⇒トレンド探査

☆続・夏安居の「どぶろく」

☆続・夏安居の「どぶろく」

   きょう(24日)日中の気温は33度、昨日に比べ2度下がった。空に雲が時折かかり、それが猛暑を和らげてくれている。雲がこれほど有難いと思ったことはない。前回のブログで「どぶろく」を話題を取り上げたが、読んだ東京の知人からさっそくメールが入っていた。「田の神さまのコラーゲンたっぷりの顔だちってどんなものか。画像を見せてほしい」と。
  
   話は繰り返しになるが、尾関健二氏(金沢工業大学バイオ・化学部教授)のどぶろくに関する講演をブログで紹介した。日本酒の旨味成分であるタンパク質「α-エチル-D-グルコシド(α-EG)」が含まれ、皮膚の真皮層のコラーゲン密度が増加する作用がある。また、甘酒には消化器官内で消化と吸収がされにくい、難消化性のタンパク質「プロラミン」が含まれ、食物繊維のような物質として機能するため、コレステロールの排出促進や便秘改善、肥満抑制の作用がある。どぶろくには日本酒と甘酒の2つの効果が兼ね備わっていると興味深い講演だった。

   この講演を聞いて真っ先にイメージしたのが、能登町柳田植物公園にある古民家「合鹿庵」の掛け軸に描かれている、農耕儀礼あえのこと神事(2009年ユネスコ無形文化遺産登録)の「田の神さま」だった。田の神さまは甘酒(どぶろく)が好みとの言い伝えがあり、神事には甘酒が供えられる。掛け軸の田の神さまはもちろん想像図なのだが、ふっくらツヤツヤした顔だちが印象的だ。そこで「コラーゲンたっぷりの顔だち」と書いた。

    田の神さまには別の言い伝えもある。田の神さまは各農家の田んぼに宿る神であり、それぞれの農家によって田の神さまにまつわる言い伝えが異なる。共通しているのが、目が不自由なことだ。働き過ぎで眼精疲労がたたって失明した、あるいは稲穂でうっかり目を突いてしまったと諸説ある。目が不自由であるがゆえに、それぞれの農家の人たちは丁寧に接する。座敷に案内する際にも介添えをし、前に供えた料理を一つ一つ口頭で説明する。「もてなし」を演じる家の主(あるじ)たちは、自らが目を不自由だと想定し、どうすれば田の神さまに満足していただけるのだろうかとイマジネーションを膨らませる。

    ある農家の主はこんなことを話していたのを思い出した。「もっとおいしい甘酒を差し上げたいのだが」と。現在は「甘酒」を供しているが、明治ごろまでは各家庭で造っていた「どぶろく」を供していたそうだ。ところが、明治政府は国家財源の一つとして酒造税を定め、日清や日露といった戦争のたびに増税を繰り返し、並行してどぶろくの自家醸造を禁止した。これがきっかけで家庭におけるどぶろく文化は廃れていった。

        これは思い付きだが、「どぶろく特区」(中能登町)で製造されたどぶろくを能登町のあえのこと農家に持参してはどうか。田の神さまは「どぶろく飲むのは久しぶりじゃ」と喜んでくださるのではないか、と。

⇒24日(火)午後・金沢の天気      はれ時々くもり

★夏安居の「どぶろく」

★夏安居の「どぶろく」

   昨日(21日)も昼間の外気温が35度だった。連日酷暑が続くと「夏安居(げあんご)」という言葉を思い出す。もともと仏教用語で、夏場は動植物たちの営みが盛んな季節で屋外では蚊やアブに刺されたりするので、寺院内で修行をするという意味のようだ。現代風に言えば、酷暑による熱中症が怖いので、なるべく屋外は避け、家のエアコンで涼んでビデオか読書で過ごす。「夏安居」は含蓄のある素敵な言葉だと思う。講演会の案内をいただいたので、冷房の効いた部屋で勉強をしようと出掛けた。講演のタイトルは「どぶろく・甘酒の効能」。

