⇒ニュース走査

☆相次ぐジャーナリストの受難

☆相次ぐジャーナリストの受難

       ジャーナリストの受難が続く。イギリスBBCのWeb版(12月12日付)は「Ruhollah Zam: Iran executes journalist accused of fanning unrest」と、イランは不安を扇動したとして、ジャーナリストのルホラー・ザム氏を処刑したと報じている=写真・上=。ことし6月にザム氏はデモを扇動したとしたとして、ことし6月に死刑判決を言い渡されていた。

   BBCの記事によると、2017年12月に起きたイランの反政府デモは、物価高騰に市民による抗議活動だった。ザム氏はフランスのパリを拠点にして、通信アプリ「テレグラム」のニュースサイトを運営し、フォロワー140万人に向けて、抗議活動の映像などを情報発信していた。去年10月、いわゆる「ハニートラップ」でフランスからイラン入国したところを逮捕された。人権団体アムネスティ・インターナショナルは「抑圧の武器として、死刑が使われている」とイランを非難し、死刑の執行を取りやめるよう訴えていた。

   香港では、中国批判で知られる「蘋果日報(アップル・デイリー)」創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏に対する詐欺罪での初公判が開かれ、保釈申請を却下して収監を命じた。黎氏は即日収監された。黎氏はことし8月に香港国家安全維持法(国安法)違反と詐欺などの疑いで香港警察に逮捕された後、保釈されていた。今回は逃亡や再犯の恐れを理由に保釈申請が認められず、収監された(12月3日付・BBCニュースWeb版)=写真・下=。

   詐欺罪はどのような内容だったのか。蘋果日報を発行する「壱伝媒」の本社があるビルで、不動産の貸借契約に反し、黎氏が別会社に一部を提供して不正に利益を得たとして詐欺罪に問われてた。「また貸し」が詐欺として罪に問われたというのだ。香港の転貸に関する法律を理解してはいないが、日本ならば、無断転貸の場合、ビルのオーナーは賃貸借契約を解除することになるだろう(民法612条「賃借権の譲渡及び転貸の制限」)。民事をあえて刑事事件として問い、収監におよぶところに政治的なむき出しが見て取れる。

⇒13日(日)朝・金沢の天気   くもり時々あめ   

★「金属バットマン」に同情の余地なし

★「金属バットマン」に同情の余地なし

  元新聞記者、元テレビ番組ディレクターを経験したせいか、地域にこういった事件が起きると、「なぜだ」と妙に血が騒ぐ。きのう10日、石川県七尾市の市会議員が金属バットを持って議会事務局に入り、駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。この議員は77歳、10期目のベテランだ。一夜明けて、その「なぜだ」の問いが断片的ながら見えてきた。きのうに引き続き、ブログのネタに。

   きのうのブログで「過去に無用にバットを振り回し周囲を威嚇するような行為があったのだろう。市役所の職員の対応はその経験則ではないかと察する」と憶測を述べた。きょうの地元紙によると、やはり、過去にも「金属バット歴」があるようだ。逮捕された市議、杉本忠一容疑者はきのう午前10時半ごろに七尾市役所に金属バットを持って入った際、市役所職員が警察に通報。杉本容疑者が議会議長の杉木勉氏と議会棟のロビーで面談する際、脇にバットを置いたため、議会事務局の職員が隙を見て、バットを取り上げた。駆け付けた警察官は任意同行を求めたが、杉本容疑者は「素振りなどの運動をするために持っていた」と警察の要請を拒否。警察は迷惑防止条例違反で午前11時20分ごろ現行犯逮捕した。市役所職員のこの機敏な行動(警察への通報、バットの取り上げ)は経験則だと直感した。

   きょうの地元紙によると1995年に市職員に暴力をふるおうとするなど荒っぽい言動があり、議員辞職勧告を議会から受けたことがある(12月11日付・北國新聞)。また、同僚の議員とトラブルを起こしてバットで殴りかかろうとしたほか、市職員や議員に暴力を振るおうとするなど荒っぽい言動やトラブルが目立つと議会関係者は話している(同・北陸中日新聞)。暴力には至らなかったものの、その寸前での行為が目立った。市職員の経験則にはこうしたリアルな背景があった。

