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☆タオルを回せば アサギマダラも踊る

☆タオルを回せば アサギマダラも踊る

   ネット動画でたまたま見つけた、アイドルグループ「PiXMiX」の『タオルを回すための歌』=写真・上=が面白い。手でタオルを回しながら歌い踊る、そのリズミカルな体の振りをさらに回るタオルが雰囲気を盛り上げる。タオル回しと言えば、夏の甲子園大会でも、タオル回しの応援風景が最近見られるようになった。自己表現の一つとしてタオル回しの文化が定着するかもしれないと想像をたくましくした。 

  タオルを回す光景は、実は山の中にもある。2017年9月、能登半島で一番高い山、宝達山(637㍍)に学生たちといっしょに登った。「旅するチョウ」と言われるアサギマダラが宝達山の山頂付近に飛来している。このチョウは春は日本列島の北の方へ、秋には南の方へと飛び、その距離は2000㌔にも及ぶと言われる。宝達志水町役場職員の田上諭史氏ら愛好グループはアサギマダラを捕獲、マーキングして放している。蜜(みつ)がエサになるホッコクアザミを伐採しないようにと植物の保護運動にも取り組んでいる。

   田上氏に捕獲の現場を見せてもらった。右手に白いタオルを振り回していると=写真・中=、上空をふわふわとまるで踊っているような様子でアサギマダラが飛んで来る。近寄って来たところを、左手に持ったネットで捕まえるが、この日は風が吹いていたせいか、1匹しか獲れなかった=写真・下=。それにしても、不思議な光景だった。

   なぜアサギマダラはタオルに誘惑されるのか。以下、田上氏の説明から。寄って来るタオルの色は白色と水色。白色と水色でも、回転しないタオルには寄って来ない。ゆっくり回すより、はやく回すと寄って来る。アサギマダラには回転する白や水色のタオルはどのように見えているのだろうか。吸蜜植物のホッコクアザミやヒヨドリバナなどお花畑が広がる光景なのだろうか。タオルを回せばチョウも踊る。PiXMiXの動画を見てそんなことを思い出した。

⇒26日(水)午後・金沢の天気      はれ  

★「ワクチン接種」予約は必要なのか

★「ワクチン接種」予約は必要なのか

   きょうから東京と大阪で行われる新型コロナウイルのスワクチン接種の予約受付が始まる。このブログで何度か「ワクチン敗戦国」と称してきた行政の対応の矛盾などが一気に噴き出すのではないかと懸念している。たとえば、一番の混乱は、予約は防衛省のホームページや通信アプリ「LINE」などインターネットでのみの受付となっていて、電話は受け付けないということだ。

   ネットやスマモを使わないシニアは多数いる。これは全国統計だが、総務省「情報通信白書(令和2年版)」によると、70代(70-79歳)のSNS利用者は41%だ。さらに、「NTTドコモ」モバイル社会研究所のSNS利用動向についての調査リポート(2020年6月29日付)によると、スマホを所持する70代の46%がLINEを利用している。この割合でいくと、LINEを使っている70代は19%、つまり5人に1人ということになる。東京23区では午前11時から予約を開始しているが、「なぜ電話で受け付けないのか」と各役所には苦情が殺到しているだろう。

   さらに、金沢市でも見られた事例だが、二重予約の原因にもなる。ネットやスマホを使わないお年寄りは知人や家族ら複数の人に予約の代行を依頼している。実際に知り合いの80歳代のお年寄りは3人に依頼し、うち2人が登録を済ませていた。接種センターでは、自治体とシステムがつながっていないため、二重の予約を防ぐ手立てはない。

   そもそも予約は必要だろうか。むしろ、ワクチンの接種率をどうすれば高めることができるかが肝心な点ではないか。これを選挙の投票率を高める発想と考えるといろいろアイデアが浮かぶ。つまり、「接種権」と「投票権」を同列に考えて、選挙管理委員会と連携を取る。住民登録をベースにした「接種人名簿」を作成し、「接種はがき」を事前に送付する。接種日と会場を地区ごとに分散させて、小中学校や公共施設で接種会場で来訪順に接種する。1回目が済んだときに2回目の接種はがきを渡す。アナフィラキシーショックを想定して、15分後をめどに会場を退出する。医師1人1時間あたり20回接種(厚労省基準)といわれているので、地区ごとの接種人の人口を換算して医療関係者を配置する。 

