⇒ドキュメント回廊

★「能登の再難」水害拡大させた地震、豪雨、そして流木による無慈悲な連鎖

★「能登の再難」水害拡大させた地震、豪雨、そして流木による無慈悲な連鎖

  先日(今月22日)、記録的な大雨の現場となった輪島市を巡った。同市門前町浦上地区での被災現場で地元の人たちが語っていた言葉が印象的だった。元日の地震で自宅が半壊し仮設住宅で生活しているシニアの男性は、今回の大雨で大量の流木が押し寄せて集落地区そものものが半壊状態=写真・上=となったことに、「神も仏もない」と涙ぐんでいた。たまたま、話を横で聞いていて自身も胸が痛くなった。災難が2度やってきて、なすすべなく悲嘆にくれる心境を感じた。

  けさの地元メディアの報道によると、能登半島の北部、奥能登を中心とした大雨でこれまで死者は9人、行方や安否が分からない人が6人いる。また、土砂崩れで道路などが寸断されて孤立している集落が46ヵ所・367人に上る。また、停電は2860戸。この停電の影響による水道施設の停止や水道管の破裂などで5216戸で断水となっている。

  21日の大雨は予想外だった。気象台の予測では、能登地方は24時間で150㍉の雨だったが、実際に降った雨は輪島市で午前8時から午前11時の3時間で220㍉、まさに「ゲリラ豪雨」だった。気象庁は21日午前10時50分に輪島市と珠洲市、能登町に大雨の特別警報を出したが、河川が一気に氾濫するなど手遅れの状態だった。22日午後10時までの48時間雨量は輪島市で498㍉、珠洲市で393㍉と平年の9月1ヵ月分の雨量の2倍余りに達した。

  冒頭の話に戻る。22日午後に輪島市を巡って見えたことは、山間地での流木の怖さだった。元日の震災で地盤が緩み、その後の大雨で山の中腹では土砂崩れが起きたのだろう、流木が人里にもなだれ込んでいた=写真・中=。流木の流れ落ちる角度が少し違っていれば、民家を直撃したに違いない。

  これらの流木は河川の下流で橋脚などに当たり、積みあがって今度は「ダム化」=写真・下=して、橋の周囲の街並みに広範囲に水害をもたらした。まさに、地震と豪雨が連鎖し、その媒体としての流木が水害を拡大させた。「神も仏もない」、まさに天地からの無慈悲な連鎖の構図が現地で見えてきた。

⇒25日(水)夜・金沢の天気    はれ

☆「能登の再難」元日地震と記録的な大雨合わせ避難者1356人に

☆「能登の再難」元日地震と記録的な大雨合わせ避難者1356人に

  大雨に見舞われた輪島市の被災地を見て回り、痛ましく感じたことがいくつかある。その一つが、元日の地震で自宅が全半壊したため仮設住宅に入り、さらに今回の大雨で床上浸水の災害を被り、再び避難所生活に戻る被災者の人たちの心情だ。輪島市門前町浦上地区の仮設住宅を訪れた。仮設住宅の住人に話を聞いた。山でがけ崩れが起き倒木が大量に発生した。近くの浦上川が決壊し、流木が次々と流れ着き、集落近くの橋梁にぶつかってたまり、まるで「土砂ダム」と化した。

  仮設住宅は河川の近くにあり、床上浸水の状態となった=写真・上=。ただ、橋の下流にあるので、流木が流れてきて仮設住宅を直撃するということは免れた。話をしてくれたシニアの男性は「仮設住宅は助かった方だ。この橋の上流はひどいことになっている」と。その話を聞いて少し上流に上がると、流木が押し寄せていた。流木が民家にぶつかり、壁などがゆがんでいた。軽トラック2台も流されてきたのだろうか。電柱が倒れ、一帯では広範囲に流木や泥があふれていた=写真・下=。

  男性は震災で仮設住宅に入った。今回の水害では周囲は泥であふれた。避難所から通って仮設住宅の泥を除去することが「当面の仕事だ」と話した。泥のにおいが一帯に立ちこめていた。

  最大震度7の地震、そして記録的な大雨。能登半島は「災難」、そして「再難」に見舞われた。石川県まとめによると、大雨による死者は23日現在で輪島市6人、珠洲市1人の計7人。避難者は計1088人(輪島市730、珠洲市243、能登町102、ほか13=22日午後4時時点)に上っている。能登半島地震での避難生活(地元での1次避難)も続いていて、計268人(輪島市72人、珠洲市145人、志賀町51人=9月17日時点)が避難所に身を寄せている。地震と水害を合わせ1356人となる。

