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☆金沢医科大学へ「3億円寄付」騒動 怒り心頭の遺族は提訴

☆金沢医科大学へ「3億円寄付」騒動 怒り心頭の遺族は提訴

    金沢で「3億円寄付」騒動が持ち上がっている。地元メディアによると、金沢市に本社がある東証プライム上場の機械メーカー「渋谷工業」の前社長、渋谷弘利氏が2021年5月、入院していた金沢医科大学病院に3億円を寄付した。渋谷氏は同年10月に90歳で死去したが、寄付のことは家族に知らされていなかった。遺族である渋谷氏の妻と娘2人はきのう26日、渋谷氏に認知症の症状があったにもかかわらず、3億円を寄付させたのは公序良俗に反するとして、同大学と主治医に2億4750万円の損害賠償を求めて金沢地裁に提訴した。

    渋谷氏は社長在任中の2021年1月にサウナで脱水状態となり、同病院に入院。退院後の同年5月に、「大学創立50年記念事業募金」に応じて3億円を寄付した。その後、8月に再び入院するなど入退院を繰り返していた。以前から認知機能の低下が見られ、入院中にMRI検査を実施したところ、大脳の萎縮などが確認されていた。提訴した遺族側はきょう27日の記者会見で、「患者の病状を利用して、不当で多額な利益を図る所業が容認されていいはずがない」と訴えた。また、提訴前に調停を申し立てたが、医科大側は寄付の時点で認知症という診断書はなく、返還する理由がないと主張したため、不調に終わった。今回の提訴で医科大側は「正当な手続きを経て寄付金を受け入れている」と反論している。

   金沢医科大学公式サイトをチェックすると、「創立 50 周年記念事業募金応募状況」(令和5年2 月1日現在)として、総額15億9430万円が集まっている。中でも、「一般篤志家」からは3億5697万円が寄せられていて、渋谷氏の寄付はこの中の3億円なので、金額では群を抜いている。

   遺族とすれば、認知症の疑いがあったにもかかわらず、家族に断りなく多額の寄付を受けた医科大側に怒り心頭なのだろう。準詐欺容疑での刑事告訴も検討していると会見で述べている。以下、素朴な疑問だ。本来ならば篤志家から3億円もの寄付があれば、医科大学側は本人の了解を得て名前を公表し、感謝状を手渡すというセレモニーなど行ってしかるべきだろう。それが、家族にも知らせずに、淡々と寄付金を受け取るとはどのような思惑が医科大学側にあったのだろうか。また、寄付金は振込だったのか、現金だったのか、小切手だったのか。

(※写真は、渋谷工業の前社長、渋谷弘利氏が入院していた 金沢医科大学病院)

⇒27日(木)夜・金沢の天気    はれ  

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

☆韓国の尹大統領に感じる「実務家」田中角栄のイメージ

   韓国の尹錫悦大統領がワシントンポストの単独インタビューで日韓関係について触れ、「欧州は過去100年間に数度の戦争を経験したが、それでも戦争を行った国は、未来に向けて協力していく方法を見つけた」「100年前の歴史のために日本がひざまずいて許しを乞うべきだという考え方を受け入れることはできない」と発言した。メディア各社も記事を引用するカタチで報じている(※写真は、4月24日付・ニューズウイーク日本語Web版)。

   尹大統領は日本との未来志向の外交関係を改めて述べたことになる。ことし3月16日、大統領として初来日し、岸田総理と首脳会談に臨み、トップが互いの国を訪問する「シャトル外交」を復活させることや、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮に対して日米韓の連携を強化すること、経済安全保障に関する協議体の創設、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の正常化、そして、拉致問題について協力を約束するなど前向きな姿勢を示した。