   政府は高齢者への接種を7月末までに終えたいとの方針のようだが、変異株では年代は関係なく感染が拡大する傾向にある。接種日と会場を地区ごとに分散させる方式ならば、接種年齢を現在の65歳以上から20歳以上に拡大してもよい。さらに、緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置」の対象地域を優先的に接種した方が効率的ではないだろうか。

   2月に始まった日本のワクチン接種は2%と先進国の中で最も低い(5月14日付・Bloomberg-Web版日本語)。接種率が上がらなければ、「ワクチン敗戦国」として、世界からオリンピック参加すら忌避されるだろう。

⇒17日(月)午前・金沢の天気    あめ

★眞子さま婚約内定にまつわる問題 これからを読む

★眞子さま婚約内定にまつわる問題 これからを読む

   今月3日の憲法記念日にちなんでこのブログで「憲法改正」に傾きつつある民意について述べた。新型コロナウイルスの感染拡大の中での基本的人権や、中国による領海侵入など脅威が増す中での安全保障など、今の憲法下でこうした難題に臨機応変に対応できるのかと国民は案じている。そして、皇室についても、だ。

   これまでの皇室のイメージは「国民に寄り添う」姿だった。平成の天皇皇后は被災地を訪れ、丁寧に被災者を見舞われた。膝をついて被災者に声がけして対話するお姿は国民の共感を呼んだ。2019年10月に行われた「即位礼正殿の儀」を前にNHKが行った「皇室に関する意識調査」の「皇室への親しみ」の項目では、「とても」と「ある程度」を合わせた「親しみを感じている」が71%だった。一方、「あまり」と「全く」を合わせた「親しみを感じていない」は27%だった。では、この割合は現在はどうなっているのか。

   ネット上で探したが、「皇室に関する意識調査」の最近のデータは見当たらない。ただ、最近の眞子さま婚約内定にまつわる問題で状況が一変しているのはないかと推察する。眞子さまと婚約内定者である小室圭氏がそろって記者会見し「天皇陛下のお許しを頂き、婚約が内定いたしました」と述べたのは2017年9月3日だった。その3ヵ月後に12月11日発売の『週刊女性』に小室氏の母親の元婚約者との金銭トラブルが報じられた。翌年2018年2月6日に宮内庁は一連の儀式を2020年に延期すると発表。本来ならばその年の3月4日に正式な婚約となる納采の儀、そして11月に結婚式を行う予定だった。秋篠宮殿下が「国民に納得できる説明」を小室氏に求めたのは2018年8月8日だった。さらに2020年11月30日、殿下は眞子さまと小室氏の結婚を認めると話された。

   ところが、国民が納得しない状況になってきたのが、ことし4月8日、小室圭氏が母親が元婚約者から受けた金銭は「借金ではなく贈与」と断じたA4用紙28ページの文書の公開だった。「録音テープがある」と記したことで、「こっそり録音する油断ならない」人物評価となり、世論が不信感を募らせた。『AERA』が同月9日から12日にかけて実施したネット上での緊急アンケート(2万8641人回答)で「小室氏は文書によって金銭問題の説明を十分に果たしたか」の問いに、95%が「十分とは言えない」と回答した。さらに、小室文書の4日後に「解決金を渡す意向」と代理人弁護士を通じての態度替えが不信を募らせた。

   そして「文春砲」でさらにエスカレートする。『週刊文春』(4月29日号)が報じた「小室圭さん母 『年金詐取』計画 口止めメール」の記事は小室親子への疑念を深めた。母親が2002年に亡くなった夫(公務員)の遺族年金を受給するため、2010年に知り合った婚約者に内縁関係を秘するよう依頼したというメールの暴露だった。遺族年金は再婚または内縁関係になると受給資格を失うのが決まりなので、「これは年金詐取ではないか」と文春は問題提起した。一連の騒動がありながらも宮内庁が動かないのは、小室氏側の問題というよりむしろ皇室の問題ではと民意は問い始めている。

