⇒ニュース走査

★オリンピック野球決勝 日米対戦の報道を裏読み

★オリンピック野球決勝 日米対戦の報道を裏読み

          東京オリンピックもきょうを入れてあと2日。ハイラトシーンをリアルで視聴したいと思い、午後7時から横浜スタジアムでの野球、日本とアメリカの決勝戦を放送するテレビ前に陣取った。予選リーグから4連勝の日本と、敗者復活戦から勝ち上がったアメリカだったが、正直、勝敗は五分五分と思っていた。

         3回、1アウト後に村上宗隆選手がソロホームランを打って先制。そして、8回は1アウト二塁で吉田正尚選手がセンター前にヒット、相手のエラーも重なって追加点。投手陣は5人を繰り出し、先発した森下暢仁選手は5回をヒット3本無失点と好投し、6回は千賀滉大選手、7回は伊藤大海選手、8回途中からは岩崎優選手が登板して、得点を与えなかった。9回は栗林良吏選手が2アウトからランナーを出したが、後続を抑えて2-0で勝った。この瞬間「強い、侍ジャパン」と思わず叫んだ。

   ところで、アメリカはこの試合をどう報じているのか気になった。アメリカでの放送権を独占しているNBCテレビのニュースWeb版は「Team USA shut out by Japan, settles for baseball silver as hosts win Olympic gold」との皮肉を込めた見出しで伝えている=写真・上=。ホスト国の日本チームはプロ野球球団から構成するオールスターメンバーだったが、アメリカチームは大リーグ(MLB)がシーズンを中断しなかったため、スター選手は出場しておらず、マイナーリーグやフリーエージェントの選手たちで構成されていたと報じている。

  また、CNNニュースWeb版は「Japan beats US to win first-ever gold medal in baseball」との見出しで、アメリカは銀メダル、これで4度目のオリンピック野球メダルを獲得した、と淡々と伝えている=写真・下=。試合の経過は記事にしていない。

   このNBCとCNNの違いはなんだろう。IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%だ。その放送権料の50%以上をNBCが払っている。韓国・平昌冬季大会(2018年)と東京大会の合算した数字だが、NBCの供出額は21億9000万㌦だ。ちなみに、開催国の日本はNHKと民放がコンソ-シアムを組んで5億9400万㌦だ。五輪開催前の6月の投資家会議でNBCの最高経営責任者(CEO)が「the pandemic-tainted Tokyo Games “could be our most profitable Olympics in the history of the company.“」(パンデミック下での東京大会は「当社の歴史の中で最も収益性の高いオリンピックになるかもしれない」)と述べて、モラルハザードではないかと問題視されたことがある。

   NBCテレビのスポンサーにはさまざまポリシーを持った企業がある。このようなスポンサーをバックにしていると、あえて「Team USA shut out by Japan」という表現を使わざるを得ないかもしれない。8月3日付のブログでも書いたように、広島市長から6日の広島の原爆投下の時刻に選手たちに黙とうを捧げてほしいとの要請をIOCを受け入れなかったのも、NBCが裏で却下するように動いたではないかと個人的に憶測している。アメリカには原爆投下で先の戦争を終わらせたという意識が根強くあるのだ。

(※NBCは写真でアメリカチームの様子を、CNNは日本チームの胴上げの模様を掲載)

⇒7日(土)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

☆姉妹でレスリング金メダル 東京五輪の新たなレジェンド

☆姉妹でレスリング金メダル 東京五輪の新たなレジェンド

   連日、地元紙が派手に報じている。レスリング女子57㌔級の決勝で石川県津幡町出身の川井梨沙子選手が5日、ベラルーシの選手を下し、前回のリオデジャネイロ大会に続いて金メダルを獲得した。川井選手の妹・友香子選手も前日4日に62㌔級で金メダルだったので、姉妹で「金」は日本勢初の快挙と讃えている。地元紙の北國新聞は連日の特別紙面で「最強の姉 約束の金lと、本紙では「梨沙子連覇 川井姉妹そろって金」、北陸中日新聞は「川井 姉妹で金 梨沙子連覇」とそれぞれ一面の通し見出しだ=写真=。

