⇒ニュース走査

☆安倍氏銃撃事件を振り返る ~上~

☆安倍氏銃撃事件を振り返る ~上~

   去年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍元総理を銃で撃ったとして逮捕された山上徹也容疑者が殺人と銃刀法違反の罪で13日付で起訴された。今後、裁判員裁判で審理されることになる。母親が世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)へ高額な献金をしたことから家庭が崩壊し、恨みを募らせたことが事件の発端とされるが、その動機の解明が裁判の焦点となってくるだろう。

            一発目の銃声でなぜ安倍氏の身を守る警察の行動がなかったのか

   メディアを通じて事件に注目していて、いまでも解せない点がある。安倍氏は命を落とすべくして落としたのだろうか。簡単に言えば、なぜ防げなかったのか。事件は衆人環視の中で起きた。

   奈良市の大和西大寺駅前の交差点で安倍氏は候補者とともに立っていた。この場所はガードレールに囲まれていて、警視庁のSP1人を含む4人の警察官が警備にあたっていた。SPは安倍氏を見ながら、前方の大勢の聴衆を警戒していた。2人の警察官は安倍氏の目線と同じ方向にいる聴衆を警戒していた。つまり、傍らにいた3人が会場前方を中心に警備していたことになる。そしてもう1人の警察官は主に安倍氏の後方の警戒にあたっていた。

   以下、朝日新聞社会面(2022年7月17日付)の記事を引用する。最初、山上被告と安倍氏の直線距離は約15㍍だった。その後、安倍氏の背後に回り込むように歩いて車道を横断。ショルダーバッグの中から手製の銃を取りだし、約8㍍の距離から発砲した。周囲の人たちが大きな音に身をすくめる中、被告は白煙の上がる銃を手にし、さらに5歩前進。2.7秒後に、背後約5㍍から2発目を撃った。銃音の方を振り向くような動きを見せていた安倍氏は身をかがめるようにして倒れた。被告は直後、車道上で取り押さえられた。

   ここで理解できないのは、背後8㍍まで近づいて発砲し、さらに5歩進み、2.7秒後に2発目を発射している点だ。その間、SPと警察官の4人は何をしていたのか。事件の警備をめぐっては、警察庁が立ち上げたチームが検証を行い、後方の警備が不十分となり襲撃を防げなかったことなど問題点を明らかにしている。ならば、どのような点が不十分だったのか、とくに一発目と二発目の2.7秒で何をしていたのか。

   ネットに上がっている関連動画やテレビを見ると、一発目の後、安倍氏に覆いかぶさるなど警護対象者の身を守るような行動は確認できない。警察は常に容疑者の身柄の確保を最優先に考えていて、一発目の砲音と同時に犯人捜しに視線が注がれ、安倍氏をガードする行動が遅れた。5歩、2.7秒の二発目はまさに警備の死角を突いたのだろう。警察とすれば、オレたちはガードマンではない、犯人逮捕が仕事だ、との発想が根底にあるのだろうか。8月25日、警察庁長官は検証結果と警護の見直し策をまとめた報告書を公表した後に自らの責任を認め辞職している。

⇒14日(土)夜・金沢の天気   あめ

★歩み寄り、面目躍如、ニュースの「雪中四友」

★歩み寄り、面目躍如、ニュースの「雪中四友」

   金沢は朝からほんわかとしたまるで春の雰囲気が漂っている。天気予報によると、日中の最高気温は金沢で18度と平年よりも10度ほど高く、4月中旬並みの暖かさになるようだ。クリスマス寒波で30㌢余り積もった庭の雪もすっかり解け、ロウバイの花が咲いている=写真=。「雪中四友(せっちゅうしゆう)」という言葉がある。冬のこの季節に咲く4つの花、ロウバイ、ウメ、サザンカ、スイセンのこと。

