⇒トピック往来

☆人生7掛け、地球8分の1

☆人生7掛け、地球8分の1

   「人生7掛け、地球8分の1ですよ」。先日、金沢市内のある上場企業の会長と懇談のチャンスに恵まれた。会長との会話で印象に残ったのが、この言葉だった。医療や情報社会の進化で今の50歳は昔で言えば35歳、そして航空網の発達で地球は8分の1ほどのスケールになった。いわば人生と移動空間のダウンサイジングとでも…。会長の言葉はそれ以降ちゃっかりと使わさせてもらっている。

   この8分の1になった地球の限りある資源の争奪戦のあおりで、石油は高騰し、鉄骨など資材などもジワリと相場が上がっている。先日、オヤっと思わせる新聞記事があった。中国・上海で電線やマンホールのふたなど金属の盗難が頻発していて、公共のインフラに大きな障害を与えているという内容だ。もっと詳しく読むと、盗難被害は変圧器や街路灯、送電用の鉄塔、公衆電話ボックス、ガードレール、道路標識、電話ケーブルなど。電話ケーブルが100㍍盗まれて1000戸の電話が不通になり、あるマンションでは103箇所の消火栓の金属部分がはがされた。上海市ではこうした被害がことし666件も発生している、と。おそらく金属盗難は上海市に限ったことではなく、中国各地で発生している社会現象に違いない。

    それだけ中国では建設ラッシュで金属需給がひっ迫していて、逆に言えば高く売れるのである。意地悪な言い方をすれば、「タコが自分の足を食べている」ような光景を思い出す。日本でも数年前の「どん底」経済のとき、農家の野菜や果物が大量盗難に遭うといったニュースが載ったから、笑えない。

    最近、地球検索ブラウザ「グーグル・アース」が面白い。アメリカのグーグル社が無料で提供している衛星写真を合成した地理検索システム。画面表示された地球をゆっくり回すこともできる。これをプロジェクターで大写しにすると、まるで宇宙から地球を眺めているような気分になり、癒される。そして、地球上で繰り広げられる人間の理不尽な行いを思うと、情けなくなり涙が出てくることもある。

⇒26日(水)朝・金沢の天気   くもり   

☆アケビの開いた口

☆アケビの開いた口

   金沢大学の角間丘陵の谷あいに角間川が流れていて、川に沿って幅2㍍ほどの遊歩道がある。散歩がてらブラブラ歩いていると、アケビが口を開けているのを見つけた。真ん中の白いタネの部分を取り出し、しばらく口に含んで飲み込む。トロリとして甘い。幼いころ、病気で臥(ふ)せっていると、母親が片栗粉にお湯と砂糖を入れて溶いたものを飲ませてくれた。その時の食感を思い出した。

                     ◇

   友人たちとの忌憚(きたん)のない議論の中で最近「参院はもういらん」というテーマが出てくるようになった。9月11日の総選挙で連立与党が3分2以上を占め、たとえ参院で与党案が否決されても、その数で衆院単独でも法案を通すことができるからだ。参院無用論はこれだけではない。良識の府であるべき参院が、「特定の業界・団体のダミーと化しているのでは…」と皆が疑問を持ち始めているからだ。

    けさの新聞各紙でそのことを考えさせる記事が載った。特定郵便局長のOBらでつくる政治団体「大樹」が20日、都道府県支部長会議を開き、2007年の参院選では旧郵政省出身者などの独自候補を擁立することを確認した、という。郵政民営化法案が衆参で可決したにもかかわらず、法案に反対した現職議員をあくまで支持し、来る参院選では独自候補を擁立すると気勢を上げた。

