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☆巨大なデビルフィッシュ 世界への宣伝効果

☆巨大なデビルフィッシュ 世界への宣伝効果

   イギリスBBCニュースWeb版(5月4日付)が面白いニュースを伝えている。「Covid: Japan town builds giant squid statue with relief money」の見出しで海辺のイカのモニュメントの写真を掲載していた=写真=。驚いたことに、能登半島の「イカの町」で知られる能登町のイカのモニュメントだ。

   記事の書き出しはこうだ。「A seaside town in Japan has raised eyebrows after it used funding from an emergency Covid-19 relief grant to build a giant statue of a squid.」。日本の海辺の町は、コロナ禍の緊急援助金を使って巨大なイカの像を建て、物議をかもしている、と。この全長13㍍の像は感染対策の地方創生臨時交付金を使ってことし4月に完成したもので、地元紙も取り上げるなど話題になっていた。何しろ交付金2500万円が建設費に充てられたからだ。

   記事では「能登町の関係者は地元メディアに対し、新型コロナウイルスのパンデミック (世界的大流行) 後に観光客を呼び戻す長期計画の一環だと語っている」と書いている。つまり、BBCの記者が直接取材に訪れたのではなく、地元紙の記事を引用して記事構成をしている。ちなみに、能登町の小木港は青森県の八戸港、北海道の函館港と並ぶ、日本のイカ漁の3大漁港の一つだ。

           憶測だが、BBCの記者は記事の写真をネットなどで見て興味を抱いたのだろう。欧米では、タコやイカをデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」と称して忌み嫌う人も多いとか。巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画もある。その意味で、画像のインパクトを意識した記事ではないだろうか。

    記事では「パンデミックが収束しない中で、巨大イカに多額の資金を費やしているとして、町の行政を批判する声もある」と紹介する一方で、「町の広報担当者は、このモニュメントは観光名所となり、能登のイカを宣伝する長期戦略の一部となるだろう」と日本のメディアに語ったコメントも記載している。

   BBCの報道の後、フランスのAFP通信、アメリカのニューヨーク・タイムズなどもこの記事を取り上げている。デビルフィッシュのすさまじい宣伝効果ではある。

⇒8日(土)午前・金沢の天気     くもり時々はれ

☆WHOテドロス事務局長の再選めぐるキナ臭さ

☆WHOテドロス事務局長の再選めぐるキナ臭さ

   WHOにまたキナ臭さが漂ってきた。AFP通信Web版日本語(5月4日付)は、「WHOのテドロス事務局長は再選を目指している」とアメリカの医療専門メディア「スタット・ニュース」の記事を引用して伝えている。テドロス氏はエチオピアの保健相と外相を歴任し、2017年にアフリカ出身者として初めてWHO事務局長に就任した。WHO事務局長は任期5年で2期まで務めることができる。1期ごとに加盟国の投票で選ばれる。

   テドロス氏への不信感が世界で広まったのは、「中国寄り」の露骨な振る舞いが新型コロナウイルスをきっかけに露わになったことから。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国でコロナ感染者が拡大していたにもかかわらず、2020年1月23日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送った。同月30日になってようやく緊急事態宣言を出したが、テドロス氏は「宣言する主な理由は、中国での発生ではなく、他の国々で発生していることだ」と述べた(同1月31日付・BBCニュースWeb版日本語)。日本やアメリカ、フランスなど各国政府は武漢から自国民をチャーター機で帰国させていたころだった。

   その宣言後の記者会見でテドロス氏はさらにこう述べた。「私は先日中国に渡航し、習近平国家主席のリーダーシップを目の当たりにした。他の国も見習うべきだ。中国国外の感染者数が少ないことについて、中国に感謝しなければいけない」(同1月31日付・日経新聞Web版)。アメリカの当時のトランプ大統領は「WHOは中国に完全に支配されている。WHOとの関係を終わらせる」と脱退を表明し7月6日付で国連に正式に通告した(同7月8日付・共同通信Web版)。世界的な署名サイト『Change.org』でもテドロス氏解任キャンペーンが展開され、100万を上回る署名が集まった(同5月10日現在)。

