⇒ニュース走査

★能登の二重被災で踏ん張る食品スーパー 地域の生活守り復興拠点を目指す

★能登の二重被災で踏ん張る食品スーパー 地域の生活守り復興拠点を目指す

  元日の震災と9月の記録的な大雨に見舞われた輪島市町野町をめぐった(今月5日)。地区で唯一のスーパーマーケット「もとやスーパー」が先月営業を再開したと報道されていたので、その様子を見に行った。元日の地震で被害を受けても休まずに営業を続けてきたスーパーだったが、9月21日の豪雨で近くを流れる鈴屋川が氾濫して街一帯が飲み込まれた。同29日に現地を見に行くと、店内の柱や壁には浸水の跡が残り、商品を陳列する大型の冷蔵棚などは横倒しになっていた。

  そのもとやスーパーに今月5日に行くと「復活オープン」の看板を掲げ営業を再開していた=写真・上=。中に入ると、卵や野菜、総菜や冷凍食品などが並んでいた=写真・中=。ただ、以前見た時より売り場面積が小さい。レジの店員に聞くと、「売り場を必要最小限にして、店内をキャンプ場にするようです」との返事だった。

  その店内キャンプ場を見せてもらった。もとやスーパーの店舗の3分の2に相当する500平方㍍を充てたスペースという=写真・下=。被災地の復旧に訪れた業者や支援ボランティア向けに用意したようだ。1人用テントや布団を備える。30人から40人が利用できるが、料金は取らないのだという。町野地域には復旧業者やボランティアが宿泊できる場所がなく、これまで他地域の宿泊地と町野との移動に時間がかかっていた。さらに、冬場になると積雪も想定されることから、屋内キャンプ場がベストと47歳の店主が企画したようだ。店主はクラウド・ファンディングでこう述べている。「被災し壊滅的な状況となった輪島市町野住民の多くの方々は家も車も失い、インフラも復旧していない現在、不自由な生活を余儀なくされています。その中で、私たち『もとやスーパー』は住民の方々の生活基盤であり心の拠り所であり続けると同時に、復興拠点にならなくてはならない、そう思っています」

  このスーパーにはちょっとした思い出がある。大学教員時代に学生たちと「能登スタディツアー」を企画し、ある年、近くの景勝地である曽々木海岸の窓岩の夕日を眺め、その帰りにもとやスーパーに立ち寄り食料を買い込んでいた。すると、わざわざ当時の店主が出てきてくれて、軽妙な能登弁で地域の歴史を語ってくれた。学生たちからは「語りが分かりやすく面白い」と評判だった。

  被災地の食品スーパーとして元日の地震後も営業を続け、住民を支えてきた。9月の豪雨で一時休業したが11月に営業を再開。来春には交流拠点としての整備も予定する。しかし、大雪で地区が再び孤立すればすべてストップする恐れがある。復旧を絶え間なく進めるためも、泊まれる環境を整える。被災地の必死の叫びのように聞こえる。

⇒10日(火)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

★「非常戒厳」が裏目に レームダック化したのか韓国・尹大統領

★「非常戒厳」が裏目に レームダック化したのか韓国・尹大統領

  韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領がこれほどレームダック化していたとは驚きだった。メディア各社の報道によると、尹氏は3日深夜の演説で「非常戒厳」を宣布すると発表した。韓国の憲法では、非常戒厳は戦時やそれに準じる国家非常事態に陥った際に大統領が宣言する。突然の発表に国会は混乱に陥った。尹氏は戒厳令をその後、6時間で解除したものの、政治家として瀬戸際に追い込まれた。ソウルで大規模な市民による抗議行動が起き、さらに最大野党「共に民主党」による尹氏に対する弾劾訴追手続きがなされた。近く開かれる国会で尹氏の真意が議論されることだろう。

  尹氏は2022年の大統領選で保守強硬派の候補として勝利し、同年5月に就任した。だが、今年4月の総選挙で野党が圧勝。政府として国会で予算案や法案を通すことができず、野党が通過させた法案に拒否権を発動する程度のことしかできない状況が続いていた。さらに、尹氏の夫人にまつわる汚職スキャンダルに見舞われている。高級ブランドのディオールのバッグを受け取ったとされる疑惑や、株価操作に関わったとされる疑惑だ(4日付・BBCニュース日本版)。  