⇒23日(月・振休)午後・金沢の天気    はれ時々くもり

★ニュース悲喜こもごも 能登に記録的な大雨被害 大の里優勝で大関昇進へ

★ニュース悲喜こもごも 能登に記録的な大雨被害 大の里優勝で大関昇進へ

  能登が記録的な大雨に見舞われた。秋雨前線や低気圧の影響で線状降水帯が発生し、気象庁は21日、輪島市と珠洲市、能登町に大雨の特別警報を出した。きょう22日午後10時までの48時間雨量は、輪島市で498.5㍉、珠洲市で393.5㍉と平年の9月1ヵ月分の雨量の2倍余りに達した。土砂崩れによる道路の寸断が相次ぎ、孤立集落は輪島市で99ヵ所、珠洲市で13ヵ所、能登町で3ヵ所の計115ヵ所にも及んだ。特別警報はきょう午前、警報に切り替えられたが、各地で河川が氾濫し、痛々しい爪痕が残った。

  きょう午後、輪島市の災害現場を見て回った。同市内の中心部を流れる河原田川に架かる姫田橋では、橋が架かっていた道路の片側が崩れた状態で、橋の3分の1ほどが崩落してなくなっていた。同市久手川町を流れる塚田川では住宅4棟が流され、4人が行方不明になったとして、警察と消防、自衛隊などが捜索に当たっていた。上流でがけ崩れが起き、大量の流木が橋にかかり、土砂ダム状態になった=写真・上、22日午後4時3分撮影=。そのほか、山の斜面が崩れている場所も散見され、中には宅地に向かって土砂や木が流れ込んでいるところもあった。

  大雨の被害には気が滅入るが、心和むニュースもある。夕方、能登から金沢に戻る車の中で、大相撲秋場所の千秋楽の取り組みをラジオで聴いていた。石川県出身の関脇・大の里は残念ながら敗れたものの、13勝2敗の成績で2回目の優勝を果たした。大の里の大関昇進に向けた臨時の理事会が今月25日に諮られることが決まったことから、大関昇進が確実になったとアナウンサーが伝えていた。(※写真・下は、大相撲秋場所で優勝を果たし、大関昇進が確実になった関脇・大の里=石川県津幡町公式サイトより)

  優勝インタビューで今場所の好調の要因について聞かれた大の里は師匠で元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方のおかげだと答え、「部屋で親方の胸を借りてたくさん稽古をつけてもらった。その成果が出てよかった」と。さらに、地元石川の能登の大雨について聞かれると、「大変な状況になっているのをきのうニュースで見てびっくりした。絶対優勝を決めて明るい話題を届けたいと思っていたし僕の優勝で元気になってくれれば」と答えていた。石川出身の大関昇進は出島に次いで25年ぶりとなる。まだ24歳、これからの伸びしろに注目。

⇒22日(日・秋分の日)夜・金沢の天気   くもり

☆能登に「大雨特別警報」リスク 輪島市で1万8千人に避難指示

☆能登に「大雨特別警報」リスク 輪島市で1万8千人に避難指示

  停滞している秋雨前線の影響できょうから能登半島を中心に強烈な雨が降っている。気象庁はさきほど、21日午前11時前に能登に線状降水帯が発生し、非常に激しい雨が同じ場所に降り続いているとして「大雨特別警報」を発表した。気象庁によると、輪島市中部付近では、レーダーによる解析で午前9時10分までの1時間におよそ120㍉の猛烈な雨が降った。また、ウエザーニューズの雨雲レーダー(午前9時00分時点)を見ると、日本海に伸びる秋雨前線の周辺では雨雲が発達し、その一部が能登半島にかかって線状降水帯となっている。輪島市のアメダスでは9時00分までの1時間に98.5mmの観測史上1位となる猛烈な雨を観測した。

  輪島市や珠洲市では河川が氾濫。元日の能登半島地震で山間地などで地盤が緩んでいることから、輪島市は大雨で土砂災害が発生する危険性が非常に高まっているとして、市内の12地区の8867世帯、1万8180人に避難指示を出した。「避難指示」は5段階の警戒レベルのうち警戒レベル4の情報で、危険な場所から全員避難するよう呼びかけている。この雨はきょう正午からあす正午までの24時間で能登に100㍉が予想されている。

