⇒ニュース走査

☆石破総理は退陣か続投か メディア各社の世論調査にバラつき

☆石破総理は退陣か続投か メディア各社の世論調査にバラつき

石破総理の退陣をめぐって、メディア各社が世論調査の結果を報じている。この報道から見えることは・・・。きょう28日付の日経新聞によると、同社の世論調査(7月25-27日)では内閣支持率は32%と2024年10月の政権発足後、最低を更新し、不支持率は61%に上った。その一方、退陣については「直ちに交代してほしい」が36%を占めたものの、「26年の春ごろまで」18%、「あと1年くらい」14%、「27年9月の自民党総裁の任期満了まで」20%、「それ以上できるだけ長く」5%と、6割近くが期間の長短はあっても続投を求めている。

そして、朝日新聞の世論調査(7月26、27日)も、石破総理の退陣をめぐって「辞めるべきだ」が41%で、「その必要はない」が47%とやや多い結果となった。参院選の自民大敗の要因を2択で問うた質問では、「自民全体に問題がある」が81%を占め、「首相個人に問題がある」は10%と少ない。自民支持層も「自民全体に問題がある」が81%だった。

テレビ朝日系のANNが行った世論調査(7月26、27日)では、内閣支持率は31.6%、不支持は50.2%だった。石破総理の退陣論のついては、辞任すべきと「思う」との回答が46%、「思わない」が42%となり、拮抗した結果とっている。(※写真は、金沢市内の自民党広報板に貼られていたポスター)

共同通信が7月21、22日に実施した参院選直後の世論調査では、内閣支持率は22.9%と政権発足以来で最低となったものの、石破総理の退陣については、「辞任するべきだ」は51.6%、「辞任は必要ない」は45.8%と、意見が分かれたカタチとなった。読売新聞の選挙直後の世論調査(21、22日)では、内閣支持率は「支持する」が22%に落ち、「支持しない」が67%と大幅に上回った。「首相を辞任するべきだと思いますか、思いませんか」との2択の問いでは、「思う」が54%、「思わない」が35%となり、世論は退陣を望む声が大きく上回った。この明快な調査結果などを背景に、読売新聞は23日付で「石破首相 退陣へ」の号外を出した。

逆な数字の調査結果もある。毎日新聞の世論調査(7月26、27日)では内閣支持率は29%と前回(6月28、29日)から5ポイント上昇した。不支持率は59%で前回の61%とほぼ横ばいだった。選挙結果を受け、「首相は辞任すべき」は42%、「辞任する必要はない」は33%だった。内閣支持率は上昇したものの、一方で選挙敗北の責任を問う意見は根強い。この数字をどう読めばよいのか。

きょう自民党は両院議員懇談会を開く(メディア各社の報道)。党総裁である石破総理が選挙大敗の責任や要因に関して説明し、所属議員から意見を聞くことになる。党内では退陣を迫る署名活動が進んでいて、懇談会は荒れ模様になるのか。

⇒28日(月)午後・金沢の天気  はれ

★「信なくば立たず」 続投に執着する石破総理が失う求心力

★「信なくば立たず」 続投に執着する石破総理が失う求心力

石破総理は参院選で自民が大敗し、公明党と合わせた議席で衆院に続いて参院でも過半数を失ったにもかかわらず、比較第1党として「国政に停滞を招かない」と続投を表明。さらにアメリカとの関税交渉を理由に再び続投を表明した。なぜここまで執着する必要があるのかと有権者の一人として考え込んでしまう。

国政選挙で大敗を喫したのであれば、政権与党のリーダーとして辞意を表明してケジメをつけるのは当然ではないか。そして、日米関税交渉が決着したのだから、むしろこれを花道として退陣してもよいのではないか、と普通に考える。

きょうの紙面を見ると、「石破首相 退陣へ 参院選惨敗 引責」(読売)、「石破首相 退陣へ 来月末までに表明」(毎日)、「石破首相 退陣不可避に 関税妥結、参院選敗北受け」(日経)、「首相 退陣不可避 自身は否定、来月末最終判断」(北國)。各社の見出しはまるで業を煮やしたかのようにも読める。

