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☆北のICBM発射と核実験はこのタイミングか

☆北のICBM発射と核実験はこのタイミングか

   朝鮮戦争は終わっていない。1953年7月にアメリカなど国連軍と中国・北朝鮮の連合軍が休戦協定に署名した。まもなく69年になるが、平和条約ではなく休戦協定であるため、韓国と北朝鮮は現在も形式上は戦争状態にあることに変わりない。

そうなると、アメリカ世論もアフガンのケースと同様にいつまで韓国に軍隊を駐在させる必要があるのかと撤退の声が高まる。北朝鮮の狙いはそこにあるのではないだろうか。

   前置きが長くなった。アメリカのバイデン大統領は今月20日に韓国を訪れ、尹錫悦大統領と会談し、22日に日本を訪れ、24日に東京都内で日米豪印(クアッド)首脳会合に出席する予定だ。CNNニュースWeb版日本語(5月18日付)によると、アメリカ情報当局の担当者の話として、北朝鮮は今後48~96時間のうちにICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験を行う準備を進めているとみられる。平壌近郊にある発射場の衛星画像から、過去の実験に向けた準備期間と同じ動きがみられるという。足場などの設置作業や燃料、車両や人員の動きを指すとみられる。北朝鮮は今月4日にICBMを発射している。また、豊渓里(プンゲリ)核実験場でも準備が進んでいるとみられ、今月中に地下核実験を実施する可能性もあると当局者は指摘している、と伝えている。

   一方、北朝鮮では新型コロナウイルスとみられる発熱症状の拡大が止まらない。北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」(18日付)は発熱者が相次ぎ、17日午後6時までの1日で、新たに23万2800人余りに症状が確認され6人が死亡したと伝えた。先月下旬以降の発熱者の累計は171万5900人余り、死者は62人に上っている(18日付・NHKニュースWeb版)。

   普通に考えれば、国内がコロナ禍でパンデミック状態にあれば、ICBM発射や核実験は人心を惑わすことにもなり中止するだろう。北朝鮮国営メディアは5月4日、7日、12日に発射した弾道ミサイルについて、3回とも公表を控えている。公表を控えてでも、ICBM発射や核実験は続けるということか。先月25日に「朝鮮人民革命軍」創設90年にあわせて軍事パレードを開催した金正恩総書記は「核戦力を最速ペースで強化・開発するため、措置を取り続ける」と表明している(4月26日付・BBCニュースWeb版日本語)。あさって20日の米韓首脳会談に向けて、か。朝鮮戦争は終わっていない。

(※写真は、ことし3月25日付・BBCニュースWeb版が「N Korea claims successful launch of ‘monster missile’ Hwasong-17」の見出しで報じた、全長23㍍の「モンスター・ミサイル」)

⇒18日(水)夜・中能登町の天気   はれ

☆熱病と飢え、ミサイル発射は断末魔の叫びか

☆熱病と飢え、ミサイル発射は断末魔の叫びか

   北朝鮮では「原因不明の熱病」が大流行しているようだ。NHKニュースWeb版(13日付)によると、北朝鮮は12日、4月下旬以降、発熱の症状があった人が全土で35万人余りに上り、これまでに18万人以上が隔離されたり治療を受けたりしていると明らかにした。12日だけで全土で1万8000人が発熱した。

   北朝鮮の労働新聞Web版(13日付)をチェックすると、「경애하는 김정은동지께서 국가비상방역사령부를 방문하시고 전국적인 비상방역상황을 료해하시였다」との見出しで、金正恩総書記が12日、国家緊急防止司令部を訪れ、感染状況について報告を受けたと伝えている。熱病によってこれまで6人が死亡しているが、うち1人から新型コロナウイルスが確認されたとしている。金氏は、首都圏の周辺で感染が同時に広がっていることから、これまでの予防体制に落ち度があったと認め、「最大非常防疫態勢」に移行すると発表。すべての市や郡などを封鎖するよう指示した。

