⇒ニュース走査

☆広く薄くばらまかれるワクチン

☆広く薄くばらまかれるワクチン

   65歳以上のシニアへの新型コロナウイルスのワクチン接種がきのう12日から始まった。自身もその対象なのだが、ニュースを視聴していて期待感どころか、モヤモヤ感がわいてくる。それはなぜか。先行して2月17日から始まった医療従事者への接種は12日までに168万9453回(首相官邸公式ホームページ)とある。ところが、医療従事者は480万人と言われているので、2回打つとなると960万回の接種が必要だ。ということは、接種率は17%にすぎない。

   国のワクチン接種の優先順位は  (1)医療従事者、 (2)高齢者(令和3年度中に65歳に達する人)、 (3)高齢者以外で基礎疾患を有する人や高齢者施設等で従事する人、 (4)それ以外の人となっている(厚労省公式ホームページ)。ワクチンの供給量は限られているので、医療現場に携わる人たちを最優先すべきではないだろうか。

   医療従事者への接種が中途半端なまま、今度は高齢者が対象となった。日本の高齢者は3600万人、7200万回の接種となる。自身が住む石川県ではきょうから接種が始まった。スタートは能登半島の尖端部分にある珠洲市。対象は75歳以上4000人だが、まず接種するのは1500人分。残り2500人は5月下旬以降に接種の見通し(4月14日付・北陸中日新聞)。実は、珠洲市は県内でも感染者ゼロの地域だ。言葉は適切ではないかもしれないが、感染者ゼロ地域にワクチンを回すより、まず医療従事者を優先すべきだ。

   きょう大阪府の新たな感染者が1000人超えと報道されているが、今後東京を含め大都会に感染拡大するであろうことは目に見えている。自身は医療の専門家ではないが、感染症対策としてのワクチンは「選択と集中」が効果を発揮するのであって、広く薄くばらまいても意味はないだろう。大都会での感染を抑えることは地方での感染を抑えることに結果的につながるのではないか。

   逆に、ワクチン供給量が限られているにもかかわらず、なぜ感染者が少ない地方にまで広く薄くばらまくのか。うがった見方かもしれないが、今年の総選挙を意識してのことか。ワクチンは大都会も地方も全県平等に配分せよと政治家たちが裏で動いているのか。「ワクチン担当大臣」は行革担当大臣の河野太郎氏だ。既成概念を突破するリーダーシップを期待しているのだが。ワクチン効果を高めてほしと誰しもが願っている。

(※写真は、ファイザー社のワクチン=同社の公式ホームページより)

⇒13日(水)夜・金沢の天気     くもり

★「教師は聖職」揺らぐ信頼

★「教師は聖職」揺らぐ信頼

    半世紀ほど前、教育論をめぐる議論が政界であった。田中角栄が人とモノの流れを巨大都市からに地方に分散させると著書『日本列島改造論』でぶち上げ、1972年に総理の座に就いた。列島改造ブームによる高度成長で民間給与は上昇した。一方で労働運動も高まり、社会党と日教組は教師は労働者であり、労働に正当な評価と報酬を堂々と要求すればよいと組織を拡大した。これに対し、田中内閣は「教師は聖職だ」と述べて真っ向から対立し、教師の給与改善で日教組の切り崩しを図った。

   その後も教師の聖職論をめぐっては議論が続くことになる。教育現場の多忙さから、教師は教育的な仕事のみに専念できるようにすべきという「本務論」が出る。すると、本務以外に雑務労働を設けることは職業における差別構造をもたらすといった議論が起きる。さらに、教師は聖職であり労働者でもあるという「教育専門家」の定義づけも出てきた。今でも自民党は教師を聖職、社民党は労働者、共産党は教育専門家とそれぞれ違った教師像を描いている。

   ただ、社会的な目線はやはり「聖職」なのかもしれない。これは自身が感じたことだ。2005年にそれまでの民放テレビ局を辞して、金沢大学で職を得た。当初は地域ニーズと大学の研究シーズをマッチィングする「地域連携コーディネーター」という職だった。その後、「特任教授」に任命され、講義を担当すると、途端に「先生」と呼ばれるようになった。民間企業で働いていた身とすると、「先生」と呼ばれこそばゆい思いをしたのものだ。そして、「先生」に資する振る舞いや言葉遣い、教育的な指導をしなければならないと自覚するようなった。「先生」という言葉には社会の期待感が込められていると実感した。

