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★能登が輝く祭りシーズン ウイズコロナで3年ぶり

★能登が輝く祭りシーズン ウイズコロナで3年ぶり

   能登では夏から秋にかけて祭りのシーズンとなる。「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」。能登の集落を回っていてよく聞く言葉だ。能登の祭りは集落や、町内会での単位が多い。それだけ祭りに関わる密度が濃い。子どもたちが太鼓をたたき、鉦(かね)を鳴らす。大人やお年寄りが神輿やキリコと呼ばれる大きな奉灯を担ぐ。集落を挙げて、町内会を挙げての祭りだ。その祭りが新型コロナウイルスの感染拡大の影響で2020年と21年は軒並み中止だった。3年ぶりでようやく「復活」のめどがついたようだ。

   能登の祭りは派手でにぎやかだ。大学教員のときに、留学生たちを何度か能登の祭りに連れて行った。中国の留学生が「能登はアジアですね」と目を輝かせた。キリコは収穫を神様に感謝する祭礼用の奉灯を巨大化したもので、大きなものは高さ16㍍にもなる=写真=。輪島塗の本体を蒔(まき)絵で装飾した何基ものキリコが地区の神社に集う。集落によっては、若者たちがドテラと呼ばれる派手な衣装まとってキリコ担ぎに参加する。もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツとされ、花鳥風月の柄が入る。インドネシアの留学生は「少数民族も祭りのときには多彩でキラキラとした衣装を着ますよ」と。留学生たちは興味津々だった。

   ところで、3年ぶりに祭り再開とは言え、実施に当たってはコロナ対応にかなり気遣っているようだ。地元紙の記事によると、高さ15㍍のキリコを100人の若衆で担ぎ上げ、6基が街中を練る七尾市の石崎奉燈祭(8月6日)では練り歩く範囲を町中心部の広場に限定して実施するようだ。さらに祭りの2日前に関係者のPCR検査を、当日には抗原検査を実施して陰性の人のみ参加とする。そして、祭り当日の飲酒は禁止となる(今月26日付・北國新聞)。

   祭りに酒はつきものだが、大きなキリコを担ぎ上げる際には勢いをつけるために一升瓶を回し飲みしたりするので、禁止となるようだ。石崎奉燈祭は漁師町の若衆が中心なので、ノンアルコールで勢いはつくのかどうか。

   能登のキリコ祭りは2015年4月に、日本遺産「灯り舞う半島 能登 ~熱狂のキリコ祭り~」に認定され、全国から見学や参加希望の祭りファンが増えていた。また、祭りを開催する側もおそらくこれ以上の中止が続くと、伝統行事の祭礼の継承そのものが痛手となること判断したのだろう。冒頭の「盆や正月に帰らんでいい、祭りの日には帰って来いよ」の言葉が示すように、過疎化が進行する能登にあって、祭りの継続は集落にとって価値観の共有であり、持続可能な地域づくりに欠かせない祭礼イベントなのだ。

⇒27日(月)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

★「ラーメンをすすって感じる物価高」参院選始まる

★「ラーメンをすすって感じる物価高」参院選始まる

   よく利用する主要地方「のと登里山海道」沿いの道の駅「高松」で先日、「あぶり豚のと塩麺」を食べた。能登の塩を使ったラーメンで、能登豚のあぶりチャーシューや海藻が入っていてお気に入りのメニューだ。自販機で食券を買い求めると、950円だった。2ヵ月前にも食べたが、それまでは880円だった。70円、率にして8%ほどの値上げ。麺の原料は小麦なのでその価格高騰の影響なのだろう。物価高を間近に感じた。

   参院選挙がきのう公示され、7月10日の投開票に向けて18日間の選挙戦の火ぶたを切った。その争点はどこにあるのか。先述した物価高への対策は選挙の論点になるだろう。ロシアによるウクライナへの侵攻で小麦だけでなく、ガソリンなど燃料の価格上昇が全体の物価を押し上げている。価格高とどう向き合うのか。それぞれの候補者は具体策を述べてほしい。