   今ごろなぜと思うと、妙に納得できた。先日テレビのニュースでやっていた朝鮮人民革命軍の創設90周年記念の軍事パレード(4月25日)には大勢の人民が動員されていた。4月下旬から感染爆発ということなので、ひょっとしてそれはパレードの準備や練習で「三密」状態になり、感染拡大が一気に進んだのではないか、と推測した。

   北朝鮮は人口が2500万人とされる。これまでのニュースでも報じられているように、2年以上にわたって国境を封鎖し、食糧は限られていて多くの人々は栄養失調の状態にある。医薬品も不足し、医療制度そのものも貧弱とされる。最悪のケースを想定すると、ロックダウンによって多くの人々が自宅で瀕死の状態に追い込まれる可能性さえある。

   その一方で不穏な動きもある。北朝鮮はきのう12日午後6時28分ごろ、半島の西岸付近から3発の弾道ミサイルを東方向に向けて発射した。最高高度は約100㌔で、350㌔ほど飛翔し日本のEEZ(排他的経済水域)外に落下した(12日付・防衛省公式サイト「報道資料」)。今月10日に韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が発足して初めての発射となる。さらに、韓国の聯合ニュースWeb版(13日付)によると、韓国大統領室はきょう日、北朝鮮が7回目の核実験を行う可能性に関連し「核実験の準備はできているようだ。ただ、核実験の前に各種ミサイルの発射実験を行う可能性もあるのではないか」との見解を示した。

   国内では新型コロナウイルスとも推測される原因不明の熱病でパンデミックが起き、さらに飢えが広がる。そして、核実験と弾道ミサイルの発射だ。核・ミサイル開発に対する国連安保理の制裁により貿易制限はさらに続く。かの国の断末魔の叫びのようにも思える。

(※写真は、マスクをした金正恩総書記が12日、国家緊急防止司令部を訪れた様子=13日付・CNNニュースWeb版)

⇒13日(金)夜・金沢の天気    あめ

★直言連発のイーロン・マスク氏にお願いしたいこと

★直言連発のイーロン・マスク氏にお願いしたいこと

   EV大手テスラの経営者、イーロン・マスク氏の直言を世界が注目している。3月14日にツイッターの投稿で、「私はここにて、ウラジーミル・プーチン氏に決闘を挑む。懸けるのはウクライナだ」と表明。さらに、プーチン氏の公式英語アカウントにロシア語で「この決闘を受け入れるか」と問い掛けたことがニュースになった(3月15日付・AFP時事Web版)。マスク氏はインターネット通信衛星「スターリンク」の端末をウクライに提供し、ロシア軍の攻撃を受けている地域にネット接続環境を配備していることことから、「決闘宣言」の本気度が分かる。

   その後、マスク氏はツイッターの買収合意を取り付ける。BBCニュースWeb版(4月26日付)によると、ツイッターの取締役会はマスク氏による買収提案を受け入れることで合意。買収総額は440億㌦となる見込み。同社は上場廃止となるため、買収案について株主の承認を求め、買収手続きは年内に完了する見通し。マスク氏は「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、ツイッターは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町の広場だ」と意欲を示した。

   言論の自由を強調したマスク氏はさっそく動き出す。ツイッターで「永久凍結」とされているドナルド・トランプ前大統領のアカウントについて、凍結を撤回するつもりだと述べた(5月10日付・同)=写真・上=。2020年1月、大統領選に敗れたトランプ氏の支持者らによるアメリカ連邦議事堂への襲撃事件が起きた。トランプ氏が暴徒を「愛国者だ」などとメッセージを投稿したことから、ツイッターやフェイスブック、グーグルなど各社は公共の安全が懸念されるとしてトランプ氏のアカウントを相次ぎ凍結したのだ。

   凍結についてマスク氏は「倫理的に間違っており、全くおかしい」ものだと指摘。一方で慎重な物言いだった。「私はこの永久凍結を覆すつもりだが、まだツイッターを所有していないので、必ずやるというわけではない」と買収完了後を強調した(同)。確かに、トランプ氏のSNS凍結にはアメリカでも世論が分かれいるようだ。それがツイッターの株式買収に障害を及ぼすかもしれないと懸念したのかもしれない。