   寒々しいニュースが続く中、「雪中四友」のような心がほんわかとするニュースもある。大阪・ミナミを流れる道頓堀川に絶滅危惧種のニホンウナギが生息していることがわかった。府立環境農林水産総合研究所などが去年11月、はえ縄などウナギを捕まえるための仕掛けを設置し、体長30㌢から60㌢ほどの11匹を見つけた。ニホンウナギは肉食で、ミミズやザリガニなど様々なものを食べるので、水質が改善されてニホンウナギが生きていける生態系が道頓堀川の中で成り立っているということになる。同川での学術調査による正式な捕獲記録としては初めてという(今月10日付・朝日新聞Web版)。道頓堀のニホンウナギ。新たな観光名所に。

   太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題の解決策を話し合う韓国政府主催の公開討論会で、韓国外務省のソ・ミンジョン(徐旻廷)アジア太平洋局長は、裁判で賠償を命じられた日本企業に代わって韓国政府の傘下にある既存の財団が原告への支払いを行う案を軸に検討していることを明らかにした。ソ局長はこれまでの官民合同の協議会での議論で、▽被告となった日本企業による賠償や日本側の謝罪を期待するのは難しいという意見、▽第三者が原告への支払いを肩代わりすることも可能だという指摘があったと説明した(12日付・NHKニュースWeb版)。日本政府は、賠償の問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場。韓国側の財団による肩代わり案は、両国の歩み寄り外交の一歩をもたらすかもしれない。

   G7の議長国として欧米のメンバー国を歴訪している岸田総理は日本時間の11日に3つめの訪問先のイギリスでスナク首相と日英両国での安全保障協力などについて首脳会談を行った。会談後、自衛隊とイギリス軍が共同訓練を行う際の「日英円滑化協定」に署名した。12日にカナダでトルドー首相と会談。13日からアメリカ・ワシントンに入り、バイデン大統領との日米首脳会談に臨む(12日付・NHKニュースWeb版)。元外務大臣だけあって、安全保障をテーマに外交をさらりとこなし、面目躍如か。

⇒13日(金)午後・金沢の天気     くもり

☆国会議員めぐる「大捕り物」か「いたちごっこ」か

☆国会議員めぐる「大捕り物」か「いたちごっこ」か

         国会議員には毎月給与が129万円、そして300万円以上のボーナスが年に2回支給される。「第二の財布」もある。給与とは別に月額100万円の「調査研究広報滞在費」が支給される。領収書は不要で、使途報告や残金返還の義務はない。さらに、「第三の財布」もある。「立法事務費」は議員個人ではなく会派に所属議員の人数に応じて支給される。月額は議員一人当たり65万円。これも領収書の提出や使途報告の必要はない。議席で寝ていても、欠席しても年間4200万円余りが支給される。

    共同通信Web版(12日付)によると、インターネットの動画投稿サイトで複数の著名人を中傷、脅迫するなどしたとして、警視庁は11日、暴力行為法違反(常習的脅迫)や名誉毀損、威力業務妨害などの疑いで、NHK党のガーシー(本名・東谷義和)参院議員の関係先を家宅捜索した。ガーシー氏は去年7月10日の参院選でNHK党から全国比例区で立候補して初当選したが、アラブ首長国連邦のドバイなどに滞在して国会に登院していない。(※写真は参院本会議場)

   朝日新聞Web版(2022年7月15日付)によると、ガーシー氏は知人女性から計約4千万円を集めた詐欺疑惑などがSNSで露見、以降、ドバイからオンラインで選挙に臨んでいた。朝日新聞ドバイ支局の取材に、帰国すれば詐欺容疑などで警察に逮捕される可能性があるなどとし、帰国に慎重な考えを示していた。

   そのガーシー氏はきょう午後4時半すぎから、自らのインスタグラムで生配信を行った、NHKニュースWeb版(12日付)によると、ガーシー氏は「通常国会に出るつもりだったので、3月上旬に帰国し、国会にも登院する」と述べた。さらに、「警視庁の任意の事情聴取にも応じる。警察には徹底的にボディーガードをお願いしたい。愉快犯などもいるので『帰る』と宣言した以上、そこは絶対に守ってもらわないといけない」と。

