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☆大の里 横審「文句なし」横綱推薦 能登の被災地の励みに

☆大の里 横審「文句なし」横綱推薦 能登の被災地の励みに

日本相撲協会の諮問機関の横綱審議委員会(横審)はきょう26日、東京・両国国技館で定例会合を開き、満場一致で大関・大の里(石川県出身)を横綱に推薦すると発表した。横審の大関の横綱への推薦内規では「2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」とある。大の里は春場所(3月)で12勝3敗で並んだ優勝決定戦を制し、綱とりに挑んだ夏場所では14勝1敗の成績で大関として2場所連続の優勝を果たしている。28日に開かれる臨時理事会と名古屋場所の番付編成会議を経て「第75代横綱・大の里」が正式に決まる(メディア各社の報道)。

元衆院議員の大島理森横審委員長(78)は「審議委員のみなさまに諮問を頂戴する前に率直なご意見を、諮問を前提としてうかがいました。共通して2場所連続優勝。14勝1敗、まことに見事な成績であるし、何よりも受けて泰然とした相撲と、圧力ある全身の相撲と、プレッシャーの中で堂々とやり抜いた姿を見て、横綱を諮問に対して了とする。一致して文句なしのご意見だった」と満場一致での推薦を説明した(26日付・日刊スポーツ公式サイト)。

「横綱大の里 28日誕生 第75代 県勢52年ぶり」「大の里14勝で賜杯 28日横綱正式決定」。石川県の地元紙は、大の里の横綱昇進について連日報じている=写真=。石川県出身の横綱昇進は、輪島以来52年ぶりとなる。そして輪島が持っていた初土俵から横綱まで21場所という最速記録を、大の里は13場所に更新する。

メディア各社の報道によると、横綱の正式決定の後、大の里は同日、茨城県阿見町の二所ノ関部屋で昇進伝達式に臨む。29日には新しい綱を作る「綱打ち」が部屋で行われ、大の里の腰に巻かれる。30日は明治神宮での推挙式で、日本相撲協会の八角理事長から推挙状と横綱が授与。終了後、公の場で初めて土俵入りを披露する。

以下は自身の願いでもある。大の里は、3度目の優勝を果たした春場所千秋楽から5日後の3月28日、去年元日の能登半島地震で甚大な被害を受けた珠洲市と輪島市を慰問に訪れている。ぜひ、横綱になった姿を被災地の人たちに見せに能登を訪れてほしい。被災地の人たちにとって心強い励みになるのではないだろうか。

⇒26日(月)夜・金沢の天気   くもり

★大の里、全勝ならずも横綱に/震災復興へ一歩一歩

★大の里、全勝ならずも横綱に/震災復興へ一歩一歩

大相撲夏場所の千秋楽、これまで負けなしの大関・大の里(石川県出身)は横綱・豊昇龍に敗れた。全勝優勝はかなわなかったものの、初土俵から13場所での横綱昇進は年間6場所制となって以降、史上最速。8年ぶり日本出身の横綱だ。

話は変わる。去年元日の能登半島地震では金沢市でも最大で震度5強の揺れがあった。金沢の被災地を初めてめぐったのは翌日の2日だった。余震が続いていた。場所は同市田上新町の山沿いの住宅地。金沢大学の角間キャンパスの隣接地でもある。がけ崩れが起き、民家4軒が道路ごと崩れ落ちた=写真・上、2024年1月2日撮影=。さらに土砂災害が発生するおそれがあるとして、周囲の32世帯に避難指示が出された。

その後、何度か現地を訪れたが、きのう(24日)1年ぶりに行くと、がけ崩れが起きた場所は整備されていた=写真・下=。金沢市の広報などによると、行政は発生の約3ヵ月で道路を応急復旧し、民有地を買収した上で去年11月から復旧工事に着手していた。道路とのり面が新たに整備され、道路は竣工検査が完了次第、6月上旬にも一般車両が通行できるようになる。地震発生から1年半、金沢で被害の大きかったエリアがようやく復旧することになる。 