   尹大統領の日本との未来志向の関係づくりは一貫していて、韓国の閣議(3月21日)で言及した内容からも読み取れる。イギリスのウィンストン・チャーチル首相の言葉を引用して、「もし、われわれが現在と過去を競わせたら、必ず未来を逃すことになるだろう」と述べた。そして、「私は去年5月の大統領就任以来、存在自体、不透明になってしまった韓日関係の正常化の方策について悩んできた。まるで出口のない迷路の中に閉じ込められた気分だった。しかし、手をこまねいてただ見ているわけにはいかなかった。日増しに激しくなる米中競争、サプライチェーンの危機、北の核脅威の高度化など、韓国を取り巻く複合的な危機の中で韓日協力の必要性はさらに高まっている」(3月22日付・NHKニュースWeb版)

   「私も、目の前の政治的利益のための楽な道を選び過去最悪の韓日関係を放置する大統領になる可能性もあった。しかし、昨今の厳しい国際情勢を後回しにして、私までもが敵対的ナショナリズムと反日感情を刺激して国内政治に利用しようとするなら、大統領としての責務を裏切ることになると思った」(同)

   上記の尹大統領の言葉からは「親日家」という言葉は浮かんでこない。むしろ、「実務家」という言葉がふさわしい。日本の歴代の総理にたとえるならば、就任わずか85日で日中国交回復をなし遂げた田中角栄のようなイメージだ。

⇒25日(火)夜・金沢の天気     あめ

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

☆衆参補選で問われたこと、選挙は変わるか

   衆参院5つの選挙区で補欠選挙(衆院:千葉5区、和歌山1区、山口2区、同4区、参院:大分)、そして統一地方選の投開票がきょう行われた。午後8時、投票が終了するやいなやテレビの「当選確実」の速報が出たのは山口4区の衆院補選だった。安倍元総理の死去に伴い、安倍氏の後継として立った自民新人の吉田真次氏が立ち、本来ならば「弔い選挙」というイメージなのだが、立憲民主党から有田芳生氏が立候補したことで、「統一教会問題を問う選挙」でもあった。

   何しろ安倍氏と旧統一教会との関わりが襲撃事件の引き金となり、その後、連日のようにワイドショーなどでは統一教会による多額献金問題がクローズアップされ、旧統一教会問題に詳しいジャーナリストの有田氏が出演していた。選挙の結果は吉田氏が5万1961票で初当選、有田氏は2万5595票だった。得票率にして、63.5%と31.3%だった。NHKなどの報道によると、安倍元総理の昭恵夫人が候補者選びから選挙戦にも関わるなど、後継者の吉田氏を全面支援したことで、「弔い選挙」となり他の候補を寄せ付けなかったのだろう。

   ただ、山口県選管の発表によると、山口4区の確定投票率は34.71%で前回選挙(2021年10月31日)を13.93ポイントも下回り、過去最低となっている。また、前回、安倍氏は8万票余りを獲得していた。数字だけ眺めると、「弔い選挙」とは言え、山口4区の有権者はさめていたのではないだろうか。むしろ、有田氏が31%の得票率を得たことが気にかかる。落選の報道を受けて、有田氏は「保守王国、自民党王国と戦後ずっと言われてきた山口4区において、それが溶けはじめてきていると本当に確信を持っている」と述べている(23日付・産経新聞Web版)。

   今回の衆参の補選で目立ったのは、女性候補の躍進ではないだろうか。5人の当選者のうち、3人が女性だった。統一地方選挙が行われた石川県でも、市議選で無投票を含めて19人が当選してる。金沢市議選(定数38)では7人が当選を果たしている。これから選挙の様相が変わりそうムードを感じた選挙だった。

⇒23日(日)夜・金沢の天気    はれ

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

★五輪汚職の初判決で読む 大会組織委の機能不全ぶり

   この判決からはオリンピック組織委員会そものが機能不全の状態だったことが浮かび上がってくる。東京オリンピック・パラリンピックを巡る汚職事件で、紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲被告が大会組織委員会の高橋治之元理事に大会スポンサー契約をめぐり、2800万円を提供したとして贈賄罪が問われていた裁判。東京地裁はきのう21日、懲役二年六月、執行猶予四年(求刑懲役二年六月)の判決を言い渡した。青木被告以外には元副会長ら2人も有罪判決が下された。まさに、「紳士服の青木」に泥を塗ったカタチだ。