   2つ目が日本海側などの安全保障環境だ。報道によると、中国軍とロシア軍の爆撃機4機が日本海や東シナ海などで長距離にわたって共同飛行(5月24日)。そして、ロシアの駆逐艦5隻が日本海など列島を周回し、中国の駆逐艦3隻も日本列島に沿う形で航行するなど不気味な動きを繰り返している。北朝鮮のICBMの連続発射、さらに核実験と新たな核兵器開発も懸念される。隣国のこうしたハラスメンにどう対抗していくのか。外交政策を聞きたい。

   3つ目は少子化対策。総務省が発表した2021年の人口統計は過去最高の64万4000人の減少だった。EV大手テスラの経営者イーロン・マスク氏がツイッターで「Japan will eventually cease to exist.」(5月8日付)と書き込んで物議を醸した。出生率が死亡率を超える変化がない限り、日本はいずれ消滅する。世界の著名人も注視する日本の少子化現象、いよいよ「少子化は国難」との位置付けで対策を打つべきだが、はたして「こども家庭庁」の新設で済む話なのだろうか。

   きょう自宅近くにある金沢市総合体育館の前を車で通ると、立候補者ポスター掲示板にそれぞれのポスターが貼られていた=写真=。石川選挙区(改選定数1)には6人が立候補しているのに5枚しか貼ってない(午前10時現在)。まだ貼っていない候補者には、「この国難の参院選、なんと心得るのか、真剣にやれ」と言いたいのだが、落下傘候補のようだ。むしろ、このような選挙制度でよいのかと問いたい。

   紙面を読むと、立憲民主党の候補者の応援演説に来た地元選出の衆院議員が「岸田インフレ、黒田円安を抑えていこう」と呼び掛けたと掲載されているが、当てこすりのような言い回しだ。ならば、物価高と円安の対策について立憲民主党の具体案を提起してほしい。

⇒23日(木)夜・金沢の天気    はれ

★小麦高騰、ならば米粉スイーツやパンはいかがか

★小麦高騰、ならば米粉スイーツやパンはいかがか

   テレビでなどでよく見るウクライナの国旗の、あの青と黄のツートンカラーは上が青空で、下が麦畑をシンボル化したものと有名になった。ウクライナは小麦の生産国で、FAOの統計(FAOSTAT、2020年版)によると生産・輸出量ともに、EU、ロシア、アメリカ、カナダに次いで世界第5位の「小麦大国」でもある。そのウクライナがロシアによる侵攻で黒海が閉ざされ、小麦輸出ができなくなったことから、各国が小麦の買い占めに走り、世界の小麦価格が高騰している。

   農水省公式サイト「輸入小麦の政府売渡価格の改定について」によると、もともと去年夏の高温・乾燥でアメリカやカナダ産の小麦が不作だったのに加え、ロシアの輸出規制、ウクライナ侵攻で小麦の国際価格が上昇した。このため、農水省は輸入小麦の政府売渡価格を17.3%引き上げている(4月期)。パンやスイーツ、うどん・ラーメンなど麺の原料はほぼ100%が輸入小麦となっている。スイーツはアメリカ産、あの讃岐うどんもオーストラリア産に頼っている。

   この輸入小麦の政府売渡価格引き上げについて、金子農水大臣の記者会見(3月11日)が気になった。記者から「(小麦の)価格がちょっと上がった場合でも、お米で代替できるというようなお考えでしょうか」と質問された。これに対し、大臣は「米を食べてもらいたいという気持ちはあるけれども、やっぱり、パンの業界もあればいろんな業界の方もいらっしゃいますから、そういう方の立場を考えると、こういう厳しいときに、改めて、私どもで、いろいろと、米を、というのは、やっぱり控えなければいけないかなと私は思いますけど」と答えている(農水省公式サイト)。実に煮え切らない返答だった。

   むしろ、もっと米を活用すべきと答えてもよかったのではないだろうか。パテシエの辻口博啓氏を金沢大学の講義に招いて直接聞いた話だ。米粉を使ったスイーツが好評で、パンケーキやロール、バウムクーヘン、シフォン、タルトなど種類も豊富。当初、職人仲間から「スイーツは小麦粉でつくるもので、米粉は邪道だ」と言われた。それでも米粉のスイーツにこだわったのは、小麦アレルギーのためにスイーツを食べたくても食べれない人が大勢いることに気が付いたからだとの説明だった。

