⇒ニュース走査

☆能登で演じ、演出した俳優・仲代達矢氏死去

☆能登で演じ、演出した俳優・仲代達矢氏死去

俳優の仲代達矢氏が亡くなった。40年前に、主宰する無名塾の合宿場所を能登半島の中ほど位置する七尾市中島町に設け、同町で造られた能登演劇堂では、自ら演じ、演出を行ってきた。能登半島地震の復興に想いを寄せ、ことし5月と6月に能登演劇堂で演じた『肝っ玉おっ母と子供たち』が最後の舞台となった。このブログでは仲代氏が演出した『等伯~反骨の画聖~』について書いている。以下再録。                

織田信長や豊臣秀吉が名をはせた安土桃山時代の絵師、長谷川等伯は七尾で生まれ育った。その等伯をテーマとする演劇『等伯~反骨の画聖~』が2023年10月に能登演劇堂で上演された。無名塾と市民キャストによる合同公演で、演出は仲代達矢氏。鑑賞に行ってきた。

感想から先に言えば、京都で画壇の一大勢力となっていた狩野永徳らの狩野派に、能登からやってきた等伯が挑み、名刹の障壁画や天井絵などを手掛けて狩野派の壁を破っていく。下剋上の戦いを制したかと思ったときに、親交があった千利休が切腹を余儀なくされ、跡継ぎの長男・久蔵が病で亡くなる。その後に古里である能登の風景の『松林図屏風』を渾身の想いで描く。松林図屏風に等伯が込めた想いとは何だったのか。強風に耐えて細く立ちすくむ能登のクロマツの林に、等伯は自らの心を重ねたのだろうか。等伯の人生ドラマはここで終わる。

演出を担当した仲代氏は松林図屏風を描いた等伯の心情をこう表現している。「天下一の絵師となるために政りごとに阿(おもね)るかのような、世俗に仕えた彼の一面を見るような気がするのである。とは言え、彼はその世俗に流されることなく、彼自身の独自の世界を切り拓いていった。それは、松林図屏風に象徴されるように、世の中の動きとはっきり一線を画した、彼の孤高の世界だったように私には思えるのである」(『等伯~反骨の画聖~』公式パンフレットより)

等伯が「松林図」を描いたのは1594年、56歳のころだった。その後、大徳寺や南禅寺で襖絵を手掛け、僧侶の地位である「法眼」に叙せられる。時代は江戸幕府へと移り、家康の命だったのだろうか、72歳で江戸に向かうも発病。到着して2日後に亡くなったと伝えられている(同)。墓は等伯が上洛し身を寄せた京都市上京区の本法寺にある。

                    ◇

仲代氏はことし2月に等伯生家の菩提寺である七尾市の本延寺で営まれた等伯の四百十六回忌法要に参列している。このとき、能登との縁で演出した等伯の人生ドラマに自らの人生を重ねていたかもしれない。享年92歳。(※写真は、能登演劇堂公式サイトより)

⇒11日(火)夜・金沢の天気    くもり

★選挙通じ組織固めか 旧統一教会元会長が金沢市長選に出馬へ

★選挙通じ組織固めか 旧統一教会元会長が金沢市長選に出馬へ

しばらく鳴りを潜めていた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が再び動き始めた。きょう5日付の石川県の新聞メディアによると、来年3月の任期満了に伴う金沢市長選に、旧統一教会の元会長の徳野英治氏(70歳)が立候補の意向を固め、今月10日にも記者会見し、正式表明するという。韓国の前の政権との癒着疑惑で旧統一教会トップの韓鶴子総裁が逮捕・起訴され、また、日本では解散命令の是非が東京高裁で審理されている=写真、3月26日付の各紙=。このようなタイミングで元会長の金沢市長選への出馬の狙いは何なのか。

徳野氏はある意味で危機管理が強みのようだ。金沢の高校時代に入信し、その後、2008年に11代会長に就任する。統一教会の霊感商法が社会問題となり、2009年2月に警視庁の摘発を受け複数の教団信者が逮捕されるという事件があった。このとき、徳野氏は記者会見で謝罪し、「コンプライアンス宣言」を発した。コンプライアンス宣言以降は捜査機関による検挙はなかったものの、霊感商法は止まっていなかった。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、1987年から2021年までの霊感商法による「被害件数」は3万4537件で、「被害総額」は約1237億円に上る(Wikipedia「全国霊感商法対策弁護士連絡会」より)。