   眞子さまが普通の人であるならば本来ならば、お二人は憲法第24条「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」に基づいて、本人同士の意思で結婚すればよい。しかし、皇族は「民間人」ではない。選挙権も戸籍もない。そして、国民の納得も必要だ。憲法第88条では「すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」と定めている。国民の納得というのは国会の決議とある意味で同意語だ。令和3年度の内廷費(皇族の日常の費用)3億2400万円、皇族費(各宮家の皇族)2億6932万円、宮廷費(儀式、国賓・公賓の接遇など皇室の公的、皇居などの施設整備)118億2816万円となっている(宮内庁公式ホームページより)。皇室に私有財産はなく、結婚式など経費に関することは国会の決議が必要だ。

   話が長くなった。以下、憶測だ。お二人の結婚に皇室が反対すれば、国際世論が沸騰するだろう。相思相愛のお二人の結婚を許さない日本の皇室は前近代的だ、そして日本の旧態依然とした姿だ、と。問題は小室氏側にあったとしても、この批判は日本にとっても不名誉だ。おそらく秋篠宮殿下はお言葉通り、眞子さまの皇籍離脱を条件に結婚を許すことになるのではないだろうか。結婚式はささやかに挙げ、民間人となった眞子さまは小室氏とアメリカで暮らすことになるだろう。皇室からの財産分与はない。これで騒動は一件落着するかもしれないが、この時点で皇室の求心力が落ちることは想像に難くない。ここから皇室と憲法の有り様をめぐる議論がスタートするのではないだろうか。

   もう一つ。上記の遺族年金の不正受給問題は今後どのように展開していくのか。不正受給の工作を疑わせる母親のメールなどについて、遺族年金を管轄する厚生労働省は警察と連携して犯罪性があれば立証してほしい。皇室に関わる案件を理由にした忖度は国民の反感を招く。(※写真は2017年9月3日、眞子さまと小室氏の婚約内定の記者会見=宮内庁公式ホームペ-ジより)

⇒5日(祝)夜・金沢の天気    くもり時々はれ  

★コロナ禍で頭もたげる黄禍論か

★コロナ禍で頭もたげる黄禍論か

   先ほど「ジョンズ・ホプキンス大学」公式ホームページのコロナ・ダッシュボード=写真=をチェックすると、世界の感染者数は4月4日時点(日本時間)で1億3065万人、コロナウイルス感染による死亡者は世界中で284万人となっている。アメリカでは55万人以上が亡くなり、変異株ウイルスが蔓延するヨーロッパではイギリスで12万人、イタリアで11万人の死亡が確認されている。日本は感染者48万人、死亡9223人(4月3日現在・NHKWeb版)。欧米諸国と比べて人数が少ないのは、日本人がソーシャル・ディスタンスとマスク着用を律儀に守っていることの効果かもしれない。

   このダッシュボードの感染発生の地図を見ていて、北東アジア、とくに中国では小さな赤丸がポツポツとしかない。つまり感染者が少ない。中国では強制力を有しての厳格な感染拡大防止策が講じられていると言われる。その成果の表れがダッシュボードなのだが、ほかの国々の人たちはこれを眺めて何を感じているのか気になる。

   コロナ禍で印象に残っているのはアメリカと中国の応酬だ。中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスだが、WHOの独立委員会は中国のウイルス感染症への初期対応に遅れがあったと指摘する中間報告を出した(2021年1月18日付・ロイター通信Web版日本語)。すると、中国側は反論した。中国外務省の報道局長は19日の記者会見で、武漢市の海鮮市場を2020年1月1日に閉鎖し、新型肺炎の発見からわずか3週間あまりで武漢を封鎖したと強調。早期に世界に警鐘を鳴らしたと主張した(1月19日付・共同通信Web版)。

   世界の人々はこの応酬で何を思うか。中国が初期対応に遅れはなかったと主張するのであれば、昨年1月下旬の中国の春節の大移動で世界にコロナ禍をまき散らす結果となったが、なぜそのときに出国禁止としなかったのか、と考えるだろう。そして、1月23日のWHO会合では、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を時期尚早として見送った。この頃すでに、中国以外での感染が18ヵ国で確認され、日本政府は1月29日からチャーター機で武漢から邦人を帰国させた。WHOによる緊急事態宣言が出たのは翌日の30日だった。WHOテドロス事務局長と中国の関係が怪しいと取り沙汰されるようになった。

