⇒トレンド探査

★春爛漫のにぎわい 金沢港にクルーズ船ラッシュ続く

★春爛漫のにぎわい 金沢港にクルーズ船ラッシュ続く

金沢市内の桜がようやく満開を迎えた。それにしもなんともマイペースでスローな開花ではある。ソメイヨシノが咲き始め、金沢地方気象台が開花を発表したのは3月29日のことで、平年より5日早い開花だった。いつもの年ならば開花から5日間ほどで満開となり見ごろを迎えるが、ことしは8日間かかって、今月6日にようやく満開となった。確かに4月に入ってから寒の戻りのような寒い日が続いたのでスローな満開となったのかもしれない。このおかげで、きょう8日までの予定だった兼六園の無料開放が13日の日曜日まで延長されるとニュースで伝えられている。(※写真・上は、兼六園近くの広坂通りの桜並木=8日午前10時ごろ撮影)

話は変わる。今月3日付のブログでも紹介した、金沢港へのクルーズ船の入港ラッシュ。きょうは17万㌧の巨大なクルーズ船が入港するとの情報(一般社団法人「金沢港振興協会」公式サイト)を見つけ、さっそく港へ見学に行ってきた。入港する場所は大浜埠頭というターミナルビルから北西に700㍍ほど離れた場所。警備員が数か所で配置され、見学者は埠頭に近づけないようになっていた。その代わり、少し離れた場所から見学できる港の高台に誘導された。

クルーズ船はスイス船籍の「MSCベリッシマ」(17万1598㌧・乗客定員4386人)で、すでに接岸していた=写真・下、午前8時30分ごろ撮影=。東京港を出発して大阪港、韓国・済州島を経由し、金沢港に寄港した。それにしても巨大だ。ネットで調べると、高さが67㍍、全長316㍍という国内に寄港するクルーズ船では最大級の規模を誇る、とある。ちなみに高さ67㍍はビルの高さにすれば20階建てに相当する。写真の左下に列をなして並んでいる大型観光バスが小さく見える。誘導された高台で撮影していると、迫力あるクルーズ船を見ようと見物人が次々と集まってきた。

観光バスを数えると別の場所で待機している分も含め60台ほどあった。おそらく、これから乗客は船から降り、バスに乗って兼六園や武家屋敷、妙立寺(忍者寺)、永平寺、立山といった北陸の観光名所を巡るのだろう。金沢港からは北陸自動車道へのアクセスもよいので、日帰りバスツアーに便利かもしれない。「MSCベリッシマ」はきょう午後5時ごろ、秋田・函館方面に向けて出港する。

北陸新幹線の金沢開業でゲートウェイ(正面玄関)は金沢駅とのイメージが強かったが、クルーズ船を眺めながら金沢港の「海のゲートウェイ」としての存在価値を認識した次第。今月11日には「ダイヤモンド・プリンセス」(11万5906㌧・乗客定員2706人)が寄港する。

⇒8日(火)午後・金沢の天気    くもり

★被災地輪島で野口健氏の野菜プロジェクト 民間新築に復旧・復興の足音

★被災地輪島で野口健氏の野菜プロジェクト 民間新築に復旧・復興の足音

能登半島地震や豪雨災害で被害を受けた能登のニュースを地元紙でチェックしている。とくに、被災住宅などを所有者に代わって自治体が解体や撤去を行う「公費解体」がどの程度進んでいるのか、復旧・復興のステップとなるだけに気になる。きのう(5日付)の記事で、「公費解体2万2485棟完了」の見出しで3月末時点で、解体見込み数の57%に当たる2万2485棟で完了したとの石川県の発表があった。詳細に読むと、豪雨分を含めた解体見込み数は3万9235棟で、解体率は前月から9ポイント上昇した。解体率を市町別でみると、穴水町が73%、珠洲市が67%、輪島市が59%、志賀町が57%などとなっている(※小数点以下は四捨五入)。

県ではことし10月までに公費解体を終わらせる予定だ。そこで、きのう「57%の現状」を見に輪島市に行ってきた。同市では自治体の中でも最も多い1万1267棟の解体を予定していて、解体作業には4、5人の作業グループが329班が市内に入っている。土曜日にかかわらず、多くのパワーショベルやトラックが忙しく動いていた。

