⇒ニュース走査

☆ゆっくり多様化する日本のシンボル

☆ゆっくり多様化する日本のシンボル

   前回の東京オリンピックは1964年に開催された。自身がちょうど10歳で、ものごころが付いた時期なので、鮮明ではないにしろ、印象に残っている場面もいくつかある。このオリンピックを視聴するために、我が家ではそれまでの白黒テレビをカラーテレビに買い替えた。なので、入場行進のとき、日本選手団は赤の上着にズボンやスカートは白だったことも印象に残っている。「東洋の魔女」と呼ばれていた女子バレーボールチームが当時のソビエトに勝って金メダルを獲得した時は、カラーテレビを持っていなかった近所の人たちも見に来ていて、いっしょになって「よっしゃ、よっしゃ」と喜びを分かち合った記憶も脳裏の片すみにある。

   当時はカラー化と同時に、見せる技術としてスローVTRが導入されて、勝敗を決めた決定的な瞬間をゆっくり繰り返すことで視聴者の視覚と心に訴えた。現在ではスポーツ番組でスローVTRは当たり前のシーンだが、当時は画期的だった。では、今回の東京オリンピックのテレビの最新技術とは何だろう。国際映像を供給する五輪放送サービス(OBS)はインテルなどと協力し、仮想現実(VR)や人工知能(AI)を使い、陸上短距離で選手がどの瞬間に最高速度に達したかを表示する新技術も導入するという。アスリートに小型センサーをつけて選手の心拍数も視聴者に伝えという試みもある(7月10日付・共同通信Web版)。「新たな視聴体験」として、見るだけではなく、アスリートの肉体に接近することで競技の醍醐味をよりリアルに感じとることができるようだ。楽しみだ。

   きのう午後8時からの開会式を点火式が終わるまでNHKテレビで見た。印象に残るシーンをいくつか。序盤に、入場行進が始まる前のカウンドダウンがあり、最後のゼロはなんと新国立競技場が上空から映し出された。確かに空から見ると「0」に見えるのだ。ある意味でだじゃれなのだが、相当凝ったスケールの大きな演出ではある。

   ミーシャーが「君が代」を歌い終え、各国選手団による入場行進が始まる。旗手を先頭に和やかな表情で小旗を振りながら、もう一つの手にはスマホを携える選手も多くいた。57年前の整然としたイメージの行進ではなく、世紀前という時代の流れを感じさせる。それぞれの国の衣装も面白い。色とデザインの派手さでカメルーンだろうか。そして、意外と工夫を凝らしたのイタリアで、三色の国旗を丸いデザインで表現していた。日本の国旗をイメージしているのだろう。マスクにも工夫のあるものが多かった。

   最終点火者を務めたのはテニスの大坂なおみ選手だった。なんとなく予感はしていた。大坂選手がツイッターで、全仏オープンの記者会見を拒否し、6月2日予定の2回戦を棄権すると明らかにしたことが波紋を広げていた。その後、全英オープンも欠場し、東京オリンピックには出場の意向を示していた(6月18日付・BBCニュースWeb版日本語)。おそらくこのころすでに最終点火者の打診があったのだろう。大坂選手は24日未明のツイッターで「Undoubtedly the greatest athletic achievement and honor I will ever have in my life.」(意訳:間違いなく、今後の人生の中で、アスリートとして最も名誉なこと)と投稿している=写真=。

   そして、日本選手団の旗手を務めたのはバスケットボールだった八村塁選手だった。日本のプロスポーツを代表し、世界で活躍する2人。開会式での2人の姿は、ゆっくりと多様性が増している日本を象徴する「出来事」かもしれない。

