⇒トレンド探査

☆「日々好日」薄茶を一服

☆「日々好日」薄茶を一服

    きのうから開催されている「金沢百万石まつり」のイベントの一つとして市内の各地で茶会が催されている。その一つの旧中村邸の茶席に赴いた。床の間には「日々好日」の掛け軸が下がっていた=写真=。「にちにちこうにち」と読む。四字熟語では「日々好日」だが、いわゆる禅語では「日々是好日」。有名な言葉だ。   

   掛け軸には「金獅峯 興宗」の署名と落款がある。「金獅峯」は金沢にある曹洞宗の寺院、大乗寺のこと。「興宗」は住職だった板橋興宗氏だ。興宗氏は大乗寺の住職を経て、大本山總持寺(横浜市)の貫首や曹洞宗管長を務められた。晩年は「猫寺」で知られる御誕生寺(福井県越前市)の住職に。2020年7月に93歳で亡くなられた。大乗寺の住職をされていたころ、自身は新聞記者として何度か取材に訪ねたことがある。新米の記者だったが、いつも笑顔で丁寧に対応いただいた姿が印象に残っている。
 
   説法も聴いたことがある。「人間だけが勝手に迷って悩んで右往左往している。成功や失敗は人生を彩る風景のようなもの。起こった出来事に目くじらをたてるより、ひと呼吸、ひと呼吸に命(いのち)を実感する生き方のほうが、はるかに自由で豊か」「ゆったり、のんびり、遠回り。渋柿もいつかは熟すものです」と。冒頭の「日々好日」を語った説法だったかもしれない。

    そんなことを思い出い起こしながら、茶席で薄茶を一服いただいた。外ではメインイベントの百万石行列が動き出し、獅子舞や加賀とびはしご登りのにぎやかな演技が始まっていた。

⇒3日(土)夜・金沢の天気     はれ

☆季節を彩るアヤメとシャクヤクの花

☆季節を彩るアヤメとシャクヤクの花

   朝方、金沢の自宅で就寝中にグラリと揺れた。スマホでNHKニュースをチェックすると、「午前5時14分に能登地方で震度4の揺れ」、金沢は震度2だった。能登が震度6強だった今月5日、金沢では震度4だった。能登ほどの揺れではないが、このところ地震には少々敏感になっている。金沢の平野部を走る森本・富樫断層帯ではこれまでも大きな地震が起きていて、能登と連動しないかと無用の心配をしたりする。

   朝から暗い話だが、庭先を見るとアヤメとシャクヤクが咲き始めている。早咲きのアヤメは2輪=写真・上=。紫色の花を眺めていると、花びらに網状の文様が見える。いわゆる文目、これがアヤメの名の由来かと思ったりする。「いずれアヤメかカキツバタ」という言葉がある。優劣がつけ難く、選択に迷うことのたとえ。アヤメかカキツバタか、などとこだわるのは日本人だけかもしれない。英語ではひっくるめてアイリス(iris)と呼ばれているようだ。

   ちなみに、花だけを見るとアヤメとカキツバタは見分けがつけにくいものの、自生地を見れば分かる。アヤメは乾いた土地に咲き、カキツバタは池など湿地に咲く。 

   シャクヤクも数輪花を咲かせている=写真・下=。「これまでの花は前座よ、本番の花ステージは私です」といわんばかりに花の精気を放っている。確かに、「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」という言葉があるように、上品な女性の姿をイメージさせる。花言葉をネットで検索すると、「恥じらい」とある。とても優雅な花なのに、「恥じらい」とはなぜと思ってしまう。その由来は、シャクヤクは夜になると花を閉じる習性があり、その姿から「恥じらう様子」がイメージされたようだ。