   もう一つの疑問だ。なぜ金属バットを持って議長と面談をしに行ったのか。ことし10月に同市の市長が選挙によって交代した。現職を応援したのが杉本容疑者、前職を応援したのが議長だった。今月8日の議会一般質問で、前職を支持した議員が現職の市長に対して、「市長選で用いた討議資料の中で、七尾市のごみ処理施設の予定価格が非公開だったため、談合が行われたとの記載があるが、予定価格は公開されていた。記載が間違っており、市民に謝罪を」と厳しく追及した。これに対し、杉本容疑者は「裁判所の検事のように追及するな」などとやじを繰り返したため、議長から何度も注意を受けた。また、翌日9日は杉本容疑者自身が一般質問をしたが、通告にはない話をしたとした議長から再度注意を受けていた(同・北陸中日新聞)。

   議会で注意を受けたことに逆に遺恨の念をもったようだ。同情の余地がない。

⇒11日(金)夜・金沢の天気     くもり

☆市会議員が「金属バット」を持てば

☆市会議員が「金属バット」を持てば

   さらに、ローカル放送のニュースをチェックする。警察などによると、杉本市議は午前10時ごろ、金属バットを持って市役所の議会棟に現れた。駆け付けた警察官が任意同行を求めたものの、杉本市議が抵抗したため、警察がその場で逮捕した。けが人はいなかった。 七尾市議会の杉木勉議長は「キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーをつけていた。全く誰かわからなかった」と証言した。 杉本市議は議会運営に不満を持っていたとみられ、議長に面会を求めていた。同市議会の杉木勉議長によると、一般質問で杉本容疑者がやじを飛ばすなどしたため注意した。杉本容疑者は「議長が議員を公平に扱っていない」と不満を口にしていた(同・北陸放送ニュースWeb版)。

    別のローカル放送はこう伝えている。10日午前、七尾市役所の議会事務局に金属バットを持った現職市議が乱入し、駆け付けた警察官に現行犯逮捕された。午前10時半ごろ、市役所3階の議会事務局に金属バットを持った男が突如現れ、議長に面会を求めた。男は通報で駆け付けた警察官の要請を拒否。そのまま現行犯逮捕された。県迷惑防止条例違反で逮捕された現職議員・杉本忠一容疑者は通算10期目のベテラン議員だった(同・石川テレビニュースWeb版)。

   それにしても、事件が流れが断片的に記事になっているだけで、全体が理解できない。地元紙の関連ニュースをネットでチェックしたが掲載されていない。そこで、上記の3つのニュースを総合すると、以下だ。市議会の杉木勉議長によると、一般質問で杉本議員はやじを飛ばすなどしたため注意した。すると、杉本氏は「議長が議員を公平に扱っていない」と不満を口にしていた。そしてきょう、「キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーをつけていた」杉本氏が金属バットを持って議会事務局に現れ、議長に面会を求めた。ただならぬ気配を察した議会事務局は警察に通報した。議会棟のロビーで杉木議長と杉本氏は10分ほど面会。その際に脇にバットを置いたため、市職員が隙を見てバットを取り上げた。駆け付けた警察官は任意同行を求めたが、杉本氏は「素振りなどの運動をするために持っていた」と警察の要請を拒否。警察は迷惑防止条例違反で午前11時20分ごろ現行犯逮捕した。

   確かに、キャップを深くかぶって黒いマスクでマフラーした男が金属バットを持っていれば、市議と分かっていても、周囲を不安に陥れる。おそらく、過去に無用にバットを振り回し周囲を威嚇するような行為があったのだろう。市役所の職員の対応はその経験則ではないかと察する。50分の出来事だった。

(※写真は、七尾市議会がある七尾市役所庁舎)

⇒10日(木)夜・金沢の天気    くもり

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

★荒れる日本海、違法操業の「主役交代」

   まもなく冬将軍が到来する季節。海も荒れると必ずニュースになっていた日本海沿岸への北朝鮮からの漂着船の記事を今季はまだ見ていない。今年は何かが起きているのか。上の写真は2018年1月16日に金沢市下安原町の海岸に打ち上げられた北の木造船だ。この目で確かめようと、現場に赴いたのは同17日午前。現場は防風林を抜けて100㍍ほど歩くと砂浜が広がり、警察の捜査で青いビニールシートが覆いかぶさっていたので、現物と分かった。

