⇒トレンド探査

★能登にある「グローバル過疎地」

★能登にある「グローバル過疎地」

   能登半島の里山の一角を自身は勝手に「グローバル過疎地」と紹介している。安倍前総理も2019年1月の通常国会の施政方針演説でこう紹介している。「田植え、稲刈り。石川県能登町にある50軒ほどの農家民宿には、直近で1万3千人を超える観光客が訪れました。アジアの国々に加え、アメリカ、フランス、イタリア、イスラエルなど、20ヵ国以上から外国人観光客も集まります」。観光による地方創生の成功事例として紹介されたのは能登町の農家民宿で組織する「春蘭(しゅんらん)の里」だ。

   春蘭の里にインバウンド観光客が訪れるきっかけとなったのは、2011年11月にイギリスBBC放送の番組「ワールドチャレンジ」にエントリーしたのがきっかけだった。世界の草の根活動を表彰する同番組には毎年600以上のプロジェクトの応募がある。2011年に「春蘭の里 持続可能な田舎のコミュニティ~日本~」を掲げてエントリーし、最終選考(12組)に残ったものの、惜しくも4位だった。が、投票を呼びかけるBBCのこの番組で12組の取り組みが繰り返し放送されたことで知名度が上がり、国内外の観光業者から注目されるきっかけとなった。

   春蘭の里がBBCにエントリーしたのは、突飛な話ではない。2010年10月、名古屋市で開催された生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の公認エクスカーション(石川コース)では、世界17ヵ国の研究者や環境NGOメンバーら50人が参加し、春蘭の里でワークショップを開催している。そして2011年6月、北京でのFAO国連食糧農業機関の会議で「能登の里山里海」が世界農業遺産(GIAHS)に認定され、能登を世界に売り込むチャンスが訪れていた。春蘭の里はこの機会を逃さず、「ワールドチャレンジ」にエントリーにした。

   昨年9月に春蘭の里のリーダー、多田喜一郎氏を大学の研修で訪ねた。新型コロナウイルスのパンデミックの影響でインバウンド観光客は鳴りを潜めているが、それまでは毎年20ヵ国ほどから2000人余りを受け入れていた。「インバウンド観光客が求めているものは、むしろ田舎にある」は、多田氏の持論だ。森の中で暮らす、食するは人類共通の願いである、とも。もう一つの持論は「行政に頼らない。むしろ、行政が応援したくなるような地域づくりをしたい」。この発想が多様なチャレンジを広げていのではないか。

   では、60代や70代が中心の民宿経営者たちがいかに20ヵ国ものインバウンド観光客と接することができるのか、集落に通訳業の人たちがいるわけではない。多田氏は「ポケトークだと会話の8割が理解できる。すごいツールだよ」と。春蘭の里ではこの74言語に対応した音声翻訳機「ポケトーク」を8台所有し、必要に応じて貸し出している。この文明の利器を介して、炭焼きや山菜採り、魚釣りなどの体験をインバンウンドの人たちと楽しんでいる。過疎地にしてグローバル、「グローバル過疎地」と紹介する所以である。

(※写真=「春蘭の里」には世界から日本の里山を見学に訪れる。左はリーダーの多田喜一郎氏)

⇒2日(火)夜・金沢の天気

☆企業版パーマカルチャーの時代

☆企業版パーマカルチャーの時代

   このブログで「パ-マルチャー」という言葉を何度か使って、リスクヘッジと人間の行動の解析を試みた。パーマネント・アグリカルチャー(パーマカルチャー=Permaculture、持続型農業)の略語だ。農業のある暮らしを志す都会の若者たちの間で共通認識となっている言葉だ。農業だけではなく、地域社会の伝統文化を守ることで自分を活かしたいと考えている若者たちも多く見受けられるようになった。