    実際、大樹会の集票力は群を抜く。今回の衆院選で、民営化反対の旗頭・綿貫民輔氏(富山3区)は自民党候補に2万票の差をつけ再選を果たした。その原動力となったのは「大樹会」富山県本部だ。会員2600人。特定郵便局は、明治政府が郵便制度を創設した際、地域の名士や資産家に業務委託したのが始まりで、県内の郵便局297局のうち特定局は192局と6割を占める。選挙になると、いまでも地域の名士である会員が地縁血縁の幅広い裾野をフルに活用し票を集める。

   しかし、富山の友人はこう嘆く。「綿貫さんが勝ったのはこれまでの功績があったからこそ。ところが、富山が郵政民営反対の牙城で、時代の流れに逆行しているとのイメージで他から見られているかと思うと正直つらい」と。

    業界団体が全面的に出て、気勢を上げるのは自由だ。確かにアメリカでも、ロビーストと呼ばれる団体や業界の利益代表が上院や下院のロビーに陣取って、政治家に盛んに圧力をかけている。業界のダミーのような議員も大勢いる。日本ではどうだろう。先の選挙では、地縁血縁もないいわゆる「落下傘候補」が健闘し、地場の候補者に勝った選挙区(静岡7区、東京10区など)もあった。政党の政策やポリシーが重視され、利益誘導型の政治家に有権者は期待しなくってきている。来る参院選では、インターネットの活用が「解禁」され、その傾向はさらに強まるだろう。そしてこの議論の行き着く先が参院無用論なのである。「機能しなくなった政治制度をリストラせよ。衆院だけでよい」と。

                                   ◇

        金沢大角間キャンパスの遊歩道でアケビを手にして、ある俳句を思い出した。高名な俳人だったか、学校の恩師だったか、作者は思い出せない。脳裏に浮かんだままを記す。

口を開け 手招き揺れる アケビかな
                       ~詠み人知らず~

⇒21日(金)午後・金沢の天気     くもり

★「ミモレット」を検証する

★「ミモレット」を検証する

  チーズのミモレットを初めて食した。チーズ独特のにおいがツンとくるものの、歯応えは決して硬くはない、むしろ「しなやか」と表現したい。実にきめ細やかな食感である。「硬くて食えない、かびたチーズ」と森喜朗氏が評して一躍有名になったチーズだ。ヨーロッパの高級品というのは得てしてそんなものだという先入観を私も持っていたが、それが「濡れ衣」であることが分かった。

   フランス産のミモレット(mimolette)を食する至ったいきさつをちょっと説明したい。郵政民営化法案否決で日本に激震が走った8月8日の2日前、小泉総理に衆院解散を思いとどまらせようと森氏が官邸を訪ねた。しかし「殺されてもいい」と小泉総理に拒否された。その会談で出たのが缶ビールと「かびた」チーズだった。会談後、森氏はわざわざ握りつぶした缶ビールとチーズを取り囲んだ記者団に見せ、「寿司でも取ってくれるのかと思ったらこのチーズだ」「硬くて歯が痛くなったよ」と憮(ぶ)然とした。映像を見た有権者は逆に「小泉は郵政改革に命をかけている、本気だ」との印象を持った。歴史的となった9月11日の選挙ドラマのプロローグはまさに森氏が記者団にチーズを見せるシーンから始まったのだ。チーズは後にフランス産高級チーズの「ミモレット」と判った。

   選挙後、ミモレットの味を検証したと思い、金沢市内の食品店を探したがない。金沢大学近くのフランス料理店でも注文したが、「東京の食材店に注文すれば1ヵ月ほどかかるが…」とニベもない。たまたま、自宅近くの大手リカーショップに問い合わせると「近く入荷する」との返事があり、注文しておいた。先日店から電話があり、いそいそと取りに行った。オレンジ色は見ようによっては確かに「かびた」ように見えるが、歯応えや食感は冒頭に記した通りである。

