、40年後に返済する仕組み。市場から調達した資金は、素粒子観測施設「スーパーカミオカンデ」の後継となる次世代の施設「ハイパーカミオカンデ」の整備費の一部に充てるほか、宇宙の成り立ちを調べるため、ハワイで計画している超大型望遠鏡の整備費用などに充てる。

   これまで国立大学が発行する大学債は、付属病院やキャンパス移転などの整備事業が主だったが、世界最高水準の教育研究施設の整備事業も対象にできるようになった。ただし、文科省が世界レベルの教育・研究を進めていると認めた指定国立大に限られる。こうした研究は収益事業ではないので、大学全体として寄付金や運用益などの余裕金で返済していくことになる。

   新型コロナウイルスの感染対策と経済立て直しに国の財政が向けられ、大学の研究費がひっ迫してくることは想像に難くない。東京大学は今後10年で1000億円規模の調達を計画している。使いみちが自由な資金を市場から確保し、研究活動を強化する、これこそが「学問の自由」を担保することになる。総長のメッセージにあるように、ポストコロナ時代における大学の新しい立ち位置、姿の具現化ではある。

(※写真は「ハイパーカミオカンデ」の紹介ビデオから)

⇒8日(木)夜・金沢の天気   あめ

☆テレビメディアに厳しい菅氏、ある事件

☆テレビメディアに厳しい菅氏、ある事件

    菅総理の印象について地味で忠実というイメージを持っている人が周囲に多い。かつてテレビ局に在籍した自身の目線で言えば、「テレビメディアに厳しい」というイメージがある。印象に残る事件がある。       

    2007年1月7日放送の関西テレビ番組『発掘!あるある大事典Ⅱ』の「納豆でヤセる黄金法則」について、週刊朝日が11項目のデータについて関西テレビに質問状を送ったのがきっかけで、捏造事件が発覚した。緊急記者会見を行った関テレの社長は当初、「納豆のダイエット効果の有無は学説で裏付けられている」として、「番組全体は捏造ではない」と主張したが、捏造データの多さを記者から追及されて「捏造」と認めた。高視聴率を誇った番組は中止となった。

   その後、2月7日に関テレ社長は総務省近畿総合通信局を訪れ、捏造についてまとめた報告書を提出した。ところが、近畿総合通信局側は納得しなかった。疑惑が次々と出て、520回すべてを調査し報告するよう近畿総合通信局側は求めた。電波法では「総務相は無線局の適正な運用を確保するため必要があると認めるときには、免許人などに対し、無線局に関し報告を求めることができる」(81条)と記されている。そして、3月30日、総務省は総務大臣名の行政指導としては最も重い「警告」を行った。そのときの総務大臣が菅氏だった。テレビ業界を驚かせた言葉が、「今後、放送法違反が繰り返さた場合は電波停止もありうる」だった。

   伏線があった。菅総務大臣は2月9日の国会審議で、再発防止に向けて放送法の改正が必要だと発言していた。テレビ局に捏造事件があり、テレビ局側が認めた場合、総務大臣はテレビ局に対して再発防止計画を要求する。再び繰り返された場合は停波・免許取り消しの行政処分を行うという内容だった。このとき、テレビ業界は戦々恐々としていた。日本民間放送連盟は(民放連)は自浄的な措置として4月19日付で関西テレビを除名処分にした。

   この年の12月21日、放送法の改正案が参院本会議で可決・成立した。ただ、このときの改正案では菅氏が述べていた「再発防止計画の提出義務化」は削除されていた。その前の7月29日の参院選で与野党の勢力が逆転。今国会では番組等の不祥事については、あくまでも世論の批判とテレビ業界の自浄努力に委ねるべきであって、国家権力が安易に介入すべきではないとする野党の主張を与党がくみ入れ、この「再発防止計画の提出義務化」の改正案は見送っていた。菅氏も8月27日に総務大臣を退任していた。

   NHKと民放の両者が共同でつくる「放送倫理・番組向上機構」(略称=BPO、放送倫理機構)に放送倫理検証委員会を設け、やらせや捏造が発覚した番組を外部委員にチェックしてもらい、問題があった局に再発防止策を提出させるという自主的な解決システムをつくっている。しかし、やらせや捏造は後を絶たない。フジテレビのリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーがことし5月23日に自死した問題で、BPO放送人権委員会は遺族からの申し立てを受け、審理入りを決定した(9月15日付・BPO公式ホームページ)。

   BPO人権委員会が、番組内に映る虚像が本人の人格として結び付けられて誹謗中傷され、精神的苦痛を受けたことが自死の原因として、人格権の侵害を認定。さらに、それが裁判にも持ち込まれた場合、菅内閣はどう反応するだろうか。「再発防止計画の提出義務化」の法改正を改めて持ち出してくるのではないか。13年経ってもテレビが変らなければ、これしかない、と。