   以下は憶測だ。国会議員には国会会期中に限られているものの、不逮捕特権(憲法第50条)がある。ということは、3月の国会会期中に帰国し登院。警視庁の事情聴取にも応じる。が、閉会間際にまたドバイに帰るのではないか。これを繰り返せば、当面逮捕されることはない。ガサ入れ(家宅捜索)を行った警視庁の本気度、そして議員の不逮捕特権は今後、大捕り物劇へと展開するのか、あるいは「いたちごっこ」に終わるのか注目したい。

⇒12日(木)夜・金沢の天気    はれ

★「呆け封じ」か「呆けた者勝ち」か

★「呆け封じ」か「呆けた者勝ち」か

   これがアルツハイマー病の画期的な治療薬になるのだろうか。メディア各社は7日、アメリカのFDA(食品医薬品局)が日本のエーザイとアメリカの医薬品バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「LEQEMBI(レカネマブ)」に対して、「迅速承認」と呼ばれる特例的な承認を行ったと報じた。エーザイ公式サイト(7日付)によると、臨床試験でこの新薬を投与したグループと偽薬のグループを比較し、レカネマブのグループでは記憶や判断力などの症状の悪化が27%抑制された。特例承認の条件となっている最終段階の治験データをもとに速やかに完全な承認申請を行う。日本やヨーロッパでも承認申請を行う。

   アルツハイマー病は、脳内に異常なタンパク質「アミロイドβ 」が蓄積することで神経細胞が傷つき、記憶力や判断力などが低下するとされる。これまでの治療薬は症状の一時的な改善を促すものだが、レカネマブは脳内のアミロイドβ そのものを除去することで病気の進行を長期的に遅らせる。治療薬の効果が表れるのは軽度認知障害の段階での投薬で、早期または後期段階での治療開始に関する安全性と有効性に関するデータは取っていない。2週間に1回、体重に応じた点滴を施すことになる。価格は、体重75㌔の患者に換算して1人当たり年間2万6500㌦ (1㌦132円換算で350万円)と設定している(エーザイ公式サイト)。

   エーザイとバイオジェンは2021年6月にも同じタイプの治療薬「ADUHELM(アデュカヌマブ)」を開発。FDAに承認されたものの、価格が高いことや有効性への疑問などからアメリカでは高齢者向け保険が適用されなかった。日本の厚労省も、効果が明確に判断できないとして承認を見送っていた。以下推測だ。今回のレカネマブはアデュカヌマブよりアミロイドβ の除去により特化した治療薬なのだろう。アデュカヌマブは4週間に1回の点滴に対し、レカネマブは2週間に1回と投与頻度を高めている。さらに、価格に関してもアデュカヌマブは年間コストは5万6000㌦なので、レカネマブは半値以下に抑えている。商品化に対する企業の熱意というものを感じる。

   超高齢化社会といわれるこの世の中で、「呆け封じ」の妙薬となるのか。一方で、「呆けた者勝ち」という言葉がある。頭脳は普通に動いているが、寝たきりとなり食事や入浴、排泄の介護を受ける自分の姿を見て何を思うだろうか。むしろ、家族や周囲との人間関係のしがらみを記憶から一切消し、家族に面倒や世話をかけていると認識もせずに、その日を暮らしていければ、それで十分ではないか。「呆けた者勝ち」とはそういう意味だろう。アルツハイマー病の治療薬レカネマブのニュースを見て、そんなことを考えてしまった。