   森氏の味覚がおかしいと言っているわけでない。政治の駆け引きの場面では、どんな料理も賞味はできる雰囲気ではないだろう。8月6日夜、森氏がもし小泉総理の先輩としての余裕を見せて「小泉さんは『殺されてもいいから解散をやる』と言ったよ。しかたないな。でも、あのミモレットは実にうまかったよ」などと記者団に説明していたら、選挙の結果は自民大勝にはならなかったはずだ。むしろ国民から「高級チーズなんか食いやがって」と総スカンをくらっていたに違いない。森氏の苦りきった表情、握りつぶした缶ビール、そして「かびた」チーズから見えてきた政治の緊迫感がテレビを通して有権者に伝わったからこそ歴史は動いた。

   年末の「ことしの重大ニュース」のテレビ番組はこのシーンから入るのではないかと、つらつらと想い描いている。

⇒20日(木)午前・金沢の天気   くもり時々はれ

☆失恋海岸の指輪物語

☆失恋海岸の指輪物語

  昨夜、午後7時ごろだったろうか。日本銀行金沢支店前の大通りでちょっとしたトラブルがあった。福井ナンバーの軽自動車がバス停のまん前に停めてありバスが近づけない。車にはドライバーがいない。バスの運転手が激しくクラクションを鳴らしても、ドライバーが現れないのである。帰りのラッシュで日銀前はごった返した。

  で、ドライバーはというと日銀の入り口で女性ともめていた。二人とも若い。さりげなく近づき耳をそばだてると、どうやら「別れる」(女)「別れたくない」(男)の会話である。「こんなところで車を停めたらダメやろう」と注意した人がいて、二人はようやく車に戻り、去った。非常識と言えば非常識な話なのだが、二人にとっては周囲の状況がまったく見えないほど深刻な別れ話なのだ。夏に燃えるような恋をして、秋風が吹くころに失恋する。国や時代を超えて繰りかえされる人生の儀式みたいなものだ。

  その人生の儀式のメッカのようなところが石川県にもある。内灘海岸だ。先日、友人と話をしていたら、失恋しプレゼントしようと買った指輪を内灘海岸に投げ捨てたという。25年ほども前の話である。実は私の弟も20年前にこの海岸で指輪を投げている。さらにかつての会社の後輩も13年前に社内恋愛をして失恋、そして内灘海岸に指輪を投げ捨てたと聞いた。ちなみにこの3人に共通することは、夕日に向かって「バカヤロー」と叫びながら投げていることである。

   しかし、よく考えると、周囲に3人も同じ行動をしているということは、相当な確率である。ひょっとして何千という指輪が内灘海岸に投げ捨てられたのではないか、とも想像する。ここでちょっと現実的な話を。捨てられた指輪が落下した海は海岸べりからせいぜいが数十メートルの範囲だろう。引き潮のときを狙って、アサリを採る越し網で海底をさらえば指輪がアサリ以上にザクザクと出てくるのではないか。現に内灘海岸の波打ち際で指輪を拾ったという知人もいる。

   恋愛の数だけ失恋もある。内灘海岸でこうだから、サザンオールスターズの「チャコの海岸物語」で有名な茅ヶ崎海岸ではエボシ岩に向かって何万という指輪が投げられたに違いない。指輪1個が平均20万円として一体何億円になるのか。そしてきょうもまたどこかで月収分くらいの指輪を海に向かって投げている男がいるかと思うと、妄想する男の脳の滑稽さや切なさを感じる。結論の出ない、締まりのない話題なってしまった。

⇒1日(木)午後・金沢の天気  はれ

★タマムシと輪島塗の輝き

★タマムシと輪島塗の輝き

  先日、金沢大学「角間の里山自然学校」で昆虫採集の集いがあった。いま人気のゲーム「ムシキング」の影響もあってか、あるいは夏休みの宿題の便乗か、このところ子どもたちの参加が多い。ある子どもが「これキラキラムシだね」と捕ってきたムシを見せてくれた。それは、和名・ヤマトタマムシだった。