           その後、政治問題化したのは当時のアメリカ大統領トランプ氏が3月16日付のツイッターで、新型コロナウイルスコロナのことを「チャイナウイルス」と書き、18日の記者会見でも同じ言葉を述べた。これに対し、中国外務省の報道官は、トランプ氏のツイートは「中国に汚名を着せる行為」「中国に対する根拠のない告発をやめるようアメリカに強く求める」などと批判の応酬があった(2020年3月19日付け・BBCニュースWeb版日本語)。

   アメリカにおける中国への感情が悪化したのはこの頃ではなかったか。「コロナは中国の人工ウイルス兵器」といった根拠のないコメントもネット上で飛び交っていた。さらに中国だけでなく、アジアへの憎悪感情へと広がっていく。4月23日にはホワイトハウスへの請願サイト「WE the PEOPLE」に、「INDICT & ARREST Moon Jae-in for SMUGGLING the ChinaVirus into the US & ENDANGERING the national security of US & ROK!」(意訳:起訴し逮捕を。ムーン・ジェインはチャイナウイルスをアメリカに密かに持ち込み、アメリカと韓国の国家安全保障を危険にさらしている!)が掲載された。86万もの署名を集めて一時期トップにランキングされた。ムーン・ジェインは韓国大統領の文寅在氏のことだ。

   そして今年2月25日、日本が標的となった。ロサンゼルスにある東本願寺別院の提灯立てが放火され、金属製の灯籠や窓ガラスが壊された。事件をテレビのニュースで知って、「黄禍論(おうかろん)」という、かつて歴史の授業で習った言葉が浮かんだ。黄禍論(Yellow Peril)は欧米の白人による黄色人種への脅威感や差別感を表現する言葉だ。現在は、ヘイトクライム(Hate crime)に言葉が置き換わっているのかもしれない。

   アメリカでは、アジア系住民に対する暴行などのヘイトクライムが急増していると連日のように報じられている。暴行犯は白人だけでなく、アフリカ系やヒスパニック系もいるようだ。55万人が亡くなったアメリカでは、このダッシュボードによってアジアに違和感を感じ、黄禍論が頭をもたげているのかもしれない。そうでないことを祈る。

⇒4日(日)午前・金沢の天気      あめ

★中国ディストピア物語の成功ストーリー

★中国ディストピア物語の成功ストーリー

          前回の続き。中国が台湾の領空と海域で軍事訓練を繰り返し、長距離ミサイルを配備するなど攻撃能力を強化していると報道されている。「一つの中国」を掲げ台湾の吸収・併合をもくろむ理由は何か。先の大戦にまでさかのぼって考察してみたい。

   日中戦争では、中国の国民党軍と共産党軍が「国共合作」(1937年)による統一戦線で日本軍に抗戦した。このとき、共産党指揮下の紅軍は国民党軍に編入されて「八路軍」と称して戦っている。日本への降伏要求の最終宣言であるポツダム宣言(1945年7月26日)はアメリカ大統領のトルーマン、イギリス首相のチャーチル、中華民国政府主席の蒋介石の3人の書名で出され、これに日本が無条件で受諾した。この歴史的事実からも分かるように、実際に当時の日本軍に対し勝利を収めたのは国民党による中華民国政府だった。

   第二次世界大戦で勝利した、いわゆる連合国は戦時中から戦後処理問題などをテーマに協議を重ねていて、この協議体が戦後に国際連盟に代わる国際機関としての国際連合へと展開していく。1945年年10月に51ヵ国の加盟国で設立され、国連憲章による安全保障理事会の常任理事国はアメリカ、イギリス、フランス、ソビエト連邦、そして中華民国の5ヵ国が就いた。

   しかし、戦後の1946年から再び中国では国共内戦が始まり、1949年10月に中華人民共和国が成立、中華民国政府は台湾に逃れた。このため、中国代表権をめぐって国連でも論争が続き、1971年10月のいわゆる「アルバニア決議」によって、国連における中国代表権は中華人民共和国にあると可決され、中華民国(台湾)は安保理常任理事国の座から外され、国連を脱退することになる。ただし、国連憲章の記載は未だに、中華民国が国連安保理常任理事国であり、中華民国がもつ常任理事国の権限を中華人民共和国が継承したと解釈されている(Wikipedia「アルバニア決議」)。