記事を読むと、地方から石破退陣を求める動きが起きている。地元・石川県の自民党県議ら19人は23日、辞任を求める文書を郵送した。当初は県議6人程度で申し入れ書を提出する方向だったが、賛同者が増えて最終的に県議8人、県内市町議3人、一般党員8人が名を連ねた(24日付・北國新聞)。また、投開票日翌日の21日に早期退陣を求める申し入れを行うことを決めた高知県連の上治堂司総務会長は、取材に対し、「参院選の結果は、国民が石破政権に対し『ノー』を突きつけた形で、続投は民意からずれている」と述べた(24日付・読売新聞)。

「信なくば立たず」。政治とは何かと弟子に問われた孔子は、兵、食、信の3つを挙げ、その中で大事なのは民から信じ託されることだと説いた。政治家に信頼がおけない限り、国民は信用しない。これは石破総理がこれまで説いてきたことではなかったか。

⇒24日(木)夜・金沢の天気  はれ

☆衆院に続き参院も少数与党に転落 能登では復興に寄せる期待

☆衆院に続き参院も少数与党に転落 能登では復興に寄せる期待

参院選はきのう(20日)投開票が行われ、自民・公明は計66の改選議席を47に減らし、非改選75を合わせて参院全体で過半数(125)を割り込み、衆院に続き参院も少数与党に転落した=写真・上=。自民を中心とした政権が衆参両院で過半数を割り込むのは1955年の結党以来初めてという。

石破総理はきのう夜のテレビ朝日の選挙特番で「比較第1党の議席をもらったことの重さもよく自覚しなければいけない」と述べ、キャスターから「(その言葉を)続投すると受け止めてよいか」と問われ、「けっこうだ」と答えた。これまで耳にしたことがなかった「比較第1党」は、議会の過半数には達しないが、議席数をもっとも多く有する政党を意味する言葉だ。続投の理由を問われ、石破総理は「敗北の責任を私が担っていく」と述べ、アメリカとの関税交渉や選挙期間中に訴えた物価高を上回る賃金上昇、地方創生、防災対策などをあげて、「きちんとした道筋をつけることは国家に対する責任だ」と語った。

昨夜は金沢市の開票場を見に行った。午後9時30分に一斉に投票箱からを投票用紙が取り出され、候補ごとに、そして政党ごとに仕分ける作業が手際よく進んでいく=写真・下=。開票作業は体育館で行われたが、日中の暑さがそのまま残っていて、スタッフは首にタオルをかけて汗をふきながら作業を行っていた。

地元の石川選挙区(定員1)の結果は、自民現職の宮本候補が国民民主の候補に4万9千票差で4期目の当選を果たした。ただ、金沢市では960票差の接戦で、隣接の野々市市や能登の羽咋市では国民候補が上回った。自民の参院予算委員長だった鶴保氏が能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことが物議をかもしたが、その影響かどうかは分からない。ちなみに、震災と「記録的な大雨」に見舞われた奥能登4市町の宮本候補への投票はいずれも50%超えている。災害復興に向けた政治活動に期待が寄せられているのだろうか。

⇒21日(月・祝)午前・金沢の天気  はれ 

★参院選投票まで3日 自公過半数は困難か、尾を引く鶴保失言

★参院選投票まで3日 自公過半数は困難か、尾を引く鶴保失言

参院選の投票日まで3日となった。終盤に入り、メディア各社は選挙情勢を伝えている。読売新聞(16日付)は「自公 過半数難しく 立民堅調、国民大幅増 参政は躍進」の見出し。朝日新聞(14日付・Web版)は「自公、参院過半数は困難か 自民は比例区でも苦戦」、毎日新聞(同)は「自公過半数、深まる苦戦 1人区厳しさ増す」と伝えている。