このほか市内では金沢城の石垣が一部崩れた。また、地盤沈下で道路との間に1.5㍍の段差が生じた橋や、亀裂が45㍍にわたって入った道路もある。さらに、山門や鳥居が壊れたままとなっている神社や寺が目立つ。行政では地域住民が管理する40の神社に対して鳥居の補修にかかる費用の4分の3を補助するための費用を予算化している。一歩一歩、震災から復旧が進む。

⇒25日(日)夜・金沢の天気  くもり

☆「大の里 横綱確実」地元はこの話題で持ち切り

☆「大の里 横綱確実」地元はこの話題で持ち切り

大相撲夏場所の14日目、すでに幕内優勝を決めている石川県出身の大関・大の里は関脇の大栄翔を押し出しで破り、14連勝とした。全勝優勝まであと一つだ。

県内は大の里の話題で持ち切りとなっている。地元紙はそろって、一面トップのぶち抜きの見出しで、「大の里 横綱確実」と、まるでスポ-ツ新聞のような派手な扱いだ=写真=。中でも、北國新聞のラッピング紙面では今場所13連勝すべての取組の写真を掲載し、「唯一無二 己を信じ 最速横綱」と手書きの文字を走らせている。この日が来るのを想定し、相当な準備を進めてきたのだろう。

きょう午前、新聞を買いにコンビニに立ち寄り、レジに新聞を置くと、店のおばさんが「大の里うれしいね、輪島の時もうれしかった」と声をかけてきた。輪島の横綱昇進は昭和48年なので、52年も前のことをよく覚えていると一瞬思った。同じくらいの年齢と見て、声をかけてくれたのかもしれない。「輪島より、大の里が強そうだね」と返事をすると、「えっ、なんで」と問い返してきた。

そこで、前回ブログで書いたことを話した。輪島は初土俵から21場所で横綱に昇進し、これまで最速記録だった。この記録を大の里が抜いて、13場所で横綱となると説明した。おばさんは「そんなこと知らんかった。ありがとう」と、レシートにキャンディーを1個おまけに添えてくれた。自宅から離れていて、初めて入ったコンビニだが、大の里は地域で共有できる話題だと実感した次第。

⇒24日(土)夜・金沢の天気 くもり時々あめ

★地元期待の大の里 千秋楽待たず優勝、横綱昇進へ

★地元期待の大の里 千秋楽待たず優勝、横綱昇進へ

地元・石川県出身の郷土力士、大の里はきょう(23日)も勝って13勝目を上げ、千秋楽を待たずに優勝を果たした。2場所連続で4回目だ。自身を含めて県民はワクワクしている。何しろ、場所後の横綱昇進が見えてきた。

きょうの取り組みをNHKで視ていた。相手は同じ大関・琴櫻。立ち合い、両腕を固めて当たっていき、そのまま得意の右を差して左も使いながら一気に攻めて、寄り切りで負かした。13日目に優勝が決まるのは平成27年(2015)初場所の横綱・白鵬以来10年ぶり、と報じていた。残り2日を勝って全勝優勝で横綱昇進なのか、期待が高まる。

NHKの報道によると、横綱審議委員会には、横綱に推薦する条件として「大関で2場所連続の優勝か、これに準ずる成績」という内規があり、これまで2場所連続で優勝した力士が横綱に昇進できなかった例はないようだ。なので、大の里は場所後の横綱昇進がほぼ確定ということになる。(※写真は、JR金沢駅に設置されている郷土力士の等身大パネル)

石川出身の相撲界のトップはこれまで2人いる。江戸時代の第6代横綱の阿武松緑之助(1791‐1852)と、第54代横綱の輪島大士(1948- 2018)だ。大の里にとって輪島はスピード出席の先輩でもある。現在の年6場所制が整った1958年以降で、輪島は初土俵から21場所で横綱に昇進し、これまで最速記録だった。この記録を大の里が抜いて13場所で横綱となる見通しだ。

横綱審議委員会は千秋楽翌日の今月26日に開かれる。大の里が横綱に推薦されれば、日本相撲協会は今月28日に番付編成会議と臨時の理事会を開き、横綱昇進を正式に決定することになる。

