⇒ニュース走査

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

★「敵基地攻撃能力」は無力化するのか

   正気の沙汰ではない。また、きのう(14日)北朝鮮が弾道ミサイルを打ち上げた。ことしに入って3回目だ。防衛省公式ホームページには、「北朝鮮は、本日(14日)14時50分頃、北朝鮮北西部から弾道ミサイルを少なくとも1発、東方向に発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約50km程度で、距離は通常の弾道軌道だとすれば、約400km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸付近であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」と記載されている。

   NHKニュースWeb版(15日付)は、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を引用してして以下報じている。「鉄道機動ミサイル連隊が14日、発射訓練を行い、2発の戦術誘導弾が日本海に設定された目標に命中した」と発表した。公開された写真ではミサイルが、線路上の列車からオレンジ色の炎を吹き出しながら上昇していく様子が写っている。また発射訓練について、「任務の遂行能力を高めることを目的に行われた」としていて、国防科学院の幹部らが立ち会い、「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システムを整えるための課題が議論された」としている。

   当初、アメリカへの威嚇を込めた発射だと思った。北朝鮮外務省報道官はこの日午前6時、国営の朝鮮中央通信を通じて談話を発表し、「アメリカがわが国の合法的な自衛権行使を問題視するのは明らかな挑発であり、強盗的な論理だ」「アメリカはわが国の正当な活動を国連安保理に引き込んで非難騒動を起こせなかったので、単独制裁まで発動しながら情勢を意図的に激化させている」と述べていた(15日付・朝鮮日報Web版日本語)。

   ところが、先のNHKニュースからは、鉄道機動ミサイルを戦略兵器として着々と開発を進めていることが分かる。鉄道機動ミサイルが初めて確認されたのは、2021年9月15日に発射した弾道ミサイルだ=写真、2021年9月17日付・朝鮮中央テレビ動画から=。このときは、能登半島沖350㌔のEEZ内に着弾した。あれから4ヵ月で戦術誘導弾を搭載した鉄道機動ミサイルを開発したことが分かる。戦術誘導弾は弾頭の重量を2.5㌧に改良した兵器システムで、核弾頭の搭載が可能となる。これを「全国的な鉄道機動ミサイルの運用システム」へと展開したらどうなるか。つまり、移動式ミサイル発射システムが完成すれば、北朝鮮のいたるところから発射が可能で、日本で議論されている「敵基地攻撃能力」そのものが意味をなさなくなってくる。

   北朝鮮の弾道ミサイル開発はすでに完成形に近いのではないか。去年9月28日発射した極超音速ミサイルはマッハ3とされていたが、今月11日に発射したものはマッハ10と推定されている(12日・岸防衛大臣の記者会見)。日本の弾道ミサイルへの防衛は、イージス艦の迎撃ミサイルで敵のミサイルを大気圏外で撃ち落とし、撃ち漏らしたものを地対空誘導弾「PAC3」で迎撃するという二段構えの防備体制といわれる。日々進化していると思われる北朝鮮の弾道ミサイルにまともに向き合えるのか。日本海側に住む一人としての懸念だ。

⇒15日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

☆北の五輪不参加と極超音速ミサイルは何を潰したのか

   きのう11日に北朝鮮が発射した極超音速ミサイルについて防衛省は公式ホームページで落下地点を推定した図=写真・上=を掲載し、「詳細については現在分析中ですが、通常の弾道軌道だとすれば約700km未満飛翔し、落下したのは我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」とコメントを書いている。この図を見て、ミサイルの発射角度を東南に25度ほど変更すれば、間違いなく能登半島に落下する。さらに、朝鮮新報(12日付)は「発射されたミサイルから分離された極超音速滑空飛行戦闘部は、距離600km辺りから滑空再跳躍し、初期発射方位角から目標点方位角へ240km旋回機動を遂行して1000km水域の設定標的を命中した」と記載している=写真・下=。この記載通りならば、北陸がすっぽり射程に入る。

   さらに、朝鮮新報の記事は金正恩朝鮮労働党総書記が発射を視察し、「国の戦略的な軍事力を質量共に、持続的に強化し、わが軍隊の近代性を向上させるための闘いにいっそう拍車をかけなければならない」と述べと伝えている。