   母国エチオピアでもテドロス氏への疑惑が起きている。エチオピア軍の参謀長は2020年11月19日の記者会見で、政府軍と対立している同国ティグレ州の政党「ティグレ人民解放戦線(TPLF)」にテドロス氏が武器調達を支援していると批判した。同月4日、TPLFが政府軍の基地を攻撃したのに対して、アビー首相(2019年ノーベル平和賞受賞者)が反撃を命じ、戦闘が続いていた。テドロス氏はティグレ人でTPLFの支援に回っているとエチオピア政府は不信感を募らせている(同11月19日付・AFP通信Web版日本語)。テドロス氏はTPLFへの武器調達を支援しているとの疑惑を否定した(11月20日付・同)。

   そのエチオピアではことし6月5日に国政選挙が行われる。選挙は当初2020年8月を予定していたが、新型コロナ対策を優先して実施を延期していた。アビー首相と政権与党「繁栄党」に対する国民の支持を占う選挙となる(2021年2月5日付・JETROWeb版)。この選挙で引き続き与党が政権運営を担えば、政府や軍の反発を買っているテドロス氏の2期目は危うくなる。また、中国寄りのテドロス氏がWHOの最高責任者として居座ることを国際世論が許すかどうか。そして、開発途上国に多額の債務を負わせる投資プロジェクト「一帯一路」をエチオピアでも展開する中国はこの局面をどう操るのか。キナ臭いストーリーの展開に注目したい。

(※写真は2020年8月21日のWHOの記者ブリーフィング=WHO公式ホームページ)

⇒4日(祝)夜・金沢の天気    くもり

★憲法改正の世論トレンドを読む

★憲法改正の世論トレンドを読む

   きょうは憲法記念日。この日にちなんでメディア各社が世論調査を実施している。それを読み解くと、憲法に対する日本人の感覚がこれまでとは違っていることが分かる。そのトレンドを読んでみる。

   朝日新聞(5月3日付)の世論調査を見る。「いまの憲法を変える必要があるか」の問いでは、「変える必要がある」が45%(昨年調査43%)、「変える必要はない」が44%(同46%)だった。憲法第9条を「変えないほうがよい」61%(同65%)が、「変えるほうがよい」30%(同27%)を上回った。調査は全国の有権者から3千人を選び、郵送で3月上旬から4月中旬に実施。有効回答は2175で、回収率は73%。

   NHKニュースWeb版(5月2日付)の世論調査。今の憲法を改正する必要があると思うかの問いでは、「改正する必要があると思う」が33%、「改正する必要はないと思う」が20%、「どちらともいえない」が42%だった。戦争の放棄を定めた憲法9条を改正する必要があると思うかどうか聞いたところ、「改正する必要があると思う」が28%、「改正する必要はないと思う」が32%、「どちらともいえない」が36%だった。昨年の同じ時期に行った調査と比べると、「改正する必要がある」はほぼ同じ割合だったのに対し、「改正する必要はない」は5ポイント減少した。調査は4月23日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDで実施。調査対象となった2808人の54.6%にあたる1533人から回答。

   読売新聞(5月3日付)の世論調査では、憲法を「改正する方がよい」は56%となり、前年の同時期の調査49%から上昇した。「改正しない方がよい」は前回から8ポイント低下の40%。近年は憲法改正の賛成派と反対派が5割前後で拮抗していたが、今回は差が16ポイントに広がった。調査は郵送方式で3月9日から4月15日、全国の有権者3000人を対象に実施し、2155人から回答があった(回答率72%)。

   上記の3つの世論調査から、憲法を「改正する方がよい」という民意のトレンドが読める。民意をそう傾けている要因は少なくとも2つあるのではないか。一つはやはり新型コロナウイルスの感染拡大だ。大阪市長で日本維新の会の松井一郎氏が記者会見(4月30日)で、「政治の責任として私権制限についてタブー視することなく議論すべきだということを今、突きつけられている。有事の場合にどういう形で人の動きを抑制できるのかということを、私権制限を含めて議論すべきだ」と述べた(4月30日付・NHKニュースWeb版)。

   憲法では基本的人権が重要な構成要素であり、「私権制限」を口にすることですらご法度だ。しかし、このコロナ禍で店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿が先日もテレビで報じられていた。こうした現実を見ると、政府や行政が緊急事態宣言で実行性を伴った権限で対応できるよう、私権制限もある意味で必要だという意識が民意として高まっているのではないだろうか。

   集団的自衛権の行使を認めた安保法制関連法の施行から5年がたっ。 4月17日に発表された日米首脳による共同声明でも「台湾海峡の平和と安定の重要性」が盛り込まれたことから、自衛隊がアメリカの戦争に加担しかねないとの意見も野党の一部にはある。ただ、台湾の平和が脅かされれば次は尖閣・日本だと憶測する。こうした中国への警戒感が憲法改正への民意を高めているに違いない。