   シャクヤクやアヤメが咲き競い、心を和ませてくれる。連日揺れが続く能登の地震、早い収束を願わずにはいられない。

⇒9日(火)午前・金沢の天気    はれ

☆ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=下

☆ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=下

   ロシアによるウクライナ侵攻からきょう24日で1年となった。ロシアが掲げる「偽旗(にせはた)=false flag」は世界から不信感を買った。偽の国旗を掲げて敵方をあざむいたり、被害者を装ったり、降参したふりをして相手のスキを突いたりと相手方を騙す意味で使われる。

          ~ディープフェイク vs ITアーミー 戦いはデジタル戦に~

   去年3月11日にロシアの要請で国連安全保障理事会の緊急会合が開かれ、ロシアの国連大使は「ウクライナで渡り鳥やコウモリ、シラミなどを利用した生物兵器開発計画があり、テロリストに盗まれ使われる危険性が非常に高い」「生物兵器の開発にはアメリカが関与している」「同様の研究は悪名高い旧日本軍731部隊も行った」と一方的に主張し、まさに偽旗を掲げた。

★ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=上

★ウクライナ侵攻1年 世界の流れをどう読む=上

   ロシアによるウクライナへの侵攻は今月24日で1年を経過することになる。終わりの兆しが見えない。そして、世界はいったいどこに向かって流れていくのか、和平なのか大戦なのか、不透明な潮流を読んでみる。

   ~国連安保理は機能不全 ロシアは核兵器かざし孤立深める~

   このテーマを描いたとき、「国連安全保障理事会は機能しているのか、なぜその役割を果たさないのか」という素朴な疑問が浮かぶ。ロイター通信Web版日本語(23日付)によると、 国連のグレテス事務総長は22日に開催された国連総会緊急特別会合で、ロシアによるウクライナ侵攻は国連憲章および国際法に違反していると述べた上で、「核兵器を使用するという暗黙の脅迫を耳にしている。いわゆる核兵器の戦術的使用は全く容認できない。今こそ瀬戸際から退くべきだ」とロシアの脅迫を非難した。

   23日に開催される緊急特別会合では、決議案を採択する予定で、ロシアに対し軍の撤退および敵対行為の停止を再び求めるとみられる。国連総会での決議に法的拘束力はないが政治的な影響は大きい(同)。では、国連の安全保障理事会はどう機能しているのか。(※写真・上は国連安全保障理事会の会議室=国連広報センター公式サイトより)

   国連安保理は日本時間21日午前、北朝鮮の相次ぐミサイル発射を受けた緊急会合を開いた。日米欧などは北朝鮮の安保理決議違反を厳しく非難したが、中国とロシアは米韓の軍事演習などが緊張を高めていると北朝鮮を擁護。安保理として一致した対応は取れなかった(21日付・東京新聞Web版)。ロシアによるウクライナ侵攻も同様で、ロシアは常任理事国で拒否権があるため、安保理は法的な拘束力がある決議を何一つ成立させていない。

   国連に対する評価は世界的に低下している。ピュー・リサーチ・センターが去年6月に発表したアメリカ国内の調査で、「国連の影響は弱まっている」が39%だった。「変わらない」が46%、「強まってる」が16%だった。ウクライナ侵攻を仕掛けたロシアに非難声明すら出せない国連安保理への憤り、そして無力感ではないだろうか。

   ロシアのプーチン大統領はさらに戦況を煽る宣言を出した。NHKニュースWeb版(23日付)によると、ロシア大統領府は「祖国防衛の日」と呼ばれる軍人をたたえるロシアの祝日にあわせて、プーチン大統領の動画のメッセージを公開。この中で、「ことし、大陸間弾道ミサイル『サルマト』の実戦配備を行う。また極超音速ミサイル『キンジャール』の大量製造を継続していく。そして、海上発射型の極超音速ミサイル『ツィルコン』の大量供給を始める」と述べ、ロシア軍が保有する陸や海そして空軍の核戦力を増強していくと宣言した。

   プーチン大統領は21日に行った年次教書演説でも、アメリカとの核軍縮条約「新START」の履行停止を表明。ウクライナへの軍事支援を強めるアメリカなどを牽制する狙いとみられる(同)。ロシアは核兵器をかざし、国際的にますます孤立を深めている。