⇒24日(土)朝・金沢の天気   はれ

★つまずき迷走する東京オリンピックに七転八起はあるか

★つまずき迷走する東京オリンピックに七転八起はあるか

   このところ、東京オリンピックの開催をめぐる「つまずき」の話題が多い。きのう午後、金沢市にある石川県地場産業振興センターで会議があり、別件で地元テレビ局の関係者と会った。その折、聞いた話。「きょうトヨタがオリンピックのCMを出さないと発表したんです。ギョーカイ(テレビ業界)にはショックが走ってますよ」と。さらに尋ねると、トヨタは東京オリンピックの大口スポンサーでもあるが、新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない中での開催の是非について世論が割れていることから、オリンピック関連のテレビCMを見送ることにしたようだ、と。CMはすでに完成していて、流すだけになっていたが、すべてキャンセルされたという。

   「おそらく他のスポンサーも追随するのでは」と。確かにテレビ業界とすれば、ショックだ。オリンピックのようなビッグイベントはCMの稼ぎ時なのだが、トヨタのキャンセルで、スポンサーの自粛ムードは一気に広がるだろう。「でも、これまでテレビ局側も開催には冷ややかな論調があったよね。返り血を浴びたとうことかな」と返すと、「そう言えるかもしれない」と少々顔をしかめた。それにしても、「ACジャパン」であふれるテレビはいかがなものか。

   東京オリンピックは開会式が4日後に迫っているが、開会式のセレモニー楽曲を担当する作曲家グループの1人が急きょ辞任するというハプニングに見舞われている。大会組織委員会は19日、ミュージシャンの小山田圭吾氏について、過去に雑誌のインタビューで明かした学生時代のいじめの告白をめぐり、本人から辞任の申し出があり受理したと発表した(7月20日付・NHKニュースWeb版)。イギリスのBBCニュースWeb版(7月20日付)も「Composer Keigo Oyamada resigns over bullying at school」の見出しで発信している=写真=。小山田氏は52歳、20数年も前に雑誌で語った「bullying at school」(学校でのいじめ)でなぜ辞任しなければならなかったのか、その背景は何か。

   ネットでさらに調べると、問題の根深さを感じる。問題となったのは、音楽雑誌『ロッキング・オン・ジャパン』(1994年1月号)でのインタビュー。小中学時代の思い出の中で、知的障がい者に対して、「ウンコを喰わしたりさ。ウンコ喰わした上にバックドロップしたりさ」などと笑いながらの語りが綴られている。ほかにも、雑誌『Quick Japan』(1995年8月発行・第3号)の「いじめ紀行」という記事の中や、『月刊カドカワ』(1991年9月号)でも小山田氏は障がい者に対するいじめや罵倒についてインタビューで答えている。

   それにしても、なぜ雑誌の記者は障がい者に対する「いじめ」をテーマにインタビューし掲載したのか。以下憶測だ。おそらく、インタビューした側は、笑いながら語った「いじめ」の話を小山田氏のキャラ(個性)と勘違いしたのだろう。つまり、お笑い芸人の「いじり」程度と捉えた。取材する側にとっては過去のことであり、いじめの現場を見ていたわけではないので、「いじめ」と「いじり」のボーダーラインの見極めがつかなかったのではないか。

   成長過程にあった子どものころの「いじめ」を大人になって自慢気に語る行為はこれまで問題視されてこなかった。しかし、平和の祭典という東京オリンピック・パラリンピックの理念から小山田氏の行動を精査すれば、障がい者への「いじり」や「いじめ」は完全にNGである。ことし3月、オリ・パラの開閉会式の統括責任者を務めるクリエーティブディレクターが、演出チームとのSNS上のやり取りで、出演予定だったタレントの渡辺直美さんの容姿を侮辱するような豚に見立てた、「いじり」の演出案を提案したことが発覚して辞任に追い込まれている。

   そもそも、ことし2月に大会組織委員会の会長だった森元総理が女性蔑視ととれる発言で辞任している。つまずいてばかりの東京オリンピック。果たして七転八起は可能なのか。

⇒20日(火)午後・金沢の天気        はれ時々くもり

☆数字が止まらない 生活の泣き笑い

☆数字が止まらない 生活の泣き笑い

   このところ石川県内もうだる暑さだ。金沢地方気象台のデータによると、きのう18日は県内11の観測地点すべてで最高気温が30度を上回った。能登半島の七尾市では34.9度を記録した。金沢市も32.4度だった。街中を車で走行すると、運転席の外気温は33度を表示していた。気象台はきょうの予想最高気温を金沢で34度としている。そして、「熱中症警戒アラート」を3日連続できょうも発して、注意を呼び掛けている。

