⇒ドキュメント回廊

★ズワイガニ解禁 初物求めて市場へ

★ズワイガニ解禁 初物求めて市場へ

   日本海のズワイガニ漁が今月6日に解禁となった。ズワイガニにはご当地の呼び方があって、山陰地方では「松葉ガニ」、福井県では「越前ガニ」、そして石川県では「加能(かのう)ガニ」と呼ぶ。加能とは、加賀と能登のこと。初競りが6日夜、金沢で行われ、能登半島の珠洲市で水揚げされた1匹が去年の最高額を10万円上回る40万円で競り落とされた。いよいよカニのシーズン到来だ。

   きょう初物を求めて金沢の近江町市場に行ってきた。ズワイカニが水産の各店舗でずらりと並んでいた。ご祝儀相場が立って、一匹1万数千円から2万円と少々高値だった。金沢の庶民は初日は小ぶりながら身が詰まっているメスのコウバコガニを食する。オスのズワイガニに比べれば安い。一匹1000円前後だ。ズワイガニは高値だが、初物食いの習性でつい買ってしまった。きょうは「かぶら寿し」も知人からいただいたので夕食で堪能した。

   カニを食するのは簡単ではない。一匹丸ごとなので、脚を関節近くで折り、身を吸って出す。その音はパキパキ、ズーズー、その食べる姿はまるでカニとの格闘だ。日本酒を飲みながらだが、一匹を15分ほどで。何しろ、食べ出したら寡黙となり、手と口が休むことがない。カニ食い選手権大会のように真剣になる。

   仕上げにかぶら寿しを食する。青カブにブリの切り身をはさんで漬け込んだもの。かぶら寿しを食べなければ、金沢の冬は越せない、と言われるほど地域に密着した食材ではある。とっておきの九谷焼の皿にかぶら寿しを盛る。これを地酒の辛口吟醸酒で味わう。カニもかぶら寿しも地酒とのマリアージュである。

⇒7日(土)夜・金沢の天気     くもり

☆キンモクセイ 花咲けど匂わず

☆キンモクセイ 花咲けど匂わず

   庭にキンモクセイが咲き、空に青と黄のコントラストを描いて、秋の季節を感じさせる。キンモクセイと言えば、あの独特の匂いなのだが、今年は不思議と感じられない。その瞬間、「これって認知症」と思いがめぐった。認知症になると嗅覚が低下し、腐ったものを食べたり、ガス漏れに気がつかなかったりすると聞いたことがある。そこで、ずっと年下の家族にも嗅いでもらったが「匂いがしませんね」というので胸をなで下ろした。

   むしろ、なぜ匂いがしないのか気になった。ネットで検索してもエビデンスのある答えがみつからない。ただ、心当たりがあるのは先月末に樹木の剪定をしてもらった。かなり刈り込んだので、その影響か、と。そこで、作業をしてもらった造園業者に電話で尋ねた。「剪定後だとキンモクセイの匂いはしないものですか」と。すると、「長くこの仕事をやっていますが、そうした話は聞いたことはありませんね」「花と匂いはセットなので、花が咲いて匂いがないとは不思議です。私も調べてみます」との返事だった。

   話は変わるが、9月16日に発足した菅内閣。メディア各社の世論調査では内閣支持率は高い。毎日新聞の調査では、内閣支持率が64%で、不支持率は27%を大幅に上回っている(9月18日付・毎日新聞Web版)。 朝日新聞社の調査は内閣支持率が65%で、不支持率は13%だった(9月17日付・朝日新聞Web版)。共同通信の調査でも支持率は66.4%、不支持率は16.2%だった(9月17日付・共同通信Web版)。3社の調査では支持率がおおむね65%とそろっている。

   政権発足から1ヵ月、携帯電話料金の値下げや縦割り行政の打破、デジタル庁発足に向けて取り組み、ハンコ行政の廃止推進、日米豪印の外相会談などよい匂いのしそうな内外の政策が打ち上げられてはいるが、成果はこれから、か。花咲けど匂わず。

⇒9日(金)朝・金沢の天気   くもり

☆床の間の小宇宙

☆床の間の小宇宙

           「猫寺」で知られる御誕生寺(福井県越前市)の住職、板橋興宗氏がことし7月5日に93歳で亡くなられた。金沢の大乗寺の住職をされていたころ、新聞記者として何度か取材に訪れたことがある。新米の記者だったが、いつも笑顔で丁寧に対応いただいた姿が印象に残っている。その後、大本山總持寺(横浜市)の貫首や曹洞宗管長を務められた。