   昨夜は民放テレビで観戦していた。横綱相撲という感じだった。ベラルーシの選手を横に投げて動かし、後ろに回って抱える。場外際の投げで2点を先制。素早いタックルなどで場外に押し出してさらに1点。腕を相手の胴体に入れて一気に投げて2点。5‐0で下した。試合後にマットの外に出て、日の丸を背負って初めて笑みを浮かべていた。観客席にいた妹・友香子選手にも両手を上げていた。もし、観客席に人が大勢の人がいたら、「梨沙子」コールがわき起こっていたに違いない。

   インタビューで、梨沙子選手は「最後の1秒まで絶対に相手から目を逸らさないって決めていた。友香子にきのうあんな試合を見せられたらやるしかないって思っていたのでよかった」と。東京オリンピックの日本勢で、姉妹による金メダルは初めてなので、まさに日本のオリンピックの歴史に新たなレジェンドをつくったのではないだろうか。

   話はそれる。金メダルの「番外レジェンド」もある。NHKニュースWeb版(8月5日付)によると、名古屋市の河村市長は4日、ソフトボール日本代表チームのメンバーで、名古屋市出身の後藤希友投手から金メダル獲得の報告を受け、後藤投手からメダルを首にかけてもらった際、突然、マスクを外してメダルをかんだ。これを受け、市の広聴課には、河村市長の行為を批判する電話やメールなどが5日午後5時半までに4000件余り寄せられた。5日午前、後藤投手の所属先のトヨタ自動車から豊田章男社長の名前で、河村市長宛ての抗議文が提出された。

   河村氏の気取らずモノを言い行動するキャラは超絶だ。それにしても、金メダルに突然かぶりつくとは、「とんでもにゃあ」。

⇒6日(金)朝・金沢の天気     はれ

☆緊急時の病床確保、求められる自治体の臨機応変さ

☆緊急時の病床確保、求められる自治体の臨機応変さ

   きょう午前、ワクチン接種を2回受けた病院へ抗体検査に出かけた。2回目接種から2週間余り経ち、病院に申し込んでいた。これまで副反応もなかったことから、「本当に抗体ができているのか」「効果を数値で確かめたい」という思いが募って申し込んだ次第。ワクチン接種は国の政策で無料だったが、この抗体検査は保険適用外で税込み6000円だ。

   病院に到着して受付に行き、採血して終わり。結果の書面は1週間後に自宅に郵送されると看護師から告げられた。時間にして10分足らずだった。説明書によると、ワクチン接種でヒトの細胞内にスパイクタンパク質(ウイルスのトゲトゲの部分)をつくる。このトゲトゲの構造に人体の免疫系が強く反応することで、ウイルスの感染に対する抵抗力、つまり抗体が獲得できる。抗体検査は2つのことを確認する。一つはワクチン接種前の免疫状態、つまり、過去に感染があったかどうかの確認。もう一つはワクチン接種後の免疫応答、これは接種により抗体がついたのかどうかの確認検査となる。その効果が数値で確かめられるので、結果を心待ちにしている。

   イスラエルでは8月からファイザー社製のワクチンの5ヵ月経過を見計らって3回目の接種が行われている。病院の医師と相談し上記の数値と照らし合わせて、自身の3回目接種のタイミングを決めたいと思っている。

   ところで、きのう政府が方針転換した「重症以外は自宅療養」が問題となっている=写真=。病床のひっ迫に備えて、自宅療養を基本とし、酸素吸入も自宅でという方針だ。自身が感染したと想定すると、自宅で酸素吸入をするより、病院の廊下でもいいので、医者や看護師など医療関係者が近くにいてくれた方が安心感がある。

   日本の場合、医療機関の病床の数が入院者数となる。コロナ禍で緊急事態が起きれば、病床ベッドを増やすしかない。たとえば、廊下にベッドを置いてはどうだろうか。あるいは、自治体とタイアップして、病院のごく近くに公共施設があれば、そこに臨時にベッドを置いてはどうだろうか。さらに、行政が交渉してホテル一棟を借り切り、病院に提供し、そこに医師が回診にくるというシステムでもよいのではないか。まるで野戦病院のイメージだが、必要なのは臨機応変な対応だと考える。  