  写真は7月6日に撮影した輪島市の山間地の様子。民家の裏山では地震で山が崩れがけ地と化しており、大雨でさらに土砂災害の危険性もはらむ。能登ではこのような裏山が崩れているところがいたるところにある。また、川べりの民家の場合、下流で山の土砂崩れが起きると「土砂ダム」が出来て住宅が水没することにもなる。そして、大雨で心配されるのはため池の決壊だ。能登半島は中山間地での水田が多く、その上方にため池が造成されている。半島全体で2000ものため池があると言われている。地震でため池の土手に亀裂などが入っていると、急に雨量が増すことでため池が決壊する可能性がある。こうなると、下流にある集落に水害が起きる。

  ため池は共同所有と個人所有があり、それぞれに管理が行われている。ところが、個人所有の場合だと世代替わりでため池の存在すら忘れ去られていることが多い。ため池を放置すれば土砂崩れや水害のリスク、「ため池ハザード」が広がる。もちろん、この問題は能登だけではない。大雨になると、日本中の山のふもとにある集落ではこのようなリスクを背負う。

⇒21日(土)午後・金沢の天気   あめ時々くもり

★「猛打賞」を贈りたい 大谷翔平、パウエルFRB議長、兵庫県議へ

★「猛打賞」を贈りたい 大谷翔平、パウエルFRB議長、兵庫県議へ

  「猛打の大爆発」とも言える快挙だ。大リーグ、ドジャースの大谷翔平が19日(日本時間20日)、敵地マイアミでのマーリンズ戦で3打席連続ホームランを含む6打数6安打10打点と猛打を振った。2盗塁も決めてMLB史上初となる50本塁打、50盗塁の「50ー50」の偉業を達成した。けさからNHKをはじめTVメディアやネットメディアが大騒ぎとなっている。

  テレビニュースで視ていると、5打席目の7回で大谷が50号本塁打を放った瞬間、観客席は総立ちになって大歓声を上げ騒然となった。そして、6打席目の9回で3打席連発となる51号を。「50-50」を超えて「51-51」に到達した。スタンディングオベーションは鳴りやまなかった。歴史的瞬間に立ち会った歓喜とは、このことなのだろう。(※画像は、MLB公式サイトで掲載されているの大谷翔平の「50ー50」の偉業達成の記事)

  猛打と言えば、アメリカのFRB(米連邦準備理事会)が、0.5%の大幅利下げに踏み切ったことも強烈だった。大幅な利下げは、当初「それほど景気が悪いのか」というマイナスイメージだったが、パウエル議長が金利決定発表後の記者会見で述べたひと言葉がそれを逆転させた。「The U.S. economy is in a good place, and our decision today is designed to keep it there」(19日付・ニューヨークタイムズWeb版)。意訳すると、「アメリカ経済は良好な状態にあり、きょうの我々の決定はそれを維持するためのものだ」と。これによって、アメリカ経済のソフトランディングへの楽観論が広がり、景気悪化と読んでいた投資家が売りから一転して買い戻し、IT企業株など中心に株価は3日ぶりの最高値を更新した。

  確かに、アメリカの直近の小売売上高(17日発表)は市場予想を上回り、労働市場も軟化はしているものの、多数の失業者が発生するといった状態ではない(日本のメディア各社の論評より)。逆にこれが言葉足らずで経済の悪化と国民に印象付けていたら、11月の大統領選にも影響を及ぼすのかもしれない。

  意外な猛打もある。パワハラ疑惑などを告発する文書について「うそ八百」と決めつけて文書を作成した県庁の局長を懲戒処分とした兵庫県の斎藤知事に対する不信任決議がきのう(19日)県議会で全会一致で可決された。86人の全議員が知事に「ノー」を突き付けたカタチだ。知事は10日以内に辞職か議会解散を迫られるが、知事が解散カードを切った場合は県議は選挙戦に追い込まれる。まさに、「もろ刃の剣」だ。それでも、総意と覚悟を持って県議全員で知事を追い込んだ。忠臣蔵の赤穂浪士四十七士を想起させる行動だ。見事だ。

