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☆高額献金めぐる旧統一教会の「深い闇」 どう断罪するのか

☆高額献金めぐる旧統一教会の「深い闇」 どう断罪するのか

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教団トップの韓鶴子総裁が23日、韓国の特別検察官によって政治資金法違反などの容疑で逮捕された(24日付・メディア各社の報道)=写真=。メディアによると、韓容疑者は2022年4月から7月、元教団幹部らと共謀し、教団に便宜を図ってもらう目的で尹前大統領の妻・金建希被告=斡旋収賄罪などで起訴=に高額のネックスレスなどを贈った疑いが持たれている。旧統一教会の問題についてこれまで何度かブログで取り上げた。解明されるべきはこの教団の日本での金集めの仕組みだ。これまでのブログから以下、再録する。

東京地裁はことし3月25日、文科省の解散命令請求を受けて、日本の旧統一教会に対して解散を命じた。安倍元総理の射殺事件(2022年7月8日)から端を発し、犯人が恨みを持っていたという旧統一教会に解散が命じられるという展開になっている。もう半世紀も前の話だが、自身も高校生のころにこの教団に洗脳されそうになった経験がある。

教団の霊感商法が社会問題となり、2009年2月に警視庁の摘発を受け複数の教団信者が逮捕されるという事件があった。その後も霊感商法は後を絶たず、全国霊感商法対策弁護士連絡会の記者会見(2022年7月12日)によると、1987年から2021年に連絡会などに寄せられた元信者らの被害件数は約3万4500件、被害金額は計約1237億円に上るという。これはあくまで被害総額であって、実際の献金はこの数十倍にもなるようだ。2023年7月3日付の共同通信Web版によると、韓総裁は同年6月に開催された教団内部の集会で、「日本は第2次世界大戦の戦犯国家で、罪を犯した国だ。賠償をしないといけない」などと発言していたことが音声データなどで分かった。

多額の献金は韓国の本部に集められた。それはどこに流れたのか。「文藝春秋」(2023年1月号)は「北朝鮮ミサイル開発を支える旧統一教会マネー4500億円」の見出しで報じている。旧統一教会と北朝鮮の接近を観察していたアメリカ国防総省の情報局(DIA)のリポートの一部が解除され、韓国在住ジャーナリストの柳錫氏が記事を書いている。旧統一教会の文鮮明教祖は1991年12月に北朝鮮を訪れ、金日成主席とトップ会談をした見返りとして4500億円を寄贈していた、と。

さらにDIA報告書では、1994年1月にロシアから北朝鮮にミサイル発射装置が付いたままの潜水艦が売却された事例がある。売却を仲介したのが東京・杉並区にあった貿易会社だった。潜水艦を「鉄くず」と偽って申告して取引を成立させていた。韓国の国防部は2016年8月の国会報告で、北朝鮮が打ち上げたSLBM潜水艦発射型弾道ミサイルは北朝鮮に渡った「鉄くず」潜水艦が開発の元になっていたと明かした。この貿易会社の従業員は全員が旧統一教会の合同結婚式に出席した信者だった。

高額献金をめぐる旧統一教会の「深い闇」をどう断罪するのか。断罪がなければまた繰り返される。

⇒24日(水)夜・金沢の天気   はれ

☆「落とされ」「利下げ」「陥没」 ニュース・ピックアップ

☆「落とされ」「利下げ」「陥没」 ニュース・ピックアップ

きょうネットや新聞でニュースをチェックすると、妙に「落とす」「下げる」という言葉が目に止まった。石川県の郷土力士である横綱・大の里は秋場所4日目(17日)で平幕の伯桜鵬に土俵際で突き落とされ、初黒星を喫した。相手を土俵際まで追い詰めながら、勝ち急いだのだろうか。伯桜鵬には2場所続けて金星を許したことになる。大の里にとって4日目は「鬼門」のようで、大関に昇進した昨年の九州場所以降の6場所で4日目は1勝5敗となった。きょう5日目(18日)は王鵬と対戦し、突き落としで4勝目を上げている。