   きょう述べようとした考察から大幅にずれた。読売新聞Web版(4月10日付)によると、教員による児童生徒らへのわいせつ行為が後を絶たない中、文部科学省は9日、SNSの私的なやりとりの禁止や密室状態での指導の回避などの「対応指針」をまとめ、全国の教育委員会に通知した。通知では、通信アプリ「LINE」などで私的なやりとりを交わしているうちに親密になり、わいせつな行為に及ぶケースが多いとして、教員と児童生徒のSNSの私的なやりとりの禁止を明確化するよう各教委に求めた。

   教師と生徒のLINEさえも禁止される事態。2018年度の公立学校(小中高校)の教職員によるわいせつ行為・セクハラによる懲戒処分の件数は過去最多の282人となった(文科省公式ホームページ)。これは、保護者や本人から学校や教委、警察に申し立てがあって発覚したものだ。言い出せない、あるいは秘されているケースは一体どれほどあるだろうか。

   また、行為は「ホテル・自宅・自家用車」といった校舎外だけではなく、使われなくなった「空き教室」など校舎内でのケースも目立つ。職場での行為だ。ほとんどが男性教員によるものだが、このような事態が続けば教師という職業そのものの信頼性が揺らぐ。いや、もう揺らいでいる。

   国はどのような対策を取るべきなのか。厳罰による「抑止効果」しかないだろう。文科省はこの4月から懲戒免職となった教員について、「18歳未満や児童生徒に対するわいせつ行為」「それ以外のわいせつ行為」「交通違反や交通事故」「職務に関連した違法行為」「その他」の5つに分類し、氏名を官報に記載する新制度を始めている。今回の指針では、懲戒処分歴を隠して応募することがないよう、処分歴の記載のある応募書類の作成を各教委に指示。さらに、処分前に依願退職させないことも盛り込んでいる(4月10日付・読売新聞Web版)。

   文科省はわいせつ行為・セクハラを絶対に許さないという「強硬姿勢」をかざすしかないだろう。聖職たるもの、情けない話ではある。

⇒10日(土)午後・金沢の天気      はれ

★「 I shall return 」人生哲学の考察

★「 I shall return 」人生哲学の考察

   「 I shall return 」を訳せば「私は戻ってくることになる」となる。同じ未来を表現する助動詞でwillを使えば「戻るつもりだ」と自らの意志を示すが、shallだと「戻ることになる」という運命的な意味合いが含まれる。この言葉が有名になったのは、太平洋戦争でアメリカ軍のダグラス・マッカーサー司令官が駐留していたフィリピンで日本軍の攻勢に遭い、1942年に撤退するときに発した言葉だった。2年後にフィリピンに戻り反撃に転じたことから、「 I shall return 」は不屈の行動を意味する言葉として知られるようになった。

   最近この言葉を使った人物がいる。3月22日付のブログでも書いた、石川県小松市の市長選挙(3月21日)で敗れた和田慎司氏だ。任期は今月12日まで。今月5日の年度初めの市職員への訓示で、「私の好きな言葉」として「 I shall return 」と述べて憶測を呼んだ(4月8日付・北陸中日新聞)。7日には政界復帰の意志かと記者から問われ、「深い意味を考えていただきたい」と述べた(同)。

   もう一度、選挙戦を振り返ってみる。和田氏は小松製作所に入社し、2005年の市長選に初挑戦し現職に敗れ、2009年に当選を果たした。今回は4期を目指していた。失政もなく、69歳は「まだいける」という年齢だろう。公立小松大学の設立、日本遺産「小松の石文化」の登録(2016年)や内閣府「SDGs未来都市」の選定(2019年)など、ある意味で順風満帆で迎えた市長選だった。新人の宮橋勝栄氏は41歳。大手ドラッグストア「クスリのアオキ」など経て、2011年の小松市議選に初当選。2期目の2017年に市長選に立候補して和田氏に敗れ、今回は再挑戦だった。

   選挙戦で和田氏は3期12年での財政健全化の実績を強調し、北陸新幹線小松駅の開業を見据えた駅周辺へのホテル誘致など訴えた。宮橋氏は緊縮財政で小松の活気が失われたと批判し、市長退職金(2000万円)の全額カットを公約、さらに小中学校の給食無償化や音楽ホールやカフェを備えた複合型図書館の建設など公約に掲げた。

