⇒トレンド探査

★あの「イカキング」と「能登ワイン」のテロワール

★あの「イカキング」と「能登ワイン」のテロワール

   FIFAワールドカップ・カタール大会で日本は決勝トーナメント一回戦で、日本はクロアチアと1-1で突入したPK戦の末に敗れ、8強入りはならなかった。強豪のドイツとスペインを破って決勝トーナメントに進出しており、「日本サッカー」を世界に印象付けたのではないだろうか。そして、敗れたものの選手たち、日本のサポーターはこみを拾い、さりげなく去った。「ジャパニーズ・スタンダード」「これが日本の文化か」と世界は称賛している。

   前回の続き。農耕儀礼「田の神さま」の見学を終えて、せっかく奥能登に来たので、いっしょに訪れた仲間たち3人と新名所を巡った。近場の海岸沿いにある、あの「イカキング」を見に行った=写真・上=。スルメイカの巨大なモニュメントは日本海のスルメイカの水揚げ拠点である能登町小木にある。これまで国内だけでなく海外のテレビ番組でも繰り返し紹介された効果もあり、観光交流センター「イカの駅つくモール」には去年4月設置からことし7月までに16万4千人が来場、うち45%の来場者がイカキングがお目当てだったことがアンケート調査で分かった(能登町役場公式サイト「 能登町イカキング効果算出プロジェクト報告資料」)。

   今回訪れたのは月曜日ということもあり、来場者は少なかったが、親子連れが楽しそうに眺めていた。また、グローバルメディアのBBCもニュースとして取り上げた効果か、インバウンド観光客も面白そうに撮影していた。欧米ではタコやイカはデビルフィッシュ(Devilfish)、「悪魔の魚」にたとえられ、巨大化したタコやイカと闘うアメリカ映画もある。スルメイカの巨大モニュメントそのものが、欧米では「絵になる」のだろう。

   次に訪れたのは穴水町にある「能登ワイン」。2006年にワインづくり始め、ワイナリーを囲むようにブドウ畑が広がる。畑には白い殻がまかれている。この辺り一帯は赤土(酸性土壌)で、ブドウ畑に適さないと言われてきた。そこで、穴水湾で養殖されるカキの殻を天日干しにしてブドウ畑に入れることで土壌が中和され、ミネラルが豊富な水はけのよい畑となり、良質なブドウの栽培に成功している。まさに能登ワインの「テロワール」(産地特性)と言える。

   その土地と合ったのが日本固有のブドウといわれるヤマソーヴィニヨン。ここでは国内のヤマソーヴィヨンの半数近くを栽培している。このヤマソーヴィニヨンをオーク樽で6ヵ月間貯蔵し熟成させたのが、赤ワインのブランド『心の雫(しずく)』=写真・下=。素朴な深みと優しさがあって、能登をイメージさせるワインでもある。
 
   説明してくれたワイナリーのスタッフがこのような話しをしてくれた。「日本ワインと国産ワインの違いをご存知でしょうか」と。日本ワインはブドウも醸造も日本で造られたワインのこと。国産ワインは醸造は国内だが、ブドウは輸入されたもの。その意味では、能登ワインは日本ワインの醸造に地道に取り組んでいると言える。
 
⇒6日(火)午後・金沢の天気   あめ

☆皆既月食を楽しむ

☆皆既月食を楽しむ

   満月が夜空に浮かんだきのう、満月の左下に影ができ始めたのは午後6時10分ごろだった。「部分食」は進み、その後、午後7時16分に月は赤胴色に染まった。太陽と地球と月が一直前上に並び、月が地球の影にすっぽりと隠れる。立冬が過ぎて夜空を見上げることはほとんどなくなったが、昨夜は晴れて天体ショーを観察することができた。

