⇒トレンド探査

★カップ酒、ブームの仕掛け

★カップ酒、ブームの仕掛け

  ピンチがチャンスを生むことがままある。それは現状に危機感を抱き、創意工夫を凝らすことで危機的な状況を抜け出すということだろう。その一例を日本酒で紹介する。

 ひところ純米や吟醸といった高級化路線でブームをつくった日本酒の業界だが、最近はワインや焼酎に押されてかつての勢いはないと思っていた。ところが、妙なところからブームが起きているのである。カップ酒だ。そういえば、コンビニでも棚に占めるカップ酒の面積や種類が増えている。

 金沢の繁華街、片町にある日本酒バー「ZIZAKE」では石川県内の45銘柄のカップ酒がずらりと並んでいる。このバーを運営する県酒造組合連合会は昨年8月に「カップ酒王国いしかわ」を宣言して普及に乗り出した。観光地・金沢のちょっとした手土産に地酒のカップ酒が受けているそうだ。180-200㍉㍑、価格も200円から400円が中心だ。

 実は今月3日に「カップ酒とカキ鍋を楽しむ会」が金沢市内の料理屋であり、誘われて参加した。塗り升に樽(たる)酒を詰め、上部を透明フィルムで覆って密閉したものや、小さなボトル型をした「ちょいボトル」などかたちも工夫を凝らしている。飲みきりサイズで酒を楽しむ。そんなコンセプトの商品が次々と生み出されているのである。

 そのうち、ファミリーレストランなどにもカップ酒がメニューとなってくるだろう。なにしろラベルもバンビやパンダ柄などが全国的に人気を博している。狙いは新たな日本酒愛好家の開拓、ターゲットは若いファミリー世代とかなり戦略的に絞っているようにも思える。軽四自動車のデザインや機能が格段によくなってブームが起きている現象とよく似ている。

⇒12日(日)朝・金沢の天気   くもり  

☆忘・新年会の「戦略ラーメン」

☆忘・新年会の「戦略ラーメン」

  今月は毎度の事ながら、手帳の書き込みに「忘年会」の文字が多い。「何回忘年会をしたら年を越せるのか」と家族にはぼやきながら、実は誘いを断ったことがなく、時には「はしご」までしてこまめに顔を出している。

   問題は二日酔いだ。酒の種類と量の調合を間違えると「三日酔い」になることも。こんな時に重宝しているのが金沢市に本社がある「8番ラーメン」の酸辣湯麺(サンラータンメン)だ。このラーメンを食べるとなぜか二日酔い独特の不快感や嘔吐感が随分と楽になる。この「効能」を知ったのが2年間の冬。それ以来、二日酔いの日の昼食には職場近くの「8番ラーメン」にお世話になっているという次第。

   この酸辣湯麺が二日酔いに効くのは、酢の酸味とラー油に秘密があるのではないかとにらんでいる。特に、同社が開発したラー油「紅油」はゴマ油と赤唐辛子をベースに桂皮(シナモン)、陳皮(ミカンの皮)、山椒が加えてあるそうだ。 二日酔いの症状がひどいとき、この紅油をさらに3さじ足して食すると、目頭の辺りが熱くなり、額にうっすらと汗がにじんでくる。この瞬間から徐々に爽快感が出てきて、不快感が次第に和らぐというのが二日酔いからの回復のプロセス。お代600円の「漢方」とでも言おうか…。

  この酸辣湯麺は冬限定の季節商品なので、私は密かに「8番ラーメンがこの効能をよく研究して、忘年会や新年会のシーズンを狙って出している季節の戦略商品ではないか」と思っている。

   ところで、8番ラーメンは東南アジアのタイに60店、香港5店、台湾2店、中国の上海と青島にそれぞれ1店、マレーシアに2店の合計71店も店舗展開をしている。本拠地の石川県(65店)を抜いて、アジアでブレイクしているのだ。恐るべし8番ラーメン…。