   全長16㍍、幅3㍍ほど。このような小さな船で日本海のイカの好漁場である大和堆(日本のEEZ内)に繰り出し、違法操業をしてたのか。船内をのぞくことができた。ハングル文字で書かれた菓子袋などが散乱し、迷彩服もあった。ひょっとして軍人が乗っていたのではないかと勘ぐった。警察発表によると、この船の中から7人の遺体が見つかり、さらに漂着船から15㍍ほど離れたところにさらに1人の遺体があった。もし、同じ乗組員なら計8人となる。冬の日本海は荒れやすい。命がけで、なぜそこまでして漁に固執する必要があったのだろうか。上からの命令だったのか、など当時は思った。

   今季はどうか。第九管区海上保安本部の公式ホームページをチェックしても、北の漂着船はゼロだ。なぜ今年は木造船が漂着しないのか。単純な話で、能登半島沖のEEZ(排他的経済水域)で違法操業を行っているのは北朝鮮の漁船ではなく、中国の漁船なのだ。海上保安庁が監視活動を継続しているが、ことしに入り11月4日時点で、延べ4137隻の中国漁船に退去勧告を発している(11月5日付・NHKニュースWeb版)。

   10月6日付のこのブログでも取り上げたが、日本海のスルメイカの漁場、大和堆周辺で大量の中国漁船が違法操業を行っている=写真・下=。去年までは北の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増している。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZというわけだ。中国の漁船は北の小型と違って大型の鋼船で、釣りではなく、底引き網で漁獲する。そして、北朝鮮から漁業権を買って同国のEEZで操業していると称して、日本のEEZで違法操業をしている(11月24日付・時事通信Web版)。

   違法操業の主役が交代し、これから何が起きるのか。水産庁が大和堆西部の特定の海域に入るのを当面、自粛するようイカ釣り漁船側に要請して、「日本のEEZなのになぜだ」と漁業者の反発を買った(10月20日付・朝日新聞Web版)。日本海の荒波が激しくなってきた。

⇒9日(水)夜・金沢の天気   くもり 

☆チャイナ目線 3つの小話

☆チャイナ目線 3つの小話

   香港政府とバックの中国政府は2日と3日の連日、民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)周庭氏ら3人への実刑判決、中国に批判的な報道の黎智英(ジミー・ライ)氏の収監と、民主派への締め付けを強めている。ふと思うことは、中国政府は日本の今をどのように眺めているのだろうか。小話ではある。

   安倍前総理の後援会が「桜を見る会」の前日に開いた夕食会の費用負担の問題。新聞各社の記事によると、夕食会は年に1回、都内のホテルに山口県の支援者らを招き、1人5千円の会費制で開かれた。2015-19年の5回では合計2300万円の経費がかかったにもかかわらず、会費分は計1400万円で、差額の900万円は安倍氏側が補塡した。ホテルは安倍氏が代表の資金管理団体あてに補塡分の領収書を発行していた。東京地検特捜部は公設第1秘書と事務担当者の2人を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴する方向。罰金刑となり正式裁判は開かれない。

   このニュースを知った中国の要人は、「ところで、この件でいったい誰が損をして誰が得をしたのか。支援者が豪快に飲み食したツケを払った安倍氏がむしろ被害者ではないのか。それを罪に問うことは我々には理解できない。不思議な国だ」と言っているかもしれない。

   東京五輪・パラリンピックの1年延期に伴う追加経費と新型コロナウイルス対策費について、東京都が1200億円、国が700億円、大会組織委員会が700億円超を負担する方向で調整している。延期の追加経費は1700億円、新型コロナ対策費は900億円で調整している。組織委員会の森喜朗会長、都の小池百合子知事、橋本聖子五輪大臣が3者会談で決める。

   このニュースを知った中国の要人は、「森先生は大人(たいじん)で太っ腹だから、ついでに2022年2月からの北京冬季五輪の分も払ってくれないかと頼んでみよう。忘れもしない、2001年の李登輝の訪日問題では、あれほど我々が止めとけといったのにビザ発給したのは当時総理の森先生だ。あれは我々にとって『貸し』も同然だから、文句も言わないだろう」と言っているかもしれない。 

   ジョンズ・ホプキンス大学のコロナダッシュボードによると、新型コロナウイルスで亡くなった人の数は、世界全体の累計で150万人となった。コロナ禍の対応をめぐり、菅総理は国連の特別総会でビデオ演説し、「危機を乗り越えるべく『団結した世界』を実現しなければならない」と訴えたうえで、WHOの検証や改革に協力していく考えを示した(12月4日付・NHKニュースWeb版)。