また、日経新聞(16日付)は「自公大幅減、過半数は微妙 国民民主・参政が躍進 立民横ばい」、共同通信の調査はローカル各紙(15日付)で「自公苦戦 過半数は微妙 国民大幅増の公算大」と報じている。各紙の記事を読むと、政権与党の自公は苦戦している。

そして、地元・石川選挙区(定数1)の記事を読むと、朝日・毎日・読売の評価が分かれている。序盤は3紙とも「自民優勢」だったが、終盤になって、朝日と毎日は「互角の激戦」「接戦」に変更、読売は「自民優勢」を継続している。朝日・毎日はその変更の理由について、自民党の参院予算委員長だった鶴保庸介氏が今月8日に和歌山市での応援演説で、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことの影響が尾を引いていると分析している。毎日は「投票先を決めていない人が3割以上おり、情勢が流動化することもある」と述べている。一方、読売は「(自民候補が)先行したまま終盤に突入した」と述べているが、「(自民)陣営は、自民参院議員による『運のいいことに能登で地震があった』という発言の影響を懸念する」と書き添えている。

いずれにしても石川選挙区では鶴保氏の失言が投票行動にどのような影響を与えるのか見どころではある。何しろ失言の余波は広がっていて、きのう(16日)石川県の8つの町議会の議長でつくる「県町村議会議長会」の会長が自民党本部を訪れ、森山幹事長宛の抗議文を届けている。本来ならば、鶴保氏本人が能登に来て、失言の謝罪をすべきではないのか。ケジメをつけないと、この騒動は治まらない。

時事通信の7月の世論調査(11-14日実施)によると、石破内閣の支持率は前月比6.2ポイント減の20.8%で、去年10月の発足以降の最低を更新した。不支持率は同6.6ポイント増の55.0%と最高だった。政党支持率は、自民党が前月比2.5ポイント減の16.4%、立憲民主党が同1.1ポイント増の5.5%で、参政党が同2.2ポイント増の4.7%で3位に上昇した(17日付・時事通信Web版)。石破内閣はまさに「危険水域」ではないのか。支持率は落ち始めると急降下する。それが世論調査の怖さだ。

⇒17日(木)夕・金沢の天気  くもり時々あめ

★政治家の言葉に危うさ 言葉の独り歩きが予期せぬことに 

★政治家の言葉に危うさ 言葉の独り歩きが予期せぬことに 

自民党の参院予算委員長の鶴保庸介氏が今月8日に行った和歌山市での参院選の応援演説で、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことが問題となった=写真=。地元メディアの報道によると、この発言に対し、能登の4つの市町(輪島、珠洲、穴水、能登)の議会は10日、鶴保氏に抗議文を送ることを決めた。これとは別に輪島、珠洲の両市議会では個別の抗議文も送り、被災地の怒りを伝える(11日付・北國新聞)。

鶴保発言の騒動で目立たなかったが、石破総理は翌日9日に千葉県船橋市での街頭演説で、アメリカのトランプ政権との関税交渉について触れ、「これは国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない。守るべきものは守る」と強調した(9日付・共同通信Web版)。「なめられてたまるか」は、トランプ大統領が8日、日本からの輸入品について8月1日から25%の関税を課すとする書簡を公表したことを受けての発言だった。英訳すれば、「Don‘t underestimate Japan」だろうか。ただ、この言葉はトランプ大統領との直接交渉の場で発する言葉であって、板橋市民の前で叫ぶ言葉なのだろうか。

政治家の言葉に危うさを感じる。歴史的に有名な言葉は「ばかやろう」だ。1953年(昭和28年)2月、衆院予算委員会で当時の吉田茂総理と社会党の議員は激しい質疑応答を繰り返していた。吉田総理が自席に戻り、「ばかやろう」とつぶやいたのを偶然マイクが拾い、気づいた相手議員が「議員をつかまえて、国民の代表をつかまえて、ばかやろうとは何事だ。取り消せ」と迫った。これがきっかけで国会はさらに混乱し、3月14日に衆院解散となった。後に「ばかやろう解散」と称された。