⇒29日(木)夜・金沢の天気     くもり

☆選挙で終結する政治ドラマ

☆選挙で終結する政治ドラマ

   プロ野球を観戦したいと思い、昨夜、ナゴヤドーム(名古屋市)に出かけた。リーグ首位を狙う中日、対するのは勝率を5割に戻したい横浜だ。名古屋というアウエイ(遠征地)は強烈だ。主催者の発表で3万5400人のほとんどが中日応援である。このドームがどよめいたのが6回表。リードされていた横浜、小池が満塁ホームランを放つなど打者一巡の猛攻で8点を奪う逆転劇だった。「オレ流」落合監督も「長いシーズンは、勝ちゲームをひっくり返されることもある。いちいちとやかく言うことではない」と敗戦のコメントがけさの地元紙で載っていた。肝(はら)の据わった監督の言葉である。

    試合を見ながらふと思った。人々はなぜ野球に熱中しドームを埋めるほど集まるのか、と。私のような、どちらを応援するでもない観戦するだけの「観光客」は回数を重ねない。しかし、ファンにはいでたちからしてチーム名入りのTシャツで、「また応援に来たぞ」と意気込みがある。ファンと観光客の違いは、暴論と言われるかもしれないが、「野球のストーリー」というものが脳裏に刻まれているか否かの違いだろう。中日ファンならば、ベテラン立浪が今季初めてスタメン落ちしたのはなぜか、落合監督は打線にカンフル剤を打ったのか、などとストーリーの筋を読みながら観戦したに違いない。だから面白く、面白いからファンになる。

     今回の総選挙にも関心が高まっているのは、野球と同様、政治のストーリーも面白いからだ。小泉総理という人物に郵政民営化というシナリオがあり、参院での否決、衆院の解散という国民を巻き込んだリアリティーがある。そのシナリオが展開する中で、改革と抵抗勢力の攻防、解散という総理の大立ち回り、その後に刺客や怨念といった人間臭さが脚色され、政治がいつの間にかドラマになった。 しかも、一部の人しから知らないドラマではなく、国民的なドラマなのだ。小泉内閣の発足から4年半、そろそろこのドラマの結末が近づいてきたことを有権者が感じ、クライマックスを自分たちで見極めようとしているのではないか。ちなみにドラマの主演とプロデューサーは小泉総理である。

    だから総選挙というドームに人が「賛成」と「反対」のメガホンを持って大勢の人が集まってきている。そうでも説明しなければ説明できないほど、今回の総選挙は異常に盛り上がっている。どちらの応援団が多いかは、見たところ、ナゴヤドームの雰囲気に近い。あとは想像にお任せする。

⇒21日(日)午前・名古屋の天気  曇り

★「雲を測る男」がまとう布

★「雲を測る男」がまとう布

   去年10月にオープンした「金沢21世紀美術館」の入館者数が、きのう12日で100万人を突破しました。開館1周年で入館者100万人を見込んでいましたが、予想より4ヵ月も早く達成したので、関係はホッと胸をなでおろしているに違いありません。しかも、金沢の市祭「百万石まつり」の期間中に100万人ですから、ゴロ合わせもよくできています。
福を呼ぶ男      きょうは秘蔵の一枚をお見せします。秘蔵と言っても絵画ではありません。上記の写真です。美術館の屋上に据え付けられているヤン・ファーブル(ベルギー)のブロンズ作品「雲を測る男」です。美術館の作品目録によると、作者のファーブルはあの有名な昆虫学者ファン・アンリ・ファーブルのひ孫ということです。作品は映画「アルカトラズの鳥男」(1961年・アメリカ)から着想を得たそうです。サンフランシスコ沖のアルカトラズ島にある監獄に収監された主人公が独房で小鳥を飼ううちに、鳥の難病の薬を開発し鳥の権威となったという実話に基づく話。映画の終わりの場面で「研究の自由を剥奪された時は何をするか」と問いに主人公が答えたセリフが「雲でも測って過ごす」だったことからこの作品名がついたとか。昆虫学者の末裔らしい、知的なタイトルです。

   でも、この作品を実際に見た人なら「ちょっと違う」と気づくでしょう。そう、男が胴から腰にかけて白い布をまとっているのです。普段は身に付けていません。この写真を撮影した去年9月に、台風16号と18号が立て続けにやってきました。何しろ屋上に設置されているので台風で倒れるかもしれないと、まず布を胴体に巻いて、その上にワイヤーを巻いて左右で固定したのです。