⇒23日(木)午後・金沢の天気      はれ

☆「どぶろく」と「ペティアン・ナチュレ」の酔い話

☆「どぶろく」と「ペティアン・ナチュレ」の酔い話

   前回ブログの続き。金沢市内のワインバーでソムリエ氏に「どぶろく」の話をすると、「ヨーロッパでもどぶろくのような自然派ワインがちょっとしたブームになっていますよ」と乗ってきた。

   「ペティアン・ナチュレ」と言うそうだ。フランスの発泡酒で、スパークリングとは違った微発泡のワインのこと。そこでさっそく、ペティアン・ナチュレをオ-ダーする=写真=。発酵途中でビン詰されるため、ぶどうジュースのような味わいで、泡も柔らかくて飲みやすい。見た目と味は違うものの、ワイン版どぶろくのような雰囲気だ。

   ソムリエ氏によると、ペティアン・ナチュレはフランスのロワール地方などで盛んに造られている。フランスだけでなく、イタリアでも「フリッツァンテ」などと称され人気のようだ。そして、ペティアン・ナチュレの呼び名も「ペットナット(PETNAT)」と略されて、ナチュラルワインのファンに愛されている。ソムリエ氏は「日本でも原酒がちょっとしたブーム。どぶろくブームがやってくるのでは」と。

   ペットナットは有機農法でブドウを栽培。発酵途中で濾過せずに、そのままビン詰にする。酸化防止剤は使用しない自然派志向のワインとなる。どぶろくも同じような工程で、蒸した酒米にこうじ菌を混ぜてこうじを仕込み、こうじの甘酒を醸造し、さらに酵母を加え、20日ほど発酵させるとどぶろくが仕上がる。日本酒の製造工程では「もろみ」と呼ばれる。この「もろみ」を布で搾る、あるいは漉して取り出した液体が日本酒で、残ったものが酒粕(さけかす)となる。

   話は変わる。自身が「どぶろく」という言葉を初めて聞いたのは小学校低学年の夏休みだった。俳句で有名な加賀の千代女の「朝顔やつるべとられてもらい水」について、叔父が解説してくれた。千代女のころの江戸時代は、酒といえば「どぶろく」で、酔っ払いがたくさんいた。千代女が朝、近くの井戸に水を汲みに行こうとすると、顔が赤い酔っ払いや、青い酔っ払いの男たちが井戸に集まって水を飲んでいた。その様子を見た千代女は怖くなって井戸に近づくことができずに、よその井戸に水をもらいに行った。酔っ払いの赤い顔や青い顔を朝顔に見立てて皮肉を込めた俳句だと話してくれたのを覚えている。

   そして初めてどぶろくを飲んだのは岐阜県白川村の「どぶろく祭り」だった。獅子舞踊りの祭りとどぶろくが一体化した楽しい思い出がある。とりとめのない酒酔いの話になった。

⇒5日(日)夜・金沢の天気     

★日本酒を極めて行きつく酒「どぶろく」の価値

★日本酒を極めて行きつく酒「どぶろく」の価値

   能登半島の中ほどに位置する中能登町には、連綿と「どぶろく」を造り続けている神社が3社ある。五穀豊穣を祈願する新嘗祭に供えるお神酒で、お下がりとして氏子に振る舞われる。同町ではこの伝統を活かして2014年に「どぶろく特区」の認定を受け、いまでは農家レストランなど営む農業者が税務署の製造免許を得て醸造している。きょう同町で、どぶろくの研究をしている金沢工業大学の尾関健二教授(応用バイオ学)の講演会があった。どぶろくの驚くべき効能についてだった。