   このパーマカルチャーの発想で若者たちの地方への流れができたのは直近で言えば、2011年3月の東日本大震災のときだった。金沢大学が2007年度から能登半島で実施している人材育成事業「能登里山マイスター養成プログラム」の2011年度募集に初めて東京からの受講希望が数名あった。面接で受講の動機を尋ね、出てきた言葉が「パーマカルチャー」だった。里山や農業のことを学び、将来は移住したいとの希望だった。実際、東京から夜行バスで金沢に到着し、それから再びバスで能登に。あるいは前日に羽田空港から能登空港に入り、月4回(土曜日)能登で学んだ。その後、実際に能登に移住した受講生もいた。

   そして、パーマカルチャーの第2波が新型コロナウイルスの感染拡大にともなう動きだ。コロナ禍で、石川県の自治体への移住相談が増えていて、とくに能登地域にある七尾市では前年同時期の約12倍、珠洲市は約4倍になっているという(2020年7月11日付・日経新聞北陸版)。コロナ禍をきっかにリモートワークが広がった。光回線や5Gなど通信インフラが整っていれば、東京に在住する必要性はない。第2波で特徴的なのは、このリモートワークをきっかけに、人だけではなく企業そのものが「本社移転」を目指し始めたことだ。

    昨年7月、総合人材サービスの「パソナグループ」は東京の本社機能の一部を兵庫県淡路島に移転すると発表し注目を浴びた。そして、東証一部の医薬品商社「イワキ」の社長はきのう29日に石川県の谷本知事を訪ね、ことし6月から本社機能の一部を東京から能登半島の最先端・珠洲市に移転することを報告した。同社は珠洲にテレワークの拠点を置き、同月から持ち株会社「アステナホールディングス」に移行、人事や経理を中心に希望者が移住する。メディア各社の記事=写真=を読んで、同社の本気度が伝わってきた。
  
   パーマカルチャーは人間の本能ではないかと察している。コロナ禍だけでなく、天変地異のリスクが東京で起きたとき、企業は果たして存続できるのか。パソナにしても、イワキにしてもそうしたことを本能的に嗅ぎ取って先回りをしているのではないかと思えてならない。もちろん企業的な計算や価値判断もあるだろう。能登でどのような企業展開を試みるのか注目したい。

⇒30日(土)夜・金沢の天気    あめ 

☆身近で、不可解、パラダイムシフトとは

☆身近で、不可解、パラダイムシフトとは

   社会全体の価値観が劇的に変化するという意味で使う「パラダイムシフト」は日常の言葉として発することがある。自身の記憶では、パラダイムシフト(paradigm shift)の言葉を初めて 交わしたのは、インターネットが劇的に広がった1999年だった。

   自宅を新築する際、光ファイバーケーブルを引き込み、リビングや書斎に光コンセントを設置してほしいと建築士にお願いした。すると、建築士は「光ファイバーがあれば、お部屋がオフィスに様変わりしますよ。パラダイムシフトですね」と。初めて聞いた言葉だった。確かに、完成後に自宅書斎のパソコンを会社(当時、テレビ局)のPCとつないでメールや動画をやり取りして仕事ができるようになった。画期的なことだった。それ以来、書斎を「オフィス」と呼び、パラダイムシフトという言葉を自らも使うようになった。

   もちろん、パラダイムシフトは個別の話ではなく社会全体の価値観の変化のことだが、今のIoT化やSociety5.0、リモートワークといったトレンドを考えると、当時建築士が話したように、パラダイムシフトの先駆けだったかもしれない。パラダイムシフトはIT化だけでなく、新型コロナウイルスなどに揺さぶられ、さまざまな場面で起きている。

   身近にある大きな変化では、葬儀もその一つだ。故人をしのび弔うセレモニ-は近年、会葬の規模が縮小し「家族葬」と言われるまでに少人数化した。さらにコロナ禍にあって、「廻(まわり)り焼香」と呼ばれる簡素化がトレンドになっている。廻り焼香は、通夜や葬儀・告別式に参列するが、焼香を終えた人は席に就かずにそのまま帰る。もともとは、多くの弔問客が滞りなく焼香を済ませるための会葬の流儀だったが、最近ではコロナ禍で「三密」を避ける工夫として用いられている。ドライブスルーでの焼香も可能な葬儀場もある。葬儀の小規模化と簡略化という流れは儀式のパラダイムシフトを象徴している。