   昨年3月に板橋禅師との思わぬ「再会」があった。知人から、茶室に掛ける円相(えんそう)の掛け軸を紹介してもらった。作者は「大乗七十世 興宗」とあったので、板橋禅師とのご縁を感じて買い求めた。円相は禅の書画の一つで、円形を一筆で描いたもの。その横に「人間万事 一場 夢(じんかんばんじ いちじょうのゆめ)」とある。世の中に起きる良し悪しのすべては、はかない夢であり、動じることはない、と自身なりに解釈してはいる。

   満月のようにも見える円相は絵なのか、それとも文字なのか分かりにくいが、禅宗の教えの一つとされる。円は欠けることのない無限を表現する、つまり宇宙を表現している、と解釈されている。茶の道も同じで、物事にとらわれずに精進すること。茶を点てるだけでなく、支度や片付け、掃除にいたるまでが一つの円のようにつながっている。

   千利休の口伝書とされる『南方録』には「水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶を点てて仏に供え、人に施し、吾ものみ、花をたて香をたく、皆々仏祖の行いのあとを学ぶなり」とある。雑念を払い、ひたすら無限の境地で、自らの心を円相とせよ、それが茶の道の心得であると教えている。茶道で言う円相は、互いに心の交わりを楽しむ「小宇宙」の空間ではないだろうか。板橋禅師が存命中にこの掛け軸を持参して猫寺を訪ね、円相の意味を尋ねるべきだったと今さら悔やんでもいる。

   先日、富山県高岡市にある鋳物メーカー「能作」を見学に訪れた。展示されていた円形の花器が目にとまった。真鍮(しんちゅう)の製品で、眺めていると宇宙の惑星をイメージした。ひょっとして円相の掛け軸と円形の花器は相性がよいかもしれないとひらめいて、買い求めた。家族からは「それは衝動買いでは」と笑われたが。

   自宅でさっそく器に花を活けてみた。庭にあったムクゲ、アキジクミズヒキ、キンミズヒキを入れてみる=写真=。ムクゲはピンク色の「底紅」と真っ白な「祇園守り」が咲いていたが、祇園守りを使った。板橋禅師への供養の意味も添えたかったからだ。

   禅師が描いた円相の掛け軸、そして、花器を眺めていると、別世界に誘われる。自らの93年の人生は「人間万事 一場 夢」、心をひたすら円相とせよと語りかけてくる。「床の間の小宇宙」にしばし浸った。

⇒29日(火)朝・金沢の天気     はれ

★マックス・ウェーバー「資本主義の精神」の紆余曲折

★マックス・ウェーバー「資本主義の精神」の紆余曲折

   大学で学生たちと雑談していて、「宇野先生が学生時代に読んだ本で一番印象に残っているものは何ですか」と問われたことがある。学生時代は45年以上も前のことだが、それははっきりと覚えていた。「ドイツの社会経済学者マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』だよ」と。学生たちはそのころの小説などを期待していたようだが、「それはどんな本ですか」と意外な返事に形相を変えた。「ゼミで論じ合ったことがきっかけ。でも、社会人になってからもずっと頭から離れなかった」

   この本=写真=は、資本主義はどのようにしてヨーロッパで生まれたのかというテーマを精神的土壌からひも解いていくものだった。プロテスタントの教義は、身分は低くとも自分の仕事に誇りを持って専念しなさいと人々を諭した。これがカルヴァンが説いた予定調和説の「あらかじめ神が決めたこと」だ。一方、カトリック社会では階級序列があり、より高い階級へ上昇できる可能性がある。すると、今の仕事はより高い地位に就くための通過地点にすぎないと考える人々は実入りのよい仕事に目を向け、現状の仕事に専念しなくなる。その結果として生産性は低くなる、とウェーバーは分析したと覚えている。

