⇒ニュース走査

☆巧みな演出で「America is back」 トランプ流1時間40分の施政方針演説

☆巧みな演出で「America is back」 トランプ流1時間40分の施政方針演説

  さきほどまでNHK-BSでアメリカのトランプ大統領の施政方針演説を生放送で視聴していた。冒頭で「America is back(アメリカは復活した)」と宣言し、2期目の大統領就任から43日間までの成果を強調していた。チカラを込めて語っていたのが、やはり「アメリカ第一主義」だった。「この数週間で1兆7000億㌦もの新たな投資がアメリカにもたらされた」と述べ、「ソフトバンク」など社名をあげて、オープンAIなどに巨額の投資がなされるなどと説明した。

  さらに「近い将来、この24年間、誰も成し遂げられなかったことをしたい。連邦予算をバランスさせることだ」と述べ、巨額な財政赤字の解消に意欲を示した。その中でトランプ氏は、イーロン・マスク氏が率いる政府支出の削減策を検討する組織「DOGE(政府効率化省)」がムダな政府支出について18の事業を確認したと指摘した。「(ムダな財政支出が)世にさらされ、迅速に停止されている。われわれは数千億㌦を発見し、インフレなどとたたかうために金を取り戻し、借金を減らす。これは始まりに過ぎない」と述べた。

  前任のバイデン氏を「アメリカ史上最悪の大統領」と名指しながら指摘した事柄の一つが、犯罪歴のある不法移民を強制送還させなかったことだっと述べた。議会の傍聴席にいる、不応移民者に娘が殺害された母親と姉妹を紹介しながら「悲劇を繰り返してはならない」と話し、その上で「わが国への侵略を撃退するためにアメリカ軍と国境警備隊を配備した。その結果、先月の違法な国境越えは、これまでで最も低い水準だった」と語った。政策をアピールするなかなか凝った演出だった。

  意外なことも語られた。つい先日、ウクライナのゼレンスキー大統領と口論となりホワイトハウスでの首脳会談は決裂、そしてアメリカはウクライナへの軍事支援を一時停止とした。これについてトランプ氏は施政方針演説のこの日、ゼレンスキー氏から手紙を受け取ったことを明らかにした。 手紙には「恒久的な平和に近づくためにできるだけ早く交渉の場に着く用意がある」「平和を手に入れるためにトランプ大統領の強い指導力の下で協力する用意がある」と書かれてあったと述べた。さらに、首脳会談の後で署名する予定だった鉱物資源の共同開発をめぐる協定については「いつでも署名する用意がある」と表明があったと語った。

  ゼレンスキー氏からの手紙に対し、トランプ氏は「彼がこの手紙を送ってくれたことに感謝する」と述べた。さらりとした語り口調だったが、この一件ではトランプ氏の外交姿勢も問われていただけに、本人も次なるロシアのプーチン大統領との交渉の道が拓けたのではないだろうか。

  施政方針演説が終わったのは日本時間で午後1時少し前。およそ1時間40分におよんだ。辛口で言えば「自画自賛」の演説だったが、傍聴席にいる関係者や政策担当者を次々と紹介しながら演説の内容にリアル感を持たせる、とても凝ったストーリー仕立てになっていた。

⇒5日(水)午後・金沢の天気    あめ

★帰らぬ拉致被害者 家族は無念の想い 能登での拉致1号事件から48年

★帰らぬ拉致被害者 家族は無念の想い 能登での拉致1号事件から48年

  北朝鮮による拉致被害者の家族である有本明弘さんが亡くなったと報じられている。96歳だった。娘の恵子さんはロンドンで語学留学中だった1983年に北朝鮮に連れ去れたことが、「よど号」ハイジャック事件(1970年3月31日)の実行犯の元妻(日本人)が2002年3月に法廷で証言して明らかになった(Wikipedia「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」)。日本政府が「拉致」という言葉を使って問題としたのは、1988年3月の参院の質問で当時の国家公安委員長だった梶山静六氏が初めてだった。政府は1991年から水面下で北朝鮮に対して拉致問題を提起していたものの、当時は北朝鮮との国交正常化に重きを置いていて、拉致問題の表向きの対応は希薄だった。