⇒8日(日)夜・金沢の天気    くもり

☆プラごみ国際条約動き出す 日本海に必要な汚染対策条約

☆プラごみ国際条約動き出す 日本海に必要な汚染対策条約

   プラスチックごみによる汚染問題は世界各地で深刻化している。排出や廃棄を規制する国際条約づくりがようやく動き出した。朝日新聞Web版(7日付)によると、去年3月の国連環境総会で、2024年内に法的拘束力のある汚染対策条約をつくる方針で合意。11月から12月に各国政府代表がウルグアイに集まり、第1回の交渉会合を行った。ことしは5月の第2回で条約に盛り込む内容の議論を始め、11月に第3回を開く。ことし中に法的拘束力のある枠組みをつくる方針で、2025年以降に条約を採択する予定という。

   これまでの交渉で、プラごみの削減だけでなく、プラスチックの生産から廃棄までのライフサイクル全体で削減に取り組む方向で一致している。削減に向けた国別行動計画を作る方針で、対策に必要な資金の仕組みづくりも協議する、という(7日付・朝日新聞Web版)。

   以下は日本海側に住む一人としての希望だ。対岸国の不法投棄をどう解決すればよいか、そうした条約の枠組みも併せてつくってほしい。たとえば、「地中海の汚染対策条約」とも呼ばれるバルセロナ条約は21ヵ国とEUが締約国として1978年に発効している。日本海にも沿岸各国との汚染対策条約が必要ではないだろうか。

   データがある。石川県廃棄物対策課の調査(2017年2月27日-3月2日)で、県内の14の市町の海岸で合計962個のポリタンクを回収した。そのうちの57%に当たる549個にハングル文字が書かれ、373個は文字不明、27個は英語、10個は中国語、日本語は3個だった。沿岸に流れ着くのはポリタンクだけではない。漁具や漁網、ロープ、ペットボトルなど、じつに多様なプラごみが漂着する。去年はロシア製の針つきの注射器が大量に流れ着いて全国ニュースになった。医療系廃棄物の不法投棄は国際問題だ。

   大陸側に沿って南下するリマン海流が、朝鮮半島の沖で対馬海流と合流し、山陰や北陸など日本の沿岸に流れてくる=写真・上=。とくに能登半島は突き出ているため、近隣国の漂着ゴミのたまり場になりやすい。2021年の奥能登国際芸術祭の作品づくりのため能登を訪れたインドの作家スボード・グプタ氏は能登の海岸に大量の海洋ごみが漂着していることに驚き、地域の人たちの協力でごみを拾い集めて作品を創った=写真・下=。作品名「Think about me(私のこと考えて)」。大きなバケツがひっくり返され、海の漂着物がどっと捨てられるというイメージだ。日本海の汚染対策条約が今こそ必用だと実感している。

⇒7日(土)午前・金沢の天気    くもり  

☆コロナ感染の実態伝えない中国 世界の不信感は募る

☆コロナ感染の実態伝えない中国 世界の不信感は募る

   WHOは中国に対して、新型コロナウイルス感染が拡大しているにもかかわらず、死者数などを過少に報告していることに苛立っている。WHO公式サイト(4日付)によると、WHO担当者が先月30日、感染者の入院やワクチン接種などのデータを定期的に共有するよう中国側に要請。中国と国際社会の医療の効果的な対応のためにもデータ公表が重要だと強調していた。にもかかわらず、中国側は真摯に対応しようとしていない。

   テドロス事務局長の記者会見(今月4日)からもその様子がうかがえる。「WHO is concerned about the risk to life in China and has reiterated the importance of vaccination, including booster doses, to protect against hospitalization, severe disease, and death.(意訳:WHOは、中国での生命に対するリスクを懸念しており、入院、重症疾患、死亡から保護するために、追加接種を含むワクチン接種の重要性を繰り返し表明している)」(WHO公式サイト)

   なぜ中国は正確な数字を把握して世界に公表しないのか。世界各国は不信の念を抱かざるを得なくなる。さらに、中国国家衛生健康委員会は先月25日、感染者と死者の人数公表を同日から取りやめた(同25日付・時事通信Web版)。これを契機に世界各国は水際対策を取ることになる。中国では今月21日から旧正月・春節の大型連休が始まり、中国から観光の渡航者が増えるからだ。