⇒3日(祝)夜・金沢の天気       はれ

★アメリカ死神と北斎パロディ画の共通点

★アメリカ死神と北斎パロディ画の共通点

   きょう5月1日は立春から数えて88日目、「八十八夜」だ。いにしえより、この日に摘んだ茶は上等なものとされる。「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る・・・」と文部省唱歌の『茶摘み』の歌を思い出す。さらに、この茶摘みの唄からもう一つ思い出すのが、「ズイズイ ズッコロバシ ごまみそズイ 茶壺におわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ」という童謡だ。二つの歌の背景を探る。

   江戸時代、お茶は最高級品だった。「お茶壺道中」という言葉があった。幕府が将軍御用の宇治茶を茶壺に入れて江戸まで運ぶ行事を茶壺道中と言った。この道中は、京の五摂家などに準じる権威の高いもので、茶壺を積んだ行列が通行する際は、大名といえども駕籠(かご)を降りなければならない、というルールだった。街道沿いの村々には街道の掃除が命じられ、街道沿いの田畑の耕作が禁じられた。「ズイズイ ズッコロバシ ごまみそズイ 茶壺におわれて トッピンシャン ぬけたら ドンドコショ」というわらべうたは、田植えなどの忙しい時期に余分な作業を強いられるお百姓たちの風刺を歌ったものだった。世の中には裏と表の表層があるものだ。

   これも裏と表の表層とも言えるかもしれない。在日中国大使館が先月29日付のツイッターで、「アメリカが『民主』を持って来たらこうなります」という日本語のコメントとともに、アメリカを死神になぞらえた画像を掲載した。アメリカの国旗を模した服を着た死神が、イラクやリビア、シリアなどと書かれた扉を開けて回り、部屋の中からは血が流れ出ている=写真・上=。このツイートは現在削除されているが、なぜ在日中国大使館がこのような画像をわざわざ掲載したのか解せない。その背景を憶測する。

   単純な見方をすれば、アメリカのバイデン大統領が先月28日に行った就任100日目の施政方針演説で、中国の習近平国家主席のことを「autocrats」(独裁者)と称したことではないかと推測できる。これに反発して、アメリカこそ民主主義を無理強いしようとしてイラクやリビア、シリアなどを混乱に落とし込んでいる死神だ、と。それにしても、タイミングが良すぎる。中国御用達のイラストレーターにこの画像を制作させたものであることは推察できるが、これは以前から作成していて、アップロードのタイミングを見計らっていたのではないだろうか。

   もう一つ、絶妙なタイミングがある。日本政府が東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長が26日付のツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディ画像を投稿して批判した=写真・下=。

   アメリカ死神と北斎パロディ画の両作品の作者はおそらく同一人物で日本に在住する中国御用達のイラストレーターではないだろうか。アメリカ死神の画像では「アメリカが『民主』を持って来たらこうなります」という日本語のコメントがついているが、なぜ中国語、あるいは英語ではなかったのだろうかと考えると、単純な話が、作者は日本人なのだろうと推測する。犯人探しをするつもりはまったくない。ただ、作品を中国側に売り込むのではなく、パロディ画作家として自立する道を拓いてほしい、ただそう思っただけである。

⇒1日(土)夜・金沢の天気     あめ

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

   新型コロナウイルス感染者が急拡大している大阪府できのう20日新たに1153人増えた。また、医療体制がひっ迫していることから、全国の大学病院などから看護師ら90人の医療従事者が大阪に入るとニュースで報じられていた。ここまで来ると、まさに「戦時下」の印象だ。そして、昨夜に大阪府は国に緊急事態宣言の発令を正式に国に要請した。緊急事態宣言が発令されれば、人の流れを減らすために、百貨店など商業施設やテーマパークなどに休業要請がなされる。宣言の期間については3週間から1ヵ月の見込み。

   しかし、大阪府では3度目となる緊急事態宣言の効果は果たしてあるのか。2度目の緊急事態宣言(1月14日から2月28日)の後、大阪市内に「まん延防止措置」(4月5日から5月5日)が適用され、飲食店に午後8時までの営業時間の短縮を要請し、府民に対しても不要不急の外出自粛を求めている。それでもほぼ連日のように新たな感染者が1000人を超えている。そして、今回の3度目の緊急事態宣言の要請だ。