   午後8時42分ごろまで皆既月食が観察できた。その後少しづつ月は元の姿と戻り始め、午後9時50分ごろには満月の姿に戻った。

   天王星が月の後ろに隠れる「天王星食」も同時に起こり、「442年ぶりのダブル天体ショー」とメディアなどで話題になっていたが、残念ながら天王星食は肉眼では見ることができなかった。カメラで撮影も試みたが、これも断念。次に皆既月食を見ることができるのは「2025年9月8日」(国立天文台)となる。

(※写真・上は部分食=午後6時57分撮影、写真・下は皆既月食=午後7時38分撮影、いずれも金沢の自宅前から北の空)

⇒9日(水)午前・金沢の天気  はれ

★人とロボットが店で働く多様化社会の幕開けなのか

★人とロボットが店で働く多様化社会の幕開けなのか

           金沢や石川県で「8番らーめん」と言えば、誰も知っている地域の味と言える。もともと石川県加賀市の国道8号線沿いで創業したラーメン店で、「8番らーめん」という屋号は国道8号にちなんだネーミングといわれる。創業から55年でフランチャイズ形式で店舗が増え、石川県49店など北陸を中心に国内で131店。海外は154店も展開していて、うちタイが149店。タイの人々と味覚がマッチしたようだ。

   炒めた野菜をたっぷりのせた野菜ラーメンがベースの味なのだが、季節限定メニューもあり、秋冬の定番は酸辣湯麺(サンラータンメン)だ=写真・上=。この酸辣湯麺は二日酔いに効くので以前から重宝している。それは酢の酸味とラー油の効果かもしれない。同社が開発したラー油「紅油」はゴマ油と赤唐辛子をベースに桂皮(シナモン)、陳皮(ミカンの皮)、山椒が加えてあるそうだ。 二日酔いの症状がひどいとき、この紅油をさらに3さじほど足して食すると、目頭の辺りが熱くなり、額にうっすらと汗がにじんでくる。この瞬間から徐々に爽快感が出てきて、二日酔いが和らいでくる。

   前置きが長くなった。先日、オープンしたばかりの白山市の店舗に立ち寄った。驚いたのはスマホで注文するモバイルオーダー、そして料理を運んでくるのはロボットだった。店に入ると、各テーブルにあるQRコードをスマホで読み取り、専用サイトにアクセスしてメニューを選び注文する。間もなくすると、配膳ロボットが「お待たせしました」とテーブルにやって来る=写真・下=。ロボットには「まつこちゃん」という名前も付いている。食べ終わると、レジに行き、店員と金銭のやりとりをせずに自分で現金やカードで決済する「セルフレジ」となる。

   「料理配膳ロボット」はことし6月に、JR金沢駅近くにあるファミリーレストラン「ガスト」でも見かけたが、ラーメンチェーン店でも活躍しているとは知らなかった。従業員は4人だった。確かにモバイルオーダー、配膳ロボット、セルフレジならば人手はそれほどかからないかもしれない。人手不足の時代、そしてコロナ禍では対面でのやりとりを減らすというニーズに合っている。

   一方で「いや面倒だ」、そんな客側の反応もあるだろう。シニア世代では、スマホでの注文は手間がかかり面倒かもしれない。人とロボットが店で働く、そのような多様化社会の幕開けなのか。

⇒1日(火)夜・金沢の天気    くもり

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

☆「壺中の政治家」「ドツボのロケットマン」

   二十四節季でいう寒露のころ。秋も深まり、床の間の掛け物を替えた。「壺中日月長」(こちゅうじつげつながし)。禅語で、壺の中という別世界で、時間に追われることなく悠々と人生を送る、悟りの境地と解釈している。掛け軸を眺めていて、ふと、ニュースの中で壺中の境地にいる人々の姿が浮かんできた。

   河野太郎デジタル大臣は記者会見(13日)で、2024年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」に切り替えると発表した。また、24年度末としているマイナンバーカードと運転免許証の一体化時期の前倒しを検討することも明らかにした(13日付・毎日新聞Web版)。ことし8月10日の改造内閣でデジタル大臣に就任、河野氏らしい「突破力」を見せたようだ。