   日本は先月30日から水際対策を実施。今月8日からは精度の高いPCR検査や抗原定量検査に切り替える。韓国と台湾、フランス、イタリアもすでに入国時の検査。アメリカとイギリス、カナダ、オーストラリアはきょう5日から実施している。EUは加盟国に対して、中国渡航者から出発前の陰性証明の提示を求めることを勧告している。

   こうした各国の水際措置に対して、中国は反発している。BBCニュースWeb版日本語(12月29日付)=写真=によると、中国外務省の汪文斌報道官は記者会見(同28日)で、中国の感染状況について西側諸国とメディアが誇張し、ねじまげて伝えていると非難。「コロナ対応は科学的根拠に基づいた、適切なものであるべきで、人的交流に影響をおよぼしてはならない」「安全な越境移動を確保し、世界の産業サプライチェーンの安定性を維持し、経済の回復と成長を促進するための共同努力が必要だ」と述べた。

   述べている内容には間違いはないものの、数字をねじまげて伝えたのは中国側であり、数字の公表を取りやめたことに世界は不信感を抱いている。2020年の春節で中国が行動制限をしなかったことから、パンデミックが拡大した。世界各国はそのことを教訓として警戒している。

⇒5日(木)夜・金沢の天気    くもり

☆世界史に残る ゼレンスキーお馴染みの姿でホワイトハウス訪問

☆世界史に残る ゼレンスキーお馴染みの姿でホワイトハウス訪問

   まるでスパイ大作戦のようなシナオリだ。メディア各社の報道によると、ウクライナのゼレンスキー大統領は今月21日、お馴染みのオリーブグリーンのトレーナーと同色のパンツ姿でホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と会談した。会談後、バイデン氏は新たに地対空ミサイルシステム「パトリオット」や航空機搭載の精密誘導弾などの軍事支援、人道的支援を表明した。(※写真は、会談後の共同記者会見の模様=ホワイトハウス公式サイトより)

   このニュースを見て、多くの視聴者は「アメリカの大統領と会談するのだから、スーツにネクタイではないのか」とちょっとした違和感をおぼえたに違いない。自身もそうだった。軍事支援を得るための依頼の訪問であればなおさらだろう、と。ただ、逆に考えると、スーツにネクタイだったら、戦うウクライナ国民のモチベーションは下がったかもしれない。2月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まると、ゼレンスキー氏はスーツとネクタイを脱ぎ捨て、ロシア軍と戦っている兵士たちと近い服装に着替えることで、国民との団結を示してきた。その姿勢は侵攻から300日を超えたいまも一貫している。

   そのゼレンスキー氏がスーツとネクタイに着替えてバイデン氏と会ったら、自国民も世界の人たちも「物乞い」の印象を抱いたかもしれない。それにしても、どのようなルートで訪米が可能になったのだろうか。BBCニュースWeb版(23日付)は「How did President Zelensky get to Washington?」の見出しで、その移動ルートを伝えている。以下要約。

   21日未明にウクライナ国境から夜行列車で10㌔のポーランド南東部プシェミシルの駅に到着。アメリカ側が手配した車で90分ほどかけて、ジェシュフ空港に到着した。アメリカ空軍の輸送機ボーイングC40Bに搭乗して、ワシントン近郊のアンドルーズ基地に向かった。アメリカのF15戦闘機が護衛した。北海上空ではロシアの潜水艦からの砲撃を警戒して、NATOの偵察機が監視。離陸からほぼ10時間後、ワシントンの正午ごろに到着した。ホワイトハウスは出国が確認できるまで、ゼレンスキー氏の公式訪問の公式発表を控えていた。

   ヘタに移動すれば暗殺のリスクもあったに違いない。一国の大統領が他国を訪問するために秘密裡に夜行列車に乗り、搭乗した飛行機を戦闘機が護衛するという緊張感にこそ、一触即発のキナ臭さが漂う。そして、お馴染みの服装でホワイトハウスを訪問したゼレンスキー氏の姿は世界史に残るのではないだろうか。