  元検事総長の尹氏のかつてのイメージは、権力に遠慮することなく司法の刃(やいば)を向けてきたことだ。朴槿恵(パク・クネ)政権下での「崔順実(チェ・スンシル)ゲート」では朴前大統領を拘束起訴(2017年3月)。この実績により、前大統領の文在寅(ムン・ジェイン)大統領からソウル中央地検長に抜擢された。尹氏はさらに李明博(イ・ミョンバク)元大統領も拘束起訴。2019年6月に検事総長に任命されてから、矛先は文大統領の側近に向けられた。曺国(チョ・グク)前法務部長官の捜査を手初めに、蔚山市長選挙介入疑惑、月城原発経済性ねつ造疑惑など次々と捜査のメスを入れた。(※写真は、2022年3月に韓国の新大統領に選ばれた尹錫悦氏=韓国・中央日報Web版)
 
  権力と対峙してきた尹氏は「私は人(権力)に忠誠を尽くさない」という言葉を放って国民に知られるようなった。尹氏が大統領になったことで期待されていたのは、「法治国家」の確立ではなかっただろうか。ところが韓国では大統領に権力が集中している。戦時でもないのにその権力を行使して非常戒厳令を宣告したとなると、動機がなんであれ、自らがその権力に溺れ込んだと韓国国民は思い込んだに違いない。
 
⇒5日(木)夜・金沢の天気   あめ

★プラごみ国際条約ようやく合意へ 日本海沿岸国で汚染対策条約を

★プラごみ国際条約ようやく合意へ 日本海沿岸国で汚染対策条約を

  プラスチックごみによる汚染問題は世界各地で深刻化している。排出や廃棄を規制する国際条約づくりがようやく動き出した。けさのNHKニュースによると、プラスチックによる環境汚染の防止に向け初めてとなる国際条約の案をまとめる政府間交渉委員会が、今月25日から韓国・プサンで行われている。プラスチックごみの量は2019年には世界で3億5300万トンと20年で2倍以上に増えるなど深刻なことから、各国はプラスチックによる環境汚染を防ぐため国連環境総会(2022年3月)で法的拘束力のある国際条約を2024年中にとりまとめることを決議し、今回の政府間交渉委員会で条文案の合意を目指している。

  交渉委員会のバジャス議長は29日に新たな条文の素案を示した。この中で、生産量の規制については2つの選択肢を示した。1つはプラスチックの生産量を持続可能なレベルにするため世界的な削減目標を設け、各国が生産量や、目標達成のために行った対応を報告するというもので、もう1つはプラスチックの原料となる石油を産出する産油国などが規制に強く反対していることを踏まえ生産量の規制については条約に盛り込まないとしている。そして、プラスチック製品についてゴミとして散乱したり環境中に流出したりしやすいものや再利用やリサイクルが難しいものは各国が削減や禁止などの対応をとるといった内容も盛り込まれている。プラスチックの生産から廃棄までのライフサイクル全体で削減に取り組む方向では一致している。

  以下は、日本海側に住む一人としての希望だ。沿岸国の不法投棄をどう解決すればよいか、そうした条約の枠組みも併せてつくってほしい。たとえば、「地中海の汚染対策条約」とも呼ばれるバルセロナ条約は21ヵ国とEUが締約国として1978年に発効している。日本海にも沿岸各国との汚染対策条約が必要ではないだろうか。(※図は、日本海の海流の流れ。能登半島に沿岸国からの漂着ごみが流れ着く)

  データがある。石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)で、県内の14の市町の海岸で合計962個のポリタンクを回収した。そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。沿岸に流れ着くのはポリタンクだけではない。漁具や漁網、ロープ、ペットボトルなど、じつに多様なプラごみが漂着する。2022年にはロシア製の針つきの注射器が大量に流れ着いて全国ニュースになった。医療系廃棄物(注射器、薬瓶、プラスチック容器など)の不法投棄は国際問題だ。(※写真は、海の環境問題をテーマにしたインドの作家スボード・グプタ氏の作品「Think about me」=2021年・珠洲市の「奥能登国際芸術祭2020+」)