   河野氏の突破力でイメージするのは、防衛大臣だった2020年6月、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画を撤回するとの唐突な表明だ。ミサイルのブースターと呼ばれる推進補助装置を基地内で落下させる想定だったが、基地の外に落下する可能性もあり、設備に大幅な改修と追加コストが必須となることから撤回に踏み切った。防衛大臣らしからぬ発言のように思えたが、基地周辺住民の将来不安を想定しての「突破発言」だった。他の政治家とは別の価値観を有する「壺中の政治家」ではある。

   この人の場合は、「ドツボにはまる」という表現がふさわしいのかもしれない。金正恩総書記。北朝鮮は14日午前1時47分、平壌近郊から、1発の弾道ミサイルを東方向の日本海に向けて発射した。最高高度は約50㌔で、650㌔程度飛翔し、日本のEEZ外に落下した。弾道ミサイルは変則軌道で飛翔した可能性がある(防衛省公式サイト)。弾道ミサイルの発射はことしに入って24回だ。9月25日以降は頻発していて8回(13発)になる。北朝鮮の労働新聞Web版(11日付)は、これまでの弾道ミサイルの発射について、「金総書記は人民軍の戦術核作戦部隊の軍事訓練を指揮した」との見出しで特集を組み、戦術核の搭載を想定したミサイルの発射であることを示唆した。

   2017年9月の国連総会で、当時のアメリカ大統領のトランプ氏が「ロケットマンが自殺行為の任務を進めている」と演説したが、まさにドツボにはまり込んでいる。

⇒15日(土)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

★「内閣支持率」はどう動く きょうから臨時国会

★「内閣支持率」はどう動く きょうから臨時国会

   けさの読売新聞と朝日新聞の紙面で、それぞれの世論調査の結果が掲載されている。読売の調査(1、2日)では岸田内閣の支持率が45%、不支持が46%となり、「初の逆転」と見出しで伝えている。前回調査(9月2-4日)では支持率は50%だったので、5ポイントの下落。逆に不支持は41%だったので、5ポイント上昇した。

   一方、朝日の調査(1、2日)では内閣支持率が40%、不支持率が50%となり、記事では「不支持率が初めて半数に達した」「不支持率が支持率を上回るのは2ヵ月連続」としている。前回調査(9月10、11日)では支持率41%、不支持率47%だったので、支持率はほぼ同じ、不支持率がやや上昇した。読売と朝日の世論調査を比較すると、数字の上がり下がりは読売の方が大きい。

   そして、読売、朝日ともに内閣不支持の要因となっているのは、政府・自民党の世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)に対する不透明な対応だろう。旧統一教会と政治家の関係をめぐる問題で、読売の「岸田総理が指導力を発揮していると思うか」との問いでは、「思わない」が80%、「思う」が13%となっている。朝日の「岸田総理の対応を評価するか」との問いでは、「評価しない」が67%、「評価する」が22%だった。また、安倍元総理と旧統一教会の関係について「調査を行うべきだと思うか」との問いでは、読売の調査は「思う」59%、「思わない」37%、また、朝日では「調査すべき」64%、「必要はない」31%となっている。

   先月27日に営まれた国葬について、読売の「よかったと思うか」との問いに、「思わない」54%、「思う」41%だった。朝日の「評価するか」との問いでは、「評価しない」59%、「評価する」35%だった。

   旧統一教会との関係をめぐり、自民党は所属する国会議員全体の半数近くにあたる179人が何らかの接点があり、選挙で支援を受けるなど、一定以上の関係を認めた121人の氏名を公表した(9月8日付・NHKニュースWeb版)。また、立憲民主党の辻元議員も統一教会の教会の関係団体の勉強会に出席し、会費を支払っていた(27日付・同)。では、政党支持率はどうなっているのか。読売の調査では、「自民党」40%、「立憲民主党」5%と続いた。両党の支持率は前回と同じだった。朝日の調査では「自民党」34%、「立憲民主党」6%と続いた。前回は自民が31%だったので、むしろ支持を伸ばしている。