    こうした「清貧な労働」はその後に変容していく。カルヴァンと同じく予定調和説に立ち「神の見えざる手」として市場原理主義を考えたアダム・スミスは、『国富論』の中で、労働こそ富の源泉とし、それまで富といえば宝石や農産物という考え方を覆した。労働価値というものがあり、貧しい社会が隆盛で幸福であろうはずはないとして高賃金論を展開していく。1776年に『国富論』が出版された当時、賃金が上昇すると労働者が怠慢になるという風潮があったからだ。この時代あたりから、予定調和説と利益追求が一体となって、現在イメージされる資本主義の原型が出来上がった。

   学生たちにここまで話すと、質問が飛んできた。「ITやAIのこの時代に資本主義なんて通用しないのでは」と。確かにそうだ。「東西冷戦」という歴史があり、旧ソビエト連邦が1991年に崩壊し、誰もが資本主義が共産主義に勝ったと信じた時代があった。ところが、2008年にサブプライムローンの破綻によって、アメリカの金融マンや経営者がカジノの胴元のように称され、「カジノ資本主義」や「強欲資本主義」などと資本主義の評価は急落した。おのれの利益追求に暴走し経済が混乱に陥った資本主義の姿だった。

    さらに、資本主義と表裏一体で進んだ産業革命では、生産性や物流を促すために、地下の化石燃料を掘り上げて大気中に二酸化炭素として撒き散らした。それが地球温暖化や気候変動という現象としてクローズアップされている。こう述べると、学生たちから質問が。「マックス・ウェーバーが唱えたプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神はとても清らかだったと思いますが、その精神はヨーロッパにはもうないのですか」と。「いや、すでにヨ-ロッパでは資本主義の原点回帰が始まっている」

    資本主義を生んだヨーロッパで現在起きていること。アメリカ資本主義を象徴するファストフードのマクドナルドの1号店が1980年代にイタリア・ローマに出来たことが刺激となって、イタリア北部ビエモント州ブラという人口3万人ほどの町で「スローフード運動」の声が上がった。1989年にはパリで国際スローフード協会設立大会が開かれ、スローフード宣言を出している。3つの活動指針がある。「守る:消えてゆく恐れのある伝統的な食材や料理、質のよい食品、ワイン(酒)を守る」「教える:子供たちを含め、消費者に味の教育を進める」「支える:質のよい素材を提供する小生産者を守る」 である。

    このスローフード運動は食行動の見直しから生きることの見直しへと波紋を広げて、ヨーロッパに広がっている。スローフード運動はいまやスローライフやスローワークへとカタチを変えている。ITやAI、さらに新型コロナウイルスの感染拡大は、資本主義文明の見直しをさらに加速させるだろう。「文明の紆余曲折は続くよ」

   学生たちと30分ほどの雑談だった。そう言えば、今年はマックス・ウェーバーの没後100年に当たる。

⇒14日(月)朝・金沢の天気    くもり時々あめ

★「スマホ認知症」からどう脱却するか

★「スマホ認知症」からどう脱却するか

  先日職場の同僚と話しをしていて、「スマホ認知症」という言葉を初めて聞いた。「最近、人の名前や店の名前がなかなか浮かんでこない」とグチをこぼすと、「宇野さんの場合は、スマホ認知症だよ」と笑われた。自らは気にはしていなかったが、スマホと向き合って何かを検索している姿をよく見かけると同僚は指摘してくれた。そこで、PCでこの言葉を調べると、かなり「重症」だと自覚した。

   この症状は、スマホやPCを長い時間使用すると脳機能が低下して、人名が出てこなかったり、物事を思い出せない状態になる、一時的な記憶障害を指す。「デジタル認知症」とも呼ばれ、かつては「依存症」と言っていた。

   これまで、記憶する、思い出すといった能機能の弱まりは加齢によるものだとばかり思っていたが、スマホやPCがそれに拍車をかけているとは認識がなかった。最近、手帳に日時と場所の予定を入れる際、日付を間違って記入したり、訪問先の名前を思い出せなかったりと「重症化」している。大事な会議のうっかり忘れは今のところないが、近い将来は怪しい。

   さらに最近気になるのが寝不足だ。就寝時にベッドに横たわりながら、スマホで最新のニュースをチェックする癖がついている。寝室は消灯にして、スマホのディスプレイの明るさは最低にしている。10分もしないうちに眠りに入るが、2、3時間で目が覚めてしまう。眠れなくなり、またスマホを手に取ってしまう。そのうち、いつの間にか寝入るの繰り返し。このところ、毎日が睡眠不足の状態だ。この原因は、スマホの画面の光(ブルーライト)を浴びるとメラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンの分泌量が落ちて寝つきが悪くなるとの説も散見する。起きている間は脳の情報処理能力が落ちて、上記のような事務処理能力にも影響を及ぼす。負のスパイラル、悪循環が続いている。