   現在の中国共産党は抗日戦争に勝利したとして、2015年に「中国人民抗日戦争ならびに世界反ファシズム戦争勝利70周年記念行事」の大々的な軍事パレードを行っている。そして、今年2021年7月に中国共産党は創立100周年を迎える。

   ここからは憶測だ。上記の国共合作での国民党軍編入のもとでの抗日戦、蒋介石署名のポツダム宣言、中華民国が国連安保理常任理事国であることなどは中国共産党にとって不都合な歴史であり、この際、修正したいのではないだろうか。しかし、台湾に中華民国がある限りそれは難しいが、完全に吸収・合併し「一つの中国」にすることで置くことで輝かしい歴史を再構築できる。そう、習近平国家主席は発想しているかもしれない。

   中国では、5月1日の労働節(メーデー)と10月1日の国慶節に「建国の父」の毛沢東とともに、孫文の肖像画を掲げて「革命の先駆者」として仰いでいる。しかし、台湾の国民党も党と中華民国の創立者である孫文を「国父」と仰いでいる。中国共産党にとって、「革命の先駆者」と「建国の父」を堂々と掲げて創立100周年の成功ストーリーを創り上げるためには、台湾が邪魔になっていることは想像に難くない。7月までに中国は台湾に対してどう動くのか注視したい。

⇒2日(金)夜・金沢の天気     はれ

☆4月1日「中国ディストピア物語」

☆4月1日「中国ディストピア物語」

           今の中国の動きをメディアを通じてウオッチしていると「歴史ドキュメンタリー映画」を鑑賞しているようで、実に緊張感がある。あえてタイトルを付すれば、「中国ディストピア物語」だろうか。この場合のディストピア(dystopia)は自由が奪われる世界のたとえで、ユートピアと真逆な意味を込めている。

   最近のディストピア・ストーリーをいくつか。沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船2隻が3月29日午前4時すぎ、日本の領海に侵入した。2隻は南小島の沖合で操業していた日本漁船2隻に接近する動きを見せたため、海上保安本部が巡視船を周囲に配備し漁船の安全を確保した。2隻は9時間にわたり領海内を航行したあと午後1時すぎに領海から出た。尖閣諸島の沖合で中国海警局の船が領海に侵入したのは、今年に入って11件目(3月29日付・NHKニュースWeb版)。

   「ここは我が国の領海だ」と主張して、漁船を追いかけ回す。南シナ海でもベトナムやフィリピンの漁船に対して同じことをしている。そのうち、民兵が乗った何百隻という「漁船」が尖閣諸島に来て上陸。小屋など建て居座る。漁民を守るためと称して海警局も上陸し灯台など造る。これを機に尖閣の実効支配に入る。見事なストーリーだ。

   ミャンマー国軍による弾圧強化で週末に市民100人以上が死亡した事態を受け、国連安全保障理事会は31日、イギリスの要請で緊急会合を開いた。ブルゲナー国連事務総長特使(ミャンマー担当)は、国境付近で国軍と武装勢力の戦闘が激化しており、「前例なき規模の内戦に陥る可能性が高まっている」と警告。「多重の破滅的状況」を回避するため共同行動を安保理に促した。一方、中国の国連大使は声明で、民主主義への移行を促しつつ、「一方的な圧力や制裁の訴えは緊張や対立を深め、状況を複雑化させるだけだ。建設的ではない」と主張した。安保理が今後、新たな声明を出す可能性はあるが、制裁など強力な措置で一致するのは難しいのが現状だ(4月1日付・時事通信Web版)。

   香港やウイグルにおける人権弾圧問題で国際批判を浴びている中国は国連の常任理事国の座にある。常任理事国であれば問題を起こしても国連では問われない。2020年5月、アメリカは中国による香港国家安全維持法(国安法)は人権侵害にあたるとして安保理の開催を提案したが、中国は「純然たる中国の内政問題だ」として拒否した。仮に安保理で決議がされても、拒否権を発動すれば成立しない。

   中国のディストピア・ストーリーは国連に関与を強めることだ。WHOのテドロス事務局長の有り様をウオッチすれば一目瞭然だ。さらにその先に描く夢は「国連本部を北京に」だろう。チャンスが到来した。「アジア系住民人へのヘイトクライムが多発するニューヨークを脱出しよう」と運動を起こす。