   きょう臨時国会が召集される。国会論戦は7月の参院選後で初めてとなる。読売と朝日がこの日に世論調査を掲載したのも、臨時国会の論戦を意識してのことだろう。会期中(12月10日まで)に岸田内閣の支持率がさらに「危険水域」(20%台)に落ち込むのか、あるいは起死回生の矢を放つのか。

⇒3日(月)午後・金沢の天気    くもり

★めりはりのない旧統一教会問題の政府対応

★めりはりのない旧統一教会問題の政府対応

   それにしてもめりはりの利いた、見事な季節の移ろいだ。「暑さ寒さも彼岸まで」とよく言われるが、彼岸入りでもあったきのう20日は台風14号が去って、一気に秋めいた。前日までは真夏日や猛暑日が続いていたのだが、気温は20度と肌寒くなった。Tシャツと半ズボンを仕舞い、長袖のシャツと長ズボンを出した。台風一過、秋を呼ぶ。

   めりはりが利いていないのが、世界平和統一家庭連合(旧「統一教会」)に対する政府の対応だ。共同通信ニュースWeb版(20日付)によると、立憲民主党など野党は20日、旧統一教会の問題に取り組む弁護士や2世信者を招いてヒアリングを実施した。弁護士らが採択した、宗教法人法に基づく解散命令の請求を行政に求める声明について議論したが、文化庁の担当者は過去の事例を挙げ「現状では難しい」と繰り返した。

   文化庁担当者の「現状では難しい」という意味合いは裁判になった場合を想定しているようだ。日刊スポーツWeb版(同)によると、文化庁宗務担当者は「安易な解散命令請求することはできない。確実に(裁判で)勝てるだろうという状況がなければ解散命令請求すべきでない」との見解を示した。これに対し、社民党の福島党首は「解散命令を出す十分な要件がある。裁判で勝つ可能性が極めて高いので解散命令を出すことが被害者の救済、これ以上被害を生まないために文化庁、今やらないとダメです」と指摘した。

   この議論の基となったのは、全国霊感商法対策弁護士連絡会が16日、永岡文科大臣に対し、宗教法人法に基づいて旧統一教会の解散命令を裁判所に請求するよう求める声明だった。連絡会の公式サイトに声明の内容が掲載されている。以下、抜粋。

「2 解散請求 文部科学大臣は、旧統一協会に対し、宗教法人法第78条の2に定める報告質問権を行使するとともに、同法第81条1項に基づき解散命令を請求されたい。 3 カルト対策 (1)内閣総理大臣は、フランスなどカルト対策に先進的な諸外国の法制度・諸施策を参考に、基本法の制定も視野に入れた上で、被害抑止・救済のための法制度を整備し諸施策を講じられたい。(2)文部科学大臣は、旧統一協会による過去の諸々の被害(金銭被害、家族破壊、労働力収奪、その他被害)に関し調査の上で、その結果を総括的な報告書をまとめられたい」

   ヒアリングに出席した木村壮弁護士は「正体を隠した勧誘、献金活動が繰り返されている。違法な活動が継続しており、解散命令請求ができないことはないはず」と指摘した(20日付・共同通信ニュースWeb版)。

   文化庁宗務担当者の発言は実に役人らしい見解だ。解散請求を裁判所が審理して、解散命令請求が100%勝てる状況にないので請求しない、と。発言は、面倒くさいことをオレたちにやらせるな、と言っているだけのようにも解釈できる。

   文化庁だけではない。ヒアリングで、野党側が消費者庁が把握している旧統一教会による被害相談件数について回答を求めた。すると、同庁担当者は「個別の事業者、団体にかかわる相談件数についてはお答えを控えさせていただいている」と答えた(20日付・日刊スポーツWeb版)。旧統一教会問題のヒアリングでの場で、この発言だ。法務省が設置した旧統一教会に関する「合同電話相談窓口」=写真=で受け付けた相談件数は今月5日から14日までに1415件(速報値)にも上る。