   戸惑うパライダイムシフトもある。大学キャンパスで大麻をめぐるニュースが相次いだ。昨年は、日本大学ラグビー部や近畿大学サッカー部、そして東海大学硬式野球部、さらに長崎大学でも不法所持や売買などが発覚し、逮捕者も出ている。一方、アメリカでは民主党政権の復権にともない、ニュージャージー、アリゾナ、サウスダコタ、モンタナなどの各州で新たに合法化された。大麻を合法的に使えるアメリカ人は1億900万人に上り、総人口の3人に1人に相当する。ニューヨーク州でも知事が、州政府の財政を再建するため、オンラインのスポーツ賭博と娯楽用大麻を合法化する意向と報じられている(1月7日付・ロイター通信Web版日本語)。

   この背景には、国連が大麻と大麻樹脂を最も危険な麻薬に分類していたリストから外すことを承認し、大麻の医療的価値を認めたことによる(2020年12月3日付・CNNニュースWeb版日本語)。だからと言って、税収の確保のため大麻を合法化するというアメリカの動きは日本人にとっては不可解だ。アメリカでこの動きが全土に広まれば、日本の学生たちにアメリカへの留学を勧められなくなる。

⇒26日(火)夜・金沢の天気    あめ

★株高の無常観 経済の春隣は

★株高の無常観 経済の春隣は

   大寒のこの頃、「春隣(はるとなり)」という季語がある。寒さがこたえる真冬だが、かすかな春の予兆に目を向けてみたくなるものだ、との意味合いと解釈している。

   自宅の庭は雪に覆われているが、春隣を求めて庭先に出た。厳冬のこの時節に咲く花を「雪中四友(せっちゅうしゆう)」を称するが、4つの花(ロウバイ、ウメ、サザンカ、スイセン)のうち、ロウバイが黄色い花を付けていた。例年なら今ごろ花を付けているスイセンは雪に埋もれていた。

   見渡すと、ツバキも花をつけていた。そこで、ロウバイとツバキを切って、玄関に活けてみる=写真=。ロウバイは「蝋梅」と漢字表記されるだけあって、ふくよかな香りがする。中国語ではラ-メイ(蝋梅)、英語ではWinter sweetと言い、世界の人々はその香りを楽しんでいる。ツバキは筒咲きの白花だ。花を見ていて思うことは、花は毎年変わらず咲いて人を楽しませてくれるが、人の世は変わってしまう。新型コロナウイルスの流行(はや)りで滅入ってしまっている。無常である。世の春隣はいつ来るのか。

   きょう無常観を感じたのは株価だ。25日の東京株式市場で日経平均株価の終値が前週末比190円高の2万8822円をつけ、バブル期の1990年8月3日以来30年半ぶりの高値を回復した(1月25日付・共同通信Web版)。景気がよいと感じていないのに、株が買われる。投資家は今の経済状況を見て投資するのではなく、先の経済状況を予想して投資すると言われればそうかもしれない。あるいは、コロナ禍で痛手を被った経済を支えるため日本銀行が大量のお金を市中に流し込んでいるが、景気を押し上げる投資には使われず、だぶついたお金が運用先として株式市場に流れ込んでいるだけ、という見方もある。

   これから第3四半期の企業決算の発表が続々と出てくるだろう。その内容を見てみたい。経済の春隣を感じることができるのだろうか。

⇒25日(月)午後・金沢の天気     はれ

☆バイデン大統領「My whole soul 」演説の響き

☆バイデン大統領「My whole soul 」演説の響き

   果たしてアメリカは変わるのか。ジョー・バイデン大統領の就任演説がホワイトハウスの公式ホームページ(1月21日付)で全文掲載されている=写真=。演説の中味をチェックすると、率直な感想はやはり78歳の、アメリカ史上最高齢の大統領の、超ベテラン政治家の、ある意味でアンテークな演説なのだ。そう感じたのは以下の箇所だ。

「In another January in Washington, on New Year’s Day 1863, Abraham Lincoln signed the Emancipation Proclamation.When he put pen to paper, the President said, “If my name ever goes down into history it will be for this act and my whole soul is in it.”