  なので、日本海の沿岸国である日本、ロシア、韓国、北朝鮮、中国の5ヵ国で汚染対策条約がつくれないだろうか。

⇒30日(土)午後・金沢の天気   あめ

☆トランプ・安倍は笑顔でゴルフ外交 石破総理は友好関係を築けるのか

☆トランプ・安倍は笑顔でゴルフ外交 石破総理は友好関係を築けるのか

  初の女性大統領か130年ぶりの返り咲きの大統領かと国際世論を煽ったアメリカ大統領選の審判が下った。共和党のドナルド・トランブ元大統領の当選が確実になり、2025年1月20日に第47代大統領の就任式を迎えると報道されている。トランプ氏の政治方針は「アメリカ第一主義と利益優先」だ。就任早々に外国製品に10%から20%、中国製品に60%の一律関税に着手するだろうし、日本には防衛費のさらなる負担増を求めてくるだろう。ロシアのウクライナ侵攻を巡っては、対ウクライナ支援を見直し、早期の和平仲介に乗り出すに違いない。各国の首脳はすでに選挙前から「トランプ詣で」に動き出している。

  トランプ氏との日米関係で思い出すのが、2019年5月26日付で総理官邸のツイッターが公開したこの写真。まるでお笑いコンビのようなこの2人は、当時の安倍総理(右)とトランプ大統領(左)。千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。同日のアメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士には、トロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と伝えている。

  安倍氏がトランプ氏とこのような友好関係を築くまでに念入りな作業があった。トランプ氏が大統領就任前の2016年11月、ニューヨークのトランプ・タワーの私邸を訪ね、1時間半におよぶ非公式会談を行っていた。就任前に私邸を訪れたことに、当時の海外メディアは「charm offensive」と皮肉っていた。charm offensiveは目標を達成するために意図的にお世辞や愛想をふるまうことを意味する。そして、2017年11月5日、大統領として日本の地を初めて踏んだトランプ氏は安倍氏とともに埼玉県でゴルフを楽しんだ。同年2月にはフロリダで初めてのゴルフ外交を行っていた。

  この笑顔の写真が撮影されるまでに、安倍氏は就任前のトランプ氏の私邸を訪ねて非公式会談を行い、それ以降3回のゴルフ外交を重ねていたことになる。トランプ氏は2016年の大統領選では一貫して「大統領に就任すれば、日本などアメリカ軍が駐留する同盟国に駐留経費の全額負担を求める」などと演説していた。当時の安倍氏はこれを新たな日米の緊張関係と読んでいたのだろうか。

  さて、石破総理はきょう7日午前、トランプ氏と5分間、電話で協議し祝意を伝えたとメディア各社が報じている。トランプ氏は「会って話をすることを楽しみにしている」と応じたという。はたして石破氏は安倍氏のような友好関係をトランプ氏と築けるかどうか。ちなみに、石破氏は現在ゴルフとは疎遠だが、高校時代は体育会ゴルフ部に所属していたようだ。

⇒7日(木)夜・金沢の天気     くもり

★北朝鮮のICBM発射は核実験の前触れ予告なのか

★北朝鮮のICBM発射は核実験の前触れ予告なのか

  ニュース速報が飛んできた。北朝鮮はきょう31日午前7時11分、北朝鮮内陸部から、少なくとも1発の弾道ミサイルを北東方向に向けて発射。弾道ミサイルは北海道・奥尻島の西方約200㌔の日本のEEZ(排他的経済水域)外の日本海に同8時37分ごろ落下した。飛翔距離は1000㌔、最高高度は過去最高の7000㌔を超えると推定される(31日・防衛省公式サイト、イメージ図も)。