    以下余談になるが、そもそも、ツイッターを政治の舞台で活用し、その存在感を高めたのはトランプ氏だった。2017年1月の大統領就任前からゼネラル・モーターズ社やロッキード社などに対し、ツイッターで雇用創出のために自国で製造を行えと攻撃的な「つぶやき」を連発し注目された。就任後もホワイトハウスでの記者会見ではなく、140文字で大統領の方針を発信するという前代未聞のやり方だった。その後、世界の政治家がトランプ氏を見習うようにSNS活用を始め、いまでは政治家の必須アイテムになっている。

   そして、マスク氏が日本に直言した今月8日付のツイッター「Japan will eventually cease to exist.」=写真・下=は衝撃的だった。出生率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅する、それは世界にとって大きな損失だ、と。日本の総務省が発表した人口が2021年、過去最高の64万4000人減少との記事データについてのコメントだった。

   人口減少は多くの日本人が心の奥底に抱いている懸念ではないだろうか。マスク氏には8人の子がいる。この際、日本の人口を増やす対策について、岸田総理や野田少子化対策担当大臣が「日本の救世主になっていただきたい」とマスク氏にお願いし、率直なアイデアやアドバイスをもらってはどうだろうか。

 
⇒12日(木)午後・金沢の天気     あめ

★北朝鮮はICBMの核搭載を急ぐのか

★北朝鮮はICBMの核搭載を急ぐのか

    北朝鮮がまた日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。ミサイルの発射はことしに入って13回目だ。防衛省公式サイト「報道資料」(4日付)によると、「北朝鮮は、本日12時2分頃、北朝鮮西岸付近から、1発の弾道ミサイルを、東方向に向けて発射しました。詳細については現在分析中ですが、最高高度約800km程度で、距離は約500km程度飛翔し、落下したのは、北朝鮮東岸の日本海であり、我が国の排他的経済水域(EEZ)外と推定されます」。

    また、防衛大臣のコメントも添えている。「これまでの弾道ミサイル等の度重なる発射も含め、一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものです。また、ウクライナへの侵略が発生している中で、ミサイルを発射したことは許されない旨、大臣からコメントがありました。さらに、このような弾道ミサイル発射は、関連する安保理決議に違反するものであり、強く非難します」

   注視するのは、発射された場所だ。防衛省公式サイトのイメージ図にあるように、発射は首都平壌の郊外の国際空港で行われたのだろう。ここからは、3月24日に「モンスター・ミサイル」と報じられた全長23㍍にも及ぶ大陸間弾道ミサイル「火星17型」(ICBM)が発射されている。このときは、71分飛翔し、北海道の渡島半島の西方約150㌔の日本海(EEZ内)に落下した。飛翔距離は約1100㌔、最高高度は6000㌔を超えると推定されている。射程距離は首都ワシントンほかアメリカ全土がほぼ入るとされた。

    今回は最高高度は800㌔とされるので火星17型に比べれば、規模が小さいのかもしれない。ただ、4月25日に「朝鮮人民革命軍」創設90年にあわせて軍事パレードを開催した金正恩総書記は「核戦力を最速ペースで強化・開発するため、措置を取り続ける」と表明し、核戦力について、いつでも行使できるよう「準備が欠かせない」と述べている(4月26日付・BBCニュースWeb版日本語)。アメリカ全土を射程距離に入れるICBMの発射実験には成功したので、次は核弾道の搭載に向けて準備を進めているのではないかと懸念する。

   北朝鮮だけではない。ロシア太平洋艦隊の潜水艦2隻が4月14日、日本海で巡航ミサイルの発射演習をした。ミサイルは敵の船を模した海上の標的に命中したとしている(4月14日付・共同通信ニュースWeb版)。また、同じ4月20日には、10以上の核弾頭の搭載が可能な新型の大陸間弾道ミサイル「サルマト」をカムチャッカ半島の標的地に落としている。CNNニュースWeb版日本語(4月21日付)によると、「サルマト」についてはプーチン大統領が2018年の演説で新型兵器として言及し、これでNATOの防衛は「完全に使い物にならなくなる」と誇示していた。日本海周辺にさらなる緊張感が漂う。