   NHKニュース(12日付)によると、岸防衛大臣はきょう12日午前、記者団に対し、11日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、通常よりも低い最高高度およそ50㌖、最大速度およそマッハ10で飛しょうしたと分析していると説明した。今月5日に発射した極超音速ミサイルはマッハ5の速さで飛行したと報じられていた。去年9月28日の「火星-8」はマッハ3とされていたので、ミサイル技術が格段に高まっていると言える。

   そして、岸大臣が述べたように、今回の弾道ミサイルは通常より低く飛び、最高高度およそ50kmだった、非常に速く低く飛ぶ弾道ミサイルに日本は対応できるのだろうか。これまで北朝鮮のミサイル発射は、アメリカを相手に駆け引きの材料だと思い込んでいた。どうやらそうではないようだ。日本やアメリカの迎撃ミサイルなどはまったく寄せ付けない、圧倒的な優位性を誇る弾道ミサイルの開発にすべてを集中する。国際的な経済封鎖下でも、東京オリンピックと北京オリンピックをボイコットしてでも開発を急ぐ。そして、ダメージを受けたのは韓国だった。

   韓国の大統領府関係者は、北京オリンピックについて「慣例を参考にして、適切な代表団が派遣されるよう検討中」と語り、文在寅大統領の出席は検討していないと明らかにした(12日付・時事通信Web版)。文氏は「外交的ボイコット」を検討していないと訪問中のオーストラリアでの首脳会談後の記者会見で表明していた(12月13日付・朝日新聞Web版)。

   以下裏読みだ。文氏は北京オリンピック期間中に中国の仲立ちで北京での南北首脳会談を構想し、水面下で交渉していた。ところが、北朝鮮は今月5日に極超音速ミサイルを発射。同じ日に「敵対勢力の策動と世界的な感染症の大流行」を理由にオリンピックに参加しないことを中国側に通知した。そして11日にマッハ10の極超音速ミサイルを発射した。これで文氏の「北京での南北首脳会談」の構想は完全に潰えてしまった。というより、ひょっとして、北朝鮮は文氏の夢を潰すためにあえて発射と不参加をセットにしたのか。「敵対勢力の策動」とはこのことを指すのか。

⇒12日(水)夜・金沢の天気      あめ

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

★騒々しい3連休明け 弾道ミサイルどこに向けているのか

   海上保安庁公式ホームページは11日7時29分の「【緊急情報】ミサイル発射情報」で、「北朝鮮から、弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました。船舶は、今後の情報に留意するとともに、落下物を認めた場合は、近づくことなく、関連情報を海上保安庁に通報してください」と伝えた。同じく防衛省公式ホームページは7時35分の「お知らせ(速報)」で、「北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されました」と伝えている。総理官邸公式ホームページでは、「総理指示(7:33)」として、「情報収集・分析に全力を挙げ、国民に対して、迅速・的確な情報提供を行うこと」「航空機、船舶等の安全確認を徹底すること」「不測の事態に備え、万全の態勢をとること」を出している。騒々しい連休明けだ。

   北朝鮮は今月5日の午前8時7分ごろにも、内陸部から「極超音速ミサイル」を日本海に向けて発射している=写真、1月6日付・朝鮮新報Web版=。落下地点は日本の排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   NHKニュースWeb版によると、岸田総理は午前9時前、総理大臣官邸で記者団に対し、「先日、北朝鮮は弾道ミサイルを発射し、国連安全保障理事会で対応が協議されたところだ。こうした事態に北朝鮮が継続してミサイルを発射していることは極めて遺憾なことだ。政府としては、これまで以上に警戒監視を進めているが、発射の詳細は早急に分析を行っている」と述べた。また、岸防衛大臣は記者会見で、北朝鮮から発射された弾道ミサイルの可能性があるものは、通常の軌道であれば、日本のEEZの外側に落下したと推定されることを明らかにした。