  北朝鮮は去年12月18日にも奥尻島の方向に向けて弾道ミサイルを発射している。このときはICBM(大陸間弾道ミサイル)級のミサイルで、奥尻島の北西およそ250㌔のEEZ外の日本海に落下した。飛行距離は1000㌔ほど、最高高度は6000㌔超でおよそ73分間飛行した(2023年12月18日付・防衛省公式サイト)。今回の飛行時間は86分間(前回は73分間)の長時間だったので、今回もICBM(大陸間弾道ミサイル)級のミサイルと推測される。(※写真は、2022年3月24日に北朝鮮が打ち上げたICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版)

  では、なぜICBM級のミサイルを北朝鮮は打ち上げたのか。以下は憶測だ。軌道を高い角度で打ち上げて飛距離を抑える飛ばし方は「ロフテッド軌道」と呼ばれる。これを通常の軌道で発射すれば、搭載する弾頭の重さなどによっては飛行距離が1万5000㌔を超えてアメリカ全土が射程に入ることになる。つまり、アメリカを意識した発射だったのではないか。

  国連安保理は30日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに北朝鮮が派兵したことを受けて緊急会合を開催した。アメリカのウッド国連次席大使は「ロシアの支援のため(北朝鮮兵士が)ウクライナに入れば、北朝鮮兵は遺体袋で帰国する」と述べ、金正恩・朝鮮労働党総書記に「無謀で危険な行為の再考」を促した。多くの理事国から北朝鮮のロシア派兵は安保理決議違反にあたるとして批判が集中するなか、北朝鮮の金星・国連大使は派兵について直接の言及は避けつつ、「アメリカと西側の危険な試みによって、ロシアの主権および安全保障上の利益が脅かされたとみなした場合、必要な措置を取る」と述べた(31日付・メディア各社の報道)。今回の北朝鮮のICBM級ミサイルの発射は、この「必要な措置を取る」との言葉を裏付けするかのような脅しに思えてならない。

  そして、このニュースで別の憶測もよぎる、北朝鮮が核実験の準備を終え、11月5日のアメリカ大統領選の前後に実験を強行する可能性があるとの韓国国防省の見解が報じられている(31日付・メディア各社の報道)。とすれば、核実験の前触れ予告にICBMを発射したのか、と。きな臭さが一気に漂い始めている。

⇒31日(木)午前・金沢の天気    くもり

☆与党は過半数割れ「宙づり」状態をどう乗り切るのか

☆与党は過半数割れ「宙づり」状態をどう乗り切るのか

  内閣支持率は「危険水域」に近づいている。読売新聞の衆院選の結果を受けた緊急世論調査(28、29日)によると、石破内閣の支持率は34%で、内閣発足後の前回調査(今月1、2日)の51%から急落した。内閣不支持率は51%(前回32%)で、内閣発足から1ヵ月足らずで不支持が支持を上回った(29日付・読売新聞オンラン)。読売の調査で内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とよく言われる。ちなみに、岸田内閣が退陣を表明した8月の読売調査は支持率が24%、不支持率が63%だった。

  急降下した内閣支持率を見て、石破政権はいつまで持つのかと考えてしまう。政策の実効性を確保するために「議会を解散して民意を問う」と石破政権は選挙に打って出たものの、与党の過半数割れとなった。このままでは何も決められない、いわゆる「宙づり議会」、ハング・パーラメント(hung parliament)の状態だ。この言葉は議会制民主主義の歴史が長いイギリスが発祥で、直近では2017年の総選挙で保守党が第1党を維持しながらも過半数割れとなり、宙づり状態に陥った。この時は、北アイルランドの地域政党の閣外協力を得て、何とか政権を維持し、その後2019年の総選挙で保守党が単独過半数を獲得した。日本の自民党もハング・パーラメントを乗り切るために、部分連合や閣外協力に躍起になっているようだ。

  メディア各社の報道によると、自民と国民民主の幹事長と国会対策委員長があす(31日)国会内で会談する。政府が11月中のとりまとめをめざす経済対策で、国民民主が掲げる政策の一部を反映させる検討に入るとみられる。自民とすれば、2024年度補正予算案や25年度予算案について編成段階から国民民主に配慮することを持ち掛け、部分連合あるいは閣外協力を打診するのだろう。