⇒25日(日)午後・金沢の天気   くもり時々みぞれ

★雷鳴とどろくJPCZの朝

★雷鳴とどろくJPCZの朝

   朝から雷鳴が響き渡たり、自宅周辺の積雪は15㌢ほどになっている=写真・上=。この時季の積雪をともなう雷を北陸では「雪出しの雷」や「雪おこしの雷」と言う。ちなみに、気象庁の雷日数(雷を観測した日の合計)の平年値(1991-2020年)によると、全国で年間の雷日数がもっとも多いは金沢の45.1日だ。12月から2月にかけての冬場に多い。いよいよ来たか冬将軍。

   問題はこの冬の積雪量だ。気象予報士が大雪の予想でキーワードとしてよく使うのが「ラニーニャ現象」。同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象をいう。ラニーニャの年には豪雪がやってくる。あの1981年の「五六豪雪」も1963年の「三八豪雪」もラニーニャだったと言われている。

   さらに近年よく使われるキーワードが「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」だ。シベリアから寒気団が日本海に向かって流れてくる際に朝鮮半島北部の白頭山によって、いったん二分されるが、その風下で再び合流し、雪雲が発達しやすい収束帯(ライン)となって北陸地方などになだれ込んでくる。2021年1月にJPCZが若狭湾付近に停滞して大雪が降り続き、福井県の北陸自動車でおよそ1600台が2日間動けなくなったことが連日ニュースとなった。

   今回の降雪もこのJPCZの影響のようだ。NHKニュースWeb版(19日付)によると、強い冬型の気圧配置はきょうも続き、北日本から西日本の日本海側を中心に雪が続く見通し。とくに東北南部や北陸は夕方にかけてJPCZの影響で、局地的に雪雲が発達し、平地でも大雪となるおそれがある。あす20日昼までの24時間に降る雪の量はいずれも山沿いの多いところで、新潟県で70㌢、東北と北陸で50㌢と予想されている。

   話はがらりと変わる。北朝鮮はきのう18日、半島西岸から日本海に向けて弾道ミサイルを2発発射した。最高高度は550㌔程度で、500㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下したと推測される。きょうの北朝鮮の国営メディア「労働新聞」Web版は「국가우주개발국 정찰위성개발을 위한 중요시험 진행」の見出しで 宇宙開発事業団の偵察衛星開発のための重要な試験を実施したと報じている=写真・下=。

   実験では、宇宙環境における撮影やデータ転送の技術で「重要な成果」を得たとし、2023年4月までに「軍事偵察衛星1号機の準備を終える」と報じている。偵察衛星の打ち上げなのか、あるいは、それを名目とした事実上の長距離弾道ミサイルの開発なのかは定かではない。ただ、この記事では、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有などを明記した日本の安全保障関連3文書改定には触れていない。

⇒19日(月)午後・金沢の天気    ゆき

☆北朝鮮また弾道ミサイル 「反撃能力」への反発なのか

☆北朝鮮また弾道ミサイル 「反撃能力」への反発なのか

   北朝鮮がまた弾道ミサイルを発射した。防衛省公式サイトによると、北朝鮮はきょう18日午前11時11分と52分の2回、朝鮮半島西岸から日本海に向けて弾道ミサイルをそれぞれ1発発射した。2発とも最高高度は550㌔程度で、500㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下したと推測される。弾道ミサイルの発射は11月18日にICBMを1発を発射して以来で、ミサイル発射はことし35回目となる。

   日本海側に住む者として、北朝鮮の弾頭ミサイルの発射に注視している。そこで思うことは、35回という頻度もさることながら、着実に弾道ミサイルの性能を高めているということだ。先月18日のICBM「火星17型」の発射では、北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央テレビ」「労働新聞」は金正恩総書記の「世界最強の戦略兵器としての威力ある性能が検証された」と成果を誇示するコメントを出した。同時に、白の防寒ジャケットに身を包んだ娘が金総書記と手をつないで兵器の前を歩く姿も掲載した。(※写真は11月19日付・CNNニュースWeb版日本語より)