   それにしても、この騒々しさは北京オリンピック・パラリンピックに影響をもたらさないのだろうか。弾道ミサイルを打ち上げている国がオリンピック開催国の隣国にあることに、各国のオリンピック選手団はどう思っているだろうか。そして、北朝鮮は北京オリ・パラに参加しない方針を明らかにしている(1月7日付・NHKニュースWeb版)。その理由に、アメリカなどの「外交的ボイコット」に関連して、「アメリカと追従勢力の中国への陰謀がより悪質になっている。中国の国際的なイメージを傷つけようとする卑劣な行為で排撃する」としている(同)。この言葉を真に受けると、「アメリカと追従勢力」を「排撃する」ことと、弾道ミサイルを関連づけて考えてしまう。

⇒11日(火)午前・金沢の天気      あめ

☆用心するに越したことはない

☆用心するに越したことはない

   新型コロナウイルスの感染が急拡大している。石川県でもきょう10日、新たに18人が感染、1人の死亡が発表された。県内で亡くなった人はこれで139人、県内での感染者も累計で8135人となった。そして、全国ベースではここ1週間の新規感染者は3万2081人で、前週(3200人)の約10倍に増加。オミクロン株の広がりとともに、増加幅が拡大している(10日付・時事通信Web版)。感染力が強いとされるオミクロン株の市中感染が全国的に広がっている。感染症者は人工呼吸器やエクモを使用するような重症患者は少ない、「インフルエンザと同じ程度」との情報があるものの、用心するに越したことはない。   

   きのう9日のNHK『日曜討論』で、岸田総理はいわゆる「敵基地攻撃能力」について、憲法など基本的な考え方を守ったうえで、具体的な対応を国民の理解を得ながら結論を出したいと述べた。これに対し、野党党首の考えは割れた。野党第一党の立憲民主と共産は否定的だった。日本維新と国民民主はおおむね賛同する考えだった。ただ、立民の泉代表の言い分は一理あると思った。北朝鮮の弾道ミサイルを念頭にして、「今の時代は発射台付き車両からミサイルを射出するわけで、動かない基地を攻撃したところで抑止できるのか」との問題提起だった。

   確かに、北朝鮮が去年9月15日に発射した弾道ミサイルは移動式だった。北朝鮮の朝鮮中央テレビ(同9月17日付)は、弾道ミサイルは鉄道を利用した移動式ミサイル発射台から発射されたもので、その動画を公開した=写真=。安倍政権時代に北朝鮮の弾道ミサイルの発射予測を検知して事前に破壊する「敵基地攻撃能力」の保持が議論されていたが、この弾道ミサイルは敵基地攻撃の意味がなさなくなったことを示すものだった。だからと言って、すべての弾道ミサイルが移動式ではない。「敵基地攻撃能力」を有したほうがよいのではないだろうか。用心するに越したことはない。

   日本気象協会の予報(10日付)によると、あさって12日から14日にかけて、冬型の気圧配置が強まり、日本海側は雪。積雪が急に増えたり、猛吹雪となるおそれがあるという。あのJPCZ(日本海寒帯気団集束帯)がまたやってくる。用心するに越したことはない。

⇒10日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

☆「極超音速ミサイル」をどこに向けているのか

   北朝鮮がきのう5日に打ち上げた弾道ミサイルは「極超音速ミサイル」だったとメディア各社が報じている。この型のミサイルは去年9月28日にも日本海に向けて撃ち込んでいる。再録になるが、このブログで当時のことをこう記した。

                   ◇

   労働新聞Web版(2021年9月29日付)によると、打ち上げたのは新開発の極超音速ミサイルだと写真付きで掲載している。「국방과학원 새로 개발한 극초음속미싸일 《화성-8》형 시험발사 진행」の見出しの記事=写真=によると、極超音速ミサイルの名称は「火星-8」。北部のチャガン(慈江)道から発射した。金正恩党総書記の側近のパク・チョンチョン党政治局常務委員らが立ち会った。

   記事では極超音速ミサイルについての詳細な記載はない。「令和2年版防衛白書」によると、アメリカや中国、ロシアはすでに開発していて、弾道ミサイルから発射され、大気圏突入後に極超音速(マッハ5以上)で滑空飛翔・機動し、目標へ到達するとされる。弾道ミサイルとは異なる低い軌道を、マッハ5を超える極超音速で長時間飛翔すること、高い機動性を有することなどから、探知や迎撃がより困難になると指摘されている。