   それと、PCやスマホで安易にネット検索すると思考能力が弱まるとの説もあるがエビデンスを探すことはできなかった。ただ、言葉の意味を辞典で調べたり、花の名前を図鑑で調べたりすると探究心のようなものがわいてくる。これはPCやスマホでは味わえない感覚だ。 

   こうした「スマホ認知症」や「デジタル認知症」の対策として、最近では「デジタル・デトックス(digital detox)」という言葉も生まれている。デトックスは、医学用語の解毒を意味するデトクスィフィケーション (detoxification)の短縮形で、デジタル・デトックスはスマホやPCなどのデジタル機器の使用を控えて依存症を抑えるという意味のようだ。

           では、自らは「スマホ認知症」からどう脱却すればよいのか。まずは就寝時のスマホ・デトックスから始めてみよう。簡単にスマホを手放すことはできるのか、スマホ中毒に陥ってはいないかと気にはなるが、その結果はまたこのブログで紹介したい。

⇒12日(土)朝・金沢の天気    はれ

★ブログで描いた「安倍総理」の14年~下

★ブログで描いた「安倍総理」の14年~下

   安倍総理の14年を振り返ってみると、日本とアメリカのある意味で新しい関係をつくったことは安倍氏のレガシーだろう。オバマ大統領が広島市の原爆死没者慰霊碑を訪れ献花し、安倍総理がハワイの真珠湾で慰霊したことはそのシンボリックな出来事だった。以下、ブログで描いた「安倍総理」の14年の続き。

 広島の平和記念公園とハワイの真珠湾で新たな日米関係築く

【2016年5月26日付「★ギリギリの共同会見」】 伊勢志摩サミット(G7首脳会議)を前に、アメリカのオバマ大統領と安倍総理による首脳会談が始まったのが昨夜9時40分。そして両氏が共同記者会見に臨んだのは10時43分だった。会見が終了したのは11時32分だった。日をまたぐ直前まで記者会見を実施したのは、沖縄のアメリカ軍属の男による女性の遺体遺棄事件について、首脳として何とかサミットが始まる前にけじめをつけておきたかったのだろう。ある意味でギリギリ間に合ったと、政府関係者は胸をなでおろしているかもしれない。以下、共同記者会見の様子を=写真・「NHKニュース」=をテレビで見ていてのメモだ。

  オバマ大統領は、広島訪問は第二次大戦で亡くなったすべての人を追悼し、核兵器のない世界という共通のビジョンを再確認し、アメリカと日本の同盟を強化する機会となるだろうと、述べた。また、安倍総理は、オバマ氏による広島訪問の決断を心から歓迎していると述べた。核兵器使用国(アメリカ)のリーダーが戦争被爆国で犠牲となった市民に哀悼の誠をささげるのは、核兵器のない世界へ大きな力となると述べた。記者の質問で、シカゴ・トリビューンの記者からハワイのパールハーバー訪問の可能性を問われ、安倍氏は「現在私がハワイを訪問する計画はない」と言い切った。

【2016年5月28日付「★大統領か役者か」】 17時37分、オバマ氏が広島市の平和記念公園の原爆死没者慰霊碑を訪れ、献花に臨んだ。安倍総理と並んで献花するのかと思っていたが、そうではなく、まずオバマ氏が献花し、その後に安倍氏が続いた。オマバ氏は頭を献花の後に頭を下げずに黙祷を、安倍氏は献花の後に頭を下げて黙祷をささげた。頭を下げての黙祷は日本では当たり前なのだが、アメリカではこれが原爆死没者に対する「謝罪」と映るのだろう。もし、安倍氏とオバマ氏が2人同時に献花し黙祷をささげたら、片や頭を下げる姿、片や下げない姿がくっきりと対比される。すると、映像的な印象度として、オバマ氏の姿は日本では良くないものになる。献花にあたっては、日本とアメリカで随分と打ち合わせ、計算されし尽くされたのだと中継映像を視聴しながら感心した