   4月1日、今年は自粛気味だがエイプリルフールの日。「中国ディストピア物語」を夢想してみた。(※写真は国連本部公式ホームページより)

⇒1日(木)午前・金沢の天気      はれ

★コロナ禍で地価下落、バブル後の悪夢再びか

★コロナ禍で地価下落、バブル後の悪夢再びか

   コロナ禍では「はやりこうなる」のか。国土交通省がきょう23日、1月1日時点の公示地価を発表した。金沢市の繁華街では軒並み下落している。とくに、中心分である片町2丁目のスクランブ交差点付近では1平方㍍41万5000円、前年が46万円だったので、マイナス9.8%だ。片町付近は最近では人の流れはそこそこ回復しているようにも見えるが、それまでは土日曜日でもゴーストタウンかと思うほど静かな風景を感じたものだ。北陸新幹線開業(2015年3月)の効果もあって、金沢は順調に地価が上昇していたので5年ぶりの下落だろう。コロナ禍が地価という数字となって表れた。

   観光地も直撃している。石川県には5つの温泉地(和倉、粟津、片山津、山代、山中)があるが、片山津で3.5%、粟津で3%、和倉で2.4%などとそれぞれ下落している。それまではインバウンド観光客などのニーズもあって、「温泉観光」はにぎわいを見せていた。それが、観光客の激減で5つの温泉地ともに厳しい状況にさらされている。すでに、休業や廃業に追い込まれたホテルや旅館もある。

   もちろん、首都圏4都県で続いていた緊急事態宣言は今月21日に解除され、観光需要が高まるのではないかと思わないでもない。ただ、観光地や温泉地などは、むしろ「インバウンド頼み」となっているの現状だ。日本政府観光局(JNTO)公式ホームページによると、訪日観光客数は2019年で3188万人だったが、コロナ禍で2020年は411万人と激減している。ちなみに、兼六園を訪れた観光客は2019年は275万人で、うち47万人はインバウンド観光客だった(「金沢市観光調査結果報告書2019年」など)。率にして17%だ。

   景気に連動するとされる地価。観光が地域経済の主力の一つとされる金沢では、ホテルや飲食店などによる土地需要が落ち込めば地価も下がる。地価が下がれば、投資をしようにも金融機関からの融資も回らなくなる。バブル崩壊後に寂れた金沢の光景とダブってしまう。コロナ禍の収束と経済回復を期待するしかない。(※写真は2020年4月25日、金沢市片町の大通りの風景。大型連休初日だったが閑散としていた)

⇒23日(火)夜・金沢の天気       はれ

★「コウノトリ」ストーリーの商品展開

★「コウノトリ」ストーリーの商品展開

  先日このブログで「世界が認める『生き物ブランド米』」(2月10日付)と題して、兵庫県但馬地域のブランド米「コウノトリ育むお米」がフランスへの輸出を始めることになったとNHKニュースWeb版(2月9日付)の記事を引用して書いた。地元のJAが特別天然記念物、コウノトリの野生復帰を促す活動に協力するため、農薬や化学肥料をできるだけ使わない環境に配慮した栽培方法で稲作を進めていて、ブランド米としての評価が高まった。動植物と共生する稲作づくりで販売するコメは「生き物ブランド米」と称される。佐渡市の「トキ米」と並び、ブランド米の代名詞だ。

   先日、金沢のスーパーで『コウノトリの郷のおかき屋さん』という袋を見つけてさっそく購入した=写真・上=。兵庫県豊岡市で栽培するモチ米でつくっていて、「生き物ブランドせんべい」と言えるだろう。となると、当然「生き物ブランド酒」もあってしかるべき。実際にある。『コウノトリの贈り物』という銘酒だ。前回のブログの繰り返しになるが、なぜそのような銘柄がついたのかストーリーをたどる。

   豊岡は古くからコウノトリが舞い降りる名所だった。ところが、戦時中には巣をつくる営巣木のマツが大量に伐採され、さらに、戦後はコメの増産から農薬が普及して、田んぼにはコウノトリのエサとなるカエルやドジョウなどが激減し、コウノトリもほとんど見かけなくなった。そこで、2005年9月に「コウノトリの里」の復元を目指して、秋篠宮ご夫妻を招いてコウノトリの放鳥が行われた。カゴから飛び立った5羽のうち一羽が近くの田んぼに降りてエサをついばみ始めた。その田んぼでは有機農法で酒米フクノハナをつくっていた。金沢の酒蔵メーカー「福光屋」が豊岡の酒米農家に「農薬を使わないでつくってほしい」と依頼していた田んぼだった。