   旧統一教会に関しては、自民党は消極的、関係省庁は関わりを拒否する。おそらく、教団は高笑いをしているに違いない。 「野党が何を言おうが、我々の摂理は正しい。自民党と関係省庁は正しく理解してくださっているのだ」と。

⇒21日(水)夜・金沢の天気    はれ 

☆季節の話題 底引き初物とブランド「加賀しずく」

☆季節の話題 底引き初物とブランド「加賀しずく」

   長年金沢に住んでいると、「9月1日」はちょっと気持ちがたかぶる日だ。日本海側の底引き網漁は、資源保護のため7月と8月は禁止されていて、この日に一斉に解禁となる。きょうが初競りの日で、スーパーなどの鮮魚売り場がにぎやかになる。何しろ、地元で取れた魚なので新鮮さが違う。普段見かけることもない魚も並び、売り場では「底引き解禁だよー」と声が響く。

   きょう午後、金沢の近江町市場をのぞいた。鮮魚店売り場では、水揚げされたばかりのカレイやハタハタ、子持ちの甘エビ、メギスなどが並び、多くの客が買い求めていた。ただ、見た目だが、例年より並んでいる量が少ない=写真・上=。

   店員にさりげなく、「いつもの年より並ぶ量が少ないね」と尋ねると、「きのうは大雨だったことで漁を見合わせた漁船もあって、きょうの競りは入荷量が少なかった」と話してくれた。あす以降は天気が回復するものの、台風11号が北陸に接近すると底引き網漁にまた影響が出てくるかもしれない。

   9月は実りの秋でもある。別の店をのぞくと、「加賀しずく」というナシが並んでいた。「お一人様2個まで」と強気の表示が出ている=写真・下=。よく見ると、1個980円の値段がついていた。

   このナシは石川県が16年かけて開発したオリジナルブランドで、先月26日から出荷が始まり、初競りでは最も高級な「プレミアム」に1箱15万円の値がついたと地元テレビのニュースにもなっていた。1本の木に実らせる果実を6割ほどに制限し、1個当たりの養分を増やすことで、甘くて大きなナシに仕上げるのだという。出荷量が少ない分、限定販売となり、値段も高くなる。

   この季節、魚やフルーツなど食べ物の話題にこと欠かない。そろそろキノコも。

⇒2日(金)夜・金沢の天気   くもり時々あめ

☆盆明け、胸中ざわざわ三本立て

☆盆明け、胸中ざわざわ三本立て

   盆明け、北日本に大雨を降らせていた前線が北陸などに南下してきたようだ。金沢地方気象台の予報によると、石川県の大気の状態が非常に不安定になっていて、朝から激しい雨が降っているところもある。気象台と県は能登半島の一部に土砂災害警戒情報を出して警戒を呼びかけている。能登半島はリアス式海岸で山を背にした海沿いの集落が多い。これまでも豪雨による山の土砂崩れで人災や家屋倒壊、集落が孤立するなど被害が出ている。(※写真は8月4日、金沢市を流れる犀川の様子)

   auスマホに「通信障害に関するご返金のお知らせ」というKDDIからのメッセージが入っていた。「7月2日(土)午前1時35分より長時間にわたり、弊社の通信サービスをご利用のお客さまには多大なご不便とご迷惑をお掛けしました」「お客さまは以下のご返金の対象となります。お詫び返金:200円(税抜)※9月以降のご請求において減算いたします。お受け取りのお手続きは不要です」などと。復旧までに4日もかかり、「お詫び返金」という名目ならば、せめて1000円くらい戻してほしい。200円は単なる「返金」で、それに「お詫び」の文字を乗せるとは厚かましい。

   岸田総理は組閣や自民党役員人事について、霊感商法や献金強要など反社会的行動を取ってきた「世界平和統一家庭連合」(旧「統一教会」との距離を測ると明言していたが、その言葉の信頼性はすでに吹っ飛んでいる。きょうの報道で、先の参院選で東京選挙区で当選した生稲晃子議員が公示前の6月に萩生田光一党政調会長とともに、統一教会を訪問していたことを認めた。