⇒20日(金)午後・金沢の天気   はれ

☆崩れたトンネル内にトンネル 逆転の発想で車の走行と復旧工事が同時可能に

☆崩れたトンネル内にトンネル 逆転の発想で車の走行と復旧工事が同時可能に

  元日の能登半島地震では13万6000棟におよぶ住宅の全半壊や部分破損、山の土砂崩れ、海岸の隆起や沈没などのほかに、道路の崩れがいまも随所にある。半島を縦断する自動車専用道路「のと里山海道」が今月10日に全線での対面通行が可能になったものの、国道249号など幹線道路ではトンネル内部の崩落などで通行止めとなっているところもある。その現場をめぐっていると、修復現場で「逆転の発想」を感じることがある。

  その一つが輪島市の白米千枚田に近い国道249号での現場。国交省能登復興事務所は土砂崩れで寸断された国道の海側が隆起していることに着目し、海側の地盤を活用して道路を新設した。新しい道路の延長は800㍍で、うち海側430㍍で幅6㍍の2車線。山と海の両サイドに高さ3㍍の土嚢を積んで山からの崩落と高波の影響を防いでいる。この道路は5月のGWに供用が開始された。

  同じ国交省能登復興事務所が手掛けている輪島市の国道249号「中屋トンネル」の復旧工事も逆転の発想なのかもしれない。なにしろ、トンネルの中にトンネルを造って、工事を進めると同時に車が通れるようにするという。同事務所公式サイトに掲載されている「記者発表資料」(9月10日付)によると、トンネルの長さは1.3㌔だが、コンクリートの内壁などが崩れたため、940㍍にわたって補修工事が続いている。このうち、6ヵ所に「鋼製プロテクター」(防護壁、高さ3.8㍍、幅4㍍)を設置することで、トンネル本体が工事中でも車が通れる空間を確保するという。今月25日正午から緊急車両や地元住民の車に限って通れるようになる。(※写真は、国交省能登復興事務所の今月10日付・ニュースリリースで掲載されている中屋トンネル内のプロテクター)

  当面は1車線の交互通行となるが、復旧工事を進めて年内には2車線通行を目指すという。トンネルの内部に四角い小さなトンネルを設け、トンネル本体の補修を進めながら、車の通行を可能にするという珍しいこの工事は、きのう(18日)現地で地元住民のための見学会を開催して説明した。逆転の発想もさることながら、被災地の人々への丁寧な対応にも納得がいく。

⇒19日(木)夜・金沢の天気    あめ時々くもり

★「一喜一憂」寄せ集め また弾道ミサイル 秋場所の勝敗 地価上がり下がり

★「一喜一憂」寄せ集め また弾道ミサイル 秋場所の勝敗 地価上がり下がり

  北朝鮮がまた日本海に弾道ミサイルを発射した。18日午前6時53分ごろから午前7時23分ごろにかけて、複数発の弾道ミサイルが発射された。ミサイルは日本海のEEZ(排他的経済水域)の外に落下したとみられる。今月12日にも複数を発射しており、その技術を用いた「人工衛星」の発射も含めてことし9回目となる。日本海はスルメイカの漁場で、能登半島の能登町小木漁港から出港した中型イカ釣り漁船などが操業している。

  大相撲秋場所、能登の人たちは一喜一憂しているに違いない。能登半島の付け根に位置する津幡町出身の大の里は破竹の10連勝。奥能登の穴水町出身の遠藤は勝ち越しまであと1勝、中能登の七尾市出身の輝は9敗目を喫した。能登はある意味で相撲に「うるさい」土地柄だ。立ち話で、「きょうの大の里は・・」「きょうの遠藤は・・」と取り口の論評を聞かされることもある。あの「黄金の左」と呼ばれた第54代横綱の輪島(1948-2018)は七尾市出身、古くは江戸時代に活躍した第6代横綱の阿武松緑之助(1791‐1852)はいまの能登町の出身でもある。能登には相撲の歴史の深みがある。(※写真は、JR金沢駅の観光案内所に設置されている郷土力士の等身大パネル)

  国交省は7月1日時点の都道府県地価(基準地価)を発表した(17日)。それによると、全国平均では住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇幅も拡大したものの、元日の能登半島地震に見舞われた輪島市などでは大幅に下落した。輪島市の住宅地では河井町が1平方㍍8万5000円で14.8%、商業地の新橋通が1平方㍍2万3200円で17.1%、それぞれ下落した。この下落率は「全国1位」と地元の新聞メディアは報じている。能登は人口減少で地価下落が続いていたが、地震で拍車がかかった。一方、ことし3月16日に北陸新幹線が金沢駅から延伸した加賀地区では、白山市新成4丁目の住宅地が1平方㍍8万5000円と7.6%上昇するなど各地で延伸効果が広がっている。