   このことがきっかけでJAなどが中心となってコウノトリにやさしい田んぼづくりを始めるようになった。農家の人たちは除草剤など使わず、手作業で草を刈るようになった。その後、豊岡ではコウノトリが野生復帰した。コウノトリが舞い降りる田んぼの米「コウノトリ米」には付加価値がついた。コウノトリを見ようと毎年50万人が訪れ、エコツーリズムの拠点にもなった。福光屋は豊岡での限定販売で『コウノトリの贈り物』という純米酒を造っている=写真・下=。

   この物語は金沢では知られてはいないし、一般の酒屋で『コウノトリの贈り物』も販売されていない。そこで、福光屋に問い合わせると「本社のみで販売しております」との返事だった。同社のホームページをチェックすると、通信販売も可能だ。せっかくなので足を運んだ。

   1本750㍉㍑が1650円。購入しただけでも満足度が高まる。それが「ストーリー買い」というものだ。さらに、収益の一部は「豊岡市コウノトリ基金」に寄付されると記載されていた。駄目押しのセリフだ。コウノトリのストーリー展開は実に奥深い。

⇒3日(水)午後・金沢の天気     はれ

★待ったなし デジタル通貨

★待ったなし デジタル通貨

   ひょっとしてこれがポストコロナの景気浮揚策になるかもしれない。NHKニュースWeb版(2月20日付)によると、紙幣や硬貨と同じように使える「デジタル通貨」について、日本銀行この春から機能を確かめる実証実験を始める。この実証実験を第1段階と位置づけ、民間の事業者とも連携しながら、システム上で取り引き履歴を記録する台帳を作るなど、デジタル通貨の流通や発行に関する基本的な機能を確かめるとしている。各国の中央銀行も研究を進めており、日銀としては、将来にわたって決済システムの安定性を確保するため、国際的な環境変化に対応する準備を進めたい考え。

   うがった見方だが、世界の銀行の本音は中央銀行や政府が目の届かない現金システムを止めたいという本音があるのだろう。デジタル通貨にすれば、すべてのデジタルマネーの履歴やストック先などが把握できる。税金面での調査やマネーロンダリングの監視、金融犯罪などに対応できるという側面もあるだろう。

   デジタル通貨では先行している中国は「デジタル人民元」の実証実験を始めている。「中国では脱税やマネーロンダリング、資本流出等が課題となっており、これをコントロールしたいとの狙いがあるのではないか」(2020年11月30日付・ロイター通信Web版日本語)との見方である。

   では、日本の場合、デジタル通貨導入によるメリットは何だろう。それは、45兆円もあるといわれる「タンス預金」を吐き出させることではないだろうか。日銀と政府が、銀行などでの預貯金しかデジタル通貨と交換しないと発表した時点で、タンス預金は一気に消費へと回る。なぜか。多額の旧札が銀行などに持ち込まれることになれば、銀行を通じて国税にチェックされることになる。さらに、2024年度に1万円、5千円、千円の紙幣(日本銀行券)の全面的な刷新が行われる。翌年度からは旧札と新札の交換で手数料を取るということにすれば、タンス預金は今のうちから消費に回すしか手はない。

   その兆候はきょうこのニュースもあった。日銀の統計によると、家庭や企業に出回る紙幣・貨幣は2020年末に約123兆円分。単純計算だと国民1人平均100万円弱。うち1万円札の流通量を年末ごとに比べると、近年は2~4%台の増加だったが、昨年は15年末以来の5%超の高い伸びになった(2月21日付・朝日新聞Web版)。タンス預金の札束が動き始めている。

   その視線で周囲を見渡すと、面白い現象が見える。ドイツ製などの海外の高級車が身の廻りに最近増えているのに気づかないだろうか。いわゆる「小ベンツ」もあるが、堂々とした「本ベンツ」もよく見かけるようになった。最初はEUとのEPA(経済連携協定、2019年2月発効)の効果かと思ったが、それ以前に日本は輸入車の関税をすでに撤廃している。タンス預金の行き先現象と考えれば、実によく理解できるのである。タンス預金が市中に出回れば経済に貢献する効果は大きいことは言うまでもない。以上は憶測であり、データはない。

