⇒ニュース走査

☆白神山地に横たわる「森の巨人」から学ぶこと

☆白神山地に横たわる「森の巨人」から学ぶこと

    白神山地のブナの老木にひこばえ(萌芽更新)ができるかどうかは分からないが、樹木の天命を終えて大地に横たわった姿をぜひ拝んでみたいと願う。そして、自然を生き抜く樹木を子どもたちへの環境教育の場として生かしてはどうだろうか。そのような話を冒頭のNPOの知人と交わしてみたいと思っている。

⇒28日(月)午後・金沢の天気    はれ

★吹き荒れる春の嵐と「モンスター・ミサイル」

★吹き荒れる春の嵐と「モンスター・ミサイル」

   きょう午後から強風が吹き荒れている。しかも、25度超える温かい風。時折、突風となって樹木を大きく揺らしている。気象台によると、最大瞬間風速は加賀地方、能登地方ともに陸上で30㍍の予想され、きょう夕方までに暴風警報を発表する可能性もあると伝えている(金沢地方気象台公式ホームページ)。北陸新幹線は強風の影響で、午後から長野駅と富山駅の間の上下線で運転を見合わせている。また、北陸本線は強風で小松駅から粟津間の架線に障害物が引っかり、特急「サンダーバード」や「しらさぎ」の上下14本が運休と午後のニュース番組で報じていた。まさに春の嵐だ。

   北朝鮮が24日に発射した新型ICBMは、日本にとって、そしてアメリカにとっても春の嵐だった。岸防衛大臣はきのう25日の閣議の記者会見で、「弾道の重さにもよるが、1万5000㌔を超える射程となりうる。アメリカの東海岸を含む全土が射程内ではないか」「我が国、そして国際社会の平和と安全に対する深刻な脅威だ」と語った。

   BBCニュースWeb版(25日付)は「N Korea claims successful launch of ‘monster missile’ Hwasong-17」=写真=の見出しで、大型化し全長23㍍と推測されるこの大陸間弾道ミサイルを「モンスター・ミサイル」と表現し、各国の反応を伝えている。ホワイトハウスの報道官は国連決議に反する「brazen violation」(恥知らずな違反)と述べ、国連のグテーレス事務総長も「地域における緊張の著しいエスカレーション」と述べたと伝えている。

   その国連では、25日に北朝鮮のICBM発射について安保理の緊急会合が開催された。アメリカ、イギリス、フランス、アルバニア、アイルランド、ノルウェーなど欧米の加盟国は安保理の決議違反として非難。アメリカは制裁を強化する決議を提案する方針を打ち出した。しかし、常任理事国の中国とロシアは追加制裁に反対し、中国は「むしろアメリカと北朝鮮は直接対話をすべきだ」と述べた。追加制裁の実現は難しい(26日付・テレビ朝日ニュースWeb版)。

   ICBMに不可欠なのは核弾頭だ。今後、核実験もICBMの発射実験と並行して繰り返していくだろう。さらに、これまでの日本海への着弾だけではなく、日本列島を飛び越えて太平洋への撃ち込みも狙っているのではないか。どんどんエスカレートしそうな気配が漂う。前述のグテーレス氏が危惧している「エスカレーション」はこの意味ではないかと解釈している。

⇒26日(土)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

☆隣国の理不尽さ 北のICBM、露のウクライナ侵攻

☆隣国の理不尽さ 北のICBM、露のウクライナ侵攻

   これまでの北朝鮮の弾道ミサイルは日本海側に住む日本人の脅威だったが、今回のICBM発射実験は世界を巻き込んで脅威が共有されたのではないか。けさの北朝鮮の労働新聞Web版(25日付)をチェックすると、「주체조선의 절대적힘, 군사적강세 힘있게 과시 신형대륙간탄도미싸일시험발사 단행 경애하는 김정은동지께서 대륙간탄도미싸일 《화성포-17》형시험발사를 지도하시였다 」(意訳:金正恩総書記の立ち会いのもと、新しい大陸間弾道ミサイル「火星17型」の発射実験は成功した)の見出しで報じている。