   一連の汚職事件では、「みなし公務員」だった高橋元理事に対する賄賂の総額はAOKIホールディングスや出版社「KADOKAWA」、広告会社など5ルートから1億9800円に及んでいる。収賄側は高橋被告を含む3人、贈賄側は12人が起訴されていて、今回は初めて判決。

   メディア各社の報道によれば、電通元専務の高橋元理事はスポンサー選定にかなりの権限を持っていた。逆に言えば、ほかにスポンサー集めのプロがおらず、大会組織委としては、実績がある高橋元理事に「お任せ」だったのだろう。マーケティング担当として任命したのは大会組織委の会長だった森喜朗元総理だった。

   今回の判決文でも高橋元理事の「強権ぶり」が述べられている。「当時、組織委員会の森会長を交えた会食の場などで、高橋理事の影響力の強さを認識し、その影響力を頼って犯行に及んだ。高橋被告の影響力を利用し、自社の利益を追求しようとした」。AOKI側は高橋元理事にスポンサーの選定や日本選手団の公式服装の優先供給権などを依頼した。コンサルタント料として「みなし公務員」である高橋元理事の会社を経由して5100万円を供与を受けた。ただ、AOKI側から5100万円を受領したと起訴されたものの、贈賄罪の公訴時効は三年で、それ以前の提供分は立件されていない。

   比較するのはお門違いかもしれないが、青木被告は大会組織委の会長だった森元総理に「現金200万円を手渡した」と供述(2022年9月1日付・産経新聞Web版)。これに対し、高橋元理事には5100万円なので、ケタ違いだ。とてつもない「影響力」のある権限を高橋元理事はなぜ振るうことができたのか。その一つには、東京オリ・パラそのものを誘致するロビイストだったという背景がある。ロイター通信Web版(2020年3月31日付)は、五輪招致をめぐり招致委員会から820万㌦(8億9000万円)の資金を受け、IOC委員にロビー活動を行っていたと報じている。ロビー活動については、国際的にも問題が指摘されていた。この疑惑では、フランス司法当局の捜査対象となったJOCの当時の竹田恒和会長が2019年6月に退任している。

   「何をどう言われようが、東京五輪を誘致したのはオレさまだ」、そして「スポンサー集めは電通専務だったオレしかできない」との強烈な自負心があったのだろう。大会組織委は高橋元理事の独壇場だったに違いない。

⇒22日(土)夜・金沢の天気    はれ 

☆政治家へのテロ行為 根深い恨みなのか義憤なのか

☆政治家へのテロ行為 根深い恨みなのか義憤なのか

   戦後、政治家への襲撃事件を起こした3人の若者に共通点はあるのか、探ってみたい。解散総選挙を控えた昭和35年(1960)10月12日、東京の日比谷公会堂で当時の自民党と社会党、民社党の党首演説会が行われた。社会党の浅沼稲次郎委員長が演説中に壇上に駆け昇ってきた17歳の山口二矢(おとや)に刃物で脇腹や胸を刺され死亡した。逮捕された山口は東京少年鑑別所に入れられたが、事件の3週間後の11月2日、首吊り自殺した。山口は、銀座・数寄屋橋での辻説法で知られた赤尾敏(1899-1990)が率いた大日本愛国党に入党するなど、右翼思想に傾倒していた。

   今月15日、和歌山市の漁港で選挙の応援に訪れていた岸田総理に向かって手製の爆発物が投げ込まれた事件。逮捕された木村隆二容疑者24歳は、被選挙権を30歳以上とする規定や供託金(300万円)を必要とする規定などがあり参院議員選挙に立候補できなかったのは憲法違反だとして、国に損害賠償を求める裁判を起こしていた(18日付・NHKニュースWeb版)。

   木村容疑者が起こした裁判は、代理人の弁護士をつけない「本人訴訟」で行われている。裁判所に提出した準備書面で、憲法15条の3項で「公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する」と定められているのに、被選挙権の年齢制限や供託金の制度が設けられているのは実態は「制限選挙」であり、憲法違反だとして批判していた。また、ツイッターで、岸田内閣は安倍元総理の国葬を閣議決定のみで強行したと主張し、「このような民主主義への挑戦は許されるべきものではない」などと訴えていた(同)。