   選挙戦では和田氏が自民、公明、立憲民主の推薦を得て、宮橋氏には市議の自民党第二会派などの支援を得ていた。また、小松の2人の自民党県議がそれぞれに支援に回るという「保守分裂」の選挙だった。ローカル紙の見出しでは、3月14日告示の選挙序盤で「和田氏を宮橋氏が追う」、中盤17日ごろからは「和田氏を宮橋氏が激しく追い上げ」「激戦」に変わり、最終盤で「宮橋陣営 票切り崩しに懸命」。21日の投開票(投票率60%)では宮橋氏2万8676票、和田氏2万3731票と4900票差で形勢が一気に逆転した。

   選挙は民意とは言え、和田氏はこの選挙結果に今も納得していないのかもしれない。「 I shall return 」からはその心境が読める。その気持ちが伝わることがもう一つある。今月12日の任期を最後までまっとうすると、本人は執務を続けている。引退はしないという意思表示なのだろう。アメリカ大統領選挙でバイデン氏に敗れたトランプ氏も任期ぎりぎりまで大統領署名や恩赦を乱発して政界復帰のポーズを取っていた。

   マッカーサーが発したもう一つ有名な言葉がある。1950年に朝鮮戦争が勃発し、マッカーサーは国連軍総司令官として戦争を指揮した。が、トルーマン大統領との方針の食い違いから1951年に解任され、アメリカへ呼び戻された。そのときのワシントンの上下院合同会議での演説。「 Old soldiers never die ; they just fade away 」(老兵は死なず。ただ消え去るのみ)。これも人生哲学としては選択肢の一つだ。

(※写真はバチカン宮殿のラファエロ作「アテネの学堂」)

⇒8日(木)夜・金沢の天気     くもり時々あめ

☆「オリンピックはボイコットすることに意義あり」なのか

☆「オリンピックはボイコットすることに意義あり」なのか

   先月25日から始まった聖火リレーはきょう7日、三重県四日市市をスタートし、鈴鹿サーキットや鳥羽市の離島、伊勢神宮など県内の12市町を巡る。それにしても気になるのは、新型コロナウイルスの新規感染者の拡大が関西方面で急増している。大阪府ではきょう新たに800人台後半の新規感染者が出たようだ(4月7日付・毎日放送ニュースWeb版)。きのう6日は719人の感染が確認されている。その大阪府での聖火リレーは今月13、14日の両日だが、大会組織委員会は公道でのリレーを中止し、吹田市にある万博記念公園で代替の走行をすると発表した(同)。

   オリンピックに関して別の難題も持ち上がっている。時事通信Web版(4月7日付)によると、アメリカ国務省のプライス報道官は記者会見で、中国による人権侵害に懸念を示し、来年2022年2月に開催される北京冬季オリンピックについて、ボイコットの是非を同盟国や友好国と議論していく考えを示した。

   オリンピックのボイコットと聞いて思い浮かぶのは1980年のモスクワオリンピックで、アメリカのカーター大統領の提唱で旧ソ連によるアフガニスタン侵攻に抗議して日本を含め50ヵ国余りがボイコットした。それにしても、プライス報道官の記者会見でのコメントは絶妙なタイミングだ。

   今月15日、菅総理はアメリカ訪問に向けて出発し、16日にバイデン大統領と首脳会談を予定している。おそらく主要議題として、中国による台湾侵攻の可能性の分析や、有事に際してアメリカと日本はどう対応すべきか率直に意見交換することになるだろう。それと、今回の北京冬季オリンピックのボイコットについての論議がセットになるのではないだろうか。むしろ、バイデン氏はセットにしたいが故にあえてこの今回この報道官コメントを通じて問題提起をしたのかもしれない。

   バイデン政権による中国の人権弾圧に関する対応は強硬だ。アメリカの国務省の報道官は、中国がウイグル人に対して「ジェノサイド(大量虐殺)」を行っていると認め、この点においては前政権と現政権の見解は一致していると繰り返し述べている(2021年2月5日付・AFP通信Web版日本語)。