これまで輪島の被災地へは何度か足を運んでいるが、これまでに見たことのない光景がいくつかあった。その一つが市内の中心部・河井町にある重蔵神社でのテントと人の行列だった=写真・上=。「KEN NOGUCHI」と横断幕がかかったテント。登山家の野口健が代表を務める環境と国際協力の団体「認定NPO法人ピーク・エイド」が主催して行っている震災支援の野菜プロジェクト。ネットで調べると、ピーク・エイドでは全国から有志の自治体を募り資金を調達し、輪島市内の業者から野菜を購入して市民に無料で配布している。すでに、40回余りに及んでいるようだ。

もう一つの光景が民間の新築。これまでブログでも紹介したように被災者は避難所から仮設住宅に住んでいて、さらに行政は公営住宅の建設にまもなく着手する。そんな中で、民間の新築と思われる建物を初めて見た=写真・下=。場所は輪島市街地の入り口にあたる県道沿いで、平屋建てだ。車を降りて眺めてみると、作業員が屋根の部分の作業に携わっていた。見た限りでは、住宅というより、アパートか、あるいは作業場のようにも見える。トントントン、カンカンカンと音がして、復旧・復興の足音のように感じた。

⇒6日(日)午後・金沢の天気    くもり時々あめ

★コメ価格は上がり 内閣支持率は下がる 世相を反映するこの数値

★コメ価格は上がり 内閣支持率は下がる 世相を反映するこの数値

コメの価格は上がり、内閣支持率は下がる。石破総理が前回の衆議院選挙で初当選した自民党の議員15人に対し、会食の土産に10万円相当の商品券を配っていたという問題。有権者の石破内閣に対する意識が直近の世論調査で伝わってくる=写真・上=。読売新聞の調査(今月14-16日)は支持率は31%となり、前回調査(2月14-16日)より8ポイント下落。不支持率は58%で前回より15ポイントも上昇した。数字で見る限り、不支持率が支持率の倍近くある。毎日新聞の調査(今月15、16日)でも支持率は23%と、前回(2月15、16日)より7ポイント落ちている。不支持率は前回より10ポイント上がって64%だった。不支持率が支持率より3倍近くになっている。

この世論調査の数値の背景には商品券問題もあるが、いわゆる「内閣の賞味期限」そもののが切れてしまっていることもあるだろう。読売の調査で「政権運営で指導力」を問う項目では、76%が指導力を発揮していないと回答している。そもそも、前回の衆院選(2024年10月)で大敗し過半数を割り込み、石破内閣は少数与党内閣として野党に譲歩しながらの政権運営を迫られている。内閣独自の政策を打ち出す「賞味」がなくなったのだろう。自民党内から 「参院選は戦えない。早く総裁選をやって、新たなリーダーを選び直せ」との声が上がっているようだが、自民党そのものの賞味期限が切れているのではないだろうか。

話は変わる。近くのスーパーに立ち寄ると、コメの価格が高騰している。能登米の価格が5㌔袋で4080円(税込み4407円)となっていた=写真・下=。このコメだけではなく、ほかの種類のコメも2月に訪れたときより、5㌔袋が200円ほど高くなっている。去年8月25日付のブログでも述べているが、そのとき同じスーパーで購入した新米は5㌔で2290円だったので、それから7ヵ月で1700円余り高くなっている。

そのコメの棚には「個数制限のお願い」という紙が貼られていた。「お米10㌔はお一人様1袋 お米5㌔はお一人様2袋までとさせて頂きます。ご迷惑をお掛けしますが、ご理解とご協力をよろしくお願いします」と書かれている。コメの価格高騰を受けて政府は備蓄米を放出したが、その効果がまだ見えてこない。

⇒18日(火)夜・金沢の天気    あめ

★黄砂の季節到来 病魔もたらす言い伝え、海には恵みも

★黄砂の季節到来 病魔もたらす言い伝え、海には恵みも

この時季、花粉と並んで注意が必要なのは黄砂だ。気象庁の「黄砂解析予測図」によると、きょう13日午後9時ごろには北陸地方がすっぽりと覆われる=図=。黄砂が飛来すると、外の洗濯物や車が汚れたりするほか、呼吸系の疾患の原因にもなり、かなり厄介だ。

