⇒ニュース走査

☆ウクライナの子どもたちを「戦利品」のように扱うロシア

☆ウクライナの子どもたちを「戦利品」のように扱うロシア

   ICC(国際刑事裁判所)は先月3月17日、ロシアのプーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表について、ウクライナ侵攻で占領した地域の児童養護施設などから少なくとも何百人もの子どもたちロシアに連れ去ったとして、国際法上の戦争犯罪の疑いで逮捕状を出した(3月18日付・NHKニュースWeb版)。

   同日のCNNニュースWeb版日本語によると、ウクライナのゼレンスキー大統領はICCの逮捕状について、「我が国の法執行当局で進行中の刑事手続きでは、ウクライナの子ども1万6000人以上が占領者(ロシア)によって強制連行されたことが既に確認されている。だが、強制移送者の実数ははるかに多い可能性がある」と述べ、「そうした犯罪行為はテロ国家の最高指導者の指示なしには不可能だ」との見方を示した。

   では、連れ去れた子どもたちはロシアでどのように扱われていたのか。AFP通信などで断片的に伝えられているニュースを総合すると、以下の様になる。子どもたちは東部ハルキウや南部ヘルソン両州などから不法に連れ去られていった。子どもたちの多くは、里子(養子)になるか孤児院に行くかを自分で判断することになる。

   一方、ロシア側は戦闘地域から子どもを「保護している」とし、家族と再会できるよう手続きを進めていると主張している。クライナの孤児380人がロシアの里親に引き渡された。養子になった子どもはウクライナ国籍を維持するとともに、ロシア国籍も与えられた。

   また、施設に入ると、朝6時に起床し、体操のあと朝食。その後は勉強をしたり、ゲームをしたりする時間もあるようだ。時にはダンスパ-ティーやモスクワ市内の見学もあるようだ。ただ、このケースはロシア政府が「慈悲深い救援者」と宣伝するプロパガンダに使われている。実際は子どもたちに再教育や軍事訓練などが課せられているとの見方もある。

   保護を理由に子どもたちをロシアに連れて行く行為そものが、子どもたちを「戦利品」のように扱っている。これはICCが指摘する戦争犯罪というより、ジェノサイド(民族抹殺)の行為に相当するのではないだろうか。

(※写真は、第二次世界大戦での対ドイツ戦勝記念日式典で演説を行ったプーチン大統領。相手をナチス呼ばわりして武力侵攻を正当化した=2022年5月9日付・BBCニュースWeb版)

⇒10日(月)午後・金沢の天気     はれ

★「芸術は長く、命は短し」坂本龍一氏の死を悼む

★「芸術は長く、命は短し」坂本龍一氏の死を悼む

   音楽家の坂本龍一氏が先月28日に亡くなったとメディア各社が報じている。坂本氏の公式ツイッターには、灰色の背景に黒文字で生没年が刻まれている=写真・上=。そして公式サイトには、「An  Announcement」(声明)が掲載され、医療関係者やファンへの感謝が言葉が述べられ、坂本氏が好んだという言葉が引用されている。「“Arts longa, vita brevis.” Art is long, life is short.」。享年71歳。

   自身の年齢と近いということもあり、若いころから映画『戦場のメリークリスマス』や『ラストエンペラー』のテーマ曲はよく耳にし、今も心に響く。『ラストエンペラー』で日本人として初めてアカデミー賞作曲賞を受賞(1988年)、そしてグラミー賞も獲得するなど世界的に評価された音楽家だった。

   思想家でもあった。核のない世界、戦争のない平和な世界を訴えるメッセージを発信していた。東日本大震災による福島第1原発の事故後では、脱原発を訴えた音楽イベント「NO NUKES」を開催するなど被災地の復興支援にも携わってきた。時代の流れを感じ取り、社会に訴える「時代のカナリヤ」のような人物だった。

   歌手の加藤登紀子氏はツイッターでコメントしている。「本当に素晴らしい音楽家であり、思想家であり、行動者だった坂本龍一さん。彼の亡き後も、彼の思いを受け継ぎ、音楽家として思考し、行動するひとりでありたいと願っています。心から哀悼を捧げ、共に生み出した音楽を大切に歌っていきます」と。