⇒23日(金)夜・金沢の天気  はれ

☆能登地震で新たな名所「絶景海道」 観光の最先端に

☆能登地震で新たな名所「絶景海道」 観光の最先端に

去年元日の能登半島地震の後の海岸線とめぐると、これまで見たことがないような絶景が広がっている場所がいくつかある。その様子はこのブログの2024年12月28日付「☆変わる光景、変わらぬ光景~2024能登地震・豪雨 その3~」でも紹介した。きのう(19日)のNHKの石川ローカルニュースによると、国が認定する「日本風景街道」への登録を目指す動きが報じられていた。以下、NHK公式サイトからそのニュースを引用する。

                  ◇

国土交通省などは能登地方の海沿いの道路を「絶景海道」として、地震で隆起した海岸を新たな名所とするなど復興の指針となるプランをまとめることになりました。

国土交通省や県、能登地方の7つの市と町は、能登半島地震と豪雨災害からの復興を進めるための検討会を立ち上げています。検討会では眺めのいい沿岸部を通る全長250㌔の道路を「能登半島絶景海道」として、道路の整備を中心に復興の指針となるプランを話し合っています。

先週開かれた2回目の会合では4つの方針が示され、地震によって隆起した海岸を新たな「絶景」として周遊ルートに組み込むことや道の駅のサービス機能を拡充させることが盛り込まれました。また、サイクリングルートとして自転車で走りやすい環境を整備することや国が認定する「日本風景街道」への登録を目指すことも盛り込まれました。

検討会はさらに具体的な取り組みについて話し合い、ことし秋ごろまでにプランをまとめることにしています。検討会の委員長を務める金沢大学の藤生慎教授は「地震による地形の変化で新たな観光スポットもできた。計画が実現すれば観光面で最先端の地域になると期待している」と話していました。

                   ◇

塩田村で知られる珠洲市仁江町と同市真浦町を結ぶ逢坂トンネルは土砂で埋まり、国土交通省はトンネルの海側沿いに全長1.7㌔の迂回路を造成した。この迂回路を走ると、地震で崩れた山の岩肌がむき出しになった光景が続き、まさに見る人を圧倒する。この光景はまさにジオパーク(Geopark)ではないだろうか。大地の造形物は何千年、何万年と歴史を刻みながら少しづつ姿を変えきたのだと実感する。上記の検討会の委員長のコメントにあるように、「観光面で最先端の地域」ではないだろうか。3千年に一度の地震と称される能登半島地震の跡をどう活かすか。

⇒20日(火)夜・金沢の天気   くもり

★「清く貧しく美しく」哲人政治家ホセ・ムヒカ氏逝く

★「清く貧しく美しく」哲人政治家ホセ・ムヒカ氏逝く

金沢の自宅庭にシャクヤクが花を咲かせている=写真・上=。「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」という言葉があるように、上品な女性の姿をイメージさせる。花言葉は「恥じらい」。とても優雅な花なのに、「恥じらい」とは、なぜと

思ってしまう。その由来は、シャクヤクは夜になると花を閉じる習性があり、その姿から「恥じらう様子」がイメージされたようだ。それにしても花は精気を放ち、心を和ませてくれる。

話は変わる。 「世界一貧しい大統領」として知られたウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ氏が今月13日、亡くなったと報じられている。享年89歳、2010年から15年まで大統領を務めた。4年半ほど前になるが、朝日新書『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』(2016)を読んでその人となりに感動し、このブログで書いたことがある。以下、再録する。

ムヒカ氏の言葉は日本人に心によく刺さる。「私が思う『貧しい人』とは、限りない欲を持ち、いくらあっても満足しない人のことだ。でも私は少しのモノで満足して生きている。質素なだけで、貧しくはない」。まさに人生訓だ。もう一つ。「生きていくには働かないといけない。でも働くだけの人生でもいけない。ちゃんと生きることが大切なんだ。たくさん買い物をした引き換えに、人生の残り時間がなくなってしまっては元も子もないだろう」

ムヒカ氏がよく使う言葉は「Nobody is more than nobody」(英訳、同書)。誰も誰かより偉いということはない、という意味だろう。近い響きが、福沢諭吉の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといへり」(『学問のすゝめ』)ではないだろうか。こうしたムヒカ氏の言葉はどこからくるのだろか。ウルグアイの軍政下で13年にも及んだ刑務所生活での悟りのなのだろうか。ちなみに福沢の「天は人の上に・・」はアメリカの独立宣言の一節「・・ that on all men are created equal on、・・」 を意訳したものといわれている。(※写真・下は、朝日新書『ホセ・ムヒカ 日本人に伝えたい本当のメッセージ』の帯から)