   どぶろくは、蒸した酒米に麹(こうじ)、水を混ぜ、熟成するのを待つ。ろ過はしないため白く濁り、「濁り酒」とも呼ばれる。そのどぶろくが大ブレークするかもしれない。以下、尾関教授の講演から。金沢工大学と酒造会社との共同研究で、日本酒の旨み成分「α-EG(アルファーイージー)」が皮膚真皮層のコラーゲン量を増やすことが学術的に実証された。さらに、どぶろくにはコメ由来のレジスタントプロテイン(RP)が濃縮されており、α-EGとRPが合わさることで、適量で数週間にわたって肌にはりやつやが高まる。とくに、年配層の女性の美容効果が大きいことも判明した。これはどぶろくの付加価値といえる。

   どぶろくの歴史は古い。中能登町は能登における稲作文化の発祥の地でもある。1987年に「杉谷チャノバ タケ遺跡」の竪穴式住居跡から、黒く炭化したおにぎりが発掘された。化石は約2000年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりと話題になった。毎年8月に営まれる「鎌打ち神事」は、鎌で平野を開墾し、田んぼの害虫などが退散することを願った神事とされる。どぶろくを造り、収穫を神々に感謝する祭りがこの地の3つの神社で脈々と続いている。

   そうしたどぶろくの歴史と付加価値をもっとPRしようと、同町の観光協会が中心となって、12月12日を「どぶろく宣言」の日と定めてキャンペーンを行っている。尾関教授の講演もそのプログラムの一つだった。肌の美容効果という付加価値もさることながら、日本酒を極めて行くと、最終的に行きつく酒、それが「どぶろく」ではないかと、講演を聴いて思った次第。(※写真は、中能登町の天日陰比咩神社でつくられているどぶろく)

⇒4日(土)夜・金沢の天気     あめ時々あられ

★「納豆カレー」と「香箱がにパスタ」の食感のこと

★「納豆カレー」と「香箱がにパスタ」の食感のこと

   東京の知人から、「金沢には納豆カレーがありますか」と尋ねられ、「えっ、初めて聞いた」と返事すると、「東京では結構はまっている人もいますよ。人気です」と。聞けば、カレーに納豆をトッピングした変わり種メニューのようだ。この手の話を一度聞くと頭に残るタイプなので、さっそく試してみた。

   カレーは能登牛を入れた能登牛カレー。牛の食味を引き立てるため、辛さは普通で控えめ。ごはんは加賀産コシヒカリで、その上に能登牛カレーをかけた。能登と加賀の郷土料理のような雰囲気だ。さらに、トッピングで乗せたのは『そらなっとう』だ=写真・上=。

   金沢の納豆製造会社がつくる、この『そらなっとう』にはちょっとしたストーリーがある。金沢大学のある研究者が、春になると黄砂といっしょにやってくる微生物「黄砂バイオエアロゾル」を研究していた。その中に、食品発酵に関連する微生物が多いこと気づき、大気中で採取した何種類かのバチルス菌で納豆をつくってみた。その何種類かのバチルス菌でつくった納豆の試食会に自身も参加したことがある。2010年12月のことだ。その中で、能登半島の上空で採取した「Si38株」というバチルス菌の納豆は独特のにおいも少なく、豆の風味もあり好評だった。その後、『そらなっとう』として商品化された=写真・中=。JALの機内食にも採用されたことで一躍知られるようになった。

   能登牛カレーとこの納豆の「納豆カレー」を食べてみる。すると、納豆がカレーの風味を邪魔しない。逆に、カレーが納豆の味を包み込まない。お互いが共存しながら、口の中で混ざり合う。なんとも不思議な食感なのだ。納豆好きな人、カレー好きの人がそれぞれ納得して食べることができる。初めて知った食感だった。

   ついでに食感の話題をもう一つ。金沢のイタリンア料理の店に入って初めて、「香箱がにパスタ」というメニューを見た。通常のパスタに比べ1200円も高い。思い切って注文する。クリームパスタに北陸の海などで獲れる香箱ガニ(ズワイガニの雌)の身をトッピングしたものだ。とくに、香箱ガニの外子(卵)と甲羅の中にある内子(未熟成卵)、そしてカニみそ(内臓)がパスタ全体の食感を高める。それに白ワインを注文する。深く趣きのある味わいだった。