   冒頭の言葉は、坂本氏の人生そのものだったように思える。芸術のために生き、そして人々の心を豊かにして使命をまっとうする。「それでいい」と。Art is long, life is short(芸術は長く、命は短し)。ファンの一人として冥福を祈る。

⇒3日(月)夜・金沢の天気    はれ

☆際立つ「カントリーリスク」中国・ロシア・日本

☆際立つ「カントリーリスク」中国・ロシア・日本

   中国とロシアで、いわゆる「カントリーリスク」が際立ってきた。証券業界などでよく使われるこの言葉は、投資する国や地域において、政治や経済、社会情勢などの変化に起因するリスクのことを指す。テロ行為や紛争が起こり、政権交代によって政策や法律が変わりやすい国々はカントリーリスクが高いということになる。

   ある意味で中国はカントリーリスクの高い国と言える。NHKニュースWeb版(3月27日付)によると、中国外務省の報道官は同日の記者会見で「日本人1人に対し、法律に基づいて捜査している。この日本人はスパイ活動に関わり、中国の刑法と反スパイ法に違反した疑いがある」と、拘束して取り調べを行っていると述べた。拘束されたのは製薬会社「アステラス製薬」の現地駐在の50代の男性社員。中国側は、具体的にどういう行為が法律に違反したかなど、詳しい内容については明らかにしていない。男性は駐在期間を終え、帰国間際だったとの報道もある。(※写真・上、中国・北京の天安門)

   反スパイ法だけでなく、中国には国家安全法や国会情報法、国防動員法といった「法のリスク」がある。よく指摘されるのは、国防動員法の場合は中国政府が有事と判断すれば、中国のあらゆる組織と人的資本、資金などが政府の統制下に置かれる。「あらゆる組織」には中国に進出している日本企業なども含まれる。中国政府が台湾の統一を「有事」と判断した段階でこの法が適用される。投資目的に中国に進出した企業にとってリスクは高まっているのではないだろうか。

   そして、ロシアのカントリーリスクは「プーチン・リスク」だ。ロイター通信Web版日本語(3月31日付)によると、ロシア産業貿易省は同日、トヨタ自動車のサンクトペテルブルク工場が国営の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に譲渡されたと表明した。同省は「今回の合意は、工場の建物・設備・土地の所有権の完全な譲渡を意味する」と表明した。トヨタ自動車サイト(同日付)も、NAMIへの譲渡による移管を完了したと発表している。譲渡額は明らかにしていない。(※写真・下、2016年12月16日、日露首脳会談後の安倍総理とプーチン大統領による共同記者会見=総理官邸、NHK中継画像)

   この背景には、ウクライナ侵攻がある。トヨタ自動車サイトによると、ロシアに経済制裁が科されたことにより、ロシア国内からの部品調達が滞り、去年3月に同工場の操業を停止。その後、稼働再開に向けて生産ラインの保全など行っていたが、侵攻が予想外に長引き、9月に生産事業そのものを停止した。同工場が稼働したは2007年12月だった。ソ連崩壊(1991年)で混乱に陥った政治経済を安定軌道に乗せたと定評があったプーチン大統領がウクライナ侵攻で国際批判を浴びることになるとは、当時は想像すらできなかっただろう。それにしても、譲渡した工場で何が生産されるのだろうか。

   ところで、日本にはカントリーリスクはないのか。ある。自然災害(地震、津波、台風など)というリスクだ。東日本大震災では原発事故によるリスクが世界的に知れ渡った。そして、中国やロシア、北朝鮮などに囲まれるポジション(立地)もリスクとみなされているかもしれない。

⇒2日(日)午後・金沢の天気     はれ

★極東で連日の軍事訓練 「対岸の事」で済むのか

★極東で連日の軍事訓練 「対岸の事」で済むのか

   ロシア極東での巡航ミサイル発射訓練、北朝鮮の弾道ミサイルと水中ドローン、そしてアメリカと韓国の大規模な軍事訓練などが連日のように報道され、日本海側がキナ臭い。はたして「対岸の事」で済ませることができるのか。