   美術館はオープン前の一番あわただしいとき。その姿を、蓑豊(みの・ゆたか)館長が「金太郎さんの腹巻のようでしょう」とユーモアを交えて説明してくれたのが印象的でした。あれから8ヵ月、開館当初は「目標30万人」でした。それがすでに3倍以上にもなり大ブレイク。福を呼んでいるのは案外、屋上に立つ「この男」かもしれません。

⇒13日(月)午前・金沢の天気 晴れ

★財布が小銭で膨らむ理由

★財布が小銭で膨らむ理由

  ひとつの不満を除けば、後は合格点だと思う。北陸鉄道バス(金沢市)のICカード「アイカ」=写真=のことである。当初、戸惑いもあった。昨年の12月、北鉄片町サービスセンターのシャッターが上がる午前9時にさっそく買いに行った。アイカを首かけのヒモつきカードに入れて、バスに乗車。ちょっとドキドキしながら「乗車タッチ」。ところが、数回タッチしても、ピッという受け付け音が出ない。後続の女性から「場所が違いますよ」と指摘され、ハッと気がついた。タッチしていたのは残金表示の黒部分で、オレンジ色のタッチ部分ではなかったのだ。「われながらちょっと緊張したかな」と。これがアイカ初体験だった。
  
  アイカに魅力に感じているのは、整理券を取る必要がなく小銭の準備、両替が不要なこと。これまで、整理券の番号と運賃表示を照らし合わせて小銭を用意しなければならなかった。これが意外と面倒なのだ。でも、アイカでは自動計算されるので、1回の「降車タッチ」でOK。勤め先の金沢大学の生協では、予め現金をカードに入れる「積み増し」もできる。金沢大学は6系統160本(往復)のバスが往来する大きなバスターミナルでもあり、とても便利に感じている。晴れの日は、ウオークとバスを組み合わせれば、とても体にいい。なるべく歩いて、バスに乗る。私の場合、片道「バス25分、歩き15分」の健康法にもなっている。

  冒頭の「ひとつの不満」は、アイカを使い出してから小銭が財布に滞留し始めたことである。小銭を取りすにはある程度、時間的なゆとりがないとできない。これまで、バスの回数券の番号で料金を予測しながら、たとえばバス代が200円なら1円玉を20枚、5円玉を6枚、10円玉15枚という、せせこましいこともやってきた。だから、小銭がはけた。コンビニで使おうと思っても、後ろに人がついたりすると「大の大人が・・・」と言われそうで、なんとなく小銭は数えにくい。いまでは財布が小銭でパンパンに膨らんで、貯金箱になっている。

  「小銭が財布に溜まるのはアイカのせいではない」、北鉄バスの関係者はそう言うだろう。そこはサービスの原点に立ち返って、小銭でもOKのアイカの「積み増し機」を設置してほしい。これは小銭がいらないというアイカの便利さの裏返しのサービスでもある。個人の要望というより利用者のニーズとして理解していただきたい。

⇒7日(火)午前・金沢の天気 晴れ

★兼六園の楽しみ方④

★兼六園の楽しみ方④

カキツバタの花音は聞こえるか
  歴史の長い兼六園にはいくつか噂話もあって、それがまた楽しみの一つにもなります。たとえばこんな光景があります。ちょうど5月中ごろ、カキツバタが咲く曲水の周囲には早朝から市民が三々五々訪れます。かがんで耳に手をあて、じっと眺めている人もいます。地元の人の話では、「カキツバタは夜明けに咲く。その時に、ポッとかすかな音がする」とか。人々はその花の音を聞きにやってくるのです。

  私もかつてその話を聞き、2度か3度早朝に兼六園を訪れてみましたが、花音の確認はできませんでした。そのうち、カキツバタの花音は単なる噂(うわさ)話ではないかと思うようになり脳裏から消えていったのです。一昨年の5月、地元の民放テレビ局がその花音を検証しようと、集音マイクを立てて番組にしました。その時は、聞こえたような聞こえないような、かすかに空気が揺らぐような、そんな微妙な「音」でした。番組のディレクターがたまたま知り合いだったので確認したところ、「カキツバタの花音は、開くときに花弁がずれる音だと推測しマイクを立てましたが、現場では聞こえませんでした」とあっさり。ハイテク機器を持ってしても、実際の音にはならなかったのです。