政治家の言葉の危うさは、言葉が独り歩きをしてどのように展開していくのか読めないことの危うさでもある。石破総理の「なめられてたまるか」をトランプ大統領はどのように解釈するだろうか。そもそもトランプ氏は「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない」と繰り返し述べ、日米安全保障条約に不満をにじませている。トランプ氏が「Don‘t underestimate America」と言い出すかもしれない。

⇒11日(金)午前・金沢の天気  はれ

☆二地域居住めぐり「運よく能登地震」発言、政治家として許されるのか

☆二地域居住めぐり「運よく能登地震」発言、政治家として許されるのか

自民党の参院予算委員長の鶴保庸介氏がきのう(8日)、去年元日の能登半島地震について「運のいいことに能登で地震があった」と発言したことが物議を醸している。

メディア各社の報道によると、鶴保氏は参院選和歌山選挙区の公認候補の個人演説会が和歌山市であり、応援演説を行った。その中で、地方から都市部への人口流出に対して危機感を持っていると語り、その解決策として、地方と都市部の両方を行き来する『2地域居住』を推進すれば地方の関係人口の創出につながると主張。その事例として、能登半島地震の被災者が居住する自治体以外でも住民票の写しを取得できるようになったことに触れ、「運のいいことに能登で地震があった。緊急避難的だが金沢にいても輪島の住民票がとれるようになっていて、『やればできるじゃないか』と思った」などと発言した。(※写真は、能登半島地震で火災が発生し、焦土と化した輪島市の朝市通り=2024年2月5日撮影)

この発言について、鶴保氏がきょう和歌山市内で会見を行い、「能登地方が被災したことを『運よく』などと発言してしまったが、思った発言ではまったくなく、失言だった。ことば足らずで被災地への配慮が足りなかった。心苦しい思いをさせてしまったのなら陳謝しかない」と述べ、発言を撤回した。また、辞職や離党の考えについて問われたのに対し「私が責任を取ることで皆さんの気持ちがおさまるならやぶさかではないが、現状ではそこまでは考えていない」と述べた(9日付・NHKニュースWeb版)。

鶴保氏は自民党の「二地域居住推進議員連盟」の会長を務める。二地域居住の促進を図るための法律(広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律の一部を改正する法律)が2024年5月に国会で成立。具体的な背策として、地方に魅力的な学びの場づくりや、「稼げる」地方経済の実現に向けた農林水産業の振興など、地方創生を実現する切り札として注目が集まっている。

そんな最中の「運のいいことに能登で地震があった」発言。二地域居住に注目が集まっているときだけに、この動きに冷や水を浴びせた。能登に立ち寄り、失言の詫びを態度で示した方がよいのではないか。

⇒9日(水)夜・金沢の天気  はれ

☆能登半島地震で隆起した海岸 地理院地図でくっきり浮かぶ

☆能登半島地震で隆起した海岸 地理院地図でくっきり浮かぶ

去年元日の能登半島地震で被災地をめぐって感じることは、「能登の地形が変わった」ということだろうか。これまで眺めていた風景とはガラリと変わったところもある。その一つが、海底が隆起した外浦(そとうら)海岸だ。能登では大陸側に面した海岸を「外浦」、富山湾に面した海岸を「内浦(うちうら)」と称している。能登地震で外浦は隆起し、内浦は沈下したところが随所に見られる。

たとえば、外浦の輪島市門前町の海岸沿いは海底が4㍍隆起し、まるで鳥取砂丘のような風景になっているところもある=写真・上=。この光景を見て、「この広がった領土を何とか活用できないか」と言う政治家もいれば、「地図をつくり直す国土地理院は大変だ」と語った研究者もいた。それぞれの立場で思い描くイメージは異なるようだ。