   朝日新聞Web版(今月28日付)によると、北朝鮮の党機関紙「労働新聞」(28日付)は、軍のミサイル部隊が首都ピョンヤンから北東部ハムギョン(咸鏡)北道の島に向けて「地対地戦術弾道ミサイル」2発を発射する訓練を27日に行ったと伝えた。また、27日までの3日間、日本海で「核無人水中攻撃艇」と呼ぶ新型兵器の「津波(ヘイル)1型」を使った実験を行ったと発表した。「ヘイル1型」は東部ウォンサン(元山)から41時間余りかけて、だ円などの針路で潜航したまま600㌔進み、27日午前、ハムギョン北道の沖で弾頭を起爆させた。

   共同通信Web版(28日付)によると、ロシア国防省は28日、ロシア太平洋艦隊の小型艦が日本海に面する極東ウラジオストク沖の湾内で、巡航ミサイルを発射する演習を実施したと発表した。2発のミサイルが100㌔先の目標に命中した。発射はソ連時代に開発された対艦巡航ミサイル「モスキート」。国防省は通信アプリでミサイルが発射される映像も公開した。

   読売新聞Web版(29日付)によると、アメリカと韓国の両軍は29日、大規模な上陸訓練「双竜訓練」の模様を韓国南東部・浦項の海岸で報道陣に公開した。訓練は朝鮮半島有事を想定したもので、海軍と海兵隊を中心に来月3日まで行われる。今年の訓練は、規模をこれまでの「旅団」級から「師団」級に拡大し、1万2000人が参加。アメリカ軍の強襲揚陸艦マキン・アイランドを含む30隻や最新鋭のステルス戦闘機F35Bなど航空戦力70機、軍用車両約50台が動員されている。イギリスの海兵隊員40人も参加している。核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮を強くけん制する狙いがある。

           共同通信Web版(30日付)によると、中国海軍のミサイル駆逐艦2隻と補給艦1隻の計3隻が29日に対馬海峡を相次いで通過し、東シナ海から日本海へ北上した。防衛省の発表。日米韓は近く共同訓練する見通しで、防衛省は中国艦の動向を注視している。

   記事を読むだけで、再び朝鮮戦争が勃発するのではないか、ロシアが偽旗を掲げて極東侵攻を始めるのか、などとつい想像を膨らませてしまう。別に根拠があるわけではない。日本海側に住む一人の憂いである。

⇒30日(木)夜・金沢の天気    はれ

☆桜は満開なれど 「どうする日本の技術力」

☆桜は満開なれど 「どうする日本の技術力」

   金沢のソメイヨシノは満開になっている。青空に映えて、まさに「花見日和」だ。近郊の里山では、菜の花畑がでも一面に咲き誇り、満開のソメイヨシノ、そして青空の絶好のコントラストを描いていた=写真・上、金沢市銚子町=。開花は23日で、平年(4月3日)より11日も早かったので、金沢市内の小学校の入学式(4月7日)のころは、桜吹雪が楽しめるかもしれない。

          満開のソメイヨシノでめでたい気分にはなるものの、残念なニュースもある。電圧をかけると発光する有機物でできた電子材料で、スマートフォンやテレビの画面などに使われている「有機EL」。メディア各社の報道によると、この先端技術を使ったディスプレイを生産しているJOLED(ジェイオーレッド、東京)は27日、東京地裁に民事再生手続き開始の申し立てを行ったと発表した=写真・下=。石川県能美市には主力工場がある。

   JOLEDはソニーグループとパナソニックホールディングスの有機ELパネル開発部門を統合し、2015年1月に設立。2019年11月には主力工場の能美事業所で、世界初の印刷方式有機ELディスプレイ量産ラインの稼働を開始。医療用モニター、ハイエンドモニター、車載向けなどに生産。しかし、安定した生産に想定以上のコストと時間を要したほか、世界的な半導体不足による影響に加え、高性能・高品質ディスプレイ需要の伸び悩みや価格競争の激化など、経営環境が厳しさを増していた。負債総額は337億円と見られる。なぜ世界随一の技術を持ちながらJOLEDは経営破綻に追い込まれたのか。

   有機ELパネルはシートのように薄かったり、丸めることもでき、いろいろな分野で使われると期待されている。しかし、品質面で高い評価を得られたとしても、問題はニーズで、有機ELよりも安価な液晶パネルを求める顧客が増えたとされる。