   タマムシと聞いて、6年前の番組のことを思い出した。当時、輪島塗の産地・石川県輪島市でタマムシを使った壮大な作品づくりが行われた。東南アジアのジャングルからタマムシの羽を拾い集め加工し屏風や茶釜など30点にも上る輪島塗に仕上げるとうもの。タマムシを使った工芸品と言えば、法隆寺の国宝「玉虫の厨子」が有名だ。実に1300年の時を経ているが、それ以降、タマムシを使った作品が鎌倉や江戸時代にも見当らない。乱暴な言い方かもしれないが、「玉虫の厨子」から1300年ぶりの作品ではないか、と思ったりもした。

   タマムシの羽は硬い。鳥に食べられたタマムシは羽だけが残り、地上に落ちる。東南アジアのジャングルで現地の人を雇い、拾い集める。それを輪島に持ち込んで、レーザー光線のカッターで2㍉四方に切る。それを黄系、緑系、茶系などに分けて、一枚一枚漆器に貼っていく。江戸期の巨匠、尾形光琳がカキツバタを描いた「八橋の図」をモチーフにした六双屏風の大作もつくられた。これには延べ2万人にも上る職人の手が入った。

   この作品を発注した岐阜県高山市の美術館「茶の湯の森」のオーナー、中田金太氏から依頼を受けて私は番組をプロデュースした。タマムシで輪島塗を作る、タマムシの羽を拾い集めるという着想は中田氏のオリジナルである。すべての工程をお金で換算すれば数億にも上る「玉虫工芸復活プロジェクト」であった。完成したこれらの作品はすべて茶の湯の森に納められた。輪島塗業界に新たな新風を吹き込んだ中田氏のアイデアの面白さを番組に盛り込んだ。

   見る角度によって異なる輝きを放つ。「玉虫色の決着」などと政治の世界ではいまでもよく耳にする。俗な言い方は別として、輪島塗の高度な技と生物の輝き、それを考え出す人の着想の面白さは一見の価値がある。タマムシの四文字から連想ゲームのようにして千文字ほどの文章を書いてしまった。

⇒30日(火)朝・金沢の天気  晴れ   

☆小泉総理と徳川幕府

☆小泉総理と徳川幕府

  先日、名古屋市を訪れた際、徳川美術館に立ち寄った。昭和10年(1935)の開館以来70周年に当たり、尾張徳川家に伝えられる名品や家康の甲冑など見ごたえのある品々だ。しかし、国宝「源氏物語絵巻」は11月12日から特別展として公開され、今回は複製のダミーが展示されていた。これで入館料1200円は高い、と思いつつも名古屋人の商売上手に脱帽した。

   ところで、徳川と言えば私は小泉総理を思い出す。以下は「風が吹けば桶屋が儲かる」と言ったような話の展開になる。朝日新聞「AERA」スタッフライターで軍事問題に詳しい田岡俊次さんは「今の日本は江戸幕府時代の加賀藩と同じだ」が持論の人だ。東西の冷戦に終止符が打たれ、西側の代表アメリカが名実ともに世界のナンバー1となった。これは、天下分け目の戦いといわれた関が原(1600年)で東軍が勝ち、徳川家康が幕府という統治機構を築いたことと重なる。加賀の前田利家は関が原の戦いの前年に没するが、病床にあった時、見舞いに来る家康を「暗殺せよ」と家臣に言い残しこの世を去る。遺言は実行されなかったが、「謀反の意あり」と見抜かれ、利家の妻・まつは江戸で人質となり、その後も加賀藩は百万石の大藩でありながら外様大名の悲哀を味わうことになる。日本も太平洋戦争でアメリカに宣戦布告して、4年後に占領統治される。いまだに国連憲章の「旧敵国条項」は生きている。