   小麦アレルギーの人たちのためにスイーツだけでなく、いまでは米粉によるパンや麺など多様な食材が開発されている。小麦の高騰をチャンスに、日本では余っている米の活用をこうした米粉食品の市場開拓へと広げてはどうだろうか。金子大臣にはそう答えてほしかった。いまからでも遅くはない。

(※写真は、米粉でつくるスイーツを紹介した単行本『辻口博啓のやさしい、お菓子』ソニーマガジンズ)」

⇒18日(土)夜・金沢の天気     くもり

☆配膳ロボットが器用に立ち振る舞うファミレスの光景

☆配膳ロボットが器用に立ち振る舞うファミレスの光景

   JR金沢駅近くにあるファミリーレストラン「ガスト」に久しぶりに入った。客席と厨房を行き来しているのは従業員ではなく、なんと、自走ロボットだ=写真=。従業員に尋ねると、ことし2月から2体が稼働しているそうだ。「料理配膳ロボット」と言い、「BellaBot」と体に書いてある。(※写真は配膳ロボットが料理を客席で渡し終えて厨房に帰るところ)

   配膳ロボットが料理を注文した客席の近くに到着すると料理が載っているトレイが青く光り、客はトレイから自分で料理を取り上げる。数秒たつと自動的に厨房に戻っていく。なるほどと思わせるのは、客が通路の床に置いている荷物を上手に避けている。おそらく、赤外線センサーや3Dカメラで感知し避ける機能が搭載されているのだろう。

   そして、通路で人とすれ違うときは止まって、「お先にどうぞ」などと言葉を発している。料理を受け取った客が「ありがとう」と言いながら頭の部分をなでると、モニターに映る顔が笑顔になり、「くすぐったいニャ」と発声する。ロボットの顔つきはネコをイメージしている。「ご注文ありがとうニャ」と少し高めの声でお礼を言い、なかなか愛嬌がある。

   ネットで「BellaBot」を検索すると、配膳ロボットは中国・深圳の「PUDU Robotics」社が開発したもの。重量は57㌔で充電時間は4.5時間。稼働時間は12時間、バッテリーを交換すれば24時間、365日のフル回転が可能。同じバージョンのロボットを最大20台、同じフロアに配置することができる。障害物は35㍉×50㍉×100㍉以上のものを感知する。1つのバッテリーで約400皿の料理を運ぶことができ、飲食店での高い回転率を誇る、とある。

   配膳ロボットの動きを眺めていてふと思った。客が席の机にあるタブレットで料理を注文し、それを運ぶのがロボットの役割だが、運びと同時にカード決済も行えるにようにしてはどうだろうか。配膳・決済ロボットになれば、ロボットの格が上がる。ひょっとして、そのような新型がまもなく登場するかもしれない。

   今回、店に入ったときはすでに昼食を終えていてドリンクバーを注文したので、コーヒーは自身が運んだ。なので、ロボットとは対面で話してはいない。このロボットはどこまで進化するのか、気になる光景だった。

⇒13日(月)午後・金沢の天気    はれ

★コウノトリとトキが能登の空に舞う日

★コウノトリとトキが能登の空に舞う日

   前回のブログの続き。能登半島にコウノトリのつがいが3羽のひなを育てているという記事を読んで、兵庫県豊岡市のコウノトリにまつわる、ある物語を思い出した。

   江戸時代には日本のいたるところでいたとされるコウノトリが明治に鉄砲が解禁となり個体数は減少。太平洋戦争の時には営巣木であるマツが燃料として伐採され生息環境が狭まり、戦後はコメの生産量を上げるために農薬が使われ、その農薬に含まれる水銀の影響によって衰弱して死ぬという受難の歴史が続いた。1956年に国の特別天然記念物の指定を受けるも、1971年5月、豊岡で保護された野生最後の1羽が死んで国内の野生のコウノトリが絶滅した。

   その後、飼育されていたコウノトリの人工繁殖と野生復帰計画は豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷公園が中心となって担い、ロシア(旧ソ連)などから譲り受けて人工繁殖に取り組んだ。豊岡でのコウノトリの野生復帰が知られるようになったのは2005年9月、秋篠宮ご夫妻を招いての放鳥が行われたことだ。ある物語はここから始まる。