   ただ、日米首脳会談に臨む菅総理の心中は穏やかではないだろう。何しろ、アメリカの同盟国としてボイコットに同調すれば、中国は趣意返しとして3ヵ月後の東京オリンピックのボイコットを切り出すことは想像に難くない。さらに、中国は息のかかったアフリカの諸国に東京オリンピックのボイコット圧力をかけてくるだろう。そうした状況が見えてくるだけに、菅氏とすれば北京オリンピックのボイコット案件は東京オリンピック後に回答したいとバイデン氏に伝え、その場をしのぐのではないか。

   有名な言葉「オリンピックは参加することに意義ある」(元IOC会長・クーベルタン)はもう過去の話なのだろうか。オリンピックの政治利用という真逆の方向に世界は動き出している。

⇒7日(水)夜・金沢の天気      はれ

☆「地震、カミナリ、火事」金沢の災害

☆「地震、カミナリ、火事」金沢の災害

    世の中で怖いものの例えとして、「地震、雷、火事、親父」がある。最近は「親父」は怖くなくなり、代わって台風が入る。「地震、雷、火事、台風」だ。一番怖いのは筆頭の「地震」だ。いつ、どこで強い揺れに襲ってくるか分からない。政府の地震調査委員会は、全国の活断層や海溝型の地震に関する最新の研究成果などに基づき、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率などを推計した「全国地震動予測地図」の2020年版を公表した(3月26日)。防災科学技術研究所の公式ホームページ「地震ハザードステーション」に掲載されている。以下引用する。

   地震は世界中どこでも起こっているわけではなく、地震が多発する地域とそうでない地域がある。1977年1月から2012年12月までに世界で発生したマグニチュード5以上の地震統計によると、日本の面積は世界の1%未満であるにもかかわらず、世界の地震の約1割は日本の周辺で起きている。つまり、日本は地球規模で見ても地震による危険度が非常に高い。

   2020年版=写真=を見ると、今後、南海トラフや千島海溝沿いでの巨大地震の発生が懸念されている。また、房総沖の巨大地震や、首都直下地震など確率が高い地域が赤紫色で塗られている。自身が住む金沢市も「森本・富樫断層帯」があり、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れの確率は2%から8%と高レベルだ。長さ26㌔のこの断層帯は市内の中心地を走っている。中心地を走っているというのは、1799年(寛政11)6月29日の金沢地震が起き、断層で崩れたくぼ地などを道路として金沢の街が形成された。再度地震が起きれば市街地を揺れが直撃することになる。

   金沢は「加賀百万石」の優雅な伝統と文化の雰囲気が漂う街と思われている。一方で、江戸時代からの防災の街でもある。加賀鳶(とび)に代表される、伝統的な自主防災組織が金沢にある。また、市内には「広見(ひろみ)」と呼ばれる街中の空間が何ヵ所かある。ここは、江戸時代から火災の延焼を防ぐため火除け地としての役割があったとされる。また、城下町独特の細い路地がある町内会では、「火災のときは家財道具を持ち出すな」というルールが伝えられている。

   なぜそこまで、と考える向きもあるだろう。気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1981~2010年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の42.4日だ。雷がとどろけば、落雷も発生する。1602年(慶長7)に金沢城の天守閣が落雷による火災で焼失している。石川県の消防防災年報によると、県内の落雷による火災発生件数は年4、5件だが、多い年(2002年)で12件も発生している。1月や2月の冬場に集中する。雷が人々の恐怖心を煽るのはその音だけではなく、落雷はどこに落ちるか予想がつかないという点だ。

   寛政の金沢地震から220年余り、震災はいつ起きるか分からない。雷鳴も激しくとどろく。自身のパソコンは常に雷サージ(電気の津波)を防ぐコンセントを使用している。実は怖い街なのだ。

⇒27日(土)夜・金沢の天気        くもり

 

★ミサイルゲームはいつまで続く

★ミサイルゲームはいつまで続く

   弾道ミサイルを1発打ち上げると、そのコストはいくらなのだろうか。共同通信Web版(3月25日付)によると、北朝鮮はきょう25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射したと日本政府が発表した。北朝鮮東部の宣徳付近から午前7時4分と同23分に発射し、いずれも約450㌔飛行。日本領域には到達せず、日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来で、1月のアメリカのバイデン政権発足後で初めて。