       菅総理は入院制限方針に与党からも撤回要求が出ていることについて、「撤回しない」と記者団に述べた(8月4日付・共同通信Web版)。オリンピックがあり、生徒や学生たちが夏休み、そして、旧盆も近づき、いわゆる「人流」の抑制が効かくなりつつある。こうなれば、求められるのは政府の対応ではない。むしろ、都道府県を単位とする首長の臨機応変な対応ではないだろうか。

⇒4日(水)夜・金沢の天気      はれ

★「ヒロマシの祈り」とオリンピック憲章

★「ヒロマシの祈り」とオリンピック憲章

   前回のブログの続き。8月6日はオリンピック期間中であるが、1945年に広島に原爆が投下された日でもある。3日後の9日は長崎にも投下された。6日と9日は日本では平和の祈り日であると同時に、核兵器全面禁止と廃絶を求める運動が活発になる日でもある。

   NHKニュースWeb版(8月2日付)によると、広島市の松井市長はIOCのバッハ会長に書簡を送り、(原爆が投下された8月6日午前8時15分に)選手村などで黙とうを呼びかけてほしいと求めていた。これに対し、2日午後、IOCから、黙とうを呼びかけるなどの対応はとらないといった返答が広島市にあった。その理由についてIOCは「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラムを8日の閉会式の中に盛り込んでおり、広島市のみなさんの思いもこの場で共有したい」と説明している。

   バッハ会長は7月16日午後、広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花している。では、なぜ、「6日の黙とう」を避けたのか。以下憶測である。オリンピック憲章に違反すると、IOCは判断したのだろう。憲章の50条2項ではこう記されている。「No kind of demonstration or political, religious or racial propaganda is permitted in any Olympic sites, venues or other areas.」(オリンピックの用地、競技会場、またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、 あるいは政治的、 宗教的、 人種的プロパガンダも許可されない)。この「いかなる種類のデモンストレーション」に相当する行為としてみなされるとの判断ではないだろうか。

   オリンピックにおける黙とうが原爆投下を否定するデモンストレーションとみなされるとの解釈だ。原爆投下に関する歴史認識には、日本とアメリカでいまだに隔たりがある。アメリカでは「原爆投下によって戦争を終えることができた」と正当化する意識がいまもある。アメリカの世論調査機関「ピュー・リサーチセンター」の調査(2015年)では、65歳以上の70%が「正当だった」と答え、18歳から29歳の若者も「正当だった」との答えは47%だった(2020年8月21日付・ロイター通信Web版日本語)。2016年5月28日、当時のアメリカ大統領のオバマ氏は歴代大統領として初めて原爆死没者慰霊碑を訪れて献花した。ただ、アメリカ国内の反対世論を意識して、「謝罪はしない」と事前に公言していた。

   また、原爆投下についての中国側の論調もはっきりしている。「長年にわたり、日本は第二次世界大戦、特に原子爆弾の被害者であると自らを位置づけてきたが、原子爆弾を投下されることになった歴史的背景について触れることはほとんどなかった」(2020年8月7日付・人民網日本語)

   上記のようなアメリカや中国の論調があるなかで、IOCとしては広島市長のメッセ-ジに応じることをためらったのだろう。IOCは代案として8日の閉会式で「歴史の痛ましい出来事や様々な理由で亡くなった人たちに思いをはせるプログラム」を設けるという。どのような内容なのか注目したい。

(※写真は、広島市の平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花するIOCのバッハ会長=7月16日付・AFP通信Web版動画より)

⇒3日(火)午後・金沢の天気   くもり

★無心の境地 ゴルフ松山選手の活躍に期待

★無心の境地 ゴルフ松山選手の活躍に期待

   8月に入り、和室の床の間の掛け軸を替えた。『白雲抱幽石』。人里離れた深山幽谷、そこに夏雲がもくもくと現れ、まるで雲が大地を抱きかかえているような壮大な自然の光景をイメージさせる。中国・唐代の禅僧、寒山の漢詩の一節である。