   カゴから飛び立った5羽のうち一羽が近くの田んぼに降りてエサをついばみ始めた。その田んぼでは有機農法で酒米をつくっていた。金沢市の酒蔵メーカー「福光屋」などが酒米農家に「農薬を使わないでつくってほしい」と依頼していた田んぼだった。秋篠宮ご夫妻の放鳥がきっかけで地元のJAなどが中心となってコウノトリにやさしい田んぼづくりが盛んになった。

   コウノトリが舞い降りる田んぼの米は「コウノトリ米」として付加価値がつき、ブランド化した。こうした、生き物と稲作が共生することで、コメの付加価値を高めることを「生き物ブランド米」と称されるが、豊岡はその成功事例となった。そして、豊岡にはコウノトリを見ようと毎年50万人が訪れ、エコツーリズムの拠点にもなった。

   さて、3羽のひなの誕生が能登にコウノトリが定着するきっかけとなるかどうか。能登の自治体では同じく国の特別天然記念物トキの野生放鳥の候補地として環境省に名乗りを上げている。8月上旬をめどに3ヵ所程度を選定し公表され、2026年度以降の放鳥となる(5月10日付・環境省公式サイト)。3ヵ所の一つに選ばれれば、将来コウノトリとトキが能登の空に舞う日が来るのではないか。世界農業遺産(GIAHS)でもある能登の里山に。夢のような光景だ。   

(※写真・上は豊岡市役所公式サイト「コウノトリと共に生きる豊岡」動画より、写真・下のトキは1957年に岩田秀男氏撮影、場所は輪島市三井町洲衛))

⇒12日(日)午後・金沢の天気    はれ

☆トキより先にコウノトリがやって来た

☆トキより先にコウノトリがやって来た

   これは絶妙なタイミングと言えるかもしれない。きょうの各紙朝刊によると、能登半島の志賀町で営巣していた国特別天然記念物のコウノトリのつがいからひな3羽が誕生した=写真・上=。石川県内でのひなの誕生は1971年に日本で野生のコウノトリが絶滅して以来初めて。能登の自治体は同じく国の特別天然記念物トキの野生放鳥の候補地として環境省に名乗りを上げているので、コウノトリのひな誕生は追い風になりそうだ。

   記事によると、ひなを育てているつがいは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと、福井県越前市生まれのメスと分かる。4月中旬に近隣住民が電柱の上に巣がつくられているの発見し、町役場がメスが卵を抱いている様子を定点カメラで確認した。5月下旬には親鳥がひなに餌を与え、3羽が巣から顔を出した。ひなが順調に育てば、8月上旬ごろに巣立つという。

   コウノトリは江戸時代までの身近に見られた鳥だった。留鳥として日本に定住するものがほとんどだった。明治以降、餌場となる湿地帯や巣をかけることのできる大きな木が少なくなったこと、農薬や化学肥料の使用によって餌となる水生生物が減ったことなどが災いし、1971年に野生のものが絶滅した。その後、人工繁殖・野生復帰計画は豊岡市にある兵庫県立コウノトリの郷公園が中心となって担い、中国や旧ソ連から譲り受けたコウノトリ(日本定着のものと同じDNA)を元に繁殖に取り組んだ。現在国内での野外個体数は244羽が生息する(5月31日付・兵庫県立コウノトリの郷公園公式サイト)。

   もう14年も前のことだが、能登半島の先端・珠洲市の水田にコウノトリ=写真・下=が飛来していると土地の人から連絡をもらい、観察にでかけた。3時間ほど待ったが見ることはできなかった。そのとき聞いた話だ。この水田地帯には多くのサギ類もエサをついばみにきている。羽を広げると幅2mにもなるコウノトリが優雅に舞い降りると、先にエサを漁っていたサギはサッと退く。そして、身じろぎもせず、コウノトリが採餌する様子を窺っているそうだ。ライオンがやってくると、さっと退くハイエナの群れを想像してしまった。堂々したその立ち姿は鳥の王者を感じさせる。(※写真は2008年6月・珠洲市で坂本好二氏撮影)