   また、記事では極超音速ミサイルの開発について、2021年1月5-12日で開催した朝鮮労働党第8回党大会で提案された戦略兵器開発(5ヵ年計画)におけるトップ5の主要なタスクの一部と位置付けている。確かに、この8回党大会で金総書記は、アメリカを「最大の主敵」「戦争モンスター」と呼び、より高度な核技術の追求などを通じて、アメリカの脅威に対する防衛力を絶えず強化する必要があると述べた。核兵器の小型・軽量化と大型核弾頭の製造推進、1万5000㌔射程内の戦略的目標に命中させ破壊する能力の向上を目指す方針も表明。固体燃料を用いる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と原子力潜水艦の開発、衛星による情報収集能力強化にも言及していた(2021年1月9日付・BloombergニュースWeb版日本語)。

   北朝鮮は各地の代表からなる党最高人民会議を9月28日からピョンヤンで開催している。ということば、打ち上げた極超音速ミサイルは、同月11・12日の長距離巡航ミサイル、15日の移動式ミサイルの発射と合わせて、戦略兵器開発は順調に進んでいるとの党幹部向けのアピールの狙いもあるのかもしれない。

   それにしても、日本の防衛システムは北朝鮮が次々と開発を進める戦術兵器に対応できるのか。弾道ミサイルは楕円軌道を描きながら標的の上に落ちてくるので迎撃が可能とされている。が、極超音速ミサイルは上下左右に飛び方を変えながら標的に向かうので迎撃が困難とされる。極超音速ミサイルの実用化までには時間がかかるとしても、日本の防衛システムが翻弄されることだけは間違いない。

                  ◇

   今回の極超音速ミサイルは音速の5倍の速さで飛行したと報じられている。去年9月の火星-8は音速3倍だったとされるので、技術を高めているとも言える。国連食糧農業機関(FAO)と国連児童基金(UNICEF)がまとめた報告書「2021アジア・太平洋地域の食糧安保と栄養概観」によると、北朝鮮は住民の42.4%が栄養不足と集計されている。極超音速ミサイルはどこに向けているのか。

⇒6日(木)夜・金沢の天気      はれ時々くもり

★「日本海の脅威」ロシアの軍用船漂着、北の弾道ミサイル

★「日本海の脅威」ロシアの軍用船漂着、北の弾道ミサイル

   前回のブログの続き。きのう4日午前8時30分ごろ、能登半島の尖端、珠洲市真浦町の海岸に船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いているのを住民が見つけ、海上保安庁に連絡した。船体にはロシア語が書かれている。能登海上保安署では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ているという(4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。きょう漂着船を実際に見に行ってきた。

   現地に到着したのは午前11時45分ごろ、金沢から2時間ほどかかった。現場は車が通行できない旧道のトンネルの近くにある。通行禁止の柵が設けられ、警察パトカー2台が見張っていた。そこで、トンネルの反対側の道路から入ることにした。その道路はがけ崩れ現場で、車は入れない。パトカーは配置されていなかったので、車を近くに置いて徒歩で現場に向かった。

   途中で道は土砂崩れで陥没していた。引き返そうかとも思ったが、思い切って山積みになった土石を登ってみた。すると、100㍍ほど先に漂着船が見えた=写真・上、5日午後0時5分ごろ撮影=。船体は岩の入り江のようなところにあり、高波で船体が岩に打ち付けられている。前日の新聞写真の船体よりもかなり崩れていて、船体そものが2つに折れているようにも見えた。この鉄製の漂着船の処分費用にはどれほどかかるのか。木造船とは違って、相当な税金が使われるのだろう。日本海のごみ問題を考えてしまう。