さらに政治家とのネットワークづくりにも長けている。徳野氏が2012年から13代会長(2020年まで)となり、2016年6月、当時の安倍総理から首相官邸に招待されていたとの報道もあった。双方が反共産主義の立場を共有していて、教会側が党候補者の選挙支援などを行っていた。自民の議員秘書の中には信者が入り込んでいるなどと、新聞メディアなどで報じられたこともある。

教団の実力者である徳野氏が金沢市長選に出馬する狙いは何だろうか。以下、あくまで憶測だ。それは、旧統一教会トップの韓鶴子総裁が逮捕・起訴され、また、日本では解散命令の是非が東京高裁で審理されていている中で、動揺する信者の気持ちを引き締めたいとの思いがあるのかもしれない。おそらく、徳野氏の立候補がきっかけとなり、各地で旧統一教会の幹部の出馬が続くかもしれない。選挙を通じて信仰を訴え、組織内を引き締めていく、そんな新たな布教の手段だろうか。あるいは、宗教法人の解散を見越して政治団体化を狙っているのか。

⇒5日(水)午前・金沢の天気   くもり

☆建築家の坂茂氏が「文化功労者」に 能登復興への美学と使命感 

☆建築家の坂茂氏が「文化功労者」に 能登復興への美学と使命感 

前回ブログの続き。取り上げる順番は逆になったが、政府は2025年度の文化勲章・文化功労者を発表した(10月17日)。その中で能登の国際芸術祭や震災復興と関わってきた建築家の坂茂(ばん・しげる)氏が文化功労者に選ばれている。坂氏の能登での仕事の一端を初めて見たのは、能登半島地震の前年2023年5月5日に震度6強の揺れが起きた珠洲市を訪れたときだった。以下再録。

同市に入ったのは10日後の5月15日だった。家屋などの被害が大きかった同市正院町を歩いていると、横から声をかけられた。市長の泉谷満寿裕氏だった。金沢大学の教員時代に同市との協働プロジェクトを手掛けたことが縁で、これまでも声をかけていただいていた。そのときに、「バンさんのマジキリがすごいので見に行かれたらいい」と。「バンさんのマジキリ」の意味が分からなかったが、「それはどこにありますか」と尋ねると、近くの公民館にあるとのことだった。

さっそく行ってみると、公民館は避難所となっていた。スタッフの人が案内してくれた。実際に見てみると、避難所でつくられた個室パーテーションだった=写真・上=。説明によると、坂氏は被災した人々にプライバシーを確保する避難所用の「間仕切り」の支援活動を行っていて、同市にも震災後にいち早く間仕切りが寄贈された、とのこと。間仕切りは木製やプラスティックなどではなく、ダンボール製の「紙管」を使ったもの。カーテン布が張られているが、プライバシー確保のために透けない。中にあるベッドもダンボールだ。坂氏は1995年の阪神大震災を契機に災害支援活動に取り組んでいて、このような「バンさんのマジキリ」を開発したようだ。

坂氏はその年の秋に同市で開催された「奥能登国際芸術祭2023」では、日本海の絶景が見渡せる丘の上に長さ40㍍、幅5㍍の細長い建物「潮騒レストラン」を造った=写真・中=。一見して鉄骨を感じさせる構造だが、よく見るとすべて木製だった。ヒノキの木を圧縮して強度を上げた木材を、鉄骨などで用いられる「トラス構造」で設計した日本初の建造物という。日本海の強風に耐えるため本来は鉄骨構造が必要なのかもしれないが、それでは芸術祭にふさわしくない。そこで、鉄骨のような形状をした木製という稀にみる構造体になった。まさにこの発想はアートだと感じ入った。

もう一点。2024年元日の最大震度7の能登地震で同市では坂氏が監修した仮設住宅が整備された=写真・下=。木造2階建ての仮設住宅は木の板に棒状の木材を差し込んでつなげる「DLT材」を積み上げ、箱形のユニットとなっている。地元県産のスギを使い、木のぬくもりが活かされた内装となっている。観光名所でもある見附島近くあり、外装の色合いも周囲の松の木と妙にマッチしていて、まるで海辺のリゾート地のような雰囲気を醸し出していた。