My whole soul is in it. Today, on this January day, my whole soul is in this: Bringing America together. Uniting our people. And uniting our nation. I ask every American to join me in this cause. Uniting to fight the common foes we face: Anger, resentment, hatred. Extremism, lawlessness, violence. Disease, joblessness, opelessness.」

以下意訳:別の1月、1863年の元日にエイブラハム・リンカーンは奴隷解放宣言に署名した。紙にペンを走らせた時、大統領はこう言った。「もし私の名が歴史に残るようなことがあれば、これがその理由になる。私は全身全霊をこれに注ぎ込んだ」と。

今日のこの1月の日に、私も全身全霊を込めている。アメリカをひとつにまとめるため。国民の連帯、国の連帯を実現するため。この大義のため、すべてのアメリカ人に協力を呼びかける。怒り、不満、憎悪、過激主義、無法状態、暴力、病気、失業、そして希望の喪失――。こうした敵に立ち向かうため、みんなで連帯してほしい」

   リンカーン大統領の事例の引用もさることながら、「My whole soul 」という言葉にアンテークさを感じる。日本語で「全身全霊」という言葉となるが、古めかしさを感じるのは自身だけだろうか。そして、見逃しているのかもしれないが、演説にはデジタル(digital)という言葉が出てこないのだ。

   大統領選でのトランプ氏との壮絶な闘いの後だけにアメリカ国民に連帯を訴えたのだろう。ただ、アメリカの分断を生み出している一つの要因としてSNSといったデジタル社会の有り様を認識しているのであれば、アメリカの世代間の融和やデジタル社会における国家の存在意義というものを強調すべきなのではないだろうか。「My whole soul」はアメリカ国民の心にどれだけ響いたのだろうか。

⇒22日(金)朝・金沢の天気     あめ 

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

★再生、DX、イノベーション・・時代を映す広告

   年末年始の新聞広告は例年のごとく派手さが目立った。中でも際立ったのがネット動画配信サービス「NETFLIX」の全国紙の広告(31日付)だった。何しろ両面見開きで、暗闇から朝焼けが始まるというアングルの写真だ。左側に小さく、「再生のはじまり」の見出しで、メッセージが始まる。「東の国も西の国も北の国も南の国もまるで世界のすべてが止まってしまうようだった。だけど人の想像力は、どんな時にも止まらなかった。世界には新しい物語が生まれ続けている。見たことのない世界が広がり続けている。あなたがボタンを押せば、世界はもう一度はじまる。何度でもはじまる。」

   NETFLIXの社名は右下に小さく記されていた。新型コロナウイルスの感染拡大で世界の人々は「巣ごもり」生活を余儀なくされ、NetflixやHulu、Amazon プライム・ビデオといったネット動画配信サービスは高収益を確保したに違いない。前年は全面広告を使って「正月はNetflixざんまい!」とPRしていたのに比べれば、「再生のはじまり」は動画再生とコロナ禍からの再生の2つの意味を絡めた、とても練られた広告ではないだろうか。

   入試願書の受付開始日と合わせた近畿大学の全国紙広告(3日付)は相撲部の学生の練習の図柄で、「近大DX え、近大まだデカなるん?」と少々自虐的な見出し。文章を読むと、「デジタルを駆使することで、学生や世の中に新しい教育モデルや価値観を提供する、それが近大のめざすDX。中でも、急ピッチで進めているのが、好きな所で好きなだけ24時間学び放題になる、授業のオンデマンド化。」などとうたっている。最後に「コロナな時代に日本一のDX大学をめざして、2021年も近大はデラックスに進化し続けます! あっ・・・ちなみに相撲と本文の内容は全く関係ございません!!」とオチもつけている。実に関西っぽいアドバタイジング。