   金沢市内で利用しているカソリンスタンドのきょうの価格を見ると、1㍑158円だ=写真=。まもなく160円台になるのか。昨年のいまごろは新型コロナウイルスの感染拡大を警戒して不要不急の外出自粛やリモートワークなど「巣ごもり」の生活スタイルが広がっていた。このため、ガソリン需要が減り、一時120円台だったと記憶している。このところ価格が反転しているが、今後どうなるのか

   NHKニュースWeb版(7月18日付)によると、サウジアラビアが主導するOPEC(石油輸出国機構)と、ロシアなど非加盟の産油国は18日、8月以降の原油の生産量を協議した。新型コロナウイルスの影響で一時、落ち込んだ世界の原油需要は、経済活動の再開やワクチン接種の広がりにともなって増加していて、OPECは、世界の石油の消費量が来年には感染拡大前の水準に回復すると見込んでいる。これを受けて、会合では協力して続けている減産の規模を縮小し、生産量を8月以降毎月、日量40万バレルずつ増やしていくことで合意した。

   景気回復への期待から原油価格は上昇傾向にあるようだが、ガソリン価格などはこれ以値上げしてほしくないというのが庶民の願いだ。

   熱くなる数字もある。アメリカ大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が18日のマリナーズ戦で、シーズン後半戦で初となる34号ホームランを放った。大谷選手のホームランは、オールスターゲームを挟んで5試合ぶりで、この時点で両リーグを通じ2位の選手に3本差をつけてトップを走っている(7月19日付・NHKニュースWeb版)。

   そして寒くなる数字も。週明けの19日の東京株式市場は午前中、日経平均で一時、500円以上値下げた。変異ウイルス「デルタ株」の感染が急速に拡大する国が相次いでいることから、世界経済が減速することへの懸念が強まっている。ワクチン接種率が53%のイギリスでも18日は1日の感染者が4万8161人になった。16日と17日には1月半ば以降で初めて感染者がそれぞれ5万人を超えている(7月19日付・BBCニュースWeb版)。パンデミックが治まらない。

⇒19日(月)午前・金沢の天気      はれ

☆「あたりめ」がほろ苦く感じるとき

☆「あたりめ」がほろ苦く感じるとき

   先日金沢市内のス-パーで酒のつまみにと思い、「あたりめ」を買った。パッケージには「この商品はするめいかを原料にしています」と書かれてあり、丁寧な商品づくりをしているとの印象だった。ところが、裏面を見ると、「原産国名」が「中国」とある=写真・上=。複雑な思いを抱きながら、あたりめを噛みしめた。

   日本海のスルメイカの漁場は大和堆だ。日本のEEZ(排他的経済水域)なのだが、中国漁船が大挙押しかけ、能登半島などから出漁する日本漁船に打撃を与えている。日本側はスルメイカのイカ釣り漁の漁期を6月から12月と定めているが、日本の漁船に先回りして、中国漁船は4月から大和堆などに入り込んで漁場を荒らしているのだ。

   この中国漁船による違法操業での漁獲は15万㌧(2020年)と国立研究開発法人水産研究・教育機構は推測している。これは、日本漁船による2019年の漁獲量の10倍以上に当たる(2020年10月15日付・日刊水産経済新聞Web版)。日本のイカ釣り漁とは違って、中国漁船は大きな網を2隻の船が対になって引っ張る「二艘曳き」と一網打尽の漁法だ。