   それにしても、日本の技術力が問われるような暗いニュースが相次いでいる。今月7日、JAXAは主力ロケット「H3」の初号機を種子島宇宙センターで打ち上げたものの、2段目のエンジンに着火せず、打ち上げは失敗に終わった。国家プロジェクトとして9年前から開発が始まり、2度の年度をまたぐ延期を経て先月17日に打ち上げに臨んだが、発射直前にロケットの1段目の装置で異常が発生し、打ち上げを中止していた。最終検証を行い、満を持して7日の発射に臨んだものの、失敗した。「どうする日本の技術力」

⇒29日(水)夜・金沢の天気     はれ

★日本海に恐怖の渦 北朝鮮が空中、水中に核の仕掛け

★日本海に恐怖の渦 北朝鮮が空中、水中に核の仕掛け

   北朝鮮はきょう27日、2発の短距離弾道ミサイル(SRBM)を日本海に向けて発射した。防衛省公式サイトによると、北朝鮮西岸付近から午前7時47分ごろに弾道ミサイル1発が発射され、最高高度およそ50㌔で、350㌔飛翔した。さらに10分後の午前7時57分ごろにも1発を発射。これも最高高度およそ50㌔で、350㌔飛翔した。日本のEEZ外側に落下したと推測される。2発の弾道ミサイルは変則軌道で飛翔した可能性もある。

   アメリカと韓国による合同の海上訓練がきょう済州島沖の公海上で行われ、アメリカ軍の原子力空母「ニミッツ」などが参加している。「ニミッツ」はあす28日、釜山に入港する予定という。北朝鮮は米韓の合同訓練に反発したものと見られる。

   北朝鮮のミサイル発射は今月だけでも今回で7回目だ。22日に戦略巡航ミサイルを4発、19日に短距離弾道ミサイルを1発、16日にICBMを1発、14日に短距離弾道ミサイルを2発、12日に潜水艦から戦略巡航ミサイルを2発、9日に短距離弾道ミサイルを6発をそれぞれ発射している。(※写真は、今月9日に北朝鮮が発射した近距離弾道ミサイル=10日付・朝鮮中央通信Web版より)

   北朝鮮の脅威はミサイルだけではない。ロイター通信Web版日本語(今月24日付)によると、北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央通信」の報道として、金正恩総書記の指揮下で、核兵器が搭載可能な水中攻撃ドローン(無人艇)の実験を実施した。「ヘイル(津波)」と名付けられた新型の水中ドローンは59時間以上にわたり水深80㍍から150㍍の水中を巡航し、23日に東岸沖で核を搭載しない弾頭を爆発させたという。

   この核無人水中攻撃艇は敵の海域で奇襲攻撃を仕掛け、水中爆発で大規模な放射能の巨大な津波を起こして艦船や主要な作戦港を破壊することを目的としている。この北朝鮮の新たな兵器について、韓国軍当局者は、北朝鮮の主張を分析中だと説明。アメリカ政府関係者は匿名を条件に、核実験の兆候はないと述べた。アナリストは、水中兵器が配備可能かどうかには懐疑的だが、北朝鮮はアメリカと韓国に対し、ますます多様化する核の脅威を誇示していると分析している(ロイター通信Web版日本語)。

   空中だけでなく海中でも核攻撃能力を持つと挑発する北朝鮮、海上戦力が脆弱とされる北朝鮮に対して原子力空母を繰り出す米韓合同訓練、日本海に恐怖の渦が巻く。

⇒27日(月)夜・金沢の天気    はれ

★「必勝しゃもじ」は日露戦争の縁起物 だとすれば

★「必勝しゃもじ」は日露戦争の縁起物 だとすれば

   このところ「必勝しゃもじ」が連日ニュースに上がっている。岸田総理が今月21日にウクライナを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領に贈呈したとされる広島名産品。ネットで検索すると、「厳島神社・御朱印」サイトで必勝しゃもじの歴史や云われが詳細に出ている。江戸時代の寛政年間(1789-1801)のころ、厳島神社近くの寺院にいた修行僧が楽器の琵琶を模して神木でしゃもじをつくり、参拝客の土産品としたことが始まりとされる。明治時代に入ると日清・日露戦争があり、「飯(めし)取る=敵を召し取る」とのゴロ合わせで、しゃもじに「必勝」「商売繁盛」などの文字を入れ、縁起物として販売するようになった=写真、同サイトより=。