風流という金沢人の楽しみ方
 でも、よく考えてみれば、早朝に集まる人々にとってはカキツバタの花音がしたか、しなかったは別にして、「兼六園にカキツバタの花音を聞きにいく」と家族に告げて早朝の散歩に出かけます。それだけでいいのです。兼六園がある金沢らしい風流な暮らしぶりの一端だと思えば、この話に角は立ちません。兼六園の楽しみ方を金沢の人は知っているのです。(このシリーズ終わり)

※「兼六園の楽しみ方」は、5月18日付の朝日新聞石川版・広告特集「兼六園への誘い」に執筆した原稿を一部手直しして掲載しました。

⇒18日(水)午前・金沢の天気

☆兼六園の楽しみ方③

☆兼六園の楽しみ方③

兼六園を造営した代々の加賀藩主は植栽の色や形の違いにこだわりました。たとえば桜だけでも20種410本に及びます。一重桜、八重桜、菊桜と花弁の数によって分けられている桜。中でも「国宝級」は曲水の千歳橋近くにある兼六園菊桜(けんろくえんきくざくら)です。そのまま学名にもなっています。
二代目「菊桜」も見事に咲く
 「国宝級」というのも、国の天然記念物に指定されていた初代の兼六園菊桜(樹齢250年)は昭和45年に枯れ、現在あるのは接ぎ木によって生まれた二代目です。二代目であっても、花弁が300枚にもなる生命力、咲き始めから散るまでに3度色を変える華やかさ、そして花が柄ごと散る潔さは変わりなく見事です。
兼六園菊桜

 「唐崎松」の二世はクローン
兼六園の名木、特にマツは樹齢150年を経ているものばかりで、いつかは枯れます。そこで、兼六園の管理する石川県は、県林業試験場と独立行政法人「林木育種センター関西育種場」(岡山・勝央町)に依頼し、松の名木のクローン増殖を行っています。クローンの苗木は接ぎ木方式で育成されていて、この方式だと、もとの木の性質を遺伝的に引き継ぐため、名木の後継種として活用できるそうです。現在増殖に成功しているのは雪吊りで有名な唐崎松や、お花松、根上松、巣ごもり松など。兼六園管理事務所はクローン苗木を「後継木」として仮置きして育て、次の出番を待ちます。出番と言っても数十年から数百年という長いスパンの話です。

⇒17日(火)午前・金沢の天気 

☆兼六園の楽しみ方②

☆兼六園の楽しみ方②

 金沢市にある国の特別名勝・兼六園でもっとも古い建物が茶亭「夕顔亭(ゆうがおてい)」です。この茶室から滝を見ることができるので、別名「滝見の御亭(おちん)」とも呼ばれています。
「利家、居眠りの柱」 

 この夕顔亭の見本となったといわれるのが、京都の茶道・藪内家の「燕庵(えんなん)」という茶亭です。かつて藪内家の若宗匠、藪内紹由氏に取材したことがあり、そこで出た話です。藪内家には、「利家、居眠りの柱」とういエピソードがあるそうです。京の薮内家を訪れた加賀藩祖の前田利家が燕庵に通された時、疲れがたまっていたのか、豪快な気風がそうさせたのか、柱にもたれかかって眠リこけてしまったというのです。こうした逸話が残る燕庵を後に利家の子孫、11代の治脩(はるなが)が1774年に燕庵を模してつくった茶亭がこの夕顔亭です。おそらく、治脩も利家の居眠りの話を聞いたに違いありません。そして、「ご先祖さまはなんと…」と苦笑したことでしょう。

デザインの著作権にまつわる約束事

 この夕顔亭をつくる際、薮内家と加賀藩には一つの約束事がありました。茶器で有名な古田織部が指導してつくったこの由緒ある茶亭を簡単に模倣させる訳にはいかない。そこで、もし燕庵が不慮の事故で焼失した場合は「京に戻す」という条件で建築が許された、との言い伝えです。知的財産権の観点からいうと、広い意味での「使用権」だけを加賀藩に貸与したのです。もちろん、契約者の前田ファミリーは明治維新後この夕顔亭を手放し、今では石川県の所有になっていますので、その約束事は消滅したといえるでしょう。

 知的財産権という法律は当時なかったにせよ、「知財を守る」という精神は脈々と日本の歴史の中に生きていたということでしょう。この苔むした古い茶亭にはそんな現代に通じるエピソードがあったのです。 