   この掛け軸に合う花を探すと、真っ白なムクゲの花、ギオンマモリがちょうど咲いていた。日差しを浴びて、純白に輝く様子がまるで夏雲のようなイメージだったので 、唐銅の花入れに挿した。

   改めて禅語辞典でくってみると、「世俗との交渉を絶って幽居する隠棲者寒山の心境が偲ばれる」と。禅の修行僧の境涯を表現したものと書かれている。自然界では人の奢り高ぶった気持ちは通用しない。自然を我家として修行に励むことで、人は全ての生き物と同じように大自然の中に生かされているということを改めて感じ、悟りをひらく。

   話は変わる。東京オリンピックのメダリスト、そして敗者へのインタビューが行われているが、その表情や言葉が短く的確で感動することがある。きょうNHKでゴルフ男子の最終ラウンドを視聴していた。ことし4月、海外メジャー大会のマスターズ・トーナメントで優勝した29歳の松山英樹選手に注目していた。メダル獲得を逃したものの、松山選手は「自分が思っているパフォーマンスは出せなかった」「きょうのプレーは上位に追いついて追い越せる雰囲気も感じながら、なかなか最後の部分がうまくいかなかった。自分の課題が見えてきた.」と淡々とインタビューに答えていた。

   スポー ツは勝利して結果を残すものなので、もっと悔しさをにじませた表情かと思ったが、そうではないのだ。「自分の課題が見えてきた」。このコメントを聞いて、松山選手は競技の中で、敵は相手ではなく、意のままにならない自身だと悟ったのではないかと察した。自らの鍛え方が足りないと、まるで武道家の言葉のようにも聞こえた。まだ、29歳、無心の境地で世界のゴルフ界を背負う人材に成長することを期待したい。

⇒1日(日)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

☆ワクチン3回接種が世界のスタンダ-ドになるのか

☆ワクチン3回接種が世界のスタンダ-ドになるのか

   かつてないほどの感染規模だ。石川県での新型コロナウイルスの新規感染者がきのう30日で110人となった。前日29日は94人、28日は119人だった。人口112万人の県でこれだけ感染者数が増えてくると心穏やかではない。政府はきのう石川県を「まん延防止等重点措置」の対象に適用すると発表した。適用地域は7月の感染者の7割を占める金沢市で、期間は8月2日から31日の30日間。

   県はすでに市内の飲食店に対して営業時間を午後8時までに短縮するよう要請しているが、今回の措置適用を受けてこれを31日まで延長する。兼六園などの県の施設も休館となる。石川県の「まん延防止措置」適用は前回(5月16日-6月13日)に次ぎ2回目だ。夏の暑い夜、また家飲みの日々が続く。

   先日26日のブログで取り上げた「ワクチンパスポート(予防接種証明書)」がきのう自宅に郵送で届いた=写真・上=。これを入国時に提示すると、隔離措置などが免除される。このパスポートが通用するのは現在、ドイツ、イタリア、オーストリア、ポーランド、香港など12の国・地域。外務省は相手国の確認を取り、範囲を広げている(外務省公式ホームページ)。パスポートの申請を思い立ったのは、ワクチンの2回接種を終えた知人たちと海外旅行に行こうかとオンランでやりとりをしたことがきっかけだった。それは、コロナ禍でのニューノーマル(新常態)に息苦しさを感じ始め、何かで突破したいとの単純な動機だったのかもしれない。

   このワクチンパスポートを手にして、世界への移動の自由を確保したとの気持ちがあったが、それもつかの間、ニュースを見て、さらなる「コロナの障壁」を知ることになる。BBCニュースWeb版(30日付)は「Coronavirus: Israel to give third jab to people aged over 60」の見出し=写真・下=で、イスラエルでは8月1日から60歳以上の市民を対象に、ファイザー製のワクチンの3回目接種を開始すると伝えている。記事によると、時間が経つにつれて免疫力が低下することから、5ヵ月前に2回目の接種を受けた60歳以上の市民を対象に3回目の接種を順次行う。