   きょうはこの海の向こうでも大変なことが起きていた。北朝鮮が日本海に向けた弾道ミサイルを発射したのだ。防衛省公式ホームページによると、北朝鮮はきょう午前8時7分ごろ、内陸部から弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に発射した。落下地点は排他的経済水域(EEZ)外と推定される。航空機や船舶からの被害報告などは確認されていない。去年10月19日にも北朝鮮は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)を、9月には11・12日に長距離巡航ミサイル、15日に鉄道線路での移動式ミサイル=写真・下、朝鮮中央テレビ動画=、28日に極超音速ミサイルを発射している。

   その脅威は狙いを定めて発射していることだ。弾道ミサイルを撃ち込む標的の一つが能登半島だ。2017年3月6日、北朝鮮は「スカッドER」と推定される弾道ミサイルを4発発射し、うちの1発を能登半島から北に200㌔の海上に着弾させた。半島の先端・輪島市の高洲山(567㍍)には航空自衛隊のレーダーサイトがある。その監視レーダーサイトの目と鼻の先にスカッドERが撃ち込まれた。

   ロシアの軍用船の漂着も北朝鮮の弾道ミサイルも海の向こうからの脅威だ。これらをなぜ外交問題としないのか。

⇒5日(水)夜・金沢の天気     くもり

☆地震と漂着船 漂う不気味さ

☆地震と漂着船 漂う不気味さ

   きょう新年の初詣に白山比咩神社(白山市)に行ってきた。「ことし1年、無事でありますように」と祈った。このところ地震と漂着ごみの不気味な動きが続いている。5日前の大晦日の午後2時時52分ごろ、能登半島の尖端を震源とする震度3、マグニチュード4.2の揺れがあった。金沢地方気象台によると、2021年1月から12月までの1年間で震度1以上の地震が70回以上も発生している。9月16日には震度5弱の地震もあった。不気味だったのは、9月29日に能登半島沖が震源なのに太平洋側が揺れた「異常震域」の地震があった。震源の深さは400㌔、マグニチュード6.1の地震に、北海道、青森、岩手、福島、茨城、埼玉の1道5県の太平洋側で震度3の揺れを観測した。

   これは人為的な原因によって誘発される「誘発地震」か、と考え込んでしまった。というのも、北朝鮮が同じ9月の15日正午過ぎに弾道ミサイル2発を発射、その1発が能登半島沖の舳倉島の北約300㌔のEEZに落下した(同月15日・防衛大臣臨時会見「北朝鮮による弾道ミサイル発射事案」)。この落下地点と29日の震源が近かった。不気味だ。

   そして、寒風吹きすさぶ冬の日本海から漂着船が流れ着いている。きょう4日午前8時30分ごろ、珠洲市真浦町の海岸で、船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いていると住民から海上保安庁に連絡があった。船体にはロシア語が書かれている。能登海上保安署では、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ているという(4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。では、ロシアは日本海でなぜ、どのような理由で射撃訓練をしたのか。これも不気味だ。

   このほかにも、先月だけでも輪島市、かほく市、珠洲市、志賀町の海岸に木造船や船の一部が相次いで漂着している。ハングルで数字や文字が書かれていて、北朝鮮の木造船の可能性があると報じられている。不審な人物や遺留品などはいまのところ見つかってはいない。

   能登半島の沖合には北朝鮮の木造船がよく流れて来る。大陸側に沿って南下するリマン海流が、朝鮮半島の沖で対馬海流と合流し日本の沿岸に流れてくる。ロシアや北朝鮮の沖合で難破した船や、海に廃棄された産業や生活ごみなどが漂着する。日本海に突き出た能登半島は近隣国の漂着ごみのたまり場の一つなのだ。

⇒4日(火)夜・金沢の天気     あめ

☆「T・K生」と「安江良介」のこと

☆「T・K生」と「安江良介」のこと

   メディア各社が韓国の軍人出身政権時代に岩波書店の月刊誌『世界』で民衆への弾圧を告発する「韓国からの通信」の記事を書いた「T・K生」こと、池明観(チ・ミョングァン)氏が1日、97歳で死去したと報じている。学生時代に『世界』の編集長だった安江良介氏に「T・K生は誰ですか」と無謀なインタビューをしたことを思い起こした。