【2016年12月6日付「★パールハーバーとソウル」】 昨夜(5日)午後6時50分ごろだったと思う、ニュース速報に感動した。安倍総理が今月26、27日にハワイのパールハーバー(真珠湾)をオバマ大統領と訪れ慰霊するというニュースだった。このニュースに接した多くの日本人は、5月に被爆地・広島を訪れたオバマ氏への返礼の訪問と感じたのではないだろうか。

  日本の現職総理がパールハーバーを訪れるのは初めてで、オバマ氏とともに犠牲者を慰霊し、これが最後となる首脳会談も行うという。総理は「二度と戦争の惨禍を繰り返してはならないという未来に向けた決意を示したい」と首相官邸で記者団に語っていた。謝罪ではなく、あくまでも未来志向なのだ。

【2019年5月26日付「☆シンゾーとドナルドのレアアース談義」】 この写真を見て感じたことは、お笑いコンビのようだ、と。写真は総理官邸のツイッター(26日)で公開している。安倍総理と(右)とトランプ大統領(左)が千葉県のゴフル場で自撮りした写真だ。とくに、安倍氏の顔がなんとなく、あの芸能人っぽく見える。アメリカのCNNニュース(日本版)は「外務省によれば、昼食は米国産の牛肉のダブルチーズバーガーだった。トランプ大統領は相撲観戦も行った。優勝した力士には、トロフィーの上部に翼を広げたワシをあしらった『トランプ杯』も贈呈した」と。米国産の牛肉のダブルチーズバーガーとあえて取材して伝えているところがアメリカのメディアらしい。

  1ヵ月後の「G20大阪サミット」(6月28、29日)では、習氏も日本を訪れる。トランプ氏とすれば、今後中国との貿易交渉で浮上するであろう「レアアース問題」に先手を打ちたいと考えるのは当然だろう。ひょっとして、米中の「レアアース問題」が日本の新たなビジネスチャンスとして浮上してくるかもしれない。冒頭のにっこり笑った2人の笑顔に次なる可能性が。

【2020年4月7日付「★緊急事態宣言で問われる非日常性のこと」】 安倍総理はきのう緊急事態宣言に先立って緊急経済対策会議を開き、午後5時50分から記者団に説明した。事業規模については「コロナウイルス感染の経済に与える甚大な影響を踏まえ、過去にない、強大な規模となるGDPの2割にあたる事業規模108兆円の経済対策を実施する」と述べた(6日付・NHKニュースWeb版)。緊急事態宣言は全国ではなく、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に出される。期間もゴールデンウイーク最終日の5月6日までをめどするようだ。海外のようなロックダウン(都市封鎖)は行わない。

【2020年8月29日付「★辞任表明、安倍総理のレガシーは何だ」】  会見ではいつも使っているプロンプターを今回使っていなかった。ということはコメントは会見直前まで練られていた。あるいは、予定していたコメントを直前になって大幅に書き換えた、のどちらかだろう。側近が辞任表明を知らなかったとのコメントを会見後に寄せているので、おそらく後者だろう。
 
⇒31日(月)朝・金沢の天気     くもり

☆ブログで描いた「安倍総理」の14年~上

☆ブログで描いた「安倍総理」の14年~上

   安倍総理の辞任表明(28日)は各方面、国内外に衝撃が広がった。翌日朝刊の一面は白抜きベタの見出しでその衝撃の大きさを物語っている。安倍氏の今の心の境地はどうだろうか。このブログでも意外と安倍氏を取り上げている。写真付きで初めて登場したのは2006年7月6日付だった。以下、安倍氏の14年をブログを採録して振り返ってみる。

  総理誕生の背景、レームダック化、そして第二次内閣へ

【2006年7月6日付「★続・天を仰いで唾する」】 今回の北朝鮮のミサイル発射でマスメディアでの露出が格段に多くなったのが安倍晋三官房長官だ。安倍氏は5日午前4時30分ごろ、首相官邸に一番乗りだった。内閣のスポークスマンとしてこの日は4回の記者会見に臨み、北を強く批判する声明を発表した。その毅然とした物言いの映像や、口をヘの字に閉ざした写真がマスメディアに頻繁に登場することになる。マスメディアが番組や紙面で緊張感を演出するには「安倍」は欠かせない素材となっているのである。