   大阪のメディアのニュースをチェックすると、3度目の緊急事態宣言中の飲食店に対する措置として3つの案を国と調整する。1つ目は、すべての飲食店の休業、2つ目は土日祝日は休業し、平日は午後8時までの時短営業で酒の提供を自粛、3つ目は休業要請はせずに酒の提供は自粛する、という内容(4月20日付・読売テレビニュースWeb版)。仮にすべての飲食店の休業だとしても効果はあるのか。

   先日、大阪の梅田の繁華街で、店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿がテレビで報じられていた。このとき思い出したのが、子どものころ父親から聞いた、「また逃げたか八連隊」という言葉だった。戦時中、大阪を中心に部隊編成された陸軍の八連隊では司令官が「突撃」と叫んでも、逆に逃げる兵士が多くいて部隊の統制が効かないとの例えだった。コロナ禍でこのような言葉を持ち出すことは相応しくないが、吉村府知事が緊急事態宣言だといくら叫んでも、実行性が伴わなければコロナ禍は治まらないのではないか。むしろ大阪にワクチン接種を集中させてもよいのではないだろうか。(※写真は大阪府庁舎=「Wikipedia」より)

⇒21日(水)午前・金沢の天気      はれ

☆サイバー攻撃 中国vs日米の構図

☆サイバー攻撃 中国vs日米の構図

   まるで、日米首脳会談が終わるのを待っていたかのようなタイミングだ。警視庁は20日、日本に滞在歴がある中国共産党員でシステムエンジニアの30代の男が、サイバー攻撃に使ったレンタルサーバーを偽名で契約していたとして私電磁的記録不正作出・供用の容疑で書類送検した(4月20日付・NHKニュースWeb版)。2016年からJAXAや防衛関連の企業など、日本のおよそ200に上る研究機関や会社が大規模なサイバー攻撃を受け、警察当局の捜査で、中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊の指示を受けたハッカー集団「Tick」によるものと分かった(同)。

   中国には2017年6月に施行した「国家情報法」がある。11項目にわたる安全(政治、国土、軍事、経済、文化、社会、科学技術、情報、生態系、資源、核)を守るために、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人および組織を保護する」(第7条)としている。端的に言えば、政府や軍から要請があれば、ハッカー集団やファーウェイなど中国企業はハッキングやデータ提供に協力せざるを得なくなる。国民に要請の対象となる。

   この中国の動きを警戒して、アメリカでは2018年8月に「国防権限法」を施行し、中国のハイテク企業5社からアメリカの政府機関が製品を調達するのを2019年8月から禁止している。2020年8月からは、5社の製品を使う各国企業との取引も打ち切るなど徹底している。日本では、警視庁公安部が2017年4月に「サイバー攻撃対策センター」を設置し、専門知識を持った100人が所属していて、主に政府機関や企業などへの海外からのサイバー攻撃について捜査を行っている。今回の中国によるサイバー攻撃の調査も対策センターが追跡していた。

   今回の警視庁の発表は、冒頭で述べた日米首脳会談が終わるの待っていたタイミングだった。共同声明「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」では、サイバー攻撃について盛り込んでいる。「We also highlighted the importance of strengthening bilateral cybersecurity and information security, a foundational component of closer defense cooperation, and of safeguarding our technological advantages. (日米両国はまた、より緊密な防衛協力の基礎的な要素である、両国間のサイバーセキュリティおよび情報保全強化並びに両国の技術的優位を守ることの重要性を強調した)」

   アメリカのFBIも、情報通信や宇宙関連の企業から機密データを盗み出したとして、中国のハッカー集団をこれまで複数回起訴している。共同声明を受けて、警視庁はFBIと連携を強化するカタチで中国人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊やハッカー集団と対峙していくことになるだろう。尖閣諸島の領海侵入を含め、中国との関係はすでに曲がり角に入っている。

⇒20日(火)午後・金沢の天気   はれ

★「恩を仇で返す」ような

★「恩を仇で返す」ような

   最近のニュースで「恩を仇で返す」という言葉を思い浮かべたことが2つある。慈しみや施しを受けた相手に対して、相応の礼を尽くすのではなく、逆に相手を攻撃するような態度のことだ。