次は経済。アメリカ連邦準備理事会(FRB)は17日開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で9ヵ月ぶりに政策金利を0.25%引き下げた。参加者による政策金利の見通し(中央値)によると、年内残り2回の会合で計2回の追加利下げを見込む。前回(6月)よりも利下げのペースが上がった。政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.0〜4.25%になった。

FRBの記者会見でパウエル議長は「(労働市場が)とても堅調だとはもはや言えない」と述べた。企業による雇用の勢いが弱まって失業率が上昇する懸念が強まったため、金融引き締めを緩める必要性が高まった。ただ、物価上昇率はFRBの目標水準を上回り続けており、引き締めの必要がなくなったわけではない。パウエル氏は「(雇用と物価という)両面のリスクを抱えた状況にあり、リスクのない道筋は存在しない」と説明し、今回の決定を「リスクを管理するための利下げ」と総括した(18日付・日経新聞Web版)。アメリカの利下げが日本経済にどう波及していくのか。

次は生活面。ことし1月に埼玉県八潮市で下水道管の損傷による道路陥没事故が問題となった。これを受けて、各自治体が古くて大きな下水道管を調査したところ、41都道府県の計297㌔で道路陥没につながる恐れがある腐食や損傷が進んでいることが分かった。このうち、1年以内の対応が必要となる「緊急度1」は72㌔で、石川県内では金沢市が4㍍、小松市で17㍍で見つかった。また、5年以内の対策が必要となる「緊急度2」は225㌔に及び、金沢市では8㍍あることが分かった(地元メディア各社の報道)。「落とされ」「利下げ」「陥没」。ネットと新聞を読んでいて、なんだか妙な気持ちではある。 

⇒18日(木)夜・金沢の天気   くもり

★金沢の名所「W坂」のシンボル「ケヤキの大木」倒れる

★金沢の名所「W坂」のシンボル「ケヤキの大木」倒れる

金沢という街にはいろいろ名所がある。兼六園や武家屋敷、忍者寺といった観光スポットのほかに、そこに住んでいる人しか知らない名所もある。その一つが「W坂」。「だぶるざか」と呼ばれているが、これは通称で、標識では「石伐坂(いしきりざか)」となっている。なぜ、W坂と呼ばれるようになったかというと、金沢出身の詩人で小説家の室生犀星が「美しき川は流れたり」と讃えた犀川に架かる桜橋の詰から寺町台へ上がる階段坂がある。この坂がジグザグ状になっていることから、W坂と呼ばれるようになった。

自身もかつて寺町台に住んでいたのでW坂を何度も上り下りしたことがある。石垣沿いの階段は60段ほどだが、傾斜は急だ。芥川賞作家の井上靖(1907-1991)がかつて旧制四高(金沢大学の前身)に通っていたころにW坂を上り下りした体験を小説『北の海』に記している。「腹がへると、何とも言えずきゅうと胃にこたえて来る坂ですよ」、「この辺で足が上がらなくなる」。この一節はW坂の途中にある井上靖の文学碑で紹介されている。そして、このW坂には地元の知る人ぞ知る言い伝えもある。「人とすれ違っても、決して振り向いてはいけない」と。振り向くとすれ違ったはずの人の人影が見えなくなる。そう、いまで言う「心霊スポット」でもあるのだ。

前置きが長くなった。このW坂のシンボルの一つは石垣から飛び出すように生えていたケヤキの大木だ。地元メディア「北國新聞」(17日付)によると、幹回り最大約1㍍、高さ15㍍のこの大木が15日午前0時40分ごろに倒れた。根元が腐敗していたようだ。けさ現地に行って見てみると、すでに倒木の片づけは済んでいた。ただ、根元を伐採した跡が残っていて、痛々しい光景のように思えた。(※写真・上の左側がケヤキの大木=2015年9月撮影。写真・下は倒れたケヤキの木の根元=17日午前7時撮影)

このケヤキの大木の下をくぐり街中に行く。そして、帰りもこの大木の下をくぐり寺町台に戻る。ケヤキの下から眺める街中も絶景だった。樹齢は200年近かったのではないだろうか。根元を眺めながら、この大木に感謝したい気持ちになった。