   イスラエルは国民の59.2%が接種を完了している(30日付・ロイター通信まとめ)。世界でもっとも早くワクチン対応をしたモデル国として評価されている。そのイスラエルが2回接種の5ヵ月後にさらに3回目を始めるとなると、これが世界の基準になるのではないだろうか。つまり、いまのワクチンパスポートは2回接種者が利用するので、5ヵ月が経つとさらに3回接種の証明書が求められるようになるのか。さらに、ひょっとしてパンデミックが続けば、さらに4回、5回と接種が必要なのか。人類とウイルスの戦いは長期戦だ。

⇒31日(土)午前・金沢の天気     はれ

★メダル獲得、そして暑さとの戦いが続く

★メダル獲得、そして暑さとの戦いが続く

            これでは、メダル獲得の争いというより、暑さとの戦いだ。オリンピックが始まって、東京都内では連日のように30度を超える真夏日で、24日と25日は34.4度と酷暑日に近づく暑さだった。きょう30日も真夏日の予報で熱中症情報では「厳重警戒」のマークが出ている。

   アメリカの「Bloomberg」Web版日本語(28日付)は「東京の酷暑に苦しむ五輪選手、新型コロナの試練に追い打ち」の見出しで報じている。ロシア五輪委員会(ROC)のアーチェリー選手が熱中症のため一時意識を失った。メディア各社の報道によると、男子テニスのノバク・ジョコビッチ選手(セルビア)は酷暑を避けるために試合開始時間の変更を求めた。ラグビー7人制女子に出場するイロナ・マー選手(アメリカ)は「冷たいタオルを使ったり、アイスキャンディーを食べたりするなど、栄養士とトレーナーが何とか体を冷やす方法を考えている」と暑さ対策について語った。

   イギリスの「BBC」Web版(28日付)の記事は強烈だ。「Daniil Medvedev struggled to breathe in the Tokyo heat on Wednesday, asking the umpire who would be responsible if he died during his Olympic tennis match.」(意訳:男子テニスのダニール・メドベージェフ選手は28日、東京の暑さの中で息絶え絶えに、オリンピックの試合中に死亡した場合、いったい誰が責任を取るのかと審判に問いただした)

   世界2位のメドベージェフ選手の「いったい誰が責任を取るのか」の強烈なひと言がおそらく効いたのだろう。国際テニス連盟は暑さ対策として、29日の第1試合の開始時間を当初予定していた午前11時からを午後3時に変更すると発表した。

  その後のニュース。翌日29日のテニス男子シングルス準々決勝で、メドベージェフ選手はスペインの選手にストレ-ト負けを喫した。すると、ラケットを破壊し、無観客のスタンドに放り投げた(AFP通信Web版日本語)。平和の祭典のオリンピックでラケットの破壊行為はいかがなものか。これも暑さが原因だったのか。

        そもそも、この真夏日になぜオリンピックを開催するのか。オリンピックの開催日程は、IOC 理事会が決める(オリンピック憲章第5章「オリンピック競技大会」Ⅰ.オリンピック競技大会の開催、組織運営、管理)。1964年の東京オリンピックは10月10日から24日の2週間だった。7月と8月の開催が定番となったのは2004年のアテネ大会からだ。なぜ、7月と8月なのか。IOCの収入は放送権料が73%、スポンサー料が18%だ。その放送権料の50%以上をアメリカのNBCが払っている。

   そのアメリカでは9月と10月には、ナショナルフットボールリーグ(NFL)や野球のワールドシリーズの試合、さらに、アメリカンフットボールの大学リーグ戦なども始まる。大口のスポンサーがオリンピックは7月と8月と要請すれば、断れないだろう。「アスリートファースト」ではなく、「アメリカファースト」なのだ。きょうも何とも蒸し暑い。

⇒30日(金)午前・金沢の天気     はれ

☆自転車競技の大番狂わせ金メダリストは数学の研究者

☆自転車競技の大番狂わせ金メダリストは数学の研究者

   暑い中では外出を極力避け、テレビでオリンピック観戦をするのが一番だ。ついでにきょうの朝刊に目を通すと、東京での新型コロナウイルスの感染者が新たに2848人となり、1月7日の2520人を超えて過去最高となったと報じている。そして、石川県内でも新たに70人が感染し、これで3日連続で70人台となった(7月28日付・北陸中日新聞)。こうなると、ますます外に出づらくなる。