   このニュースを知った中国の要人は、「我が国の社会学者が講演で、コロナ禍で中国の死者4千人は20万人のアメリカに比べれば1人も死んでいないに等しい、中国の人口14億人のうち4千人が死んでも、誰も病気になっていないのと同じだと語ったそうだが、偉大な指導者・毛沢東同志はかつて革命のためなら『1億死んでも構わない』とおっしゃった。数字はあくまでも演技、だからいちいち細かなコロナの数字なんて我が国では出さない。オリンピックもあることだし、菅総理もWHOにドンと100億㌦出すと言うべきではないか」と言っているかもしれない。 

⇒4日(金)午後・金沢の天気     はれ

☆香港に響く「むせび泣き」

☆香港に響く「むせび泣き」

   香港の民主化運動を訴えてきた黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)氏ら3人に香港の裁判所はきょう2日、禁錮刑を言い渡した。イギリスBBCも「Hong Kong: Joshua Wong and fellow pro-democracy activists jailed」(黄之鋒氏ら民主活動家を投獄)=写真=と大きく伝えている。香港、そして背後の中国に対して国際社会の目線はいっそう厳しくなるだろう。

   香港の民主派団体「香港衆志」の幹部だった黄氏や周氏ら3人は2019年6月、警察本部を取り囲んだ大規模な抗議デモに関連し、無許可の集会への参加をあおった罪などに問われ、先月11月23日、裁判所は有罪を認定し、拘置施設に収監されていた。きょう量刑が言い渡され、「公共の秩序と安全を壊し、市民の生命と安全を脅かした」として、黄氏に禁錮13か月半、周氏に禁錮10か月が確定した(12月2日付・NHKニュースWeb版)。

   BBCの記事の中で気になる下りがある。「The pro-democracy movement has been stifled since Beijing introduced a controversial security law with harsh punishments.But as their offences took place before the law’s enactment, the activists have avoided a potential life sentence.」。以下意訳だが、中国政府が、議論の的となっている香港国家安全維持法を(ことし6月に)導入し、厳しい罰則を科して以来、民主化運動は停滞している。この法律が施行される前に彼らの犯罪があったため、(今回3人の)活動家たちは終身刑を免れている。

   また同じくBBCが紹介している人権団体「アムネスティ・インターナショナル」の批判コメントも共通している。「Rights group Amnesty International condemned the ruling, saying it was a way for authorities to “send a warning to anyone who dares to openly criticise the government that they could be next”.」。以下意訳。人権団体アムネスティ・インターナショナルはこの判決を非難し、これは当局が「政府を公然と批判する勇気ある人に、次は自分たちであるという警告を送る」方法であると述べた。

   BBCやアムネスティ・インターナショナル伝えているように、この判決は民主活動家への「警告」だろう。香港国家安全維持法(国安法)施行前の法律での裁きなので、量刑はこれで済んでいるが、今後の抗議活動は国安法での裁きになるので終身刑も覚悟せよ、とのメッセージなのだ。

   周氏の場合、ことし8月に国安法に違反した疑いでも逮捕されていて、今後起訴される可能性もある。周氏が収監されるのは今回が初めとなり、周氏は裁判のあと肩を震わせてむせび泣いていた(NHKニュ-スWeb版)。ニュースを通じて、このような民主活動家への弾圧が現代でも繰り広げられていることに、憤りを覚える。

⇒2日(水)夜・金沢の天気    くもり

★「尖閣」めぐり高まる怨嗟の声

★「尖閣」めぐり高まる怨嗟の声

   24日の中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見での王氏の尖閣をめぐる発言、そして茂木氏の黙認するそぶりへの批判がいまだに尾を引いている。

           きょう27日の参院本会議で、質問した自民の山田宏氏は「国民は茂木外相にびしっと反論してほしかったと強く感じている。なぜ反論しなかったのか」とただした。すると茂木氏は「全く受け入れられない。尖閣は歴史的にも国際法上も疑いのないわが国固有の領土だ」「会談の中で(中国公船の)領海侵入やわが国の漁船への接近など個別事案も取り上げ、こうした行動を取らないよう強く申し入れた」と反論した(11月27日付・共同通信Web版)。 質問の答えにはまったくなっていない。むしろ、不信感を増長するだけの答弁だ。