⇒11日(土)午後・金沢の天気      くもり

★参院選が間近、有権者が戸惑うこと

★参院選が間近、有権者が戸惑うこと

   きょう金沢市内で、きたる参院選挙での候補者ポスターの掲示板が設置されているのを見かけた=写真=。選挙日程は閣議決定されていないが、今月22日に公示され、7月10日が投開票の見通しとメディア各社が報じている。掲示板が設置されているのに気が付いたのは金沢歌劇座のバス停の付近。きのう夕方通ったときはなかったので、設置作業はきょう始まったのだろう。選挙が動き始めた。

        ことし石川県内は選挙ラッシュだ。3月13日は県知事選と金沢市長選、そして同市議補選のいわゆる「トリプル選挙」、4月24日は参院石川選挙区の補欠選挙、5月22日は能登半島の先端で珠洲市長選が行われた。そしていよいよ国政選挙なのだが、参院選に対する有権者の関心度は高いだろうか、投票行動はどう動くのか。

   実は、4月24日の参院補選の投票率は惨たんたるものだった。参院比例区の自民党議員が選挙区補選に鞍替えで立候補し、立憲民主や共産など野党の新人3人を破って当選したが、投票率はこれまで最低の29.9%、大票田の金沢市では22.9%だった。先の知事選(3月13日)61.8%と比べると、その半数にも満たない。この投票率の低さをどう読むか。民意に潜む本音をあえて語れば、議会制民主主義は国家の基本なのだが、「はたして参院は必要なのか」と参院無用論の声もあるのではないだろうか。

   参院は「良識の府」と学校で教わるが、タレント議員の巣窟と化しているという違和感があるのではないだろうか。参院比例区で2001年から非拘束名簿式が採用されていて、候補者の氏名を書いても政党名を書いても、その政党の得票となるので、知名度のあるタレントや著名人を候補者に擁立するケースが目立つようになった。一方で、志を抱いたタレント議員の存在は政治を身近に感じさせてくれるという前向きの意見もある。

   もう一つ。これも学校で教わるが、「衆院の優越」だ。法律案が衆院で可決し、参院がこれと異なった議決をした場合、衆院において出席議員の3分の2以上で再び可決すれば法律となる。予算案も最終的に衆院の議決が国会の議決となる。だったら、国会は衆院一院制でよいのではないかと考えてしまう。ただ、衆院解散中は参院も同時閉会となるが、国に緊急事態が生じた場合は、内閣の求めにより参院の緊急集会が開かれ、国会の機能を果たすことになる。そろそろ、賛否を含めて参院の有り様について議論する時期に来ているのではないだろうか。

⇒9日(木)夜・金沢の天気    くもり   

★いまそこにある危機「線状降水帯」とSDGs

★いまそこにある危機「線状降水帯」とSDGs

   季節は移ろい、6月の梅雨の時節に。梅雨はしっとり雨が降るという印象だったが、近年は「激しい雨」のイメージだ。積乱雲がどんどんと列ををなして留まって、激しい雨を降らせる。この「線状降水帯」という言葉を自身が意識したのは2017年8月、北陸で1時間に80㍉の猛烈な雨をもたらしたころからだ。

   気象庁はこれまで線状降水帯が「発生」した場合に「顕著な大雨に関する情報」を発表していたが、きょう1日からは、線状降水帯が発生する「可能性が高まった」場合、予測の段階で発生の半日前から6時間前に気象情報を発表することにした(気象庁公式サイト・31日付ニュースリリース)。全国の大学など研究機関と連携して、メカニズム解明に向けた高密度な集中観測や、スーパーコンピュータ「富岳」を活用したリアルタイムシミュレーション実験を実施するという。

   さらに、今月30日からは地図上に5段階で色分けして表示する「キキクル(危険度分布)」で、5色を警戒レベルの色と統一して、紫は「レベル4の全員避難」、黒は「レベル5で災害切迫」。紫は早めの避難行動の呼びかけになる。しっとり梅雨もいつの間にか怖くなったなものだ。

   先述のように、気象庁が大学など研究機関が連携して集中観測を行ったり、早めの避難行動の呼びかけを行う背景には、国連が掲げるSDGs(持続可能な17の開発目標)の13番の目標「気候変動に具体的な対策を」があるのだろう。天気情報をテレビで視聴する側とすると、警戒レベルの気象情報が出ていないからまだ安心だと認識してしまう。実際に情報が出たときは大気の状態が不安定で、非常に危険な状態にあるケースもままある。