  もう一つ統計の話。厚労省は100歳以上の高齢者の人数を発表した(17日)。9月15日時点で9万5119人で、人口10万人当たりの100歳以上の人数は76人となる。これを都道府県別で換算すると、一番多いのが島根で159人、高知が154人、鹿児島130人と続く。自身が住む石川は85人。ちなみに、東京と大阪はそれぞれ54人。一喜一憂せずにゆったり、そして酒がうまい県ほど100歳長寿が多いということか。

⇒18日(水)夜・金沢の天気   くもり

☆震災のむごさと教訓を語り継ぐ のと鉄道「語り部列車」が出発

☆震災のむごさと教訓を語り継ぐ のと鉄道「語り部列車」が出発

  能登半島を縦断する鉄道はJR七尾線と「のと鉄道」。のと鉄道は石川県の第3センターで、JR七尾線と連結した中能登の七尾駅から奥能登の穴水駅までの33㌔を往復する。七尾湾のコバルトブルーの海の絶景が楽しめ、4月になると100本余りのソメイヨシノやシダレ桜が構内を彩る観光名所として知られる駅もある。

  のと鉄道は元日の能登半島地震で線路がガタガタに歪むなど大きな被害に見舞われた。穴水駅に隣接した本社も破損したため、同駅内に停車中だった車両2両を仮の本社事務所として使い急場をしのいだ時期もあった。全線での運転再開にこぎつけたのは4月6日だった。こうした地震の当時の状況や震災の経験を乗務員が乗客に話す「語り部列車」(団体予約)の運行がきのう(16日)始まった。

  のと鉄道公式サイトには、語り部となる3人の女性乗務員が紹介されている=写真=。写真・中の宮下さんは地震が発生したとき、駅で停車中の車内にいた。津波から逃れるため、乗客を高台へと誘導した。あの日の恐怖は月日が経っても薄れることはなく、深く胸に刻み込まれているという。写真・左の牛上さんは自宅で被災した。家屋の倒壊は免れたが、目の前では土砂崩れが起き、尊い命が失われた。気持ちが沈んだ時期もあったが、この現実を伝えることが私の使命だと前向きに考えるようになった。写真・右の坂本さんは、自身の体験談はもちろん、能登各地での被災状況も丁寧に伝えていきたいと思っている。震災以降、悲しい思いと同時に人の温かさや能登の自然のおかげで元気を取り戻すことができた。語りを通して、能登の魅力をあらためて感じてもらえたらと願っている。

  のと鉄道は「語り部列車」を運行する意義ついて「地震の風化防止や災害の教訓を伝えるため」と強調し、「列車内では、震災を経験した弊社社員が『語り部』となり、能登に何が起き、人々がいま何を思い、考え、生きているのか、穏やかな車窓からの風景とともに“能登の今”をお伝えします。防災の大切さや被災地の現状をご自身のこととして感じていただき、ご乗車された皆様のこれからの暮らしに役立てていただければ幸いです」と述べている(のと鉄道公式サイト)。

  語り継ぐことは災害の風化を防ぐ原点でもある。のと鉄道の乗務員スタッフがその先陣を切ったことは評価に値する。能登の行政や町内会、学校、会社、社会福祉法人などでも災害への対応や教訓を伝える語り部を養成してほしいと願う。

⇒17日(火)夜・金沢の天気 はれ  

★総裁選と総選挙はセットか 政治の争点なき「人気投票」が続く

★総裁選と総選挙はセットか 政治の争点なき「人気投票」が続く

  きょうは「敬老の日」。総務省の人口推計(15日公表「統計からみた我が国の高齢者」)によると、65歳以上の高齢者は3625万人で、総人口に占める割合は29.3%となる。さらに、80歳以上は1290万人で人口の10%を占める。そして、日本の65歳以上の人口割合は主要国の中でも、イタリアの24.6%やポルトガルの24.5%などを上回りトップとなっている。世界の長寿国、めでたいニッポンではある。

  自民党の総裁選(今月27日)を控え、読売新聞は党員・党友を対象に実施した電話調査(14‐15日)の結果を16日付の紙面で掲載している。1500人から回答を得た。投票先は石破氏が26%、高市氏が25%、小泉氏が16%で上位を占めた。また、党所属国会議員の支持動向調査を行い、15日時点で96%に当たる352人から意向を聞き取りなどで確認した。それによると、小泉氏が45人と最多で、小林氏が40人、林氏が35人と続いた。総裁選は、議員票367票に加え、党員・党友票367票を合わせた734票となる。この読売の試算では、党員・党友票と議員票の合計で、高市氏と石破氏が123票で並び、小泉氏が105票で追う展開となる。