ムヒカ氏は世界に向けても言い放った。2012年6月、ブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」(Rio+20)での演説。「西洋の豊かな社会と同じような消費と浪費を、世界の70億、80億の人ができると思いますか」「発展することが幸福を損なうものであってはなりません。発展とは、人間の幸せの味方でなくてはならないのです」と。

この著書を読んで思い浮かべたのは「清貧」という言葉だった。大統領在任中は公邸ではなく、質素な農場の自宅で暮らし、収入の大半を貧しい人たちに寄付した。あえて「清く貧しく美しく」という生き方を実践した人物だった。冒頭のシャクヤクのような、人生の花を咲かせた。冥福を祈りたい。

⇒15日(木)夜・金沢の天気  はれ

★「探検型」クルーズ船 金沢港で座礁する 

★「探検型」クルーズ船 金沢港で座礁する 

今月8日付のブログで金沢港がクルーズ船でにぎわっていると紹介したが、今回はトラブルのことに触れる。地元メディア各社が第9管区海上保安本部の発表を伝えている。今月18日午後5時10分ごろ、金沢港の五郎島岸壁近くで、金沢海上保安部の職員が身動きが取れなくなっているクルーズ船を確認した。ニュージーランドの会社が所有する「ヘリテージ・アドベンチャラー」(8445㌧)で、金沢港から出港しようとしたところ、港内の浅瀬に乗り上げた。

金沢海上保安部が海難救助用のタグボートでクルーズ船を離礁させ、同6時53分に同港五郎島岸壁に接岸した(※写真は、20日午後1時30分ごろ撮影)。乗客126人と乗員86人にけがはなかった。船体に目立った損傷はなく、また、油の流出などは確認されていない。金沢港内でのクルーズ船の事故は初めてという。金沢海上保安部は、フランス国籍の60歳の男性船長から話を聞くなどして、当時の状況を調べている(メディア各社の報道)。

それにしても、これまで入港したクルーズ船に較べると、コンパクトサイズの船だ。幅は全長は123㍍となっている(一般社団法人「金沢港振興会」公式サイトの資料より)。今月8日付で紹介したクルーズ船「MSCベリッシマ」(17万1598㌧・乗客定員4386人)は全長316㍍だった。そして、寄港地もじつにコンパクトだ。大阪から広島、長崎、蔚山(韓国)、境などをめぐり金沢に。そして、金沢から境、萩、蔚山、広島、大阪へと逆戻りするルートだ。運航するのはニュージーランドの「ヘリテージ・エクスペディションズ社」。

ネットで調べてみると、このヘリテージ・アドベンチャラーは「本格的な探険クルーズで比類のない基準を設定」とあり、北極の最北端と南極の最南端への航行も行っているようだ。きのう20日に撮影した写真をよく見ると、船の上には黒いゴムボートや小型船などが搭載されているようにも見える。探検型のクルーズ船なのでコンパクトサイズに、そして小型船でさらに奥地まで入って探検するというコンセプトなのだろうか。

クルーズ船にもいろいろ個性があって面白いと思った次第。それにしても、もし南極や北極で今回のように座礁したらどうなるのだろうか。タグボートが駆けつけてくれるのだろうか。

⇒21日(月)午後・金沢の天気 はれ

☆桜散らす春の嵐 トランプ関税は「終わりの始まり」なのか

☆桜散らす春の嵐 トランプ関税は「終わりの始まり」なのか

金沢で風雨が吹き荒れている。気象庁によると、寒冷渦がきょう15日にかけてに西日本から東日本に進み、この時期としては強い寒気が流れ込んでいる。近所の神社ではこの風雨で桜の花が舞い散り、境内は桜の花びらの絨毯のようになっていた=写真は金沢市の地黄八幡神社、午前11時ごろ撮影=。まさに桜散らす春の嵐だ。きょうが桜の見納めとなりそう。