⇒4日(水)夜・金沢の天気      くもり

☆憲法施行75年「古くなった」「安全保障に対応可能か」

☆憲法施行75年「古くなった」「安全保障に対応可能か」

   きょうは憲法記念日。そして憲法施行75年となる。日本には平穏な暮らしがある一方で、隣国のロシアがウクライナへ侵攻したことで国連安保理が機能不全に陥り、世界平和の秩序が乱れ始めている。さらに、中国の武力による台湾の統合と尖閣諸島の占有も懸念され、繰り返される北朝鮮のICBM発射など不安が募る。日本のいわゆる平和憲法はこのままでよいのか。

   メディア各社が国民の憲法についての意識調査を報じている。朝日新聞の調査(郵送、期間3月15日‐4月25日、有効回答1892人、回収率63%、内訳男48%・女51%・無記入1%)では、いまの憲法を変える必要について、「変える必要がある」が56%(昨年調査45%)で、「変える必要はない」37%(同44%)を上回った。2013年に郵送調査を始めて以降、改憲必要派は最多。憲法第9条については「変えないほうがよい」59%(同61%)で、「変えるほうがよい」33%(同30%)を上回った。

   読売新聞の調査(郵送、期間3月15日‐4月21日、有効回答2080人、回答率69%、内訳男47%・女53%)では、憲法を「改正する方がよい」は60%(昨年調査56%)と、郵送方式となった2015年以降で最も高かった。「改正しない方がよい」は38%(同40%)だった。戦力の不保持などを定めた9条2項を改正する必要が「ある」は50%(同46%)で、「ない」47%(同47%)をやや上回った。ただ、戦争放棄を定めた9条1項については、改正の必要は「ない」が80%(同80%)に上った。

   NHKの調査(携帯・固定電話、期間4月15-17日、有効回答1508人、回答率50%)では、憲法を改正する必要があると思うかどうかについては、「改正する必要があると思う」が35%(昨年調査33%)、「改正する必要はないと思う」が19%(同20%)、「どちらともいえない」が42%(同40%)。「必要がある」との回答は年々上昇していて、2018年調査(29%)より6ポイント上がっている。憲法9条について改正する必要があると思うかどうかについては、「改正する必要があると思う」が31%(同28%)、「改正する必要はないと思う」が30%(同32%)、「どちらともいえない」も34%(同36%)だった。2020年調査では「必要がある」26%、「必要はない」37%だったが、今回初めて「必要がある」が「必要はない」を上回った。

   新聞メディアの調査は「する」「しない」の二者択一を回答者に求めているのに対し、NHKは「どちらともいえない」を含めた三択にしているので、それぞれの回答の数値は低くなっている。

   メディア各社の世論調査で「憲法改正の必要あり」の方向性が明らかになってきた。その理由で多かったのが、「国防の規定が不十分だから」「古くなったから」(朝日)、「時代の変化に憲法の解釈や運用だけで対応すると混乱するから」「国の自衛権を明記し、自衛隊の存在明文化するため」(読売)、「日本を取りまく安全保障環境の変化に対応するため必要だから」「国の自衛権や自衛隊の存在を明確にすべきだから」(NHK)。ここから読めるのは、「憲法は古くなり、時代の変化に対応できない」「安全保障のために自衛隊の存在の明文化が必要」ということだろうか。

(※写真は日本国憲法原本=Wikipedia「日本国憲法」より)

⇒3日(祝)夜・金沢の天気     はれ

★世界のど真ん中で岸田総理「核兵器なき世界」訴えるとき

★世界のど真ん中で岸田総理「核兵器なき世界」訴えるとき

   岸田総理は先月26日、地元広島県の平和記念公園で原爆死没者慰霊碑に献花を行った。その際、平和記念資料館でアメリカのエマニュエル駐日大使と面談を行った。岸田氏は、「核兵器のない世界」の実現に向けて日米で協力していきたい旨を述べた。これに対し、エマニュエル氏は核なき世界の実現に向け日米間の連携をさらに深めたいと発言した(外務省公式サイト)。岸田氏は広島1区での当選10回、「ヒロシマ」の思いを知り尽くしている。エマニュエル氏にとっては重い発言だったに違いない。