   地元・金沢ではこんな話が伝わっている。前田家は、徳川家の警戒心を解くことに腐心した。このため、自らの金沢城に戦時の司令塔となる天守閣は造らなかった。また、三代藩主の利常は、江戸城の殿中ではわざと鼻毛を伸ばし、立ち居振舞いをコミカルに演じたそうだ。ここまでやって加賀藩は264年続いた幕藩体制を生き抜いた。駐留米軍に「思いやり予算」と称して、15億ドルをポンと「上納」する日本。田岡さんの「日本は加賀藩と同じ」という論拠は、地元では実に理解しやすい話なのだ。

   そろそろまとめに入る。小泉さんの鼻は長くて高くてかっこいいが、ローアングルのカメラから顔に寄った時の映像で、鼻毛が覗くのが気になる。特にNHKのハイビジョンカメラだと鮮明に見えるときがある。「何もそこまで(加賀藩を)真似することはないだろう」と笑うのは私だけか…。

   先日宴席があり、この話をマンスフィールド財団の政府間交流事業で金沢を訪れていたアメリカ人弁護士(35歳)にしたら、「このユーモアはアメリカ人にも通じる」と喜んだ。彼は20代に金沢に4年間滞在した経験があり、日本語と日本史に対する造詣は深い。宴席後のカラオケで、彼はこの話のお礼にと十八番の沖縄の「島唄」を歌ってくれた。これだけの話である。他意はない。

⇒23日(火)朝・金沢の天気 雨

★選挙に「ロマンを感じる」世代

★選挙に「ロマンを感じる」世代

   新聞紙面から「国民新党」や「新党大地」はもう消え去りつつある。最近の新党「日本」ですらもう時間の問題かもしれない。ことほどさように、時間の流れは速い。そして、マスメディアの関心事は広島6区(亀井静香氏VS堀江貴文氏)がさらっている。けさ、フジテレビ系の朝の情報番組でコメンテイターが「なんで自民党と」としつこく堀江氏に質問した。堪忍袋の緒が切れた様子の堀江氏が「くだらない質問には答えたくない」と憮(ぶ)然とした。こうした緊張した場面には生中継ならではの醍醐味がある。おそらく収録だったらカットされていたに違いない。見ている側からすれば、堀江氏が憮然した理由は「理解の範囲」である。揚げ足を取るための繰り返しの質問は見ている側も不愉快に感じる。

   これからの話はおそらく50歳代の後半からの世代の人のごく一部が理解できる話かも知れない。先日、私のかつての業界の先輩と2時間ばかり話をする機会があった。先輩いわく。「今回の選挙にはロマンを感じる」という。「何のロマンですか」と問うと、「革命のロマンだよ。われわれは70年安保の世代。権力との対峙に明け暮れて、自民党=体制をぶっ潰すことを考えていた。細川(政権)はブルジョワ革命だと思っていたので魅力はなかった。でも、今回の小泉は戦略的な手法の革命だね。感じるんだよロマンを」と。

   上記の話には少し説明がいる。先輩は東京の私大卒。70年安保では国会付近でのデモに参加し、警察に「パクられた(逮捕された)」経験がある。過激派ではないが、つい最近までパクられた当時のヘルメットを家族に見つからないように隠し持っていた。近く早期退職するので、「一応人生にケリをつけたい」と思い出の品は全部捨てた。ヘルメットも捨てた。彼には、警察官僚だった亀井氏や自民党最大派閥の綿貫民輔氏は「自民党そのもの」に思えてならない。「その連中と小泉は闘っている」と。「右翼に共感する左翼もいる。左翼に共感する右翼もいるんだ」と先輩は言う。「靖国を信奉する小泉は右翼だが、共感できる」のだそうだ。

   そして「戦略的な手法の革命」のことである。レーニンが「すべての権力を会議(ソビエト)へ」と発し、全ロシア労働者・兵士ソビエト大会で革命に反対するメンシェビキを追い出しソビエト権力の樹立(1917年)した過程と似ている、と言う。「権力闘争の何たるかを小泉は知っている」と先輩は妙に関心して見せるのである。若かりしころの「革命のロマン」をイメージさせているのだ。