   それによると、発射は首都平壌の郊外の国際空港で行われた。最高高度は6248.5㌔に達し、1090㌔の距離を67分32秒飛行、「朝鮮東海公海の予定海域に正確に着弾した」と伝えている。そして、金氏は「もし誰かがわが国家の安全を侵害しようとするなら、彼らはその代償を払うこと、そして我々の国防能力はアメリカ帝国主義との長期的対決に徹底的に備える強力な軍事技術を持っていることを明確にしなければならない」(意訳)と述べたと伝えている。写真では、オレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していくICBMの様子を掲載している=写真・上=。

   防衛省公式ホームページ(24日付)によると、北朝鮮は24日14時33分ごろ、朝鮮半島西岸付近から1発の弾道ミサイルを東方向に発射した。約71分飛翔し、15時44分ごろ、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下したものと推定。飛翔距離は約1100㌔、最高高度は6000㌔を超えると推定される。また、今回の弾道ミサイルが2017年11月のICBM級弾道ミサイル「火星15型」の発射時を大きく超える約6000㌔以上の高度で飛翔しており、今回発射のものは新型のICBM級弾道ミサイルであると考えられる。

   では、新型ICBMはどのくらいの射程距離があるのか。防衛省の「北朝鮮による核・弾道ミサイル開発について」(2022年1月)によると、上記の火星15型ではアメリカのロサンゼルスやサンフランシスコが射程に入っている=写真・下=。今回のものはさらに射程距離が長いので、ニューヨークやワシントンDCも入るだろう。

   さらに、日本のEEZ内に落としたにもかかわらず、「朝鮮東海公海の予定海域に正確に着弾した」と表現している。領海の基線から200㌋(370㌔)までのEEZでは、水産資源は沿岸国に管理権があると国連海洋法条約で定められている。ところが、北朝鮮は条約に加盟していないし、日本と漁業協定も結んでいないことを盾に、自国の領海であると以前から主張している。

   ふと不安がよぎる。北朝鮮のこの「論法」で言えば、EEZ内で6月から始まる日本漁船のイカ釣り漁も無視されるのではないか。日本漁船の拿捕だ。1984年7月、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、能登半島の小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が北朝鮮の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕された。1ヵ月後に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。これを「非友好国」日本を相手に北朝鮮とロシアがタッグを組んでやるのではないか。想像するだけで身の毛がよだつ。

   ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮のICBMなど空、海、領土などさまざまなところで理不尽な動きがまかり通る。

⇒25日(金)午後・金沢の天気   はれ

★ゼレンスキー流「外交の舞台・日本公演」のメッセージ

★ゼレンスキー流「外交の舞台・日本公演」のメッセージ

   前回ブログの続き。昨夜はテレビ各局が夜のニュース番組で、けさは新聞各紙が一面でウクライナのゼレンスキー大統領のオンラインによる国会演説を大きく取り上げている=写真=。それにしてもゼレンスキー氏の演説はデジタル時代を感じさせる。これまでは、各国元首による国会でのスピーチは国賓として招かれた際の歓迎行事というイメージだった。それが、「飛行機で15時間」のウクライナから、しかもオンラインによる生中継で。でも、よく考えてみれば、新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークやオンライン会議は当たり前になっている。国会でリモート演説があっても当然だろう。

   もちろん、ゼレンスキー氏は国賓ではなかったが、緊急を要する国際情勢の中で日本はG7の一員としてウクライナを支援している。その当事国の大統領から感謝の意を表したいとオファーがあれば、断る理由はないだろう。外交上の決まりで元首のスピーチの通訳はそれぞれの国の通訳者が行っている。今回も在日ウクライナ大使館の職員がゼレンスキー氏の演説を同時通訳した(24日付・朝日新聞)。

   前回のブログでも述べたが、ずいぶんと手慣れたシナリオライターが周囲にいると直感した。ゼレンスキー氏はこれまでアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアなどの議会でもオンライン演説をしているが、それぞれの国の歴史や文化、出来事を心をつかむフレーズを演説に織り込んでいる。

   今回自身の心に刺さったフレーズは、「ウクライナに対する侵略の津波を止めるためにロシアとの貿易禁止を導入し、各企業が撤退しなければならない」(※同時通訳を文章化)と述べたことだった。「ツナミ」、これは東日本大震災における津波被害を念頭に置いた言葉だったのではないだろうか。時期としても3月11日の発生日を意識したものだろう。「津波」は日本人にとってインパクトがある言葉だ。