黄砂は中国大陸奥地のタクラマカン砂漠やゴビ砂漠で舞い上がった砂ぼこりが偏西風に乗って日本に飛んでくる。黄砂そのものはアレルギー物質になりにくいとされているが、大陸の上空で黄砂に付着した微生物や大気汚染物質がアレルギーの原因となり、鼻炎など引き起こすとされる。また、黄砂の粒子が鼻や口から体の奥の方まで入り、気管支喘息を起こす人もいる。

黄砂の厄介さは今に始まったことではない。北陸は偏西風に乗ってやって来る黄砂のルートにもなっていて、金沢では古(いにしえ)より黄砂を忌み嫌ってきた。加賀藩主の御膳所を代々勤めた金沢の老舗料亭では七草粥をつくる際に、調理場の七つ道具で音を立てて病魔を払う春の行事がある。そのときの料理人の口上が、「ナンナン、七草、なずな、唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先にかち合せてボートボト」。旧暦正月6日の晩から7日の朝にかけて唐の国(中国)から海を渡って、悪い病気の種をまき散らす鳥が日本に飛んで来る、渡って来る前にやっつけて撃ち落とせ、という意味のようだ。以前、この七草粥の行事を見学させてもらったとき、料亭の主人から聞いた話だと、「平安時代から伝わる古い行事とされる」とのことだった。(※写真は、黄砂に覆われた金沢市内の中心部=2023年4月12日撮影)

厄介もの扱いの黄砂だが、日本海に恵みをもたらすともいわれている。大量の黄砂が日本海に注ぐ3月と4月には、「ブルーミング」と呼ばれる、海の表面が白くなるほど植物プランクトンが大発生する。黄砂の成分といえるケイ酸が海水表面で溶出し、植物プランクトンの発生が促される。それを動物プランクトンが食べ、さらに魚が食べるという海の食物連鎖があるとの研究がある。

確かに地球規模から見れば、「小さな生け簀(す)」のような日本海になぜクジラやサメ、ブリ、サバ、フグ、イカ、カニなど魚介類が豊富に獲れるのか、いろいろ要因もあるが、黄砂もその役割を担っているのかもしれない。

⇒13日(木)午前・金沢の天気     はれ

★「今年の漢字」の「金」の意味 金沢でのオーバーツーリズムの現場

★「今年の漢字」の「金」の意味 金沢でのオーバーツーリズムの現場

  「今年の漢字」に「金」が選ばれた。公益財団法人「日本漢字能力検定協会」がその年の世相を表現する漢字一字を投票で募り発表するイベントで、毎年、京都の清水寺で発表されている=写真=。日本漢字能力検定の公式サイトをチェックすると、今回選ばれた「金」には2つの意味があって、輝かしいという意味のキン)」と、影がつきまとうかね)」の2つの側面があるという。キンはパリオリンピック・パラリンピックでの日本人選手の金メダルの活躍やアメリカ大リーグで大谷翔平選手がMVPを獲得した意味が込められいる。「かね」は政治の裏金問題を象徴し、衆院総選挙での与党過半数割れと連動した表現のようだ。

  サイトでは「今年の漢字」トップ20が掲載されている。1位は1万2148票で「金」だが、2位は9772票で「災」、そして4位に7487票で「震」が入っている。この「災」と「震」は元日の能登半島地震、そして9月に能登を襲った記録的な大雨による災害を象徴しているのだろうと解釈した。能登半島地震では金沢も震度5強の揺れがあり、金沢城や兼六園の石垣が崩れ、全国ニュースにもなった。ひょっとして1位の「金」には金沢という思いも込められた票が入っているのではとも憶測した。

  話は飛ぶ。地元メディアの報道によると、兼六園周辺にイノシシが出没していると大騒ぎになっている。体長1㍍のオスとみられ、今月12日撮影の防犯カメラに走り去る姿が映っている。人的な被害はいまのところないようだ。10年前の2014年9月のことだが、兼六園と隣接する金沢城公園でクマが出没し捕獲されている。兼六園と金沢城公園は小立野(こだつの)と呼ばれる丘陵地の尖端部にあり、山から緑地を伝ってエサを探しに来ているのかもしれない。