   問題は、銃撃で死亡した安倍元総理の安倍派(清和会)の次なる指導者と見られている萩生田氏だ。ただでさえ、清和会は統一協会との関わりが深い議員を多数抱えていて、世間の非難を浴びている。そこにきて、選挙の際に萩生田氏が生稲氏をわざわざ統一教会に連れて行き、「投票をよろしく」と支援を求めたとなれば、密接な関係性を自ら証明したようなものだ。清和会は党内のトップ派閥ではあるものの、このままでは持たない。この派閥がチカラを失えば、党内勢力図が大きく変わっていくのではないだろうか。

⇒17日(水)午前・金沢の天気    あめ

★オリ・パラの垣根払うパリの「オリンピック革命」

★オリ・パラの垣根払うパリの「オリンピック革命」

   前回ブログの続き。パラリンピックではオリンピックとは別の感動があった。卓球・男子シングルスで、エジプトのイブラヒム・ハマト選手は両腕の肘から先が欠損しているので、口にラケットをくわえ、ボールを打つっていた。サーブ時は足全体を大きく振り上げ、足の指でつかんだ球を上にトスする。首と身体を左右に大きく振りながらラリーを続け、強烈なレシーブを決める。10歳の時に列車事故に遭い障害を負った。「人に不可能はない」。人はここまでできると教えてくれているようで衝撃的だった。

   車いすラグビーも印象的だった。日本対デンマーク戦。ガツン、ガツガツと車いすの衝撃音が響く。ぶつかり転倒する。車いすのタイヤがパンクして取り換え。また、激しい試合が再開される。その繰り返し。車いすラグビーは別名「マーダーボール」、殺人球技といわれるほど激しくぶつかり合う。このマーダーボールでは、選手の障がいの程度に応じて持ち点が割り振られていて、障がいの軽い選手だけでなく、重い選手や女性選手も出場する。パラリンピックの多様性を象徴するような競技だった。

     パラリンピック競技を視聴していて、ふと気にしたことがある。自らの視聴目線は「感動ポルノ(Inspiration porn)」ではないのか、と。意図を持った感動シーンで感情を煽ることを「ポルノ」と表現するが、障がい者のパラ競技を視聴して、「感動をもらった、励まされた」と自らを煽っているのではないかと。そして、自らの目線は障がい者に対する「上から目線」ではないのかと自問自答した。

   パラリンピックに合わせて来日したフランスのソフィー・クリュゼル障がい者担当副大臣の記者会見も印象的だった=写真、在日フランス大使館公式ホームページより=。2024年パリ五輪・パラリンピックについて、「オリンピックとパラリンピックの垣根を取り払う大会にする」と述べていた。両大会のボランティアの6%を障がい者にする考えを示し、「すでに3000人の障がい者がボランティア参加できるようにトレーニングを始めている」と社会参画の必要性を強調した(2021年8月30日付・日テレニュース)。

   クリュゼル氏は都内のカフェを訪れ、重い障害のあるスタッフがロボットを遠隔操作して接客する様子を視察した。このカフェでは、難病や脊髄の損傷など障害のある60人が、自宅や病院にいながら、ロボットを遠隔操作して接客し、ロボットのカメラとマイクで客とコミュニケーションも取っている。クリュゼル氏は「多くの人が働き続けることを可能にする、すばらしい試み。パリ大会は私たちにとって大きな挑戦になるので、日本のアイデアを役立てたい」と話していた(同8月25日付・NHKニュースWeb版)。

   オリンピックとパラリンピックの垣根を取り払うという発想が心を打つ。クリュゼル氏の会見や視察の様子を見て、フランス革命のシンボリックな絵画、ウジェーヌ・ドラクロワの『民衆を導く自由の女神』を思い浮かべた。銃剣を左手に、右手にフランス国旗を掲げ果敢な女性を描いた、あの絵画だ。