   去年7月8日、奈良市で街頭演説中の安倍元総理を手製の銃で撃って殺害したとして、同市に住む山上徹也容疑者41歳が殺人と銃刀法違反の罪で逮捕された。2005年まで3年間、海上自衛隊の広島県呉地区の部隊で勤務していた。今後、裁判員裁判で審理されることになるが、殺害の動機とされるのが、母親が世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)へ高額な献金をしたことから家庭が崩壊し、恨みを募らせたことが事件の発端とされる。安倍氏は祖父・岸信介の代から三代にわたって旧統一教会と深いつながりがあり、山上被告は安倍氏にも恨みを抱いていたとされる。

   3人の凶行で思い当たるのは、「義憤」という言葉だ。山口の場合は、浅沼稲次郎が1959年に中国を訪問した際に、「アメリカ帝国主義は日中両国人民の共同の敵」と演説したことが、日本の赤化(共産化)を図ろうとする許し難き人物と義憤をたぎらせた。木村容疑者は制限選挙は憲法違反、さらに、世論の反対が多いにもかかわらず安倍元総理の国葬の決行したことは民主主義への挑戦と。また、山上被告はいわゆる「宗教2世」として貧困を体験して、旧統一教会と関わりが深かった安倍元総理に銃を向けた。

   義憤は「道理に外れたことや、公平ではないことに対する怒り」と解釈している。山上被告の場合は当事者であり体感型の義憤、山口の場合は思想型の義憤、木村容疑者は被害者意識型の義憤と言えるかもしれない。彼らの行為を正当化するつもりはいっさいない。

⇒18日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

☆北方四島は日本領と認めず その中国の思惑は何か

   前回ブログの続き。北海道の根室の目と鼻の先にある歯舞諸島など北方領土で、ロシアは軍事演習を行う。極東を拠点とする太平洋艦隊を戦闘態勢に移行させ、サハリン本島と日本の北方領土周辺で仮想敵の上陸阻止を想定した軍事演習だ。時期は明らかにしていない。

   ロシア側は去年3月21日、日本との平和条約交渉の中断を一方的に表明して以降、立て続けに北方領土などで軍事演習を行っている。4月には国後島と択捉島にある2ヵ所の演習場で、1000人以上の兵士と軍事装備を投入し、対戦車ミサイルシステムや自走砲などの実弾発射を実施した。「北方四島は固有の領土」との立場を貫く日本を牽制し、ロシアの実効支配を強くアピールする狙いだろう。

   さらに気になるのは中国が、北方四島をめぐるロシアの領有権に軟化の姿勢を表明したことだ。共同通信Web版(4月4日付)によると、3月20-21日に習近平国家主席がプーチン大統領と行った会談で、北方四島の領有権問題について「(どちらか一方の)立場を取らない」と表明していたことが分かった。中国関係筋が明らかにした。中国は1964年に最高指導者だった毛沢東が北方四島は日本領だと明言して以降、その認識を崩していなかったが、ロシア側に歩み寄り、中立の立場に変更したことになる。

   表明した経緯はこうだ。会談でプーチン氏がロシアが去年3月に北方四島に設置した免税特区の活性化が重要だと指摘。先月16日の日韓首脳会談で日韓関係が改善したため、韓国企業による投資は望めないとの認識を示し、中国企業の投資を要請した。これに対し、習氏は領有権問題については「立場を取らない」と表明した。特区への投資に参加するかどうかは、経済政策を担う国家発展改革委員会の担当者に検討させるとのみ述べ、明確な回答は避けた(4月4日付・共同通信Web版)。