  1997年2月に拉致被害者の家族による「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」が結成されると一転した。2002年9月17日、当時の小泉純一郎総理と北朝鮮の金正日国防委員長による首脳会談で、北朝鮮は長年否定してきた日本人の拉致を認めて謝罪。拉致被害者の5人が帰国した。2004年5月26日にも小泉総理が北朝鮮を訪れ首脳会談を行い、先に帰国した5人の家族が帰国することになった。

  政府は北朝鮮に拉致された被害者として17人(5人帰国)を認定しているが、さらに北朝鮮による拉致の可能性を排除できない871人に関して、引き続き捜査や調査を続けている(警察庁「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」)。北朝鮮による拉致事件は終わっていない。(※写真は、政府の拉致問題対策本部公式サイトより)

  「拉致1号事件」は能登半島の尖端近くで起きた。能登町宇出津の遠島山公園の下の入り江は山が海に突き出たような岬で、入り組んだリアス式海岸だ。1977年9月19日、東京都三鷹市の警備員だった久米裕さん52歳と在日朝鮮人の男37歳が宇出津の旅館に到着し、午後9時ごろに2人は宿を出た。怪しんだ旅館の経営者は警察に通報した。旅館から歩いて5分ほどの入り江で、男は外国人登録証の提示を拒否したとして、駆けつけた捜査員に逮捕された。久米さんの姿はなかった。

  しかし、当時は拉致事件としては扱われず、公にされなかった。その後、拉致は立て続けに起きた。同年10月21日に鳥取県では松本京子さんが自宅近くの編み物教室に向かったまま失踪(2号事件)。11月15日、新潟県では下校途中だった13歳の横田めぐみさんが日本海に面した町から姿を消した(3号事件)。

    拉致問題をめぐっては、2002年9月と2004年5月の日朝首脳会談で拉致被害者5人とその家族が帰国したことで、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との主張を変えていない。有本明弘さんは長年にわたって運動を続けてきたものの恵子さんの救出には至らず、無念な想いだったに違いない。政府には覚悟を持って被害者家族の無念の想いを晴らしてほしい。

⇒18日(火)夜・金沢の天気   くもり時々ゆき

★そもそもなぜトランプ大統領はWHOを毛嫌いするのか 脱退通告の根深い背景

★そもそもなぜトランプ大統領はWHOを毛嫌いするのか 脱退通告の根深い背景

  4年ぶりに返り咲きとなったアメリカのトランプ大統領は就任初日(今月20日)にWHO(世界保健機関)から脱退すると表明し、大統領令に署名した。発効は1年後の2026年1月22日となる。トランプ氏は1期目終盤の2020年7月6日にもWHO脱退を通告したが、2021年1月に大統領に就任したバイデン氏が発効前に撤回した。トランプ氏は一貫してWHO脱退を表明してきた。この執念深さはどこから来ているのか。

  これまでWHO脱退を語るトランプ氏がその理由に挙げたことは2つ。一つは拠出額で、アメリカは年間5億㌦(780億円)を拠出しているが、人口が多い中国は3900万㌦しか負担していないと指摘してきた。もう一つはWHOの中国寄りの姿勢で、トランプ氏は1期目のときから、新型コロナウイルスの対応に不満を示していた。

  中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスが国際問題化したのは2020年1月だった。WHOと中国の関係性が疑われたのは1月23日だった。中国の1月の春節の大移動による影響で、世界にコロナ禍をまき散らす結果となった。日本を含め欧米各国で感染者が出ていたにもかかわらず、この日、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、この頃すでに、中国以外での感染が18ヵ国で確認され、日本やアメリカ、フランスなど各国政府は武漢から自国民をチャーター機で帰国させていた。まさに緊急事態が起きていた。

  そのWHOの緊急事態宣言後に物議をかもしたのがテドロス事務局長の発言だった。「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(2020年1月31日付・日経新聞Web版)。これに対し、当時のアメリカ大統領トランプ氏は「なぜ中国は感染者を出国禁止にしなかったのか」と痛烈に批判し、ツイッターや記者会見で新型コロナウイルスのことを「チャイナウイルス」と揶揄した。この年の5月下旬にはアメリカの感染者は世界最多の165万人、死者が10万人に達したことから、政府の初動対策の遅れに対して世論の批判が吹き上がった。火の粉をかぶる状態に追い込まれたトランプ氏はさらに態度を硬化させ、「WHOは中国に完全に支配されている。WHOとの関係を終わらせる」と7月に脱退を通告したのだった。