話は変わる。どこか似たようなストーリーだ。韓国の尹錫悦大統領が発した「非常戒厳」の宣布(2024年12月3日)とアメリカのトランプ大統領が発した「相互関税」のことだ。似たようなストーリーのその1は「いきなり」と「急ブレーキ」だ。尹氏は政府の方針に反対し続ける最大野党「共に民主党」を国政をマヒさせる「反国家勢力」と指弾し、戒厳令を出して国会などに軍や警察を投入した。国会が2時間半後に戒厳令の解除を要求する決議案を可決し、その後に解除された。

トランプ大統領が仕掛けた相互関税という「貿易戦争」もいきなりで、世界的にショックを与えた。カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、アメリカの貿易赤字額が多い60ヵ国・地域に適応する上乗せ税率で構成される関税で、日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ氏は上乗せ税率を中国を除いて90日間停止すると発表した。当面はベースラインの10%を適用する。それにしても、発動した直後に急ブレーキだ。この背景には、アメリカ国債の投げ売りなど、金融市場が不安定になったことが理由とみられる。この関税をめぐって、アメリカだけでなく各国の株式市場が乱高下するなど世界経済は大混乱に陥った。

似たようなストーリーのその2は「終わりの始まり」だ。尹錫悦氏の非常戒厳の宣布をめぐり、憲法裁判所は今月4日、弾劾訴追された尹氏の罷免を8人の裁判官の全員一致で決定した。憲法裁は、戒厳令は違憲で国会に対する軍の投入などについても違法かつ重大だと認めた。尹氏は即時失職し、60日以内に大統領選が行われる。大統領が弾劾・罷免されたのは2017年3月の朴槿恵氏以来2人目となった。

トランプ氏の「終わりの始まり」は国民の信頼を失ったことだ。今月2日に相互関税をかけると公表したとき、トランプ氏は「2025年4月2日はアメリカの『Liberation day(解放の日)』として永遠に記憶される」と演説し、関税実施の大統領令に署名した。それが90日間の停止となった。アメリカの政治的評価とすれば、これは「ブリンクマンシップ(brinkmanship)の失策」と映るだろう。ブリンクマンシップは「瀬戸際外交」と訳され、たとえば核兵器の使用も辞さないという印象で圧力をかけて外交交渉などで優位に立とうとする政治手法を指す。今回の貿易戦争ではブリンクマンシップで強気に出たトランプ氏が「いったん中止します」と振り上げた拳(こぶし)を下したのだから、アメリカ政治としては失策と映る。

関税措置をめぐり、今月17日から日本とアメリカの交渉がワシントンで始まる。トランプ氏が仕掛けた貿易戦争、これからどう展開していくのか。春の嵐は当分やみそうもない。

⇒15日(火)午後・金沢の天気 風雨

★「天空の城」のように夜桜に浮かぶ金沢城 世の騒々しさとは別世界の風景

★「天空の城」のように夜桜に浮かぶ金沢城 世の騒々しさとは別世界の風景

きのうは夜桜を見学に金沢城に出かけた。前回(きのう)ブログでは午前8時ごろに撮影した金沢城石川門の櫓と桜だったが、同じ場所の夜の風景はまったく異なる=写真=。撮影は午後7時ごろだったが、ライトアップされた金沢城が桜の満開の上に浮かんで見え、まるでアニメ映画『天空の城ラピュタ』のようなイメージだ。そして、夜の見物客が昼間より圧倒的に多い。金沢城石川門と隣接する兼六園の観桜期における無料開園は夜間の見学(午後9時30分まで)も可能となることから、夜の兼六園を見るために訪れる市民や観光客が多いのだろう。ちなみに、無料開園は当初4月2日から8日までだったが、ソメイヨシノの満開が遅れたことから今月13日まで延長となっている。

話は変わる。おさらいになるが、アメリカのトランプ政権による相互関税は、カナダとメキシコを除くほぼ全ての国・地域に適用する一律10%の基本税率と、そのうちアメリカの貿易赤字が大きい約60ヵ国・地域に適用する上乗せ税率で構成される。相互関税は日本時間の9日午後1時すぎに発動した。ところが、発動からわずか13時間で、トランプ大統領は相互関税の措置を90日間停止すると発表した(メディア各社の報道)。