   両者をさらに手厳しく批判したのは意外にも共産党の志位和夫委員長だった。以下、26日の記者会見。志位氏は「王毅外相の発言は、“日本側に問題があったから、やむを得ず中国として対応をしている”と日本側に責任を転嫁するものだ」と批判した。その上で、今年の中国公船の尖閣諸島の接続海域への入域日数24日現在)はすでに304日に達し、昨年の282日を大きく上回ったのに加え、「中国公船が日本漁船を追い回すという非常に危険な事態も起きている」と指摘。「中国のこのような覇権主義的な行動を直ちに中止することを強く求める」と表明した(11月26日付・しんぶん赤旗WEB版)。

   さらに志位氏は、共同記者会見に同席した茂木氏は王氏に何ら反論や批判もしなかったとして、「中国側の不当で一方的な主張だけが(記録に)残るという事態になる。極めてだらしない態度だ」と批判。また、直後に王氏と会談した菅総理が王氏の「暴言」についてただした形跡もないとして、「覇権主義にモノも言えない屈従外交でいいのか」と厳しく批判した(同)。 

   日本と中国の相互意識を探る第16回日中共同世論調査(実施=言論NPO、中国国際出版集団)の調査結果(ことし9月と10月調査)で、中国に「良くない」という印象を持つ日本人は前回に比べ5ポイント増の89.7%に上った。その理由として、中国公船などによる「尖閣諸島周辺の日本領海や領空の侵犯」が同6ポイント増の57%で最も多く、以下、「国際的なルールと異なる行動」49%、「南シナ海などで行動が強引・違和感」47%で、中国による一方的な海洋活動が対中感情を悪化させている。

   韓国もさることながら、中国に対する不信の念、怨嗟の声は高まるばかりだ。そして、尖閣諸島が実に根深い外交問題になってきた。

⇒27日(金)夜・金沢の天気  はれ

☆記者会見は「戦いの場」

☆記者会見は「戦いの場」

   きのうのブログの続き。24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見=写真、外務省公式ホームページ=で、茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と、堂々と会見で述べていた。視聴した多くの視聴者が「日本はなめられている」との印象を受けた。もう一つ、茂木大臣が黙認していたことも納得できなかった。

   王氏の発言は、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと、中国としてはやむを得ず対応をしていると、まるで日本側に責任を転嫁する内容だった。これに対し、茂木氏が共同記者会見の場にいたにもかかわらず、王氏の発言に何らの反論もしなければ、批判もしなかった。つまり、王氏の一方的な主張だけをアピールする場となった。この映像を海外の視聴者が見れば、日本は中国の主張を認めたと理解だろう。中国の視聴者が見れば、「大勝利」と叫ぶだろう。日本側のだらしなさが露呈したカタチだ。これほど後味の悪い記者会見は見たことががない。

    おそらく茂木氏は記者会見は「戦いの場」との認識がない。「成果報告の場」くらいの感覚だったのではないか。中国では記者会見という場の設定はないが、カメラは人民に向けたメッセージの手段という認識だろう。なので、メッセージ性の高い、抑揚を効かせた言葉を発することに慣れている。この違いがまともに表れた会見の場だった。

   外交で「戦いの場」となった事例はある。河野太郎氏が外務大臣だった2019年7月、いわゆる「徴用」をめぐる問題で、日本が求めてきた仲裁委員会の開催に韓国政府が応じなかったことから、河野氏が韓国の駐日大使を呼び抗議した。これに対し、大使が「徴用」の問題の解決に向け、韓国政府が提案した案を説明しようとすると、河野氏は発言をさえぎり、「その提案は以前、国際法違反の状況を是正するものではないと伝えている。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」と強い口調で述べた(2019年7月19日付・NHKニュースWeb版)。この場はメディアの取材が入っていたので、相互がそれを意識した発言だった。ここで河野氏が反論しなければ、韓国大使の勝利だった。

⇒26日(木)夜・金沢の天気     くもり  

★「尖閣」をめぐる次なる狙い

★「尖閣」をめぐる次なる狙い

   きのう24日、来日した中国の王毅外相、茂木敏充外務大臣の共同記者会見の様子をテレビで見ていて、多くの視聴者は「日本はなめられたものだ」と憤ったのではないだろうか。茂木氏は「尖閣周辺の日本の立場を説明し、中国側の前向きな行動を強く求めた」と話したのに対し、王氏は「ここで一つの事実を紹介したい。真相が分かっていない一部の日本の漁船が絶え間なく釣魚島の水域に入っている。中国側としてはやむを得ず非常的な反応をしなければならない。敏感な水域における事態を複雑化させる行動は避けるべき」と。つまり、尖閣周辺の主権を侵害しているのは日本側だと、堂々と会見で述べていた。