  WHOのテドロス氏は中国との関係が取り沙汰されているものの、2022年に再選され同年8月から2期目に入っている。任期は5年間。WHOのシンボルの旗には杖に巻きつくヘビが描かれている。ギリシャ神話で医の守護神となったとされる名医アスクレピオスはヘビが巻きついた杖をいつも持っていた。それが、欧米では医療のシンボルとして知られるようになった。トランプ氏には中国に巻きつくテドロス氏のように見えているのかもしれない。

(※写真・上は、アメリカ大統領トランプ氏のコロナ禍でのマスク姿=2020年7月12日付・CNNニュースWeb版。写真・下は、テドロス事務局長の記者会見の様子=同8月24日付・WHO公式ホームページ)

⇒16日(日)夜・金沢の天気     くもり時々はれ

☆予断を許さない能登半島地震 犠牲者は500人超え

☆予断を許さない能登半島地震 犠牲者は500人超え

       連日すさまじい量と内容のニュースがあふれているが、その中からいくつかをピックアップ。地元石川県に関するニュースから。15日に開催された政府の地震調査委員会は委員長見解を公表した。能登半島地震について「活発な地震活動が当分継続する。加えて時々大きな地震が発生し、さらに活発になることもある」「(こうした地震は)日本ではこれまで観測されたことはない」「いつまで続くのかなど見通すことが難しい」「周辺には影響を受けた活断層があることに留意が必要」と。確かに能登では2020年12月から活発な地震活動が続いていて、去年元日のマグニチュード7.6に続き同6規模の地震がこれまで何度も発生していて、「千年に一度、数千年に一度の地震」とも称されている。地震はまだ続くというニュースを被災地の人たちはどう受け止めただろうか。(※写真は、まだ至るところで震災の爪痕が残る輪島市内=ことし1月9日撮影)

  今月14日に能登半島地震による災害関連死の審査会が開かれ、新たに10人が認定されることになった。県内の関連死はこれまでと合わせ280人に上り、直接死228人と合わせ508人となる。関連死は避難所などでの生活で疲労やストレスがたまったことが原因で持病などが悪化して亡くなるケースで、この認定については遺族からの申請を受けた自治体が医師や弁護士ら有識者による審査会を開いて判断する。また、直接死は地震によって家屋の下敷きになるなどして亡くなるケースだ。関連死については、石川県のほかにも隣接する富山県で2人、新潟県で5人が認定されていて、3県合わせた犠牲者は515人となる。

  内乱の首謀者として身柄を拘束された韓国の尹大統領に対して、世論は大統領支持に転じているようだ。韓国の朝鮮日報ネット版日本語(16日付)によると、12月3日に戒厳令を出した直後の与党「国民の力」の支持率は急落したものの、直近の世論調査では上昇しており、最大野党「共に民主党」の支持率とは誤差の範囲内まで狭まっている。戒厳令直後の世論調査会社リアルメーターの調査(12月12、13日)では26.7ポイント差(共に民主党52.4%、国民の力25.7%)だったが、その後は次第に狭まり、直近の同社調査(1月9、10日)では1.4ポイント差(共に民主党42.2%、国民の力40.8%)に縮まった。韓国ギャラップの調査(1月7-9日)でも共に民主党は36%、国民の力は34%と接近している。

  韓国はもともと保革対立が激しい。さすがに今回の政治の混乱に有権者も落としどころを探り始めたのだろうか。世論調査の数字を見る限りでは、混乱の収拾に乗り出すどころか党派的利益を優先している野党に対し批判が強まり、一方で危機感を背景に与党支持層が結束を固めていることがうかがえる。

  ちなみに日本でよく取り上げられる内閣支持率はどうか。NHKの直近の世論調査(1月11-13日)によると、石破内閣を「支持する」は去年12月の調査より1ポイント上がって39%、「支持しない」も2ポイント上がって40%となっている。支持しない理由は、「政策に期待が持てないから」35%、「実行力がないから」22%と続く。果たしてこの内閣支持率で与党は7月に予定される参院選を乗り切れるかどうか。