   秋篠宮家の長女の眞子さまと婚約内定中の小室圭氏が、実母と元婚約者男性の金銭トラブルについて記したA4用紙28枚の文書を発表した(今月8日)。その「小室文書」をメディア各社がネットで上げているので、斜め読みだったが目を通した。目に留まったのは「切実に名誉の問題」とする文面だった。以下「AERA」公式ホームページに掲載されている文書の抜粋。

「どのような理由があろうと、早期解決と引き換えに借金でなかったものが借金であったことにされてしまう事態を受け入れることはできないと考えたからです。借金だったことにされてしまえば、元婚約者の方のおっしゃることが正しかったということになり、私や母は借金を踏み倒そうとしていた人間だったのだということになります。これは、将来の私の家族までもが借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続けるということを意味します。」「一般的には金銭トラブルと呼ばれていますが、切実に名誉の問題でもありましたし、今でも、同じように受け止めています。」

 

   元婚約者から請求された「400万円」を返済すれば、借金だったとの意味付けになり、「借金を踏み倒そうとした人間の家族として見られ続ける」ことから、これは「名誉の問題」だと記した。かつて生活費を支援してくれた元婚約者への感謝の気持ちというものが文面からは感じられない。

   その象徴的な行為が「隠し録り」だ。2012年9月、元婚約者が婚約破棄にともない金銭に関する要求はしないとの会話を収めた録音データの存在を小室氏は記している。おそらくその後も「隠し録り」を続けていたのだろう。両者が真摯に話し合いの場に持って行けない状況をつくっていたのは小室氏側ではないだろうか。

   そして、「名誉の問題」は4日後に一転する。今月12日付のNHKニュースWeb版によると、小室圭氏の代理人弁護士は12日、報道陣の取材に応じ、母親と元婚約者の男性の金銭問題について、小室氏側が解決金を渡す意向があると明らかにした。なぜ方針転換をしたのだろうか。AERAが9日から12日にかけて実施した緊急アンケート(2万8641人回答)によると、「小室氏は文書によって金銭問題の説明を十分に果たしたか」の問いに94.7%が「十分とは言えない」と回答している。小室文書はむしろ国民の不信感を募らせたのだ。

    もう一つのニュース。東芝の経営再建に功績があった代表執行役社長兼CEOの車谷賜昭氏が任期半ばで辞任した(今月14日付・日経新聞Web版)。東芝は2015年に発覚した不適切な会計処理やアメリカでの原子力事業の失敗で債務超過に陥り、2017年8月には東証1部から2部に降格した。CEOとして白羽の矢が立ったのが、三井住友銀行出身の車谷氏だった。

    辣腕を振るったのは6000億円の増資やNAND型フラッシュメモリー会社「キオクシア」(旧東芝メモリ)の売却だ。そして、今年1月に東証1部に復帰した。3月に入って、いざこざが起きた。昨年7月の定時株主総会で、一部株主の議決権が無効だったとして今年3月の臨時株主総会で、定時株主総会の公正さを調査する議案が採択された(3月18日付・東芝公式ホームペ-ジ)。いわゆるアクティビスト(物言う株主)から企業統治への不信が噴出する事態に陥っていた。本来ならば再建の功労者なのだが。

(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒18日(日)午後・金沢の天気     くもり

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

☆共同声明で読む「ヨシ」「ジョー」のこれから

   アメリカを訪問中の菅総理はホワイトハウスでバイデン大統領と初めて対面での会談を行った。会談後に「“U.S. – JAPAN GLOBAL PARTNERSHIP FOR A NEW ERA”(新たな時代における日米グローバル・パートナーシップ)」と題する共同声明を発表した。いち早くホワイトハウスの公式ホームページに共同声明が掲載されている=写真・上=。読むと、強烈に中国を意識した内容だ。以下抜粋。

「Together, we oppose any unilateral action that seeks to undermine Japan’s administration of the Senkaku Islands.」(両国は共に、尖閣諸島に対する日本の施政を損おうとするいかなる一方的な行動にも反対する)

「We underscore the importance of peace and stability across the Taiwan Strait and encourage the peaceful resolution of cross-Strait issues. We share serious concerns regarding the human rights situations in Hong Kong and the Xinjiang Uyghur Autonomous Region. 」(両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する)

「The United States and Japan recognize that digital economy and emerging technologies have the potential to transform societies and bring about tremendous economic opportunities. 」(アメリカと日本両国は、デジタル経済および新興技術が社会を変革し、とてつもない経済的機会をもたらす可能性を有していることを認識する)として、生命科学やバイオテクノロジー、AI、宇宙の分野で研究と技術開発で協力する述べている。5Gなどでは中国企業を警戒した内容になってる