  言いたいことは一つ。自民党は5日の党総裁選管理委で、小泉総理の任期満了に伴う総裁選を「9月8日告示、20日投票」と決めた。告示まであと2カ月。ミサイル発射の衝撃は今後、国連安保理での北朝鮮非難決議の採択や経済制裁などをめぐり2カ月は持つだろう。ということは、総裁選レースは安倍氏がこのまま走り込んでゴールとなる。10月上旬には首班指名選挙、続く組閣と政治日程は組み立てられていく。

【2006年9月26日付「★新米2題」】 新しい総理の安倍晋三氏が就任後初めて記者会見する様子が26日夜、テレビでライブ中継されていた。財政再建の模範を示すため自らの給与の3割、閣僚の給与の1割をカットすることを明らかにした。国家公務員の給与をばっさり落としていくと宣言したとも取れる内容だった。

  3割給与カットは並大抵の決意ではない。発表した組閣内容と会見内容を自分なりに読み解くと、内政的には、公務員改革、財政の見直し、社会保険庁の民営化、地方のリストラと裏腹の道州制への移行などがキーワードになろう。つまり、小泉政権を継承し、外交と防衛のみを担当する「小さな政府」を目指すと言葉に濃く滲ませた。52歳、新米の総理の手腕は未知数だ。

【2007年7月29日付「☆静かなる大衆の反逆」】 さて、安倍政権のレームダック化は避けられない。参院での与野党逆転に成功した民主が参院議長と主要な常任委員長を取りるだろう。さらに、野党が首相問責決議案を提出すれば可決されるのは確実だ。法的拘束力はないとはいえ政治的には重い決議で、首相は総辞職か衆院解散の二者択一を余儀なくされる展開も読めてくる。安倍政権は年内まで持つか、どうか。

【2012年12月26日付「★2012ミサ・ソレニムス~3」】 さて、その総選挙を振り返る。自民が圧勝したのは、民主が経済対策を重視してこなかったからだ、との論調が目立っている。選挙後に株価が1万円台を回復し、円レートも84円台になったとか、日銀が国債など資産買い入れ基金の10兆円増額を決め、前年比上昇率2%のインフレ目標も次回の決定会合で検討するなど、自民の安倍総裁が求めに「満額回答」で答えたなどのメディアの報道が目立つようになった。

 12党1500人余りの候補者による総選挙は戦国時代か、関ヶ原の戦いのように、いくつもの合戦が同時に繰り広げられた観がある。では、本当の争点は何だったのだろうか、経済対策か原発か、外交か。朝日新聞が選挙前の12月14日付で掲載した世論調査で、投票先を決めるとき最も重視するのは何かを3択で尋ねている。それの回答では、「景気対策」61%が、「原発の問題」16%、「外交・安全保障」15%を大きく引き離していた。今夜、第二次安倍内閣が誕生する。

⇒30日(日)朝・金沢の天気    はれ          

★2020秋の胸騒ぎ~下

★2020秋の胸騒ぎ~下

          石川県に住む者として 残念なニュースが流れている。県内の私立大学の20歳の男子学生がきょう放送予定の日本テレビ系番組『24時間テレビ』について、放送当日に「武道館でサリンをまく」とツイッターに投稿したとして、警視庁に威力業務妨害の疑いで逮捕された(8月21日付・共同通信Web版)。同番組の開催場所はこれまで武道館だったが、ことしは改修工事のため国技館に変更されているので本人が場所を勘違いした可能性もある。警察は悪質な嫌がらせとみて動機を調べている(同)。

    トランプ大統領の北朝鮮への次なる一手は

           本人にとって悪ふざけのつもりでSNSで投稿したとしても、それがいったんアップロードされれば公の場の犯罪となる。警察庁の報告書「令和元年におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、スマホやPCを使った犯罪は8267件で、上記のような脅迫は349件に上る。ちなみに、8月20日付「2020秋の胸騒ぎ~上」で述べた詐欺は977件だ。これは推測だが、今回の逮捕はおそらくテレビ局編集セクションにあるサイバーリサーチのチームが発見して警察に届けたのではないだろうか。メディア各社はサイバー空間でのトレンドやトラブルなどをニュースのネタ拾いのため細かくチェックしている。