⇒16日(木)夜・金沢の天気     あめ時々あられ

★北陸「晴れもつかの間」 暗雲漂う・・・「関税男」がアメリカ分断、「戒厳令」対立の韓国

★北陸「晴れもつかの間」 暗雲漂う・・・「関税男」がアメリカ分断、「戒厳令」対立の韓国

  けさ午前8時過ぎに自宅2階から撮影した金沢の東の空の様子。青空が広がって、北陸の冬とは思えない光景だ=写真=。ただ、この晴れ間も続かず、日本気象協会 tenki.jp によると、日本海側を中心に雲が多く、北陸は昼頃まで雨や雪で、雷を伴う所があるとのこと。確かに、窓から外を眺めていると、徐々に雲が覆ってきた。晴れもつかの間、これが北陸の本来の天気なのかもしれない。         

  ニュースを見ていると、世界が「晴れもつかの間」状態に陥っているようだ。アメリカ大統領選で共和党のトランプ前大統領が返り咲き、あと1週間もすれば大統領の座に就く。「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ氏の再来は、国際社会にどのような影響をもたらすのか。「Tariff. It’s the most beautiful word in the dictionary.」(関税。辞書のなかで最も美しい言葉だ)と、関税男を自称するトランプ氏は執着深い。関税にこだわるのは、海外製品を締め出し自国の製造業を守るとの姿勢が有権者の支持を得ているからだ。ただ、関税をかけられたメキシコやカナダ、中国などは報復関税をかけることになり、世界経済に混乱をもたらしかねない。

  さらに世界に物議を醸したのが、トランプ氏がデンマーク領のグリーンランドを購入したいと発言したことだ。ロシアに近い世界最大の島で、軍事的な要衝でもある。買収発言はこれが初めてではなく、政権1期目の2019年にも買収計画を提案し、デンマークと外交摩擦を引き起こしていた。さらに、トランプ氏は不法移民を全部追い出すと言っている。こうなると労働者不足でコスト高となり、インフレとなって跳ね返ってくるのではないか。トランプ氏の執着心が自国や世界に暗雲をもたらすのか。

  もう一つ暗雲が見えるのは隣国の韓国だ。12月3日、尹大統領の深夜の演説には正直驚いた。「非常戒厳」を宣布すると発表した。韓国の憲法では、非常戒厳は戦時やそれに準じる国家非常事態に陥った際に大統領が宣言するものなので、世界は朝鮮戦争が再開するのかと身構えた。ところが、尹氏は戒厳令をその後、6時間で解除した。あれはいったい何だったのかと、混乱を招いた。ソウルでは大規模な市民による抗議行動と支持行動が連日のように起きている。

  そもそも、尹氏を支える与党「国民の力」は2022年の政権発足時から少数与党だったが、それが去年4月の総選挙で大敗を喫した。このため、国会運営がままならない状態に陥っていた。追い詰められ、衝動的に戒厳令を発したのだろうか。その後は裁判所が出した拘束令状の執行を拒否し、公邸で籠城を続けている。ことしは日本と韓国の国交正常化60周年にあたる節目の年なのだが。

⇒13日(月・祝)午前・金沢の天気    くもり 

☆輪島市の成人式アニメポスタ- 永井豪記念館の再建を復興シンボルに

☆輪島市の成人式アニメポスタ- 永井豪記念館の再建を復興シンボルに

  先日、輪島市のショッピングセンターに立ち寄ると、掲示板にアニメのポスターが2枚貼ってあった。なんだろうと近いづいて見ると、右の一枚は「令和6年 輪島市 二十歳の集い」とあり、左は「令和7年 輪島市 二十歳の集い」とあった。成人式を開催するポスターだった。去年は元日に能登半島地震があり、成人式は中止となっていたので、ことしの開催となり、ことしの成人式と重ねて開催するという意味で並べて貼ったのだろう。場所は輪島市立輪島中学校アリーナで同じだが、令和6年の成人式は1月11日、令和7年の成人式は1月12日とあり、それぞれ開催する日が異なる。  

  それにしてもアニメを用いたポスターは、少々派手で楽しい雰囲気を醸し出している。アニメそのものが素人ぽくない。ポスターを制作したのは輪島市教委の生涯学習課で、SNSで話題になり、参加者が増えるように仕掛けたのかもしれない。