   では、どのくらいの数の中国漁船が日本海に入ってきているのか。衛星データで漁船の動きを調査するグローバル海洋保護非営利団体「Global Fishing Watch」(GFW、ワシントン)は、2019年で800隻が北朝鮮海域に入っていると分析している。中国の漁船は集魚灯を使うので、中国からの海洋での照明の動きを追うと、次第に北朝鮮の漁業海域に集まって来る様子が画像で分かる。

   北朝鮮海域に中国漁船が集まるのは、中国の漁業者が北朝鮮から漁業許可証を購入しているからだと言われる。これまで北朝鮮は国連海洋法条約の締約国ではないことをタテにEEZ内で違法操業を繰り返してきた。中国漁船はその「権利」も購入したとの勝手解釈なのだろう、北に取って代わってEEZでの違法操業を行っている。そもそも、北の核実験に対応した2017年の国連制裁決議には漁業権の取引も含まれ、買い取りそものが違反なのだが。

   水産庁の漁業取締船と海上保安庁の巡視船が大和堆を中心に見回りを行っているが、水産庁が中国漁船に対して行った2020年の退去警告数は延べ4393隻と発表している。仮に中国漁船を800隻とカウントすれば、1隻当たり5回以上も警告を発していることになる。中国漁船がこれ以上増えれば、水産庁と海上保安庁の対応能力が追い付かなくなるのではないだろうか。(※写真・下はEEZ内の違法操業船に放水措置を行う水産庁漁業取締船=水産庁公式ホームページより)

   スルメイカを中国から輸入して製造した「あたりめ」だ。そう考えながら噛みしめるとほろ苦さを感じる。中国産のスルメイカがすべて違法と言っているわけではない。

 
⇒17日(土)夜・金沢の天気      はれ

★「蓮は泥より出でて泥に染まらず」

★「蓮は泥より出でて泥に染まらず」

   JR金沢駅の西口広場に「蓮池」があり、いまが見頃と知人から聞いて、きょう午前中、さっそくカメラを携え訪れた。水面に葉を浮かべ、水底から茎を伸ばして白とピンクのツートンカラーの花びらが輝きを放っている=写真・上=。「蓮(はす)は泥より出でて泥に染まらず」という教訓めいた言葉がある。水面下はドロ沼ではあるが、清らかで美しく咲く姿に、いにしえより人々は自らの人生を想いながら「蓮の如く人生の花を咲かせたい」と願ってきたのだろう。金沢駅前のビルに囲まれた「蓮池」でも、山のふもとの寺院の池であっても、ハスの存在感には変わりなく、時空を超えた趣があった。

   自宅に戻ると、テレビの新型コロナウイルス関連のニュースが耳目を引いた。WHOのテドロス事務局は会見で、感染拡大初期のデータが中国から得られず、ウイルスの起源の調査に支障が出ていると指摘し、中国に対して透明性を高め、オープンかつ協力的になるよう求めると発言した(7月16日付・テレビ朝日ニュース)。さらにネットで調べると、イギリスのBBC(同日付)は、テドロス氏は「医療専門家として、武漢の研究所からウイルスが漏れる事故は起こり得ると考えている」と述べたと記事にしている。

   「中国寄り」とされるテドロス氏にしては随分と中国を刺激する発言だ。そもそも、露骨な中国寄りをが問題になったのは、2020年1月のこと。中国の春節の大移動で日本を含めフランスやオーストラリアなど各国でコロナ感染者が拡大していたにもかかわらず、1月23日のWHO会合で「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」宣言を時期尚早と見送ったことがきっかけだった。

   テドロス氏の心境の変化を知りたくなり、WHO公式ホームページで会見内容をチェックする。このような一文だった。「 I agree that finding the origins of this virus is a scientific exercise that must be kept free from politics.For that to happen, we expect China to support this next phase of the scientific process by sharing all relevant data in a spirit of transparency. 」。以下意訳。このウイルスの起源を発見することが政治と切り離して行う、科学的な実証作業であることは言うまでもない。そのためには、中国が透明性の精神をもってすべての関連データを共有し、科学プロセスの次の段階を支援してくれることを期待する。