  さらに話は飛ぶ。ことしに入って兼六園を訪れたインバウンド観光客は11月末時点で50万2502人となり、コロナ禍前の2019年に記録した47万5020人を上回り、過去最多となった(地元メディアの報道)。一方でインバウンド観光客による、オーバーツーリズムの問題も目に付く。これは実際に見た現場の光景だ。今月初めにJR金沢駅近くあるホテルから外国人団体客がぞろぞろと出てきた。先頭の数人がホテルの前の横断歩道を渡ると交通信号が赤から青になり、横断歩道は赤となった。にもかかわらず、会話しながらゆっくりと横断歩道を渡っている。信号無視に業を煮やした車からはクラクションが鳴らされたが、それでも団体の最後部が渡り切るまでこの状態が続いた。欧米風の顔立ちで、団体は50人ほどだっただろうか。

  交通ルールに関しては理解しているが、「みんなで渡れば怖くない」的な一時的な団体行動だったのか、あるいは、彼の国では信号無視がまかり通るのか、と考えさせられた光景だった。交通事故が起きないことを祈る。

⇒14日(土)午前・金沢の天気    あめ

★花火ミュージックスターマイン デジタル技術で魅せる

★花火ミュージックスターマイン デジタル技術で魅せる

   最近、花火は夏だけでなく、春、秋、冬と季節を問わずイベントとして打ち上げられるようになった。先日、能登半島のつけ根にある宝達志水町で花火会社「能登煙火」を経営する嵯峨井大民(さがい・ひろたみ)氏の講演があり、聴きに行った。演題は「能登花火のルーツと最新の花火演出」。興味が沸いたのは、「花火が進化している」との話を聞いたからだ。

   嵯峨井氏は神社の宮司でもある。会社は同じく宮司だった祖父が1933年に創業した。当時、花火は神社に奉納するものだったが、最近では地域の祭りやイベントなど幅広く花火が打ち上げられるようになった。(※写真・上は、花火の打ち上げで必ずヘルメットを着用すると説明する嵯峨井氏)

   花火といえば、かつては「打上げ花火」が主流だった。1発1発をじっくり楽しむ。菊や牡丹の花、柳の枝葉などいろいろ種類がカタチが楽しめる。さらに、「スターマイン」の花火は、さまざまな種類の花火を連続で打上げたり、多数の花火を同時に打上げたりして、​豪華さと迫力がある。

   その花火がさらに進化を遂げている。「音楽スターマイン」だ。ミュージックと花火をシンクロさせて打ち上げる。同町でことし10月7日で催された花火大会で披露された「音楽スターマイン」の曲は、ロッシーニ作曲・歌劇『ウィリアム・テル』序曲だった。講演ではそのときの動画が上映された。あのリズミカルな曲に合わせて、花火玉の種類や大きさ、色合いの組み合わせでストーリーが描かれる=写真・下=。ビデオながら感動がダイレクトに伝わってきた。

   さらに驚いたことに、この演出にはデジタル技術がある。音楽に合わせて打ち上げのタイミングを決定し、コンピューターのプログラミングによって花火と音楽をシンクロさせて打ち上げる。夜空に描かれる光のアートはデジタル技術で可能になったと聞き、花火はアナログとのこれまでのイメ-ジがひっくり返った。

   同町では来年もミュージックスターマインを開催する。ぜひこの目と耳で夜空の光と音楽のアートを楽しみ、打ち上げ現場もぜひ見学し、花火の進化を確認したいと思った次第。もちろんヘルメット持参で。

⇒27日(月)夜・金沢の天気   くもり

★待ってたズワイガニ初物 「蟹-1グランプリ」300万円

★待ってたズワイガニ初物 「蟹-1グランプリ」300万円

   今月6日にズワイガニ漁が解禁だったが、海が大しけで漁獲は遅れて8日から始まり、きのう9日夜に金沢港などで初競りが行われた。この初競りは毎年ニュースになる。各漁船が選んだカニの最高価格を競う「蟹-1(かにわん)グランプリ」では、重さ1.52㌔、甲羅幅15.9㌢の雄の「加能ガニ」が最高級ブランド「輝(かがやき)」に選ばれ、300万円で競り落とされた。雌の「香箱ガニ」の最高級ブランド「輝姫(かがやきひめ)」は甲羅幅9.9㌢のものが7万円で落札された。きょうも朝から地元のテレビ・新聞メディアは、ようやく訪れたズワイガニの話題で盛り上がっている。

   きょう午前中、金沢の台所でもある近江町市場に行ってきた。ズワイガニの初物が並ぶとあって、鮮魚店の店先では店員の威勢のよいかけ声が響いていた。店先をいくつか回って値札を見る。加能ガニはサイズによって1杯2000円から2万7000円が相場=写真・上=、香箱ガニは1杯800円から3500円ほどだ。去年も初物を見に行ったが、去年並みの価格だろうか。