  輪島市でアニメと言えば、朝市通りには人気スポットの「永井豪記念館」があった。あの『マジンガーZ』や『キューティーハニー』などの漫画家・永井豪氏は同市出身で、2009年に行政が記念館を創り、永井氏は名誉館長を務めていた。日本のアニメが海外でも大ブームとなり、永井氏の『UFOロボ グレンダイザー』などがヨーロッパで人気を博すと、記念館へのインバウンド観光の見学者も増えていた。そして、永井氏は2019年、フランス政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られた。記念館も絶好調だった。

  その記念館は能登地震で朝市通り一帯が焼けて、ビルも焼け焦げた。展示してあった原画や一部のフィギュアなどの展示物などは無事だった。その後、ビルは公費解体で撤去された。永井氏と所属プロダククションは輪島市と石川県にそれぞれ1000万円、計2000万円の義援金を贈っている。永井氏は「漫画はつらいときこそ、力になって希望を満たすことができる。漫画を描くことで『前に進もう』というメッセージを伝えたい」と語っていた(2024年1月25日付・読売新聞オンライン)。

  去年5月29日、永井氏は石川県の観光大使の委嘱を受けた。「復興支援も続けていきたい」と述べ、永井豪記念館の再開にも意欲を示した(同6月1日付・同)。震災でふるさと愛がふつふつとわいてきたのだろうか。能登復興の先進事例として、永井豪記念館の再建でその役割を果たしてほしいと願う。

⇒12日(日)夜・金沢の天気   くもり

★能登の二重被災で踏ん張る食品スーパー 地域の生活守り復興拠点を目指す

★能登の二重被災で踏ん張る食品スーパー 地域の生活守り復興拠点を目指す

  元日の震災と9月の記録的な大雨に見舞われた輪島市町野町をめぐった(今月5日)。地区で唯一のスーパーマーケット「もとやスーパー」が先月営業を再開したと報道されていたので、その様子を見に行った。元日の地震で被害を受けても休まずに営業を続けてきたスーパーだったが、9月21日の豪雨で近くを流れる鈴屋川が氾濫して街一帯が飲み込まれた。同29日に現地を見に行くと、店内の柱や壁には浸水の跡が残り、商品を陳列する大型の冷蔵棚などは横倒しになっていた。

  そのもとやスーパーに今月5日に行くと「復活オープン」の看板を掲げ営業を再開していた=写真・上=。中に入ると、卵や野菜、総菜や冷凍食品などが並んでいた=写真・中=。ただ、以前見た時より売り場面積が小さい。レジの店員に聞くと、「売り場を必要最小限にして、店内をキャンプ場にするようです」との返事だった。

  その店内キャンプ場を見せてもらった。もとやスーパーの店舗の3分の2に相当する500平方㍍を充てたスペースという=写真・下=。被災地の復旧に訪れた業者や支援ボランティア向けに用意したようだ。1人用テントや布団を備える。30人から40人が利用できるが、料金は取らないのだという。町野地域には復旧業者やボランティアが宿泊できる場所がなく、これまで他地域の宿泊地と町野との移動に時間がかかっていた。さらに、冬場になると積雪も想定されることから、屋内キャンプ場がベストと47歳の店主が企画したようだ。店主はクラウド・ファンディングでこう述べている。「被災し壊滅的な状況となった輪島市町野住民の多くの方々は家も車も失い、インフラも復旧していない現在、不自由な生活を余儀なくされています。その中で、私たち『もとやスーパー』は住民の方々の生活基盤であり心の拠り所であり続けると同時に、復興拠点にならなくてはならない、そう思っています」

  このスーパーにはちょっとした思い出がある。大学教員時代に学生たちと「能登スタディツアー」を企画し、ある年、近くの景勝地である曽々木海岸の窓岩の夕日を眺め、その帰りにもとやスーパーに立ち寄り食料を買い込んでいた。すると、わざわざ当時の店主が出てきてくれて、軽妙な能登弁で地域の歴史を語ってくれた。学生たちからは「語りが分かりやすく面白い」と評判だった。

  被災地の食品スーパーとして元日の地震後も営業を続け、住民を支えてきた。9月の豪雨で一時休業したが11月に営業を再開。来春には交流拠点としての整備も予定する。しかし、大雪で地区が再び孤立すればすべてストップする恐れがある。復旧を絶え間なく進めるためも、泊まれる環境を整える。被災地の必死の叫びのように聞こえる。