   東京の大学の部活では弁論部に所属していた。国政や国際的な時事ネタをテーマに10分ほどにまとめて弁舌する。論理と調査と統計に裏打ちされた弁論の手法をたたき込まれた。当時、自身のテーマの一つが韓国の政治情勢だった。きっかけは弁論部に入る1年前の1973年の8月8日に起きた金大中拉致事件。千代田区のホテルにいた韓国の民主活動家、金大中氏が拉致されて5日後にソウルの自宅で軟禁状態に置かれていたことが発覚した。「韓国からの通信」は、当時の韓国の民主化を求める知識人の動きや民衆の声をリアルに伝えていた。

   大学2年か3年のころだった。弁論部出身の先輩の新聞記者からのアドバイスで、安江良介氏にインタビューを電話で申し込んだ。安江氏は金沢市の出身で、金沢大学卒業後に岩波書店に入社という経歴だったので、自身も金沢から東京にやってきたと伝えると、大学の講演会の講師に招かれているのでその時に面談しようと快く応じてくれた。日時は記憶にないが、講演の終了後に講師控室に行き、冒頭の質問をした。立ち話でのインタビューだったが、安江氏は「匿名だから記事が書ける。それ以上は話せない」との趣旨の返事だった。

   「韓国からの通信」は1973年5月号から88年3月号までの15年間掲載された。安江氏はその間の編集長だった。「韓国からの通信」の連載が始まって間もなく金大中事件が起き、当時の韓国政権に対する日本の批判世論が高まっていた。安江氏は別の顔をもっていた。1967年から70年まで当時の美濃部東京都知事の特別秘書も務めていた。68年に東京都は朝鮮学校を各種学校として全国で初めて認可するが、それを知事に進言したのは安江氏だった。

   池氏がT・K生だったことを明かしたのは2003年だった。1970年から韓国の女子大学で教授を務め、民主化運動を進めるが、72年に日本に来てその後20年間亡命生活を送ることになる。朝日新聞Web版(1日付)によると、「韓国からの通信」のもとになった手記や資料は、日本のキリスト教関係者らの協力で韓国から秘密裏に持ち出されたもので、これをもとに池氏が執筆したとされる。

   安江氏と池氏との極秘の連携プレーで世に出されたドキュメントだった。一気に読める流れるような文体で、自身はT・K生は韓国人ではなく、日本人ではないかと思ったほどだった。池氏は1993年に帰国し、金大中政権の対日政策のブレーンとして、韓日文化交流会議委員長を務め、日本文化の開放に貢献した。安江氏は90年に岩波書店4代目社長に就任。いわゆる進歩的知識人に対して影響力を持ち続けたが、98年1月に62歳で逝去した。

★にっちもさっちも「スタック」、こんなとき

★にっちもさっちも「スタック」、こんなとき

   冬の積雪で怖いのは積雪路面での車の立ち往生だ。北陸での運転歴はもう40年以上もあるので、雪道での走行は心得たベテランだと自負はしているが、それでも立ち往生のワナにはまり込むがことがこれまで何度かある。ここ数年、車の立ち往生の場面を「スタック」とニュースなどで紹介されている。英語で「stuck」だ。

   ウエザーニューズWeb版(19日付)は「JPCZと呼ばれる発達した帯状の雪雲が流れ込む北陸や中部の山沿いでは、積雪の急増に警戒が必要です」と発表している。JPCZは大雪を警告するときに気象予報士が使う言葉だ。日本海寒帯気団収束帯(Japan sea Polar air mass Convergence Zone)のこと。シベリアからの寒気団が北朝鮮の最高峰である白頭山(標高2744㍍)にぶつかって分断されるが、その南の下で再び寒気団がぶつかって収束することで、帯状の雪雲の列となって北陸など日本側に流れ込んでくる。

   雪道での運転で気をつけているのが「わだち」だ。わだちに入ってしまい、車の底が雪上に乗り上げて立ち往生する。気が動転してアクセルかけるとタイヤが空転し、さらにくぼみは深くなる。こんなときにJAFに電話してもつながらない。つながったとしても半日は待たされる。大雪であちらこちらに立ち往生が起きているからだ。