   後日、近くのスーパーで香箱ガニを2パック、クリームパスタを買い、自宅で香箱がにパスタをぜいたくにつくってみた=写真・下=。ワインはオーストラリア産の「PET NAT」。自然派のス-クリングだ。パスタ、香箱ガニ、そしてワインのそれぞれの風味が口の中でコンサートを奏でているような楽しい味わいなのだ。ただ、香箱ガニの漁期(11月6日-12月29日)はすでに終わっていて、食べられる時期は限られている。地元産、そして季節限定の食の楽しみの中に、しっとり感、揺さぶり感、日常の幸福感がある。

   ちなみに、聴こえてきた口の中のコンサートはヴィヴァルディ作曲の『四季』「冬」の第一楽章だろうか。たかが「納豆カレー」と「香箱がにパスタ」で、話が長くなってしまった。

⇒11日(水)午前・金沢の天気   

★「チャールズ・パッチ」と「金継ぎ」の循環型経済

★「チャールズ・パッチ」と「金継ぎ」の循環型経済

   最近何かとイギリスの王室の話題がテレビの情報番組などで紹介されている。気になった言葉があった。「チャールズ・パッチ」。9月に即位したイギリスのチャールズ国王は皇太子時代から、愛用していた革靴や衣類にパッチを施して使い続けたことから、この言葉が広がったようだ。丁寧な修繕という意味だろうか。靴の場合、ただの革のパッチではなく、張り合わせた革を縫いつけ固定することで、ひび割れなどを隠して補強するという丁寧な補修を指す。

   検索すると、イギリスのメディア「デイリーメール」Web版(2018年4月8日付)に「The penny pinching prince! Charles reveals that he is still wearing a pair of shoes he bought in 1971 – and is holding on to a 50-year-old jacke」の見出しで、チャールズ・パッチのことを紹介している=写真・上=。皇太子(当時)は1971年に購入し、パッチした靴を47年間も履いていて、50年前のジャケットをまだ着ていると話した、と報じている。

   このチャールズ・パッチという言葉を知って、「金継ぎ」という言葉を連想した。陶器のひび割れを漆と金粉を使って器として再生する技術のこと。知人から見せてもらった金継ぎの茶碗は紅葉の絵の抹茶碗に細かく金継ぎが施されている=写真・下=。若いころ茶道を習っていて、茶碗をうっかり落としてしまった。茶道の先生からいただいた思い出のある茶碗だったので修復を依頼したそうだ。

   金継ぎという言葉が世界に広がったきっかけがあった。東京パラリンピックの閉会式(国立競技場・2021年9月5日)でアンドリュー・パーソンズ会長が発した言葉だった。日本の金継ぎの技術について、「不完全さを受け入れ、隠すのではなく、大切にしようという発想であり素晴らしい」と述べて、金継ぎという言葉が世界でもトレンドになった。さらに、金継ぎは一度は壊れてしまった製品を修復するだけでなく、金箔を使うことでアートを施し、芸術的価値を高める。

   もともと、欧州やアメリカでは「kintsugi」が知られていた。その理由の一つが、サステナビリティとサーキュラーエコノミー(循環型経済)を各国が推し進めていることが背景にある。サーキュラーエコノミーとは資源や製品が高い価値を保ったまま循環し続ける社会経済だ。このサーキュラーエコノミー実現において、製品をできるだけ長く使い続けることは特に重要視されており、修繕はその要となる。SDGs「17の目標」とも調和がとれる。