   能登半島の中ほどに位置する中能登町には、神酒として「どぶろく」の製造が国から許可されている全国30社のうち3社(天日陰比咩神社、能登比咩神社、能登部神社)が同町にあり、今でも神事にはどぶろくを造っている。天日陰比咩神社などは延喜式内の古社でもあり、酒造りの長い歴史を有する。能登半島は国連の食糧農業機関(FAO)から「世界農業遺産」(GIAHS)に認定されているが、まさに稲作と神への感謝の祈り、酒造りの三位一体の原点がここにあるのではないか、この地を訪問するたびにそう感じる。2014年に町が「どぶろく特区」に認定されると、どぶろくの醸造免許を取得し、どぶろく造りを始める稲作農家が徐々に増えてきた。農家や神社関係者を中心に「どぶろく研究会」が結成され、商品開発などに活発に取り組んでいる。講演の案内は研究会からの招待だった。

   講師の尾関健二氏(金沢工業大学バイオ・化学部教授)の話は実証研究によるデータの積み上げで酒と美肌の関係性に迫るものだった。尾関氏は、どぶろくなど日本酒の旨味成分であるタンパク質「α-エチル-D-グルコシド(α-EG)」を配合したハンドクリームを腕に塗る実験では、皮膚の真皮層のコラーゲン密度が増加し、日本酒を飲んだ場合でも同じような効果が得られたと解説。また、甘酒からは消化器官内で消化と吸収がされにくい、難消化性のタンパク質「プロラミン」が含まれ、食物繊維のような物質として機能するため、コレステロールの排出促進や便秘改善、肥満抑制の作用がある、と。そして、どぶろくには日本酒と甘酒のこうした成分が双方含まれていると理路整然とした解説だった。

   この講演を聞いて、ある掛軸の絵を思い出した。能登町柳田植物公園にある古民家「合鹿庵」の掛け軸には、農耕儀礼あえのこと神事(2009年ユネスコ無形文化遺産登録)の「田の神さま」が描かれている。もちろん想像図なのだが、ふっくらでツヤツヤした顔だちが印象的だ。田の神さまは甘酒(どぶろく)が好みとの言い伝えが昔からある。こうしたコラーゲンたっぷりの顔だち。爽快な笑顔は便秘からの解放感なのかもしれない。尾関氏の研究成果がそのまま「田の神さま」に表現されていると直感した。

   前列に座っていたので気付かなかったが、講演会場には若い女性やカップル、ファミリィが目立った。主催者の話では150人。ひょっとして「どぶろくブーム」が起こるかもしれない。帰り際、会場でどぶろくが販売されていたのでつい2本買ってしまった。もちろんこの身で「実証実験」するためだ。

⇒22日(日)午前・金沢の天気    はれ

☆日本型移民政策

☆日本型移民政策

    最近金沢でも外国人の働き手が増えている。先日、近所の「auショップ」に行くと、「イラッシャイマセ」と声をかけてきた男性スタッフがいた。聞けばネパール人でこの4月から社員として働いている。英語が堪能で「いろいろなお客さん(外個人)に対応しています」と。その後も自転車に乗って近所を走る姿をたまに見かける。近くの「ローソン」でもネパール人の女性がレジを担当している。「アリス学園(金沢にある日本語学校)で特訓中です」と。外国人労働者が身の回りにいることは日常の光景になりつつある。

    政府は先日(5日)の経済財政諮問会議で、経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案を公表した。各紙に目を通すと「日本型移民政策」の構図が浮かんでくる。特徴的なのは、新たな在留資格だ。これまで最長5年の「技能実習」を終えた人や、一定の語学力や技能を持った人が対象で、最長で5年間滞在できる。主に5分野で、農業、介護、建設、宿泊関連、造船が想定されている。家族の帯同は基本的には認めていないが、期間中に専門性が認められた場合は在留期間の上限を取り除き、家族帯同を認めることも検討するとしている。5分野で2025年までに50万人の就業を想定している。