   以下はあくまでも憶測だ。この記事の発信は【北京共同】とあり、中国側から共同通信に伝わった情報だ。日本で報道されることで、日本側の反応を中国はうかがっているのだろう。さらに一歩踏み込んで、「免税店特区」と表現されているが、これはたとえで、プーチン氏は「軍事基地」への中国参加を促したのでないだろうか。習氏はとりあえず、領有権問題については「立場を取らない」と返答するにとどめた。北方四島をめぐり中露による何らかの駆け引きが始まっている、との憶測だ。別に根拠があるわけではない。(※地図は、外務省公式サイト「日本の領土をめぐる情勢」より)

⇒16日(日)夜・金沢の天気      くもり

★物騒な世の中「政治家テロ」日本と「北方領土に偽旗」ロシア

★物騒な世の中「政治家テロ」日本と「北方領土に偽旗」ロシア

   日本はいつの間にか「テロ多発国家」になった。報道によると、きょう15日午前11時半ごろ、和歌山市の雑賀崎漁港で、岸田総理が衆院和歌山1区の補欠選挙の応援演説を始める直前に、銀色で金属製とみられる筒状の爆発物が投げ込まれた。「ドン」という大きな爆発音とともに白い煙が上がった。岸田総理は現場から避難してけがはなく、30代の男性警察官1人が左腕にけがを負った。

   投げ込んだ男が警察官に取り押さえられた。威力業務妨害の疑いで現行犯逮捕されたのは兵庫県川西市に住む木村隆二容疑者、24歳。政治家への襲撃は去年7月8日、安倍元総理が参院選の応援で訪れた奈良市で街頭演説中に銃撃され死亡している。

   来月15日からG7広島サミットが開催される。世界のメディアの論調は、政治家へのテロが多発する日本は安全なのかと不安視するに違いない。

   話は変わる。「ロシアの言うことが信じられない、プーチンの言うことが信じられない」、世界の民主主義国家の多くの人々はそう思っているのではないだろうか。ウクライナ政府を「ネオナチ」呼ばわりして武力侵攻を正当化する偽旗作戦はその象徴的な事例だ。物騒な話になるが、その二の舞いが日本で起きるかも知れない。

   報道によると、ロシアのショイグ国防相は14日、ロシア軍幹部との会合で、極東ウラジオストクに司令部を置く太平洋艦隊が、北方領土やサハリンへの敵の上陸を阻止することを目的にした軍事演習を開始したと明らかにした。 演習では空軍、海軍、航空宇宙軍が参加し、ミサイルや魚雷発射などの対潜水艦攻撃の訓練も行う。「北方四島は固有の領土」との立場を貫く日本を牽制し、ロシアの実効支配を強くアピールする狙いだろう。

   北方領土の歯舞諸島などは根室の目と鼻の先にある。ここでロシアは敵の上陸を阻止する軍事演習を行うというのだ。日米安保条約があるので、ロシアの軍事演習を阻止すればよいと思ってしまうが、日本が実効支配できていない地域は日米安保の適用対象外となり、アメリカの防衛義務は生じない。北方領土がロシアによる不法占拠であるにもかかわらず、だ。

   去年4月4日、ロシアのセルゲイ・ミロノフ下院副議長がロシアのオンラインメディアで「どんな国でも、隣国に対して権利を主張することはできる」「多くの専門家によると、ロシアは北海道に対してあらゆる権利を持っている」と述べ、物議を醸した。これを口実に、プーチン大統領が「北海道の権利の奪還」という偽旗を掲げて動き出すのではないだろうか。ロシアの軍事演習はその予行ではないのか、とは考え過ぎだろうか。

⇒15日(土)夜・金沢の天気     くもり

✰北の弾道ミサイルはなぜレーダーから消えたのか

✰北の弾道ミサイルはなぜレーダーから消えたのか

   きのう朝、北朝鮮による弾道ミサイル発射で、日本政府は北海道に落下のおそれがあるとしてJラートを発出して、住民に避難を呼びかけた。その後、落下の可能性がなくなったと修正する情報を出した。Jアラートは精度の高いレーダー情報をもとに分析の上で発出されるが、メディア各社の報道によると、弾道ミサイルが途中でレーダー上から消えたことが原因とされる。