「President Biden and Prime Minister Suga affirmed their commitment to the security and openness of 5th generation (5G) wireless networks and concurred that it is important to rely on trustworthy vendors. 」(バイデン大統領と菅総理は、第5世代無線ネットワーク(5G)の安全性および開放性へのコミットメントを確認し、信頼できる事業者に依拠することの重要性について一致した)。

   この共同声明に対して、アメリカのメディアの反応は。CNNのWeb版の見出し=写真・下=。「Biden uses meeting with Japanese Prime Minister to emphasize new focus on China」(バイデンは日本の首相との会談を利用して、中国への新たな焦点を強調している)。アメリカと中国の対峙に日本を巻き込むカタチで新たな争点をあぶりだしている、と好意的な論調だ。

   また、共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたことは台湾にとっては画期的なことだろう。共同通信Web版(17日付)は「台湾外交部(外務省)の欧江安報道官は17日、日米首脳が共同声明にを明記したことに心からの感謝を表明した」と伝えている。

   一方の中国は穏やかではないだろう。時事通信Web版(同)は中国の在アメリカ大使館報道官が共同声明について「強烈な不満と断固とした反対を表明する」との談話を発表し、「台湾、香港、新疆ウイグル自治区に関する問題は中国の内政であり、東・南シナ海は中国の領土主権に関わり、干渉は受け入れられない」と強調した、と報じている。

   日米首脳会談ではテーブルに就いた参加者全員がマスクを、共同記者会見では記者との距離をとってマスクを外して、違和感なく臨んでいた。今回の首脳会談をテレビで視聴していて、菅氏とバイデン氏はなんとなく似た者同士との印象を受けた。前述のCNNの見出しで「use」という動詞を使っているが、まさに互いが使い合う外交スタンスが共同声明からも見えてくる。シンゾー(安倍氏)とドナルド(トランプ氏)の個性的な外交とは違った意味で強力なコンビが組めるのかもしれない。

⇒17日(土)午後・金沢の天気     あめ

★「ヨシ」「ジョー」外交の初舞台

★「ヨシ」「ジョー」外交の初舞台

   菅総理は昨夜、アメリカに向け出発した。ホワイトハウスで16日午後(日本時間17日未明)にバイデン大統領と会談する。おそくら会話の中では、男子ゴルフ「マスターズ・トーナメント」で優勝した松山英樹選手のことがホットな話題として出るだろう。「Matsuyama’s Masters win will make him ‘forever a hero’ 」(マスターズ優勝で松山は永遠のヒーローだ)などとバイデン氏は持ち上げるかもしれない。どのような言葉が交わされるのか注目したい。

   これまで日本の総理とアメリカの大統領はギブ・アンド・テイクの関係で親密さを演出してきた。最近の印象では、安倍氏が来日したオバマ氏を東京・銀座のすし店で接待した。オバマ氏は寿司が好物だった。安倍氏のお酌する姿を覚えている。また、安倍氏はトランプ氏とゴルフ外交を重ねた。面白いと思ったの この写真だ。2019年5月26日付で総理官邸のツイッターに公開された。お笑いコンビのような雰囲気で両氏が映っている。千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。

   親密さの演出は外交に欠かせない。2016年5月にオバマ氏がアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪れて慰霊し、核兵器廃絶を訴えた。同じ年の12月、今度は安倍氏がハワイのパールハーバーに赴き、日本軍の攻撃による犠牲者を祀るアリゾナ記念館を慰霊訪問した。安倍氏とトランプ氏は2019年9月、ニューヨークでの首脳会談で日米貿易協定の締結にこぎつけた。日本はアメリカの農産物の関税を撤廃、アメリカは日本製自動車などへの追加関税を当面発動しないことで合意した。外交の演出は外務省の努力や根回しもさることながら、為政者のセンスにもよるだろう。その意味で次の外務大臣に安倍氏をとの論調も時折耳にする。

   さて、菅総理とバイデン大統領の外交演出はどのような見せ方になるのか。日米同盟を強化すること、中国の台頭に連携して対処すること、気候変動の問題やサプライチェーン(供給網)など経済安全保障など課題は多々ある。そして何より、「ヨシ」「ジョー」と互いのファーストネームをうまく呼び合えるのかどうか。