    率直にこの政府方針は有効なのだろうか。25年までに外国人労働者を50万人受け入れると言っても、まったく不足している。何しろ、日本の労働人口は毎年30-40万人減少している。数百万の規模で外国人労働者を受け入れる準備をしなけらば日本の経済は成り立たないではないかと推測している。

    実はもう一つの「日本型移民政策」が動いている。政府は、2020年を目途に留学生受入れ30万人を目指す「留学生30万人計画」を外務省や文部科学省に指示して推進している。たとえば、金沢大学でも2023年までに外国人留学生2200人の受け入れを目指している。日本の大学で専門性を身につけた留学生に日本の企業で就職してもらう取り組みも並行して行われている。2016年の統計だが、留学生による日本企業への就職は1万9435人で過去最高となった(法務省入国管理局まとめ)。法務省は留学の在留資格を発行していて、留学生がさらに国内の企業へ就職する場合は在留資格の変更許可を申請することになるので数値として把握している。

   日本企業に就職した留学生の国籍・地域別の上位は、中国1万1039人と圧倒的に多く、ベトナム2488人、韓国1422人、ネパール1167人、台湾689人とアジア諸国が95%を占める。主な職務内容は「翻訳・通訳」7515人、「販売・営業」4759人、「海外業務」3103人、「技術開発(情報処理分野)」1990人など。

        確かに、留学生の中でも日本での就職の期待度は高い。昨年6月に金沢市で開催された留学生と地場企業による交流会に120人の留学生が参加した=写真=。社員52人のうち28人が外国人という繊維会社(インテリア、スポーツ衣料)では生産管理と品質管理、営業はベトナムや中国人スタッフが担当し、金沢本社とアジアの生産工場を往復する。留学生からは働き方、休日の過ごし方などに質問が相次いだ。

   海外に生産拠点を置く企業だけでなく、国内のサービス産業やITベンチャー企業も外国人採用枠を増やしている。少子高齢化の日本経済の行方は外国人動労者の確保にかかっている。ドイツではすでに人口の15%程度の外国人労働者を受け入れている。

⇒8日(金)朝・金沢の天気     はれ

★110年「旅するワイン」

★110年「旅するワイン」

     昨夜(20日)金沢のワイン・バーに出かけた。ソムリエで店のマスターが「マデイラワインはご存知ですか」とカウンター越しに声をかけてきた。「いや、マデイラは地名ですか。どこのワインなの」と尋ねると、「ポルトガルのリスボンから1000㌔のマデイラという島なんですが、ソムリエだったら一度は行ってみたい、伝説のワインの島なんですよ」と。

     そこまで聞くと飲んでみたくなった。「10年ものでいいですか」とマスター。アルコールは濃い感じだが口当たりがいい。「この島のワインは酒精強化ワインと言うんです」。マスターの話を要約する。イベリア半島など気温が高く温度管理が難しい地域では、ワインの酸化や腐敗防止など保存性を高めるためにさまざまな工夫が歴史的になされてきた。酒精強化は、液中のアルコール分が一定量を超えると酵母が働かなくなり、アルコール発酵による糖の分解が止まる現象を利用し、ブランデーなどを混ぜる。通常のワインのアルコール度数が10-14度なのに対し、酒精強化ワインは18度前後になる。「それでこのワイン、アルコールが少々強めなんだ」と妙に納得する。

   「保存が効くマデイラワインは大航海時代に重宝され、旅するワインとも言われたようです」とマスターは歴史の話を持ち出した。15世紀ごろからポルトガル、スペイン、イギリスなどからアフリカ、アジア、そしてアメリカ大陸への航海が始まる。保存性が良い酒精強化ワインは大航海の必需品となった。マデイラワインをもっとも有名にしたのは1776年、後に大統領となるトーマス・ジェファーソンが起草したアメリカ独立宣言が大陸会議で承認され、祝った酒がマデイラワインだったとの伝説だ。