   この弾道ミサイル発射の意図は何なのか。以下憶測である。北朝鮮の金正恩総書記が一番恐れていることはアメリカによるピンポイント攻撃、いわゆる「斬首作戦」だろう。実際、アメリカは2011年5月2日のバキスタン攻撃でオサマ・ビン・ラディンに対する斬首作戦を実行した。命令を下したのはオバマ氏、民主党政権下で実施された、

   この斬首作戦を避けるため、金氏はまず弾道ミサイルを打ち上げ、アメリカとの対話の機会を狙う。以下事例だ。2017年7月28日、北朝鮮が打ち上げた大陸間弾道ミサイル(ICBM)はアメリカ西海岸のロサンゼルスなどが射程に入るものだった。北は同年9月3日に6回目の核実験を実施し、同15日には弾道ミサイルを日本上空に飛ばした。それをトランプ大統領が国連総会の演説(同19日)で「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説した。その後、金氏はトランプ氏との米朝首脳会談を2018年6月12日(シンガポール)、2019年2月28日(ハノイ)、同年6月30日(板門店)で3回行った。首脳会談を実施している間はアメリカによる斬首作戦はないと踏んでいるのだろう。

   この経験則をベースに、今度はバイデン氏との対話を求めて挑発を行っているのではないか。金氏が1月5-7日に開催した党大会で、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いるICBMと原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及した(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   そして、きょう弾道ミサイルを打ち上げを実行した。ただ、2017年7月28日のICBMに比べると地味なイメージだ。おそらくコストの問題だろうか。国連安保理が履行を求める国際社会による経済制裁、それに昨年の台風と洪水など自然災害の食糧危機、そして新型コロナウイルス対策などが重なって経済情勢がかなりひっ迫していることは想像に難くない。それにしても、金氏はいつまでこのミサイルゲームを続けるのか。

(※写真は朝鮮中央通信HPに掲載されている2017年3月6日の弾道ミサイルの発射の模様。「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射、このうち1発が能登半島沖200㌔に着弾した)

⇒25日(木)夜・金沢の天気     はれ

☆領海からハイテクまで曲がり角に入った対中関係

☆領海からハイテクまで曲がり角に入った対中関係

        中国との付き合い方が曲がり角に入った。「国」と「国」との関係では、日本と中国の場合、武器使用が認められ中国海警局の艦艇による尖閣諸島への領海侵入がクローズアップされる。 中国の経済圏構想「一帯一路」の対立軸として、「自由で開かれたインド太平洋」構想をテーマに日本、アメリカ、オーストラリア、インド4ヵ国の枠組み「クアッド(Quadrilateral Security Dialogue)」も動き始めている。

        「会社」と「会社」の関係性もうまくいくだろうか。中国のファーウェイは16日、高速通信規格「5G」対応スマートフォンから同社が徴収する必須特許の使用料を初めて公開した。1台当たり2.5ドル(約270円)を上限とし、端末の価格に応じて「合理的な比率」にするという。必須特許はあらゆるメーカーが製品で使うのを避けられない技術を指し、保有者は合理的な水準の使用料を受け取って競合企業などにも使用を許諾する仕組み(3月16日付・日経新聞Web版)。

   通信アプリ「LINE」の日本の利用者の個人情報などがシステムの管理を委託されていた中国の会社の技術者からアクセスできる状態になっていた。個人情報保護法は外国への個人情報の移転が必要な場合には利用者の同意を得るよう定めている。2018年から中国人の技術者が日本国内のサーバーに保管されている利用者の名前や電話番号、それにメールアドレスといった個人情報のほか、利用者の間でやりとりされたメッセージや写真などにアクセスできる状態になっていた(3月17日付・NHKニュースWeb版)。

   企業だから安心できるという次元ではない。中国が2017年6月に施行した「国家情報法」がある。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があればファーウェイなど中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。

   この中国の国内企業への統制を受けて、アメリカでは2018年8月に「国防権限法」をつくり、ファーウェイなど中国のハイテク企業5社からアメリカの政府機関が製品を調達するのを2019年8月から禁止している。2020年8月からは、5社の製品を使う各国企業との取引も打ち切るなど徹底している。領海侵入からハイテク技術まで、中国との関係はすでに曲がり角に入っている。