   きのう24日の参院予算委員会で、立憲民主党の議員からの質問で、岸田総理は「ウクライナの方々は祖国と自由を守るために戦っている。この努力に敬意を表したい」「外交慣例で地元のお土産を持って行くのはよくあること」とさりげなく答弁していたが、必勝しゃもじの由来は知っていたはずだ。日露戦争で日本が勝利したように、ウクライナにもロシアに勝ってほしいという意味を込めてのプレゼントだったに違いない。

   話は変わる。ところで、岸田総理がゼレンスキー大統領と会談していたころ、中国の習近平主席はモスクワを訪れ、ロシアのプーチン大統領と会談していた。中露首脳でいったい何を話していたのだろうか。中国の主席が手ぶらでロシアに行くはずもない。ましてや、ウクライナ侵攻開始後、日本を含め西側諸国はロシアに経済制裁を科し、石油の輸入やハイテク製品の輸出を禁じている。なので、ロシアは石油のさらなる購入や、中国製ドローンの供与、資金提供などの支援を中国に求めたのではないだろうか。

   では、中国側は何を求めたのだろうか。中国は「歴史的権利」を叫んで東シナ海や南シナ海での支配域を拡大している。以下はあくまでも憶測だ。中国にとっては、ウラジオストクやサハリンは清朝時代の領土であり、いわゆるアロー戦争で敗北後にロシアに割譲した(1860年・北京条約)。

   この海域の領土化をもくろむとすれば、まず、ロシアへの支援の代償として、北方領土(歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島)を譲り受けるという野望を描いているのではないだろうか。領土化と同時に、この4島を軍事拠点化することで、戦略的に日本とアメリカの双方ににらみを効かせる。国後島と択捉島ではすでにロシアは艦艇攻撃用ミサイルや新型戦闘機を配備しており、中露の共有基地化もあるかも知れない。ロシアがさらに衰退すれば、ウラジオストクやサハリンを取り戻すチャンスもある。あくまでも空想だ。

⇒25日(土)午後・金沢の天気    くもり

★ジャパン晴れ WBC優勝、大谷MVP、岸田タフ外交

★ジャパン晴れ WBC優勝、大谷MVP、岸田タフ外交

   WBC決勝戦の中継番組を視聴していて、まさに「ジャパン晴れ」の爽快感があった。心臓の鼓動が高まったのは9回表の2アウトから。大谷翔平投手が大リーグ、エンジェルスでチームメートの2番トラウト選手との勝負。1球目はスライダーでボール、2球目は160㌔のストレートで空振り、3球目は160㌔のストレートでボール、4球目は160㌔のストレートで空振り、5球目は164㌔のストレートが外れてボール。そして、6球目はアウトコースのスライダーで空振りの三振。この瞬間、大谷投手は優勝投手となり、グローブを投げ捨てて歓喜のパフォーマンス。WBC14年ぶり優勝、あっぱれ侍ジャパン。

   大谷選手は今大会のMVP(最優秀選手)に選ばれた=写真・上、テレビ朝日番組より=。1次ラウンドの中国戦と、準々決勝のイタリア戦でピッチャーとして2勝をあげ、バッターとしても1次ラウンドのオーストラリア戦で東京ドームの看板を直撃するスリーランホームランを打つなど3番として打線を引っ張っり、二刀流の神髄を発揮した。

   もう一人、WBCの侍ジャパンの活躍の陰で目立たなかった岸田総理の一連の外交。21日にウクライナのキーウを電撃訪問し、ゼレンスキー大統領と会談を行った=写真・下、総理官邸公式サイトより=。5月のG7広島サミットでは、ゼレンスキー大統領のオンライン参加に合意している。また、岸田総理はキーウ近郊ブチャの戦死者慰霊碑を訪れ、ロシア侵攻による犠牲者への献花を行っている。ゼレンスキー大統領はみずからのSNSにメッセージを投稿し、「国際秩序の力強い守護者で、ウクライナの長年の友人である日本の岸田総理をキーウに迎えたことをうれしく思う」として訪問を歓迎した。

   ほかのG7各国首脳もウクライナを訪れているが、戦時下にある国を訪問するという観点から秘密保全、安全対策や危機管理など相当綿密に、そしてメディアへの情報漏れがないよう精査した訪問だったことは想像に難くない。

   きょう22日はポーランドに到着。ワルシャワに向かい、ポーランドの首脳との会談に臨む(NHKニュースWeb版)。インド、ウクライナ、ポーランドと一連のジャパン外交をさりげなく、そしてタフにこなしている。