   2015年5月に行われた核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議で当時外務大臣だった岸田氏の演説。「70年前、私の故郷広島において、一発の原子爆弾が13万人以上の尊い命を奪いました。残された者も後遺症に苦しみ、多くの者がその後命を落としました。『被爆体験は思い出したくないが、2度と繰り返さないために忘れないようにしている』、これは多くの被爆者の思いです。被爆地広島出身の外務大臣として、私は、被爆地の思いを胸に、この会議において『核兵器のない世界』に向けた取組を前進させる決意です」(岸田文雄公式サイト)。2016年5月、当時のアメリカのオバマ大統領の広島訪問が実現した際に岸田氏は原爆ドームなどについて通訳を介さずに英語で説明を行っている

   ロシアによるウクライナ侵攻が始まって70日ほどになるが、プチーン大統領は先月、4月27日の連邦国会で、ウクライナをめぐりロシアにとって戦略的脅威となる国には「電光石火」で報復すると欧米に警告した(29日付・BBCニュースWeb版日本語)。4月20日には、10以上の核弾頭の搭載が可能な新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)をカムチャッカ半島の標的地に落としている。明らかに核兵器の使用を示唆したものだろう。このロシアの動きは、核兵器の拡散を防止することが核兵器の廃絶につながるとの考えのもとで1970年に発効したNPTをその前提から瓦解させるものではないだろうか。

   「ヒロシマ」の岸田総理が世界にその存在感を示すべきときが来た。ニューヨーク、パリ、ロンドンなどで、持論の「核兵器のない世界」の実現に向けて訴えるべきだ。今月22日に来日するアメリカのバイデン大統領と広島・長崎でロシアに向けて「核で威嚇するな、NPTを壊すな」と強く主張すればよい。

(※写真は2016年4月に開催された広島でのG7外相会合=岸田文雄公式サイト)

⇒2日(月)夜・金沢の天気    くもり

☆海流がさらす「ロシアの不埒」漂着ゴミ

☆海流がさらす「ロシアの不埒」漂着ゴミ

   能登半島の沖合には北朝鮮の木造船がよく流れ着く。大陸側に沿って南下するリマン海流が、朝鮮半島の沖で対馬海流と合流し日本海側の沿岸に流れてくる=写真・上=。とくに能登半島は日本海に突き出ているため、近隣国の漂着物のたまり場になりやすい。このところ問題になっているのが、ロシアからの漂着ゴミだ。

   とくに目立っているのは大量の注射器と注射針だ。地元紙によると、能登半島の先端の珠洲市の海岸で今月27日、市と県の職員、建設業協会のメンバーが海岸線を巡回して回収したところ、新たに1377本の注射器と注射針が見つかった。注射器の長さは約10㌢で、針のついているもの、針だけ包装されているものもあった。ロシア語で「医療用」と表記されている(28日付・北國新聞)。注射器や注射針は輪島市の海岸でもこれまで625本が見つかっている(3月4日付・同)。

   能登半島だけでなく、島根や鳥取、兵庫、京都府の海岸でも注射器が見つかっている(2月28日付・共同通信Web版)。以下は憶測だ。これだけ大量のものが投棄されるということは、時期的に新型コロナウイルスのワクチン接種で使用したものではないだろうか。ロシア、あるいはロシアから提供を受けた北朝鮮が沖合で廃棄したものかもしれない。漂着したものはごく一部で、まだ膨大な量の注射器と注射針が海を漂っているに違いない。

   ことし1月には同じ珠洲市の海岸に、船体の全長が50㍍ほどある鉄製の船が海岸に流れ着いた=写真・下=。船体にはロシア語が書かれていた。能登海上保安署は、ロシアで射撃訓練の際に「標的船」として使われる船に似ているという(1月4日付・朝日新聞ニュースWeb版)。では、ロシアはなぜ、どのような理由で射撃訓練を日本海で行ったのか。実に不気味だ。そして、標的船を回収せずにそのまま海に遺棄する感覚に不埒さを感じる。