   王氏の来日の目的はこれだと察した。当初は、中国の人権問題をめぐって日本は「日米豪印戦略対話(QUAD)」を推進する立場でもあり、それを切り崩すための来日が目的かと推測した。ではなく、「尖閣をめぐる宣戦布告」が目的だったと、この発言で直感した。では、次に中国が打ってくる戦術はなんだろう、と考える。日本の漁民によって中国の主権が侵害されているとの論法なので、おそらく中国側は尖閣に漁民を住まわせるための住居地をつくる。そして、通信機器や沿岸の整備を行い漁業の基地化を進めて既成事実化していくのではないだろうか。

   中国は南シナ海の南沙諸島で「九段線」と称して広大な海域の領有権を主張し、人工島の建設を進めその主張を既成事実化しようとしている。同じ論法を今度は尖閣諸島で展開する布石ではないだろうか。ただし、軍事基地にすると、アメリカを刺激するので漁業基地化だ。菅総理は今月12日、バイデン次期大統領との電話会談で、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条(アメリカの対日防衛義務)の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があった」と述べていた。日米安保条約第5条をにらんで漁業基地化するというのが中国側のシナリオではないだろうか。

   日本の首都で堂々と尖閣の領有権を主張したのだから。あとは粛々と次なる一手を打つだけだ。日本は新型コロナウイルスと東京オリ・パラの対応に追われている。そのうち大震災も発生するだろう、今が先手を打つチャンスと読んでいるのだろう。実にしたたかな、日本をなめた外交ではある。

   外務省公式ホームページに掲載されている内閣官房領土・主権対策企画調整室の資料=写真=によると、1919(大正8)年冬、中国・福建省の漁船が尖閣沖で遭難して魚釣島に漂着した。その際、尖閣に住んでいた日本人の住民は中国漁民を救護した。当時の中華民国駐長崎領事は翌1920年5月に感謝状を贈ったが、そこには「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」と記されている。100年前の史実である。

⇒25日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆日本海のスルメイカ漁 今そこにある外交問題

☆日本海のスルメイカ漁 今そこにある外交問題

   中国の王毅外相がきょう24日に来日、茂木外務大臣と会談を行うほか、あす25日は菅総理大臣と会談すると報じられている。だったら、ぜひこの問題を取り上げてほしい。中国漁船が大挙して日本海の能登半島の沖にある日本のEEZ(排他的経済水域)の大和堆に入り込んで違法な乱獲を繰り返している。このため、日本海に生息するスルメイカの資源量が急減しているのだ。

   問題は、日本海に独自のEEZを持たない中国漁船は漁ができないが、北朝鮮から漁業権を買って同国のEEZで操業していると称して、日本のEEZで密漁しているのだ(11月24日付・時事通信Web版)。 水産庁が9月末までに退去警告をした船の数は延べ2586隻に上っている。去年までは北朝鮮の漁船による違法操業(2019年の警告数4007隻)が圧倒的に多かったが、今年は中国漁船の違法操業が去年より倍増している。

   中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている。北朝鮮の漁業海域で漁業資源をほぼ取り尽くし、次に狙ってきたのが日本海のEEZだろうか。

   以下は憶測だが、中国の狙いはもう一つある。地元紙は中国漁船の違法操業について、「EEZ内に中国の公船が現れているとの情報もある」と伝えている(10月6日付・北國新聞)。漁船の違法操業に紛れて、公船が海底調査を行っている。これは「大和堆の中国所有論」の布石ではないだろうか。中国は今年8月に東シナ海の海底地形50ヵ所について命名リストを公表した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺海域のほか、沖縄本島沖の日本のEEZも含まれる。その前、4月には南シナ海でも海底地形55ヵ所や島嶼(とうしょ)や暗礁25ヵ所について命名リストを公表している。

   中国は北朝鮮と共同戦線を組んで、関連海域と海底に主権と管理権があると主張することで、大和堆周辺の海洋管理を主張する。そして、公船を繰り出し、日本の漁船を追い払うつもりだろう。尖閣で行われているパターンである。このことを中国の王毅外相に直接問うべきだ。スルメイカ漁問題こそ、今そこにある日本の外交の危機ではないだろうか。

⇒24日(火)午後・金沢の天気     はれ