⇒17日(水)午前・金沢の天気   はれ

☆少数与党の「アリ地獄」から抜け出せるのか

☆少数与党の「アリ地獄」から抜け出せるのか

石破内閣の少数与党のことをこのブログで2回、「ハング・パーラメント」と「比較第1党」という言葉で取り上げたことがある。簡単に振り返ってみる。ハング・パーラメントは去年10月27日の衆院総選挙の結果を受けて、10月30日付「☆与党は過半数割れ『宙づり』状態をどう乗り切るのか」で使ったキーワードだった。以下。

「政策の実効性を確保するために『議会を解散して民意を問う』と石破政権は選挙に打って出たものの、与党の過半数割れとなった。このままでは何も決められない、いわゆる『宙づり議会』、ハング・パーラメント(hung parliament)の状態だ。この言葉は議会制民主主義の歴史が長いイギリスが発祥で、直近では2017年の総選挙で保守党が第1党を維持しながらも過半数割れとなり、宙づり状態に陥った。この時は、北アイルランドの地域政党の閣外協力を得て、何とか政権を維持し、その後2019年の総選挙で保守党が単独過半数を獲得した。日本の自民党もハング・パーラメントを乗り切るために、部分連合や閣外協力に躍起になっているようだ」(※写真・上は、衆院選で少数与党となり野党との連合について取り上げる各紙)

そして、比較第1党はことし7月20日の参院選の結果、1955年の自民の結党以来初めて衆参両院で過半数を割り込むことになったことを受けて、7月21日付「☆衆院に続き参院も少数与党に転落 能登では復興に寄せる期待」で使った。以下。

「石破総理はきのう夜のテレビ朝日の選挙特番で『比較第1党の議席をもらったことの重さもよく自覚しなければいけない』と述べ、キャスターから『(その言葉を)続投すると受け止めてよいか』と問われ、『けっこうだ』と答えた。これまで耳にしたことがなかった『比較第1党』は、議会の過半数には達しないが、議席数をもっとも多く有する政党を意味する言葉だ。続投の理由を問われ、石破総理は『敗北の責任を私が担っていく』と述べ、アメリカとの関税交渉や選挙期間中に訴えた物価高を上回る賃金上昇、地方創生、防災対策などをあげて、『きちんとした道筋をつけることは国家に対する責任だ』と語った」(※写真・下は、衆参両院の選挙敗北など理由にした石破総理の退陣表明を伝える各紙)

自身もこれまで少数与党にはそれほど違和感はなかったが、こうして振り返ってみると、少数与党による政権運営は至難の業であり、さらに党内から党首に対して不満が噴き出すプロセスが石破総理の辞意表明までの報道でじつによく見て取れた。

メディア各社の報道によると、自民党は石破総理(党総裁)の後継を選ぶ総裁選の日程を「22日告示、10月4日投開票」とする方向で最終調整に入ったようだ。ただ、少数与党というアリ地獄に陥っているので、誰が総理・総理になってもここから抜け出すのは至難の業ではないだろうか。イギリス保守党のような離れ業をやり切る政治家は自民にいるのか。

⇒9日(火)午前・金沢の天気   はれ時々くもり

★週明けは大雨と地震、円安と株高。そして次期総理は誰に

★週明けは大雨と地震、円安と株高。そして次期総理は誰に

不穏な週明けだ。金沢地方気象台は能登地方を中心に大雨洪水警報を出している。能登の入り口に位置する宝達志水町ではきのう7日夜の降り始めから午前6時までの雨量が77.5㍉に及んでいて、同町では町内の4つの地区140世帯352人に避難指示があった。さらにこれから、1時間に降る雨の量は多いところで50㍉と予想されることから、石川県と同気象台は土砂災害警戒情報を出して住民に注意を呼びかけている。