⇒10日(火)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

★「非常戒厳」が裏目に レームダック化したのか韓国・尹大統領

★「非常戒厳」が裏目に レームダック化したのか韓国・尹大統領

  韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領がこれほどレームダック化していたとは驚きだった。メディア各社の報道によると、尹氏は3日深夜の演説で「非常戒厳」を宣布すると発表した。韓国の憲法では、非常戒厳は戦時やそれに準じる国家非常事態に陥った際に大統領が宣言する。突然の発表に国会は混乱に陥った。尹氏は戒厳令をその後、6時間で解除したものの、政治家として瀬戸際に追い込まれた。ソウルで大規模な市民による抗議行動が起き、さらに最大野党「共に民主党」による尹氏に対する弾劾訴追手続きがなされた。近く開かれる国会で尹氏の真意が議論されることだろう。

  尹氏は2022年の大統領選で保守強硬派の候補として勝利し、同年5月に就任した。だが、今年4月の総選挙で野党が圧勝。政府として国会で予算案や法案を通すことができず、野党が通過させた法案に拒否権を発動する程度のことしかできない状況が続いていた。さらに、尹氏の夫人にまつわる汚職スキャンダルに見舞われている。高級ブランドのディオールのバッグを受け取ったとされる疑惑や、株価操作に関わったとされる疑惑だ(4日付・BBCニュース日本版)。  

  元検事総長の尹氏のかつてのイメージは、権力に遠慮することなく司法の刃(やいば)を向けてきたことだ。朴槿恵(パク・クネ)政権下での「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」では朴前大統領を拘束起訴(2017年3月)。この実績により、前大統領の文在寅(ムン・ジェイン)大統領からソウル中央地検長に抜擢された。尹氏はさらに李明博(イ・ミョンバク)元大統領も拘束起訴。2019年6月に検事総長に任命されてから、矛先は文大統領の側近に向けられた。曺国(チョ・グク)前法務部長官の捜査を手初めに、蔚山市長選挙介入疑惑、月城原発経済性ねつ造疑惑など次々と捜査のメスを入れた。(※写真は、2022年3月に韓国の新大統領に選ばれた尹錫悦氏=韓国・中央日報Web版)
 
  権力と対峙してきた尹氏は「私は人(権力)に忠誠を尽くさない」という言葉を放って国民に知られるようなった。尹氏が大統領になったことで期待されていたのは、「法治国家」の確立ではなかっただろうか。ところが韓国では大統領に権力が集中している。戦時でもないのにその権力を行使して非常戒厳令を宣告したとなると、動機がなんであれ、自らがその権力に溺れ込んだと韓国国民は思い込んだに違いない。
 
⇒5日(木)夜・金沢の天気   あめ

★プラごみ国際条約ようやく合意へ 日本海沿岸国で汚染対策条約を

★プラごみ国際条約ようやく合意へ 日本海沿岸国で汚染対策条約を

  プラスチックごみによる汚染問題は世界各地で深刻化している。排出や廃棄を規制する国際条約づくりがようやく動き出した。けさのNHKニュースによると、プラスチックによる環境汚染の防止に向け初めてとなる国際条約の案をまとめる政府間交渉委員会が、今月25日から韓国・プサンで行われている。プラスチックごみの量は2019年には世界で3億5300万トンと20年で2倍以上に増えるなど深刻なことから、各国はプラスチックによる環境汚染を防ぐため国連環境総会(2022年3月)で法的拘束力のある国際条約を2024年中にとりまとめることを決議し、今回の政府間交渉委員会で条文案の合意を目指している。

  交渉委員会のバジャス議長は29日に新たな条文の素案を示した。この中で、生産量の規制については2つの選択肢を示した。1つはプラスチックの生産量を持続可能なレベルにするため世界的な削減目標を設け、各国が生産量や、目標達成のために行った対応を報告するというもので、もう1つはプラスチックの原料となる石油を産出する産油国などが規制に強く反対していることを踏まえ生産量の規制については条約に盛り込まないとしている。そして、プラスチック製品についてゴミとして散乱したり環境中に流出したりしやすいものや再利用やリサイクルが難しいものは各国が削減や禁止などの対応をとるといった内容も盛り込まれている。プラスチックの生産から廃棄までのライフサイクル全体で削減に取り組む方向では一致している。