    「ところで、保存が長いと言うけど、一体どのくらい保存が効くの、20、30年くらいなの」と突っ込みを入れた。するとマスターは「それでは出しましょうか」と奥から緑色のボトルを1本持ってきて、カウンターに置いた=写真=。「D’OLIVEIRAS」(ドリヴェイラ)という1850年創業のワイナリー。「BOAL」(ブアル)というブドウ品種。そして「1908」とある。「えっ、110年もののワインなの」と驚いた。持っていた手帳で調べると明治41年。まさにオールド・ヴィンテージものだ。

    「マスター、これ一杯いただけませんか」。少し声の震えを感じながらお願いした。澄んだ琥珀色、中ぐらいの甘口だ。古民家に入ったときに感じる古木の香りと芳醇な味わい、そして時空を超えた伝説の深味を楽しんだ。「マスター、冥土の土産話ができましたよ。ありがとう」と言って店を出た。

⇒21日(水)朝・金沢の天気   くもり

★北陸新幹線は銀世界を快走する

★北陸新幹線は銀世界を快走する

              この冬最強の寒波だそうだ。金沢など北陸では記録的な大雪になっている。きょうから大学入試センター試験が2日間の日程で始まったが、石川県内7つの大学に設けられた11の会場では受験生たちが足元に気にしながら試験会場に向かったことだろう。「滑らないように気をつけて」と。昼のテレビニュースによると、大雪による在来線列車の遅れで受験生4人が時間をずらし、別の部屋で試験を受けるというトラブルがあったが、そのほか目立った問題は起きなかったようだ。

     それにしても「三八(さんぱち)豪雪」(昭和38年、1963年)を思わせる降り方だ。きょう13日の夕方で能登半島の先端・珠洲市で69㌢、金沢で57㌢の積雪となっている。正直、自宅前の「雪すかし」の作業はきりがない。どんどん積もって来る。交通機関にも影響が出ていて、JR北陸線では午後6時現在、特急列車24本と普通列車29本が運休したほか、小松空港発着の便でも合わせて34便が欠航となっている。

     大雪による交通インフラへの影響が出る中、快走しているのが北陸新幹線だ。きのう12日、大雪の中、東京へ日帰り出張に出かけた。出発は午前7時48分の「かがやき」。10分遅れでの出発となったが、長野までは一面の銀世界を行き、大宮では青空だった。北陸新幹線のどこが雪に強いのか。それはJR西日本とJR東日本と共同開発した新型車両「W7系」「E7系」の先頭車両に「スノープラウ」と呼ばれる雪かきが付いているからだ。また、線路脇に積もった雪を掘り下げて除雪できる機能を備えた新型の除雪作業車23両を配備している。

     帰りもほぼ定刻で東京駅から金沢駅に着いた。雪の季節、こんなに頼れる交通機関は他にない。北陸新幹線の価値を見直した。(※写真は、12日午前6時50分に撮影したJR金沢駅前の雪景色)

⇒13日(土)夜・金沢の天気    ゆき              

☆「2018」を読む-下

☆「2018」を読む-下

   「ことしも自虐ネタできたか」、くすくすと笑いながら読んでしまった。3日付の新聞朝刊を楽しみというほどではないが、少し意識して開いた。期待を裏切らない全面広告だった。「謹んで新年のお詫びを申し上げます。」を最上段に掲げ、以下「『早慶近』じゃなくなったことに関するお詫び」「2018年問題に関するお詫び」「近大マグロに関するお詫び」「インスタ映え広告に関するお詫び」「ド派手な入学式に関するお詫び」などと「お詫び」記事のオンパレード。最下段で「今年も盛大にやらかすんで、先にお詫びしときます。近畿大学」と結んでいる。きょうは同大学の願書受付の開始日でもある。