そして地震も起きた。気象庁によると、きょう午前8時24分に能登半島の尖端部分を震源とするとマグニチュード4.3の地震があった。震源の深さは10㌔で、輪島市と能登町で震度3の揺れが観測された。揺れは広範囲にわっていて、北陸3県のほか岐阜県、新潟県で震度2や1の揺れが観測されている。(※図は、日本気象協会「tenki.jp」公式サイトより)

週明けは政治と経済も動いている。石破総理はきのう官邸で緊急記者会見を開き、退陣する意向を表明した。これを受けて、きょうは円安・ドル高が進行している。外国為替市場では1ドル=148円台前半での取引だ。前週末の5日は、8月のアメリカの雇用統計が市場予想を下回ったことから、147円台まで円高が進んでいた。それが、石破総理の退陣による政局の流動化への懸念から円売りが進んだようだ。一方で、円安により輸出企業の業績が改善するとの期待が追い風となって日本株が買われ、前週末からの上げ幅は一時800円を超えた。株高については、「辞意表明を受け、次期政権で積極的な財政政策が進められるとの期待感から株が買われている」(日経新聞Web版)との見方もある。

週明けからの政局はどうなるのか。前回ブログでも述べたが、少数与党下では政権運営は難しい。自民党総裁に選出されても国会で総理に指名される保証はない。首班指名選挙や予算案、法案の成立には野党の協力が欠かせない。となると、次期の総理に誰が向くのか。TBS系列のJNNが行った電話での世論調査(9月6、7日、有効回答1030)で与野党の中から誰が次の総理にふさわしいか聞いたところ、同率で1位(19.3%)に並んだのは小泉農水大臣と高市前経済安全保障担当大臣だった(8日付・TBSニュースWeb版)。メディア各社の報道によると、次期の総裁選は10月上旬を投開票日とする案が浮上しているようだ。

⇒8日(月)午前・金沢の天気   あめ

☆石破総理が退陣表明 さらに続く少数与党の混迷

☆石破総理が退陣表明 さらに続く少数与党の混迷

きょう日中の金沢の最高気温は34度、そして新潟地方気象台はけさ大雨と雷および突風に関する気象情報を発表した。それによると、石川県と新潟県では、今夜からあす8日未明にかけて線状降水帯が発生して大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性があるとしている。晴れれば「猛暑残暑」、降れば「線状降水帯」、まさに異常気象が当たり前のように繰り返されている。

そして政治も。7月の参院選の与党大敗を受け、石破総理(自民党総裁)は続投か退陣をめぐって混迷していたが、きょう退陣の意向を表明した。午後6時から総理官邸で開かれた臨時記者会見をNHKの生放送で視聴した=写真=。2024年10月に総理に就任してから11ヵ月余りでの退陣表明。会見は質問込みで45分余りだった。

石破総理は会見の冒頭で「自民党の総裁の職を辞することとした」と述べ、辞任の意向を表明した。党則6条に基づく総裁選の前倒しの是非を問う手続きを進める必要はなくなったと説明した。自民党ではあす(8日)総裁選の前倒しの是非を決める予定で、所属議員から前倒しの要求の表明が広がっていたタイミングだった。その上で、「新総裁を選ぶ手続きを開始していただきたい」と述べた。

石破総理は「身を引くという苦渋の決断をした」と述べ、その理由について、「(総裁選を前倒しする)臨時総裁選要求の意思確認に進んでは、党内に決定的な分断を生みかねない」と説明し、党の分断回避を強調した。また、辞任を決めた理由としてアメリカとの関税交渉が合意に至ったことでトランプ大統領が大統領令に署名したことを挙げ、「1つの区切りがついた今こそがしかるべきタイミングであると考え、後進に道を譲る決断をした」と述べた。

記者からの質問で、次の総裁選には「出馬しない」と言明。また、衆院解散・総選挙を検討したのかと問われ、「いろいろな考えがあったことは否定しない」と明かし、「何よりも国民に対して政府の機能が停滞することがあっては決してならないということでこの判断に至った」と説明した。また、参院選後、すぐに辞任しなかったことで政治空白が生まれたのではないかと記者から問われ、「政治空白があったとは考えていない」「参院選が終わった時点ではアメリカとの関税交渉は大統領令が発出されることが決まっていなかった」と反論した。