⇒26日(月)夜・金沢の天気   あめ  

★雪国の美徳「雪すかし」 スコップに見える不都合な真実

★雪国の美徳「雪すかし」 スコップに見える不都合な真実

   前回のブログの続き。まるで二羽の白鳥が雪が降った湖に入ろうか、どうしようか迷っている光景に見えた=写真・上=。白鳥に見えるのは低木に施された雪囲いで、首から頭の部分に見えるのは支えの竹。そして、雪の降った湖に見えるのはコンクリート塀の壁面だ。何気なく眺めていて、ふとカメラのシャッターを押した。雪は気温が上がれば溶けてカタチは変化するので、面白そうに見えた瞬間がシャッターチャンスでもある。

   きょうは朝から雪の晴れ間をぬって、雪すかし(除雪)の作業を行った。町内会でお達しがあったわけではないが、不思議と道路沿いの家々の人たちが一斉に出てきて、雪すかしの作業を行っている。土曜日の朝ということもあり、通勤の車も少なく、自宅前の道路の除雪作業にはタイムリーな時間帯でもある。「よく降りましたね」は、ご近所のみなさんと交わす朝のあいさつとなる。町内の雪すかしは、雪国の住民の「自助・共助」の美しい姿ではある。

   一方、毎年この雪の季節にまったく別の問題を考えてしまう。スコップとマイクロプラスチック問題のことだ。ご近所を見渡すと、スコップの8割がプラスチック製で、2割がアルミ製ではないだろうか。除雪する路面はアスファルトなので、そこで雪すかしをすると、プラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。微細な破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂うことになる。

   粉々に砕けたマイクロプラスチックが海を漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持つとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

   自身はなるべくステンレス製のスコップを用いるようにしているが、この問題を解決する方法は一つだ。プラスチック製のスコップのさじ部分の尖端をステンレスなど金属にするしかない。これを法令で制度化すべきではないだろうか。

⇒24日(土)午後・金沢の天気     くもり

☆「顕著な大雪」金沢 庭先をアート感覚で眺めれば

☆「顕著な大雪」金沢 庭先をアート感覚で眺めれば

   金沢が大雪に。強い冬型の気圧配置の影響で北陸は降雪が強まり、自宅の庭先は30㌢ほどの積雪になっている=写真・上=。午前10時ごろ、自宅前の市道を除雪車が行き交っていた。金沢地方気象台は午前8時16分に「顕著な大雪に関する石川県気象情報」を発表し、短時間に大雪が降り、大規模な交通障害が発生する危険性が高まっていると注意を呼びかけている。気温は午前10時でマイナス1.2度だった。

   あす24日朝にかけてさらに積もり、加賀地方の平野部で60㌢、山沿いで100㌢、能登地方の平野部で30㌢、山沿いで60㌢と予想している。クリスマス寒波になりそうだ。

   きょうの雪は風をともなう吹雪だ。自宅周辺を見渡すと、ちょっとした雪のア-ト作品がある。まるで、「雪自転車」だと思った=写真・中=。粉雪が風に舞って、玄関前に置いてあった自転車が丸ごと雪に包まれた。もともとは赤色の自転車なのだが、雪でペインティングしたようになっている。そして、ご近所の外壁を見ると、雪がまだら模様に貼りつき、まるで壁面アートのようだ=写真・下=。下には拙宅のツバキの雪囲いなどがあり、手前が立体、バックが壁面の芸術作品のようだと思った。

   「なんでもアート」と見てしまう感覚は、足しげく通った奥能登国際芸術祭(珠洲市主催・2017年、2021年開催)に影響されているのかもしれない。身近なテーマや日常の風景に加飾を施すことで、芸術作品のように見えてくる。インドの作家スボード・グプタ氏の作品「Think about me(私のこと考えて)」は衝撃的だった。能登の海岸に流れ着いたプラスチック製浮子(うき)やポリタンク、プラスチック製容器などのごみを集めて創った作品で、大きなバケツがひっくり返され、海の漂着物がどっと捨てられるというイメージの作品だった。

   やっかいで除雪も大変な雪なのだが、アートとして眺めるとそれはそれで楽しくもある。

⇒23日(金)午後・金沢の天気    ゆき