   テドロス氏はさらに。「it’s also important as an obligation to the families of the 4 million people who have lost someone they love, and the millions who have suffered.」。(ウイルスについて究明することは) 愛する人を失った400万人の家族や、苦しんでいる数百万人の人々への義務としても重要だ。

   上記の言葉からは慈愛を込めた研究者の精神がうかがえる。もともとテドロス氏はロンドン大学で感染症の免疫学の修士、ノッティンガム大学で保健学の博士号を取得した医学の研究者で、専門はマラリアだ(Wikipedia「テドロス・アダノム」)。BBC記事にあるように、ここにきて「medical professional」 としての自意識が頭をもたげてきたのではないだろうか。

   これまでの中国との癒着のドロ沼から踏み出て、新型コロナウイルスの感染阻止にまい進する研究者の姿勢を貫くならば評価したい。まさに「蓮は泥より出でて泥に染まらず」だ。 (※写真・下は、WHO公式ホームページ7月15日付「プレス・カンファランス」の動画より)

⇒16日(金)夜・金沢の天気   はれ

★著作権・商標問題 フランスの苛立ち

★著作権・商標問題 フランスの苛立ち

   紙面やネットでニュースをチェックしていて、おそらくフランス政府は相当に苛立っているのだろうと察した記事を2つ。「シャンパン」と言えば、フランスのシャンパーニュー地方で製造されたスパークリングワインを指すが、日本国内では発泡性ワインそのものを「シャンパン」と言ったりする。フランスではワインの法律(原産地呼称管理法)に規定された条件(生産地、ブドウ品種と栽培方法、伝統的な製造方法、アルコール度数など)、いわゆる「シャンパン製法」を満たして初めて「シャンパン」の商標が与えられる。

   ところが、ロシアではロシア産のスパークリングワインだけに「シャンパン」を名乗ること認める法律が発効し、騒動となっている。フランスのAFP通信(7月6日付・日本語版)によると、この新法は今月2日、プーチン大統領の署名で成立した。フランス産のボトルにフランス語で「シャンパン」と表記することは引き続き可能だが、ボトルの後ろにキリル文字(ロシア語文字)で「スパークリングワイン」と明記することが義務付けられた。

   新法により、フランスの高級ワイン大手「モエ・ヘネシー」はロシア市場への出荷を一時停止しているが、ドンペリニヨンなどの輸出を新法に従って再開すると発表している。また、シャンパン生産者らはロシアの法律の変更を求める外交的な働きかけをするよう嘆願書を政府に提出した。フランスは原産地名称の保護に関するリスボン協定に加盟しているが、ロシアは加盟していない(同)。

   フランスが苛立っているニュースをもう一つ。報道機関がコストをかけてニュースや情報を発掘する。ところが、「プラットフォーマー」であるIT大手はメディアのニュースを「ただ見せ」して広告ビジネスで稼いでいる。AFP通信(7月14日付・日本語)によると、フランスの競争評議会(公正取引委員会)は今月13日、EUの著作権規則に基づいたニュースコンテンツ使用料をめぐり、メディア企業との「誠実な交渉」を怠ったとして、アメリカのIT大手「グーグル」に5億ユーロ(650億円)の制裁金を科すと発表した。(※写真はフランス競争評議会の公式ホームページより)

   EUはデジタル化時代に対応するため、2019年4月に旧来の著作権ルールを見直し、著作権市場がより機能する公平なルールを整備する「著作権指令」を発効した。在日欧州連合代表部の公式ウエッブマガジンの解説によると、「Google、Yahoo!、AOLなどのオンラインサービスプロバイダーが新聞や雑誌の記事を使用する際、記事の発行元が報酬を受けられる新しい権利。例えば、『Googleニュース』で記事が使われた場合、発行元はその記事使用料を要求できる」としている。