  一方の国民民主の玉木代表は記者団に対し、自公との部分連立について改めて否定し、「政策本位でいい政策であれば協力するし、ダメなものはダメと言っていく」と語っている(28日付・メディア各社の報道)。また、閣僚を出さずに政権に協力する閣外協力の可能性についても、同様に「政策ごとにいいものには協力するし、ダメなものはダメと貫いていく」と述べるにとどめている(29日付・同)。

  与党は過半数割れのハング・パーラメント状態をどう乗り切るのか。衆院選後30日以内(11月26日まで)に特別国会を開き、新総理を選出することが憲法に定められている。

⇒30日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆与党過半数割れが今後もたらす「政治空白」と「経済空白」のWショック

☆与党過半数割れが今後もたらす「政治空白」と「経済空白」のWショック

  与党が過半数割れに陥った背景には有権者の信頼低下があることは言うまでもない。自民党派閥のパーティー収入不記載事件を受け、選挙では「政治とカネ」の問題に有権者の関心が高まっていた。それに輪をかけたのが、選挙期間中の「非公認2000万円問題」。自民党が非公認候補側に2000万円の活動費を支給した問題だ。これが致命傷になったのだろう。そもそも、石破総理就任から最短の「8日間」での解散も、有権者には理解されなかったのではないか。

  「なんで選挙なんかするんや、ダラくさい」。このブログで何度か取り上げたが、震度7の地震と記録的な大雨に見舞われた能登の有権者の雰囲気は、このひと言に象徴される。能登で何度も耳にした言葉だ。「ダラくさい」は能登の方言でばかばかしいという意味だ。誰のために、何のために選挙をするのかと問うているのだ。能登の被災地の人たちの率直な気持ちなのだろう。その気持ちが投票行動でも表れている。

  能登の人々の性格は律儀さもあり、「選挙に行かねば」は当たり前で、金沢市など都市部に比べて投票率が高い。ところが、今回、石川3区の投票率は62.5%と、前回2021年より3.5ポイント減少した。中でも、地震と豪雨の二重被害となった奥能登の輪島市では11.9ポイント減の58.9%、珠洲市では9.5ポイント減って62.0%だった。避難者が現地から離れていて、投票に行けなかったというケースもあったろう。それにしても、この減少率の高さは「ダラくさい」の気持ちがにじみ出ているように思えてならない。それでも都市部より投票率は高い。ちなみに、金沢市は49.5%だった。

  そして、能登は「自民王国」とも称されてきたが、今回、立憲民主が逆転した。前回(2021年)の衆院選では、自民の西田昭二氏が8万692票、立民の近藤和也氏は7万6747票で、その差は3945票だった。今回は近藤氏が7万7247票、西田氏は6万1308票と、その差1万5939票で近藤氏が挽回したのだ。近藤氏が小選挙区で勝つのは2009年以来15年ぶり。西田氏は比例で復活当選した。

  話は冒頭に戻る。石破政権は窮地に陥るのではないか。与党が過半数を割り、自民執行部の責任論が浮上するのは必至だ。懸念されるのは、選挙後に待ったなしで行われる予定の補正予算の編成だ。石破総理は去年の13兆円を上回る予算規模を選挙戦などでも明言していたが、政治空白が生じれば補正の成立時期が後ずれする。自民は国民民主などと政策ごとに協力する「部分的な連合」で政権運営を乗り切らざるを得ないだろう。ただ、野党側との協議は難航するのが常である。懸念されるのは国民全体に影響が降りかかる「経済政策の空白」ではないだろうか。

⇒28日(月)夜・金沢の天気     あめ時々くもり

☆罪を裁く人、不正を監視する人が罪を犯す 職業倫理失い「タガが外れた」日本人の姿

☆罪を裁く人、不正を監視する人が罪を犯す 職業倫理失い「タガが外れた」日本人の姿

  自身がまだ小さいころ、父親から「人を見たらドロボーと思え」と諭された。「世の中、悪いことをするヤツがいっぱいいる」と。もう60年以上も前のことだが、このところのメディア各社の報道に目を通していて、父親の言葉を思い出した。