   店先に並んでいるものでもっとも高かったのは、重さ1.42㌔、甲羅幅14.9㌢の加能ガニで7万5000円=写真・下=。グランプリに輝いたものに比べ、サイズ的に重さで100㌘、甲羅幅で1㌢それぞれ足りない。それで、300万円と7万5000円の価格差になるとは、ズワイガニの世界もなかなか厳しいものがある。とは言え、きょうは初物なので、買い手も売り手も気持ちが盛り上がっていて高値だが、あすから徐々に値下がりして庶民価格に落ち着いていく。それが「カニ相場」というものだ。

   鮮魚売り場の一角で人だかりができていた。「この場で食べれます」「すぐ食べられます」との看板が掛かっている。香箱ガニの身をほどいて甲羅にまとめて入れた「カニ面」や、生ガキがこの場で食べることができる。鮮魚店の店頭での立ち食いなのだが、鮮度の高いカニやカキ、エビなどが食べられる=写真・下=。ちなみに、品代はカニ面が高いもので1個1800円、生ガキ1個1000円だ。市場の雰囲気がモチベーションを高めるのか、隣にいた数人の男性グループは「サイコー」「サイコー」と言い合いながら、次々注文していた。

⇒10日(金)夜・金沢の天気   あめ

☆きょうから11月 日常・政治・経済に漂う妙な胸騒ぎ

☆きょうから11月 日常・政治・経済に漂う妙な胸騒ぎ

   きょうから11月、とは言え金沢の最高気温はきょう23度、あす2日は24度、あさって3日は27度が予想され、5日まで夏日が続く。庭もちょっといつもの風景とは違う。6月から夏にかけてピンク色の花を咲かせるツモツケが、先日から再び花をつけている=写真・上=。ことしの冬はエルニーニョ現象で暖冬と長期予報が出ていたが、季節感が失われるのではないかと、妙な胸騒ぎがする。

          妙な胸騒ぎと言えば、きょうの各紙の一面トップもそうだ。「日銀 長期金利1%超容認 大規模緩和策を再修正」=写真・下=。住宅ローンを抱える身とすれば、日銀の政策修正は家計に跳ね返る。7月に上限を0.5%から1%に修正した後に固定金利の引き上げの動きが出て、今回の決定でさらに引き上げにつながるのはないか、と。変動金利への乗り換えも選択肢だが、日銀が短期金利に適用しているマイナス金利の解除も近いのか。

   そしてきょうの株式は午前中、前日比600円余り高くなっている。外国為替市場で1㌦=151円台まで円安にシフトしていて、輸出関連企業への買いが広がっているようだ。

   さらに気になるのは政治。メディア各社の10月の岸田内閣の支持率は過去最低となっている。読売の調査(10月13-15日)では支持するが34%で、支持しないが49%。朝日の調査(14、15日)は支持するが29%で前回9月調査から8ポイントも下落している。支持しないは60%だった。直近の日経の調査(27-29日)で支持するは33%で前回より9ポイントも下落している。支持しないは59%で8ポイント上昇した。

   岸田総理は先月26日の政府与党政策懇談会で所得税と住民税の定額減税を表明したものの、その直後に行われた日経の調査で大幅にダウンしている。物価高対策としての所得税減税を「適切だとは思わない」は65%で「適切だと思う」の24%を大きく上回った。防衛や少子化対策の財源が足りてないと言っていたのに、なぜ総理がいまごろになって「減税、減税」と言っているのか。有権者には不可解というか、妙な胸騒ぎを感じるのだ。

⇒1日(水)午後・金沢の天気    はれ

★処理水放出めぐる中国の動き 福沢諭吉ならどう語る

★処理水放出めぐる中国の動き 福沢諭吉ならどう語る

   やはりあのシーンが印象的だ。夏の全国高校野球で慶応高校が、連覇を目指した仙台育英高校に8対2で勝って、107年ぶりに優勝を果たした。テレビの生中継を視聴していたが、慶応大学のOB・OGがいっしょになってスクラムを組んで応援歌『若き血』を歌う、あの応援ぶりは今でも耳目に焼きついている。OBの一人なのでそう思うのかもしれないが。