また、看板政策の一つである防災政策に関して、「被災で苦しんでいる方々の負担を軽減したいとの思いで取り組んできた」と述べ、防災庁を2026年度に設置する意向を改めて示し、次の新総裁にバトンタッチしていきたいと言及した。

以下は憶測だ。辞意を表明した石破総理は清々した気分だろう。何しろ、与党の自民・公明両党は衆参両院ともに過半数を割る。なので、今年度の補正予算案や2026年度の予算案・税制改正関連法案については野党と合意し、成立させる課題に直面する。野党に足元を見られているだけに簡単ではない。バトンタッチされた次の新総裁の力量がまさに問われる。

⇒7日(日)夜・金沢の天気  くもり

★石破総理の発言に翻弄されるメディア 読売の検証記事から

★石破総理の発言に翻弄されるメディア 読売の検証記事から

ドル円相場で急に円安が進んでいる。きのう午前中は147円だったが、午後にかけて148円に、さらに149円に迫ろうとしていた。きょうも148円台後半で値動きしていた。この円の値動き誘引したのが政治情勢だ。自民党幹部の辞意表明で日本の政治が不透明になるとの見方から円売りが進んだようだ。

もう少し詳しく見てみる。自民党の森山幹事長は2日午後の両院議員総会で、7月の参院選で大敗した責任をとる形で辞意を表明し、小野寺政調会長や鈴木総務会長も辞任するとの意向が伝えられた。そして、自民党総裁の石破総理は総会で「地位にしがみつくつもりは全くない。責任から逃れず、しかるべき時にきちんとした決断をする」(メディア各社の報道)と語った。これが、日本の政治情勢に不透明感があると世界に伝わり、円売り・ドル買いにつながったようだ。

話は変わる。読売新聞はきょ3日付の1面で、7月24日付の1面で「石破首相退陣へ」と報じたことの検証記事を掲載している=写真=。それによると、石破氏は7月22日夜、日米関税交渉が合意に達した場合には「記者会見を開いて辞意を表明する。辞めろという声があるのなら辞める。責任は取る」などと周囲に明言したことを踏まえて報道に至った。しかし、報道の後に石破氏は「態度を一変させた」と指摘。「翻意する可能性への思慮が足りなかった」として「結果として誤報となったことを読者の皆様に深くおわびします」と検証記事で記している。

「態度を一変」「翻意する」ことの背景には石破氏の責任を取らない性格がにじんでいるのではないだろうか。「ヒゲの隊長」として知られる、前自民党参院議員の佐藤正久氏(元陸上自衛隊イラク先遺隊長)がテレビ番組(先月30日・ABC番組『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』)で面白いことを語っていた。2003年12月、イラク先遣隊を派遣する際の防衛庁長官は石破氏だった。当時の世論はイラク派遣反対の声が高まっていて、防衛庁の正門には反対デモが行われていた。派遣にあたって佐藤氏ほか多くの隊員は家族と涙の別れをして、多くの隊員が遺書を書いていた。出発に当たって石破長官は反対デモとのもめ事を避けるために先遣隊に(正門でなく)裏門から出なさい、と指示した。

その時、佐藤氏は「我々の名誉や誇りはどうなるんだ」と怒りを込み上げたそうだ。それを同席していた自民党議員が石破氏に猛反対し、裏門ではなく堂々と正門から出ることになった。デモ隊とのもめ事を回避するため、逃げの姿勢がこの一件で見えたという。そして、「責任を取らない」「トップの器ではない」と石破氏を批判していた。

前述した「態度を一変」「翻意する」こそ、まさにこの責任を取らない姿勢ではないだろうか。「誤報」と言うより、読売新聞は石破氏に翻弄されたのだろう。

⇒3日(木)夜・金沢の天気  くもり

☆国会議員の秘書給与詐欺事件 読売の誤報の背景には何が

☆国会議員の秘書給与詐欺事件 読売の誤報の背景には何が

新聞社の役割とは何だろう。今さらこのような問いを発すると識者から叱られそうだが、明確に答えた人を知らない。ただ一人、もう14年前だが、アメリカの週刊誌「ニューズウィーク」の元編集者スティーブン・ワルドマン氏がインタビューに分かりやすく答えていたことを覚えている。以下、2011年10月29日付・朝日新聞の記事からの引用。