   また、今月15日に金総書記の立ち会いのもと大出力の固体燃料エンジンの燃焼実験に初めて成功したと発表している。固体燃料ロケットは、北朝鮮がこれまでのICBM発射実験で使用した液体燃料ロケットよりも安定性に優れ、ICBMをより容易に移動することが可能で、打ち上げにかかる時間も短縮できるとされる。北朝鮮は2021年からの「国防5ヵ年計画」で固体燃料のICBM開発を重点目標に掲げており、金総書記は今回の実験で「優先課題実現に向けた重大問題を解決した」と強調した(今月16日付・産経新聞Web版)。

   きょうの発射の目的は何だったのか。共同通信Web版によると、韓国メディアは、「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有などを明記した日本の安全保障関連3文書改定に対して北朝鮮が反発した可能性があると伝えているようだ。北朝鮮の国営メディアはあすどう伝えるのか。反撃能力に対する反発なのか、あるいは固体燃料ロケットの実用化に向けた試射なのか。

⇒18日(日)夜・金沢の天気   ゆき

★ロシアのICBMに「反撃能力」は可能なのか

★ロシアのICBMに「反撃能力」は可能なのか

   政府はきのう、敵のミサイル発射拠点などを攻撃する「反撃能力(敵基地攻撃能力)」の保有を明記した安全保障関連3文書を閣議決定した。北朝鮮による弾道ミサイル発射、ロシアのウクライナ侵攻、中国による尖閣諸島周辺への領海侵入など、隣国による安全保障面の脅威は増している。

   たとえば、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディア(4月4日付)で「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べたことが、日本でも報道された。プーチン大統領がウクライナのゼレンスキー政権を「ネオナチ」と称して偽旗を掲げて侵攻を始めたように、「北海道の権利」の奪還に動くかもしれないと憶測を呼んだ。

   ロシア軍は今年9月1日から7日に、北方領土や日本海、オホーツク海など極東各地で戦略的軍事演習「ボストーク(東方)2022」を実施した。中国やインドなど14ヵ国の兵員5万人が参加。さらに、9月下旬から1ヵ月ほどかけて、中国海軍とロシア海軍の艦船計7隻が日本列島を半周した。

   問題はここからだ。ことし4月20日にロシアがカムチャッカ半島にICBMを撃ち込んでいる。ロシア国防省は日本時間の20日午後9時すぎ、北部アルハンゲリスク州にあるプレセツク宇宙基地の発射場から新型のICBM「サルマト」を発射し、およそ5700㌔東のカムチャツカ半島にあるクーラ試験場の目標に命中したと発表した(4月21日付・NHKニュースWeb版)。BBCニュースWeb版はロシア国防省が撮影した「サルマト」の発射映像(43秒)を公開している=写真=。

   読売新聞Web版(4月21日付)によると、このICBMは射程1万1000㌔以上、重量200㌧を超える重量があり、10以上の核弾頭の搭載が可能とされる。弾頭部分をマッハ20(時速約2万4500㌔)で滑空飛行させ、既存のアメリカのミサイル防衛網での迎撃は困難とも指摘される。ロシア大統領府の発表として、プーチン大統領は「ロシアの安全を確保し、攻撃的な言動でロシアを脅かす人々に再考を迫るだろう」と述べ、ウクライナ侵攻を受けて対露制裁を科している米欧をけん制した。

   以下、素人の目線だ。カムチャツカ半島の目標にICBMを撃ち込めるのであれば、目標を北海道に設定することも可能ではないか。ロシアが「北海道の権利」の奪還という偽旗作戦を掲げて動き、プレセツク宇宙基地の発射場に再びICBMを構えた場合、日本の反撃能力は可能なのだろうか。

⇒17日(土)夜・金沢の天気   あめ