   その弾道ミサイルの発射の動画が、きょう北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央テレビ」で公開され、NHKがツイッターで上げている。ゆっくりと立ち上がる移動式発射台。そして、空中で燃料が点火されると轟音を上げて空へと突き進んでいく。実に生々しい映像だ=写真・上=。

   きょうの北朝鮮の党機関紙「労働新聞」は 「조선민주주의인민공화국 전략무력의 끊임없는 발전상을 보여주는 위력적실체 또다시 출현 경애하는 김정은동지께서 신형대륙간탄도미싸일 《화성포-18》형 첫 시험발사를 현지에서 지도하시였다」との見出しで、金正恩総書記の立ち会いのもと、新型の大陸間弾道ミサイル「火星18型」を初めて試験発射したと述べている=写真・下=。

   2つの国営メディアの記事によると、今回の新型のICBM「火星18型」の発射実験は、従来の液体燃料ではなく、固体燃料が使った初めての発射実験だった。液体燃料は注入に時間がかかることから、その発射の兆候が他国の衛星などで察知されやすい。固体燃料だと即時に発射でき、また、地下サイロ(格納庫)から発射できる。金総書記は「『火星18』は核反撃態勢の効用性を進展させ軍事戦略の実用性を変革させるだろう」と述べ、実験成功に満足しているとのこと。

   日本の防衛にとっての問題は、冒頭でも述べたように、そのICBMを防衛省のレーダーで見失ったことではないだろうか。以下は憶測だ。北朝鮮は、液体燃料のICBM「火星17型」を北海道近辺に何度も発射している。ことし3月16日には午前7時9分に発射、飛翔距離は約1000㌔、最高高度は約6000㌔超え、70分飛行して午前8時19分ごろに北海道の渡島大島の西約200㌔のEEZ外側の日本海に落下した。今回、自衛隊の各種レーダーなどで発射直後から落下まで追尾をできなかったということは、火星18型の最高高度がこれまで想定していた火星17型の6000㌔よりはるかに超えたためではないだろうか。

   北朝鮮が液体燃料から固体燃料へと、奇襲攻撃を想定したICBMにシフトさせ、さらに、高高度へと機能を拡大させているとなると、いわゆる「ロフテッド軌道」の角度を低くすれば、飛翔距離は1万4000㌔を超えてアメリカ全土が射程内に入る。憶測の話ではあるものの、日本の防衛レーダーでICBMそのものが探知できなくなったこと、そのことが問題ではないだろうか。敵基地攻撃能力などとは次元の異なる防衛の有り方が問われている。

   そして、いったいどこの国が北朝鮮をコントロールしていくのか。このままいけば、「核反撃態勢」を整えるために、7回目の核実験も時間の問題ではないだろうか。

⇒14日(金)午後・金沢の天気    くもり

★ニュースは西の空から降り注ぐ 黄砂に続き弾道ミサイル

★ニュースは西の空から降り注ぐ 黄砂に続き弾道ミサイル

   前回ブログの続き。けさから金沢の空は晴れてはいるものの、黄砂でかすみがかかったような状態だ。写真は午前7時10分ごろ、金沢市の寺町台から小立野台周辺を撮影したもの=写真・上=。きのうの夕方に比べて、黄砂のピークは去ったのか、かすみ具合は少々薄くなったようにも見える。

   気象庁公式サイトによると、黄砂は北陸や北日本、北海道にかけての広い範囲に飛来し、各地で物が肉眼ではっきり見える範囲の「視程」が10㌔未満となっている。黄砂の範囲はさらに広がり、けさは東京都心でも観測されている。早朝から黄砂のニュースであふれていた。

   西の空から飛来するニュースは黄砂だけではない。午前7時25分ごろ、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したとの速報がNHKラジオで流れた。写真撮影を終えて、車で帰宅途中にラジオの男性アナの声がせっぱ詰まったようなトーンになった。「Jアラートが出ています。午前8時ごろには弾道ミサイルが北海道周辺に落下するものと見られます。ビルなどに避難してください」などと繰り返していた。午前7時55分ごろだ。