⇒16日(金)午後・金沢の天気    はれ

☆オンラインか対面か、揺れる大学キャンパス

☆オンラインか対面か、揺れる大学キャンパス

          新型コロナウイルスの感染者が急増する大阪府の吉村知事はきのう14日、「学生の感染が増えている」として府内の大学に授業の原則オンライン化を要請する方針を表明したとニュースになっていた。新年度の講義が対面で始まったばかりの各大学では、おそらく大混乱となっているだろう。

   何しろ文科省は対面授業を重視していて、先日(4月9日)萩生田文科大臣は閣議後記者会見で、コロナウイルスの蔓延防止措置が適用された地域の大学であったとしても対面授業の実施を求めると見解を示した。以下、文科省公式ホームペ-ジから会見の内容を要約する。

記者) 昨日(8日)東京都の小池知事が大学にオンライン授業を要請したいとの発言があった。文科省は新年度においては、できる限り対面を拡大してほしいと大学に対して要請してきた。文科省と東京都とで齟齬が生じている。

大臣) 都知事の会見で「大学にオンライン授業の拡大を要請する」との発言があった旨は報道を通じて承知している、文科省としては、これまでも、各大学において十分な感染対策を講じた上での対面授業とオンライン授業とを効果的に実施するなど、学生が安心・納得して学修に専念できる環境を確保するよう求めてきた。大学における感染の事例の多くが、いわゆる、授業中のことではなく、放課後の飲み会や部活動など課外活動において発生していることを踏まえ、そのような感染リスクが高まる場面での注意喚起や感染対策の徹底を求めてきた。ぜひ上手に対面とオンラインのハイブリット型で対応していただくよう各大学にはお願いしたい。

記者) 基本的にこれまで出してきた通知やQ&Aに関して変更する考えはないという理解でよいか。

大臣) 対面授業の再開は歓迎すべきことだ。しかし、感染防止対策を全くやらないで再開ということを望んでいるわけではない。一部の大学では、大教室に詰め詰めの授業が始まっているという報道もある。大学も知恵を出していただきたい。

記者) 蔓延防止措置で、都知事が大学は学生に対してPCR検査もやってほしいというような発言を昨日の会見でしていた。国の考えはどうか。

大臣) その報道は承知していない。PCRをやるやらないは学校の判断だ。国全体として大学生のみにPCR検査を義務付けることは現段階で考えてはいない。

   要は、萩生田大臣とすれば、学生コンパなど課外活動で感染が広がっているのであって、授業の場が原因ではない限り対面授業を中止するのは本末転倒。大学側が学生に適切な指導をすればよい、というのが言い分だろう。記者の質問はある意味で都知事の言葉を代弁しているが、感染拡大が止まらなければ現実問題としてオンライン授業に切り替えるのは当然ではないのか、PCR検査もしてほしいとの主張だ。

   大学はまさに板挟みだろう。「対面とオンラインのハイブリット型」と口で言うのは簡単だが、たとえば、1限目が対面で、2限目がオンライン、3限目が対面となった場合、学生たちはキャンパスでの身の置き方に困る。それだったら、すべてオンラインにしてもらったほうが、自宅やアパ-ト、寮で講義を受けることができる。自身の体験でもあるが、教員は対面授業の方がよい。動画収録でオンライン講義を試みたが、1コマ90分の撮影はNGが出たりと時間がかかった。学生たちのリアクション・ペーパー(感想文)の回収もメールでやり取りをすると手間がかかる。

   オンラインでの授業が主流だった昨年は中退した学生が減少した。文科省公式ホームページによると、2020年4月-12月に大学(短大を含む)を中退した学生は2万8647人だった。前年同期より7369人も減少している。中退の理由は「経済的な困難」19%、「学生生活不適応・修学意欲低下」(18%)となっている。各大学による授業料の納付猶予や減免などで経済的なサポートもあったことが減少の理由かもしれない。ただ、自身は「学生生活不適応・修学意欲低下」が18%もいることに注目したい。割合とすると2019年同時期の調査とほとんど変わらないが、オンラインへの違和感やキャンパスでの学生同士のコミュニケーションが絶たれることがネガティブな心理に働いているのではないかと憶測もする。

(※写真は昨年6月19日に対面講義が再開された金沢大学での図書館のカフェの様子。普段は学生たちがよく集まるが、座席人数も制限されガランとしていた)

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