建築を通じて社会貢献をしていきたい、社会課題を解決していきたいという提案型の作品をつくり続ける坂氏の美学、そして使命感が伝わってくるようだった。

⇒4日(火)午前・金沢の天気   はれ

★漫画家の永井豪氏に「秋の叙勲」 ふるさと能登復興への想い

★漫画家の永井豪氏に「秋の叙勲」 ふるさと能登復興への想い

きょう3日付で秋の叙勲受章者が発表された。芸術文化の分野で漫画家の永井豪氏に旭日小綬章が贈られることなり、新聞メディア各社が報じている。永井氏は能登半島の輪島市出身で、朝市通りにあった「永井豪記念館」の名誉館長をつとめていた。このブログで何度か永井氏と能登の関わりを述べているので、受賞のお祝いの気持ちを込めてまとめてみる。以下再録。

今から43年前に自身は新聞記者として輪島支局に赴いた。当時の永井豪氏の作品のイメージは、『ハレンチ学園』などギャグ漫画や、『デビルマン』などテレビアニメ作品だった。地元の人たちは永井氏が輪島出身ということを知ってはいたが、当時それを土地の自慢話として語る人はほとんどいなかった。むしろ、ローマオリンピックなどで銀メダルを獲得した競泳の山中毅選手の話はよく聞いた。

その後、地元での評価が一転したのは日本のアニメが海外で大ブームとなり、永井氏の『UFOロボ グレンダイザー』などがヨーロッパで人気を博したことだった。こうなると地元輪島でも世界の漫画家として評価が高まった。輪島市役所は2009年に「永井豪記念館」の設置へと動いた。永井氏は2019年、フランス政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られた。これがきっかけで永井氏のアニメ作品は地元の美術館などでも展示されるようになった。永井豪記念館へは、インバウンド観光の見学者が増えるなど、観光スポットの一つにもなっていた。

その記念館は去年元日の能登半島地震で朝市通り一帯が焼けて、ビルも焼け焦げた=写真、2024年3月10日撮影=。展示してあったアニメ原画や一部のフィギュアなどの展示物などは無事だった。その後、ビルは公費解体で撤去された。永井氏と所属プロダククションは輪島市と石川県にそれぞれ1000万円、計2000万円の義援金を贈っている。永井氏は「漫画はつらいときこそ、力になって希望を満たすことができる。漫画を描くことで『前に進もう』というメッセージを伝えたい」と語っていた(2024年1月25日付・読売新聞オンライン)。

去年5月29日、永井氏は石川県の観光大使の委嘱を受けた。「復興支援も続けていきたい」と述べ、永井豪記念館の再開にも意欲を示した(同6月1日付・同)。ことし6月にも輪島市役所を訪れ、ロボットアニメの金字塔でもある『マジンガーZ』の作品を寄贈している。この際、行政とタッグを組んで永井豪記念館の再建を具体化してはどうか。能登復興の先進事例になるのではないだろうか。

⇒3日(月・祝)金沢の天気   くもり時々あめ

☆日本企業に期待寄せる対米投資 トランプ大統領「私に電話を」

☆日本企業に期待寄せる対米投資 トランプ大統領「私に電話を」

それにしても総理就任から1週間で日本にとって最も重要な日米外交を高市総理はこなし切ったイメージだ。会談に関する共同文書は作成しなかったが、ことし7月の日米関税合意で約束した巨額投資の履行と、レアアースなど重要鉱物の供給と確保に向けた協力の2つの文書に署名した。署名は実行を約束したことになる。中でも気になるのが、5500億㌦(約84兆円)とされる巨額な対米投資の内容だ。メディア各社の報道(29日付)によると、すでに国内の21社が名乗りを上げているようだ。

首脳会談に合わせ日米両政府はきのう(28日)「日米間の投資に関する共同ファクトシート」を発表した。ファクトシートは事業主体の候補企業と事業内容をまとめたもの。内容は、①原子力発電などのエネルギー、②AI向けの電源開発、③AIインフラの強化、④重要鉱物などーの4分野で21件のプロジェクトが掲げられている。このうち、事業費が明記された16件の総額は3931億㌦(約60兆円)だった。(※写真・上は、日米首脳会談で署名された合意文書を掲げる高市総理とトランプ大統領=28日付・総理官邸公式サイトより)