そして国土地理院は動いた。地元メディアの報道によると、国土地理院はインターネット上で公開している「地理院地図」を能登地震で起きた海岸の隆起を反映させた最新版にリニューアルした。ネット上で公開されている能登地震以前のものと今回更新された地理院地図=図・上が地震前、下が更新版=を比べると、前述の輪島市門前町の海岸線は200㍍余り沖方向に移動していることが分かる。

今回の地理院地図の更新で、能登半島の北側から西側にかけて広い範囲で陸地が増え、海岸線が沖へ拡大した。増えた陸地の面積については地理院が精査しているが、日本地理学会の研究チームによると、能登半島では約4.4平方㌔増えたという(今月6日付・北陸中日新聞)。よく引用される広さの目安だが、東京ドーム(建築面積4.7㌶)に換算して94個分に相当する。

更新された地理院地図を眺めていると、これを「能登砂丘」として、震災を学ぶ学習や観光に活かせないだろうか。そんなことを思ってしまう。

⇒7日(月)夜・金沢の天気  はれ

☆「ホテルこうしゅうえん」閉館 能登の観光業に及ぼすインパクト

☆「ホテルこうしゅうえん」閉館 能登の観光業に及ぼすインパクト

前回ブログの続き。輪島市で一番客室が多い「ホテルこうしゅうえん」がきのう閉館したことをニュースで知って、きょう現地を見に行った。1968年に「ホテル高州園」として海沿いにオープンした。自身は地元新聞の記者だった1983年4月から2年間、輪島支局に勤務した。初代と二代目社長とは取材を通じて知り合った。当時、高州園は増築を重ねていて、その後132室にまで増やしていった。高州園という名前は、奥能登で最も高い山である高洲山(567㍍)が輪島市にあることから名付けたとのことだった。

二代目の社長はアイデアマンで、テレビCMには自ら輪島駅の駅長役として出演したものがあった。また、テレビ画面から魚と海水が噴き出す、あのユニークなテレビCMも二代目社長のアイデアだった。ユニークなCMで全国から話題を集めたものの、二代目が亡くなり、その後の後継者問題から、2018年に東京のホテル運営会社が事業を引き継いでいた。

去年元日の能登半島地震では大浴場が使えなくなったり、基礎部分が傾いたりしたため一般客の受け入れを休止し、応急修理を行いながら、復旧工事の関係者に宿泊場所を提供してきた。ただ、営業を続けるためには大規模な工事が必要となるほか、観光客の回復の見通しが立たないことから運営会社は閉館を決め、先月30日ですべての利用客がチェックアウトした(メディア各社の報道)。

きょう輪島市内をめぐると、高州園だけでなく旅館や民宿なども被災をきっかけに休業していた。輪島市観光協会のまとめでは、地震前に47あった宿泊施設のうち6つの施設が廃業していて、現在営業している施設は19ヵ所にとどまっている(同)。地震の被害が残り、観光客の回復が見込めない状況で果たして投資をして宿泊業を続けていけるのかどうか。

⇒2日(水)夜・金沢の天気  はれ

★能登半島地震から1年半 半島を挟む活断層や断層帯の不気味

★能登半島地震から1年半 半島を挟む活断層や断層帯の不気味

去年元日の能登半島地震からきょうで1年と半年が経った。これまで被災地をめぐって復興の現状など見てきたが、公費解体などは進んでいるものの、復興と言うほどの実感はまだ乏しい。

地元紙で、輪島市内で最大の客室数を誇っていた「ホテルこうしゅうえん」がきょう1日で閉館すると社会面トップで報じられている(1日付・北國新聞)。テレビ画面から魚と海水が噴き出す、あのユニークなテレビCMで全国でも知られたホテル旅館だった。震災以降は営業を停止し、復旧工事などの関係者が滞在していた。

暗いニュースは続く。日本海側で再び強烈な地震が起きるのか。政府の地震調査委員会は先月27日、日本海中南部(近畿・北陸沖)に分布する23ヵ所の海域活断層について今後30年以内の地震発生確率を公表した。マグニチュード7の地震を引き起こす恐れのある長さ20㌔以上の活断層や断層帯が評価対象で、いずれかを震源にM7.0以上の地震が発生する確率は16%から18%と評価した(先月28日付・メディア各社の報道)。