   「2019年私が大統領になって間もなく、私の妻が目がよく見えない子どもたちのためにオーディオブックのプロジェクトに参加した。日本の昔話をウクライナ語でオーディオブックにしたのです」「日本の文化は本当にウクライナ人にとって非常に意味深い。距離があっても、価値観がとても共通している。心が同じように温かい」(同)。

   大統領の演説となれば、世界観や歴史観、国際戦略が散らばめられ、遠い政治の世界をイメージする。が、ゼレンスキー氏の演説には庶民目線を含めて実に多様な視点が盛り込まれている。それはなぜか。ゼレンスキー氏の経歴とつながっているのかもしれない。前職はコメディアンや役者などタレントだった。その中で自ら大統領を演じたテレビ番組を制作し、その脚本も書いていた(Wikipedia「ウォロディミル・ゼレンスキー」)。

   視聴者や観客に「受ける」、「気を引く」、「次も見てもらう」といった感性が才能として備わっているのだろう。ゼレンスキー氏にとっては今回のオンライン演説は外交という舞台であり、日本公演という感覚だったかもしれない。そう考えると、演説はシナリオライターが書いたものではなく、自作で練ったものなのだろうか。それしても、連日のように世界に発信するメッセージパワーには脱帽する。

⇒24日(木)午前・金沢の天気     くもり時々はれ

☆時の人ゼレンスキー大統領の名スピーチ

☆時の人ゼレンスキー大統領の名スピーチ

   さきほどウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン演説をNHKの中継で視聴した。ずいぶんと手慣れたシナリオライターが周囲にいると直感した。ゼレンスキー氏はこれまでアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアなどの議会でもオンライン演説をしているが、それぞれの国の歴史や文化に応じて、その国の国民や議員の心をつかむフレーズを演説に織り込んでいる。

   アメリカ連邦議会(今月16日)でのオンランスピーチでは、1941年のパールハーバー(真珠湾攻撃)や2001年の同時テロを思い出せと言い、公民権運動のキング牧師の言葉で知られる「I have a dream」を想起させるかのように、「I have a need」と述べて、ロシアへの制裁強化を強く訴えた。厳しいことも言っている。ドイツ連邦議会のビデオ演説(同17日)では、支援に感謝を示しながらも「ウクライナのNATO加盟の要望をはぐらかし、ウクライナとEUの間に『新たな壁』をつくることに加担してきた」と苦言を呈した(17日付・時事通信Web版)。

   午後6時からのスピーチに耳を傾ける。12分間ほどの演説だった。印象に残ったフレーズをいくつか。「ウクライナと日本は飛行機で15時間かかるが、お互いの自由を感じる気持ちに差はない。生きる意欲に差はない。日本がすぐに援助の手を差し伸べてくれたことに感謝している」「日本はアジアで初めてロシアに圧力をかけた」とロシアに対する制裁の継続を求めた。

   そして惨状を訴えた。「ウクライナではすでに数千人が犠牲になり、そのうち121人は子どもだ」「殺された人をきちんと葬ることさえできない。家の庭や道路、可能なところで埋葬している」と現地の状況を語った。

   さらに、ロシアがウクライナのチェルノブイリなどの原発を攻撃したことに触れ=写真=、「ロシアは核物質の処理場を戦場に変えた。戦争のあとにこの処理にどれほどの時間がかかるか想像してみてほしい」と訴えた。このとき、ひょっとして世界で唯一の被爆国である日本の「ヒロシマ」「ナガサキ」のことに触れるのかと脳裏をよぎったが、アメリカへの配慮もあったのだろう、話はそこには行かなかった。「ロシアがサリンなどの化学兵器を使った攻撃を準備している報告を受けている。さらに核兵器が使われた場合に世界はどうなるのか」とロシアの大量破壊兵器に危機感を示した。

   共感したのは国連の改革についてだった。「国際機関が機能しなかった。国連安全保障理事会も機能しなかった」と指摘した。そして、「日本のリーダーシップが大きな役割を果たせると思う」と期待感をにじませた。最後は、「ウクライナに栄光あれ、日本に栄光あれ」と締めくくった。名演説だった。ロシアは日本の隣国であり、北方領土という問題を抱える。スピーチを聞いていて他人事ではないと実感した。