  日経新聞も同日付の紙面で、自民党総裁に関する世論調査(13‐15日)の結果を掲載している。調査は総裁選に立候補した9人から1人だけ「ふさわしい人」を選んでもうら形式で、全国の18歳以上の男女に電話で聞き取り調査、902件の回答を得た。それによると、石破氏が26%、小泉氏が20%、高市氏が16%と続いた。自民党支持層の回答では、石破氏が25%、高市氏が22%、小泉氏が21%の順となる。無党派層の回答では、石破氏が23%、小泉氏が18%、高市氏が13%と続いた。

  自民党では、新総裁の選出を公開討論会を開くなどして幅広く国民にアピールしている。NHKは立候補した9氏が臨んだ所見発表演説会を生中継していた(今月12日)。新聞・テレビなどマスメディアは27日まで総裁選一色だろう。立憲民主党の代表選(今月23日)も最中だが、メディアの扱いはその比ではない。総裁選が終われば、次は衆院の解散・総選挙への道筋だ。岸田総理のときは、2021年9月29日に新総裁が決まり、10月4日に首班指名と組閣、そして同14日に衆院を解散、同31日投開票という1ヵ月余りの流れだった。総裁選と総選挙がセットになり、政治の争点なき人気投票が続く。

⇒16日(祝)午後・金沢の天気    はれ

☆疲労する被災生活の関連死を防ぐ 現場対応の看護師を養成へ

☆疲労する被災生活の関連死を防ぐ 現場対応の看護師を養成へ

  能登半島地震による災害関連死がさらに増えて147人(石川県関係分)となった。石川県と被災自治体による7回目の合同審査会(今月4日、医師・弁護士5人で構成)で答申があった16人について、七尾市と能登町、穴水町が正式に認定したと発表した(13日)。内訳は七尾市が7人、能登町が8人、穴水町が1人。家屋の下敷きになるなどして亡くなった直接死227人と合せて、県内の震災による死者は374人となる。

  3市町はどう遺族の承諾を得て関連死の状況を一部公表している。それによると、七尾市で亡くなった50代の男性は自宅で被災。震災によるとストレスに加え、道路事情が悪い被災地での勤務などにより、心身に負担が生じて急性心筋梗塞のため死亡した。能登町の80代の女性は自宅で被災後に近くの避難所へ。その後、親戚宅へ移ったが悪路の長時間移動や避難生活、慣れない場所での生活環境の変化で心身に負担が生じた。持病の影響もあり、十二指腸憩室穿孔で死亡した。穴水町の90代の女性は自宅で被災後、車中泊を経て自宅での生活を継続していたが、地震の影響でデイサービスが中断し、次第に全身状態が悪化して肺炎で死亡した。詳細は公表されていないが、今回は自殺者1人が初めて関連死として認定された。

  被災自治体がこれまで公表した関連死を調べてみるといくつかの傾向がが分かる。一つは、80代以上の高齢者が多いことだ。今回認定された16人の中で遺族が年齢を公表した13人のうち、50代が1人、60代が1人、70代が1人、80代が5人、90代が5人と圧倒的に多い。そして、関連死の背景となる要因として、避難所などにおける生活の肉体的・精神的疲労が多く、避難所などへの移動中の心身の負担も多い。また、地震のショック、余震への恐怖による心身の負担も大きい。要介護認定を受けていたり、持病などの既往症が関連死につながったケースもある。

  こうした関連死を防ぐには、避難所などでの現場で医療全般を知る看護師の目線が必要だろう。8月30日付のブログでも述べたが、石川県は9月補正予算案に、県立看護大学が災害への対応力を備えた看護師の育成をする専門講座を開設する経費を盛り込んだ。避難所における衛生的なトイレ利用や、避難者がストレスなく就寝できるスペースの確保など、高齢者が安心して暮らせる避難所運営、そして感染症予防や健康管理を看護のプロの目線で見極めていく、そうした関連死を防ぐための看護師の養成を目指してほしい。しかも、はやく。(※写真は、石川県立看護大学のモニュメント「風・心・光」=同大公式サイトより)

⇒15日(日)夜・金沢の天気    あめ