以下、日経新聞(29日付)ならびに読売新聞(同)の解説記事=写真・下=から以下、引用する。トランプ大統領は日米首脳会談、ならびにアメリカ軍横須賀基地での原子力空母「ジョージ・ワシントン」の乗艦の後、駐日米国大使館の公邸で、投資を名乗り出ている日本の企業経営者らと夕食会を開いた。その時の演説で、「途方もない富と安全保障を太平洋の両岸にもたらす」「もし物事がうまく進まなかったら私に電話してほしい。他の閣僚を差し置いてでも、私が対応する」とアピールした。このコメントを読んで、トランプ大統領は政治家というより、やはり投資家なのだ、との印象を強くした。夕食会はこのひと言で和んだに違いない。

では、日本の企業はどのような対米投資をもくろんでいるのか。ソフトバンクグループはエネルギー関連として「大規模電力インフラ構築に向けた設計と開発」(事業規模・250億㌦)、ニュースケール/ENTRAIエナジーはAI向け電源開発として「AI向けのガス火力や原子力開発を検討」(同・記載なし)、三菱電機はAIインフラの強化として「データセンター向けの発電システムや機械」(同・300億㌦)、パナソニックは同「エネルギー貯蔵システムやその他の電子機器、部品」(同・150億㌦)、カーボン・ホールディングスは重要鉱物関連として「アンモニアや尿素肥料施設の建設」(同・30億㌦)、などとなっている。

アメリカ政府とすれば、日本企業の技術力を高く評価しており、アメリカでの事業展開や米企業との連携に期待を寄せているのだろう。繰り返しになるが、トランプ大統領の「物事がうまく進まなかったら私に電話して・・・私が対応する」の言葉はまさにこの期待を表現している。

⇒29日(水)午後・金沢の天気   はれ

★日米首脳会談で浮かんだ「安倍レガシー」と高市外交のこれから

★日米首脳会談で浮かんだ「安倍レガシー」と高市外交のこれから

「同盟の新たな黄金時代を共につくりたい」。高市総理がきょう午前、アメリカのトランプ大統領と臨んだ日米首脳会談で交わした言葉が印象的だった。会談をNHK中継番組で視聴していた=写真・上=。「黄金時代」と述べるだけあって、日米双方が利する投資を含めたさまざまな話がテーマに上っていた。

高市総理から「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)について日米で進展に向けた協力を進めたいと表明。その後、日米両首脳がレアアースなどの供給と確保についての合意文書に署名した。日米で半年以内に担当閣僚会議を開催し、どのようなプロジェクトに日米で資金を投じるべきか議論を積み上げていく。その上で、日米はオーストラリアなど供給網の多様化を進める国々と連携し、半年以内に投資を実施することを目指す。まさに黄金時代への第一歩と言える。

また、会談の冒頭で高市総理は「安倍総理に対する長きにわたる友情に感謝している。安倍氏からはよく大統領のダイナミックな外交について話を聞いていた」と笑顔で述べた。すると、トランプ大統領は、「私の偉大な友人だった。彼はあなたのことを大変評価していた」と応じた。トランプ大統領と安倍氏はかつて、趣味のゴルフでとともにホールを回り、「ドナルド」「シンゾー」とファーストネームで呼び合う仲だった。写真・下は総理官邸のツイッター(2019年5月26日付)で公開されたもの。安倍総理と(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴルフ場で自撮りした写真だ。

今回の日米首脳会談の中身が濃く、しかもスムーズに運んだのも、安倍氏が総理在任中に築いたトランプ大統領との蜜月関係がよりどころとなっていたのだろう。メディア各社の報道によると、高市総理はトランプ大統領へのプレゼントとして、安倍氏が使っていたゴルフクラブを用意した。高市総理を安倍氏の「後継者」と印象づける狙いがあったようだ。