⇒23日(水)夜・金沢の天気   あめ

☆「森のたまご」が投げかけるアニマルウェルフェア問題

☆「森のたまご」が投げかけるアニマルウェルフェア問題

   ゴッホら著名な画家は自然の花を描いたが、アメリカのポップアートの旗手といわれたアンディ・ウォーホル(1928-87年)はメディアの世界に咲く花を描くのが得意だった。マリリン・モンローやエルヴィス・プレスリー、ジョン・F・ケネディー…。しかし、彼のシルクスクリーンで描かれたのは華やかな花だけではなく、メディアで騒がれた事故や暴動、事件など徒(あだ)花も多かった。そして、ウォーホルは有名な言葉を残した。「In the future everyone will be world-famous for 15 minutes.(将来、人は誰でも生涯の中で15分間は有名になれる時代がくる)」

   そのウォーホルの作品が競売にかけられると地元紙の北國新聞(17日付)が報じている。記事を読んでさっそくオークションを開催する会社の公式ホームページをチェックした。会社は「シンワ・ワイズ・ホールディングス」。競売は今月30日午後2時からと午後6時からの2回、羽田空港第1ターミナル内6Fギャラクシーホールで開催される。ウォーホルの作品は後半の部でオークションにかけられる。

   出品紹介のページには、ハリウッド女優のエリザベス・テイラーのポートレイト「Silver Liz」(1963年制作)が掲載されていた。その想定落札価格はなんと23億円から34億5千万円と記載されている=写真・上=。作品を所有しているのは、このブログ(3月12日付)で取り上げたイセ食品の前会長、伊勢彦信氏92歳だ。世界の「エッグ・キング」と称される実業家で、世界的な名画や彫刻、陶磁器の収集家としても世界的に知られる。オークション会社の会長でもある。

   そのイセ食品とグループ会社は今月11日、債権者から東京地裁へ会社更生法を申し立てられ、同地裁から保全管理命令を受けた。「帝国データバンク」Web版(11日付)によると、M&Aなどで業務内容を拡大するなか金融機関からの借り入れが増加。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて卵価が下落、資金繰りが悪化していた。負債はイセ食品とグループ会社の2社の合計で453億円(うち金融債務は260億円)とみられる。

   伊勢氏は去年6月までイセ食品の会長に就いていたので、債務の連帯保証をしていたであろうことは想像がつく。そうであればコレクションを売却処分して返済に当てるだろう。今月30日に東京でウォーホル作品の落札価格が決まれば、ニュースは世界を駆け巡るに違いない。各国のテレビニュースは「15分間」、伊勢氏の話題を特集にするかもしれない。

   以下憶測だが、15分間のうち落札関連は5分間ほど、残り10分間は養鶏・鶏卵の飼育環境とビジネスについてではないだろうか。生物多様性や動物愛護の観点から家畜にストレスをかけない「アニマルウェルフェア(Animal Welfare、動物福祉)」が世界的な動きになりつつある。問題視されるのは、狭いケージにニワトリを閉じ込めて生産性を上げる養鶏・鶏卵のシステムだ。このビジネスで成功し、世界の美術品を収集する原資を創ってきたとなれば、今後、ウォーホル作品の落札価格と相まって国際世論はどのように展開していくだろうか。一連のイセ食品をめぐる騒動は世界に問題提起をもたらすのではないか、と読んでいる。

⇒18日(金)午後・金沢の天気   あめ

★東北の震度6強、そして能登半島の揺れ

★東北の震度6強、そして能登半島の揺れ

   けさ届いた東京の知人からのメール。「昨夜11時半ごろの震度6強。宮城と福島を襲った地震ですが、皆さん無事ですか。少し揺れてるな・・・ちょっと変な揺れ方があって終わりかな、と思っていたら強い揺れ(都内は震度3)が長いなと感じる地震がありました。ケータイの緊急地震速報は、揺れが終わったころに『叫んで』くれました。皆さん、どうされましたか」

   先日のブログ(3月8日付)でも取り上げたが、3月の地震は恐怖だ。気象庁によると、16日午後11時36分ごろ、福島県沖で発生した地震で、宮城北部と南部、福島中通り、福島浜通りで最大震度6強の揺れを観測した。震源は北緯 37.7度、東経 141.6度でマグニチュード7.4、震源の深さは60㌔だった。