停止措置の対象となったのは、相互関税に対する報復措置をとらずに問題の解決に向けて協議を要請してきた日本などの国・地域に対して。ただし、一律10%の基本税率は実施される。発動したばかりの相互関税を90日間停止する判断の背景にいったい何が起きているのか。

「Bloomberg」web版日本語(10日付)などによると、この背景にあるのは、株式や通貨に加えて安全資産とされている国債まで売られる「トリプル安」がアメリカで起きているようだ。米国債はもともと安全資産とされ、経済危機時には世界マネーが入り込んで価格は上がる(国債利回りは下落する)。ところがこのところ売却のスピードが加速していてる。中国が関税への報復措置として米国債を売却しているとの可能性に言及する専門家の分析を紹介している。トランプ政権は、中国には追加関税を125%に引き上げると発表していて、両国のあいだの応酬はさらに激しさを増していくのだろう。

「トランプ関税」騒動は止まない。貿易戦争だけでなく、先のトリプル安のように株式や通貨、国債までもが攻撃材料となり、金融戦争へと展開していくのか。前回ブログでも述べた、1930年6月にアメリカが制定した高関税を導入する「スムート・ホーリー法」が世界貿易を停滞させ、世界恐慌をさらに拡大するという逆効果を招いた。その二の舞となるのか。

⇒10日(木)夜・金沢の天気     あめ

☆どうなる世界経済の行方 「トランプ関税」の衝撃

☆どうなる世界経済の行方 「トランプ関税」の衝撃

金沢の満開桜の風景のシンボルと言えば、金沢城と兼六園を結ぶ石川門側からのアングルではないだろうか。満開のソメイヨシノはまるで雲のようで、お城はその雲に浮かぶような。そもそも桜とお城は相性がいいとされる。パッと咲いて、パッと散る桜の散り際の見事さを、潔い武士の人生にたとえた言葉が「花は桜木、人は武士」。武家庭園の兼六園には「ケンロクエン キクザクラ」という遅咲きの桜がある。ソメイヨシノが散るころに花を咲かせ、3回色が変わり、花ごとパサリと落ちる。桜の季節を最後まで楽しませてくれて、潔く花の命を終わらせる。花の落ち方に美学を感じた金沢の武士たちに愛された桜だ。(※写真・上は、ソメイヨシノと金沢城石川門の櫓=9日午前8時ごろ撮影)

話は変わる。貿易赤字の多い国からの輸入品に対して課す「トランプ相互関税」の第2弾が発動した。日本時間できょう9日午後1時1分、日本の製品には24%の関税が課される。すでに自動車に対しては25%の追加関税が日本時間の3日に発動し、乗用車は27.5%、トラックは最大50%となっている。一連の追加関税の措置は日本だけでなく、世界60ヵ国余りに及んでいて、世界経済への打撃は必至だろう。

とくに狙い撃ちとなっているのは中国のようだ。中国がアメリカへの報復関税を8日までに撤回しなかったため、トランプ政権は対中関税をさらに50%追加し、合計の課税率は104%におよんでいる。それでも中国は「最後まで戦う」と引き下がらず、さらなる報復も示唆したことから、貿易戦争激化への様相となっている。(※写真・下は、ホワイトハウス公式サイトより)

トランプ政権が強気の相互関税を発動する法的根拠は「国際緊急経済権限法(IEEPA)」。IEEPAは、巨額の貿易赤字でアメリカの製造能力や国防産業の基盤が損なわれることが緊急事態に該当すると認定される。ただ、アメリカと関税には歴史がある。アメリカは1930年6月、当時の世界恐慌の経済の中で、国内産業を保護して高賃金を維持するため、高関税を導入する「スムート・ホーリー法」を発動した。アメリカが保護貿易に転じたことで、対抗上、各国も一斉に高関税を導入し、世界経済はブロック化が強まった。この後、世界貿易は停滞し、世界恐慌がさらに拡大するという逆効果を招いた。そして、第2次世界大戦へと向かうことになる。高校生の世界史の教科書に出てくる内容だ。歴史は繰り返すのか。

⇒9日(水)午後・金沢の天気    はれ