⇒22日(水)午後・金沢の天気      はれ

☆資金源は盗んだ仮想通貨 北朝鮮が弾道ミサイルを頻発

☆資金源は盗んだ仮想通貨 北朝鮮が弾道ミサイルを頻発

   防衛省公式サイトによると、北朝鮮は19日午前11時5分ごろ、北朝鮮西岸付近から弾道ミサイル1発を東の日本海方向に発射した。弾道ミサイルは変則的な軌道で飛行し、最高高度は約50㌔、飛行距離は約800㌔、日本のEEZ外側に落下したと推測される=図、防衛省資料=。北朝鮮は今月16日にもICBMを1発を発射していて、ミサイルの発射は戦略巡航ミサイルを含めるとことし9回目となる。

   韓国の聯合ニュースWeb版は韓国軍合同参謀本部の発表として、発射したミサイルは短距離弾道ミサイル(SRBM)と伝えている。今回の発射は、米韓両軍が今月13日から実施中の合同軍事演習「フリーダムシールド(自由の盾)」に対する反発とみられる。

   北朝鮮が頻発させる弾道ミサイルに関連するニュース。共同通信Web版(18日付)によると、2022年に北朝鮮関連ハッカーがサイバー攻撃によって盗んだ暗号資産(仮想通貨)は約16億5千万㌦(2200億円)相当に上るとみられることが、アメリカの仮想通貨分析企業「チェイナリシス」の調査により分かった。北朝鮮が1年で盗んだ仮想通貨としては被害額は過去最大。21年は約4億2千万㌦だった。盗んだ仮想通貨は核兵器やミサイル開発の資金源にしているとみられる。

   明らかに国際的な窃盗罪だ。ならば、ICC(国際刑事裁判所)はどう動くのか。ICCは17日、ロシアのプーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表について、ロシアが占領したウクライナ地域の児童養護施設などから少なくとも何百人もの子どもをロシアに連れ去ったとして、戦争犯罪の疑いで逮捕状を出したことを明らかにした(18日付・NHKニュースWeb版)。次は窃盗罪で北朝鮮に逮捕状ではないか。

⇒19日(日)夜・金沢の天気    はれ

☆小技で勝負 大谷バントと日韓「はしご酒」外交

☆小技で勝負 大谷バントと日韓「はしご酒」外交

   昨夜のWBC準々決勝、日本対イタリア戦をテレビ中継で視聴していて驚いたシーン。両チーム無得点で迎えた3回裏、1死一塁で打席に立った大谷翔平選手が初球をセーフティーバント。相手投手は慌てたのだろう、打球を処理したものの一塁へ悪送球。一塁、三塁と打線のチャンスを広げた。その後、岡本和真選手のホームランなどで、この回一挙4得点で侍ジャパンがリード。このバントが勝負を決めた。

   おそらくバントはベンチの指示ではなく、自分の考えでやったのだろう。テレビに映ったチームメイトや監督も驚き顔だった。負けたら終わりの決勝トーナメントなので、大谷選手の「野球脳」は高校野球にシフトしたのかもしれない。「投げるとか打つとかは別だ。とにかく絶対に勝つんだ」と。二刀流の侍の気迫あふれる小技のビッグプレーだった。

   日韓首脳会談も小技で勝負したのかもしれない。岸田総理は16日、初めて来日した韓国の尹大統領と首脳会談に臨み、共同会見を行った。会見の様子はNHKの中継番組を視聴した。トップが互いの国を訪問する「シャトル外交」を復活させることや、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対して日米韓の連携を強化すること、経済安全保障に関する協議体の創設、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化、そして、拉致問題についても岸田総理は「力強い支持をもらった」と述べていた。

   メディア各社の報道によると、共同会見後に両氏は夫人を伴って銀座のすき焼き店で夕食をとり、その後は2人だけで洋食店に移動。オムライスを食べながらビールや焼酎を飲むなど二次会で交流を深めたという。これまでなかった外交ステージだ。ぜひ、バイデン大統領も「はしご酒」の仲間に入れて、まずはミサイル発射を頻発させる北朝鮮対策を日米韓で具体的に構築してほしいと願う。

⇒17日(金)午後・金沢の天気    くもり