東西で2区域に分けた場合の確率は、西部(近畿北方沖、北陸西部沖)の9ヵ所で4%から6%、東部(金沢平野西方沖、能登半島周辺、富山県沖)の14ヵ所で12%から14%だった。能登半島地震を引き起こした北岸断層帯(想定M7.8~8.1程度)については、去年の地震で震源となったため、個別には発生確率をほぼ0%と評価した。一方で半島西側の海士岬沖東断層(想定M7.0程度)と門前断層帯の一部区間(想定M7.1程度)はいずれも1%から2%と23ヵ所の中で最も高かった(同)。

調査委の平田委員長(東京大名誉教授)は「今後30年で10%程度というのは、私たちが生きているうちに起きても不思議ではない高い数字だ」「昨年のような地震は、能登半島北岸の断層帯ではしばらく起きないかもしれないが、それ以外で起きることは十分にある」と指摘。「同程度の揺れや津波が来るかもしれないと思って準備をしてほしい」と話した(同)。

今回、富山県沖の富山トラフ横断断層(想定M7.0程度)は新たに活断層と認定し、発生確率は0.9%から1%とした。断層が増えたことで、調査委が作成した図は能登半島が断層帯に挟まれているようにも見え、不気味さが増す。

⇒1日(火)午後・金沢の天気   はれ

☆震災遺構は「地域資源」なのか 住民感情との微妙なズレ

☆震災遺構は「地域資源」なのか 住民感情との微妙なズレ

きょうの金沢は朝方に雨が降ったせいか、蒸し暑い一日だった。自宅近くの街路の温度計で34度、真夏日だ。テレビニュースによると、金沢から南の小松市では35度を超えて猛暑日となった。金沢地方気象台のデータでは、石川県内でもっとも早い猛暑日は1978年6月17日だったので、これを1日更新したことになる。あすからも真夏日は続くとの予報だ。

話は変わる。去年元日の能登半島地震の被災地では、被害を受けた建物などを「震災遺構」として残す動きが始まっている。石川県の「創造的復興プラン」ではリーディングプロジェクトとして13の取り組みを打ち出しているが、その中に「震災遺構の地域資源化に向けた取り組み」がある。このプランに沿って、半島の尖端部分にあたる能登町では地震と津波、そして火災で被災した白丸地区の白丸郵便局を震災遺構として保存・活用する計画を進めている。

郵便局は防波堤を乗り越えてきた高さ5㍍近い津波で窓や壁、内部が壊れた=写真・上、2024年11月5日撮影=。地元メディア各社の報道(6月14日付)によると、この郵便局を震災遺構として残すことに反対意見もあるようだ。今月13日の町議会本会議での一般質問で、ことし3月の町長選で初当選した吉田義法町長は「半永久的に保存する思いはない。まずは10年をめどに考えたい」と述べた。

吉田氏は町長就任前の町議のときは地域住民の感情を考慮して保存反対の立場をとっていた。しかし、前町長がすでに震災遺構の手続きを進めており、すでに県観光連盟がまとめた「震災学習プログム」の中に組み込まれていることから、今も反対の立場ながら、「まずは10年」発言となったようだ。

震災遺構についてはこれまでも議論があった。2011年3月11日の東日本大震災での気仙沼市のケース。津波で陸に打ち上げられた大型巻き網漁船=写真・下、2011年5月10日撮影=を同市は震災遺構として保存を目指していた。ところが反対論もあり、市民アンケートを実施したところ、回答数のうち68%が「保存の必要はない」で、「保存が望ましい」16%を大きく上回った。この住民の意向を受けて、漁船は解体撤去された。

被災住民とすれば、日常の光景の中でいつまでも震災の面影を見たくはなかったのだろう。震災遺構の指定に行政は住民の微妙な感情に配慮する必要があることの事例でもある。

⇒16日(月)午後・金沢の天気   くもり