   甲子園で決勝を観戦した大学時代の友人からSMSメールが届いた。「ひさしぶりに若き血を歌って、盛り上がった。これも福沢センセイのおかげ、引退を前に福業ですな」と。後半の「引退」と「福業」という文字が気になって、何度かメールを交わした。

   福沢センセイは慶応の創設者である福沢諭吉のこと。引退の意味は、2024年度から1万円札のデザインが福沢諭吉から渋沢栄一になるとのことのようだ。そして、「福業」とは神業をもじったもので、福沢諭吉のオーラがこの決勝戦にはあふれていたとの意味を込めていた。

   なるほど。1984年に1万円札のデザインが聖徳太子から福沢諭吉になったので、40年を経て来年「引退」だ。引退前に大正時代の第2回大会以来、107年ぶり2回目の優勝に導いてくれたという、少々スピリチュアルなスト-リーだ。

   話は変えて、では、もし福沢センセイが生きておられたら、このニュースについてどう語るだろうか。東京電力福島第1原発の処理水の放出をめぐり、中国で抗議や嫌がらせが相次いでいる一連の動きだ。もともと福沢諭吉は隣国に対する憤りの念を持っていた。主宰する日刊紙「時事新報」(明治18年3月16日付)の1面社説にこう記した。「我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と。

   社説は福沢の「脱亜論」で知られる。福沢の執筆の背景は、当時の清国、李氏朝鮮は近代化を拒否して儒教などの旧態依然とした体制に固執していた。そこで福沢は政治的な縁切り(国交断絶)ではなく、「謝絶」と表現した。要求には謝りつつ応じない、と。当時の福沢の気持ちが現代にも通じるのではないか。そして、福沢センセイは「中国は昔も今も変わりませんな。放っておきなさい」と苦笑いするかもしれない。

(※写真は、慶応義塾大学三田キャンパスの福沢諭吉像)

⇒28日(月)午前・金沢の天気    はれ

★デフレからインフレへ 日本経済の新たなステージへ

★デフレからインフレへ 日本経済の新たなステージへ

    自宅近くのガソリンスタンドの会員価格が1㍑181円(一般価格183円)となった=写真=。これまでの最高価格ではないだろうか。この店では先月31日に会員価格177円だったので、10日間で4円の値上げだ。政府は石油の元売り会社に支給している補助金を徐々にカットしていて、9月には補助金がなくなる言われているので、さらに高くなる。ガソリンだけでなく、物価が全体的に上がり出している。インフレの時代に突入か。

   日銀は先月28日の金融政策決定会合で10年来続けてきた「異次元緩和」を柔軟にすると決めた。長短金利の操作(イールドカーブ・コントロール)で長期金利を「0.5%程度」としてきたが、1.0%へと事実上、引き上げることに修正した。少々、違和感を感じたのが、「消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します」との発言だった。庶民感覚ではすでに「2%」は超えている。日銀と庶民の物価に関する感じ方に乖離があるのではないか。もちろん、日銀は政策決定会合なので何か政策的な裏読みもあるのではと考えてしまう。

   賃金は今後さらに上がるのか。厚労省の審議会は先月28日に今年度の最低賃金を目安を全国平均で現在の961円から41円上げて、時給1002円にすると決めている。今後は各都道府県の審議会がそれぞれの地域の実額を決めていくことになるが、石川県の場合は42円アップして、最低賃金は933円となる。最低賃金の上昇は喜ばしいことだが、国際的なレベルではどうなのか。

   たとえば隣国の韓国。JETRO公式サイト「韓国の賃金水準、日本並みに」(2022年9月5日付)によると、2023年の韓国の最低賃金は前年比5.0%増の9620ウォン(約1010円)にすることが決定されている。他方、日本の最低賃金時間額は全国加重平均で、2021年度(2021年10月~2022年9月)930円、2022年度は961円で、既に韓国が日本を上回っている。これは、バブル経済の崩壊後に長年に及んだ日本のデフレの後遺症ではないだろうか。

   話は横に逸れたが、内閣府は先月20日、2024年度の名目国内総生産(GDP)の見通しを「601.3兆円」と発表した。物価が上がり出したことで、名目GDPが押し上げられる。日本経済は長期にわたるデフレ不況を克服し、インフレの下で新たな成長に向いつつある。当然、経済活動に伴う賃金も上がる。「600兆円の経済」が動き出す。

⇒9日(水)夜・金沢の天気  はれ