   地元紙の広告(1日付)で目を引いたのか「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション 地域に、元気と笑顔を届けたい。」という北國銀行の全面広告。同行の頭取が昨年6月に14年ぶりに交代し、これまでの同行にはなかったオープンさ、そしてサービスにIT技術を導入する手法が地域でも評判になっている。確かに、同行の公式ホームページをチェックすると、「本店(金沢市)に勤務する役員1名が新型コロナウイルスに感染していることが判明いたしました」と発表している。これまでだったら、このような情報は公開しなかっただろう。

   地銀がこれから本気で地域と向き合い、「コミュニケーション×コラボレーション×イノベーション」に取り組むのであれば、開かれた気持ち(オープンマインド)と情報公開が必要だ。地域経済の改革の担い手としての地銀に期待したい。

⇒4日(月)朝・金沢の天気   くもり  

☆静かなる年末年始(11)「賀状に浮かぶジレンマ」

☆静かなる年末年始(11)「賀状に浮かぶジレンマ」

   前回ブログの続き。僧侶の方からいただいた賀状。ドイツ人僧侶。丑年ということで、ホルスタインをイメージした賀状のデザインが面白い。ドイツの大学で日本語を学んでいて「Zen」(禅宗)に興味を持った。2011年に能登半島にある曹洞宗の總持寺祖院で修行に入り、もう10年。自坊を持つまでになった。3年前に立ち話で、「信仰ではない無我の境地、好き嫌いは言わない、与えられたものを素直にいただく」と。禅宗のきびしい修行を耐え抜いた言葉が重く、そして心に透き通る。寺には、ドイツほかヨーロッパ、南米ブラジルなどからのZenを求めてやってくる。

   賀状を読んでいてふと思いついた。彼が3年前に述べた言葉はまさにコロナ後の世界観であり社会観、人生観ではないだろうか。飽くなき欲求から脱する人生設計や、独占ではなく分け合う(シェアリング経済)社会、成長を前提としなくてもよい社会システムを求める、いわゆる「ポスト資本主義」と呼ばれる動きが胎動している。コロナ禍を経験した人類が心のレジリエンス(復元力)を探してZenの思想に共鳴し、教えを求める時代がやってくるに違いない。そのときに彼の果たす役割は大きいのではないか。

   県会議員や市長をつとめたベテランの政治家の方からいただいた賀状は実にストレ-トな内容だった。昨年11月、加賀海岸(加賀市塩屋‐片野)は国の重要文化的景観に認定された。海岸沿いの砂防林は江戸時代から昭和初期にかけ、人々の手によって植栽が行われ、沿岸集落の懸案だった飛砂被害が抑えられ、生活の安定や現在の土地利用に大きな役割を果たしてきたと評価された。認定に当たっては、文化的景観を訴えるために各方面に呼びかけ、現地でのガイドを買って出るなどリーダー的な存在だった。

   ところが、その加賀海岸に隣接する別の市が洋上風力発電の計画を打ち上げている。高さが最大で260㍍もある風車が沿岸に沿って20基から37基並べる構想で、賀状では「いさりび、夕日等が見えず障害になります。これには断固反対なのです。風力発電には反対ではないのです。この景観を害する行為には反対なのです」と呼びかけている。隣接市とすれば、1昨年も前から計画を進めていた。菅内閣は温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする目標を掲げ、再生可能エネルギーに注目が集まっている。

   国の重要文化的景観の認定にこぎつけた地元とすると、次はユネスコの「世界遺産の可能性」(賀状)を追求することに目標を定めている。歴史と景観の地域資源を守り高めることで国際評価につなげたいという想いが滲む。賀状に鋭く浮かぶ時代のジレンマではある。