「ニュースの鉱石を地中から掘り出す作業をしているのは今日でももっぱら新聞です。テレビは、新聞の掘った原石を目立つように加工して周知させるのは巧みだが、自前ではあまり掘らない。ネットは新聞やテレビが報じたニュースを高速ですくって世界へ広めるチカラは抜群だが、坑内にもぐることはしない。新聞記者がコツコツと採掘する作業を止めたら、ニュースは埋もれたままで終わってしまう」

新聞記者のニュース発掘の作業はたとえば、「夜討ち朝駆け」という言葉で言い表される。捜査ネタを発掘するために警察や検察関係者の自宅を夜、あるいは朝に訪れて取材する。関係者も庁舎内では言いにくいことも、自宅というプライベイトな場であればつい言葉の弾みで語ってしまうこともある。新聞記者は夜討ち朝駆けを繰り返しながら、捜査関係者との阿吽(あうん)の呼吸をつかんでいく。

読売新聞社は今月28日付の一面で、前日27日付の一面で日本維新の会の池下卓衆院議員が採用していた公設秘書2人について、東京地検の強制捜査が行われると報じたことに対し、記事は誤報で訂正しておわびしますと謝罪記事を掲載した=写真=。そして28日付の一面では維新の石井章参院議員が国から公設秘書の給与をだまし取っていた疑いがあるとして東京地検は国会議員会館の事務所や茨木県取手市の自宅を詐欺容疑で捜索したと報じている。読売新聞は27日付の記事で本来、石井章参院議員とすべきところを、池下卓衆院議員と取り違えて報道してしまった、というわけだ。間違えていなければスクープになっていた。

なぜこのような取り違えが起きたのか。以下、自身の憶測だ。読売の記者は26日の捜査関係者への夜討ち朝駆けで27日の強制捜査のネタを仕入れた。そのとき、イシイをイケシタと聞き違えたのだろうか。記者は原稿の締め切り時間に追われ無我夢中で書いたので、名前を確認する時間もなかったに違いない。一連の記事、おわび記事を読んでそんなことを思った。

⇒30日(土)夜・金沢の天気  はれ

★読売調査で内閣支持率が急上昇、ところで「防災庁」はどうなった

★読売調査で内閣支持率が急上昇、ところで「防災庁」はどうなった

内閣支持率が急上昇している。きょう付の読売新聞の世論調査(22-24日・電話調査・有効回答991人)によると、石破内閣について「支持する」との回答は39%で前回調査(7月21、22日)の22%を大幅に上回った=写真・上=。「支持しない」は50%で前回調査より17ポイント減ったものの、過半数を占めている。また、参院選の結果を受けて、総理は辞任すべきだと思うか、との問いには、「思う」が42%、「思わない」が50%だった。

朝日新聞(今月18日付)の世論調査(今月16、17日・電話調査・有効回答1211人)も同様の傾向を示していて、内閣支持率は36%で前回調査(7月26、27日)の29%を上回り、不支持は50%で前回調査より6ポイント減った。そして、参院選の結果を受けて辞めるべきだと思うか、との問いには、「辞めるべきだ」が36%、「その必要はない」が54%だった。朝日の調査について記した今月20日付のブログでも述べたが、衆参両選挙で自民が大敗を喫したそもそもの原因は裏金問題であり、自民党内の「石破降ろし」の動きは責任の転嫁ではないのか、というのが有権者の目線ではないだろうか。内閣支持率の上昇は石破氏へのある意味で同情票のように感じる。