   話は逸れたが、日本海側に住んでいるとどうしても考えてしまうのが、北朝鮮をめぐる情勢だ。南北首脳会談の「板門店宣言」で建設された北南連絡事務所が6月16日に爆破され、世界に衝撃が走った。アメリカと北朝鮮の首脳会談もこれまで3回開かれたが、成果は得られなかった。こうなると、トランプ大統領が2017年の9月の国連総会の演説で金正恩党委員長を「ロケットマン」と呼んだあのころに戻るのではないか、と危惧する。そうなると北朝鮮への斬首作戦が現実味を帯びる。斬首作戦は金委員長へのピンポイント攻撃のことだ。

   北の動向をつぶさに報じている「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」の公式ホームページに、7月7日付で「トランプ大統領のお悔やみ書簡の意味」と題した動画がアップされている。書簡はトランプ大統領が拉致被害者の横田めぐみさんの母・早紀江さんに宛てた、死去した夫・滋氏への弔意を込めたもの=写真=。書面は英文だが、協議会の訳を引用すると、「早紀江さんと滋さんの弛まない活動によって、北朝鮮による拉致問題は日本と米国にとって優先課題であり続けています」「(アメリカは)めぐみさんを必ずご自宅に連れて帰るというこの重要な任務を続けます」と大統領としての決意表明を感じさせる。

   金氏を見限ったトランプ氏の次なる一手が「めぐみさんを必ずご自宅に連れて帰る」ということ、すなわち拉致被害者の救済のために斬首作戦に打って出るということを意味していないだろうか。トランプ氏が指示するとすれは、大統領選挙が行われる晩秋の11月3日までだ。アメリカによる斬首作戦で知られるのは、オバマ政権下で実行されたオサマ・ビン・ラディンに対して行ったバキスタンでの攻撃(2011年5月2日)がある。

   もし斬首作戦が現実になれば、国内は騒乱状態になり大量の難民が船に乗ってやってくる。ガソリンが切れたり、エンジンが止まった船の一部はリマン海流に乗って能登半島などに漂着する。無事漂着したとして大量の難民をどう受け入れるのか、武装難民だっているだろう。その影響は計り知れない。日本海側に住むが故の胸騒ぎではある。

⇒22日(土)午前・金沢の天気     はれ時々くもり

☆2020秋の胸騒ぎ~中

☆2020秋の胸騒ぎ~中

   このブログでは日本海のEEZ(排他的経済水域)内の大和堆での北朝鮮の違法操業について述べてきた。そのつど、海上保安庁の公式ホームページをチェックしているが、尖閣諸島における中国公船の動向に関しても詳細な報告がされていて目を引く。

    食料危機が加速させる中国漁船の領海漁り

   中国が尖閣諸島の領有権を主張したのは1971年と言われる。1968年に尖閣諸島での海底調査で、石油や天然ガスなどの地下資の可能性が確認されて以降のことである。領土問題ではなく、「資源問題」の側面もある。2012年9月に日本が尖閣諸島を国有化してから年々中国公船の絡みが激しくなっている。

   尖閣諸島をめぐるもう一つの資源が漁業資源である。カツオやマグロなどが獲れ、島ではカツオ節の生産も行われていた。中国が領有権を主張してから、中国漁船も押し寄せてくるようになった。2010年9月7日に海上保安庁の巡視船2隻が、退去命令を無視して違法操業を続けていた中国漁船に体当たりされるという衝突事件があった。この問題はさらに中国から日本へのレアメタルの輸出制限へと通商問題へと展開した。2016年8月には、200隻余りの中国漁船が接続水域で操業して、漁船と中国海警局の船が領海に繰り返し侵入するなど、周辺での中国漁船の漁は続いている。ことし5月には、尖閣諸島周辺の領海で操業していた日本漁船を中国海警局の船が追い回すという事件があった。

   この秋に大量の中国漁船が再び尖閣周辺に来るかもしれないという胸騒ぎがしている。それは、中国で顕在化しつつある食料危機だ。習近平国家主席が「飲食の浪費を断固阻止する」との指示を出し、新型コロナウイルス感染の世界的まん延は「警鐘」だと指摘し食料問題に危機意識を持つよう訴えた(8月20日付・共同通信Web版)。中国における食料問題は6月以降、中国各地で断続的に豪雨災害が続いていて、水田などの耕作地が冠水被害が広がっている。習氏は今月18-19日に安徽省の被災地を視察している(同)。習氏が「飲食の浪費を断固阻止する」の指示を出すほど、危機感がひっ迫しているとも受け取れる。