⇒30日(土)夜・金沢の天気    はれ

★国連事務総長が語るべき「地獄の黙示録」

★国連事務総長が語るべき「地獄の黙示録」

   ロシアを26日訪れ、プーチン大統領と会談した国連事務総長のグテーレス氏は28日、ウクライナの首都キーウでゼレンスキー大統領と面談した。その夜、キーウで2回にわたって爆発音が響いた。ロシア軍のミサイル2発が撃ち込まれた。このため、グテーレス氏はウクライナ政府の建物に数時間にわたって足止めとなった(29日付・NHKニュースWeb版)。

   BBCニュースWeb版(29日付)によると、その後のインタビューにグテーレス氏は「私が訪れているキーウに2発のミサイルが着弾してショックを受けている。私たちは絶対にこの戦争を終わらせる必要がある」と述べた=写真=。グテーレス氏はウクライナでの「地獄の黙示録」を目の当たりにした。

   グテーレス氏は、ゼレンスキー氏との会談で、「ロシアによる侵略は明らかな国連憲章違反だ」と厳しく非難したうえで、マリウポリに取り残されている市民の避難に向け国連として全力を尽くすと強調した。その後、キーウの北西にあるボロディャンカの町を実際に訪れ、攻撃によって破壊された建物の前で、ロシアによる侵攻を「absurdity in the 21st Century(21世紀の不条理)」と呼んだ。さらに、マリウポリでは、「マリウポリは危機の中の危機だ」と述べた。「何千人もの民間人が命を救う支援を必要としており、その多くは高齢者で医療を必要としているが、移動が制限されている。彼らには黙示録からの逃げ道が必要だ」と語った。

   グテーレス氏が語った言葉だ。「I am here to say to you Mr President, and to the people of Ukraine, we will not give up」(意訳:「私はゼレンスキー大統領、そしてウクライナ国民に、私たちはあきらめないと言うためにここにいます)

   そもそも、グテーレス氏は行く順番を間違えた。まずウクライナの現場を見て、それからプーチン氏と語るべきだったのではないか。ならば、もう一度、ロシアに行くべきだろう。そして、「absurdity in the 21st Century」を訴えるべきだ。国連安保理は常任理事国のロシアによる拒否権の発動で機能不全に陥っている。崖っぷちに立っているのはむしろ国連ではないか。

⇒29日(祝)夜・金沢の天気   あめ

☆「おそい、まずい、高くつく」国連事務総長のプーチン直談判

☆「おそい、まずい、高くつく」国連事務総長のプーチン直談判

   けさこのニュースに触れた多くの人は、「おそい、まずい、高くつく」と感じたのではないだろうか。NHKニュースWeb版(23日付)によると、国連は、グテーレス事務総長が今月26日にロシアの首都モスクワを訪問し、プーチン大統領と面会すると発表した。報道官は「グテーレス事務総長は、プーチン大統領とラブロフ外相の双方と話をする。銃声をやませ市民を助けるために、いま、どのような措置がとれるのか、議論したいと考えている」と述べた。ウクライナ側ともゼレンスキー大統領との個別会談を調整している。 

   国連のグテーレス事務総長がモスクワに行くべき時期は遅きに失しているのではないか。ロシアが軍事侵攻に踏み切った翌日の2月25日の安全保障理事会で、ロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案を採決したが、ロシアが拒否権を行使したため否決された。本来ならば、この時点で行くべきではなかったか。首都キーウ近郊ブチャなどで多数の市民の遺体が見つかり、また、東部ドネツク州クラマトルスクの鉄道駅が弾道ミサイルで攻撃され、避難民ら50人が死亡するなど、多数の民間人が犠牲になっている。このような事態に、むしろ国連の存在意義が問われている。

   「まずい」のは、ロシアとウクライナの停戦交渉が難航する中で、国連トップによる仲介が入ったとしても、ロシア側は優位な条件でないと認められないだろう。プーチン大統領は国連がすでに機能不全の状態に陥っていることを理解している。グテーレス氏がロシア寄りの仲裁案を出さない限り、譲歩は引き出せないだろう。おそらくグテーレス氏のモスクワ滞在中もロシア側の軍事攻撃は止まない。