   先輩と別れた後で、最後に一つ質問をすべきだったと悔やんだ。「ところで先輩、投票に行くんですか」と。いまさら電話で質問をするのも気が引けるので、以下想像する。先輩は投票には行かないだろう。ロマンと投票行動は違う。「小泉には共感する」が選挙区は違う。その選挙区の自民党候補者は70歳を過ぎた老人である。先輩がその候補者に一票を投じるとは到底思えない。

⇒22日(月)夕・金沢の天気  雨

★流しそうめんと選挙

★流しそうめんと選挙

    旧盆も終わり、あいさつ文は「残暑お見舞い」となった。先日、学生が流しそうめんのキットをつくった。キャンパスの山林から調達した竹でつくったなかなかの優れものである。問題はどうやって数㍍もある竹を真っ二つに割いたか、である。まず、ナタで円の面を割く。その後、棒を裂けた部分に差し込んで金槌で棒の両端叩きながら割いていく。一気に割くと真っ二つにならなら場合もあるので結構慎重さを要する。

     そうしてできた竹に水を流し、そうめんを上流から手のひらに乗るくらいの分量で流していく。水流が速すぎるとキャッチが難しい。加減というものがある。流しそうめんでポイントはつけタレだろう。水切りが十分にされないまま食べるとすぐタレが薄まってしまう。そうめんをよく振って水を落としてから食べるのだ。右利きの人は水の流れる方向の右側に座った方がよい。箸で流れを棹差すようにして待ち構え、そうめんが箸に絡まるタイミングを見計らって一気にすくい上げる。これがコツだ。

     ところで竹を割ったように、スパっと自民は割れた。郵政民営化反対のドン、綿貫民輔氏と亀井静香氏らが新党を旗揚げすることになった。党名は「国民新党」という。傑作なのはその活動方針だ。「小泉恐怖政治の打破」「破壊でない真の改革」である。どこかの国のように、大統領権限を振りかざして民政を圧迫するのであれば恐怖政治とも表現できようが、総理が解散権を行使し、対立候補を立てたくらいのことを恐怖政治と称しては「言葉の愚弄」となる。語気を強め、他人が嫌悪する言葉を吐いても、誰にも意図するところは伝わらない。

    新党の結成で、綿貫氏の地盤、富山3区の自民党県連は胸をなでおろしているだろう。綿貫氏は富山県の自民党のドンでもある。無所属で立候補した場合、これまでのことを恩義に感じあるいは義理立てして応援に回る人もいる。しかし、新党となると話は別である。「オレは自民党だから、他党は支持できない、従って綿貫氏は申し訳ないが…」と支援を断る理由になる。県連もおそらく「他党を応援するのはよろしくない」とお触れを出すだろう。それにしても綿貫氏は78歳、新党の代表をよく引き受けたものだ。 冷静に考えれば哀れでもある。

    そうめんは好き嫌いが分かれる麺類である。うどんやそばとは違って食感が薄いからだ。それでも流しそうめんだと風流や涼感という別の要素が加わって食べる人は多い。新党も同じで「改革を断行しそうだ」などといった期待感やムードが醸成されれば、その党の候補者をよく知らなくても一票を投じるものだ。それがこれまでの民主党だった。ところが、その新味が民主党には感じられないという意見をよく聞く。実際、ブログを閲覧しても、そのような書き込みが多いのではないか。ましてや、綿貫氏や亀井氏の新党に期待感がわくだろうか。水分が抜けて絡まって食えないそうめんのような感じがするのだが…。

 ⇒17日(水)午後・金沢の天気  雨  

★金沢を描くということ

★金沢を描くということ

      画家で金沢美術工芸大名誉教授の百々(どど)俊雅さんと同大教授の小田根五郎さんの絵画展「金沢百景展」(8月11日-16日)が金沢市武蔵町の「めいてつエムザ」で開かれている。