   線状降水帯による豪雨の被害は毎年のように起きている。「いまそこにある危機」を集中観測やスーパーコンピュータで大胆に切り込んで予知する。一歩も二歩も踏み込んだ気象情報に期待したい。

⇒1日(水)夜・金沢の天気    くもり

☆カーボンニュートラルな能登の光景

☆カーボンニュートラルな能登の光景

   能登半島で見る印象的な風景は、山の峰に並ぶ風力発電、山裾や田んぼ、畑の一角に広がる太陽光発電ではないだろうか。脱炭素の世界的な潮流を受け、日本も2030年に温室効果ガスの46%削減、2050年までのカーボンニュートラルの実現を表明している(2021年4月・気候サミット)。日本が排出する二酸化炭素の4割が電力関連で、再生可能エネルギーに置き換える動きが全国的に活発だ。

   能登半島全体では74基、うち半島尖端の珠洲市には30基の大型風車がある。経営主体は日本風力開発株式会社(東京)、2007年から順次稼働している。発電規模が45MW(㍋㍗)にもなる国内でも有数の風力発電地域だ。発電所を管理する会社のスタッフの案内で現地を訪れたことがある。ブレイド(羽根)の長さは34㍍で、1500KW(㌔㍗)の発電ができる。風速3㍍でブレイドが回りはじめ、風速13㍍/秒で最高出力1500KWが出る。風速が25㍍/秒を超えると自動停止する仕組みなっている。羽根が風に向かうのをアップウインドー、その反対をダウンウインドーと呼ぶ。1500KWの風車1基の発電量は年間300万KW。これは一般家庭の1千世帯で使用する電力使用量に相当という。(※写真・上は能登半島の先端・珠洲市の山地にある風力発電)

   なぜ能登半島に立地したのか。「風力発電で重要なのは風況」と現地のスタッフが説明してくれた。中でも一番の要素は平均風速が大きいことで、6㍍/秒を超えることがの目安になる。能登半島の沿岸部、特に北側と西側は年間の平均風速が6㍍/秒を超え、一部には平均8㍍/秒の強風が吹く場所もあり、風力発電には最適の立地条件なのだ。いいことづくめではない。能登で怖いのは冬の雷。「ギリシアなどと並んで能登の雷は手ごわいと国際的にも有名ですよ」と。そのため、ブレイドの材質は鉄製ではなく、FRP(繊維強化プラスチック)にしているが、それでも落雷のリスクはあるという。

   バイオマス発電所もある。珠洲市に隣接する輪島市の山中にある。発電所を運営するのは株式会社「輪島バイオマス発電所」。スギやアテ(能登ヒバ)が植林された里山に囲まれている。木質バイオマス発電は、間伐材などの木材を熱分解してできる水素などのガスでタービンエンジンを駆動させる。石炭など化石燃料を使った火力発電より二酸化炭素の排出量が少ない。もともと二酸化炭素を吸湿して樹木は成長するのでカーボンニュートラルだ。発電量は2000KWで24時間稼働するので年間発電量は1万6000MW、これは一般家庭の2500世帯分に相当する。エンジンを駆動させるために必要な木材は一日66㌧、年間2万4千㌧の間伐材が必要となる。(※写真・中は輪島市三井町にある輪島バイオマス発電所の施設)

   創業者から会社設立に至った経緯をうかがったことがある。「能登の里山を再生するために、間伐材をどうしたら有効利用できるかを考えていたら、バイオマス発電が浮かんだ。そこから夢も膨らみ、地産地消のエネルギーで地域の活性化に貢献したいと思い、会社をつくったのです」。森林維持には欠かせない間材で生じた木材のうち丸太材やパルブ材などに利用されるのは70%程度に過ぎない。残りの端材や曲がり杉は、利用されずに林地残材という形で山の中にそのまま残されているのが現状。これではもったいない。カスケード利用(多段的利用)しない手はない(同社公式サイト)。里山のもったいない精神から発想された再エネなのだ。