   著作権指令に基づき、フランスの競争評議会は昨年4月、メディア各社がグーグルは十分な対価を支払わずに検索結果に記事や動画を表示していると批判したことを受け、グーグルに対しメディア側との「誠実な交渉」を命じた。しかし、同9月、AFP通信などメディア側が使用料支払いに向けた交渉の進展をグーグルが阻んでいるとして、競争評議会に苦情を申し立てていた。

   メディア側との「誠実な交渉」をなぜグーグルが阻んでいるのか。以下憶測だ。世界の検索の9割をグーグルが占め、膨大な検索データを広告ビジネスに活用している。問題となっているのは、検索で表示される記事の使用料についてだ。ニュースを検索すると、記事の断片が出てくる。グーグルはこの断片を「スニペット(snippet)」と称している。報道機関側はこのスニペットの段階ですでに著作使用料が発生しているとしている。

   これに対して、グーグルは「ニュース・ショーケース」のサービスをイギリスやフランスなどで始め、通常のグーグルニュースやネット検索とは別に、契約した報道メディアが提供する記事の見出しや概要を掲載している。グーグルの狙いは、このニュース・ショーケースでの契約料をもってすべての記事の著作使用権とみなしたいのだろう。なので、著作権指令に従う立場より、むしろ個別にメディア各社と契約を結びたいのではないだろうか。指令に従わないグーグルに対して、フランスの競争評議会は苛立ちを深めている。

⇒14日(水)夜・金沢の天気     はれ

☆土砂降りの「内閣支持率」

☆土砂降りの「内閣支持率」

   この梅雨の時季、「線状降水帯」の言葉をテレビでいやほど聞いた。強烈な大雨は鹿児島や島根、鳥取の両県を襲い、熱海市では土砂崩れを誘発した。痛ましいばかりの光景だった。そして、土砂降りと言えば思い出すのが、北陸新幹線だ。忘れもしない2019年10月13日、台風10号の猛烈な雨の影響で、長野県の千曲川が氾濫し、長野市の新幹線車両センターで10編成の北陸新幹線車両が水につかった。雪に強い北陸新幹線は案外にも雨にはもろかった。その想いが残った。

   話は変わるが、土砂降りと言えば、菅内閣の内閣支持率にも豪雨が襲っている。NHKの最新の世論調査(7月9-11日)によると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、先回より4ポイント下がって33%と、昨年9月の内閣発足以降で最も低くなった。一方、「支持しない」と答えた人は、1ポイント上がって46%で内閣発足以降で最も高くなった(7月12日付・NHKニュースWeb版)。

   読売新聞の世論調査(7月9-11日)も、菅内閣の支持率は37%となり、昨年9月の内閣発足以降で最低だった前回の37%から横ばいだった。不支持率は53%(前回50%)に上がり、内閣発足後で最高となった。不支持率が支持率を上回るのは今年5月から3回連続。支持率低迷の背景には、政府の新型コロナウイルス対策や五輪対応への不満があるとみられる(7月12日付・読売新聞Web版)。

   このままだと、政局は一気に揺らぐ可能性がある。メディア業界でよくささやかれるのは、内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」と。第一次安倍改造内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売新聞の内閣支持率は29%(2007年9月調査)だった。その後の福田内閣は28%(2008年9月退陣)、麻生内閣は18%(2009年9月退陣)と、自民党内閣は支持率が20%台以下に落ち込んだときが身の引きどきだった。民主党政権が安倍内閣にバトンタッチした2012年12月の野田内閣の支持率は19%だった(数字はいずれも読売新聞の世論調査)。

   菅内閣が「危険水域」に入るのは、あと8ポイント、さらに「デッドゾーン」へは、あと18ポイント下げたときだ。

(※写真は、今月12日、土砂災害に見舞われた熱海市の現場を視察する菅総理=総理官邸公式ホームページより)