首脳会談の後、高市総理とトランプ大統領は都内の在日米軍基地から大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に同乗して、アメリカ軍横須賀基地に行き、停泊中の原子力空母「ジョージ・ワシントン」に乗艦した。中国の海洋進出などが目立つことから、日米同盟に基づく安全保障協力を強化する姿勢を強調したようだ。高市総理は「日本の防衛力を抜本的に強化してこの地域の平和と安定により一層積極的に貢献していく」と述べた。トランプ大統領は「アメリカと日本の大切な同盟は全世界で最も卓越した関係のひとつだ」と語り、第2次世界大戦を念頭に「悲惨な戦争の灰の中から生まれ、80年以上にわたり我々の絆は成長し、現在の美しい友好関係にある」と強調した。

日米会談による新たな経済協力と、横須賀基地での日米同盟の確認。高市総理にとって「安倍レガシー」を乗り越える高市外交のきっかけとなったのかどうか。少なくとも内閣支持率はさらにアップするかもしれない。

⇒28日(火)夜・金沢の天気    小雨

☆テレビが世論をリードする「テレポリティクス」時代の終焉

☆テレビが世論をリードする「テレポリティクス」時代の終焉

きょう(27日)東京株式市場で日経平均株価が初めて5万円の大台に乗せた。前週末と比べた上げ幅は1200円を超え、終り値は5万0512円台だった。報道各社の世論調査で高市内閣の支持率が軒並み高水準(FNN75%、日経74%、読売71%)だったことに加え、アメリカと中国の両政府による貿易協議でアメリカが100%の対中関税発動を見送る方向となったことが追い風となったようだ。

話は変わる。ジャーナリスト田原総一朗氏のBS朝日討論番組『激論!クロスファイア』(今月19日放送)での発言が波紋を広げている。番組では自民党の片山さつき氏、立憲民主党の辻元清美氏、社民党の福島瑞穂氏がゲストだった。問題発言のきっかけは、選択的夫婦別姓をめぐる議論で、導入に慎重な立場を取る高市自民党総裁(当時)に対して、田原氏は「何で高市を支持しちゃうの。あんな奴は、死んでしまえと言えばいい」と言い放った。収録番組だったにもかかわらず、問題発言をカットしなかった局側も問われ、番組は打ち切りとなった。

田原氏が司会をするテレビ朝日系番組『サンデープロジェクト』や『朝まで生テレビ!』をこれまで何度も視聴してきたが、田原氏の手法はあえて相手を挑発して本音を引き出すことを得意技としていた。同じくアメリカCNNのトーク番組「ラリー・キング・ライブ」のインタビューアー、ラリー・キング氏(1933-2021)の手法は執拗に食い下がって相手の感情をさらけ出してしまうというものだった。手法は似て非なるものだったが、要は相手に迫る迫力が聞き手(キャスター)にあるということだ。ただ、田原氏は御年91歳、この迫力をいつまで保つことができるか。

ある意味で田原発言はテレビの時代のターニングポイントになったのではないだろうか。「テレポリティクス」と呼ばれた、テレビが世論をリードする時代の終わりだ。全盛期の1990年代から2000年初頭にかけて、テレビ朝日の番組『ニュースステーション』で久米宏氏がキャスターとして、いわゆる都市型選挙の世論をリードした。田原氏も番組『サンデープロジェクト』や『朝まで生テレビ!』で当時の自民党政権の政治責任を追及する先兵役を担っていた。テレポリティクスの象徴的な出来事もあった。1993年にテレビ朝日の報道局長が民放連の内輪の勉強会で、「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしようではないかと報道内部で話した」などと発言。この発言が新聞記事=写真、1993年10月13日付・産経新聞=で報じられ、国会での証人喚問(同年10月25日)という異例の展開となった。

テレポリティクスの終わりを示す数値がある。ビデオリサーチ社による調査「自宅内における各メディアとの1日の接触時間」(2000-2024年)によると、テレポリティクスの全盛時代の2000年の1日のテレビ視聴は208分だったが、2024年には116分に大幅ダウン。録画再生の23分と合わせても139分だった。一方、インターネット(PC・スマホ・タブレット・携帯)との接触は2000年は1日8分とわずかだったが、2024年は117分に伸びている。

事件や災害、スポーツの情報をリアルタイムで伝えてくれるのはテレビであることは間違いない。テレポリティクスなどと気負わずに淡々と報じてくれればそれでよい。田原総一朗氏の問題発言からそんなことを思った。