   揺れは石川県でもあり、震度3が珠洲市、震度2が七尾市、輪島市、羽咋市、中能登町、能登町、震度1が金沢市、輪島市の舳倉島、かほく市、津幡町、志賀町、穴水町だった。震度3の珠洲市の危機管理室や県危機対策課には被害の情報は入っていない。

   震度6強を観測した福島県沖の地震は去年2月13日にも発生している。発生時間は午後11時8分。このときも能登半島の尖端、珠洲市では震度3だった。その時の福島県沖の震源地は北緯 37.7度 東経 141.7度でM7.3、震源の深さは60㌔と今回とほぼ同じだ。

   今月8日午前1時58分、珠洲市を震源とする震度4の揺れがあり、マグニチュード4.8、震源の深さは10㌔だった。この地震で震度3が新潟県の長岡市と糸魚川市、上越市、震度2や震度1の揺れは東北や関東など広い範囲に及んだ。能登半島では2007年3月25日に輪島市沖でM6.9、震度6強の地震があり、同じ年の7月16日、同じ日本海側で新潟県中越沖地震(震度6強)と続いた。その後、能登半島の先端では2020年12月ごろから再び地震が活発化し、震度1以上の揺れは去年は年間70回、ことしに入り29回観測されている。地震の専門でない者が軽々に語るべきことではないが、能登半島の揺れ、そして福島県沖の地震は連鎖反応なのだろうか。

⇒17日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆ロシアの「ジャンヌ・ダルク」が投じた一石

☆ロシアの「ジャンヌ・ダルク」が投じた一石

    まさに現代のジャンヌ・ダルクではないだろうか。勇気ある女性だ。ロイター通信Web版日本語(15日付)=写真=によると、ロシア国営テレビ局「Channel One」の14日夜のニュース番組で、アナウンサーの後ろに、「NO WAR」と手書きのプラカードをかざした女性が突然映り込んできた。「戦争を止めて」と声をあげた。7秒で画面が切り替わった。国営テレビは、ロシアはウクライナの非軍事化と「非ナチ化」、ロシア系住民の保護のために戦っているとするロシア政府の見解を一貫して報じている。この報道姿勢に身内から反乱を起こした。

   女性はテレビ局のディレクターでマリーナ・オフシャニコワ氏。ネット上にビデオ声明も発表していて、「ウクライナで起きていることは犯罪だ。ロシアは侵略国であり、侵略の責任はウラジーミル・プーチンにある」「テレビ画面でうそを話すのを許してきたのが恥ずかしい」と述べ、ロシア国民に反戦活動を呼びかけている。父がウクライナ人、母がロシア人であることを明かしている。彼女は警察によって当日拘束された。モスクワの裁判所は翌15日、無許可で抗議活動を行ったとして3万㍔(280㌦)の罰金を科して釈放した(同)。

   むしろプーチン氏からにらまれているのはテレビ局幹部ではないだろうか。国営テレビ「Channel One」は日本で言えば、NHKのような存在である。夜9時からの番組なので、まさにNHK報道番組『ニュースウオッチ9』ではないか。動画を見る限り、オフシャンコワ氏が手書きのプラカードを掲げ、反戦を訴えたが、ニュースを読み上げる女性キャスターはオフシャンコワ氏の行動を無視している。テレビカメラもそのまま撮っていた。7秒後に画面が切り替わった。通常で考えれば、スタジオにプラカードを持って入ることをなぜ他のフロアスタッフが阻止しなかったのか、なぜカメラマンは7秒もそのままカメラを向け続けたのか。

   以下はあくまでも憶測だが、「予定調和」の流れを感じる。オフシャンコワ氏やカメラマン、ほかのスタッフが訴えた「7秒間の反戦ドラマ」ではなかったか。ロシアの民衆はネットでウクライナ侵攻の真相が分かっていても、大統領には逆らえず、見て見ぬふりをして沈黙してきた。それがもう限界に来ている。オフシャニコワ氏の果敢な行為は突発的に見えるが、計画的でもある。民衆に怒りのマグマが相当たまっていて、これが導火線になるのではないか。

   フランスのマクロン大統領もジャンヌ・ダルクのイメージを想起したのだろうか、朝日新聞Web版(16日付)によると、マクロン氏はオフシャニコワ氏の保護のために外交努力をする考えを示し、「次のプーチン氏との協議で具体的な提案をする」と語ったという。