   能登半島では農地のほかに山間部でも大規模なメガソーラー(1000kW)が相次いで稼働している。耕作放棄地など活用したのだろう。気になることもある。川沿いの平野部に設置されている太陽光パネルだ。これが、集中豪雨による冠水や水没で損壊したり、設備が流されるということにはならないだろうか。太陽光パネルは実は危険だ。損傷し放置された太陽光パネルに日が当たると発電し、感電や火災につながる可能性がある。(※写真・下は珠洲市にあるソーラー発電施設)

   きょうの新聞各紙は、環境省は使用済みの太陽光パネルのリサイクルを義務化する検討に入ったと伝えている。太陽光パネルの寿命は長くて30年だ。普及が進んでいる能登地区の近未来の課題でもある。

⇒29日(日)夜・金沢の天気    はれ

★能登半島・輪島から「SDGs観光」の発信を

★能登半島・輪島から「SDGs観光」の発信を

   内閣府は国連のSDGs(持続可能な開発目標)に沿ったまちづくりに取り組む自治体を「SDGs未来都市」として選定している。ことし新たに能登半島の輪島市や新潟県佐渡市など30自治体が選ばれた。選定は2018年に始まり、今回含め154の自治体が選ばれている(内閣府地方創生推進事務局公式サイト「2022年度SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の選定について」)。

   輪島市のテーマは「“あい”の風が育む『能登の里山里海』・『観光』・『輪島塗』 ~三位一体の持続可能な発展を目指して~ 」。「“あい”の風」とは日本海沿岸で冬の季節風が終わり、沖から吹いてくる夏のそよ風を言う。ところによっては「あえの風」とも言う。キーワードに世界農業遺産「能登の里山里海」、観光、輪島塗の3つを入れている。ちなみに佐渡市のテーマは「人が豊かにトキと暮らす黄金の里山・里海文化、佐渡 ~ローカルSDGs佐渡島、自立・分散型社会のモデル地域を目指して~」。トキと佐渡金山がキーワードになっている。

   輪島市の提案書を読もうと思い、市役所公式サイトにアクセスしたがまだアップはされていなかった。後日、内閣府の公式サイトで一括して掲載されるようだ。多様な地域の特性をSDGsの視点で見直し、「誰一人取り残さない」「持続可能な社会づくり」に活かしていこうというまさに地方創生の実現に向けた取り組みだ。

   輪島の朝市や千枚田、海女漁を見ればSDGsが体現された地域であることが理解できる。朝市はもともと農村や漁村のおばさんたちが農作物や魚介類を持ち寄って物々交換したことがルーツとされる。作り、採ったものが余った場合、廃棄するのではなく、物々交換という取引で豊かさを共有する場だった。「もったいない精神」と言えるかもしれない。同時に、SDGs目標12「つくる責任つかう責任」である。

   そして、海女漁はまさにSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」だ。現在200人いる海女さんたちのルーツは1569年、福岡県玄海町鐘崎から船で渡って来た13人の男女だったと伝えられている(1649年「海士又兵衛文書」)。24種もの魚介類を採ることで生業(なりわい)を立てているだけに資源管理には厳しいルールがある。アワビ漁については、貝殻10㌢以下の小さなものは採らない、漁期は7月から9月の3ヵ月、時間は午前9時から午後1時、酸素ボンベは使わず素潜り。こうした厳格な自主規制で450年余り経ったいまでもアワビを採り続けている。

   千枚田では自然災害と向き合ってき人々のSDGs目標15「陸の豊かさも守ろう」の精神が見えてくる。1684年、この地区では大きな地滑りがあり、棚田があった山が崩れた。「大ぬけ」といまでも地元では伝えられる。いまで言う深層崩壊だ。その崩れた跡を200年かけて棚田として再生した。まさにレジリエンスだ。それだけでない、いまも地滑りを警戒して、千枚田の真ん中を走る国道249号の土台に発砲スチロールを使用するなど傾斜地に圧力をかけないようにと工夫をしている。

   持続可能な人々の営みというのは、その歴史を検証すことで見えて来る。輪島市には今回のSDGs未来都市の認定で、「SDGs観光」という新たな情報発信をしてほしいものだ。

⇒22日(日)午前・金沢の天気    はれ