   日銀は「現時点でデジタル通貨を発行する計画はない」という立場だが、第1段階の実証実験を1年程度かけて行い、その結果も踏まえ、実現可能性を検証するための「第2段階」に移る方針(2月20日付・NHKニュースWeb版)。コロナ禍の日常の変化で、人が触ったものには触らないという行為が定着した。現金を粗末にするという意味ではないが、現金を手にすることに違和感を持つ人も多いだろう。カード払いなどのキャッシュレス化も進んでいるが、デジタル通貨を進める絶好のタイミングではある。

  では、日銀はどのような実証実験をするのか、日銀の公式ホームページをチェックしたが、記載はまだない。

⇒21日(日)夜・金沢の天気   くもり

☆能登のグローバルな伝統行事アマメハギ

☆能登のグローバルな伝統行事アマメハギ

   きのうは節分、きょうは立春。能登では節分の恒例行事としてアマメハギが行われた。これまで取材などで何度か能登町秋吉地区を訪れている。当地では、アマメは囲炉裏(いろり)で長く座っていると、足にできる「火だこ」を指す。節分の夜に、鬼が来て、そのアマメをハギ(剥ぎ)にくるという意味がある。節分は季節を分ける、冬から春になるので、農作業の準備をしなさい、いつまでも囲炉裏で温まっていてはいけないという戒めの習わしでもある。現在では子どもたちに親の言うことを聞きなさいという意味になっている。

   秋吉地区で行われるアマメハギは高校生や小中学生の子どもが主役、つまり仮面をかぶった鬼を演じる。玄関先から居間に上がりこんで、木の包丁で木桶をたたきながら、「なまけ者はおらんか」などと大声を出す。すると、そこにいる園児や幼児が怖がり泣き叫ぶ。その場を収めるために親がアマメハギの鬼にお年玉を渡すという光景が繰り広げられる。ただ、今年は新型コロナウイルスの感染拡大に配慮して、鬼は居間に上がらず、玄関先での訪問となったと昨夜のテレビニュースで伝えていた。

   この伝統行事もこれまで何度か時代の波にさらされてきた。少子高齢化と過疎化で今でも伝承そのものもが危ぶまれているのは言うまでもない。行事を世話している地域の方からこんな話を聞いたことがある。かつて、アマメハギで鬼に扮する小中学生への小遣い渡しが教育委員会で問題となり、行事を自粛するよう要請されたこともあったそうだ。このことがきっかけで行事が途絶えた地区もあったという。

   時代の洗礼にさらされながらも、2018年にアマメハギが秋田・男鹿半島のナマハゲなどともに日本古来の「来訪神 仮面・仮装の神々(Raiho-shin, ritual visits of deities in masks and costumes)」として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。国際評価を得たのだ。と同時に、面白いことに、アマメハギやナマハゲの行事は日本のローカルな行事ではなく、世界中にあるということに気づかされた。

   ヨーロッパの伝統行事「クランプス(Krampus)祭」。クランプスはドイツやオーストリアの一部地域で長年継承されている伝統行事。頭に角が生え、毛むくじゃらの姿は荒々しい山羊と悪魔を組み合わせたとされ、アマメハギの仮面とそっくりだ。12月初め、子どもたちがいる家庭を回って、親の言うことを聞くよい子にはプレゼントを渡し、悪い子にはお仕置きをするのだという。そこで、ドイツ・ミュヘン市の公式ホームページをのぞくと「Krampus Run around the Munich Christmas Market」と特集が組まれていた。現地では有名な行事のようだ。

   「能登は上質なタイムカプセル」と評し、伝統産業や行事を持続可能なカタチで引き継ぐ風土への評価がある(坂本二郎・金沢大学教授)。能登にはユネスコ無形文化遺産だけでなく、FAOの世界農業遺産(GIAHS)という国際評価もある。SDGsに取り組む自治体もある。グローバルな価値観をあえて持ち込むことで未来へのソフトチェンジが拓けていくのではないだろうか。

(※上の写真は能登町のHPより、下の写真はドイツ・ミュンヘン市のHPより)

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