⇒13日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆緊急宣言再び 不可解な「都の選良」を追う

☆緊急宣言再び 不可解な「都の選良」を追う

   選挙で選ばれた公人として記者会見を開き、説明責任を果たすことが最優先ではないのか。東京都議会選に当選した都民ファーストの会の女性都議が選挙期間中に無免許運転で人身事故を起こし、党から除名処分(5日)を受け、その後雲隠れしている問題は今月6日付のブログでも取り上げた。メディア各社が、その都議が新会派「SDGs東京」を立ち上げたと報じている。(※写真・上は選挙応援に駆け付けた小池都知事とツーショット、本人のツイッターより)

   さっそく、都議会議会局広報課の公式サイトをチェックする。「各会派等の構成(7月6日現在)」の欄には、確かに「無所属(SDGs 東京)」と記載されている。1人会派だ。しかし、「各会派等の連絡先」は11会派のうち、SDGs 東京だけが空欄となっている。何かやましさでもあるのかと勘繰ってしまう。後ろめたさがないのであれば堂々と連絡先を表記すればよいのではいか。

   除名処分を受けた日には、記者からの取材に対し「仕事をしていくことで期待に応えたい」と述べて、議員辞職の考えはないことを示した(7月5日付・産経新聞Web版)。その後、新たな疑惑(無免許運転の常習性)の証言が出る中で、翌6日には新会派を立ち上げたのだから、本人はヤル気を示したのだろう。

   ただ、「SDGs東京」のネーミングについては解せない。国連が採択したSDGs(目標持続可能な開発目標)をベースに都政の課題とどう向き合うのか、本人が政策を具体的に示さないと、環境や社会、経済に問題意識を持ちながらSDGsに取り組んでいる人たちはこのネーミングに納得しないだろう。その説明がなければ、「SDGs」を借用しただけの会派ということになる。もっと厳しく言えば、SDGsを愚弄する行為ではないだろうか。

   都議は板橋区役所で6日開かれた当選証書付与式を欠席した。選挙後初めての公の場となる付与式だったが、代理人も来なかった(7月6日付・NNNニュースWeb版)。冒頭で述べた「説明責任」を果たすタイムリミットはもう迫っている。報道によると、政府は新型コロナウイルスの感染の再拡大が続く東京都に対し、今月12日から来月22日まで緊急事態宣言を出す方針を専門家でつくる分科会に諮った。了承を得て、夕方の対策本部で決定する(7月8日付・NHKニュースWeb版)。今月23日に開会式を迎える東京オリンピックは緊急事態宣言の下で行われることになる=写真・下=。

   東京の緊急事態下、都の選良である政治家が果たすべき役割が多々あるはずだ。都議は一体いつ会見を開いて、自らの行動について釈明する説明責任を果たすのか。なぜ雲隠れを続けるのか。あくまでも、メディアを通した1人の政治家の観察記録である。人物との関わりは一切ない。

⇒8日(木)午前・金沢の天気      あめ時々くもり

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

★日本海の現実、空からミサイル、海では漁場荒らし

   また、日本海で難題だ。きのう6日午前、岸防衛大臣は記者会見で、ロシア海軍が日本海のEEZ内にある大和堆=写真・上=の周辺でミサイル発射訓練を行うことに関して述べた。以下は、防衛省公式ホームページに掲載されている会見内容。

「大和堆の事ですけれども、7日から9日にかけて、ロシア海軍が日本海海域でミサイル発射訓練を実施予定であることを受けて、3日に海上保安庁から日本海海域に航行警報を発出しております。また、これに先立ち、2日、ロシア海軍によるミサイル発射訓練の実施海域の一部にわが国のEEZが含まれていることを踏まえ、外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行うとともに、わが国周辺におけるロシア軍の活動を関心を持って注視していることを伝達をいたしました。わが国周辺において、演習や訓練を含めたロシア軍の活動が活発化する傾向にあります」