   グテーレス氏はこれまで、ロシアの軍事侵攻は一方的な措置で国連憲章に反している繰り返し述べてきた。ならばなぜ、国連はウクライナに平和維持軍を派遣しないのか。安保理理事国15ヵ国のうち9ヵ国が賛成すれば、平和維持軍の創設は可能だが、常任理事国5ヵ国(中国、ロシア、アメリカ、フランス、イギリス)の1ヵ国が反対すれば否決される(国連広報センター公式サイト日本語)。つまり、グテーレス氏はプーチン氏に「お願いします」としか言えないのだ。

   仮にグテーレス氏の仲介で停戦協定が結ばれたとしても、問題はウクライナの復興だろう。BloombergニュースWeb版日本語(4月22日付)によると、キーウ経済大学の推計では戦争によるウクライナのインフラ損害額は4月11日時点で800億㌦に達し、経済的損失の総額は5640-6000億㌦と見積もっている。アメリカやヨーロッパはロシア制裁の一環として、ロシア中央銀行の外貨準備6400億㌦の半分程度を凍結しており、これを復興費用に充てるべきという意見もある。

   ウクライナの復興コストはそれを使えばよいと思うが、おそらくロシアは停戦の条件として制裁解除を盛り込んでくるだろう。結局、ロシアは復興には手を出さない。そのコストはアメリカやヨーロッパ、日本が負うことになる。「高くつく」とはこのことだ。

   話は冒頭に戻る。NHKニュースWeb版によると、国連はグテーレス事務総長が26日にモスクワを訪問し、ラブロフ外相と会談するほか、プーチン大統領が開くレセプションに出席すると発表している。つい、そのレセプションそのものにリスクはないのかと勘繰ってしまう。

(※写真は、国連安全保障理事会の会議室。バックの壁画はノルウェーの画家ペール・クロフが描いた「灰から飛び立つ不死鳥」=国連広報センター公式サイト日本語より)

⇒23日(土)午後・金沢の天気   くもり

☆ICBMをぶっ放す「悪の枢軸」

☆ICBMをぶっ放す「悪の枢軸」

   まさに「悪の枢軸」とはこのことだ。NHKやCNNニュースWeb版(21日付)によると、ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場に向けて目標に命中したと発表した。BBCニュースWeb版は「Russia releases video of intercontinental ballistic missile launch」と題して、ロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真=。

   読売新聞Web版によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   CNNニュースWeb版日本語によると、「サルマト」についてはプーチン大統領が2018年の演説で新型兵器として言及し、これでNATOの防衛は「完全に使い物にならなくなる」と誇示していた。

   NATOだけでなく、東京も射程距離に入る。さらに、この射程1万1000㌔以上のICBMをロシア極東に配備すればほぼアメリカ全土が射程距離ではないだろうか。北朝鮮が3月24日に発射したICBM「火星17型」も首都ワシントンほかアメリカ全土がほぼ射程距離内とされる。北朝鮮の労働新聞Web版(3月25日付)は、金正恩総書記が「もし誰かがわが国家の安全を侵害しようとするなら、彼らはその代償を払うこと、そして我々の国防能力はアメリカ帝国主義との長期的対決に徹底的に備える強力な軍事技術を持っていることを明確にしなければならない」(意訳)と述べたと伝えている。

   「悪の枢軸」を最初に唱えたのは、アメリカの第43代大統領のジョージ・W・ブッシュ氏だった。2002年1月の一般教書演説で、「States like these, and their terrorist allies, constitute an axis of evil, arming to threaten the peace of the world. 」と激しく、当時、アメリカがテロ支援国家と呼んでいたイランとイラク、北朝鮮を名指しした。

   そして今、「悪の枢軸はどこの国」と世界の人に問えば、多くはロシアと北朝鮮と答えるのはないだろうか。ウクライナを侵攻して、ICBMをぶっ放すロシア、アメリカを標的にICBMを繰り返す北朝鮮。この先の世界の歴史はICBMが飛び交う悲劇なのか、和平の落としどころあるのか。

⇒21日(木)夜・金沢の天気    あめ