  関東地方で頻発する押しかけ強盗もさることながら、驚いたのは裁判官による犯罪行為だ。金融庁に出向していた30代の男性裁判官が業務を通じて知った公表前のTOB(株式公開買い付け)情報などを基に株取引を繰り返していたことから、金融商品取引法違反(インサイダー取引)の疑いで証券取引等監視委員会の強制調査を受けた(今月19日付・メディア各社の報道)。また、不正な株取引の監視などを担う「日本取引所自主規制法人」(JPXR)の男性職員が未公開の企業情報を親族に漏洩しインサイダー取引に関与したとして、同じく証券取引等監視委員会の強制調査を受けた(きょう23日付・同)。罪を裁く人、不正を監視する人が不正を働いている。これは偶然なのか、あるいはプロが実利に動く時代に入ったのか。監視委では2人を東京地検特捜部への告発を視野に取引状況を調べているという。

  そして、教育の最前線にいる教職員が児童や生徒らに対し、わいせつ行為(セクハラ)をするという事例がここ数年頻繁に報道されている。これは特殊な事例だが、埼玉県教委は今月17日、20年前に勤務していた小学校の男子児童にわいせつな行為をしたとして、県教育局の女性職員(課長級)を懲戒免職とした。児童だった男性から県教委のホームページに情報提供があったことから発覚した(今月18日付・メディア各社の報道)。(写真は、ミケランジェロ作「最後の審判」)

  セクハラについては、就職活動を行う学生に対し、企業の人事担当者らが学生らに行うケースが多い。厚労省の調べによると、学生の4人に1人が就活ハラスメントを経験している。その内容は「性的な冗談やからかい」40%、「食事やデートへの必要な誘い」26%、「性的な事実関係に関する質問」26%などとなっている(令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」)。このため、厚労省では就活セクハラの防止を企業に義務付けすることを検討し、来年の通常国会で関連法改正案の提出を目指す。

  冒頭の「人を見たらドロボーと思え」の言葉はいま思えば実にリアルに思えてくる。職業倫理を失い「タガが外れた」現代日本人の姿がそこにある。

⇒23日(水)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

★能登半島地震 避難所で自販機壊し飲料を調達は罪なのか

★能登半島地震 避難所で自販機壊し飲料を調達は罪なのか

   このニュースを新聞メディアの報道で読んで、災害時における略奪行為なのか、あるいは生存のための正当な行為なのかなどと考えてしまう。地震が発生した1日夜、石川県立穴水高校(穴水町)に設置されていた自動販売機3台が避難した住民によって破壊され、飲料が持ち出された。自販機を管理する北陸コカ・コーラボトリング(富山県高岡市)は18日、石川県警に被害届を提出した(21日付・読売新聞)。

   同校には地震発生後、住民ら100人ほどが次々と避難してきた。午後8時ごろ、4、5人の男女が「緊急だから」と周囲に告げながら校内にある自販機を工具などでこじ開け、内部も破壊し、飲料を取り出して避難者らに配ったという。校長によると、校舎には当時、同校の教諭や事務員はおらず、自販機を破壊する許可は出していなかった。同校に設置されていた北陸コカ・コーラの自販機は、災害時には鍵で扉を開け、無料で商品を取り出せる「災害支援型」だった。鍵は学校が同社から預かり、事務室で管理していた。ただ、同校は指定避難所ではなく、避難住民には自販機が災害支援型などとは知らされていなかった(同)。

   穴水町は震度6強の揺れに見舞われ、20人が犠牲になり、270人余りが負傷、住宅1000棟が全半壊などの被害を受けている(20日午後2時現在・石川県まとめ)。震災が起きた時間帯は夕暮れ時でもあり、高校近くの住民は必至になって避難してきただろう。当時、同町でほぼ全域で停電と断水となった。自販機の破壊が起きた当時は避難者に対する救援物資などは届いてもいない。そもそも、同校は指定避難所ではなかったので、水や食糧などの生活必需品の備蓄品はストックされていなかった。あるのは自販機の飲み物だけだったのかもしれない。