⇒7日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★尖閣の次は日本海EEZなのか

★尖閣の次は日本海EEZなのか

   きょうの朝刊で石川県の地元紙が日本海のスルメイカの漁場、大和堆(EEZ=日本の排他的経済水域)で大量の中国漁船が違法操業を行っていると報じている=写真=。記事によると、水産庁が9月末までに退去警告をした船の数は延べ2586隻に上っている。去年までは北朝鮮の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増した。記事を読んで、「尖閣の次は日本海か」と胸騒ぎがした。

   記事によると、8月中旬から大和堆周辺で中国の大型底引き網船の違法操業が活発に動き始めた。水産庁の取締船はこれまで違法警告したにもかかわらず退去しなかった漁船に対し放水で警告を発した漁船は329隻に上った。

   その背景はおそらく、中国で顕在化しつつある食料危機ではないだろうか。習近平国家主席が「飲食の浪費を断固阻止する」との指示を出し、新型コロナウイルス感染の世界的まん延は「警鐘」だと指摘し食料問題に危機意識を持つよう訴えた(8月20日付・共同通信Web版)。中国における食料問題は6月以降、中国各地で断続的に続いた豪雨災害で水田などの耕作地が冠水被害が広がったからだ。習氏が「飲食の浪費を断固阻止する」の指示を出すほど、危機感がひっ迫しているとも受け取れる。

   食料危機のうち、タンパク源を確保するための水産資源の確保にも躍起なのではないだろうか。すでに、中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っていた(7月27日付・ブログ「北の漂着船、グローバル問題に」)。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZだろう。

   冒頭の胸騒ぎは「大和堆の中国所有論」のことだ。中国は今年8月に東シナ海の海底地形50ヵ所について命名リストを公表した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域のほか、沖縄本島沖の日本のEEZも含まれる。その前、4月には南シナ海でも海底地形55ヵ所や島嶼(とうしょ)や暗礁25ヵ所について命名リストを公表している。中国とすれば、関連海域と海底に主権と管理権があると主張することで、海洋管理を強化する狙いがある。

   次に来るのは日本海における海底地形の命名リストではないだろうか。地元紙は今回の中国漁船の違法操業について、「EEZ内に中国の公船が現れているとの情報もある」と伝えている(10月6日付・北國新聞)。漁船の違法操業に紛れて、公船が海底調査を行っている。あるいは逆か。海底調査を行う目くらましのために漁船を動員しているのかもしれない。

   それにしても不可解なのは水産庁の発表にもかかわらず、全国メディアは日本海での違法操業のことをまったく伝えていない。スルメイカ漁だからか。マグロだったら大騒ぎか。

⇒6日(火)夜・金沢の天気    くもり   

☆これは菅内閣の深謀遠慮か

☆これは菅内閣の深謀遠慮か

   日本学術会議は政府から独立して政策の提言などを行う日本の科学者を代表する機関だ。任命権は総理にある。その学術会議が菅政権ともめている。学術会議が、会員の候補として105人を推薦した学者のうち、菅氏が6人を任命しなかった。これを受けて、学術会議は任命されなかった理由の説明を求めるとともに、6人の任命を求める要望書を菅氏に宛てて提出することを決めた(10月3日付・NHKニュースWeb版)。

   学術会議のミッションは「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること」「科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること」だ(日本学術会議公式ホームページ)。菅氏が任命を拒否した理由は一体なんなのか。今回任命されなかった6人はキリスト教学者、政治学者(政治哲学、政治思想史)、法学者(行政法)、法学者(憲法)、法学者(刑法)、歴史学者(日本近代史)だ(10月2日付け・同)。

   6人の中には、3年前の共謀罪の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案をめぐり、参院法務委員会に共産党が推薦する参考人として出席し、「何らの組織にも属していない一般市民も含めて広く市民の内心が捜査と処罰の対象となり、市民生活の自由と安全が危機にさらされる戦後最悪の治安立法となる」と述べた学者もいた(同)。6人はこれまで何らかの政治的な発言、あるいは自民党の政策に対して政治的に行動ならびに発言を繰り返してきた。

   別な角度からこのニュースを深読みする。日本学術会議法第7条2項で「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とある。さらに、第1条の2項で「日本学術会議は、内閣総理大臣の所轄とする」、3項で「日本学術会議に関する経費は、国庫の負担とする」とある。これを読み解く限り、総理に任命の拒否権があると読める。ちなみに、第2条は「日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的とする」とある。菅氏の理由はこの第2条にそぐわない人物ということなのだろうか。その理由を聞いてみたい。

   さらに別の視点で見てみる。日本学術会議は学者としての社会的な権威付け、つまり、日本学術会議の会員と称しただけで、社会の格付けが上がる。また、研究ファンドが取得しやすくなるランク付けではないか。この目線で言えば、日本学術会議そのものは果たして必要なのだろうか。2020年度の年間予算は10億5000万円。国家予算の規模からすれば微々たるものだ。が、行政改革の一つとして、この際だから権威付けのような機関を解散しようとの菅氏の深謀遠慮ではないだろうか。うがった見方ではある。(※写真は、首相官邸公式ホームページより)