⇒13日(金)午前・金沢の天気 

★兼六園の楽しみ方①

★兼六園の楽しみ方①

 金沢の兼六園は意外にも雨で映える庭だと思っています。散歩しながらそのように感じることがよくあります。ついでに私なりの兼六園の楽しみ方をいくつか紹介します。

  大人の時間が流れる「時雨亭」

 兼六園で大人の作法が楽しめるのが茶室「時雨(しぐれ)亭」です。ここで味わう抹茶は心が和みます。茶席の静寂、広がる庭園、洗練された作法、季節の和菓子など「完成された文化」を感じさせます。最近、和装の女性からお辞儀をしてもらったことはありますか…。これだけでも感動ものです。大人の時間が流れます。

 次は、この茶室を出て銅像を眺めましょう。実はこの銅像は世界的に有名です。世界で最もばかばかしいと認められる業績に贈られる「イグ・ノーベル賞」(米ハーバード大学制定)の2003年度授賞者が金沢大学の広瀬幸雄教授です。「金沢市内のブロンズ像がハトに人気のない理由の化学的考察」のテーマで化学賞を受賞。この研究テーマとなった「金沢市内のブロンズ像」が兼六園の日本武尊(やまとたけるのみこと)の銅像なのです。兼六園の周辺にはカラスやハトが多いのに、なぜ日本武尊にはこれらの鳥が止まってないのだろう、なぜカラスやハトのフンの汚れがないのだろうと、広瀬氏は兼六園を散歩しながら考えたそうです。平成の改修工事の際、銅像の成分を調べたところ微量のヒ素が含まれており、この「ヒ素のにおい」を鳥が嫌うという「世界的な発見」になったというわけです。

 日本武尊を見上げてみよう  
  
 兼六園に詳しい下郷稔さん(元兼六園管理事務所長)の話では、この改修の際に「巨大なブロンズ像は兼六園にふさわしくない、園外に移設を検討しては」との意見が文化庁からあったものの、下郷さんたちが「慰霊碑には歴史的な意味があり、台座の石積みにも価値がある」と断ったそうです。結果的に、この銅像に思わぬ価値が生まれ、残してよかったというわけです。兼六園にお立ち寄りの際は、本当にカラスやハトが止まっていないか、検証してみてください。これが兼六園の私流の楽しみ方です・・・。

→12日(木)午後・金沢の天気 

★仕掛け人がいる美術館

★仕掛け人がいる美術館

 オープンから7ヵ月、金沢市の「金沢21世紀美術館」がゴールデンウイーク期間中に80万人に達した。当初、年間の予想入館者数30万人と市は公言していたので、その数字を軽くクリアして初年度で3年分以上の数字を稼ぐ計算になりそう。
宇宙船のような外観 

 では、なぜこれだけの人が入るのか分析してみる。まず、壁面総ガラス張りの宇宙船のようなデザインの建物そのものがアートであり、話題性がある。この建物で、建築家の妹島和世さんと西沢立衛さんが去年9月、ベネチアビエンナーレ第9回国際建築展で金獅子賞を獲得している。その評価を受けて、最近でも、一般向けの建築・デザイン誌「カーサブルータス」や専門誌「建築技術」の表紙を飾った。

 もう一つの大きな理由が「仕掛け人」の存在だろう。館長の蓑(みの)豊さん。金沢生まれ、慶應義塾大学(美学美術史)、米国ハーバード大学大学院を修了し、シカゴ美術館東洋部長などを歴任、現在、全国美術館会議会長も務めている。その華麗な経歴に似合わず、話し振りは「人懐っこいオヤジさん」という感じ。アイデアやユーモアがポンポンと飛び出す。たとえば、館内にはこの建物に工事にかかわった2万人の名前を金属板に刻んで掲げてある。「その家族や兄弟、子孫が名前を見に足を運んでくれる。いいアイデアでしょう」とニヤリ。過日、蓑さんから直接聞いた話である。そうした「にぎわい」を創出するアイデアと実績が買われ、この4月から金沢市助役に抜擢された。その手腕に期待したいところ。

 ちなみに、この21世紀美術館には総工費113億円がつぎ込まれた。収入は年1億5千万円と見込むものの、管理運営費は年7億4千万円を予想、差額の5億9千万円は市の一般財源から毎年補填していくことになる。

⇒8日(日)午前・金沢の天気