   一方のロシア政府はそう甘くはない。ロシアでは今月、ロシア軍の活動に関して、ロシア当局がフェイクニュースと見なした場合に、最大15年の禁錮刑を科せる法律が施行された。オフシャニコワ氏の活動そのものが偽情報の拡散と当局が判断する可能性がはらむ(同)。ロシアの世論が今後どう展開していくのか。新たなロシア革命へとつながっていくのか。

⇒16日(水)午後・金沢の天気   はれ

★国連安保理はドロ沼状態から這い出せるのか

★国連安保理はドロ沼状態から這い出せるのか

   今月11日にロシアの要請で国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、ロシアの国連大使は「ウクライナで渡り鳥やコウモリ、シラミなどを利用した生物兵器開発計画があり、テロリストに盗まれ使われる危険性が非常に高い」「生物兵器の開発にはアメリカが関与している」「同様の研究は悪名高い旧日本軍731部隊も行った」と一方的に主張した(12日付・時事通信Web版)

   写真は国連安全保障理事会の会議室(国連広報センター公式ホーページ日本語より)。バックの壁画はノルウェーの画家、ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥(Phoenix aus der Asche)」。大戦の焼け跡から抜け出して飛び立つ不死鳥が描かれている。よりよい未来への希望を象徴した絵とされる。果たして現代のドロ沼状態から世界はいつ這い出せるのか。

☆卵が先か、「ピカソ」が先か

☆卵が先か、「ピカソ」が先か

   5年前の話になるが、「ピカソに会える茶会」という、ちょっと気を引くタイトルの茶会が金沢21世紀美術館の茶室「松涛庵」であった(2017年12月)。床の間に飾ってあったのはピカソの作品『貧しき食事』だった=写真・上=。ワインと一切れのパンを前にした男女の姿が描かれている。男は目が不自由で顔は右の遠くを向いているものの、左手は女の肩に、右手は腕に寄せている。「青の時代」と言われたピカソの初期の作品で、社会の底辺にいる人たちを題材とした作品が多い。作品はこの時期の有名な版画として知られる。ごく限られた数だけ摺られた希少なものと解説があった。濃茶を頂きながら、名画を堪能させていただいた。

   2つ質問をしたことを覚えている。一つは、「なぜ、この作品を床の間に飾ったのか」と。すると「ピカソの初期の作品であり、初心に戻ってお茶会をするという企画意図と合ったため」とのこと。2つ目に「そもそもこの貴重な絵はどこからお借りしたのか。あるいは個人所有なのか」と。「高岡にありますイセコレクションの伊勢氏に直接お願いして、お借りした」との返事だった。

   イセコレクションは、「森のたまご」のブランドで知られる鶏卵大手「イセ食品」(東京)の前会長、伊勢彦信氏が収集した世界的な名画や彫刻、陶磁器のこと。作品は伊勢氏が代表理事を務めるイセ文化財団(東京)が管理し、創業の地である富山県高岡市のグループ会社のギャラリーで一部を展示している。

   そのイセ食品とグループ会社は11日、債権者から東京地裁へ会社更生法を申し立てられ、同地裁から保全管理命令を受けた、と北陸のメディア各社が報じている=写真・下=。「帝国データバンク」Web版(11日付)によると、M&Aなどで業務内容を拡大するなか金融機関からの借り入れが増加。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて卵価が下落、資金繰りが悪化していた。負債はイセ食品とグループ会社の2社の合計で453億円(うち金融債務は260億円)とみられる。

   イセ食品の伊勢彦信氏をめぐっては、2019年4月に国税から税務調査を受け、7億円の申告漏れが指摘された。別のグループ会社がアメリカ・ニューヨークのビルを購入・転売して得た利益の一部が配当として伊勢氏に渡っていた。1980年にアメリカでグループ会社を設立し、卵の販売量で全米2位となっている。

   話はイセコレクションに戻る。現在92歳の伊勢氏は世界で注目されてきた筋金入りの美術品コレクターである。ふと気になるのは、更生手続きをきっかけにピカソなどのコレクションを売却処分するのか、あるいはコレクターとして意地を通すのか。卵が先か、「ピカソ」が先か。

⇒12日(土)午後・金沢の天気     はれ