     自虐ネタの全面広告、「近大」が問うていること

    近畿大学の新年広告について大学の職場で話題になったのは昨年1月のこと。「これは、自虐ネタですよ」。先輩教授が3日付の全国紙の広告を見て笑った。『早慶近』の特大文字とマグロの頭の写真が掲載された全面カラーの広告だった。読者が普通に読めば、「早稲田、慶応、そして近大」。これまでは「早慶上智」だったが、最近は上智にとって代わって近大が早稲田、慶応と並んだ、と言いたいのだろうと解釈した。ところが最後に下段の右隅で「早慶近」の意味を披露している。「みなさまに早々に慶びが近づきますように」。この広告の練り方は深い、と印象に残ったものだ。

    ところが、今年は昨年のネタをさらにこね回し、「『早慶近』じゃなくなったことに関するお詫び」と題して、「早慶近中東立法明上」をキャッチコピ-にしている。「昨年1月3日に掲載した『早慶近』というキャッチコピーの新聞広告によって、『100年早い』とか言われて世間をお騒がせし、っていうか一部炎上したことをお詫び申し上げます」と言い訳しつつ、しっかりと「早慶近」と先頭グループを強調している。「ちなみにこの並び、語呂よくしてみただけで、深い意味はありません。念のため」とあくまでもランキングではなく語呂合わせと言い訳しているが、意図は見え見えだ。ちなみに、近畿大学のランキングはイギリスの教育専門誌「Times Higher Education」が出してる「THE世界大学ランキング」で1000位に入った私立総合大学のことを指す。

    確かに、近畿大学の経営戦略は突出している。少子化で18歳人口が減少する中、近畿大学は2005年に5万人だった入試の志願者総数を2017年には14万人に伸ばし、早稲田大学や明治大学を抜いて4年連続で全国1位となっている。昨年4月には入学定員を920人も増やしている。また、32年間かけてクロマグロの完全養殖に成功し、「近大マグロ」はすでにブロンド化されて寿司屋でもメニューになっている。水産資源の持続可能な保全という意味では国際的にもっと評価されていい。経営面では脂が乗りに乗っている。

    2030年以降の18歳人口は100万人を切る。私学ランキングの旧式なパラダイムは「早慶上智」「関関同立」だったが、それだけはでもう大学としの経営は存続が難しくなることは目に見えている。自虐ネタの全面広告ながら、近畿大学はそのことを問うているに違いない。耳を澄ませば高笑いが聞こえてくるようだ。「早慶上智のみなさん、関関同立のみなさん、あと10年もすればあんたがたの経営はどうなりますやろか。気つけなはれ。オーッホッホッ」

⇒3日(水)午前・金沢の天気   くもりときどきゆき

★「2018」を読む-中

★「2018」を読む-中

    前回(1日付)の続き。昨年12月7日に女性宮司が実弟に刺殺された東京・富岡八幡宮が気になっていた。縁起でもない事件で、元旦の初詣客は激減だろうと。ネットニュースではそうでもないらしい。1日午前0時の直前には参拝客が次々と訪れ、本殿まで行列ができたようだ。事件と神様は別なのかもしれない。

     世相を映す賀状、「戌笑い」で乗り切る

    元日に多くの年賀状をいただいた。旧知の方からや最近懇意にさせていただいている方まで、賀状をいただくとうれしいものだ。礼を失することがないように初めて賀状をいただいた方にはなるべく早く出すように心がけている。それにしても、賀状は世相を反映するものだと感じている。

    「小池にハマって さぁ大変! 化かされた後始末も大変です」と賀状を送ってくれたのは東京に住む出版社の友人。世論調査(12月、産経・FNN合同調査)では、小池東京都知事の支持率が19.0%で過去最低を記録。衆院解散前の9月には66.4%に達していた高支持率はもはや崩れ落ちている。小池氏が国政よりも都知事の仕事を優先すべきなのに、先の総選挙で希望の党を立ち上げ、「排除」発言で墓穴を掘ってしまった。都民とすれば信頼できなくなったのだろう。「夢もチボーもない」(©東京ぽん太)年になりそうです!? と結んでいる。切れ味の鋭いユーモア。