⇒17日(水)夜・金沢の天気      くもり   

★黄砂から見える能登半島

★黄砂から見える能登半島

   強烈な黄砂がやって来る。気象庁公式ホームページ「黄砂情報」(3月16日付)によると、きょう午後3時で日本海から能登半島の尖端に近いづてき=写真・上=、午後9時ごろには山陰、北陸、新潟をすっぽりと覆うことになる。NHKニュースWeb版(3月15日付)は「中国の気象当局は、今回の黄砂について中国北部では、過去10年で最大の規模だとして、なるべく外出を控えるよう呼びかけています」と伝えている。

   西日本新聞Web版(3月16日付)によると、今回の黄砂で北京市内では粒子状物質「PM10」の濃度が一時、WHO基準値の約160倍となる1立方メートル当たり8千マイクログラムに達した。モンゴル国営放送によると、同国では草原地帯の広い範囲で強風や突風が発生し、遊牧民の住居が吹き飛ばされるなどして死傷者や行方不明者が出た。

     黄砂はタクラマカン砂漠やゴビ砂漠など中国の乾燥地域で巻き上げられ、偏西風に乗ってやってくる。わずか数マイクロメートル(1マイクロメートルは千分の1ミリ)の大きさの砂が、日本に飛来するまでに、まさざまに変化する。「汚染物質の運び屋」もその一つ。日本の上空3キロで採取した黄砂の表面には、硫黄酸化物が多くついていて、中国の工業地帯の上空で亜硫酸ガスが付着すると考えられる。

   黄砂に乗った微生物もやってくる。敦煌上空で採取した黄砂のおよそ1割にDNAが付着していて、DNA解析でカビや胞子であることが分かった(岩坂泰信・元金沢大学教授らの調査)。黄砂は「厄介者」とのイメージがあるが、生態系の中ではたとえば、魚のエサを増やす役割もある。日本海などでは、黄砂がプランクトンに鉄分などミネラルを供給しているとの研究などがある。地球規模から見れば、「小さな生け簀」のような日本海になぜブリやサバ、フグ、イカなど魚介類が豊富に取れるのか、黄砂のおかげかもしれない。

    その黄砂をキャッチするには、日本海に突き出た能登半島がよい。偏西風に乗って日本に飛んできた黄砂をいち早く観測・採取できるからだ=写真・下=。この地の利を生かして、「大気観測・能登スーパー・サイト」という調査フィールドが岩坂氏らの発案で2008年に形成された。能登半島は日本海を挟んで、中国と韓国、ロシアと向き合う。これらの国々の黄砂研究者との連携も進んでいる。東アジアにおける能登半島のポジションが、黄砂研究の視点から見えてくる。

⇒16日(火)午後・金沢の天気     あめ

☆ニュースは流れを読む

☆ニュースは流れを読む

   総務省幹部への接待問題は論点がまだ見えて来ない。東北新社だけでなくNTTにも広がり、公務員倫理の遵守が問われているが、メディア報道に国民は怒っているのだろうか、呆れているのだろうか、あるいは無関心なのだろうか。自身の周囲(職場の人や知人たち)と話していても、このニュースがほとんど話題に上らない。その理由を考察してみる。

   率直に言えば、接待問題は贈収賄事件と展開しないと事件としての迫力がない。もちろん、公務員倫理の遵守意識を軽んじているのではない。なぜ総務省でこれほど接待問題が頻発しているのかと言えば、放送や電波、通信などの割り当てをめぐって巨大な権限を総務省が有しているからだ。根源的な課題として、この規制と権限にも目を向けないと、いつまでたっても接待問題はなくならないだろう。

   この問題を定点観測していくポイントは3つあると考察する。一つは、東京地検特捜部などが動いているのかどうかだろう。昔からよく言われたきたことだが、許認可の判断を官公庁が持ち、政治家が仲介して企業・団体(受益者)に使用権が与えられる。もし、電波の割り当てをめぐって金が動いているのであれば、現職総理のファミリーを巻き込んだ贈収賄事件へと展開する。地検も接待の陰に政治家や金の匂いがしないか虎視眈々と捜査を進めているだろう。接待を受けた1人に総務省事務方のNo2の大物の名前も挙がっていて、検察とすれば「大捕り物」になるからだ。メディアの記者たちも横目で検察の動きを注視しているのではないか。

   2つめのポイントは行政改革だろう。デジタル社会の要(かなめ)は電波だ。その電波割当に関わる権限を総務省から9月1日に設置予定の「デジタル庁」に移管してよいのではないか。ひょっとして菅総理は「デジタル庁」への移管を念頭に置いているかもしれない。