⇒27日(月)午後・金沢の天気  あめ

★加賀能登の逸品~万博から地球儀戻る、加賀料理が国文化財に~

★加賀能登の逸品~万博から地球儀戻る、加賀料理が国文化財に~

大阪・関西万博で展示されていた輪島塗の地球儀『夜の地球 Earth at Night』が石川県輪島漆芸美術館に戻ってきた。地元メディアによると、万博展示棟では国内外からの観光客321万5784人が鑑賞したようだ。8月には秋篠宮家の次女佳子さまも見学されるなど、輪島復興のシンボルとしても注目を集めた。

漆芸美術館では正面入り口左側エントランスホールの特別展示室で「夜の地球」が公開されている。高さ1.5㍍、重さ200㌔にも及ぶ地球儀。漆黒の地球に光るのは蒔絵や沈金で加飾され金粉や金箔で彩られた夜の明かりだ。周囲には東京、北京、ロンドン、ニューヨークの4都市の夜景パネルもある。重要無形文化財「輪島塗」保持団体の会員が5年の歳月をかけて仕上げた。公開はあす26日午後5時まで。27日から美術館は当面休館となる。。(※写真・上は、輪島塗地球儀。後ろの作品は画面右がニューヨーク、左はロンドンの夜景パネル=同館のポストカードより)

話は変わる。金沢では伝統料理のことを「じわもん」と呼ぶ。伝統の料理は、小麦粉をまぶしたカモ肉を煮込んで作る「治部煮(じぶに)」や、魚のタイを背開きし、具材入りのおからを腹部に詰めて蒸し上げる「鯛の唐蒸し(たいのからむし)」=写真・下=などがある。こうした金沢の料理は「加賀料理」とも称される。その加賀料理が国の登録無形文化財に登録されることになった。国の文化審議会は24日、文部科学大臣に答申した。登録無形文化財制度は2021年に新設され、料理関係では「京料理」に次いで2例目となる。

加賀料理で実感することは料理もさることながら、器との相性がよい。九谷焼や輪島塗など伝統工芸品の器との組み合わせで品位を高め、料理全体に華やかさと食の楽しさを織り込む、まさに総合芸術のようではある。加賀料理の技と伝統、もてなしの所作を受け継ぐための団体がことし7月に発足した。加賀料理店の主人や料理人、女将(おかみ)、仲居ら70人でつくる「加賀料理技術保存会」(金沢市)が保持団体に認定される予定という(地元メディア各社の報道)。

秋の深まりとともに治部煮がうまさを増すが、個人的には鯛の唐蒸しが好物だ。あのおからに芳醇な香りと旨味がある。蒸す過程で鯛の肉の旨味がおからに吸収されているような感じではある。

⇒25日(土)夜・金沢の天気   あめ

★高い高い内閣支持率71% ウロウロと熊が出没

★高い高い内閣支持率71% ウロウロと熊が出没

高市内閣の発足でメディア各社が世論調査を行っている。読売新聞の調査(21、22日・回答1057人)では内閣支持率が71%、不支持率が18%だった。同紙によると、政権発足時の世論調査でこれまで支持率がもっとも高かったのは2001年4月の小泉内閣で87%、次いで鳩山内閣(2009年9月)の75%、以下、菅内閣(2020年9月)、細川内閣(1993年8月)と続いて高市内閣は5位にランクされる。第一次安倍内閣(2006年9月)の70%を上回っている。ちなみに前政権の石破内閣(2024年10月)は51%だった。

支持率と不支持率に関連する質問項目をさらに見てみる。高市内閣を支持する理由(6項目)の上位は「政策に期待できる」41%、「他によい人がいない」20%、「首相に指導力がある」15%だった。支持しない理由(同)では「自民党中心の政権だから」28%、「政策に期待できない」19%、「首相が信頼できない」18%だった。また、自民党と維新の会の連立合意について、「評価する」が57%、「評価しない」が31%だった。高市内閣支持の年代別で調査した数値では、18-39歳が80%ともっとも高く、40-59歳が75%、60歳以上が63%と続いた。男女の支持では男71%、女70%と差はほとんどない。地域別の支持では中部が81%でもっとも高く、次いで近畿が76%、九州が75%と続いている。メディア各社は月ごとに世論調査を行っている。数値は今後どう動いていくのか注目したい。(※写真・上は、初閣議後の記念写真の撮影=21日付・首相官邸公式サイトより)