    新聞社の関係者から。「新聞販売、厳しさが増していますが、終わりが迫っているのではなく、未来が始まってると強く思います」と。ネットの時代に既存の新聞・テレビの経営は厳しい。しかし、新聞というメディアはしぶとい、といつも思っている。だてに百年の歴史を背負ってはいない。関東大震災、先の大戦をくぐり抜いたメディアだ。どのような「未来」を描いているのか、今度お会いしたときに尋ねてみたい。

    能登半島は少子高齢化が急激に進んでいる。能登の方から。「百歳を越えた母と 古希に向かう妻 古希を疾うに過ぎた私 計二五〇歳に 近づきつつある老々家族となりました こうなれば三百歳超えをを狙おうかな・・・」。振り向く老犬のイラストが描かれ微笑ましい。気が若い。老を払う。

    昨年還暦の年に心筋梗塞で手術を経験したという知人から。「・・・カテーテル手術の最中に、モニター越しに健気に頑張って拍動する我が心臓君の動きを見て、・・・よくぞ60年も黙って、いい加減な私のために働いてくれたかと。この思いの向きは心配をかけた家族や友人、部下の皆にも同じでした。新しい年は感謝の気持ちを忘れずに、大切に過ごして参りたいと思います」。周囲への感謝の想いが詰まった賀状につい目が潤む。

    漆芸の人間国宝の方からいただた賀状。「『髹漆國技也』 正木直彦先生の揮毫した扁額が輪島塗資料館に掲げられてをります。漆芸に係はる一人一人が肝に銘じて大切にしなければいけない言葉だと思う」。髹漆(きゅうしつ)は漆を素地に塗ること。漆器は「japan」。古来から漆芸はこの国の生きる技だ。しかし、漆器業界は売上高が激減していて離職も相次ぐという。原点を見つめ精進を重ねることで、次なる可能性を見出したいとの決意にも読める。ひたすら漆の仕事に向き合う尊い姿が目に浮かぶ。

    メールで新年の言葉も。学生から「去年は能登ツアーや馬緤のキリコ祭りなど、大変お世話になりました。・・・著書『実装的ブログ論』、拝読させていただきました。雑草と戦うドンキホーテの話が面白かったです」。拙書をさっそく購読。こちらこそ感謝。

    投資家のホームページを読むと今年は「戌(いぬ)笑い」の年に当たり、株価が上昇するようだ。それにあやかって今年は笑いで乗り切りたいものだ。

⇒2日(火)朝・金沢の天気    ゆき

☆「2018」を読む-上

☆「2018」を読む-上

  昨年のニュースは暗いものばかりが目立った。神奈川県座間市の27歳の男が住むアパートで女性8人と男性1人の9人の遺体が見つかった事件(10月31日)など。そしてダメ押しは大阪府寝屋川市の自宅で33歳の娘を自宅プレハブ小屋に17年余りも監禁して死亡させ、遺体を遺棄していた事件(12月23日)だ。なぜこうも殺人事件といった暗いニュースが世の中に蔓延するようになったのか、明るいニュースが見当たらないのか。

     暗いニュースばかり、癒されるニュースはどこにある

    警察庁が平成28年7月にまとめた「犯罪情勢」によると、過去10年の殺人事件の認知件数は平成17年が1338件で以降が減少傾向にあり、同27年は戦後最少の933件だった。件数は戦後最少に減っているのに、マスメディア(新聞やテレビなど)やインターネットでは殺人事件ばかりが目立つ。  

   その原因はニュースの価値基準が最近大きく変化しているからではないかと感じている。ネットでニュースを見るようになり、情報の量が多くなったものの、その情報の価値基準は「事件・事故」が優先されているのではないかと考える。マスメディアでは地域で起きた怨恨による殺人事件などはローカルニュースとして扱われ、よほど社会性がない限り全国ニュースとして取り上げられることはなかった。ところが、ネットだとマスメディアのホームページに上がっているローカルニュースもすぐに拡散してしまう。事件・事故は拡散のスピードが速い。つまり、ネット時代になり、マスメディアのニュースの価値基準は通用しなくなったのだ。