  以下は、日本海側に住む一人としての希望だ。沿岸国の不法投棄をどう解決すればよいか、そうした条約の枠組みも併せてつくってほしい。たとえば、「地中海の汚染対策条約」とも呼ばれるバルセロナ条約は21ヵ国とEUが締約国として1978年に発効している。日本海にも沿岸各国との汚染対策条約が必要ではないだろうか。(※図は、日本海の海流の流れ。能登半島に沿岸国からの漂着ごみが流れ着く)

  データがある。石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)で、県内の14の市町の海岸で合計962個のポリタンクを回収した。そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。沿岸に流れ着くのはポリタンクだけではない。漁具や漁網、ロープ、ペットボトルなど、じつに多様なプラごみが漂着する。2022年にはロシア製の針つきの注射器が大量に流れ着いて全国ニュースになった。医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の不法投棄は国際問題だ。(※写真は、海の環境問題をテーマにしたインドの作家スボード・グプタ氏の作品「Think about me」=2021年・珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」)

  なので、日本海の沿岸国である日本、ロシア、韓国、北朝鮮、中国の5ヵ国で汚染対策条約がつくれないだろうか。

⇒30日(土)午後・金沢の天気   あめ

☆トランプ・安倍は笑顔でゴルフ外交 石破総理は友好関係を築けるのか

☆トランプ・安倍は笑顔でゴルフ外交 石破総理は友好関係を築けるのか

  初の女性大統領か130年ぶりの返り咲きの大統領かと国際世論を煽ったアメリカ大統領選の審判が下った。共和党のドナルド・トランブ元大統領の当選が確実になり、2025年1月20日に第47代大統領の就任式を迎えると報道されている。トランプ氏の政治方針は「アメリカ第一主義と利益優先」だ。就任早々に外国製品に10%から20%、中国製品に60%の一律関税に着手するだろうし、日本には防衛費のさらなる負担増を求めてくるだろう。ロシアのウクライナ侵攻を巡っては、対ウクライナ支援を見直し、早期の和平仲介に乗り出すに違いない。各国の首脳はすでに選挙前から「トランプ詣で」に動き出している。

  トランプ氏との日米関係で思い出すのが、2019年5月26日付で総理官邸のツイッターが公開したこの写真。まるでお笑いコンビのようなこの2人は、当時の安倍総理(右)とトランプ大統領(左)。千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。同日のアメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士には、トロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と伝えている。

  安倍氏がトランプ氏とこのような友好関係を築くまでに念入りな作業があった。トランプ氏が大統領就任前の2016年11月、ニューヨークのトランプ・タワーの私邸を訪ね、1時間半におよぶ非公式会談を行っていた。就任前に私邸を訪れたことに、当時の海外メディアは「charm offensive」と皮肉っていた。charm offensiveは目標を達成するために意図的にお世辞や愛想をふるまうことを意味する。そして、2017年11月5日、大統領として日本の地を初めて踏んだトランプ氏は安倍氏とともに埼玉県でゴルフを楽しんだ。同年2月にはフロリダで初めてのゴルフ外交を行っていた。

  この笑顔の写真が撮影されるまでに、安倍氏は就任前のトランプ氏の私邸を訪ねて非公式会談を行い、それ以降3回のゴルフ外交を重ねていたことになる。トランプ氏は2016年の大統領選では一貫して「大統領に就任すれば、日本などアメリカ軍が駐留する同盟国に駐留経費の全額負担を求める」などと演説していた。当時の安倍氏はこれを新たな日米の緊張関係と読んでいたのだろうか。

  さて、石破総理はきょう7日午前、トランプ氏と5分間、電話で協議し祝意を伝えたとメディア各社が報じている。トランプ氏は「会って話をすることを楽しみにしている」と応じたという。はたして石破氏は安倍氏のような友好関係をトランプ氏と築けるかどうか。ちなみに、石破氏は現在ゴルフとは疎遠だが、高校時代は体育会ゴルフ部に所属していたようだ。

⇒7日(木)夜・金沢の天気     くもり