   今回のニュースで一瞬思ったことは、北朝鮮が計算ミスで北海道に撃ち込んだのではないか、と。北朝鮮は先月3月16日午前7時9分ごろ、首都・平壌近郊からICBM(大陸間弾道ミサイル)1発を東側に向けて発射、70分飛行し、午前8時19分ごろに北海道の渡島大島の西約200㌔のEEZ外側の日本海に落下させている。2月18日にはICBMを北海道の西200㌔のEEZ内に落下させている。(※写真・下は、2022年3月24日に北朝鮮が打ち上げたICBM「火星17型」=同月25日付・労働新聞Web版)

   その後、Jアラートによる避難指示は訂正されたが、通勤・通学の時間とも重なり北海道は大混乱に陥ったことは想像に難くない。もし、同じ事が北陸で発出されたら、どこに緊急避難すればよいのか。周囲にシェルターらしきものはない。ビルやマンションはあっても、階上に窓があるので吹き飛ばされる。ビルの地下駐車場に逃げ込むしかない、のか。

⇒13日(木)午前・金沢の天気    はれ

★火山の噴煙と黄砂が漂う極東アジア

★火山の噴煙と黄砂が漂う極東アジア

   ロシアのカムチャツカ半島にあるシベルチ火山で大規模な噴火がきのう10日午後10時10分(日本時間)ごろにあり、気象衛星ひまわり9号の観測では噴煙が高度約1万6千㍍に到達していると推定される(気象庁公式サイト「報道発表」)。 

   カムチャッカの火山活動を監視しているロシアの「KVERT」(カムチャッカ火山噴火対策チーム)の公式サイト(10日付)をチェックすると、シベルチ火山の西側に大規模な火山灰雲が漂っており、航空に関する「コードレッド(厳戒警報)」を発令している。国際線の航空機は通常、高度1万から1万3千㍍を巡航するため、「進行中の火山活動により、国際線や低空飛行の航空機に影響を与える恐れがある」と警告を発している。(※写真・上は4月11日付・「Volcano Discovery」公式サイトより)

   カムチャツカ半島には多数の活火山があり、たびたび規模の大きな噴火を起きていて、去年5月にはベズイミアニ火山でも噴煙が1万5千㍍級の噴火があった。カムチャッカ半島に比べれば規模はまだ小さいが、日本でも鹿児島県の桜島がことし2月8日に噴火し、高さ1千㍍の噴煙を上げている。浅間山や薩摩硫黄島、諏訪之瀬島でも噴火が続く。

   火山噴火のニュースを目にすると、つい連想するのが富士山だ。1707年の宝永大噴火以後、300年余り噴火していないものの、山梨、静岡、神奈川の3県や国でつくる火山防災対策協議会は噴火に備えて先月29日、これまでの避難計画を全面的に改定した「富士山火山避難基本計画」を策定した。3県で被害が見込まれる「避難対象エリア」の27市町村の住民79万2000人と滞在している人らが対象となっている。富士山噴火をめぐっては、首都圏にも降灰の影響があるとの試算が政府の中央防災会議の作業部会で20年3月に公表されている。

   そして、中国からの黄砂があす北陸などに飛来する。ウエザーニュースWeb版によると、中国大陸のゴビ砂漠で巻き上がった黄砂が東に進み、衛星写真では中国東北エリアや華北エリア、山東半島周辺に広がっている。きょう夜からあす12日にかけて西風が強まり、気象庁の黄砂予測によると、あす夜にはこの黄砂が北海道から九州にかけての広い範囲に流れ込んでくる予想だ。(※黄砂予想図は気象庁公式サイト「黄砂予想」より)

   とくに、北陸から東北、北海道かけては黄砂の濃度が高くなり、視界も悪化しそうだ。洗濯物や車の汚れもさることながら、航空機の離着陸などの交通にも影響が生じるのではないだろうか。火山の噴煙と黄砂が極東アジアに漂う。

⇒11日(火)午後・金沢の天気   はれ時々くもり