            きのうのソフトは実にスーパープレーだった。アメリカとの決勝戦。6回の1アウトで一、二塁のピンチ。相手打者のサードへの痛烈なライナーを三塁の山本優選手がはじいてしまったが、その打球を遊撃・渥美万奈選手がノーバウンドでキャッチし2アウト。すぐさま二塁に転送し併殺打とした。まるで忍者のようだった。

   CNNニュースWeb版(27日付)も「スーパースター」の存在を伝えている=写真=。「Anna Kiesenhofer is a math genius who just pulled off one of the biggest shocks in Olympics history」(意訳:金メダリストのアンナ・キーゼンホファー選手は数学の天才、オリンピック史上最大級の大番狂わせを演じた)

   以下、記事の要約。自転車女子個人ロードレースのキーゼンホファー選手(オーストリア)は世界ランキングは94位のアマチュア。その彼女が高温多湿と戦いながら137㌔のコースを疾走し、オーストリアに初めて自転車競技に金メダルをもたらした。30歳。

   キーゼンホファー選手のもう一つの顔は数学の研究者だ。イギリスのケンブリッジ大で数学の修士号、スペインのカタルーニャ工科大学で応用数学の博士号を取得し、現職はスイス連邦工科大ローザンヌ校の博士研究員。自分のトレーニングプラン、栄養、レースの戦略について綿密な計算で計画を練る。彼女の信念は「I dare to be different. I have a different approach and this means that I’m also unpredictable」(意訳:私はあえて違う。私は別のアプローチを持っており、これは私も予測不可能であることを意味する)。

   彼女が考えた競技の最適解は「最初から一人逃げ切り」のレース展開だった。名だたる優勝候補たちは彼女が途中でバテて脱落すると思ったに違いない。しかし、彼女は追撃を許さず、スタートからフィニッシュまで逃げ切った。予測不可能な大番狂わせを演じたのだ。

   上記の記事を読んで、金沢大学の大学院で流体力学を学び、能登で定置網の会社の漁師になっている人物を思い出した。潮の流れと力学に裏打ちされた理論に基づいて、糸を選び、編み目を調節して漁網を仕上げる。その網を海底に張り、魚を網に誘い込む。数年前、会社を訪れ話を聞いたことがある。「学んだ理論と実践が一致することこそ面白い」の言葉が印象に残っている。

            キーゼンホファー選手も同様に、自ら学んだ理論をどう体現していくかが研究者としての醍醐味なのだろう。勝負ではなく、最適解を追い求める知の世界がそこにある。

⇒28日(水)午後・金沢の天気       くもり時々あめ

★台風の波に乗り、卓球の壁破る、スケボー13歳は見事に金

★台風の波に乗り、卓球の壁破る、スケボー13歳は見事に金

   オリンピックの醍醐味はある意味で、新たなスポーツとスーパ-スターの発掘ではないだろうか。競技映像を見ることはできなかったが、スケートボード女子ストリートで、13歳の西矢椛(もみじ)選手が優勝し、日本史上最年少の五輪メダリストになった。2位のブラジル選手も13歳、3位の中山楓奈選手は16歳、表彰台に10代の選手が並んだことになる。スケートボードがオリンピック競技になっていることも知らなかった。そして、五輪競技には珍しく参加選手への年齢制限がないようだ。オリンピックのトレンドになってほしいものだ。

   オリンピック競技で卓球と言えば中国というイメージだが、混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手がその「チャイナの壁」を突破して、日本の卓球界に初の金メダルをもたらした。新聞各紙は、「ついに王国、中国の壁を超えた」(7月27日付・朝日新聞)、「ついに、卓球王国・中国の牙城を崩した」(同・読売新聞)などと掲載している。

   フタをあければアッという数字だった。視聴率調査会社「ビデオリサーチ」のプレスリリース(7月26日付)によると、23日に行われた東京オリンピック開会式はNHK総合で生中継され、またハイライトはフジテレビ系列とNHKBS1で放送され、それら3番組を集計対象とし、リアルタイムで視聴した人は日本全国で推計7326万8千人になると発表している。また、NHK総合の開会式は平均視聴率は56.4%(関東地区)だった。開催への批判も渦巻いたが、前回の1964年の東京五輪の61.2%に迫る高い数字だった。