話は変わる。このところ、クマの出没が連日のように全国ニュースとなっている。きのう(22日)金沢市と隣接する白山市にある白山比咩神社の参道でクマが目撃された。きょう神社を訪れると、パトカーが待機するなど重々しい雰囲気だった。今の時節は「七五三詣」のころでもあり、神社の鳥居の下には「クマ出没注意」の看板が立てられていた=写真・下=。

石川県自然環境課に寄せられたことしのツキノワグマの目撃情報は249件(10月15日時点)で、その多くが金沢市の医王山や、白山のふもとの白山市、能美市、小松市、加賀市となっている。同課がクマの餌となる植物3種(ブナ、ミズナラ、コナラ)の雄花の落下数を調査した結果、クマの主要な餌であるブナは22地点のうち20地点で大凶作、2地点で凶作となり、今秋は全体で大凶作が予想される。これまでのデータで、ブナが大凶作だった2020年にはクマの目撃件数は869件となり、県内の人身被害は15人に上った。同課では、先月9月15日に「ツキノワグマ出没警戒情報」を出して広く注意を呼びかけている。

⇒23日(木)夜・金沢の天気   くもり

☆これは嫌がらせ「祝砲」なのか 北朝鮮が日本海に弾道ミサイル

☆これは嫌がらせ「祝砲」なのか 北朝鮮が日本海に弾道ミサイル

メディア各社の報道によると、韓国軍合同参謀本部は22日、北朝鮮が午前8時10分ごろに数発の短距離弾道ミサイルを発射したと明らかにした。北朝鮮南西部の黄海北道から日本海上に撃った。北朝鮮の弾道ミサイル発射はことし5月8日以来。韓国軍は「追加の発射に備え、日米と情報共有し、万全の体制を維持している」と発表した。その後、350㌔飛行したとの分析を公表した。

韓国の李在明政権が6月に発足後で北朝鮮のミサイル発射は初めてとなる。李政権は北朝鮮との関係改善を目指し、南北軍事境界線付近での拡声器放送の中止などを実施したものの、北朝鮮側は韓国との対話に応じないとしている。このタイミングでのミサイル発射は、今月10月末に韓国で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、アメリカのトランプ大統領が訪韓するのを意識したものとの見方もある。北朝鮮は今月10日、朝鮮労働党創建80年を記念した大規模な軍事パレードを平壌で実施し、アメリカ本土を射程に収める新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星20」や極超音速中長距離戦略ミサイルなどを登場させていた。

高市総理は官邸で記者団に語り、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを日本も把握しているとした上で、「わが国の領海や排他的経済水域(EEZ)への飛来は確認されていない」と述べた。被害の報告もないとした上で、防衛、外務両大臣に必要な情報の収集と分析を指示したと述べた。高市総理は北朝鮮が弾道ミサイルを発射したと韓国政府が発表したことを受け、外出の予定を変更して官邸で情報の報告を受けたと説明した。「日米韓で緊密に連携して対応に万全を期している」と強調した(22日付・ロイター通信)。(※写真は、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けて記者会見に応じる高市総理=22日付・首相官邸公式サイトの動画から)

高市総理の就任翌日に北朝鮮が弾道ミサイルを放ったことになる。これを受けて高市総理は予定より1時間ほど早めの午前9時すぎに総理官邸に入った。そして、記者団に「ミサイル警戒データのリアルタイム共有などを含め、日米韓で緊密に連携し、対応に万全を期している」と述べている。2017年7月に北朝鮮が発射した弾道ミサイルが北海道近接の海域に落下したことを受け、自民党は「北朝鮮核実験・ミサイル問題対策本部」の設置。高市氏はその本部長代理を務めていた。この経験がベースにあったのだろう、素早い行動とテキパキとした指示出しは政府の長として的を得ている。

以下、自身の憶測だ。今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射は、この問題に関わってきた高市総理に対する、就任の「祝砲」、つまり、嫌がらせの発射ではなかったか。あくまでも憶測だ。

⇒22日(水)午後・金沢の天気   くもり