    2001年から2004年まで足掛け4年にわたって、北陸朝日放送で放送された番組「金沢百景」で紹介された身近な風景を描いた油絵やパステル画を含む150点を中心に展示している。金沢の伝統的な街並みに加え、JR金沢駅前や新県庁舎、新しい商店街にも百々さんと小田根さんの目線が優しいタッチで注がれている。一枚一枚を眺めていると、金沢の街を散策した気分になる。

   かつて、2人をテーマにしたスペシャル番組の収録で、絵画制作の苦労話などうかがう機会があった。その中で印象に残るエピソードをいくつか。小田根さんが金沢の古い民家を描いていた。すると、家の女性が出てきて、「絵描きさんに描いてもらえるほどの価値があるのならこの家を残そうと思います」と言う。跡継ぎの女性は改築して保存しようか、いっそうのこと壊して新築しようかと迷っていた。小田根さんの真剣な眼差しを見て、女性は保存を決心したそうだ。

    百々さんは白髪の長身だから目立つ。路肩で描いていると、「ご苦労さまやね」とわざわざお茶を差し入れてくれたりする人もいる。弁当忘れても傘忘れるなーといわれるくらい金沢の天気は変わる。百々さんは雨が降っても絵が描ける場所を確保することに苦心した。屋根の下、橋の下、ビルの中、商店街のアーケードとありとあらゆる避難場所を探す「雨傘名人」となった。金沢市内でざっと100ヵ所にも。北陸・金沢でスケッチをするにはこういうことが話題になる。

    絵画展の会場では絵はがき=写真=も販売されている。ちなみに、左から県立音楽堂、金沢城二の丸、金沢城石川門である。また、番組と同名の「金沢百景」という書籍もある。変形A4判で132ページ、能登印刷出版部の発行で、会場ほか石川県内の主な書店で2700円で販売されている。

 ⇒13日(土)午後・金沢の天気  曇り

☆幻影と化した猿

☆幻影と化した猿

  ちょっと奇怪な写真を2枚お見せしよう。ブログにつける写真の多くは、ケータイ(携帯電話)のカメラ(100万画素)で撮っている。ケータイはいつも持ち歩いているので、シャッターチャンスには恵まれる。上の写真は7月23日、金沢大学角間キャンパスの創立五十周年記念館「角間の里」で撮影した。金沢市内の保育園がこの記念館で実施した園児のお泊り保育でのこと。その時のおやつにスイカが出た。保母さんたちが器用にスイカの中身をくり抜き、目と鼻と口も抜き、最後にトウモロコシの「頭髪」をかぶせた。実物はちょっと愛嬌のある「スイカくん」なのだが、逆光で撮影した写真はまるでエイリアンの凄みがある。口の中の赤が生物を感じさせ、向かって左の目が光っているので宇宙人のように見える。

  下の写真は24日に「いしかわ動物園」で撮影した2頭のチンパンジーの姿。くもり空で夕方16時50分。遠くにいたのでズームを最高にした。もともと黒毛で覆われているのでまるで影絵のようになった。核戦争で人類が滅亡し、次にサルが地球を支配するという映画「猿の惑星」のシーンとイメージが重なる。しかも、影絵だとそれがなんとなく深層心理の世界を表現するシュールレアリズムの絵画のように思えるから不思議だ。サルバドール・ダリ風にタイトルをつければ「幻影と化した猿」。「もはや誰<ヒト>もいなくなった死の空間に幻影と化した猿が群れる。未来の終わりも始まりをも予感させる奇怪な躍動」とでも説明しようか…。

   写真の技術で言えば完全な失敗作だ。私が写真家のはしくれだったら恥ずかしくて出せない。ただ、テレビや雑誌で見かける奇怪な写真とでも思って楽しんでもらえばいい。それも真夏だからなんとか理由をつけて掲載させてもらった…。

⇒27日(水)午前・金沢の天気 曇り