   ところが、心が癒されるニュースというのは地域に住む人たちが情報共有するものである。たとえば、昨日(12月31日)の地方紙を読むと、石川県羽咋市で日中朱鷺保護協会名誉会長の村本義雄さん92歳のもとに中国や佐渡からトキのカレンダーが届いたという記事が掲載されている。この記事を読んで、トキの保護活動を一途に続けてきた人柄が見えて微笑ましいと感じる地域の人は多いと思う。でも、この記事はネットニュースで拡散することはないだろう。長年トキ保護に努力している村本さんという人物はある意味で「地域のアイコン」であり、記事を読んでの微笑ましさは「地域の共有共感」でもある。

   先に述べたように、事件・事故というのはこうした「地域の共有共感」とはまったく無関係に、殺人事件であれば、ローカル、全国を問わずネットを通じて全国に流される。結果として、スマホなどと通して毎日のように多くの殺人事件を目にすることになる。しかし、そのニュースは人々の脳裏からすぐに消えていく。暗いニュースというのは心理的に忘れたいものだ。

   逆に言えば、目にしたくもない殺人事件など暗く過剰な情報をどうしたら避けることができるのだろうか。ネットも新聞もテレビも見なければいい、ただそれだけなのだが、やはり心が癒されるニュースには触れたい。ネット時代で新聞の部数減など経営危機が叫ばれているが、ひょっとして新聞やローカルテレビ局が生き残る可能性はコンテンツ戦略にあるのではないだろうか。

⇒1日(月)朝・金沢の天気     くもり

☆「ラニーニャ」冬将軍来る

☆「ラニーニャ」冬将軍来る

    能登半島の先端、珠洲市ではこんな観天望気の言い伝えがある。「ユズと柿が豊作の秋は冬が大雪だ」と。確かに今年秋は柿が豊作だ。どこも枝が折れそうなくらいに実っていた。ということは、この冬は大雪なのか、と思っていたところ、気象庁が太平洋の南米ペルー沖の監視水域で海面水温が低い状態が続き、世界的な異常気象の原因となる「ラニーニャ現象」が発生したとみられると監視速報を発表した(今月11日)。

    これは大雪になるぞ、と予感していたが、きょう(17日)北陸は大雪に見舞われた。午前、「のと里山海道」を車で走行したときに、路面が完全に雪に覆われていた。海岸沿いの道路なのだが、対馬暖流の影響でめったに雪は積もらない。点々と4台の乗用車がスリップ事故などを起こしていた。深夜から降り始め、金沢周辺で正午現在で30㌢だ。商店街の街路樹も樹氷と化していた=写真、車内から撮影=。

    帰宅後、さっそく「雪すかし」をした。玄関前の側溝に道路の雪をスコップで落とし込んでいく。それでも、スペースが足りないので、コンクート塀付近に雪を積み上げていく。1時間余りで作業を終えた。でも、雪はしんしんと降っている。この先、どこまで積もるのか。

           気象庁のホームページによると、ラニーニャ現象が発生すると、日本では上空で偏西風が蛇行して寒気が流れ込みやすく冬型の気圧配置が強まり、冬の気温が平年より低くなる傾向があるという。「平成18年(2006)豪雪」では前年の12月から1月にかけて強い冬型の気圧配置が続き、日本海側で記録的な大雪となった、とある。この下りを見て、大雪の記憶が蘇った。2006年1月14日からイタリアのフィレンツェに出張したが、その前日13日が大雪。自宅の屋根雪を夕方から夜中までかかって降ろし、バテ気味で小松空港に向かったことを覚えている。あの昭和38年(1963)の「三八豪雪」もラニーニャ現象と言われている。幼いころの記憶だが、自宅前に落ちた屋根雪で「かまくら」(雪洞)を初めてつくった。