   そして、3つめは規制改革ではないだろうか。電波の割当を省庁の権限ではなく、単純にオークション化すればいい。何しろ、携帯キャリアが国に納めている電波利用料は端末1台当たり年間140円。令和元年度でNTTドコモは184億円、ソフトバンクは150億円、KDDは114億円だった(総務省公式ホームページ「令和元年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額」)。NTTドコモは国へ電波利用料184億円を納め、携帯電話の通信料としてユーザーから3兆943億円を売り上げている(2019年度)。電波をオークション化することによって、その利益を納税者に還元すべきではないだろうか。

   上記の3つのポイントで接待問題の成り行きを注視したい。ニュースは刻々と変化していく。その流れを読んで行く。

⇒15日(月)午後・金沢の天気    はれ  

★「賭けマージャン」略式起訴と首里城「あうん」竜

★「賭けマージャン」略式起訴と首里城「あうん」竜

   きょう気になったニュースから。昨年の新型コロナウイルスの緊急事態宣言の中、東京高検検事長と新聞記者らによる賭けマージャン問題はこのブログでも何度か取り上げた。NHKニュースWeb版(3月14日付)によると、民間団体から刑事告発され、起訴猶予になった東京高検の黒川弘務元検事長について、東京地検は検察審査会の「起訴すべきだ」との議決を受けて再捜査し、一転して賭博の罪で略式起訴する方針を固めた。新聞記者ら3人については改めて不起訴とする見通し。

   略式起訴は検察が簡裁に書面だけの審理で罰金などを求める手続きで、今後、簡裁が検察の請求が妥当だと判断し、元検事長が罰金を納付すれば、正式な裁判は開かれず審理は終わることになる(同)。事件が発覚したきっかけは「文春オンラン」(2020年5月20日付)と週刊文春の記事だった=写真・上=。賭けマージャンは月1、2回の頻度で、賭け金は1千点を100円に換算する「点ピン」と呼ばれるレートで、1回で1万円から2万円程度の現金のやり取りをしていた。

   昨年7月、東京検察は「1日に動いた金額が多いとは言えない」「娯楽の延長線上にある」などとして起訴猶予にしていた。その後、12月に検察審査会は黒川氏に対して「違法行為を抑止する立場にあった元検事長が漫然と継続的に賭けマージャンを行っていたことが社会に与えた影響は大きい」と起訴相当を議決。また、記者ら3人については捜査が不十分として「不起訴は不当」と判断していた。きょうのニュースを見て、ようやく「けじめ」がついたとの印象だ。

   沖縄・那覇市の首里城は戦前、正殿などが国宝に指定されていた。戦時中、日本軍が首里城の下に地下壕を築いて司令部を置いたことから、1945年にアメリカの砲撃にさらされた。戦後に大学施設の建設が進み、城壁や建物の基礎がわずかに残っていた。大学の移転で1980年代から正殿などの復元工事が始まり、1992年に完成した。そして、2019年10月31日未明に出火し、無残な姿となった=写真・中=。政府は沖縄の本土復帰50年にあたる2022年に復元工事に着手し、2026年に正殿の完成を目指している。

   復元に向けての明るいニュースがあった。朝日新聞Web版(3月12日付)によると、正殿の彫刻に使われた下絵が、金沢市の彫刻作家・今英男(いまひでお)氏(1937-2014)の自宅で約30年ぶりに見つかった。下絵は縦約60㌢、横約4.5㍍。向き合う2頭の「あうん」の竜と、その間に宝の玉「宝珠(ほうじゅ)」が描かれている。「宝珠双龍文様」と呼ばれる図柄の彫刻で、正殿の玉座の背後にある「内法額木(うちのりがくぎ)」と呼ばれる部分に施してあった。下絵には「全体的に少し上げる」など、手書きの修正点や注意点が複数書き込まれている。

   自身は2009年5月に首里城を訪れ、正殿の玉座などつぶさに見学した。内法額木の2頭の「あうん」の竜の精細な彫りと金色の塗りに目を奪われ、カメラに収めた=写真・下=。当時、金沢の彫刻作家の手によるものだとは知らなかった。今回のニュースで、彫りは今英男氏、そして塗りは琉球漆器の職人たちの合作ではないかと憶測する。「あうん」の竜が蘇ることを期待したい。

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