⇒3日(日)午前・金沢の天気  くもり時々ゆき

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

★静かなる年末年始(10)「賀状で読む総選挙」

   ことしの年賀状は書き出しを「謹賀新年」とはしなかった。昨年からの新型コロナウイルスが感染拡大する中で決して「おめでたい年を迎えた」などとは自身の気持ちとして言えないとこだわったからだ。その代わりに、「希望が持てる新年でありますように」と記した=写真・上=。では、果たして2021年(令和3年)は希望が持てる年になるのだろうか。いただいた年賀状からことしを読んでみる。

   菅内閣を皮肉った賀状をいただいた=写真・下=。大学時代の同級生で、元雑誌社の編集長。「麻生太郎(副総理)81歳! 二階俊博(幹事長)82歳! あ~あ。老人はもういいよ。若い政治家はいないの? と思ったら、いつのまにか私も高齢者で今年67歳に。」との自虐的な内容には笑える。「中身スカスカの『スカ総理』は73歳とイラストも添えている。

   共同通信社が12月5、6日に実施した全国電話世論調査(回答は固定電話524人、携帯電話519人)によると、菅内閣の支持率は50%で、前回11月から12.7ポイント急落した。政府の新型コロナウイルス対策は「評価しない」が55%。感染防止と経済活動のどちらを優先すべきか尋ねたところ「どちらかといえば」を含め「感染防止」を挙げたのは計76%に上った(12月6日付・共同通信ニュースWeb版)。

   内閣支持率が下がり続ければ、おそらく解散・総選挙は近い。それはいつか。以下憶測だ。コロナ禍の感染拡大で勢いづいている今の状態では3月、4月の総選挙は無理だろう。むしろこの時期はワクチン接種がピークを迎えている。ワクチン効果の評判が広がれば、世論の安心感と政府への評価が高まる。その絶妙なタイミングを狙えば、解散・総選挙は7月の東京オリンピック(21日競技開始、23日開会式)前の5月か6月ではないだろうか。

   賀状を手にして、狡猾な老人政治家たちが考えそうなシナリオを描いてみた。自らも老人政治家たちの腹を探ろうする年代に入った。
 
⇒2日(土)夜・金沢の天気  くもり時々ゆき

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

☆静かなる年末年始(9)「初夢に東京五輪」

   2021年(令和3)元旦の初夢は、なんと「東京オリンピック」だった。テレビを見ている自分がいて、そのテレビのモニターには国旗を掲げた選手団が次々と入場行進してくる。なぜか、ニュースキャスターの辛坊治郎氏が選手団について「最近のロシアでは・・」「インドでは中国に対し・・」などと時事解説を行っている。それを違和感なくじっと見ている自分の姿だった。ふと目覚めて時計を見ると、午前2時33分。再び寝込んだが、夢の続きを見たかどうかは覚えていない。

   きょうのブログは初夢が正夢になってほしいと願いつつ書いている。知人と話していても、「このままだとオリンピックの開催は無理だろう」との声をしばしば耳にするようになってきた。政府の新型コロナウイルス対策担当の西村・経済再生担当大臣は自らのツイッター(12月30日付)の動画で「新型コロナウイルスの感染がこれ以上拡大すれば緊急事態宣言も視野に入る」と述べている。コロナ禍の拡大は止まず、ウイルスの国内感染はきのう国内で初めて4000人を超えて4188人と過去最多となった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。暗雲が垂れ込める正月を迎えた。

   起死回生、頼みのワクチン接種はどうなのか。アメリカやイギリスなどではすでに一部で接種は始まっているが、日本ではアメリカの製薬大手ファイザーのワクチンの承認申請が行われていて、早くて2月中に承認されるかどうか結論が出る見通し(12月28日付・同)。このニュースを見て、開催国の日本がこの対応の遅さで果たして選手団を迎えることができるのだろうか、と思ってしまう。

   CNNニュースWeb版日本語(12月31日付)によると、アメリカ国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長がインタビューで、4月初めからワクチンを広範囲に行き渡らせることが可能となり、人口の70%から85%が接種を受ければ集団免疫を獲得でき、ウイルスの感染拡大を抑え込むことができる。初秋までにはかなり正常に近い状態に戻れるとの見通しを示している。「ワクチン先進国」のアメリカでこのスケジュール感だ。