   こうした被災の非常事態の下で自販機を破壊して飲み物を調達したことが、どのような罪に問われるのだろうか。器物損壊か略奪行為か、あるいは良心的な取得行為なのか。地元紙によると、北陸コカ・コーラは被害届を出したことについて、「罰したいわけではなく、自販機を破壊された以上、被害届を提出しなければならない」と述べ、「緊急時には壊さず、自販機に表示された問い合わせ先に連絡してほしい」とコメントしている(21日付・北國新聞)。

   同社が問い合わせ先に連絡をしてほしいと述べているものの、当時は電話やメールなどの情報インフラは壊滅的な状態で、連絡をつけれるような状態ではなかった。人の生死がかかった緊急時であり、水分を求め自販機を壊すことに罪の意識はおそらくなかっただろう。だから、壊した人たちは飲料を取り出して避難者らに配っている。

   北陸コカ・コーラは被害届を出したことについて「罰したいわけではない」としているので、一つ考えられることは、今後、避難所などで類似の出来事が起きることを抑制する意味合いがあるのではないか。そしてもう一つが、察するに自販機の損害保険を請求する手続きではないのか。

   今回のケ-スは避難所の中での行為が問われているが、街中のコンビニだったらどうか。明らかに災害に便乗した略奪行為として指摘されるだろう。

⇒21日(日)夜・金沢の天気    くもり時々あめ

☆能登半島地震 被災地で横行する便乗商法や火事場泥棒

☆能登半島地震 被災地で横行する便乗商法や火事場泥棒

   能登半島の知り合いに電話をした。70歳のおばさんが「ちきない」「ちきない」と連発していた。能登の放言で「疲れた」という意味だ。避難所生活、そして車中泊などを繰り返し、「もう体がもたん」と嘆いていた。もう一言発した言葉が「気つけんと」だった。注意しなければ、という意味だが、被災地に怪しげなブルーシート貼りの業者が来て、当初示した値段より高額な請求をするらしいとのうわさが広がっているようだ。

   おばさんの家も今回の震災で、屋根の一番上にある棟瓦の一部がはがれるなど屋根瓦に被害が出た。8日に町内の人たちとの助け合いでブルーシ-トを張ることができたが、その数日前に県外ナンバーのワゴン車から降りてきた見知らぬ中年の男から「被災地のために役立ちたい」と15万円で話を持ち掛けられ、断っている。この地域の別の家では、損壊した瓦の修繕で見積もりよりも高額な請求をされたところもあるとか。被災地では便乗商法が横行している。(※写真は棟瓦がはがれた住宅。記事とは関係がない)

   便乗商法だけでなく、窃盗事件も起きている。メディア各社の報道によると、珠洲警察署は17日、地震で半壊となった珠洲市内の住宅から模造刀などを盗んだとして、大阪市の37歳の男を窃盗容疑で逮捕した。警察が被災地をパトロール中、不審者の情報をもとに職務質問したところ、窃盗が発覚した。男は人命救助のために被災地を訪れたと説明しており、「持ち主の方に返すために家の中から持ち出した」と容疑を否認している。被害者の70代男性はすでに市外に避難していて、容疑者と面識はない。

   また、石川県警は5日、被災した輪島市内の民家から高級ミカン6個(時価約3千円相当)を盗んだとして、住居侵入と窃盗の容疑で愛知県刈谷市の大学生の男21歳を逮捕した。男は「ボランティアで来た」と供述している。身柄を金沢中警察署に移し所持品検査をしたところ、大麻を所持していたとして大麻取締法違反(所持)で逮捕された。液体が入ったカートリッジが見つかり、鑑定の結果、大麻と判明。吸引機も押収されている。本人は「私のものではない」と容疑を否認している。

   もちろん、便乗商法や火事場泥棒、大麻などはごく一部のボランティアと称する者たちの犯行なのだが、このままだと、被災地の人々に「ボランティアには気つけんと」のイメージが定着するのではないかと思うと、残念でならない。

⇒18日(木)夜・金沢の天気    あめ