    この2つの思い出だけでも、ラニーニャ現象が本格化するこれからの白い世界に身震いする。「ラニーニャ」冬将軍、いよいよ来たる。来るなら来い。こちらも戦闘態勢だ。「冬来たりなば、春遠からじ」(「If Winter comes, can Spring be far behind ?」イギリスの詩人シェリー「西風に寄せる歌」)という言葉があるではないか。

⇒17日(日)夜・金沢の天気    ゆき

☆林業のイメ-ジが変わる

☆林業のイメ-ジが変わる

   これまでの林業のイメージがガラリと変わった。山林での木の切り出しは、林業機械 ハーベスターで立木の伐倒、枝払い、玉切り(規定の寸法に切断)、集積がその場で行われる。まさに1台4役なのである。これまで伐採や枝払いはキコリの職人技とばかり思っていた。林業機械を操縦するのは人だが、まるで山で働くロボットの光景だ。

   昨日(1日)金沢大学が実施している社会人の人材養成事業「能登里山里海マイスター育成プログラム」で、森林行政や木材加工に携わる受講生たちがチームで開催した「林業ワークショップ」があり、仲間内の勉強会なのだが、参加させてもらった。開催趣旨は「林業の現場でも機械化が進み、安全性と効率に優れた伐採・搬出用の様々な機械が活躍しているが、森林所有者や住民が目にする機会はこれまでほとんど無かった。知られざる木材生産のプロセスを間近で体験できるワークショップ」。

    午前9時、能登空港に集合し乗り合いで山林に入った。アテ(能登ヒバ)とスギの50-60年の人工林だ。ハーベスター=写真=が機敏に動いている。立木の伐倒、枝払い、玉切りなど造材を担うのはハーベスターヘッド。枝払いなどは1秒で5㍍もアッという間に。ディーゼルエンジンに直結した発電機で発電し、発電機から得る電力でモーターを駆動させる。燃料のこと気になって、休憩に入った操縦士に質問すると。1回の給油(軽油)で160㍑、2日でなくなるので1日当たり80㍑の計算だ。現地を案内してくれた能登の林業者は「道づくりは山づくりなんです。道づくりによって、山の資産価値も高まるんです」と。なるほど、その道づくり(森林作業道)も別の重機でこなしていく。山にマシーンは欠かせない。

   丸太切りで造材された木材は木材市場に運ぶのではなく、渡場(ドバ)と呼ばれる近くに設置した集積場に運搬車で運ぶ。ここに買い付け業者が来て、売買が始まる。いわゆる「山の地産地消」だ。トレ-サビリティでもある。これまで、ひと山いくらで売買が成立して、伐採したものは製材所に運ばれていたが、使える木と使えない木があった。そこで、現地で交渉して必要な木材を選んで交渉する。チップ材、あるいはベニヤ材、それぞれ用途に応じて業者が買い付けにくる。

   もう一つ、林業のイメージを変える光景があった。女性が関わっていることだ。この林業者は女性を「林業コーディネーター」として女性を採用している。5年前に法律が改正されて、森林所有者、あるいは森林の経営の委託を受けた業者が森林経営計画書を市町村などに提出して、伐採や造材、出荷など行う。その面積は30㌶以上であり、複数の山林の所有者に林材の切り出し、つまり山の資産価値を説明して事業計画に参加してもらう必要がある。

   とは言え、能登の山は「木材生産林として使えるのは3分の1しかないのが現状です」とSさん。3分の2が使えない理由はいくつかある。たとえば、道をつけるにしても山の境界が分からない、所有者が不明というケースが多い。また、能登の場合は農業用水として使う「ため池」などの水源近くで作業をすると、水が濁るの歓迎されないということもままあるようだ。

   いくつかハードルを超えて森林経営計画書を提出して認可されれば、所得税や相続税の優遇、金融機関の融資、森林環境保全直接支援事業(造林補助)などの補助金など得て、着手ができる。Sさんは「手入れされた森林を次世代につなぐこと。木材の価値を高め、利益を山に還元することを丁寧に説明すると、山持ちの方は納得してくれます」と微笑んだ。

⇒2日(木)朝・金沢の天気   はれ