   日本のEEZにある大和堆はスルメイカの好漁場で、先月6日に能登半島の能登町小木漁港からイカ釣り船団8隻が出航し操業を行っている。このブログを書いているときにも、ミサイル発射訓練が行われるかもしれない。それにしても、日本の漁船が危険にさらされようとしているのに、はっきり発言するタイプの岸大臣にしては、「外交ルートを通じて、沿岸国であるわが国の権利および義務に妥当な考慮を払うようにロシア側に申し入れを行う」とは、言いようがどこか生ぬるい。じつは、国際法では他国の排他的経済水域で軍事演習を行うことは明確に禁じられていない。「抗議をする」などとは言えないのだ。

   ミサイルを発射するのはロシアだけではない。北朝鮮は3月25日、弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射した(日本政府が同日発表)。北朝鮮東部の宣徳付近から発射し、いずれも約450㌔飛行。日本の領海域には到達せず、EEZの外に落下した。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以来だった。事前通告なしに発射が繰り返されている。

   さらに、日本のイカ釣り漁船団が大和堆で警戒するのは中国漁船の違法操業だ。その無法ぶりは深刻だ。日本側のスルメイカのイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、4月から多数の中国漁船が大和堆などに入り込んでいて、水産庁は320隻に退去警告を発し、うち91隻に放水措置を行っている(5月27日現在)=写真・下、水産庁公式ホームページより=。つまり、日本の漁船に先回りして、イカ漁場を荒らしているのだ。空からミサイル、海では違法操業。日本の排他的経済水域であるものの、日本の漁船は安心安全な漁ができないでいる。これが日本海の現実だ。

⇒7日(水)午後・金沢の天気       くもり

☆「自分ファースト」な議員 「議員ファースト」なメディア

☆「自分ファースト」な議員 「議員ファースト」なメディア

   誰がどう見てもこれは「自分ファースト」ではないだろうか。報道によると、今月4日投開票の東京都議選で板橋区選挙区で当選した都民ファーストの会の木下富美子氏が、選挙期間中だった2日に車で人身事故を起こしていた。木下氏は免許停止期間中で、警視庁が自動車運転処罰法違反(過失傷害)や道交法違反(無免許運転)の疑いで捜査している(7月5日付・朝日新聞Web版)。

   都民ファーストの会は5日夜、木下氏を除名処分にしたと発表した。「無免許運転は明確な法律違反であり、公人としてあるまじき行為だ」と指摘したうえで「このような重大な事故について、事故発生から数日経って初めて党に報告されたことは、党として看過できない」としている(同)。

   問題は根深い。木下氏は取材に「2日が免停期間の最終日で(免停期間が終わっていると思い)運転しても大丈夫だと思っていた。申し訳ない」と話した(7月5日付・産経新聞Web版)。ところが、都議選で木下氏と同じ板橋区で東京維新の会から出馬し落選した候補者がツイッター(7月5日付)でこう記している。「大事な点なので記載しておく。告示日直前の6月21日に志村坂上でご自身が街宣車を運転しているのを、私はハッキリと見た。私は自分の街宣車のマイクでご挨拶をしたが無視されたので、良く記憶している」

   つまり、無免許運転は2日だけではなく、その他の日(6月21日)でも目撃されている。それを木下氏は「免停中の期間を間違えた」と言い張っている。さらに、都民ファーストの会から除名処分を受けたものの、取材に対し「仕事をしていくことで期待に応えたい」と述べて、議員辞職の考えはないことを示した(7月5日付・産経新聞Web版)。

   政治家の矜持が感じられない。議員報酬にしがみつく様子が見え見えで、「自分ファースト」なスタンスだ。まず、都議会の記者クラブで会見を開くべきだろう。それにしても奇異に感じるのは、各メディアはなぜ2日の人身事故の時点で報道しなかったのだろうか。警察の担当記者は把握していたはずだ。2日の時点で「無免許で人身事故」と報じていれば、選挙情勢は変わっていたに違いない。選挙期間中ということで忖度したのだろうか。とすれば、まるで、「議員ファースト」なメディアだ。

(※写真は、当選を報告する木下富美子氏のツイッター=7月5日付)

⇒6日(火)夜・金沢の天気      あめ