   24年パリ五輪の開会式はセーヌ川で、スケートボードはコンコルド広場で、マラソンや自転車のロードレースは競技時間を違えて一般市民も同じ日に同じコースで競う。前例にとらわれない開放感や華やかさ。「オリンピック革命」がパリで起きるのかもしれない。

⇒29日(金)夜・金沢の天気    くもり時々はれ

☆感動の東京五輪から1年、ただあえて言うならば

☆感動の東京五輪から1年、ただあえて言うならば

   1年前のいまごろ、東京オリンピックで日本勢は金メダルラッシュだった=写真・上=。卓球の混合ダブルスで水谷隼・伊藤美誠選手が強豪・中国チームを破って五輪卓球で日本に初の金メダルをもたらした。シニア世代には卓球は中国のお家芸というイメージがあるので、この「チャイナの壁」を突破した快挙だった。

   卓球とは違って、オリンピックの醍醐味を新たな視覚で楽しんだのがスケートボードだった。当時はスケートボードがオリンピック競技になっていることすら知らなかった。女子ストリートで、13歳の西矢椛(もみじ)選手が優勝し、日本史上最年少の五輪メダリストになった。2位のブラジル選手も13歳、3位の中山楓奈選手は16歳、表彰台に10代の選手が並んだ姿は新鮮なイメージだった。

   地元選手の活躍もあっぱれだった。レスリング女子57㌔級の決勝で石川県津幡町出身の川井梨沙子選手がベラルーシの選手を下し、前回のリオデジャネイロ大会に続いて金メダル。さらに、川井選手の妹・友香子選手も62㌔級で金メダルを獲得。姉妹で「金」は日本勢初の快挙と讃えられた。

   ここから論調は一変する。いまさら論にもなるが、人口減少が続き、膨れ上がる赤字国債を誰が返済するのかという議論が出ている中で、1兆4530億円もの開催経費をかけてまでオリンピックを開催した意義はどこにあったのか。世界は「オリンピック・ノー」に動き始めている。2024年のパリ開催は決まっているが、立候補を表明していたドイツのハンブルグやローマ、ブタペストでは開催費が財政を圧迫するとの住民の反対が根強く、最終的に撤退している。28年のロス、32年のブリスベンも競争相手の都市がなくすんなりと決まったように思われているが、他の都市は住民の反対で立候補に至らなかったというのが経緯のようだ。

   日本も国民は東京オリンピックを待ち望んでいたのか。開催前のNHK世論調査(2021年2月8日付)で、オリンピックをどのようなカタチで開催すべきかとの問いで、「中止する」が38%で最も多く、「観客の数を制限」29%、「無観客」23%だった。コロナ禍でもあり、中止の声は3分の1を以上を占めた。世論が割れたことで、オリンピックの大口スポンサーだったトヨタは関連のテレビCMを見送らざるを得なかった。

   札幌市が1972年に続き2度目の開催を目指す2030年冬のオリンピック・パラリンピック。同市が作成した「2030北海道・札幌オリンピック・パラリンピック冬季競技大会 概要(案)」(2021年11月発行)=写真・下=によると、開催経費は最大で3000億円を見込んでいる。うち、大会運営費が2000億円から2200億円、施設整備費が800億円としている。巨額な経費はかかるにしても、オリンピック開催による経済効果はそれを払拭するというのが市側の建前論だろう。

   オリンピックの開催に反対ではない。ただ、イベントの開催でレガシーや経済効果を期待する時代はもう終わったのではないか。2025年の大阪・関西万博にしてもしかり。インターネットで情報が飛び交う時代に、万博で何か得るものがあるのだろうか。時代に合わなくなった「オワコン」(終わったコンテンツ)にしがみついて、「夢よ再び」の時代ではない。オリンピックや万博はもう他国に任せて、新たなグローバル・コンテンツを創り出すことに価値を見出すべきではないだろうか。

⇒28日(木)午後・金沢の天気    くもり時々はれ