   陸で打撃を受けて想定されるのは、タンパク源を確保するための水産資源の確保ではないだろうか。すでに、中国は北朝鮮海域での制裁決議違反が問題視されているにも関わらず、北朝鮮の漁業海域での漁業権を購入し、中国の遠洋漁船全体の3分の1にも相当すると見られる大量の船団を送り込んで漁業資源を漁っている(7月27日付・ブログ「北の漂着船、グローバル問題に」)。北朝鮮の漁業海域が枯渇すれば、次に中国漁船が船団を組んで漁りにくるのは、おそらく尖閣諸島周辺や日本海のEEZだろう。

   すでに、中国政府は「日本の海上保安庁は(尖閣周辺で)1隻の日本漁船すら航行するのを止められなかった」と批判。「数百隻もの中国漁船の(尖閣周辺での)航行を制止するよう(日本が)要求する資格はない」と領海侵入を予告している(8月2日付・産経新聞Web版)。もちろん、日本の領海やEEZだけでなく、中国が実効支配し、ベトナムやフィリピンが領有権を主張している南シナ海でも「漁業紛争」に及ぶかもしれない。

(※写真は、2010年9月7日に尖閣諸島海域で中国漁船が海上保安庁の巡視船が衝突する様子。海上保安官がユーチューブに映像を公開した)

⇒21日(金)午前・金沢の天気     はれ

★2020秋の胸騒ぎ~上

★2020秋の胸騒ぎ~上

  2020年の年初では、区切りの良い年だと期待していたが、新型コロナウイルス感染拡大など世界史に残るとんでもない年になっている。猛暑が続くとは言え、季節はそろそろ夏から秋に移ろう。ただ、果たして秋晴れのさわやかな日常に戻るのかどうか。考えすぎかもしれないが、2020年秋はいろいろと胸騒ぎがする。

   「5G」対面動画、集団詐欺の新たなステージに

   きょうの午前中、知人の名前でパソコンにメールが届いた。「〇〇▽▽.Nike」という名前で、〇〇▽▽が知人のフルネームだ。知人はメールアドレスが抜き取られたに違いないかと直感し、メールを削除した。それにしても、企業名と知人名をセットにした巧妙な手口だ。以前も、自身のスマホのSMSに「お荷物のお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました。ご確認ください」と、宅配業者の不在通知のようなショートメールが届いた=写真=。その文字の下にURLがあった。どんな荷物が届いたのかと、そこにアクセスすると何も映らなかった。その瞬間、「やられた」と気づいた。即キャンセルをかけた。SMSを使った詐欺メール、「スミッシング詐欺」だ。

   その後、スマホには覚えのない電話番号からの着信が数度あった。こちらから電話をかけることはしなかったが、この詐欺メールは実に巧妙だ。というのも、荷物が着払いの場合は宅配業者から事前に荷物を届ける旨の電話がある。普通、荷物には届け出先の携帯番号が記されているので不在の場合、SMSメールがあっても不自然には感じない。その常識範囲の盲点を突いた詐欺メールだ。

   こうした詐欺がこの秋からさらにステ-ジアップして活発化するのではと憶測する。高速大容量と多数同時接続の通信システム「5G」がこの秋から本格的に普及し始め、キャリア各社も5G対応機種を発売している。その背景には、テレワークが一般化すると同時に、スマホでのZoom会議の需要が出てきたからだ。気心が知れた者同士の会話や、組織のリモート会議に使う分にはよいが、新たな詐欺だってありうる。

   たとえば有名証券会社の名を語った投資話がスマホのメールを通じて入り、Zoomで参加すると「犯人」は複数で劇団のようにそれぞれが投資家、ファイナンシャルプランナー役、弁護士役などの役柄を分担し、あの手この手で騙されるといったことにもなりかねない。あるいは人生相談、婚活、就活などスマホ面談という詐欺が横行するかもしれない。対面動画によるリアリティ性に人は騙されやすいのだ。

   ここで思う。スマホでの詐欺に対策の手を打つべきはキャリア、つまり携帯電話会社ではないか。事例としてはそぐわないかもしれないが、SNSではすでにフェイクや不適切な発言内容について規制をかけている。キャリアとして対策を打ってほしい。個人の責任論ではもう済まない時代にきているのではないだろうか。

⇒20日(木)午後・金沢の天気     はれ