   競技では、冒頭のスケートボー女子ストリートの決勝と表彰式を放送したNHK総合(26日、午後0時20分から)の視聴率は9.8%だった。スケートボードという新参の競技でこの数字は見方によっては高い数字だ。また、中国に勝った卓球の混合ダブルスの決勝と表彰式を放送したフジテレビ(26日、午後10時20分から)の視聴率は24.6%だった。

            台風8号が関東と東北に接近している。この台風をうまく利用する競技もある。国際サーフィン連盟は、千葉県一宮町にある東京オリンピックのサーフィン会場の波の高さや風向きなど気象状況を検討した結果、決勝を当初の日程より1日早め、27日中に準々決勝から決勝までを行うと発表した。大会の運営にも関わっている地元のサーフィンの経験者は「台風の影響で高くていい波がきている。また風向きもよく、サーフィンに適した波の崩れ方をしている。日程を1日早めて正解だ」と話している(7月27日付・NHKニュースWeb版)。台風が来れば波に乗る。サーファーの意気込みに迫力を感じる。

   先ほどまでNHK-Eテレで、テニスの女子シングルス3回戦、大坂なおみ選手とチェコのマルケタ・ボンドロウソバ選手との対戦を見ていた。大坂選手はストレート負けでベスト8進出を逃した。開会式では聖火台に火をともす大役を担っただけに、金メダルへの強い思いもあったろう。スポーツの世界は厳しい。オリンピックは悲喜こもごものドラマの連続だ。

⇒27日(火)午後・金沢の天気      くもり時々あめ

★五輪に野球復活、レジェンドの点火リレー

★五輪に野球復活、レジェンドの点火リレー

   東京オリンピックの開会式のシーンで感じたことの続き。NHK番組の解説者が説明していたように、今回のオリンピックでは3大会ぶりに野球とソフトボールが復活した。そのシンボルとして登場したのであろう、球界のレジェンドである松井秀喜氏と長嶋茂雄氏、そして王貞治氏の3人が新国立競技場内での聖火ランナーとして登場した。

   その姿は含蓄が深かった。脳梗塞を患い右半身にマヒが残る長嶋氏の体を松井氏が支えての登場だった。松井氏がトーチキスで聖火を受け取ると、王氏がトーチを掲げ、3人はゆっくりと歩調を合わせながら行進を始めた。47歳の松井氏はジャイアンツ時代の恩師でもある85歳の長嶋氏に寄り添い、そして81歳の王氏はときに手を差し伸べていた。数分して、最後は松井氏から次の走者である医療従事者2人に聖火をつないだ=写真、NHK番組=。聖火が渡ると、一瞬だったが、長嶋氏は笑顔を見せた。

   解説者はコメントしていた。長嶋氏は2004年のアテネオリンピックの野球日本代表の監督に就いていたが、予選後に脳梗塞で倒れた。代わりに中畑清ヘッドコーチが指揮を執ったが、長嶋氏にとっては、五輪出場が長年の夢だったのかもしれない、と。

   松井氏が長嶋氏に寄り添っている姿を見て、1992年11月に行われたプロ野球ドラフト会議のシーンがよみがえる。自身が民放のテレビ局時代、松井氏は星稜高校のスター選手だった。石川大会で4本塁打を3大会連続で放った「怪物」だ。さらに、1992年8月、夏の甲子園大会の明徳義塾高(高知)戦で5打席連続で敬遠され、強打者ぶりが「甲子園伝説」にもなった。その年のドラフ会議。長嶋氏は13シーズンぶりに巨人の監督に復帰していた。4球団から1位指名を受けた松井氏。抽選で交渉権を獲得したのは長嶋氏だった。このとき誰しもが2人の運命的な出会いを感じたに違いない。

   その後、2人は2013年5月、国民栄誉賞を同時に授与される。さらに、今回こうして東京オリンピックの開会式に立った。まさに、点火リレーは絆(きずな)が輝いた瞬間だった。

⇒25日(日)午後・金沢の天気     はれ