   その時はスコップで車の底の雪を除き、他の人に後ろから車を押してもらいながら前進するとなんとか抜け出すことができる。北陸の人たちはその場面はよく理解しているので「お互いさま」という共助の気持ちで手伝ってくれる。(※写真・上は、路面凍結で車が立ち往生し、周囲の人たちが車を後ろから押して助けている様子)

   問題なのは高速道や国道などで前方にトラックが止まったままになり、列に巻き込まれることだ。ことし1月に福井県で豪雪となり、北陸自動車道で1500台の車がスタック状態に。車の中で昼夜を明かし、道路公団や自衛隊による救助を待った。自身はこうしたケースに遭遇したことはないが、考えることは、EV(電動自動車)はどの程度有効なのだろうか、ということだ。ハイブリッド車ならば電気と燃料で昼夜は持つが、EVの場合はヒーターを切って待つしかないのでは、と。

   スタックと並んで気をつけるのが、「ブラックアイスバーン」だ。路面に雪がなくても、路面が凍結している状態=写真・下=。アイスバーンはスリップ事故につながるので気をつけたい。ブレーキをかけても止まらずにそのまま滑ることもあるので、ゆっくりゆっくり時速20㌔ほどで走行するしかない。

⇒20日(月)夜・金沢天気    あめ

★懐かしい言葉よみがえる「イマジン」「天国に一番近い島」

★懐かしい言葉よみがえる「イマジン」「天国に一番近い島」

   懐かしい言葉が記憶によみがえってきた。ビートルズのファンだったので、ジョン・レノンが作曲した「イマジン」は学生時代によく口ずさんだ。きょうのニュースで、イギリスで開かれているG7の外相会談の夕食会がリバプールのビートルズ・ストーリー博物館であり、林芳正外務大臣は白いピアノに座り、「イマジン」を即興で演奏し、各国外相から拍手が送られた。林大臣は「誰かが『(ピアノに)座ってくれ、弾いてもいいよ』と、こういうふうに言われたものですから、せっかくイマジンの部屋であればということで、即興で『イマジン』を3分の1ぐらい」と。これまで国会議員らによる音楽グループ「Gi!nz(ギインズ)」などでもたびたびビートルズナンバーを披露していて、得意の音楽演奏で外交をアピールした(12日付・TBSニュースWeb版)。

   林大臣の即興ピアノをぜひ聞きたいと思い、動画を視聴したがピアノに向かう画像はあるが、弾いている動画がない。ほかのテレビメディアの動画ニュースもチェックしたが肝心の動画がない。BBCWeb版も検索したが、G7そのもののニュースがない。本人がほかの外相に気遣って、演奏動画は放送しないようメディア各社に申し入れたのかもしれない。それにしても、ビートルズ博物館で「ピアノ外交」デビューは見事だ。

   「天国に一番近い島」と言えば、南太平洋のニューカレドニアのこと。1966年に発刊され、ベストセラーとなった森村桂著『天国にいちばん近い島』だ。人生で初めて読んだ旅行記だったかもしれない。そのニューカレドニが中国に取り込まれるかもしれないとのニュース。フランス領のニューカレドニアで12日、独立の賛否を問う住民投票が行われた。同島はニッケルの世界有数の産地で、経済的な重要性も高いほか、フランス軍も基地を置き、インド太平洋戦略を進めるフランスにとって重要な拠点。一方、周辺の島しょ国では、中国がインフラなどさまざまな分野への投資を通じて関係を深めている。住民投票はこれまで2回行われ、いずれも反対が多数を占めていたが、2回目は賛成票の割合が増えた。投票の結果、独立することになれば、中国の影響力が強まる可能性があるという見方もあって、結果に世界の関心が集まっている(12日付・NHKニュースWeb版)。

   本の著者は、「ずっとずっと南の地球の先っぽに、天国にいちばん近い島がある」と父親から話を聞いて、貨物船に便乗してニューカレド二アを旅をする感動的な物語だ。読んで心が熱くなったのを覚えているが、残念ながら旅行したことはない。独立して中国に取り込まれることになるのか。開票結果が気になる。

(※写真は外務省公式ホームページより、日英外相会談の様子)

⇒12日(日)夜・金沢の天気      あめ