ところで、有権者の一人として、「アレはどうなりましたか」と石破総理に尋ねたいことがある。防災庁の創設のことだ。自身が初めて耳にしたのは、石破総理が就任早々の去年10月5日に、元日の能登半島地震、そして9月の「記録的な大雨」の被災現場を輪島市を訪れ視察した。そのとき、インタビューに答え、「日本国中どこで何が起きても、同じ支援が受けられるよう内閣として尽力していく。そのための防災庁を創設する」と述べた(2024年10月5日付・NHKニュース)。その後、政府は12月20日に全閣僚が参加する「防災立国推進閣僚会議」の初会合を総理官邸で開催し、2026年度中の創設を目指すことを確認している。

ことし7月4日、参院選で党公認候補の応援のため能登空港を訪れた石破総理の演説=写真・下=を直に聴いた。石破氏は「世界有数の災害大国ならば世界一の防災大国にしなければならない」と述べ、事前防災と災害対応の司令塔となる「防災庁」の必要性について強調した。ただ、どこに本部を置くかなどの具体案はなかった。そして、参院選以降、防災庁構想は進展しているのだろうか。

新しい省庁の新設で思い起こすのが、東日本大震災や福島第1原発事故の発生翌年の2012年2月に発足した「復興庁」だ。設立時は「スーパー官庁」と位置付けられ、複数省庁にまたがる課題を「ワンストップ対応」で調整し、予算を含めた復興政策を一元的に統括することが主な役割だったが、13年を経てその役割は最終ステージの段階に入っている。石破氏が構想するのは復興庁の「後継庁」なのだろうか。総理肝いりの防災庁だ。国民に早くビジョンを示してほしい。

⇒25日(月)午後・金沢の天気  はれ

★内閣支持率が上昇、「石破降ろし」に対する有権者の同情か

★内閣支持率が上昇、「石破降ろし」に対する有権者の同情か

有権者の政治に対するこの思いをなんと表現すればよいのだろうか。石破総理が率いる自公政権は去年10月27日の衆院選、そして先月20日の参院選で大敗したものの、世論調査の内閣支持率が上がっている。今月18日付の朝日新聞の世論調査(16、17日に電話調査・有効回答1211人)の結果を読んで、少々驚いた。見出しは「首相辞任『必要ない』54%に増 内閣支持率上昇36%」とあった=写真=。

自身も先月24日付のブログ「★『信なくば立たず』 続投に執着する石破総理が失う求心力」で、「参院選で過半数を失ったにもかかわらず、比較第1党として『国政に停滞を招かない』と続投を表明。さらにアメリカとの関税交渉を理由に再び続投を表明した。なぜここまで執着する必要があるのかと有権者の一人として考え込んでしまう」と石破氏の政権執着を批判的に述べた。参院選からきょうで1ヵ月経ったが、政治は何も変わっていない。ただ、支持率が上昇しているのだ。

先の朝日新聞の世論調査は見出しにあるように、今回の内閣支持率は36%と前回調査(7月26、27日)の29%から上昇している。そして「参院選の結果を受けて、石破首相は首相を辞めるべきだと思いますか」の問いには、「辞めるべき」が36%で、前回41%から低下、「その必要はない」が54%で、前回47%から上昇し、過半数を占めた。政党支持率は自民20%と前回と同数値、公明は3%、前回4%だった。ちなみに、自民党支持層での「辞めるべき」は20%、前回は22%、「その必要はない」が76%、前回70%だった。

政党支持率は上がっていないのに内閣支持率が上がっていることをどう読めばよいのか。一つの見方として、参院選の敗北直後から高まってきた、いわゆる自民党内の「石破降ろし」にむしろ有権者は石破氏に同情を寄せているのかもしれない。そもそも衆院選、そして参院選の敗北の根底には「裏金問題」が尾を引いていた。この裏金問題に絡んで議員に対して、石破総理は即決感のある対応で方針を公表した。党の処分が継続中なら政治倫理審査会で説明した場合を除き非公認とし、不記載議員は公認する場合も比例代表への重複立候補を認めない、など。

衆参両選挙で大敗を喫したそもそもの原因は裏金問題であり、自民党内の石破降ろしは責任の転嫁ではないのか、という有権者の目線が石破氏には同情として注がれているのかもしれない。

⇒20日(水)夜・金沢の天気  はれ