⇒3日(土)午後・金沢の天気    はれ

★トランプ大統領、コロナショック

★トランプ大統領、コロナショック

   このニュースで驚いているのは中国かもしれない。ニューヨークタイムズは速報で伝えている。「Trump’s Virus Symptoms Appear Mild So Far」。新型コロナウイルスに感染したトランプ大統領の症状は今のところ軽度だ、と。トランプ氏は陽性の検査結果を受けて風邪のような症状を呈している。マイク・ペンス副大統領と他の当局者は、陰性の結果を出ている。いよいよ、コロナ禍がホワイトハウスにまで攻めてきた。

   気になるのは感染ルートだ。ニューヨークタイムズは記事の中で「The Secret Service sustained a coronavirus outbreak at its training facility in Maryland in August, weeks before President Trump was infected, evidence of growing infections at the agency responsible for protecting the president.」と述べている。シークレットサービスは、トランプ氏が感染する数週間前の8月にメリーランド州の訓練施設でコロナウイルスのアウトブレイクを起こしており、大統領のガードに責任を持つ機関で感染が拡大していた。

   トランプ氏は自身のツイッター(2日付)で、「Tonight,@FLOTUS and I tested positive for COVID-19. We will begin our quarantine and recovery process immediately. We will get through this TOGETHER!」(今夜、@FLOTUS(大統領夫人)と私は、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性と診断された。ただちに隔離と回復のプロセスに入る。共に乗り越えていく!)

   先月には「われわれはこの疫病を世界に振りまいた国、中国の責任を追及しなければならない。中国政府、そして事実上、中国に操られているWHOは、ヒトからヒトへの感染を示す証拠はないという偽りの宣言をした」(9月22日)と息巻いていた。今回、自身が感染したことで中国に対する矛先がさらに先鋭化していくのではないか。

   そして、あと1ヵ月後に迫ったアメリカ大統領選。対立候補のバイデン氏とのテレビ討論などはどう展開していくのか、目が離せない。

⇒2日(金)夜・金沢の天気     はれ

★「死なばもろとも」中国の不動産バブル

★「死なばもろとも」中国の不動産バブル

   中国のマンションの建設ラッシュはすさまじいと実感したことがある。世界農業遺産(GIAHS)の国際ワークショップで中国を訪れた2012年8月のことだった。降り立った上海市や会議が開かれた浙江省紹興市などは高層マンションが立ち並んでいた。見学ツアーで同省青田県の山あいの村でもマンション建設が進んでいて、新築マンションの看板がやたらと目についた=写真=。

   移動のバスの中で、中国人の女性ガイドに尋ねた。「なぜ山あいでマンションが建っているんですか」と。すると笑顔で答えてくれた。「日本でも結婚の3高があるように、中国でも女性の結婚条件があります」と。それによると、1つにマンション、2つに乗用車、そして3つ目が礼金、だとか。マンションは1平方㍍当たり1万元が相場という。1元は当時のレートで12円だったので円換算で12万円となる。1戸88平方㍍のマンションが人気というから1056万円だ。それに乗用車、そして礼金。礼金もランクがあって、基本的にめでたい「8」の数字。つまり、8万元、18万元、88万元となる。この3つの「高」をそろえるとなると大変だ。

   当時もマンションは投資対象になっていたが、ガイド嬢の話を聞いて、結婚の条件としてのマンション需要となるとさらにすそ野は広がると納得した。その中国のマンションの「不動産バブル」、最近異変が起きているようだ。

   中国の不動産大手「中国恒大集団」は今月7日から1ヵ月間、すべての不動産物件を30%値引きする方針を示し、ニュースになった。同社は同業他社との比較で多額の負債を抱えており、負債比率の削減を目指している(9月7日付・ロイター通信Web版日本語)。このニュースでいよいよ中国の不動産バブルは崩壊かとの印象も抱いた。そして、今月25日のニュース。中国恒大集団がデフォルト(債務不履行)の可能性について中国当局に警告した。同社が求める深圳上場を当局が認めなければ、中国の50兆㌦(5274兆円)規模の金融システムが動揺する恐れがあるとしている。中国恒大は広東省政府に宛てた8月24日付書簡で、資金不足を回避し、上場を確実にするために必要な再編案への支持を求めた。この書簡をブルームバーグは確認した(9月25日付・ブルームバーグWeb版日本語)。

   証券取引所に上場できなければ、破産するぞと脅しているとの印象だ。さらに、50兆㌦規模の中国の金融システムを揺るがすぞ、と。「死なばもろとも」だと。

   中国政府は2008年のリーマンショック後に、やみくもに成長を追い求めずに安定をめざす「新常態(ニューノーマル)」経営を企業に求めているが、常に投資が先行する不動産の場合は簡単ではないだろう。「3高」の結婚の条件が今でも変わっていなければ、買いのチャンスかもしれないが。

⇒28日(月)午前・金沢の天気    はれ時々くもり