   予定通り東京オリンピック競技が始まると想定すれば7月21日(開会式は23日)がスタートだ。それに先立って、日本で行われる国際大会や強化合宿に参加する国外の選手が5月以降で続々と入国してくるだろう。予定通り開催するには4月中にはコロナ禍をなんとか収めなければ間に合わない。逆算すれば、3月と4月に国内での接種を広範囲に行い、集団免疫を獲得しておく必要があるのではないだろうか。

   菅総理は元旦の年頭所感でこう述べている。「コロナ危機は、国際社会の連帯の必要性を想起させました。我が国は、多国間主義を重視しながら、『団結した世界』の実現を目指し、ポストコロナの秩序づくりを主導してまいります。そして、今年の夏、世界の団結の象徴となる東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催いたします。安全・安心な大会を実現すべく、しっかりと準備を進めてまいります」(総理官邸公式ホームページ)

   総理の所感とは裏腹にコロナ禍の猛威は世界に迫る。感染力が強いとされる変異種化したウイルスがイギリスや南アフリカ、フランス、イタリアなど17の国・地域で広まり、日本政府は今月末までオリンピック選手を含めて入国制限をする措置をとった(12月31日付・NHKニュースWeb版)。各国の選手団そのものが結成されるのかどうか、どう克服して開催するのか。総理が述べているように、人類の「団結した世界」をぜひ実現をしてほしい。今から出かける初詣ではそう願いたい。

(※写真は、元旦の床の間に飾った「鶴と亀」の掛け軸と、正月飾り)

⇒1日(金)午前・金沢の天気    くもり時々ゆき

★雪国とスコップの「マイクロプラスティック問題」

★雪国とスコップの「マイクロプラスティック問題」

   アメリカCNNのニュースWeb版(12月11日付)で、覆面のパロディ画家、バンクシーの新作を楽しませてもらった。「Aachoo!! : Banksy confirms new sneezing woman mural as his latest work」と題した話題で、イギリス・イングランドの民家の壁に描かれている。くしゃみをする老婆が顔をゆがめ、手にしていたステッキとポシェットを思わず放り出し、口から噴き出した飛沫の先には入れ歯が飛んでいる=写真・上=。笑える壁画だが、よく考えると、日本でも極たまに街で見かける光景ではある。

   話は変わる。けさ金沢では10㌢ほどの積雪になっていた。この時季、さらに積もると近所の人たちがスコップで道路の雪すかし(除雪)を始める。自宅の前の雪は自分たちで除雪する。雪国の住民の「自助・共助」の美しい街の光景ではある。ただ、今日的な問題もはらんでいる。スコップだ。

   かつて、鉄製が多かったが、軽量化とともにアルミ製に変化。さらに、最近はプラスチックなど樹脂製が主流だ。除雪する路面はコンクリートやアスファルトなので、そこをスコップですかすとプラスチック樹脂が摩耗する=写真・下=。微細な破片は側溝を通じて川に流れ、海に出て漂うことになる。

   粉々に砕けたプラスチックが海を漂い、海中の有害物質を濃縮させる。とくに、油に溶けやすいPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有害物質を表面に吸着させる働きを持っているとされる。そのマイクロプラスチックを小魚が体内に取り込み、さらに小魚を食べる魚に有害物質が蓄積される。食物連鎖で最後に人が魚を獲って食べる。

   この不都合は真実の解決方法はただ一つ。一部には製品化されたものもあるが、スコップのさじ部分の尖端を金属にすることだろう。これを法令で措置すべきではないだろうか。雪国・秋田出身の菅総理ならばこの解決策のイメージはわくかもしれない。「2050年のカーボンニュートラル」宣言の次は、「マイクロプラスチック・ゼロ宣言」を出してほしい。

⇒20日(日)朝・金沢の天気   ゆき